ガス測定装置
【課題】呼気中に少量含まれる特定のガス成分を精度高く測定する。
【解決手段】呼気測定装置100は、治験者が呼気を吹込む脱着管路108と、脱着管路108に接続された測定装置内部に呼気を導入する導入管路106と、導入された呼気の特定成分を透過させる選択透過膜118と、呼気測定用のセンサ122と、外気に晒されたセンサ120とを含み、センサ122の出力をセンサ120の出力を用いて補正したものに基づき、体内から排出された呼気中の特定ガス成分の測定値を出力する。
【解決手段】呼気測定装置100は、治験者が呼気を吹込む脱着管路108と、脱着管路108に接続された測定装置内部に呼気を導入する導入管路106と、導入された呼気の特定成分を透過させる選択透過膜118と、呼気測定用のセンサ122と、外気に晒されたセンサ120とを含み、センサ122の出力をセンサ120の出力を用いて補正したものに基づき、体内から排出された呼気中の特定ガス成分の測定値を出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人間の呼気中の特定ガス成分の濃度を測定するガス測定技術に関し、特に、呼気に含まれる特定の成分の濃度を精度高く測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の呼吸動作では、主として、吸気中の酸素が二酸化炭素と交換される。同時に、体内の水蒸気が体外に排出される。この明細書では、呼吸動作において人体に吸込まれる空気を吸気と呼び、人体から排出される空気を呼気と呼ぶ。通常は、吸気とは外気のことであり、吸気と外気とは同じ成分を有する。
【0003】
呼気中には、二酸化炭素及び水蒸気以外の、体内で産生するガス成分も含まれている。これらガス成分のうち、特定のガス成分の濃度は、体調によって特徴的に変動することが知られている。この呼気に含まれるこれら特定のガス成分を測定することにより、その人の体調(疾病又はストレス等)を診断することも可能である。このような呼気中の特定のガス成分の濃度を測定するセンサとして、カーボンナノチューブを用いたものが知られている。特許文献1は、特定の成分が二酸化炭素であって、ナノ構造体センサを用いたカプノメーター(呼気炭酸ガス濃度測定器)を開示する。このナノ構造体は、炭素、ホウ素、窒化ホウ素、窒化炭素ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、窒化ガリウム、酸化亜鉛、リン化インジウム、二流化モリブデン及び銀のいずれかの元素を含み、それによって二酸化炭素濃度を選択的に測定する。
【特許文献1】特表2007−515227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
疾病等を診断するためのガス成分として、たとえば、アセトン、メチルメルカプタン、アンモニア等が知られている。呼気中に含まれる二酸化炭素の濃度は比較的高いが、疾病等の診断に有効な、上記した成分の呼気中の濃度は低いことが多い。人間の呼気の大部分は窒素と二酸化炭素とで占められているため、疾病等の診断を行なう場合には、呼気中の濃度が低い特定のガス成分の濃度を正確に測定することが必要である。さらに、吸気は通常の場合には外気(人体外の空気)である。測定日時又は測定場所によってこの外気に含まれる特定のガス成分は異なる。そのため、呼気中のガス成分の濃度にも変動が生じ、その濃度の変化を正確に測定することはさらに困難になる。
【0005】
特許文献1に開示された測定技術を二酸化炭素以外の特定のガス成分を検出することに適用することは可能かもしれない。しかし、特許文献1に開示された測定技術のみでは、二酸化炭素よりもはるかに濃度が低い特定のガス成分を、様々な組成の外気(吸気)に対応させて、正確に検出することは困難である。
【0006】
一方、本願発明者は、上記したカーボンナノチューブの表面を特定の錯体(例えばフタロシアニン等)で修飾することにより、カーボンナノチューブが特定のガスを選択的に吸着することを見出した。錯体のような構造分子にガス分子が捕らえられると、半導体であるカーボンナノチューブから電子が錯体側に引抜かれ、カーボンナノチューブの電気抵抗が大きくなることも見出した。こうした結果を用いると、表面を特定の物質で修飾したカーボンナノチューブの電気抵抗の変化量を知ることにより、雰囲気中の特定ガスの濃度を測定することが可能になると思われる。
【0007】
しかし、もともとこうしたガスの呼気中の成分の濃度が低いため、上記した表面修飾されたカーボンナノチューブを雰囲気中に置いただけでは良好な感度を確保することがむずかしい。上に述べたように、測定結果が大気の状態の影響を受けるため、そうした影響を排除する必要もある。さらに、カーボンナノチューブの修飾の度合いを均一にすることも難しいことが予想され、センサによる測定結果のばらつきが生ずる可能性もある。呼気中の特定ガス成分の濃度を正確に測定するためには、これらの困難を解決する必要がある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、呼気中に少量含まれる特定のガス成分の濃度を精度高く測定することができるガス測定装置を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、多くの種類のガス成分を含む呼気について、呼気中に少量含まれる特定のガス成分の濃度を精度高く測定することができるガス測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の局面に係るガス測定装置は、測定対象ガス中の共通の特定ガス成分の濃度を測定する第1及び第2のガスセンサと、第1及び第2のガスセンサに別々に測定対象ガスを接触させるための接触手段と、第2のガスセンサによる測定結果を、第1のガスセンサによる測定結果を用いて補正するための補正手段とを含む。
【0011】
好ましくは、接触手段は、第1のガスセンサを外気に接触させ、第2のガスセンサを呼気に接触させるための導入手段とを含む。
【0012】
補正手段は、第1のガスセンサによる測定値を第2のガスセンサによる測定値から差引くための手段を含んでもよい。
【0013】
さらに好ましくは、ガス測定装置は、基準となる共通のガスを第1及び第2のガスセンサに同時に接触させるための手段と、第1及び第2のガスセンサに同時に共通のガスを接触させたときの、第1及び第2のガスセンサからの出力信号のレベルが所定の関係になるように第1及び第2のガスセンサの出力を校正するための校正手段をさらに含む。
【0014】
ガス測定装置は、第1及び第2のガスセンサに吸着したガス成分を脱離させるための手段をさらに含んでもよい。
【0015】
好ましくは、脱離させるための手段は、第1及び第2のガスセンサのいずれの測定結果にも影響しない基準ガスを第1及び第2のガスセンサに供給するための供給手段と、第2のガスセンサによる測定対象ガスの測定時には、基準ガスを第1のガスセンサに供給し、第2のガスセンサへは測定対象ガスを供給するように供給手段を切替えるための手段とを含む。
【0016】
本発明の第2の局面に係るガス測定装置は、内部空間を有する筐体と、内部空間を、第1の隔室、第1の隔室と離れた第2の隔室、及び第1及び第2の隔室の間に形成された第3の隔室に分離する、内部空間に形成された第1及び第2の隔壁とを含む。第1の隔壁には、第1の隔室及び第2の隔室を連通させる開口が形成されており、第2の隔壁には、第3の隔室及び第2の隔室を連通させる開口が形成されている。このガス測定装置はさらに、第2の隔壁の開口に設けられた、特定のガス成分を透過する第1の機能膜と、第1の隔室内に設けられた第1のガスセンサと、第2の隔室内に設けられた第2のガスセンサと、第3の隔室内にガスを導入するように筐体に形成されたガス導入部と、第1及び第2の隔室内からそれぞれガスを排出するように筐体に形成されたガス排出部とを含む。
【0017】
好ましくは、第1及び第2の隔室内に基準ガスを導入するように筐体に形成された基準ガス導入部をさらに含む。
【0018】
より好ましくは、第1及び第2のガスセンサは、それぞれ第1及び第2の隔室内で、第1及び第2の隔壁の開口部に臨む位置に設けられている。
【0019】
さらに好ましくは、ガス測定装置は、さらに、第3の隔室内に設けられ、第3の隔室内にガス導入部により導入されたガスを、第1及び第2の隔壁の方向に向ける反射板をさらに含む。
【0020】
ガス測定装置はさらに、第1の隔壁の開口に設けられた、特定のガス成分と付加的なガス成分との双方を透過する第2の機能膜を含んでもよい。
【0021】
本発明の第3の局面に係るガス測定装置は、測定対象ガス中の共通の特定ガス成分の濃度を測定する第1及び第2のガスセンサと、第1及び第2のガスセンサに同時に共通の測定対象ガスを接触させるための手段と、第1及び第2のガスセンサによる測定結果が所定の関係になるように、第2のガスセンサの出力を校正するための校正手段とを含む。
【0022】
本発明の第3の局面に係るガス測定装置は、外気に接触する位置に設けられる第1のガスセンサと、第2のガスセンサと、第2のガスセンサ近傍に、生体の呼気を導入するための呼気導入手段と、第2のガスセンサによる測定値を、前記第2のガスセンサによる測定値を用いて補正するための補正手段とを含む。
【0023】
本発明の第4の局面に係るガス測定装置は、第1及び第2のガスセンサと、第1及び第2のガスセンサ近傍に、生体の呼気を導入するための呼気導入手段と、呼気導入手段により導入された呼気のうち、特定ガス成分及び特定の付加的ガス成分のみを選択的に透過して第2のガスセンサに接触させるための手段と、呼気導入手段により導入された呼気のうち、付加的ガス成分のみを選択的に透過して第1のガスセンサに接触させるための手段と、第2のガスセンサによる測定値を、第1のガスセンサによる測定値を用いて補正するための補正手段とを含む。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ガス測定装置は第1及び第2のガスセンサを含み、これらに別々に測定対象ガスを接触させる。そして、その結果得られた第2のガスセンサによる測定結果を、第1のガスセンサによる測定結果を用いて補正する。そのため、単独のガスセンサで測定するときよりも測定値の精度が高くなる。
【0025】
補正の際、外気に対する第1のガスセンサの測定結果を用いて第2のガスセンサの測定結果を補正すると、外気内のガス成分の変動による測定誤差をなくすことができる。第1及び第2のガスセンサで基準ガスを測定した結果を用いて、両者の出力が一定の関係となるように(例えば等しい値になるように)第2のガスセンサの出力を校正すると、ガスセンサの製造時の性能のばらつき、経年劣化などによる誤差をなくすことができる。第2のガスセンサに特定ガス成分と付加的ガス成分との合計濃度を測定させ、第1のガスセンサによって付加的ガス成分の濃度のみを測定させることもできる。この場合、第2のガスセンサの出力を第1のガスセンサの出力で補正することにより、特定ガス成分の濃度のみを算出できる。付加的ガス成分の影響をなくすことができ、特定ガス成分の測定精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面に基づき詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの機能及び名称も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0027】
<第1の実施の形態>
[構成]
以下、本発明の第1の実施の形態に係る呼気測定装置について、図1及び図2を参照して説明する。
【0028】
図1は、本実施の形態に係る呼気測定装置100の全体の概略構成を示す斜視図である。図1に示すように、この呼気測定装置100は、一面を取外した中空の略直方体形状の中空な(内部空間を有する)筐体102と、図1における上部から筐体102に取付られる平板状の蓋部104と、筐体102の呼気上流側の一側面に設けられた、筐体102内部に測定対象ガスである人間の呼気を導入するための導入管路106と、筐体102の、導入管路106が設けられた面に対向する呼気下流側の面に設けられた排出管路110と、蓋部104に設けられた測定回路124とを含む。測定回路は、後述するように筐体102内に設けられるカーボンナノチューブからなるセンサの抵抗値変化から特定ガス成分の濃度を算出し、その結果を表示するためのものである。なお、以後の説明では、図を簡単にするために、この測定回路124は図には示さないこととする。
【0029】
導入管路106の内部には、たとえば呼気中の水蒸気を吸着するシリカゲル等が装着される。この呼気測定装置100は、呼気の導入方向に垂直な方向に筐体102に設けられた排出管路112をさらに含む。図2は、図1に示す蓋部104を取外して、図1の上方から呼気測定装置100を見た上面図である。なお、筐体102は、直方体である必要はない。さらに、この呼気測定装置100は、図示しない電気回路を備えている。センサの取付ステー及びセンサの電気配線は図示していない。
【0030】
図1及び図2に示すように、導入管路106には脱着可能なマウスピース108がさらに設けられる。たとえば、このマウスピース108の開放端を利用者が口に咥える。このマウスピース108は、利用者ごとに取替える使い捨てのものとすることも好ましい。筐体102の内部には、2枚の隔壁114及び隔壁116が設けられる。隔壁114の外側の外気に接触する位置にセンサ120が設けられ、筐体102と隔壁116とで形成される隔室に、センサ120と同じ仕様のセンサ122が設けられる。なお、隔壁116には、穴部116Aが設けられる。隔壁116の穴部116Aのセンサ122側の開口部分及び筐体102内部の排出管路112側の開口部分には、選択透過膜118が設けられる。この選択透過膜118は、センサ122で検出したいターゲット分子(たとえばアセトン)のみを透過させる機能膜である。排出管路110及び排出管路112は、この呼気測定装置100の外側から外気を進入させないように逆止弁を備える。なお、本実施の形態では、選択透過膜118は穴部116Aの部分と、排出管路112の開口部分との両方に設けられているが、少なくとも隔壁116のセンサ122側に設けられていれさえすればよい。以下においては、選択透過膜118は、アセトンを透過する機能膜であって、センサ120及びセンサ122は、アセトンが吸着されると電気抵抗値が変化するセンサであるとして説明する。
