説明

ガス燃焼用バーナー、それを備えたガスオーブン及びガス燃焼用バーナーにおける一酸化炭素の生成量を低減する方法

【課題】
混合比が適正な燃焼範囲にある混合ガスを燃焼させたときに生成される一酸化炭素の生成量を従来のものより低減させることができるガス燃焼用バーナーを提供する。
【解決手段】
ガス燃料と空気との混合比が適正な燃焼範囲内に設定された混合ガスが送られるよう構成してあるガス燃焼用バーナーであって、炎孔負荷が6.0kcal/mm・h以上〜7.2kcal/mm・h以下の範囲内に収まるように、バーナー本体30に送られた混合ガスが噴出する炎孔33の孔径、炎孔33の総炎孔面積またはバーナー本体30へのインプット熱量が調整してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス燃焼用バーナー、それを備えたガスオーブン及びガス燃焼用バーナーにおける一酸化炭素の生成量を低減する方法に関する。
更に詳しくは、混合比が適正な燃焼範囲にある混合ガスを燃焼させたときに生成される一酸化炭素の生成量を従来のものより低減させることができるものに関する。また、一台の送風機から少なくとも二以上のバーナー本体に空気を送ることができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から製菓用や製パン用としてガスオーブンが使用されている。ガスオーブンは、ガス燃料と空気とを混合した混合ガスをガス燃焼用バーナーで燃焼させて熱源としている。混合ガスのガス燃料と空気との混合比は、ガス燃料が多いと不完全燃焼を起こして炎が消えやすくなり、一酸化炭素の生成量が多くなる。また、空気が多いと着火しにくく燃えにくい。従って、ガス燃料と空気との混合比は、ある範囲(燃焼範囲)で適正な値が決められている。例えば、ガスの消費量1000kcalに付き0.9mの理論空気と更に20〜40%の過剰空気を必要とする。
【0003】
本発明者はガスオーブンの開発に従事しており、以前からガス燃焼用バーナー等に関する数々の発明を完成させている。一般的なガス燃焼用バーナーは、空気とガス燃料とが混合される混合管(ミキサー)と、バーナーと、空気を混合管内に送る送風機(ブロア)と備えており、バーナーの上部側には混合ガスが外部に噴出する炎孔が長さ方向に所要間隔で複数個形成された構造を有している。炎孔の孔径(直径)は1.5mm以上〜1.6mm以下に形成してあり、炎孔負荷については7.7kcal/mm・h以上〜8.1kcal/mm・h以下の範囲内に収まるよう設定してある。このガス燃焼用バーナーにて混合比が適正な燃焼範囲にある混合ガスを燃焼させたときの一酸化炭素の生成量は、酸素濃度(O%)を0%と仮定して求めたCO%(COパーセント)換算値で約194ppmである。このようなガスオーブンとしては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。CO%は、排ガス中のCO濃度またはO濃度の測定値から算出されるものであり、例えば、次式によって導き出される。
CO%(ppm)=COa×(21/(21−Oa)) a:測定値
【0004】
【特許文献1】特開2001−116260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
混合比が適正な燃焼範囲にある混合ガスは、燃焼することによって二酸化炭素を生成すると共に、上記した通りわずかではあるが一酸化炭素も生成している。そのため、例えば、換気を行わずにガスオーブンを長時間使用すれば、室内に一酸化炭素が過剰に溜まって焼成作業に従事する作業者が一酸化炭素中毒を起こす危険がある。
【0006】
本発明者は、混合ガスを燃焼させたときに生成される一酸化炭素の生成量をより低減することができれば、上記した中毒事故が起こりにくくなるのではないかとの着想を得た。
【0007】
そうして本発明者は種々の試験を行い、炎孔の孔径を大きくする等して炎孔負荷を下げ、混合比や供給量は変えないで混合ガスを供給してみたところ、一酸化炭素の生成量が従来のガス燃焼用バーナーより低減できることを知見した。
