説明

ガス濃度計測装置及びガス濃度算出方法

【課題】簡易かつ高精度にガスの濃度を計測することを目的とする。
【解決手段】ガス濃度計測装置は、計測対象とされる対象ガスを含む排ガスにレーザ光を、波長を変化させながら照射するLDモジュール、排ガスを透過したレーザ光を受光するフォトダイオード、フォトダイオードによって受光されたレーザ光を示す受光信号に基づいて、ガス吸収スペクトル波形を生成する測定ユニットを備える。そして、ガス濃度計測装置は、測定ユニットによって生成されたガス吸収スペクトル波形における、対象ガスがレーザ光に吸収される吸収波長を基準とした所定の波長幅内の信号強度を積分し、得られた積分値に基づいて、対象ガスの濃度を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス濃度計測装置及びガス濃度算出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザを用いた高応答かつ高精度なガス濃度算出方法として、例えば、特許文献1に示すような波長可変半導体レーザ吸収分光法が用いられている。
波長可変半導体レーザ吸収分光法は、変調されたレーザ光を計測対象のガス(対象ガス)を含む計測ガスに照射し、計測ガスを透過後のレーザ光を検出することで、対象ガス固有のガス吸収現象によるガス吸収スペクトル波形を得る。
そして、検出したガス吸収スペクトル波形の信号強度(最大値)に基づいて、対象ガスのガス濃度が算出される。
【0003】
また、特許文献2には、対象ガスの濃度を得るための一例として、対象ガスを含む計測ガスを封入する容器を透過するレーザ光を受光し、該レーザ光の透過量を透過信号として検出し、該透過信号とレーザ光の周波数とから生成される吸収曲線と対象ガスの吸収がないことを表す直線とによって囲まれる、面積強度を表す面積を算出し、該面積に基づいて対象ガスの濃度を得るガス濃度計測システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3342446号公報
【特許文献2】特開2007−46983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、低濃度ガスやレーザ光に対して弱い光学的反応しか示さない対象ガス(例えば窒素酸化物(NOx)等)を高精度に計測するためには、ガス吸収スペクトル波形を示す検出信号のS/N比を向上させる必要がある。
特にS/N比を向上させるために問題となるノイズは、周波数が特定されないランダム性のあるノイズ(ホワイトノイズ)である。ホワイトノイズは、ガス吸収スペクトル波形の全体に渡り、発生するため、信号強度の低い対象ガスは、ホワイトノイズに埋もれたり、信号強度にホワイトノイズが重畳されることにより、濃度が過大に評価される可能性があった。
【0006】
特許文献2に記載のガス濃度計測システムでは、面積強度から対象ガスの濃度を算出するため、S/N比が向上できると考えられるが、吸収曲線と、対象ガスの吸収が無いことを表わす直線とを求めなければならず、対象ガスの濃度を算出するための処理及び構成が複雑であった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、簡易かつ高精度にガスの濃度を計測できるガス濃度計測装置及びガス濃度算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のガス濃度計測装置及びガス濃度算出方法は以下の手段を採用する。
【0009】
すなわち、本発明に係るガス濃度計測装置は、計測対象とされる対象ガスを含むガスにレーザ光を、波長を変化させながら照射する照射手段と、前記ガスを透過したレーザ光を受光する受光手段と、前記受光手段によって受光されたレーザ光を示す受光信号に基づいて、前記対象ガスによって吸収されたレーザ光の吸収信号であってレーザ光の波長と信号強度を示した波形を生成する生成手段と、前記生成手段によって生成された前記波形における、前記対象ガスがレーザ光に吸収される吸収波長を基準とした所定の波長幅内の信号強度を積分する積分手段と、前記積分手段によって得られた積分値に基づいて、前記対象ガスの濃度を算出する算出手段と、を備える。
【0010】