【0031】
センサ120及びセンサ122は、同じ仕様のセンサである。センサ120は吸気用(外気基準用)センサ、センサ122は呼気用(測定用)センサである。センサ120及びセンサ122は、錯体で表面修飾したカーボンナノチューブを用いたセンサであって、測定対象の呼気に含まれるガスの濃度に従ってその表面にそのガスの分子が付着することにより電気抵抗値が変化することを利用して、ガスの濃度を検出するものである。ここでは、選択透過膜118を設けていることにより、選択透過膜118により透過される特定成分のガス濃度が測定できる。センサ120は外気にさらされているため、各種のガス成分が付着する可能性があるが、ここではセンサ120及び122の双方とも、同じ特定成分については吸着能が高く、それ以外のものについては高くないことを想定している。
【0032】
呼気測定装置100は、定電圧電源を備え、センサ120及びセンサ122には、常に一定の電圧が印加されている。測定ガスに含まれる特定成分がセンサ120及びセンサ122に吸着されるとセンサ120及びセンサ122の電気抵抗値が変化する。電気抵抗値が変化するとセンサ120及びセンサ122のそれぞれに流れる電流値が変化するので、この電流値を測定して、電気抵抗値の変化を測定できる。
【0033】
センサ122を用いて呼気中の特定ガスの濃度変化を測定するにあたり、センサ120の出力を吸気(外気)中のガスの濃度を表すものとして、センサ122による測定結果(呼気中の特定ガスの濃度)−センサ120による測定結果(吸気、すなわち基準となる外気中の特定ガスの濃度)を、人間の体内から排出された呼気に対応するものとしてとらえる。
【0034】
[動作]
以上のような構造を有する呼気測定装置100の動作について説明する。
【0035】
利用者が息を吸込み、マウスピース108を口に咥えて口から吐出す。このとき、選択透過膜118により空気の円滑な流れが阻止されるので、ある程度の圧力を持って呼気を吐出す必要がある。この結果、矢印A(0)で示されるように呼気が呼気測定装置100の内部に導入される。導入管路106に設けられたシリカゲル等の吸湿剤及び中空糸膜等で水蒸気の一部及び測定対象外のガスがほぼ除去されて、矢印A(1)で示されるように呼気が呼気測定装置100内に流入する。呼気の一部は、隔壁116に設けられた穴部116Aを通りさらに選択透過膜118を通って、矢印A(2)及び矢印A(3)で示されるようにセンサ122に到達する。このとき、選択透過膜118によりアセトンが透過されているので、センサ122に到達する呼気にはアセトン以外の余計な成分は含まれない。また、圧力をかけて呼気を吐出すので、センサ122に到達する呼気はある流速を持っている。その結果、効率よくセンサ122による特定ガス成分の濃度測定を行なうことが可能になる。呼気はこの後、矢印A(4)及びA(5)のように流れ、排出管路112から外部に排出される。なお、選択透過膜118で透過されないガス成分及び呼気は、矢印A(6)及び矢印A(7)のように流れて外部に排出される。排出管路110及び排出管路112には、逆止弁が設けられているので、通常、外気が呼気測定装置100の内部に侵入することはない。
【0036】
一方、センサ120は、この呼気測定装置100の筐体102に設けられた隔壁114のさらに外側に設けられているので、外気に曝されている状態である。このため、吸気における特定ガス成分(ここでは吸気中のアセトン)の濃度はセンサ120の電気抵抗値の変化量により表され、呼気における特定ガス成分(ここでは呼気中のアセトン)の濃度はセンサ122の電気抵抗値の変化量により表される。センサ122の電気抵抗値の変化量とセンサ120の電気抵抗値の変化量との差分が、この呼気に含まれる特定ガス成分であるアセトンに起因する差である。すなわち、この電気抵抗値の変化量の差分と、利用者の人体内で発生しているアセトンの量との間に相関関係が成立する。
【0037】
選択透過膜118がアセトンを透過させる膜であって、アセトンがセンサに多く吸着するほど電気抵抗値が大きく変化する。したがって、電気抵抗値の変化量が大きくなるとアセトンが多く検出されていることを示す。
【0038】
なお、この場合、測定場所又は測定日時が異なると、外気(吸気)自体に含まれるターゲット分子(ここではアセトン)の濃度が異なってくる。もし、センサ122のみであってセンサ120を備えない場合には、人体から排出されるターゲット分子の量が、外気中のそのガス成分の量によって変化してしまい、ターゲット分子の濃度の測定値が誤差を含むことになる。しかし、本実施の形態に係る呼気測定装置100では、その場所におけるその測定日時の外気(吸気)をセンサ120で同時に測定してそれを基準にセンサ122による測定結果を補正するので、常に外気の変化の影響を考慮した形で、呼気中に含まれるターゲット分子の濃度を測定することができる。
【0039】
なお、測定のための構成と、センサ120の測定結果によるセンサ122の測定結果の補正については、以下で説明する各実施の形態と共通である。その説明は第5の実施の形態に関連して説明するので、ここでは詳細については述べない。
【0040】
以上のようにして、本実施の形態に係る呼気測定装置によると、呼気の測定時には、選択透過膜を用いてターゲット分子を選択して測定用センサに到達させ、測定用センサでその濃度を電気抵抗の変化量の形で測定する。同時に、吸気(外気)中のターゲット分子の濃度を同じ仕様の基準用センサで電気抵抗の変化量の形で測定する。これら測定用センサと基準用センサとの出力の差分を、人体から排出されるターゲット分子の濃度としてとらえるので、低濃度のターゲット分子を精度高く検出することができる。
【0041】
なお、この第1の実施の形態では、外気を測定するためにセンサ120を用いている。このセンサは外気に対して露出するように設けられているが、本発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば、図2においてセンサ120が収容されている部分に、開口部を有する蓋を設けるようにしてもよい。またこの蓋の開口部分に、選択透過膜118と同じく、特定のガス成分のみを透過する選択透過膜を設けるようにしてもよい。そのような構成とすることによって、センサ120の出力は外気中のアセトンの濃度をより忠実に反映することになり、特定のガス成分に関するセンサ122の測定結果の精度をさらに高めることができる。
【0042】
<第2の実施の形態>
[構成]
以下、本発明の第2の実施の形態に係る呼気測定装置について、図3及び図4を参照して説明する。図3は上述の図1に対応し、図4は上述の図2に対応する。
【0043】
図3は、本実施の形態に係る呼気測定装置200の全体の概略構成を示す斜視図であり、図4は、図3に示す蓋部104を取外して、図3の上方から呼気測定装置200を見た上面図である。
【0044】
図3及び図4に示すように、本実施の形態に係る呼気測定装置200は、2つの隔壁により内部に形成された3つの隔室を有する筐体202と、隔壁116と同様の穴部214Aを備えた隔壁214とを含む。さらに、この呼気測定装置200の中央の隔室には、導入管路106から筐体202内部に導入され、排出管路110に向けて流れる呼気を、センサ120及びセンサ122の方向に押戻すための反射板208が設けられている。乱流が生じて拡販されて、均一なガスがセンサに導入されやすくなる。センサ120及びセンサ122は、筐体202の内部であって、中央の隔室を挟んで向かい合う二つの隔室内にそれぞれ設けられている。
【0045】
図4に示すように、この呼気測定装置200は、図の導入管路106及び排出管路110を結ぶ線を中心として上下に線対称な構成を備える。反射板208は、矢印A(1)で示されるように流れてきた呼気を矢印A(2)及び矢印A(8)の2方向に反射させて呼気を効率的にセンサ120及びセンサ122に到達させる。矢印A(2)の方向には隔壁116の穴部116A及び選択透過膜118が設けられ、矢印A(8)の方向には隔壁214の穴部214A及び選択透過膜206が設けられる。
【0046】
選択透過膜118と選択透過膜206とでは、膜を透過するターゲット分子が異なる。たとえば、選択透過膜118は、アセトンと水蒸気を選択的に透過させ、選択透過膜206は水蒸気のみを選択的に透過させる。つまり、選択透過膜118は、選択透過膜206とは共通のガス(水蒸気)を透過させるが、選択透過膜はさらに付加的なガス(アセトン)をも透過させる。センサ122を用いて呼気中の特定ガス(ここではアセトンとする)の濃度変化を測定するにあたり、センサ120の出力を呼気に含まれる水蒸気として、呼気のアセトンと水蒸気とによるセンサ122の電気抵抗値の変化量と、呼気の水蒸気によるセンサ120の電気抵抗値の変化量との差分を、人間の体内から排出された特定成分のガス(ターゲット分子であるアセトン)によるものとして考える。つまり、センサ122の電気抵抗値の変化量からセンサ120の電気抵抗値の変化量を差引くと、アセトンの濃度が算出できる。
【0047】
[動作]
以上のような構造を有する呼気測定装置200は以下のように動作する。
【0048】
利用者がマウスピース108を口に咥えて呼気を口から吐出すと、矢印A(0)で示されるように呼気が呼気測定装置200の内部に導入される。導入管路106内のシリカゲル等の吸湿剤により水蒸気の一部は除去されて、矢印A(1)で示されるように呼気が呼気測定装置100内を流れ、反射板208に当たる。
【0049】
反射板208に当たって反射した呼気の一部は、隔壁116に設けられた穴部116Aを通りさらに選択透過膜118を通って、矢印A(2)及び矢印A(3)で示されるようにセンサ122に到達する。選択透過膜118を透過したガスは、主としてアセトン、窒素及び水蒸気からなる。
【0050】
反射板208に当たって反射した呼気の別の一部は、隔壁214に設けられた穴部214Aを通り、さらに選択透過膜206を通って、矢印A(9)及び矢印A(10)で示されるようにセンサ120に到達する。ここで、選択透過膜206を透過したガスは、主として窒素及び水蒸気からなる。
【0051】
なお、選択透過膜118でも選択透過膜206でも透過されない呼気のガス成分は、残りの呼気とともに矢印A(6)及び矢印A(7)のように流れ、外部に排出される。
【0052】
呼気における特定ガス成分であるアセトン及び水蒸気によるセンサ120の電気抵抗値の変化量と、呼気における水蒸気によるセンサ122の電気抵抗値の変化量との差分が、この呼気に含まれる特定ガス成分であるアセトンの濃度を示すものとなる。
【0053】
本実施の形態では、選択透過膜118がアセトン及び水蒸気を透過させる膜であり、選択透過膜206が水蒸気を透過させる膜である。アセトンがセンサに多く吸着するほど電気抵抗値が大きく変化する。その結果、検出されるアセトン濃度が高くなる。
【0054】
本実施の形態では、外気(吸気)自体に含まれる水蒸気の濃度に変動があってもその影響を排除することができる。
【0055】
すなわち、本実施の形態に係る呼気測定装置200では、呼気を2種類の選択透過膜を用いて透過させて、2個のセンサでそれぞれその電気抵抗値の変化量を測定している。そのため、リアルタイムに水蒸気の影響を補正しながら、呼気中に含まれるターゲット分子の濃度を測定することができる。
【0056】
以上のようにして、本実施の形態に係る呼気測定装置によると、呼気の測定時には、透過するガスの種類が異なる選択透過膜を少なくとも2種類用いて2つのセンサに到達させてターゲットガス成分の濃度を測定する。それらのセンサの電気抵抗値の変化量の差分に基づいて、利用者の呼気中のターゲット分子の濃度を測定する。その結果、低濃度のターゲット分子でも精度高く検出することができる。さらに、選択透過膜を適切に選定することにより、検出対象の呼気に含まれるガス成分を考慮しながら、検出したいガスの選択性を高めることができる。
【0057】
<第3の実施の形態>
[構成]
以下、本発明の第3の実施の形態に係る呼気測定装置について、図5を参照して説明する。図5は上述の図2又は図4に対応する。
【0058】
図5は、本実施の形態に係る呼気測定装置300の蓋部104を取外して、上方から呼気測定装置300を見た上面図である。
【0059】
本実施の形態に係る呼気測定装置300は、前述の第2の実施の形態に係る呼気測定装置200の筐体202とは異なり、導入管路106側の側面に形成され、筐体302と隔壁214とで形成される隔室と、筐体302と隔壁116とで形成される隔室とにそれぞれ連通した、外部から気体をこれら隔室内に導入するための導入管路304及び導入管路306とを有する。導入管路304及び導入管路306には逆止弁が設けられる。本実施の形態では、導入管路304及び導入管路306により隔室内に導入される気体は窒素である。
【0060】
以上のような構造を有する呼気測定装置300の動作について説明する。
【0061】
最初に、導入管路304及び導入管路306から基準ガスである窒素ガスをこの呼気測定装置300に導入する。なお、導入管路106が逆止弁を備えない場合には、導入管路304及び導入管路306に加えて導入管路106から基準ガスを導入することも好ましい。このとき、この基準ガスである窒素ガスの濃度は、センサ120及びセンサ122の分解能に鑑み以下に示す初期校正を十分に行なうことができるほど高い純度であるとする。
【0062】
導入管路304から送込まれた基準ガスである窒素ガスは、矢印A(12)及び矢印A(13)に示すように流れて、センサ120に到達する。導入管路306から送込まれた基準ガスである窒素ガスは、矢印A(14)及び矢印A(15)に示すように流れて、センサ122に到達する。ここで、センサ120及びセンサ122は同じ仕様のセンサであって、定電圧電源により一定の電圧が印加されている。このため、同じ成分の基準ガスである窒素ガスに接触したセンサ120及びセンサ122が検出する値は、同じ濃度を示すものとなるはずである。
