説明

ガス物理量検出装置

【課題】高加湿かつ高温の環境下においても、精度よくガス物理量を検出可能なガス物理量検出装置を提供する。
【解決手段】ガス流路2に設けた開口部3を介してガス流路2を流れるガスの一部が導入される検出素子室7と、この検出素子室7に導入されたガスの物理量を検出する検出素子1aと、ガス流路2と検出素子室7との間に設けたフィルタ部材6と、ガス流路2から検出素子室7方向に延びる板材であって、フィルタ部材6の少なくとも開口部3側の端部から検出素子室7方向の所定範囲を複数の通路に仕切るフィルタ分割体10と、を備えるガス物理量検出装置1であって、フィルタ分割体10のガス流路2側端部付近がガス流路2内に突出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスの物理量を検出するガス物理量検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油脂を含浸させた不織布又は金属メッシュからなるフィルタをセンサ素子室の入口に設けることにより、センサ素子室内に液水や異物が侵入することを防止する圧力センサ装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−30535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の圧力センサ装置によれば、装置が高加湿、かつ高温の環境下にあると、フィルタを介してセンサ素子室内に水蒸気が侵入する場合がある。このような状態で装置の周囲温度が低下すると、センサ素子室内に結露が生じることになる。そして、この結露水が表面張力によってフィルタ表面に液膜を形成すると、センサ素子本体に検出対象であるガスが供給されにくくなり、ガスの物理量である圧力の検出精度が低下してしまう。
【0005】
そこで、本発明では、高加湿かつ高温の環境下においても、精度よくガス物理量を検出可能なガス物理量検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガス物理量検出装置は、ガス流路に設けた開口部を介してガス流路を流れるガスの一部が導入される検出素子室と、この検出素子室に導入されたガスの物理量を検出する検出素子と、ガス流路と前記検出素子室との間に設けたフィルタ部材と、ガス流路から検出素子室方向に延びる板材であって、フィルタ部材の少なくとも開口部側端部から検出素子室方向の所定範囲を複数の通路に仕切るフィルタ分割体と、を備える。そして、フィルタ分割体のガス流路側端部付近がガス流路内に突出している。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、仕切り板のガス配管内に突出した部分に衝突した被測定ガスの一部がフィルタ内に供給され、フィルタ内部でガスの流れを形成する。このガス流れにより、フィルタの仕切り板より上流側部分で水蒸気の捕集性が向上し、下流側で排水性が向上する。このようにフィルタの排水性が向上すると、フィルタの表面に液膜が形成されることで素子カバーまでガスが供給されにくくなることを防止できる。このため、高加湿かつ高温の環境下においても、精度よくガス物理量を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施形態に係るガス物理量検出装置の構成を示す図である。
【図2】図1のI−I線に沿った断面図である。
【図3】第1実施形態に係るガス物理量検出装置の変形例を示す図である。
【図4】第2実施形態に係るガス物理量検出装置の構成を示す図である。
【図5】フィルタを開口部側から見た断面図の一例である。
【図6】フィルタを開口部側から見た断面図の他の例である。
【図7】第3実施形態に係るガス物理量検出装置の構成を示す図である。
【図8】第4実施形態に係るガス物理量検出装置の構成を示す図である。
【図9】第5実施形態に係るガス物理量検出装置の構成を示す図である。
【図10】第6実施形態に係るガス物理量検出装置の、ガス配管側端部付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、第1実施形態に係るガス物理量検出装置1の構成を示す図である。なお、図1の一部は断面図である。図2は、図1のI−I線に沿った断面図である。
【0011】
図1に示すように、ガス物理量検出装置1は、ガス配管2の側面に設けた円形の開口部3を囲むように設けたボス部(以下、センサ取付部という)4に、センサ筐体8が取り付けられ、ガス配管2内を流れるガスの濃度を検出する。なお、センサ筐体8とセンサ取付部4との隙間からガスが漏れることを防止するために、Oリング5を、例えばセンサ取付部4の内周面とセンサ筐体8の外周面の間に配置する。なお、センサ筐体8は、その外周部に設けたネジ部とセンサ取付部4の内周部に設けたネジ部とでネジ締結される。