本発明によれば、照射手段によって、計測対象とされる対象ガスを含むガスにレーザ光が、波長を変化させながら照射され、受光手段によって、ガスを透過したレーザ光が受光され、生成手段によって、受光手段で受光されたレーザ光を示す受光信号に基づいて、対象ガスによって吸収されたレーザ光の吸収信号であってレーザ光の波長と信号強度を示した波形が生成される。
そして、積分手段によって、生成手段で生成された波形における、対象ガスがレーザ光に吸収される吸収波長を基準とした所定の波長幅内の信号強度が積分される。
【0011】
積分手段で得られた積分値は、上記波形に含まれるノイズの影響、特にホワイトノイズの影響をキャンセルすることとなる。
このため、算出手段によって、積分手段で得られた積分値に基づいて算出される対象ガスの濃度は、ホワイトノイズの影響を受けない対象ガスの濃度となる。
【0012】
従って、本発明は、簡易かつ高精度にガスの濃度を計測できる。
【0013】
また、本発明のガス濃度計測装置は、前記積分手段が、前記所定の波長幅内の平均値以上のレーザ光の信号強度を積分してもよい。
【0014】
本発明によれば、対象ガスがレーザ光に吸収される吸収波長を基準とした所定の波長幅内の平均値以上のレーザ光の信号強度が積分される。すなわち、吸収波長の近傍にない波形は、対象ガスの濃度を算出するためには不要な情報なため、該不要な情報となる信号強度の領域が除去されるので、本発明は、より高精度にガスの濃度を計測できる。
【0015】
また、本発明のガス濃度計測装置は、前記対象ガスの濃度が既知の標準ガスが封入されるか又は通流可能にされた参照セルと、前記参照セルに前記照射手段から照射されたレーザ光を導入する導入手段と、前記参照セル内の前記標準ガスを透過したレーザ光を受光する第2受光手段と、前記第2受光手段によって受光されたレーザ光を示す受光信号から前記標準ガス内の前記対象ガスによって吸収された吸収中心波長を算出し、該吸収中心波長と前記照射手段から照射されるレーザ光の波長との差が所定値以下となるように、前記照射手段を制御する制御手段と、を備えてもよい。
【0016】
本発明によれば、導入手段によって、対象ガスの濃度が既知の標準ガスが封入されるか又は通流可能にされた参照セルに照射手段から照射されたレーザ光が導入され、第2受光手段によって、参照セル内の標準ガスを透過したレーザ光が受光される。
そして、制御手段によって、第2受光手段で受光されたレーザ光を示す受光信号から標準ガス内の対象ガスによって吸収された吸収中心波長が算出され、該吸収中心波長と照射手段から照射されるレーザ光の波長との差が所定値以下となるように、照射手段が制御される。
【0017】
すなわち、制御手段は、照射手段をフィードバック制御し、上記所定値を0(零)とすることによって、計測対象とされる対象ガスを含むガスに照射するレーザ光の波長を、参照セルに封入された標準ガス内の対象ガスによって吸収されたレーザ光の吸収中心波長に略固定することとなる。
【0018】
このため、上記波形は、対象ガスの信号強度の最大値近傍を示すこととなり、該波形の最大値近傍の信号強度を積分した積分値に基づいて、対象ガスの濃度が算出されるので、本発明は、より高精度にガスの濃度を計測できる。
【0019】
一方、本発明に係るガス濃度算出方法は、計測対象とされる対象ガスを含むガスにレーザ光を、波長を変化させながら照射する照射手段と、前記ガスを透過したレーザ光を受光する受光手段と、前記受光手段によって受光されたレーザ光を示す受光信号に基づいて、前記対象ガスによって吸収されたレーザ光の吸収信号であってレーザ光の波長と信号強度を示した波形を生成する生成手段と、備えたガス濃度計測装置のガス濃度算出方法であって、前記生成手段によって生成された前記波形における、前記対象ガスがレーザ光に吸収される吸収波長を基準とした所定の波長幅内の信号強度を積分する第1工程と、前記第1工程によって得られた積分値に基づいて、前記対象ガスの濃度を算出する第2工程と、を含む。
【0020】
本発明によれば、生成手段で生成された波形における、対象ガスがレーザ光に吸収される吸収波長を基準とした所定の波長幅内の信号強度が積分され、積分値に基づいて算出される対象ガスの濃度は、ホワイトノイズの影響を受けない対象ガスの濃度となる。