【0063】
しかし、センサの個体差、経時変化又は後述する脱離状態によって、これらセンサの電気抵抗値は一般には異なる。基準ガスをこの呼気測定装置300に導入した状態で、センサ120の電気抵抗値から得られる特定ガス成分の濃度及びセンサ122の電気抵抗値から得られる特定ガス成分の濃度が同じ値になるように、差動増幅器を備えた初期校正のための電気回路を用いてセンサ出力回路のゲインを調整する。
【0064】
初期校正の後、導入管路304及び導入管路306からの基準ガスの導入を止めて、利用者がマウスピース108を口に咥えて呼気を吐出し、呼気内の特定ガス成分の濃度を測定する。導入管路304及び導入管路306に設けられた逆止弁により測定対象の呼気ガスがこれらの導入管路304及び導入管路306から漏れ出すことはない。
【0065】
以上のようにして、本実施の形態に係る呼気測定装置によると、呼気の測定前の初期校正として、基準ガスを2つのセンサに到達させて同じ濃度値が得られるようにセンサ出力を校正する。それらのセンサの初期校正後に、利用者から排出される特定ガス成分の濃度を測定するので、センサの個体差があっても、検出したい特定ガス成分の濃度を精度高く測定することができる。
【0066】
本実施の形態では、以下のようにしてセンサ120及び122から特定ガス成分の脱離処理を行なう。
【0067】
脱離処理とは、センサ120及びセンサ122が吸着したターゲット分子をセンサから脱離させて、センサを測定前の初期状態に戻す処理である。本実施の形態では、脱離は、ターゲット分子を含まないガス、たとえば窒素ガスをセンサ周辺に流すことにより行なわれる。すなわち、利用者によるターゲットガスの測定が終了すると、次の測定前に(次の初期校正前に)、導入管路304及び導入管路306から脱離ガス(ここでは窒素ガス)をこの呼気測定装置300に導入して、センサ120及びセンサ122から測定時に吸着したターゲット分子を脱離させる。
【0068】
これにより、ある利用者の呼気の測定後に、センサを初期状態に戻すことができ、繰返して呼気濃度を精度高く測定することができる。
【0069】
<第4の実施の形態>
以下、本発明の第4の実施の形態に係る呼気測定装置について、図6を参照して説明する。図6は上述の図5に対応する。
【0070】
図6は、本実施の形態に係る呼気測定装置400の蓋部104を取外して、上方から呼気測定装置400を見た上面図である。
【0071】
本実施の形態に係る呼気測定装置400は、前述の第3の実施の形態に係る呼気測定装置300の構成に加えて、センサ120及びセンサ122の近傍にそれぞれ設けられ、これらセンサからターゲットガス分子を脱離させるためのヒータ402及びヒータ404を含む。
【0072】
ヒータ402及びヒータ404は、脱離処理時に通電されるとセンサ120及び122を加熱して、これらを活性化させる。その結果、脱離処理に必要な時間を短くできる。このため、利用者が多い場合の測定待ち時間を短くすることができる。
【0073】
<第5の実施の形態>
以下、本発明の第5の実施の形態に係る呼気測定装置について、図7〜図9を参照して説明する。図7は上述の図2、図4、図5及び図6に対応する、本実施の形態に係る呼気測定装置500の内部を上方から見た上面図である。図7(A)が初期校正時の状態を、図7(B)が測定時の状態を示す。
【0074】
図7(A)及び図7(B)に示すように、この呼気測定装置500は、略直方体の筐体502と、筐体502の内部に2つの隔室を形成するための隔壁504とを含む。図の上方側の隔室には校正用センサ520が、図の下方側の隔室には測定用センサ522が、それぞれ設けられる。
【0075】
筐体502には、図の上方側の隔室に連通した、基準ガス導入管路506及び排出管路508が設けられるとともに、図の下方側の隔室に連通した、導入管路510及び排出管路518が設けられる。これらの管路には逆止弁が設けられる。さらに、この呼気測定装置500の導入管路510には、三方弁512を介して、基準ガス導入管路514と測定ガス導入管路516とが設けられる。この三方弁512は、図7(A)に示すように基準ガスを呼気測定装置500に導入する状態と、図7(B)に示すように測定ガスを呼気測定装置500に導入する状態とを切替えるための弁である。なお、図7(A)に示す状態と図7(B)に示す状態とを切替えることができる構造であれば、三方弁に限定されない。三方弁を図示した図7において、管路が接続されていない三方弁の接続口にはキャップが嵌められており、ガスが漏れることはない。
【0076】
この呼気測定装置500は、図7では示していない、以下のような補正用(初期校正用)の電気回路を備える。この電気回路は、図1に示す測定回路124に対応するもののうち、電気信号の測定に関する部分である。
【0077】
図8に示すように、この電気回路は、定電圧電源150と、校正用センサ520の両端が入出力端子に接続された差動増幅器152と、測定用センサ522の両端が入出力端子に接続された差動増幅器154と、ゲイン調整用の差動増幅器156及び差動増幅器158と、差動増幅器156及び差動増幅器158からの出力を受けて入力信号の差を出力する差動増幅器160とから構成される。
【0078】
校正用センサ520及び測定用センサ522は、定電圧電源150から供給される電源電圧を電気抵抗Rで除算した電流値が流れるように定電流駆動される。校正用センサ520及び測定用センサ522の抵抗値が変化するとその変化に応じた電圧が差動増幅器152及び差動増幅器154から出力される。
【0079】
本実施の形態に係る呼気測定装置500においては、校正用センサ520及び測定用センサ522についての初期状態において出力される電圧値が異なると測定されるガスの検出に誤差が生じる。このため、同じ基準ガス(ここでは窒素ガスとする)が校正用センサ520及び測定用センサ522に触れているとき差動増幅器160からの出力が0になるように、差動増幅器156及び差動増幅器158のゲインを調整する。なお、この呼気測定装置500は、差動増幅器160からの出力を操作者に報知する出力部及び差動増幅器156及び差動増幅器158のゲイン調整を行なう入力部(調整つまみ等)を備えている。
【0080】
以上のような構造を有する呼気測定装置500の動作について説明する。利用者が呼気をこの呼気測定装置500に吹込む前に、三方弁512を図7(A)の状態に切替える。このとき、三方弁512により、基準ガス導入管路514と導入管路510とが連通している状態であって、測定ガス導入管路516はどの管路とも連通していない状態にされる。この状態で、基準ガス導入管路506及び基準ガス導入管路514から基準ガス(ここでは窒素ガス)をこの呼気測定装置500に導入する。このとき、図7(A)に示すように、黒く太い矢印で示されるように、呼気測定装置500の上側の隔室に設けられた校正用センサ520にも下方側の隔室に設けられた測定用センサ522にも基準ガスが到達する。このとき、基準ガス導入管路506にも導入管路510にも同じ流量の基準ガスが流れるように基準ガスの流量が調整される。
【0081】
この状態で、初期校正処理として、操作者は、図8に示す差動増幅器160からの出力が0になるように調整つまみを操作して差動増幅器156及び差動増幅器158のゲインを調整する。図9(A)に校正用センサ520の電気抵抗値の時間変化を、図9(B)に測定用センサ522の電気抵抗値の時間変化を、図9(C)に測定用センサ522の電気抵抗値と校正用センサ520の電気抵抗値との差分の時間変化を、それぞれ示す。初期校正処理が完了したのは時間0であるとする。このときの縦軸切片が図9(A)と図9(B)とで一致していることは、初期校正が正しく行なわれていることを示す。
【0082】
予め、利用者の呼気をテドラーバッグに収集し、基準ガス(窒素)とともにこの呼気測定装置500の三方弁512に供給可能に接続しておく。初期校正の後、時間T(S)を経過するまでは三方弁512を切替えないで図7(A)の状態で校正用センサ520及び測定用センサ522に同流量の基準ガスを流す。時間T(S)において、三方弁512を図7(B)の状態に切替えるとともに、利用者の呼気と基準ガスとを、三方弁512を介して導入管路510へ送込む。三方弁512を図7(B)の状態に切替える。三方弁512により、基準ガス導入管路514はどの管路とも連通せず、測定ガス導入管路516と導入管路510とが連通した状態となる。
【0083】
図7(B)の黒く太い矢印で示されるように、呼気測定装置500の上側の隔室に設けられた校正用センサ520に基準ガスが到達し、白く太い矢印で示されるように、呼気測定装置500の下側の隔室に設けられた測定用センサ522に測定ガスを含む基準ガスが到達する。このとき、基準ガス導入管路506にも導入管路510にも同じ流量のガスが流れるように基準ガスの流量及び測定ガスを含む基準ガスの流量が調整される。
【0084】
呼気測定の開始時間である時間T(S)から終了時間である時間T(E)の間においては、図9(A)に示すように、校正用センサ520の電気抵抗値は、基準ガス中の何らかの気体分子が付着するため、時間とともに緩やかに増加するように変化する。一方、図9(B)に示すように測定用センサ522の電気抵抗値は、校正用センサ520と同じように時間とともに緩やかに増加することに加え、測定ガスに含まれる特定ガス成分の存在に起因する増加を示す。その結果、図9(C)に示されるように、両者の差((B)−(A))に対応する信号が、補正後の信号として差動増幅器160から出力される。この信号のうち、図9(C)において、信号がおおよそ安定している時間T(2)〜T(3)の間の信号が測定値として決定される。
【0085】
以上のように、本実施の形態に係る呼気測定装置500によると、(1)同じ流量の基準ガス(窒素ガス)を2つのセンサに流して初期校正(差動出力値が0になるようにゲイン調整)することにより、センサ間の個体差の影響が測定値に現れないようにし、(2)測定時においては、同じ流量の基準ガスを校正用センサに流しながら測定ガスを含む基準ガスを測定用センサに流して、測定用センサの測定値と校正用センサの測定値の差分を最終測定値とした。この結果、センサ間の個体差の影響も、測定時の外乱(外気の変動)の影響も受けることなく、精度高く呼気に含まれる特定ガスを測定することができる。
【0086】
なお、この第5の実施の形態でも脱離処理を行なう。この脱離処理においては、図7(B)に示す状態から、図7(A)に示すように三方弁512を切替えて基準ガスを測定用センサ522に到達させる。これにより、測定用センサ522が吸着した特定ガスのターゲット分子がセンサから脱離し、センサを測定前の初期状態に戻すことができる。さらに、第4の実施の形態のように、センサ近傍にヒータを設けることも脱離処理を促進させる点で好ましい。
【0087】
<第6の実施の形態>
以下、本発明の第6の実施の形態に係る呼気測定装置について、図10を参照して説明する。図10は上述の図7に対応し、本実施の形態に係る呼気測定装置600の内部を上方から見た上面図である。図10(A)が初期校正時の状態を、図10(B)が測定時の状態を示す。
【0088】
図10(A)及び図10(B)に示すように、この呼気測定装置600は、上述の第5の実施の形態に係る呼気測定装置500の構成に代えて、略直方体の筐体602を含む。この筐体602には、この呼気測定措置600の内部に3つの隔室を形成するために、図7に示す隔壁504に加えて、隔壁504の両側にそれぞれ設けられた隔壁620及び隔壁630を含む。隔壁620は穴部620Aを有し、さらにセンサ520側から穴部620Aを覆うように選択透過膜622が設けられる。隔壁630は穴部630Aを有し、さらにセンサ522側から穴部630Aを覆うように選択透過膜632が設けられる。基準ガス導入管路506及び排出管路508は隔壁504及び620により形成される隔室内に開口する位置に設けられ、基準ガス導入管路510及び排出管路518は隔壁504及び630により形成される隔室内に開口する位置に設けられる。
【0089】
この第6の実施の形態にかかる呼気測定装置600の動作は、第5の実施の形態にかかるものと同様である。ただし、センサ520に到達するガスが選択透過膜622を透過したものであり、センサ522に到達するガスが選択透過膜632を透過したものである点が異なる。
【0090】
本実施の形態に係る呼気測定装置600は、第5の実施の形態に係る呼気測定装置500の効果に加えて、第1の実施の形態に係る呼気測定装置100、第2の実施の形態に係る呼気測定装置200及び第3の実施の形態に係る呼気測定装置300と同様に、選択透過膜の選定により検出したいガスの選択性を高めることができる。
【0091】
<第7の実施の形態>
以下、本発明の第7の実施の形態に係る呼気測定装置について、図11を参照して説明する。図11は上述の図10に対応する、本実施の形態に係る呼気測定装置700の内部を上方から見た上面図である。図11(A)が初期校正時の状態を、図11(B)が測定時の状態を、図11(C)が脱離時の状態をそれぞれ示す。
【0092】
この呼気測定装置700は、上述の第6の実施の形態に係る呼気測定装置600の構成に代えて、略直方体の筐体702を含む。この筐体702には、測定用センサ522が設置される隔室からガスを排出する排出管路724が設けられる。この排出管路724には逆止弁が設けられる。さらに、この呼気測定装置700の導入管路710には、2個の三方弁712及び三方弁716を含む導入管路系が設けられる。
【0093】
筐体702には、導入管路710及び導入管路720が、それぞれこの呼気測定装置700の内部の隔壁504と隔壁620とにより形成される隔室内と、隔壁504と隔壁630とにより形成される隔室内とに連通可能に設けられる。三方弁712は、導入管路710と基準ガス導入管路714と測定ガス導入管路722とに接続されている。三方弁716は、導入管路720と基準ガス導入管路714と基準ガス導入管路718とに接続されている。
【0094】
[初期校正動作]
以上のような構造を有する本実施の形態に係る呼気測定装置700の動作(特に他の実施の形態と異なる三方弁の動作)について説明する。