【0008】
そこで本発明者は更に炎孔負荷を下げるよう設定したガス燃焼用バーナーを用いて試験を行った。そうしたところ炎孔負荷を下げることで一酸化炭素の生成量は益々低減できるが、あまりに下げ過ぎた場合では今度は逆火し易くなり実用性に欠けるということも知見した。具体的には、炎孔の孔径を大きく1.8mm以上〜1.9mm以下にして、炎孔負荷を5.3kcal/mm・h以上〜5.7kcal/mm・h以下まで下げた場合では逆火することがあった。
【0009】
本発明者は炎孔負荷の下限の値を見出すべく更に試験を重ねた。その結果、炎孔の孔径を1.7mm以上〜1.8mm以下にして、炎孔負荷を6.0kcal/mm・h以上〜6.4kcal/mm・h以下に設定したときが、一酸化炭素の生成量が低減できると共に、逆火も起こり難く十分実用性を備えたものとなることを見出した。つまり、一酸化炭素の低減の観点からみると炎孔負荷は下げた方が良いが、あまりに下げ過ぎると逆火し易くなるので、炎孔負荷の下限の値はこの試験から6.0kcal/mm・h以上が好適であることがわかった。
【0010】
また、炎孔負荷の上限の値は、上記した一般的なガス燃焼用バーナーより炎孔の孔径をやや大きい1.6mm以上〜1.7mm以下にして、炎孔負荷を6.7kcal/mm・h以上〜7.2kcal/mm・h以下に設定したときに、一酸化炭素の生成量がCO%換算値で約120ppm以下にできた。この程度の生成量であれば健康に悪影響を与える可能性はかなり低くなる。このことから炎孔負荷の上限の値は7.2kcal/mm・h以下が好適であることがわかった。
【0011】
更に、上記したように炎孔負荷を低減すべく炎孔の孔径を大きくすることにより、混合ガスが炎孔を通って外部に出るときの抵抗も小さくなる。これにより送風機による送風圧も従来より弱くて済むことを知見した。
本願発明は、当該知見に基づき完成されたものである。
【0012】
本発明の目的は、混合比が適正な燃焼範囲にある混合ガスを燃焼させたときに生成される一酸化炭素の生成量を従来のものより低減させることができる、ガス燃焼用バーナー、それを備えたガスオーブン及びガス燃焼用バーナーにおける一酸化炭素の生成量を低減する方法を提供することにある。
【0013】
また、本発明の他の目的は、一台の送風機から少なくとも二以上のバーナー本体に空気を送ることができるガス燃焼用バーナー、それを備えたガスオーブン及びガス燃焼用バーナーにおける一酸化炭素の生成量を低減する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
本発明は、ガス燃料と空気との混合比が適正な燃焼範囲内に設定された混合ガスが送られるガス燃焼用バーナーであって、炎孔負荷が6.0kcal/mm・h以上〜7.2kcal/mm・h以下の範囲内に収まるようにしたガス燃焼用バーナーである。
【0015】
本発明は、ガス燃料と空気との混合比が適正な燃焼範囲内に設定された混合ガスが送られるガス燃焼用バーナーであって、バーナー本体に送られた混合ガスが噴出する炎孔の孔径、炎孔の総炎孔面積またはバーナー本体へのインプット熱量を調整することにより、炎孔負荷が6.0kcal/mm・h以上〜7.2kcal/mm・h以下の範囲内に収まるようにしたガス燃焼用バーナーである。
【0016】
二以上のバーナー本体を備え、各バーナー本体には一台の送風機から空気が送られるようにしたことが好ましい。
【0017】
本発明は、上記のガス燃焼用バーナーを備えるガスオーブンである。
【0018】
本発明は、ガス燃料と空気との混合比が適正な燃焼範囲内に設定された混合ガスが送られるガス燃焼用バーナーにおける一酸化炭素の生成量を低減する方法であって、バーナー本体に送られた混合ガスが噴出する炎孔の孔径、炎孔の総炎孔面積またはバーナー本体へのインプット熱量を調整して、炎孔負荷が6.0kcal/mm・h以上〜7.2kcal/mm・h以下の範囲内に収まるようにし、炎孔負荷が7.2kcal/mm・hを超えるよう設定されたものより一酸化炭素の生成量を低減させる、ガス燃焼用バーナーにおける一酸化炭素の生成量を低減する方法である。