従って、本発明は、簡易かつ高精度にガスの濃度を計測できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、簡易かつ高精度にガスの濃度を計測できる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係るガス濃度計測装置の構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るコンピュータの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るガス濃度算出プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1実施形態に係るガス吸収スペクトル波形と積分区間を示すグラフである。
【図5】本発明の第2実施形態に係るガス濃度算出プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態に係るガス吸収スペクトル波形と積分区間を示すグラフである。
【図7】本発明の第3実施形態に係るガス濃度計測装置の構成図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るガス吸収スペクトル波形と積分区間を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係るガス濃度計測装置及びガス濃度算出方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
【0025】
図1は、本第1実施形態に係るガス濃度計測装置10の構成図である。
ガス濃度計測装置10は、例えば、排ガスが通過するガス通路12にレーザ光を照射することによって、排ガスに含まれる計測対象となる対象ガスの濃度を計測する装置である。
【0026】
ガス通路12には、光学窓14A,14Bが対向する位置に設けられており、ガス通路12を横切るように光学窓14Aから光学窓14Bに向けてからレーザ光が計測領域に入射される。
このようなガス通路12は、例えば、自動車の排気管の出口に設置され、ガス濃度計測装置10は、自動車の排ガスに含まれる対象ガス(例えばNOx)の濃度を計測する。
【0027】
ガス濃度計測装置10は、時間と共に波長を変化(掃引)させながら、レーザ光を排ガスに照射するLDモジュール20を備える。LDモジュール20は、光源としての半導体レーザ素子と、半導体レーザ素子の温度調節を行うためのペルチェ素子が設けられている。半導体レーザ素子は、LDドライバ22の制御回路に接続され、その温度と電流とが制御される。
【0028】
そして、ガス濃度計測装置10は、測定ユニット24を備え、測定ユニット24は、対象ガスに固有の吸収波長近辺でレーザ光を掃引させるために、ランプ波を半導体レーザ素子の注入電流に印可するランプ波発生器、及びレーザ光の波長を変調するためのサイン波を半導体レーザ素子の注入電流に印可するサイン波発生器を備えている。
【0029】
ランプ発生器は、例えば周波数0.5Hz又は0.01Hzのランプ波を出力する。また、サイン発生器は、例えば2つ設けられ、一方のサイン波発生器からは第1の変調周波数fとして10kHzのサイン波を出力し、他方のサイン波発生器からは第2の変調周波数wとして500Hzのサイン波を出力する。
そして、ランプ発生器から出力されたランプ波と共に、サイン発生器から出力された第1の変調周波数f及び第2の変調周波数wは、LDドライバ22を介して注入電流に重ねて半導体レーサ素子に印可される。これによりレーザ光の波長は、2つの異なる周波数f,wで二重に変調される。
【0030】
なお、LDモジュール20は、レーザ照射ユニット28に設けられており、レーザ照射ユニット28は、LDモジュール20から照射されたレーザ光を反射するミラー26Aと、ミラー26Aで反射されたレーザ光を光学窓14Aに向けて反射するミラー26Bを備える。
【0031】
さらに、ガス濃度計測装置10は、フォトダイオード(PD)30A,30Bを備える。
フォトダイオード30Aは、計測領域の排ガスを透過し、光学窓14Bから出射したレーザ光の光軸上に配置され、該レーザ光を受光する。一方、フォトダイオード30Bはレーザ光軸から外れたところに配置され、計測領域の背景光を受光する。
【0032】
フォトダイオード30A,30Bによって受光されたレーザ光を示す受光信号は、測定ユニット24へ出力される。
【0033】
測定ユニット24は、フォトダイオード30Aからの受光信号に基づいて、対象ガスによって吸収されたレーザ光の吸収信号であってレーザ光の波長と信号強度を示した波形(以下、「ガス吸収スペクトル波形」という。後述する図4も参照。)を生成する。