【0095】
図11(A)に示すように、三方弁712を切替え、導入管路710と基準ガス導入管路714とが連通し、測定ガス導入管路722がどの管路とも連通していない状態とする。三方弁716を切替え、基準ガス導入管路714と基準ガス導入管路718とが連通している状態し、導入管路720がどの管路とも連通していない状態にとする。この状態では、導入管路720にはガスは流れない。
【0096】
この状態で、基準ガス導入管路506及び基準ガス導入管路718から基準ガスを流し、呼気測定装置700に導入する。図11(A)を参照して、基準ガス導入管路506及び導入管路710から同じ流量の基準ガスが黒く太い矢印で示されるようにこの呼気測定装置700に導入されて、第5の実施の形態において説明した初期校正処理が行なわれる。
【0097】
[測定動作]
図11(B)に示すように、三方弁712を切替え、基準ガス導入管路714がどの管路とも連通しておらず、導入管路710と測定ガス導入管路722とが連通している状態とする。三方弁716を切替え、基準ガス導入管路718がどの管路とも連通していない状態とする。導入管路720にはガスは流れない。
【0098】
この状態で、基準ガス導入管路506から基準ガスを、測定ガス導入管路722から測定ガスを含む基準ガスを、それぞれこの呼気測定装置700に導入する。このとき、図11(B)を参照して、基準ガス導入管路506から基準ガスが黒く太い矢印で示されるように呼気測定装置700に導入され、同じ流量の測定ガスを含む基準ガスが白く太い矢印で示されるように呼気測定装置700に導入されて、第5の実施の形態において説明したものと同様の測定処理が行なわれる。
【0099】
[脱離動作]
図11(C)に示すように、三方弁712を切替え、導入管路710と基準ガス導入管路714とが連通し、測定ガス導入管路722がどの管路とも連通していない状態とする。三方弁716を切替え、基準ガス導入管路714と基準ガス導入管路718と導入管路720とが連通した状態とする。導入管路710にも導入管路720にも基準ガス導入管路718から導入されたガスが流れる。
【0100】
この状態で、基準ガス導入管路506及び基準ガス導入管路718から基準ガスをこの呼気測定装置700に導入する。図11(C)を参照して、基準ガス導入管路506、導入管路710及び導入管路720から基準ガスが黒く太い矢印で示されるように呼気測定装置700に導入される。基準ガスは、隔壁504及び620により形成された隔室と、隔壁504及び630により形成された隔室と、センサ522が設けられた隔室とに導入され、それぞれ排出管路508、排出管路518、排出管路724により排出される。
【0101】
この構成では、基準ガス(脱離ガス)を、効率よくセンサ522が設けられた隔室内に送込むことができるので、より早期に確実にセンサ522からターゲット分子を脱離することができる。
【0102】
<第8の実施の形態>
以下、本発明の第8の実施の形態に係る呼気測定装置について、図12を参照して説明する。図12は上述の図11に対応する上面図であり、本実施の形態に係る呼気測定装置800の内部を上方から見た上面図である。図12(A)が初期校正時の状態を、図12(B)が測定時の状態を、図12(C)が脱離時の状態をそれぞれ示す。
【0103】
この呼気測定装置800は、上述の第7の実施の形態に係る呼気測定装置600の構成に代えて、略直方体の筐体802を含む。この筐体802には、校正用センサ520が設置される隔室にガスを導入する導入管路810、及びこの隔室からガスを排出する排出管路804が設けられる。これらの管路には逆止弁が設けられる。
【0104】
筐体802には、導入管路810及び導入管路814が、それぞれこの呼気測定装置800の内部の隔壁504及び620により形成される隔室と、センサ520が設けられた隔室とにそれぞれ連通可能に設けられる。導入管路810には、三方弁812を含む導入管路系が設けられる。三方弁812は、導入管路810と導入管路814と基準ガス導入管路816とに接続されている。
【0105】
[脱離動作]
以上のような構造を有する本実施の形態に係る呼気測定装置800の動作(特に他の実施の形態と異なる三方弁の動作)について説明する。
【0106】
最初に、三方弁712,716、及び812を切替え、導入管路710,714,及び814がすべて基準ガス導入管路718または基準ガス導入管路816に接続されるように、かつ導入管路720及び810には基準ガスが導入されない状態とする。この状態で基準ガスを導入管路710、714及び814を介して呼気測定装置800内部に流し、初期校正処理を行なう。
【0107】
続いて三方弁712を切替えて測定ガスを導入管路710に導入する。測定ガスは選択透過膜632を透過してセンサ522に到達し、測定ガス中の特定ガス成分の濃度測定が行なわれる。測定動作そのものは上記実施の形態と同様である。
【0108】
測定が終了すると、図12(C)に示すように三方弁812を切替え、導入管路810及び814が基準ガス導入管路816と連通している状態とする。三方弁716を切替え、基準ガス導入管路714及び720がともに基準ガス導入管路718に連通した状態とする。
【0109】
この状態で、基準ガス導入管路816及び基準ガス導入管路718から基準ガスを呼気測定装置800に導入する。このとき、図12(C)を参照して、導入管路810及び導入管路814並びに導入管路710及び導入管路720から基準ガスが黒く太い矢印で示されるように呼気測定装置800に導入される。基準ガスは、導入管路710及び714を介して隔壁504及び630により形成された隔室に導入され、導入管路814を介して隔壁504及び620により形成された隔室に導入される。さらに、基準ガスは、導入管路720を介してセンサ522が設けられた隔室に導入され、導入管路810を介してセンサ520が設けられた隔室に導入される。
【0110】
すなわち、多くの基準ガス(脱離ガス)を、2つのセンサ520及び522に効率的に送込むことができるので、より早く、確実にセンサ520及び522からターゲット分子を脱離することができる。
【0111】
上記実施の形態では、錯体等で表面修飾したカーボンナノチューブを用いたセンサと、特定のガス成分のみを透過する選択透過膜とを組合わせている。こうした構成によって、次のような効果が生じる。例えば表面修飾した物質が2種類以上のガス成分を吸着してしまうものである場合を想定する。選択透過膜がターゲットとなる特定のガス成分のみを透過するものであれば問題はないが、選択透過膜がターゲットとなるガス成分と、別の種類のガス成分との双方を透過してしまう場合には、そのままではターゲットとなるガス成分の測定が行えない。
【0112】
しかしそうした場合でも、選択透過膜が透過するガスの内でターゲット以外のガス成分と、表面修飾した物質が吸着する物質の内でターゲット以外のガス成分とに共通のものがなければ、結果としてセンサにはターゲットのガス成分のみが吸着されることになる。したがって、ターゲットのガス成分の測定を行なうことができる。
【0113】
逆に言うと、使用する選択透過膜がターゲットとなるガス成分のみを透過するもので、それ以外のガス成分を全く透過しないものであれば、特定のガス成分のみを選択的に吸着する物質でセンサ表面を修飾する必要はない。
【0114】
今回開示された実施の形態は単に例示であって、本発明が上述した実施の形態のみに限定されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含む。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る呼気測定装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す呼気測定装置の内部を上方から見た図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る呼気測定装置の全体構成を示す斜視図である。
【図4】図2に示す呼気測定装置の内部を上方から見た図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る呼気測定装置の内部を上方から見た図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係る呼気測定装置の内部を上方から見た図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態に係る呼気測定装置の内部を上方から見た図である。
【図8】本発明の第5の実施の形態に係る呼気測定装置が備える電気回路を示す図である。
【図9】本発明の第5の実施の形態に係る呼気測定装置におけるセンサの電気抵抗値の時間変化を示す図である。
【図10】本発明の第6の実施の形態に係る呼気測定装置の内部を上方から見た図である。
【図11】本発明の第7の実施の形態に係る呼気測定装置の内部を上方から見た図である。
【図12】本発明の第8の実施の形態に係る呼気測定装置の内部を上方から見た図である。
【符号の説明】
【0116】
100、200、300、400、500、600、700,800 呼気測定装置
120、122 センサ
118、206 選択透過膜
208 反射板
114、116、214、504、620、630 隔壁
402、404 ヒータ
【技術分野】
【0001】
この発明は、人間の呼気中の特定ガス成分の濃度を測定するガス測定技術に関し、特に、呼気に含まれる特定の成分の濃度を精度高く測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の呼吸動作では、主として、吸気中の酸素が二酸化炭素と交換される。同時に、体内の水蒸気が体外に排出される。この明細書では、呼吸動作において人体に吸込まれる空気を吸気と呼び、人体から排出される空気を呼気と呼ぶ。通常は、吸気とは外気のことであり、吸気と外気とは同じ成分を有する。
【0003】
呼気中には、二酸化炭素及び水蒸気以外の、体内で産生するガス成分も含まれている。これらガス成分のうち、特定のガス成分の濃度は、体調によって特徴的に変動することが知られている。この呼気に含まれるこれら特定のガス成分を測定することにより、その人の体調(疾病又はストレス等)を診断することも可能である。このような呼気中の特定のガス成分の濃度を測定するセンサとして、カーボンナノチューブを用いたものが知られている。特許文献1は、特定の成分が二酸化炭素であって、ナノ構造体センサを用いたカプノメーター(呼気炭酸ガス濃度測定器)を開示する。このナノ構造体は、炭素、ホウ素、窒化ホウ素、窒化炭素ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、窒化ガリウム、酸化亜鉛、リン化インジウム、二流化モリブデン及び銀のいずれかの元素を含み、それによって二酸化炭素濃度を選択的に測定する。
【特許文献1】特表2007−515227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
疾病等を診断するためのガス成分として、たとえば、アセトン、メチルメルカプタン、アンモニア等が知られている。呼気中に含まれる二酸化炭素の濃度は比較的高いが、疾病等の診断に有効な、上記した成分の呼気中の濃度は低いことが多い。人間の呼気の大部分は窒素と二酸化炭素とで占められているため、疾病等の診断を行なう場合には、呼気中の濃度が低い特定のガス成分の濃度を正確に測定することが必要である。さらに、吸気は通常の場合には外気(人体外の空気)である。測定日時又は測定場所によってこの外気に含まれる特定のガス成分は異なる。そのため、呼気中のガス成分の濃度にも変動が生じ、その濃度の変化を正確に測定することはさらに困難になる。
【0005】
特許文献1に開示された測定技術を二酸化炭素以外の特定のガス成分を検出することに適用することは可能かもしれない。しかし、特許文献1に開示された測定技術のみでは、二酸化炭素よりもはるかに濃度が低い特定のガス成分を、様々な組成の外気(吸気)に対応させて、正確に検出することは困難である。
【0006】
一方、本願発明者は、上記したカーボンナノチューブの表面を特定の錯体(例えばフタロシアニン等)で修飾することにより、カーボンナノチューブが特定のガスを選択的に吸着することを見出した。錯体のような構造分子にガス分子が捕らえられると、半導体であるカーボンナノチューブから電子が錯体側に引抜かれ、カーボンナノチューブの電気抵抗が大きくなることも見出した。こうした結果を用いると、表面を特定の物質で修飾したカーボンナノチューブの電気抵抗の変化量を知ることにより、雰囲気中の特定ガスの濃度を測定することが可能になると思われる。
【0007】
しかし、もともとこうしたガスの呼気中の成分の濃度が低いため、上記した表面修飾されたカーボンナノチューブを雰囲気中に置いただけでは良好な感度を確保することがむずかしい。上に述べたように、測定結果が大気の状態の影響を受けるため、そうした影響を排除する必要もある。さらに、カーボンナノチューブの修飾の度合いを均一にすることも難しいことが予想され、センサによる測定結果のばらつきが生ずる可能性もある。呼気中の特定ガス成分の濃度を正確に測定するためには、これらの困難を解決する必要がある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、呼気中に少量含まれる特定のガス成分の濃度を精度高く測定することができるガス測定装置を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、多くの種類のガス成分を含む呼気について、呼気中に少量含まれる特定のガス成分の濃度を精度高く測定することができるガス測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の局面に係るガス測定装置は、測定対象ガス中の共通の特定ガス成分の濃度を測定する第1及び第2のガスセンサと、第1及び第2のガスセンサに別々に測定対象ガスを接触させるための接触手段と、第2のガスセンサによる測定結果を、第1のガスセンサによる測定結果を用いて補正するための補正手段とを含む。