【0019】
送風機としては、ファンやブロアが挙げられるが、これらのうち何れを採用しても良く、限定するものではない。
【0020】
炎孔負荷の値は、バーナー本体へのインプット熱量を炎孔の総炎孔面積で割ることによって求められる。従って、炎孔の孔径、炎孔の総炎孔面積、バーナー本体へのインプット熱量を調整することにより変化する。
【0021】
なお、特許請求の範囲及び次の作用の欄では、本発明の各構成要件のそれぞれに、後述する実施の形態において各部に付与した符号を対応させて付与して説明している。しかし、この符号の付与はあくまで説明の理解を容易にするためであって、各構成要件の上記各部への限定を意味するものではない。
【0022】
(作 用)
本発明の作用を説明する。
本発明に係るものは、炎孔負荷が6.0kcal/mm・h以上〜7.2kcal/mm・h以下の範囲内に収まるようにしてある。また本発明に係るものは、バーナー本体(30)に送られた混合ガスが噴出する炎孔(33)の孔径、炎孔(33)の総炎孔面積またはバーナー本体(30)へのインプット熱量を調整することにより、炎孔負荷が6.0kcal/mm・h以上〜7.2kcal/mm・h以下の範囲内に収まるようにしてある。本発明によれば、上記した試験が示すように炎孔負荷が7.2kcal/mm・hを超えるようにしてあるものより一酸化炭素の生成量が低減できる。
【0023】
本発明に係るものは、二以上のバーナー本体を備え、各バーナー本体には一台の送風機から空気が送られるので、各バーナー本体にそれぞれ一台の送風機が設けてある従来のガス燃焼用バーナーより、送風機分のコストダウンを図ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は上記構成を備え、次の効果を有する。
(a)本発明に係るものは、炎孔負荷が6.0kcal/mm・h以上〜7.2kcal/mm・h以下の範囲内に収まるようにしてあることによって、一般的なガス燃焼用バーナーよりも一酸化炭素の生成量が半分以下にできる。つまり、本発明によれば、従来のものより一酸化炭素の中毒事故の発生が防止できる。
【0025】
(b)本発明に係るものは、炎孔の孔径を大きくする等して炎孔負荷が一般的なガス燃焼用バーナーよりも小さく、6.0kcal/mm・h以上〜7.2kcal/mm・h以下の範囲内に収まるように調整してある。このように炎孔の孔径を大きくした場合では、混合ガスがバーナー本体の炎孔を通って外部に出るときの抵抗も従来のものより小さくできる。これにより送風機による送風圧は従来のものより弱くて済むようになり、送風機の送風圧が小さくても単位時間当たりの混合ガスの風量、つまりインプット熱量を同様に確保できるようになる。従って、本発明によれば、従来と同等の送風能力を備えた一台の送風機で、二以上のバーナー本体に支障なく混合ガスを供給することができる。これにより従来のものより送風機分のコストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施の形態を図面に基づき更に詳細に説明する。
図1は本発明に係るガス燃焼用バーナーの第1の実施の形態を示す斜視図、
図2は図1に示すガス燃焼用バーナーの点火部近傍の構造を示す要部平面図、
図3は図2におけるI−I断面図、
図4は図2におけるII−II断面図である。
【0027】
本実施の形態で示すガス燃焼用バーナーは、ガスオーブン用のものである。しかし、本発明に係るガス燃焼用バーナーはガスオーブン用のものに限定するものではないし、また、構造についても特に限定するものではない。
【0028】
符号B1はガス燃焼用バーナーを示している。ガス燃焼用バーナーB1は、長方形状の取着板1を備えている。取着板1のほぼ中央部の外面側には、取着補助具2が取り付けられている。取着板1には、取着板1及び取着補助具2を貫通して、バーナー3、スパークロッド4とフレームロッド5が固定されている。
【0029】