なお、測定ユニットは、一例として、フォトダイオード30Aからの受光信号を、第1の変調周波数fの2倍の高調波成分2fで復調し、さらに、第2の変調周波数wの2倍の高調波成分2wで復調し、ローパスフィルターによって高周波成分を除去することによって、ガス吸収スペクトル波形を生成する。
【0034】
一方、フォトダイオード30Bによって受光された受光信号は、フォトダイオード30Aの受光信号から背景光の影響を除去するために用いられる。
【0035】
測定ユニット24で生成されたガス吸収スペクトル波形は、アナログデジタル変換器(以下、「AD変換器」という。)32に出力され、アナログ信号からデジタル信号に変換され、コンピュータ34に出力される。
【0036】
コンピュータ34は、デジタル信号に変換されたガス吸収スペクトル波形に基づいて、対象ガスの濃度を算出するガス濃度算出処理を行う。
【0037】
図2は、コンピュータ34の電気的構成を示すブロック図である。
コンピュータ34は、コンピュータ34全体の動作を司るCPU(Central Processing Unit)40、各種プログラム及び各種データ等が予め記憶されたROM(Read Only Memory)42、CPU40による各種プログラムの実行時のワークエリア等として用いられるRAM(Random Access Memory)44、各種プログラム及び各種データを記憶する記憶手段としてのHDD(Hard Disk Drive)46を備えている。
【0038】
さらに、コンピュータ34は、キーボード及びマウス等から構成され、各種操作の入力を受け付ける操作入力部48、各種画像を表示する、例えば液晶ディスプレイ装置等の画像表示部50、AD変換器32と接続され、デジタル信号に変換されたガス吸収スペクトル波形を受信する外部インタフェース52を備えている。
【0039】
これらCPU40、ROM42、RAM44、HDD46、操作入力部48、画像表示部50、及び外部インタフェース52は、システムバス54を介して相互に電気的に接続されている。従って、CPU40は、ROM42、RAM44、及びHDD46へのアクセス、操作入力部48に対する操作状態の把握、画像表示部50に対する画像の表示、並びに外部インタフェース52を介したガス吸収スペクトル波形の受信等を各々行なうことができる。
なお、外部インタフェース52を介して受信されたガス吸収スペクトル波形は、HDD46に記憶される。
また、外部インタフェース52は、印刷装置や他のコンピュータと接続されてもよい。
【0040】
ここで、自動車の排ガスには、例えば、アンモニアや窒素酸化物(NOx、以下の説明では、NOとする。)が含まれ、アンモニアやNOが濃度を計測する対象ガスとなりえる。
そして、従来は、ガス吸収スペクトル波形のうち、対象ガスの吸収波形の信号強度(最大値)に基づいて、対象ガスの濃度を算出していた。
しかし、アンモニアに比較して、レーザ光に対して弱い光学的反応しか示さないNO(アンモニアの1000分の1程度の強度)や低濃度のガスは、ノイズ、特にガス吸収スペクトル波形の全体に渡り発生するホワイトノイズの影響を受け易く、精度の高い計測が困難であった。
【0041】
そこで、本第1実施形態に係るガス濃度算出処理は、以下に説明するような処理を行う。
【0042】
図3は、ガス濃度算出処理を行う場合に、コンピュータ34のCPU40によって実行されるガス濃度算出プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、ガス濃度算出プログラムはHDD46の所定領域に予め記憶されている。
【0043】
なお、ガス濃度算出プログラムは、外部インタフェース52を介してAD変換器32からガス吸収スペクトル波形を受信した場合に、実行されてもよいし、オペレータによる操作入力部48を介した操作によって、HDD46に記憶されているガス吸収スペクトル波形を読み出すと共に、開始されてもよい。
【0044】
まず、ステップ100では、ガス吸収スペクトル波形における信号強度の積分を行う。具体的には、ステップ100では、対象ガスがレーザ光に吸収される吸収波長を基準とした所定の波長幅内(以下、「積分区間」という。)の信号強度を積分する。
なお、吸収波長とは、例えば、NOに対しては、1796.673nmであり、所定の波長幅とは、例えば、レーザ光の波長掃引幅であり、2nm以下が好ましい。
【0045】