【0011】
好ましくは、接触手段は、第1のガスセンサを外気に接触させ、第2のガスセンサを呼気に接触させるための導入手段とを含む。
【0012】
補正手段は、第1のガスセンサによる測定値を第2のガスセンサによる測定値から差引くための手段を含んでもよい。
【0013】
さらに好ましくは、ガス測定装置は、基準となる共通のガスを第1及び第2のガスセンサに同時に接触させるための手段と、第1及び第2のガスセンサに同時に共通のガスを接触させたときの、第1及び第2のガスセンサからの出力信号のレベルが所定の関係になるように第1及び第2のガスセンサの出力を校正するための校正手段をさらに含む。
【0014】
ガス測定装置は、第1及び第2のガスセンサに吸着したガス成分を脱離させるための手段をさらに含んでもよい。
【0015】
好ましくは、脱離させるための手段は、第1及び第2のガスセンサのいずれの測定結果にも影響しない基準ガスを第1及び第2のガスセンサに供給するための供給手段と、第2のガスセンサによる測定対象ガスの測定時には、基準ガスを第1のガスセンサに供給し、第2のガスセンサへは測定対象ガスを供給するように供給手段を切替えるための手段とを含む。
【0016】
本発明の第2の局面に係るガス測定装置は、内部空間を有する筐体と、内部空間を、第1の隔室、第1の隔室と離れた第2の隔室、及び第1及び第2の隔室の間に形成された第3の隔室に分離する、内部空間に形成された第1及び第2の隔壁とを含む。第1の隔壁には、第1の隔室及び第2の隔室を連通させる開口が形成されており、第2の隔壁には、第3の隔室及び第2の隔室を連通させる開口が形成されている。このガス測定装置はさらに、第2の隔壁の開口に設けられた、特定のガス成分を透過する第1の機能膜と、第1の隔室内に設けられた第1のガスセンサと、第2の隔室内に設けられた第2のガスセンサと、第3の隔室内にガスを導入するように筐体に形成されたガス導入部と、第1及び第2の隔室内からそれぞれガスを排出するように筐体に形成されたガス排出部とを含む。
【0017】
好ましくは、第1及び第2の隔室内に基準ガスを導入するように筐体に形成された基準ガス導入部をさらに含む。
【0018】
より好ましくは、第1及び第2のガスセンサは、それぞれ第1及び第2の隔室内で、第1及び第2の隔壁の開口部に臨む位置に設けられている。
【0019】
さらに好ましくは、ガス測定装置は、さらに、第3の隔室内に設けられ、第3の隔室内にガス導入部により導入されたガスを、第1及び第2の隔壁の方向に向ける反射板をさらに含む。
【0020】
ガス測定装置はさらに、第1の隔壁の開口に設けられた、特定のガス成分と付加的なガス成分との双方を透過する第2の機能膜を含んでもよい。
【0021】
本発明の第3の局面に係るガス測定装置は、測定対象ガス中の共通の特定ガス成分の濃度を測定する第1及び第2のガスセンサと、第1及び第2のガスセンサに同時に共通の測定対象ガスを接触させるための手段と、第1及び第2のガスセンサによる測定結果が所定の関係になるように、第2のガスセンサの出力を校正するための校正手段とを含む。
【0022】
本発明の第3の局面に係るガス測定装置は、外気に接触する位置に設けられる第1のガスセンサと、第2のガスセンサと、第2のガスセンサ近傍に、生体の呼気を導入するための呼気導入手段と、第2のガスセンサによる測定値を、前記第2のガスセンサによる測定値を用いて補正するための補正手段とを含む。
【0023】
本発明の第4の局面に係るガス測定装置は、第1及び第2のガスセンサと、第1及び第2のガスセンサ近傍に、生体の呼気を導入するための呼気導入手段と、呼気導入手段により導入された呼気のうち、特定ガス成分及び特定の付加的ガス成分のみを選択的に透過して第2のガスセンサに接触させるための手段と、呼気導入手段により導入された呼気のうち、付加的ガス成分のみを選択的に透過して第1のガスセンサに接触させるための手段と、第2のガスセンサによる測定値を、第1のガスセンサによる測定値を用いて補正するための補正手段とを含む。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ガス測定装置は第1及び第2のガスセンサを含み、これらに別々に測定対象ガスを接触させる。そして、その結果得られた第2のガスセンサによる測定結果を、第1のガスセンサによる測定結果を用いて補正する。そのため、単独のガスセンサで測定するときよりも測定値の精度が高くなる。
【0025】
補正の際、外気に対する第1のガスセンサの測定結果を用いて第2のガスセンサの測定結果を補正すると、外気内のガス成分の変動による測定誤差をなくすことができる。第1及び第2のガスセンサで基準ガスを測定した結果を用いて、両者の出力が一定の関係となるように(例えば等しい値になるように)第2のガスセンサの出力を校正すると、ガスセンサの製造時の性能のばらつき、経年劣化などによる誤差をなくすことができる。第2のガスセンサに特定ガス成分と付加的ガス成分との合計濃度を測定させ、第1のガスセンサによって付加的ガス成分の濃度のみを測定させることもできる。この場合、第2のガスセンサの出力を第1のガスセンサの出力で補正することにより、特定ガス成分の濃度のみを算出できる。付加的ガス成分の影響をなくすことができ、特定ガス成分の測定精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面に基づき詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの機能及び名称も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0027】
<第1の実施の形態>
[構成]
以下、本発明の第1の実施の形態に係る呼気測定装置について、図1及び図2を参照して説明する。
【0028】
図1は、本実施の形態に係る呼気測定装置100の全体の概略構成を示す斜視図である。図1に示すように、この呼気測定装置100は、一面を取外した中空の略直方体形状の中空な(内部空間を有する)筐体102と、図1における上部から筐体102に取付られる平板状の蓋部104と、筐体102の呼気上流側の一側面に設けられた、筐体102内部に測定対象ガスである人間の呼気を導入するための導入管路106と、筐体102の、導入管路106が設けられた面に対向する呼気下流側の面に設けられた排出管路110と、蓋部104に設けられた測定回路124とを含む。測定回路は、後述するように筐体102内に設けられるカーボンナノチューブからなるセンサの抵抗値変化から特定ガス成分の濃度を算出し、その結果を表示するためのものである。なお、以後の説明では、図を簡単にするために、この測定回路124は図には示さないこととする。
【0029】
導入管路106の内部には、たとえば呼気中の水蒸気を吸着するシリカゲル等が装着される。この呼気測定装置100は、呼気の導入方向に垂直な方向に筐体102に設けられた排出管路112をさらに含む。図2は、図1に示す蓋部104を取外して、図1の上方から呼気測定装置100を見た上面図である。なお、筐体102は、直方体である必要はない。さらに、この呼気測定装置100は、図示しない電気回路を備えている。センサの取付ステー及びセンサの電気配線は図示していない。
【0030】
図1及び図2に示すように、導入管路106には脱着可能なマウスピース108がさらに設けられる。たとえば、このマウスピース108の開放端を利用者が口に咥える。このマウスピース108は、利用者ごとに取替える使い捨てのものとすることも好ましい。筐体102の内部には、2枚の隔壁114及び隔壁116が設けられる。隔壁114の外側の外気に接触する位置にセンサ120が設けられ、筐体102と隔壁116とで形成される隔室に、センサ120と同じ仕様のセンサ122が設けられる。なお、隔壁116には、穴部116Aが設けられる。隔壁116の穴部116Aのセンサ122側の開口部分及び筐体102内部の排出管路112側の開口部分には、選択透過膜118が設けられる。この選択透過膜118は、センサ122で検出したいターゲット分子(たとえばアセトン)のみを透過させる機能膜である。排出管路110及び排出管路112は、この呼気測定装置100の外側から外気を進入させないように逆止弁を備える。なお、本実施の形態では、選択透過膜118は穴部116Aの部分と、排出管路112の開口部分との両方に設けられているが、少なくとも隔壁116のセンサ122側に設けられていれさえすればよい。以下においては、選択透過膜118は、アセトンを透過する機能膜であって、センサ120及びセンサ122は、アセトンが吸着されると電気抵抗値が変化するセンサであるとして説明する。
【0031】
センサ120及びセンサ122は、同じ仕様のセンサである。センサ120は吸気用(外気基準用)センサ、センサ122は呼気用(測定用)センサである。センサ120及びセンサ122は、錯体で表面修飾したカーボンナノチューブを用いたセンサであって、測定対象の呼気に含まれるガスの濃度に従ってその表面にそのガスの分子が付着することにより電気抵抗値が変化することを利用して、ガスの濃度を検出するものである。ここでは、選択透過膜118を設けていることにより、選択透過膜118により透過される特定成分のガス濃度が測定できる。センサ120は外気にさらされているため、各種のガス成分が付着する可能性があるが、ここではセンサ120及び122の双方とも、同じ特定成分については吸着能が高く、それ以外のものについては高くないことを想定している。
【0032】
呼気測定装置100は、定電圧電源を備え、センサ120及びセンサ122には、常に一定の電圧が印加されている。測定ガスに含まれる特定成分がセンサ120及びセンサ122に吸着されるとセンサ120及びセンサ122の電気抵抗値が変化する。電気抵抗値が変化するとセンサ120及びセンサ122のそれぞれに流れる電流値が変化するので、この電流値を測定して、電気抵抗値の変化を測定できる。
【0033】
センサ122を用いて呼気中の特定ガスの濃度変化を測定するにあたり、センサ120の出力を吸気(外気)中のガスの濃度を表すものとして、センサ122による測定結果(呼気中の特定ガスの濃度)−センサ120による測定結果(吸気、すなわち基準となる外気中の特定ガスの濃度)を、人間の体内から排出された呼気に対応するものとしてとらえる。
【0034】
[動作]
以上のような構造を有する呼気測定装置100の動作について説明する。
【0035】
利用者が息を吸込み、マウスピース108を口に咥えて口から吐出す。このとき、選択透過膜118により空気の円滑な流れが阻止されるので、ある程度の圧力を持って呼気を吐出す必要がある。この結果、矢印A(0)で示されるように呼気が呼気測定装置100の内部に導入される。導入管路106に設けられたシリカゲル等の吸湿剤及び中空糸膜等で水蒸気の一部及び測定対象外のガスがほぼ除去されて、矢印A(1)で示されるように呼気が呼気測定装置100内に流入する。呼気の一部は、隔壁116に設けられた穴部116Aを通りさらに選択透過膜118を通って、矢印A(2)及び矢印A(3)で示されるようにセンサ122に到達する。このとき、選択透過膜118によりアセトンが透過されているので、センサ122に到達する呼気にはアセトン以外の余計な成分は含まれない。また、圧力をかけて呼気を吐出すので、センサ122に到達する呼気はある流速を持っている。その結果、効率よくセンサ122による特定ガス成分の濃度測定を行なうことが可能になる。呼気はこの後、矢印A(4)及びA(5)のように流れ、排出管路112から外部に排出される。なお、選択透過膜118で透過されないガス成分及び呼気は、矢印A(6)及び矢印A(7)のように流れて外部に排出される。排出管路110及び排出管路112には、逆止弁が設けられているので、通常、外気が呼気測定装置100の内部に侵入することはない。
【0036】
一方、センサ120は、この呼気測定装置100の筐体102に設けられた隔壁114のさらに外側に設けられているので、外気に曝されている状態である。このため、吸気における特定ガス成分(ここでは吸気中のアセトン)の濃度はセンサ120の電気抵抗値の変化量により表され、呼気における特定ガス成分(ここでは呼気中のアセトン)の濃度はセンサ122の電気抵抗値の変化量により表される。センサ122の電気抵抗値の変化量とセンサ120の電気抵抗値の変化量との差分が、この呼気に含まれる特定ガス成分であるアセトンに起因する差である。すなわち、この電気抵抗値の変化量の差分と、利用者の人体内で発生しているアセトンの量との間に相関関係が成立する。
【0037】
選択透過膜118がアセトンを透過させる膜であって、アセトンがセンサに多く吸着するほど電気抵抗値が大きく変化する。したがって、電気抵抗値の変化量が大きくなるとアセトンが多く検出されていることを示す。
【0038】
なお、この場合、測定場所又は測定日時が異なると、外気(吸気)自体に含まれるターゲット分子(ここではアセトン)の濃度が異なってくる。もし、センサ122のみであってセンサ120を備えない場合には、人体から排出されるターゲット分子の量が、外気中のそのガス成分の量によって変化してしまい、ターゲット分子の濃度の測定値が誤差を含むことになる。しかし、本実施の形態に係る呼気測定装置100では、その場所におけるその測定日時の外気(吸気)をセンサ120で同時に測定してそれを基準にセンサ122による測定結果を補正するので、常に外気の変化の影響を考慮した形で、呼気中に含まれるターゲット分子の濃度を測定することができる。
【0039】
なお、測定のための構成と、センサ120の測定結果によるセンサ122の測定結果の補正については、以下で説明する各実施の形態と共通である。その説明は第5の実施の形態に関連して説明するので、ここでは詳細については述べない。
【0040】
以上のようにして、本実施の形態に係る呼気測定装置によると、呼気の測定時には、選択透過膜を用いてターゲット分子を選択して測定用センサに到達させ、測定用センサでその濃度を電気抵抗の変化量の形で測定する。同時に、吸気(外気)中のターゲット分子の濃度を同じ仕様の基準用センサで電気抵抗の変化量の形で測定する。これら測定用センサと基準用センサとの出力の差分を、人体から排出されるターゲット分子の濃度としてとらえるので、低濃度のターゲット分子を精度高く検出することができる。