バーナー3は、先端部が封鎖された円管状のバーナー本体30を有している。バーナー本体30の後端部には、エルボ管31を介し混合管32が直角方向に接続されている。混合管32の基端部には、送風機であるブロワ6が接続されている。また、混合管32の基部側には、ガス燃料を供給するための燃料接続管39が設けられている。燃料接続管39からのガス燃料の供給は、オリフィス(ベンチュリーでもよい)を利用して行われ、ガス燃料は燃焼域(炎孔33が設けられているところ)の上流側で空気と混合される。ブロワ6の構造については、後で説明する。
【0030】
バーナー本体30の上部側には、長手方向と平行に多数の炎孔33が二列に設けられている(図3、図4参照)。炎孔33の各列は、長手方向の中心線を対称軸とする対称位置に設けられている。炎孔33はバーナー本体30の基部側の”a”部と、先部側の”b”部とで孔径(直径)が変えてある(図1参照)。本実施の形態で示すガス燃焼用バーナーB1では、”a”部の炎孔が1.7mm、”b”部の炎孔が1.8mmに設定してある。また、上記炎孔による総炎孔面積は645.5mmである。本実施の形態ではバーナー本体30の”a”部と”b”部とで孔径を変えたがこれは同じにしても良いし、”a”部より”b”部の方が孔径が大きくなるようにしても良い。
【0031】
バーナー本体30の上部側には、二列の炎孔33の上方に被さるようにして保炎板34が設けられている。保炎板34は所要長さを有しており、長さ方向に沿う両端部に立ち上げ部340が形成された、バーナー本体30の直径とほぼ同じ幅を有する長板形状に形成されている。
【0032】
保炎板34は、バーナー本体30の上部側に直列状に4枚並べて、バーナー本体30のほぼ全長にわたり設けられている。各保炎板34は、複数個のネジ35によりバーナー本体30に固定されている。各保炎板34の間には、熱膨張により密着して変形することがないように、若干の隙間341が設けられている。
【0033】
また、隣り合った保炎板34と保炎板34の上面上には、接合板36が隙間341を覆うように架け渡してある。接合板36には貫通した丸穴や長穴が形成されており、ネジ35をこれらに通して保炎板34の上面上に固定されている。接合板36は、立ち上げ部340で挟まれた間の部分にほぼ全体が収まるように設けられている。
【0034】
バーナー本体30の上面部には、点火用のガス孔37が二箇所に設けられている。スパークロッド4とフレームロッド5は、先端側の一部を除く部分は、碍子で形成された絶縁部40、50で覆われている。スパークロッド4の先端部は、ガス孔37の上方に位置させてある。フレームロッド5の先端部は、炎孔33が設けられている位置まで延ばしてある。なお、符号41、51(図1に図示)は、スパークロッド4とフレームロッド5に電線を接続する接続端子である。
【0035】
図1,図5を参照して、ブロワ6の構造を説明する。送風機であるブロワ6は、シロッコファン(図では見えない)を備えている。符号60はモーターである。シロッコファンの吸気側には、封鎖板61が設けられている。封鎖板61には、貫通してU字状に形成してある吸気口62が設けられている。
【0036】
封鎖板61の外面には、調整板63が封鎖板61に沿って回動できるようにして取り付けられている。調整板63はほぼ半円形状に形成されており、円弧状の縁辺部の内側には、ネジ64、65間の長さを半径とし、上部のネジ64を中心とする円弧状の調整溝66が設けられている。調整板63は、ネジ64を中心として回動でき、吸気口62の開口部の大きさを適当に調整して、ネジ65を締め付けて調整板63を固定することができる。
シロッコファンの排気側には取着板67が取り付けられている。混合管32は取着板67に接続されている。
【0037】
ところで、ガス燃焼用バーナーに使用されるブロワは、経年変化によりモーターの回転が遅くなったり、内部に埃やゴミが溜まったりして性能が低下することがある。そのためこのような場合でも混合ガスの混合比が適正範囲内から外れないようにするためにまた安全性を見越してやや余力を持たせて、通常、十分な送風能力を備えたものが採用されている。これによりブロワの性能が低下した場合でも混合比が実質的に変わらない混合ガスが供給できるようにしてある。