図4は、本第1実施形態に係るガス濃度計測装置10で生成されたガス吸収スペクトル波形と積分区間を示すグラフである。
図4の横軸はレーザ光の波長を示し、縦軸は信号強度を示し、斜線は積分される信号強度の範囲を示している。
そして、図4のガス吸収スペクトル波形における中央の波形が、対象ガスの吸収波形であり、吸収波形の最高値に対応する波長が吸収波長である。図4の例では、横軸の幅が上記所定の波長幅内であるため、ガス吸収スペクトル波形全体が積分区間となっている。
【0046】
ガス吸収スペクトル波形の信号強度を積分することによって得られた積分値は、ホワイトノイズの影響をキャンセルすることとなるため、ホワイトノイズの影響を受けない対象ガスの真の濃度を算出することができる。
【0047】
次のステップ102では、ステップ100で得られた積分値に基づいて、対象ガスの濃度を算出する。
【0048】
ステップ100で得られた積分値は、ガス濃度と比例関係にある。そのため、本第1実施形態では、ステップ100で得られた積分値に所定の係数を乗算することによって、対象ガスの濃度を算出する。
上記所定の係数は、対象ガスに応じて予めHDD46に記憶されており、例えば、既知の濃度の対象ガスを本第1実施形態に係るガス濃度計測装置10で計測することによって、対象ガスの濃度と積分値とから予め求められるものである。
【0049】
なお、本第1実施形態に係るガス濃度計測装置10は、対象ガスの吸収波長における信号強度の大きさからガスの濃度を算出する従来の方法に比べて、SN比において約8dB程度の精度の向上が見られた。
【0050】
次のステップ104では、ステップ102で算出した結果の出力処理を行い、本プログラムを終了する。具体的な出力処理は、算出した対象ガスの濃度を画像表示部50に表示させる画像表示処理、算出した対象ガスの濃度をデータとしてHDD46に記憶させる記憶処理、外部インタフェース52を介して接続されている印刷装置を用いて、算出した対象ガスの濃度を記録用紙に印刷させる印刷処理等である。
【0051】
以上説明したように、本第1実施形態に係るガス濃度計測装置10は、計測対象とされる対象ガスを含む排ガスにレーザ光を、波長を変化させながら照射するLDモジュール20、排ガスを透過したレーザ光を受光するフォトダイオード30A、フォトダイオード30Aによって受光されたレーザ光を示す受光信号に基づいて、対象ガスによって吸収されたレーザ光の吸収信号であって、ガス吸収スペクトル波形を生成する測定ユニット24を備える。
そして、本第1実施形態に係るガス濃度計測装置10は、測定ユニット24によって生成されたガス吸収スペクトル波形における、対象ガスがレーザ光に吸収される吸収波長を基準とした所定の波長幅内の信号強度を積分し、得られた積分値に基づいて、対象ガスの濃度を算出する。
【0052】
従って、本第1実施形態に係るガス濃度計測装置10は、低濃度又は弱い光学的反応しか示さないガスであっても、簡易かつ高精度にガスの濃度を計測できる。
【0053】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態について説明する。
【0054】
なお、本第2実施形態に係るガス濃度計測装置10の構成及びコンピュータ34の電気的構成は、図1に示す第1実施形態に係るガス濃度計測装置10の構成及び図2に示すコンピュータ34の電気的構成と同様であるので説明を省略する。
【0055】
図5は、本第2実施形態に係るガス濃度算出プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。なお、図5における図3と同一のステップについては図3と同一の符号を付して、その説明を一部省略する。
【0056】
ステップ10では、ガス吸収スペクトル波形の信号強度の平均値を算出する。
【0057】
次のステップ100’では、積分区間内の平均値以上の信号強度を積分する。この理由は、ガス吸収スペクトル波形の対象ガスの濃度を示す情報は、対象ガスを示すスペクトルの信号強度の近傍(吸収波長の近傍)の情報であり、吸収波長の近傍にない波形は、対象ガスの濃度を算出するためには不要な情報なため、該不要な情報となる信号強度の領域を除去するためである。
図6に示す例では、上記平均値を一点鎖線で示し、積分される信号強度の範囲を斜線で示している。
【0058】
次のステップ102では、ステップ100で得られた積分値に基づいて、対象ガスの濃度を算出する。なお、対象ガス濃度の算出に用いられる係数は、本第2実施形態に対応して予め求められた係数である。