【0041】
なお、この第1の実施の形態では、外気を測定するためにセンサ120を用いている。このセンサは外気に対して露出するように設けられているが、本発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば、図2においてセンサ120が収容されている部分に、開口部を有する蓋を設けるようにしてもよい。またこの蓋の開口部分に、選択透過膜118と同じく、特定のガス成分のみを透過する選択透過膜を設けるようにしてもよい。そのような構成とすることによって、センサ120の出力は外気中のアセトンの濃度をより忠実に反映することになり、特定のガス成分に関するセンサ122の測定結果の精度をさらに高めることができる。
【0042】
<第2の実施の形態>
[構成]
以下、本発明の第2の実施の形態に係る呼気測定装置について、図3及び図4を参照して説明する。図3は上述の図1に対応し、図4は上述の図2に対応する。
【0043】
図3は、本実施の形態に係る呼気測定装置200の全体の概略構成を示す斜視図であり、図4は、図3に示す蓋部104を取外して、図3の上方から呼気測定装置200を見た上面図である。
【0044】
図3及び図4に示すように、本実施の形態に係る呼気測定装置200は、2つの隔壁により内部に形成された3つの隔室を有する筐体202と、隔壁116と同様の穴部214Aを備えた隔壁214とを含む。さらに、この呼気測定装置200の中央の隔室には、導入管路106から筐体202内部に導入され、排出管路110に向けて流れる呼気を、センサ120及びセンサ122の方向に押戻すための反射板208が設けられている。乱流が生じて拡販されて、均一なガスがセンサに導入されやすくなる。センサ120及びセンサ122は、筐体202の内部であって、中央の隔室を挟んで向かい合う二つの隔室内にそれぞれ設けられている。
【0045】
図4に示すように、この呼気測定装置200は、図の導入管路106及び排出管路110を結ぶ線を中心として上下に線対称な構成を備える。反射板208は、矢印A(1)で示されるように流れてきた呼気を矢印A(2)及び矢印A(8)の2方向に反射させて呼気を効率的にセンサ120及びセンサ122に到達させる。矢印A(2)の方向には隔壁116の穴部116A及び選択透過膜118が設けられ、矢印A(8)の方向には隔壁214の穴部214A及び選択透過膜206が設けられる。
【0046】
選択透過膜118と選択透過膜206とでは、膜を透過するターゲット分子が異なる。たとえば、選択透過膜118は、アセトンと水蒸気を選択的に透過させ、選択透過膜206は水蒸気のみを選択的に透過させる。つまり、選択透過膜118は、選択透過膜206とは共通のガス(水蒸気)を透過させるが、選択透過膜はさらに付加的なガス(アセトン)をも透過させる。センサ122を用いて呼気中の特定ガス(ここではアセトンとする)の濃度変化を測定するにあたり、センサ120の出力を呼気に含まれる水蒸気として、呼気のアセトンと水蒸気とによるセンサ122の電気抵抗値の変化量と、呼気の水蒸気によるセンサ120の電気抵抗値の変化量との差分を、人間の体内から排出された特定成分のガス(ターゲット分子であるアセトン)によるものとして考える。つまり、センサ122の電気抵抗値の変化量からセンサ120の電気抵抗値の変化量を差引くと、アセトンの濃度が算出できる。
【0047】
[動作]
以上のような構造を有する呼気測定装置200は以下のように動作する。
【0048】
利用者がマウスピース108を口に咥えて呼気を口から吐出すと、矢印A(0)で示されるように呼気が呼気測定装置200の内部に導入される。導入管路106内のシリカゲル等の吸湿剤により水蒸気の一部は除去されて、矢印A(1)で示されるように呼気が呼気測定装置100内を流れ、反射板208に当たる。
【0049】
反射板208に当たって反射した呼気の一部は、隔壁116に設けられた穴部116Aを通りさらに選択透過膜118を通って、矢印A(2)及び矢印A(3)で示されるようにセンサ122に到達する。選択透過膜118を透過したガスは、主としてアセトン、窒素及び水蒸気からなる。
【0050】
反射板208に当たって反射した呼気の別の一部は、隔壁214に設けられた穴部214Aを通り、さらに選択透過膜206を通って、矢印A(9)及び矢印A(10)で示されるようにセンサ120に到達する。ここで、選択透過膜206を透過したガスは、主として窒素及び水蒸気からなる。
【0051】
なお、選択透過膜118でも選択透過膜206でも透過されない呼気のガス成分は、残りの呼気とともに矢印A(6)及び矢印A(7)のように流れ、外部に排出される。
【0052】
呼気における特定ガス成分であるアセトン及び水蒸気によるセンサ120の電気抵抗値の変化量と、呼気における水蒸気によるセンサ122の電気抵抗値の変化量との差分が、この呼気に含まれる特定ガス成分であるアセトンの濃度を示すものとなる。
【0053】
本実施の形態では、選択透過膜118がアセトン及び水蒸気を透過させる膜であり、選択透過膜206が水蒸気を透過させる膜である。アセトンがセンサに多く吸着するほど電気抵抗値が大きく変化する。その結果、検出されるアセトン濃度が高くなる。
【0054】
本実施の形態では、外気(吸気)自体に含まれる水蒸気の濃度に変動があってもその影響を排除することができる。
【0055】
すなわち、本実施の形態に係る呼気測定装置200では、呼気を2種類の選択透過膜を用いて透過させて、2個のセンサでそれぞれその電気抵抗値の変化量を測定している。そのため、リアルタイムに水蒸気の影響を補正しながら、呼気中に含まれるターゲット分子の濃度を測定することができる。
【0056】
以上のようにして、本実施の形態に係る呼気測定装置によると、呼気の測定時には、透過するガスの種類が異なる選択透過膜を少なくとも2種類用いて2つのセンサに到達させてターゲットガス成分の濃度を測定する。それらのセンサの電気抵抗値の変化量の差分に基づいて、利用者の呼気中のターゲット分子の濃度を測定する。その結果、低濃度のターゲット分子でも精度高く検出することができる。さらに、選択透過膜を適切に選定することにより、検出対象の呼気に含まれるガス成分を考慮しながら、検出したいガスの選択性を高めることができる。
【0057】
<第3の実施の形態>
[構成]
以下、本発明の第3の実施の形態に係る呼気測定装置について、図5を参照して説明する。図5は上述の図2又は図4に対応する。
【0058】
図5は、本実施の形態に係る呼気測定装置300の蓋部104を取外して、上方から呼気測定装置300を見た上面図である。
【0059】
本実施の形態に係る呼気測定装置300は、前述の第2の実施の形態に係る呼気測定装置200の筐体202とは異なり、導入管路106側の側面に形成され、筐体302と隔壁214とで形成される隔室と、筐体302と隔壁116とで形成される隔室とにそれぞれ連通した、外部から気体をこれら隔室内に導入するための導入管路304及び導入管路306とを有する。導入管路304及び導入管路306には逆止弁が設けられる。本実施の形態では、導入管路304及び導入管路306により隔室内に導入される気体は窒素である。
【0060】
以上のような構造を有する呼気測定装置300の動作について説明する。
【0061】
最初に、導入管路304及び導入管路306から基準ガスである窒素ガスをこの呼気測定装置300に導入する。なお、導入管路106が逆止弁を備えない場合には、導入管路304及び導入管路306に加えて導入管路106から基準ガスを導入することも好ましい。このとき、この基準ガスである窒素ガスの濃度は、センサ120及びセンサ122の分解能に鑑み以下に示す初期校正を十分に行なうことができるほど高い純度であるとする。
【0062】
導入管路304から送込まれた基準ガスである窒素ガスは、矢印A(12)及び矢印A(13)に示すように流れて、センサ120に到達する。導入管路306から送込まれた基準ガスである窒素ガスは、矢印A(14)及び矢印A(15)に示すように流れて、センサ122に到達する。ここで、センサ120及びセンサ122は同じ仕様のセンサであって、定電圧電源により一定の電圧が印加されている。このため、同じ成分の基準ガスである窒素ガスに接触したセンサ120及びセンサ122が検出する値は、同じ濃度を示すものとなるはずである。
【0063】
しかし、センサの個体差、経時変化又は後述する脱離状態によって、これらセンサの電気抵抗値は一般には異なる。基準ガスをこの呼気測定装置300に導入した状態で、センサ120の電気抵抗値から得られる特定ガス成分の濃度及びセンサ122の電気抵抗値から得られる特定ガス成分の濃度が同じ値になるように、差動増幅器を備えた初期校正のための電気回路を用いてセンサ出力回路のゲインを調整する。
【0064】
初期校正の後、導入管路304及び導入管路306からの基準ガスの導入を止めて、利用者がマウスピース108を口に咥えて呼気を吐出し、呼気内の特定ガス成分の濃度を測定する。導入管路304及び導入管路306に設けられた逆止弁により測定対象の呼気ガスがこれらの導入管路304及び導入管路306から漏れ出すことはない。
【0065】
以上のようにして、本実施の形態に係る呼気測定装置によると、呼気の測定前の初期校正として、基準ガスを2つのセンサに到達させて同じ濃度値が得られるようにセンサ出力を校正する。それらのセンサの初期校正後に、利用者から排出される特定ガス成分の濃度を測定するので、センサの個体差があっても、検出したい特定ガス成分の濃度を精度高く測定することができる。
【0066】
本実施の形態では、以下のようにしてセンサ120及び122から特定ガス成分の脱離処理を行なう。
【0067】
脱離処理とは、センサ120及びセンサ122が吸着したターゲット分子をセンサから脱離させて、センサを測定前の初期状態に戻す処理である。本実施の形態では、脱離は、ターゲット分子を含まないガス、たとえば窒素ガスをセンサ周辺に流すことにより行なわれる。すなわち、利用者によるターゲットガスの測定が終了すると、次の測定前に(次の初期校正前に)、導入管路304及び導入管路306から脱離ガス(ここでは窒素ガス)をこの呼気測定装置300に導入して、センサ120及びセンサ122から測定時に吸着したターゲット分子を脱離させる。
【0068】
これにより、ある利用者の呼気の測定後に、センサを初期状態に戻すことができ、繰返して呼気濃度を精度高く測定することができる。
【0069】
<第4の実施の形態>
以下、本発明の第4の実施の形態に係る呼気測定装置について、図6を参照して説明する。図6は上述の図5に対応する。
【0070】
図6は、本実施の形態に係る呼気測定装置400の蓋部104を取外して、上方から呼気測定装置400を見た上面図である。
【0071】
本実施の形態に係る呼気測定装置400は、前述の第3の実施の形態に係る呼気測定装置300の構成に加えて、センサ120及びセンサ122の近傍にそれぞれ設けられ、これらセンサからターゲットガス分子を脱離させるためのヒータ402及びヒータ404を含む。
【0072】
ヒータ402及びヒータ404は、脱離処理時に通電されるとセンサ120及び122を加熱して、これらを活性化させる。その結果、脱離処理に必要な時間を短くできる。このため、利用者が多い場合の測定待ち時間を短くすることができる。
【0073】
<第5の実施の形態>
以下、本発明の第5の実施の形態に係る呼気測定装置について、図7〜図9を参照して説明する。図7は上述の図2、図4、図5及び図6に対応する、本実施の形態に係る呼気測定装置500の内部を上方から見た上面図である。図7(A)が初期校正時の状態を、図7(B)が測定時の状態を示す。
【0074】
図7(A)及び図7(B)に示すように、この呼気測定装置500は、略直方体の筐体502と、筐体502の内部に2つの隔室を形成するための隔壁504とを含む。図の上方側の隔室には校正用センサ520が、図の下方側の隔室には測定用センサ522が、それぞれ設けられる。
【0075】
筐体502には、図の上方側の隔室に連通した、基準ガス導入管路506及び排出管路508が設けられるとともに、図の下方側の隔室に連通した、導入管路510及び排出管路518が設けられる。これらの管路には逆止弁が設けられる。さらに、この呼気測定装置500の導入管路510には、三方弁512を介して、基準ガス導入管路514と測定ガス導入管路516とが設けられる。この三方弁512は、図7(A)に示すように基準ガスを呼気測定装置500に導入する状態と、図7(B)に示すように測定ガスを呼気測定装置500に導入する状態とを切替えるための弁である。なお、図7(A)に示す状態と図7(B)に示す状態とを切替えることができる構造であれば、三方弁に限定されない。三方弁を図示した図7において、管路が接続されていない三方弁の接続口にはキャップが嵌められており、ガスが漏れることはない。
【0076】
この呼気測定装置500は、図7では示していない、以下のような補正用(初期校正用)の電気回路を備える。この電気回路は、図1に示す測定回路124に対応するもののうち、電気信号の測定に関する部分である。
【0077】
図8に示すように、この電気回路は、定電圧電源150と、校正用センサ520の両端が入出力端子に接続された差動増幅器152と、測定用センサ522の両端が入出力端子に接続された差動増幅器154と、ゲイン調整用の差動増幅器156及び差動増幅器158と、差動増幅器156及び差動増幅器158からの出力を受けて入力信号の差を出力する差動増幅器160とから構成される。
【0078】
校正用センサ520及び測定用センサ522は、定電圧電源150から供給される電源電圧を電気抵抗Rで除算した電流値が流れるように定電流駆動される。校正用センサ520及び測定用センサ522の抵抗値が変化するとその変化に応じた電圧が差動増幅器152及び差動増幅器154から出力される。
【0079】