ガス燃焼用バーナーB1に用いたブロワ6は、上記した一般的なガス燃焼用バーナーに使用されていたものと同等の送風能力を有するものである。
【0038】
(作 用)
図1ないし図4を参照して、本実施の形態で示すガス燃焼用バーナーB1をガスオーブンに取り付けたときの作用を説明する。
ガス燃焼用バーナーB1にインプット熱量が4100Kcal/hになるように設定した混合ガスを供給し、炎孔負荷が6.0kcal/mm・h以上〜6.4kcal/mm・h以下(平均6.2kcal/mm・h)の範囲内に収まるよう設定した。
【0039】
ガス燃焼用バーナーB1にて混合ガスを燃焼させて、ガスオーブンの燃焼庫内における排ガス中の一酸化炭素を測定したところ、生成量はCO%換算値で約86ppmであった。
【0040】
このようにガス燃焼用バーナーB1は、炎孔の孔径、総炎孔面積またはバーナー本体へのインプット熱量等を調整し、炎孔負荷が6.0kcal/mm・h以上〜6.4kcal/mm・h以下の範囲内に収まるように設定したことによって、一般的なガス燃焼用バーナーよりも一酸化炭素の生成量が半分以下にできた。つまり、ガス燃焼用バーナーB1は、従来のものより一酸化炭素の生成量が少なくできたので中毒事故の発生を防止することができる。
【0041】
また、ガス燃焼用バーナーB1によれば、一般的なガス燃焼用バーナーよりも炎孔負荷を下げるべく炎孔33の孔径が大きくしてあるので、混合ガスがバーナー本体30の炎孔33を通って外部に出るときの抵抗も従来のものより小さくなる。これによりブロワ6による送風圧は従来のものより弱くて済むようになり、ブロワ6の送風圧が小さくても単位時間当たりの混合ガスの風量、つまりインプット熱量を同様に確保できるようになる。従って、ガス燃焼用バーナーB1では、従来のブロワより送風能力の小さなものを使用することも可能である。
【0042】
なお、本実施の形態では、炎孔の孔径を1.7mm以上〜1.8mm以下に設定したものを示したが、以下に説明する試験例からわかるように炎孔負荷が6.0kcal/mm・h以上〜7.2kcal/mm・h以下の範囲内に収まるようにできれば、炎孔の孔径や総炎孔面積、インプット熱量は、特に限定するものではない。例えば、炎孔の孔径は、1.5mm以上〜1.8mm以下の範囲内で設定可能である。また、炎孔による総炎孔面積も520mm以上〜660mm以下の範囲内で設定可能である。更には、インプット熱量も3500Kcal/h以上〜4100Kcal/h以下の範囲内で設定可能である。
【0043】
本実施の形態ではガス燃焼用バーナーB1をガスオーブンに取り付けたものを例示したが、ガス燃焼用バーナーB1はガスオーブン以外のものに取り付けても良く、使用用途はこれに限定するものではない。
【0044】
(試験例)
上記したガス燃焼用バーナーB1を「試験装置F」とし、これとは別に炎孔の孔径を変えて種々の炎孔負荷を有するよう設定したものを「試験装置A」、「試験装置B」、「試験装置C」、「試験装置D」、「試験装置E」、「試験装置G」として6台用意し、それぞれについて混合ガスを燃焼させ、ガスオーブンの燃焼庫内における排ガス中の一酸化炭素の生成量を測定した。なお、比較の基準として、従来からある一般的なガス燃焼用バーナーを「試験装置C」として挙げた。
【0045】
混合ガスは適正な混合比を有するものを使用した。「試験装置A」、「試験装置B」、「試験装置C」に供給する混合ガスは、熱量のインプット熱量が3863Kcal/hになるように設定したものを使用し、「試験装置D」、「試験装置E」、「試験装置F」、「試験装置G」に供給する混合ガスは、熱量のインプット熱量が4100Kcal/hになるように設定したものを使用した。なお、試験例では「試験装置A」、「試験装置B」、「試験装置C」と、「試験装置D」、「試験装置E」、「試験装置F」、「試験装置G」とでインプット熱量がやや異なるが、その差は僅かであり、実際上殆ど支障がない程度なので、このままデータ取りを行った。
【0046】