【0059】
次のステップ104は、ステップ102で算出した結果の出力処理を行い、本プログラムを終了する。
【0060】
以上説明したように、本第2実施形態に係るガス濃度計測装置10は、対象ガスがレーザ光に吸収される吸収波長を基準とした所定の波長幅内の平均値以上のレーザ光の信号強度を積分するので、より高精度にガスの濃度を計測できる。
【0061】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態について説明する。
【0062】
図7に、本第3実施形態に係るガス濃度計測装置10の構成を示す。なお、図7における図1と同一の構成部分については図1と同一の符号を付して、その説明の一部又は全部を省略する。
なお、本第3実施形態に係るコンピュータ34の電気的構成は、図2に示す第1実施形態に係るコンピュータ34の電気的構成と同様であり、本第3実施形態に係るガス濃度計測プログラムの処理の流れは、図3に示す第1実施形態に係るガス濃度計測プログラムの処理の流れと同様であるので説明を省略する。
【0063】
本第3実施形態に係るガス濃度計測装置10は、レーザ照射ユニット28に、対象ガスの濃度が既知の標準ガスが封入されるか又は通流可能にされた参照セル60、参照セル60にLDモジュール20から照射されたレーザ光を導入するためのハーフミラー62、及び参照セル60内の標準ガスを透過したレーザ光を受光するフォトダイオード30Cを備える。
【0064】
すなわち、本第3実施形態に係るLDモジュール20から照射されたレーザ光は、ミラー26Aによってハーフミラー62へ導かれ、ハーフミラー62で2つに分けられる。このうちハーフミラー62を透過した透過光は、参照セル60へ導入され、参照セル60内の標準ガスを透過したレーザ光は、フォトダイオード30Cで受光される。一方、ハーフミラー62で反射した反射光は、光学窓14Aを介して計測領域内の排ガスを透過した後に光学窓14Bを介してフォトダイオード30Aにより受光される。
【0065】
さらに、フォトダイオード30Cで受光されたレーザ光を示す受光信号は、測定ユニット24へ出力される。
そして、測定ユニット24は、フォトダイオード30Cからの受光信号に基づいて、標準ガス内の対象ガスによって吸収された吸収中心波長を算出し、該吸収中心波長とLDモジュール20から照射されるレーザ光の波長との差が所定値以下となるように、LDモジュール20を制御する。
【0066】
すなわち、測定ユニット24は、LDモジュール20をフィードバック制御し、上記所定値を0(零)とすることによって、対象ガスを含む排ガスに照射するレーザ光の波長を、参照セル60に封入された標準ガス内の対象ガスによって吸収されたレーザ光の吸収中心波長に略固定することとなる(波長ロック制御、詳細は特許第3342446号公報参照)。これにより、第1実施形態で説明した測定ユニット24が備えるランプ発生器を用いることなく、サイン波発生器だけを用いることによって、レーザ光の波長搬送振幅を小さくすることができる。
【0067】
すなわち、波長ロック制御を行うことによって、ガス吸収スペクトル波形は、対象ガスの信号強度の最大値近傍を示すこととなる。
【0068】
図8は、本第3実施形態に係るガス濃度計測装置10で生成されたガス吸収スペクトル波形と積分区間を示すグラフである。
なお、図8のグラフと図4,6のグラフとでは、横軸及び縦軸のスケールが異なっており、図8のグラフのスケールの方が小さい。このため、信号強度の振れ幅は、ホワイトノイズの大きさを示している。
【0069】
そして、本第3実施形態に係るガス濃度算出処理では、ガス吸収スペクトル波形の全波長幅の信号強度を積分し、該積分によって求められた積分値に基づいて、対象ガスの濃度を算出する。なお、対象ガス濃度の算出に用いられる係数は、本第3実施形態に対応して予め求められた係数である。
【0070】
以上説明したように、本第3実施形態に係るガス濃度計測装置10は、波長ロック制御を行うことによって、より高精度に対象ガスの濃度ガスを計測できる。
【0071】
なお、本第3実施形態では、ガス吸収スペクトル波形の全波長幅の信号強度を積分する形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、全波長幅よりも狭い範囲の信号強度を積分する形態としてもよい。