本実施の形態に係る呼気測定装置500においては、校正用センサ520及び測定用センサ522についての初期状態において出力される電圧値が異なると測定されるガスの検出に誤差が生じる。このため、同じ基準ガス(ここでは窒素ガスとする)が校正用センサ520及び測定用センサ522に触れているとき差動増幅器160からの出力が0になるように、差動増幅器156及び差動増幅器158のゲインを調整する。なお、この呼気測定装置500は、差動増幅器160からの出力を操作者に報知する出力部及び差動増幅器156及び差動増幅器158のゲイン調整を行なう入力部(調整つまみ等)を備えている。
【0080】
以上のような構造を有する呼気測定装置500の動作について説明する。利用者が呼気をこの呼気測定装置500に吹込む前に、三方弁512を図7(A)の状態に切替える。このとき、三方弁512により、基準ガス導入管路514と導入管路510とが連通している状態であって、測定ガス導入管路516はどの管路とも連通していない状態にされる。この状態で、基準ガス導入管路506及び基準ガス導入管路514から基準ガス(ここでは窒素ガス)をこの呼気測定装置500に導入する。このとき、図7(A)に示すように、黒く太い矢印で示されるように、呼気測定装置500の上側の隔室に設けられた校正用センサ520にも下方側の隔室に設けられた測定用センサ522にも基準ガスが到達する。このとき、基準ガス導入管路506にも導入管路510にも同じ流量の基準ガスが流れるように基準ガスの流量が調整される。
【0081】
この状態で、初期校正処理として、操作者は、図8に示す差動増幅器160からの出力が0になるように調整つまみを操作して差動増幅器156及び差動増幅器158のゲインを調整する。図9(A)に校正用センサ520の電気抵抗値の時間変化を、図9(B)に測定用センサ522の電気抵抗値の時間変化を、図9(C)に測定用センサ522の電気抵抗値と校正用センサ520の電気抵抗値との差分の時間変化を、それぞれ示す。初期校正処理が完了したのは時間0であるとする。このときの縦軸切片が図9(A)と図9(B)とで一致していることは、初期校正が正しく行なわれていることを示す。
【0082】
予め、利用者の呼気をテドラーバッグに収集し、基準ガス(窒素)とともにこの呼気測定装置500の三方弁512に供給可能に接続しておく。初期校正の後、時間T(S)を経過するまでは三方弁512を切替えないで図7(A)の状態で校正用センサ520及び測定用センサ522に同流量の基準ガスを流す。時間T(S)において、三方弁512を図7(B)の状態に切替えるとともに、利用者の呼気と基準ガスとを、三方弁512を介して導入管路510へ送込む。三方弁512を図7(B)の状態に切替える。三方弁512により、基準ガス導入管路514はどの管路とも連通せず、測定ガス導入管路516と導入管路510とが連通した状態となる。
【0083】
図7(B)の黒く太い矢印で示されるように、呼気測定装置500の上側の隔室に設けられた校正用センサ520に基準ガスが到達し、白く太い矢印で示されるように、呼気測定装置500の下側の隔室に設けられた測定用センサ522に測定ガスを含む基準ガスが到達する。このとき、基準ガス導入管路506にも導入管路510にも同じ流量のガスが流れるように基準ガスの流量及び測定ガスを含む基準ガスの流量が調整される。
【0084】
呼気測定の開始時間である時間T(S)から終了時間である時間T(E)の間においては、図9(A)に示すように、校正用センサ520の電気抵抗値は、基準ガス中の何らかの気体分子が付着するため、時間とともに緩やかに増加するように変化する。一方、図9(B)に示すように測定用センサ522の電気抵抗値は、校正用センサ520と同じように時間とともに緩やかに増加することに加え、測定ガスに含まれる特定ガス成分の存在に起因する増加を示す。その結果、図9(C)に示されるように、両者の差((B)−(A))に対応する信号が、補正後の信号として差動増幅器160から出力される。この信号のうち、図9(C)において、信号がおおよそ安定している時間T(2)〜T(3)の間の信号が測定値として決定される。
【0085】
以上のように、本実施の形態に係る呼気測定装置500によると、(1)同じ流量の基準ガス(窒素ガス)を2つのセンサに流して初期校正(差動出力値が0になるようにゲイン調整)することにより、センサ間の個体差の影響が測定値に現れないようにし、(2)測定時においては、同じ流量の基準ガスを校正用センサに流しながら測定ガスを含む基準ガスを測定用センサに流して、測定用センサの測定値と校正用センサの測定値の差分を最終測定値とした。この結果、センサ間の個体差の影響も、測定時の外乱(外気の変動)の影響も受けることなく、精度高く呼気に含まれる特定ガスを測定することができる。
【0086】
なお、この第5の実施の形態でも脱離処理を行なう。この脱離処理においては、図7(B)に示す状態から、図7(A)に示すように三方弁512を切替えて基準ガスを測定用センサ522に到達させる。これにより、測定用センサ522が吸着した特定ガスのターゲット分子がセンサから脱離し、センサを測定前の初期状態に戻すことができる。さらに、第4の実施の形態のように、センサ近傍にヒータを設けることも脱離処理を促進させる点で好ましい。
【0087】
<第6の実施の形態>
以下、本発明の第6の実施の形態に係る呼気測定装置について、図10を参照して説明する。図10は上述の図7に対応し、本実施の形態に係る呼気測定装置600の内部を上方から見た上面図である。図10(A)が初期校正時の状態を、図10(B)が測定時の状態を示す。
【0088】
図10(A)及び図10(B)に示すように、この呼気測定装置600は、上述の第5の実施の形態に係る呼気測定装置500の構成に代えて、略直方体の筐体602を含む。この筐体602には、この呼気測定措置600の内部に3つの隔室を形成するために、図7に示す隔壁504に加えて、隔壁504の両側にそれぞれ設けられた隔壁620及び隔壁630を含む。隔壁620は穴部620Aを有し、さらにセンサ520側から穴部620Aを覆うように選択透過膜622が設けられる。隔壁630は穴部630Aを有し、さらにセンサ522側から穴部630Aを覆うように選択透過膜632が設けられる。基準ガス導入管路506及び排出管路508は隔壁504及び620により形成される隔室内に開口する位置に設けられ、基準ガス導入管路510及び排出管路518は隔壁504及び630により形成される隔室内に開口する位置に設けられる。
【0089】
この第6の実施の形態にかかる呼気測定装置600の動作は、第5の実施の形態にかかるものと同様である。ただし、センサ520に到達するガスが選択透過膜622を透過したものであり、センサ522に到達するガスが選択透過膜632を透過したものである点が異なる。
【0090】
本実施の形態に係る呼気測定装置600は、第5の実施の形態に係る呼気測定装置500の効果に加えて、第1の実施の形態に係る呼気測定装置100、第2の実施の形態に係る呼気測定装置200及び第3の実施の形態に係る呼気測定装置300と同様に、選択透過膜の選定により検出したいガスの選択性を高めることができる。
【0091】
<第7の実施の形態>
以下、本発明の第7の実施の形態に係る呼気測定装置について、図11を参照して説明する。図11は上述の図10に対応する、本実施の形態に係る呼気測定装置700の内部を上方から見た上面図である。図11(A)が初期校正時の状態を、図11(B)が測定時の状態を、図11(C)が脱離時の状態をそれぞれ示す。
【0092】
この呼気測定装置700は、上述の第6の実施の形態に係る呼気測定装置600の構成に代えて、略直方体の筐体702を含む。この筐体702には、測定用センサ522が設置される隔室からガスを排出する排出管路724が設けられる。この排出管路724には逆止弁が設けられる。さらに、この呼気測定装置700の導入管路710には、2個の三方弁712及び三方弁716を含む導入管路系が設けられる。
【0093】
筐体702には、導入管路710及び導入管路720が、それぞれこの呼気測定装置700の内部の隔壁504と隔壁620とにより形成される隔室内と、隔壁504と隔壁630とにより形成される隔室内とに連通可能に設けられる。三方弁712は、導入管路710と基準ガス導入管路714と測定ガス導入管路722とに接続されている。三方弁716は、導入管路720と基準ガス導入管路714と基準ガス導入管路718とに接続されている。
【0094】
[初期校正動作]
以上のような構造を有する本実施の形態に係る呼気測定装置700の動作(特に他の実施の形態と異なる三方弁の動作)について説明する。
【0095】
図11(A)に示すように、三方弁712を切替え、導入管路710と基準ガス導入管路714とが連通し、測定ガス導入管路722がどの管路とも連通していない状態とする。三方弁716を切替え、基準ガス導入管路714と基準ガス導入管路718とが連通している状態し、導入管路720がどの管路とも連通していない状態にとする。この状態では、導入管路720にはガスは流れない。
【0096】
この状態で、基準ガス導入管路506及び基準ガス導入管路718から基準ガスを流し、呼気測定装置700に導入する。図11(A)を参照して、基準ガス導入管路506及び導入管路710から同じ流量の基準ガスが黒く太い矢印で示されるようにこの呼気測定装置700に導入されて、第5の実施の形態において説明した初期校正処理が行なわれる。
【0097】
[測定動作]
図11(B)に示すように、三方弁712を切替え、基準ガス導入管路714がどの管路とも連通しておらず、導入管路710と測定ガス導入管路722とが連通している状態とする。三方弁716を切替え、基準ガス導入管路718がどの管路とも連通していない状態とする。導入管路720にはガスは流れない。
【0098】
この状態で、基準ガス導入管路506から基準ガスを、測定ガス導入管路722から測定ガスを含む基準ガスを、それぞれこの呼気測定装置700に導入する。このとき、図11(B)を参照して、基準ガス導入管路506から基準ガスが黒く太い矢印で示されるように呼気測定装置700に導入され、同じ流量の測定ガスを含む基準ガスが白く太い矢印で示されるように呼気測定装置700に導入されて、第5の実施の形態において説明したものと同様の測定処理が行なわれる。
【0099】
[脱離動作]
図11(C)に示すように、三方弁712を切替え、導入管路710と基準ガス導入管路714とが連通し、測定ガス導入管路722がどの管路とも連通していない状態とする。三方弁716を切替え、基準ガス導入管路714と基準ガス導入管路718と導入管路720とが連通した状態とする。導入管路710にも導入管路720にも基準ガス導入管路718から導入されたガスが流れる。
【0100】
この状態で、基準ガス導入管路506及び基準ガス導入管路718から基準ガスをこの呼気測定装置700に導入する。図11(C)を参照して、基準ガス導入管路506、導入管路710及び導入管路720から基準ガスが黒く太い矢印で示されるように呼気測定装置700に導入される。基準ガスは、隔壁504及び620により形成された隔室と、隔壁504及び630により形成された隔室と、センサ522が設けられた隔室とに導入され、それぞれ排出管路508、排出管路518、排出管路724により排出される。
【0101】
この構成では、基準ガス(脱離ガス)を、効率よくセンサ522が設けられた隔室内に送込むことができるので、より早期に確実にセンサ522からターゲット分子を脱離することができる。
【0102】
<第8の実施の形態>
以下、本発明の第8の実施の形態に係る呼気測定装置について、図12を参照して説明する。図12は上述の図11に対応する上面図であり、本実施の形態に係る呼気測定装置800の内部を上方から見た上面図である。図12(A)が初期校正時の状態を、図12(B)が測定時の状態を、図12(C)が脱離時の状態をそれぞれ示す。
【0103】
この呼気測定装置800は、上述の第7の実施の形態に係る呼気測定装置600の構成に代えて、略直方体の筐体802を含む。この筐体802には、校正用センサ520が設置される隔室にガスを導入する導入管路810、及びこの隔室からガスを排出する排出管路804が設けられる。これらの管路には逆止弁が設けられる。
【0104】
筐体802には、導入管路810及び導入管路814が、それぞれこの呼気測定装置800の内部の隔壁504及び620により形成される隔室と、センサ520が設けられた隔室とにそれぞれ連通可能に設けられる。導入管路810には、三方弁812を含む導入管路系が設けられる。三方弁812は、導入管路810と導入管路814と基準ガス導入管路816とに接続されている。
【0105】
[脱離動作]
以上のような構造を有する本実施の形態に係る呼気測定装置800の動作(特に他の実施の形態と異なる三方弁の動作)について説明する。
【0106】
最初に、三方弁712,716、及び812を切替え、導入管路710,714,及び814がすべて基準ガス導入管路718または基準ガス導入管路816に接続されるように、かつ導入管路720及び810には基準ガスが導入されない状態とする。この状態で基準ガスを導入管路710、714及び814を介して呼気測定装置800内部に流し、初期校正処理を行なう。
【0107】
続いて三方弁712を切替えて測定ガスを導入管路710に導入する。測定ガスは選択透過膜632を透過してセンサ522に到達し、測定ガス中の特定ガス成分の濃度測定が行なわれる。測定動作そのものは上記実施の形態と同様である。
【0108】
測定が終了すると、図12(C)に示すように三方弁812を切替え、導入管路810及び814が基準ガス導入管路816と連通している状態とする。三方弁716を切替え、基準ガス導入管路714及び720がともに基準ガス導入管路718に連通した状態とする。
【0109】
この状態で、基準ガス導入管路816及び基準ガス導入管路718から基準ガスを呼気測定装置800に導入する。このとき、図12(C)を参照して、導入管路810及び導入管路814並びに導入管路710及び導入管路720から基準ガスが黒く太い矢印で示されるように呼気測定装置800に導入される。基準ガスは、導入管路710及び714を介して隔壁504及び630により形成された隔室に導入され、導入管路814を介して隔壁504及び620により形成された隔室に導入される。さらに、基準ガスは、導入管路720を介してセンサ522が設けられた隔室に導入され、導入管路810を介してセンサ520が設けられた隔室に導入される。