各試験装置の設定について説明する。
試験装置Aは、”a”部の炎孔を1.3mm、”b”部の炎孔を1.4mmに設定した。このときの炎孔面積は380.6mmであり、炎孔負荷は10.1kcal/mm・h以上〜10.8kcal/mm・h以下(平均10.5kcal/mm・h)であった。
試験装置Bは、”a”部及び”b”部の炎孔を1.6mmに設定した。このときの炎孔面積は468.6mmであり、炎孔負荷は8.2kcal/mm・h以上〜8.7kcal/mm・h以下(平均8.5kcal/mm・h)であった。
試験装置Cは、”a”部の炎孔を1.5mm、”b”部の炎孔を1.6mmに設定した。このときの炎孔面積は504.3mmであり、炎孔負荷は7.7kcal/mm・h以上〜8.1kcal/mm・h以下(平均7.9kcal/mm・h)であった。試験装置Cは一般的なものであり、比較の基準となるものである。
【0047】
試験装置Dは、”a”部の炎孔を1.6mm、”b”部の炎孔を1.7mmに設定した。このときの炎孔面積は572.7mmであり、炎孔負荷は6.7kcal/mm・h以上〜7.2kcal/mm・h以下(平均7.0kcal/mm・h)であった。
試験装置Eは、”a”部及び”b”部の炎孔を1.7mmに設定した。このときの炎孔面積は628.4mmであり、炎孔負荷は6.1kcal/mm・h以上〜6.5kcal/mm・h以下(平均6.3kcal/mm・h)であった。
試験装置Gは、”a”部の炎孔を1.8mm、”b”部の炎孔を1.9mmに設定した。このときの炎孔面積は722.5mmであり、炎孔負荷は5.3kcal/mm・h以上〜5.7kcal/mm・h以下(平均5.5kcal/mm・h)であった。
【0048】
試験にあたってガス燃料はLPG(liquefied petroleum gas)を使用し、排ガスの測定及び分析には燃焼排ガス分析計(ホダカ株式会社:HT−1300N)を使用した。
【0049】
試験装置Aないし試験装置Gによる排ガスの測定及び分析結果は、表1に示す結果となった。
【0050】
【表1】

【0051】
表1によれば、一般的なガス燃焼用バーナーである試験装置Cよりも一酸化炭素の生成量が少ないものは、炎孔の孔径を大きくして炎孔負荷を低減した試験装置D、試験装置E、試験装置F、試験装置Gの4つだけであった。炎孔の孔径を小さくして炎孔負荷を増大させた試験装置A、試験装置Bは、一酸化炭素の生成量が試験装置Cよりも増す結果となった。このうち試験装置Gについては、最も一酸化炭素の生成量が少ないが、逆火し易くなるので実用性に欠けることがわかった。
【0052】
上記の試験により試験装置D、試験装置E、試験装置Fで用いた炎孔負荷が、具体的には炎孔負荷が6.0kcal/mm・h以上〜7.2kcal/mm・h以下の範囲内に収まるように設定したときに、一酸化炭素の生成量が約120ppmを超えない程度まで低減でき、試験装置Cの3/5程度となって一般的なガス燃焼用バーナーより優れた値を示すことがわかった。つまり、一酸化炭素の生成量の観点からみれば、炎孔負荷を6.0kcal/mm・h以上〜7.2kcal/mm・h以下の範囲内に収まるように設定することが好ましく、6.0kcal/mm・h未満に設定した場合では逆火し易くなるので実用性に欠け、また、7.2kcal/mm・hを超えるよう設定した場合では一酸化炭素の生成量の低減が図れないことがわかった。
【0053】
図5は本発明に係るガス燃焼用バーナーの第2の実施の形態を示す斜視図である。
なお、図5で示すガス燃焼用バーナーB2において示すバーナー3とブロワ6は、上記したガス燃焼用バーナーB1で説明したものを使用している。従って、以下の説明において構造について上記で示した箇所と重複する説明は省略する。
【0054】
図5に示すガス燃焼用バーナーB2は、一台のブロワ6から二本のバーナー3,3へ空気を送ることができるものである。ブロワ6の排気側となる取着板67には、T型形状を有する分岐管7が取り付けられている。ブロワ6から送られる空気は、分岐管7を通って二本のバーナー3,3にそれぞれ供給される。
【0055】
(作 用)