【0072】
以上、本発明を、上記各実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施形態に多様な変更または改良を加えることができ、該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0073】
例えば、上記各実施形態では、光源として半導体レーザ素子を用いる形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、波長変調が可能な他のレーザ発振器を用いる形態としてもよい。
【0074】
また、上記各実施形態では、自動車の排ガス内の対象ガスの濃度を計測する形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、ガス通路12をボイラやごみ焼却炉のような燃焼炉、ガスタービン、及び船舶等の排ガスを排出する装置に設け、該装置から排出される排ガスに含まれる対象ガスの濃度を計測する形態としてもよい。
【0075】
また、上記各実施の形態で説明したガス濃度算出プログラムの処理の流れも一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりすることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0076】
10 ガス濃度計測装置
20 LDモジュール
24 測定ユニット
30A フォトダイオード
30C フォトダイオード
34 コンピュータ
40 CPU
60 参照セル
62 ハーフミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象とされる対象ガスを含むガスにレーザ光を、波長を変化させながら照射する照射手段と、
前記ガスを透過したレーザ光を受光する受光手段と、
前記受光手段によって受光されたレーザ光を示す受光信号に基づいて、前記対象ガスによって吸収されたレーザ光の吸収信号であってレーザ光の波長と信号強度を示した波形を生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された前記波形における、前記対象ガスがレーザ光に吸収される吸収波長を基準とした所定の波長幅内の信号強度を積分する積分手段と、
前記積分手段によって得られた積分値に基づいて、前記対象ガスの濃度を算出する算出手段と、
を備えたガス濃度計測装置。
【請求項2】
前記積分手段は、前記所定の波長幅内の平均値以上のレーザ光の信号強度を積分する請求項1記載のガス濃度計測装置。
【請求項3】
前記対象ガスの濃度が既知の標準ガスが封入されるか又は通流可能にされた参照セルと、
前記参照セルに前記照射手段から照射されたレーザ光を導入する導入手段と、
前記参照セル内の前記標準ガスを透過したレーザ光を受光する第2受光手段と、
前記第2受光手段によって受光されたレーザ光を示す受光信号から前記標準ガス内の前記対象ガスによって吸収された吸収中心波長を算出し、該吸収中心波長と前記照射手段から照射されるレーザ光の波長との差が所定値以下となるように、前記照射手段を制御する制御手段と、
を備えた請求項1記載のガス濃度計測装置。
【請求項4】
計測対象とされる対象ガスを含むガスにレーザ光を、波長を変化させながら照射する照射手段と、前記ガスを透過したレーザ光を受光する受光手段と、前記受光手段によって受光されたレーザ光を示す受光信号に基づいて、前記対象ガスによって吸収されたレーザ光の吸収信号であってレーザ光の波長と信号強度を示した波形を生成する生成手段と、備えたガス濃度計測装置のガス濃度算出方法であって、
前記生成手段によって生成された前記波形における、前記対象ガスがレーザ光に吸収される吸収波長を基準とした所定の波長幅内の信号強度を積分する第1工程と、
前記第1工程によって得られた積分値に基づいて、前記対象ガスの濃度を算出する第2工程と、
を含むガス濃度算出方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−159389(P2012−159389A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19087(P2011−19087)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】