【0110】
すなわち、多くの基準ガス(脱離ガス)を、2つのセンサ520及び522に効率的に送込むことができるので、より早く、確実にセンサ520及び522からターゲット分子を脱離することができる。
【0111】
上記実施の形態では、錯体等で表面修飾したカーボンナノチューブを用いたセンサと、特定のガス成分のみを透過する選択透過膜とを組合わせている。こうした構成によって、次のような効果が生じる。例えば表面修飾した物質が2種類以上のガス成分を吸着してしまうものである場合を想定する。選択透過膜がターゲットとなる特定のガス成分のみを透過するものであれば問題はないが、選択透過膜がターゲットとなるガス成分と、別の種類のガス成分との双方を透過してしまう場合には、そのままではターゲットとなるガス成分の測定が行えない。
【0112】
しかしそうした場合でも、選択透過膜が透過するガスの内でターゲット以外のガス成分と、表面修飾した物質が吸着する物質の内でターゲット以外のガス成分とに共通のものがなければ、結果としてセンサにはターゲットのガス成分のみが吸着されることになる。したがって、ターゲットのガス成分の測定を行なうことができる。
【0113】
逆に言うと、使用する選択透過膜がターゲットとなるガス成分のみを透過するもので、それ以外のガス成分を全く透過しないものであれば、特定のガス成分のみを選択的に吸着する物質でセンサ表面を修飾する必要はない。
【0114】
今回開示された実施の形態は単に例示であって、本発明が上述した実施の形態のみに限定されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含む。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る呼気測定装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す呼気測定装置の内部を上方から見た図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る呼気測定装置の全体構成を示す斜視図である。
【図4】図2に示す呼気測定装置の内部を上方から見た図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る呼気測定装置の内部を上方から見た図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係る呼気測定装置の内部を上方から見た図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態に係る呼気測定装置の内部を上方から見た図である。
【図8】本発明の第5の実施の形態に係る呼気測定装置が備える電気回路を示す図である。
【図9】本発明の第5の実施の形態に係る呼気測定装置におけるセンサの電気抵抗値の時間変化を示す図である。
【図10】本発明の第6の実施の形態に係る呼気測定装置の内部を上方から見た図である。
【図11】本発明の第7の実施の形態に係る呼気測定装置の内部を上方から見た図である。
【図12】本発明の第8の実施の形態に係る呼気測定装置の内部を上方から見た図である。
【符号の説明】
【0116】
100、200、300、400、500、600、700,800 呼気測定装置
120、122 センサ
118、206 選択透過膜
208 反射板
114、116、214、504、620、630 隔壁
402、404 ヒータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象ガス中の共通の特定ガス成分の濃度を測定する第1及び第2のガスセンサと、
前記第1及び第2のガスセンサに別々に測定対象ガスを接触させるための接触手段と、
前記第2のガスセンサによる測定結果を、前記第1のガスセンサによる測定結果を用いて補正するための補正手段とを含む、ガス測定装置。
【請求項2】
前記接触手段は、
前記第1のガスセンサを外気に接触させ、かつ前記第2のガスセンサを呼気に接触させるための導入手段とを含む、請求項1に記載のガス測定装置。
【請求項3】
前記補正手段は、前記第1のガスセンサによる測定値を前記第2のガスセンサによる測定値から差引くための手段を含む、請求項1又は請求項2に記載のガス測定装置。
【請求項4】
基準となる共通のガスを前記第1及び第2のガスセンサに同時に接触させるための手段と、
前記第1及び第2のガスセンサに同時に前記共通のガスを接触させたときの、前記第1及び第2のガスセンサからの出力信号のレベルが所定の関係になるように前記第1及び第2のガスセンサの出力を校正するための校正手段をさらに含む、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のガス測定装置。
【請求項5】
前記第1及び第2のガスセンサに吸着したガス成分を脱離させるための手段をさらに含む、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のガス測定装置。
【請求項6】
前記脱離させるための手段は、
前記第1及び第2のガスセンサのいずれの測定結果にも影響しない基準ガスを前記第1及び第2のガスセンサに供給するための供給手段と、
前記第2のガスセンサによる前記測定対象ガスの測定時には、前記基準ガスを前記第1のガスセンサに供給し、前記第2のガスセンサへは前記測定対象ガスを供給するように前記供給手段を切替えるための手段とを含む、請求項5に記載のガス測定装置。
【請求項7】
内部空間を有する筐体と、
前記内部空間を、第1の隔室、前記第1の隔室と離れた第2の隔室、及び前記第1及び第2の隔室の間に形成された第3の隔室に分離する、前記内部空間に形成された第1及び第2の隔壁とを含み、
前記第1の隔壁には、前記第1の隔室及び前記第2の隔室を連通させる開口が形成されており、
前記第2の隔壁には、前記第3の隔室及び前記第2の隔室を連通させる開口が形成されており、
さらに、前記第2の隔壁の前記開口に設けられた、特定のガス成分を透過する第1の機能膜と、
前記第1の隔室内に設けられた第1のガスセンサと、
前記第2の隔室内に設けられた第2のガスセンサと、
前記第3の隔室内にガスを導入するように前記筐体に形成されたガス導入部と、
前記第1及び第2の隔室内からそれぞれガスを排出するように前記筐体に形成されたガス排出部とを含む、ガス測定装置。
【請求項8】
前記第1及び第2の隔室内に基準ガスを導入するように前記筐体に形成された基準ガス導入部をさらに含む、請求項7に記載のガス測定装置。
【請求項9】
前記第1及び第2のガスセンサは、それぞれ前記第1及び第2の隔室内で、前記第1及び第2の隔壁の開口部に臨む位置に設けられている、請求項7又は請求項8に記載のガス測定装置。
【請求項10】
前記ガス測定装置は、さらに、前記第3の隔室内に設けられ、前記第3の隔室内に前記ガス導入部により導入されたガスを、前記第1及び第2の隔壁の方向に向ける反射板をさらに含む、請求項7〜請求項9のいずれかに記載のガス測定装置。
【請求項11】
さらに、前記第1の隔壁の前記開口に設けられた、前記特定のガス成分と付加的なガス成分との双方を透過する第2の機能膜を含む、請求項7〜請求項10のいずれかに記載のガス測定装置。
【請求項12】
測定対象ガス中の共通の特定ガス成分の濃度を測定する第1及び第2のガスセンサと、
前記第1及び第2のガスセンサに同時に共通の測定対象ガスを接触させるための手段と、
前記第1及び第2のガスセンサによる測定結果が所定の関係になるように、前記第2のガスセンサの出力を校正するための校正手段とを含む、ガス測定装置。
【請求項13】
外気に接触する位置に設けられる第1のガスセンサと、
第2のガスセンサと、
前記第2のガスセンサ近傍に、生体の呼気を導入するための呼気導入手段と、
前記第2のガスセンサによる測定値を、前記第1のガスセンサによる測定値を用いて補正するための補正手段とを含む、ガス測定装置。
【請求項14】
第1及び第2のガスセンサと、
前記第1及び第2のガスセンサ近傍に、生体の呼気を導入するための呼気導入手段と、
前記呼気導入手段により導入された呼気のうち、特定ガス成分及び特定の付加的ガス成分のみを選択的に透過して前記第2のガスセンサに接触させるための手段と、
前記呼気導入手段により導入された呼気のうち、前記付加的ガス成分のみを選択的に透過して前記第1のガスセンサに接触させるための手段と、
前記第2のガスセンサによる測定値を、前記第1のガスセンサによる測定値を用いて補正するための補正手段とを含む、ガス測定装置。
【請求項1】
測定対象ガス中の共通の特定ガス成分の濃度を測定する第1及び第2のガスセンサと、
前記第1及び第2のガスセンサに別々に測定対象ガスを接触させるための接触手段と、
前記第2のガスセンサによる測定結果を、前記第1のガスセンサによる測定結果を用いて補正するための補正手段とを含む、ガス測定装置。
【請求項2】
前記接触手段は、
前記第1のガスセンサを外気に接触させ、かつ前記第2のガスセンサを呼気に接触させるための導入手段とを含む、請求項1に記載のガス測定装置。
【請求項3】
前記補正手段は、前記第1のガスセンサによる測定値を前記第2のガスセンサによる測定値から差引くための手段を含む、請求項1又は請求項2に記載のガス測定装置。
【請求項4】
基準となる共通のガスを前記第1及び第2のガスセンサに同時に接触させるための手段と、
前記第1及び第2のガスセンサに同時に前記共通のガスを接触させたときの、前記第1及び第2のガスセンサからの出力信号のレベルが所定の関係になるように前記第1及び第2のガスセンサの出力を校正するための校正手段をさらに含む、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のガス測定装置。
【請求項5】
前記第1及び第2のガスセンサに吸着したガス成分を脱離させるための手段をさらに含む、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のガス測定装置。
【請求項6】
前記脱離させるための手段は、
前記第1及び第2のガスセンサのいずれの測定結果にも影響しない基準ガスを前記第1及び第2のガスセンサに供給するための供給手段と、
前記第2のガスセンサによる前記測定対象ガスの測定時には、前記基準ガスを前記第1のガスセンサに供給し、前記第2のガスセンサへは前記測定対象ガスを供給するように前記供給手段を切替えるための手段とを含む、請求項5に記載のガス測定装置。
【請求項7】
内部空間を有する筐体と、
前記内部空間を、第1の隔室、前記第1の隔室と離れた第2の隔室、及び前記第1及び第2の隔室の間に形成された第3の隔室に分離する、前記内部空間に形成された第1及び第2の隔壁とを含み、
前記第1の隔壁には、前記第1の隔室及び前記第2の隔室を連通させる開口が形成されており、
前記第2の隔壁には、前記第3の隔室及び前記第2の隔室を連通させる開口が形成されており、
さらに、前記第2の隔壁の前記開口に設けられた、特定のガス成分を透過する第1の機能膜と、
前記第1の隔室内に設けられた第1のガスセンサと、
前記第2の隔室内に設けられた第2のガスセンサと、
前記第3の隔室内にガスを導入するように前記筐体に形成されたガス導入部と、
前記第1及び第2の隔室内からそれぞれガスを排出するように前記筐体に形成されたガス排出部とを含む、ガス測定装置。
【請求項8】
前記第1及び第2の隔室内に基準ガスを導入するように前記筐体に形成された基準ガス導入部をさらに含む、請求項7に記載のガス測定装置。
【請求項9】
前記第1及び第2のガスセンサは、それぞれ前記第1及び第2の隔室内で、前記第1及び第2の隔壁の開口部に臨む位置に設けられている、請求項7又は請求項8に記載のガス測定装置。
【請求項10】
前記ガス測定装置は、さらに、前記第3の隔室内に設けられ、前記第3の隔室内に前記ガス導入部により導入されたガスを、前記第1及び第2の隔壁の方向に向ける反射板をさらに含む、請求項7〜請求項9のいずれかに記載のガス測定装置。
【請求項11】
さらに、前記第1の隔壁の前記開口に設けられた、前記特定のガス成分と付加的なガス成分との双方を透過する第2の機能膜を含む、請求項7〜請求項10のいずれかに記載のガス測定装置。
【請求項12】
測定対象ガス中の共通の特定ガス成分の濃度を測定する第1及び第2のガスセンサと、
前記第1及び第2のガスセンサに同時に共通の測定対象ガスを接触させるための手段と、
前記第1及び第2のガスセンサによる測定結果が所定の関係になるように、前記第2のガスセンサの出力を校正するための校正手段とを含む、ガス測定装置。
【請求項13】
外気に接触する位置に設けられる第1のガスセンサと、
第2のガスセンサと、
前記第2のガスセンサ近傍に、生体の呼気を導入するための呼気導入手段と、
前記第2のガスセンサによる測定値を、前記第1のガスセンサによる測定値を用いて補正するための補正手段とを含む、ガス測定装置。
【請求項14】
第1及び第2のガスセンサと、
前記第1及び第2のガスセンサ近傍に、生体の呼気を導入するための呼気導入手段と、
前記呼気導入手段により導入された呼気のうち、特定ガス成分及び特定の付加的ガス成分のみを選択的に透過して前記第2のガスセンサに接触させるための手段と、
前記呼気導入手段により導入された呼気のうち、前記付加的ガス成分のみを選択的に透過して前記第1のガスセンサに接触させるための手段と、
前記第2のガスセンサによる測定値を、前記第1のガスセンサによる測定値を用いて補正するための補正手段とを含む、ガス測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−25718(P2010−25718A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186723(P2008−186723)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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