図5を参照して、本実施の形態で示すガス燃焼用バーナーB2の作用を説明する。なお、上記したガス燃焼用バーナーB1と共通する構成により生じる同様の作用、効果については必要な箇所を除き説明を省略した。
【0056】
ガス燃焼用バーナーB2の場合も、一般的なガス燃焼用バーナーよりも炎孔33の孔径が大きくしてあり、混合ガスが外部に出るときの抵抗が従来のものより小さいので、ブロワによる送風圧も従来のものより弱くて済む。従って、ブロワの送風圧が小さくても単位時間当たりの混合ガスの風量、つまりインプット熱量を同様に確保できるようになる。つまり、ガス燃焼用バーナーB2では、従来と同等の送風能力を備えたブロワ6によって、複数のバーナー3,3に支障なく混合ガスを供給することができる。
【0057】
本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係るガス燃焼用バーナーの第1の実施の形態を示す斜視図。
【図2】図1に示すガス燃焼用バーナーの点火部近傍の構造を示す要部平面図。
【図3】図2におけるI−I断面図。
【図4】図2におけるII−II断面図。
【図5】本発明に係るガス燃焼用バーナーの第2の実施の形態を示す斜視図。
【符号の説明】
【0059】
B1,B2 ガス燃焼用バーナー
1 取着板
2 取着補助具
3 バーナー
30 バーナー本体
31 エルボ管
32 混合管
33 炎孔
34 保炎板
340 立ち上げ部
341 隙間
35 ネジ
36 接合板
37 ガス孔
39 燃料接続管
4 スパークロッド
40 絶縁部
41 接続端子
5 フレームロッド
50 絶縁部
51 接続端子
6 ブロワ
60 モーター
61 封鎖板
62 吸気口
63 調整板
64 ネジ
65 ネジ
66 調整溝
67 取着板
7 分岐管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス燃料と空気との混合比が適正な燃焼範囲内に設定された混合ガスが送られるガス燃焼用バーナーであって、
炎孔負荷が6.0kcal/mm・h以上〜7.2kcal/mm・h以下の範囲内に収まるようにした、
ガス燃焼用バーナー。
【請求項2】
ガス燃料と空気との混合比が適正な燃焼範囲内に設定された混合ガスが送られるガス燃焼用バーナーであって、
バーナー本体(30)に送られた混合ガスが噴出する炎孔(33)の孔径、炎孔(33)の総炎孔面積またはバーナー本体(30)へのインプット熱量を調整することにより、炎孔負荷が6.0kcal/mm・h以上〜7.2kcal/mm・h以下の範囲内に収まるようにした、
ガス燃焼用バーナー。
【請求項3】
二以上のバーナー本体(30)を備え、各バーナー本体(30)には一台の送風機(6)から空気が送られるようにした、
請求項1または2記載のガス燃焼用バーナー。
【請求項4】
請求項1,2または3記載のガス燃焼用バーナーを備える、
ガスオーブン。
【請求項5】
ガス燃料と空気との混合比が適正な燃焼範囲内に設定された混合ガスが送られるガス燃焼用バーナーにおける一酸化炭素の生成量を低減する方法であって、
バーナー本体(30)に送られた混合ガスが噴出する炎孔(33)の孔径、炎孔(33)の総炎孔面積またはバーナー本体(30)へのインプット熱量を調整して、炎孔負荷が6.0kcal/mm・h以上〜7.2kcal/mm・h以下の範囲内に収まるようにし、炎孔負荷が7.2kcal/mm・hを超えるよう設定されたものより一酸化炭素の生成量を低減させる、
ガス燃焼用バーナーにおける一酸化炭素の生成量を低減する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−8569(P2008−8569A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180772(P2006−180772)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(000139344)株式会社ワールド精機 (3)
【Fターム(参考)】