【0012】
センサ筐体8は、管状の検出素子室7と、検出素子室7内の上部に配置された側温抵抗体を内部に含む素子カバー1aと、側温抵抗体からの検出信号の送受信及び側温抵抗体への電力供給を行うハーネス9と、を備える。
【0013】
ガス物理量検出装置1は、センサ筐体8と、センサ取付部4に配置されたフィルタ6と、フィルタ6をガス配管2から検出素子室7方向に沿った複数の通路に仕切る仕切り板10と、を主な構成要素として備える。そして、ガス配管2から上流側開口部3a、フィルタ6及び検出素子室7を介して側温抵抗体に到達したガスの濃度を、側温抵抗体の温度変化に基づいて検出する。
【0014】
フィルタ6は、非疎水性の繊維を三次元状に不均一に編み込むことにより形成されている。なお、物理量を検出するガスに水素が含まれる場合、繊維材料としてはステンレス鋼であるSUS316(18%のCr、12%のNi、2%のMo、0.08%以下のCが添加されたステンレス鋼)、SUS316L(18%のCr、12%のNi、2%のMo、0.03%以下のCが添加されたステンレス鋼)、又はSUS304(18%のCrと8%のNiを含むステンレス鋼)を用いることが望ましい。この繊維材料を用いることにより、水素の影響でフィルタ6の機能が低下することを防止し、水素環境下でも交換頻度を低下させて連続して使用することができる。なお、フィルタ6には、仕切り板10を避けるための切り欠きを設けておく。
【0015】
仕切り板10は、図2に示すように、センサ取付部4の軸線方向に沿って延びる板状部材であり、側面10aがガス配管2内のガス流れに対向する向きで、かつガス配管2内に所定の突き出し量δだけ突き出すように、センサ取付部4の内周に固定されている。これにより、開口部3が上流側開口部3aと下流側開口部3bに、そしてフィルタ6がガス配管2の上流側と下流側に二分割される。
【0016】
この仕切り板10の突き出た部分に衝突したガス流の一部は、フィルタ6内に導入される。これにより、上流側開口部3aから下流側開口部3b方向へのフィルタ6内のガスの流れが増強されるので、ガスの置換速度が速くなって応答性が向上する。これと同時に、ガス配管2から検出素子室7への伝熱が促進され、被測定ガス、つまり測定したい場のガス温度に検出素子室7のガス温度がより近づく。これにより、温度によって変化が大きいガス濃度を、正確に検出できる。
【0017】
なお、突き出し量δは、ガス配管2の内径の5%〜25%程度が好ましいが、適用するシステムに応じて設定すればよい。
【0018】
上記のような構成のガス物理量検出装置1では、ガス配管2を流れるガス中に液水が含まれている場合、液水はフィルタ6によって遮られることにより検出素子室7内には侵入しない。このため、液水が素子カバー1aに付着することにより検出不良が発生することを防止できる。また、フィルタ6内に侵入した液水は、フィルタ6内に生じた上流側開口部3aから下流側開口部3bへのガス流によって、排水が促進される。特に、下流側開口部3b側では、重力の効果と相まって排水がさらに促進される。これにより、フィルタ6が詰まることによってガス配管2と検出素子室7との間でガス交換ができなくなることがなく、ガスの物理量を正確に検出することができる。
【0019】
一方、ガス配管2を流れるガス中に水蒸気が含まれている場合には、水蒸気はフィルタ6を通過し、検出素子室7内に侵入する。したがって、検出素子室7内で水蒸気が凝縮することによって検出素子室7内に結露水が生じることがある。しかしながら、フィルタ6は非疎水性の繊維を三次元状に不均一に編み込むことにより形成されているので、フィルタ6表面は平面を構成せずに細かな凹凸形状となっている。また、フィルタ6の内部では、大きさの異なる空孔が連結して、複数のガスの通路が存在する状態となっている。
【0020】
一般に、水の表面張力は水の接触角によって決まり、複数の物体に跨る場合の水の接触角は複数の物体それぞれに対する水の接触角に複数の物体の面積の割合を乗じた値として定まる。そして、空気に対する水の接触角はゼロ度であるので、フィルタ6に対する水の接触角は、フィルタ6の空気層の割合が大きくなるほど小さくなる。このため、複数のガス通路が存在して空気層の割合が大きいフィルタ6では、フィルタ6表面に表面張力による液膜が形成されにくくなり、結露水は毛細管力によってフィルタ6の内部に浸透する。
【0021】
なお、親水処理を施したフィルタを用いることによってもこのような効果が得られる可能性があるが、より高い親水性を発揮させるためには温度を上げる等の処理が必要となり、コスト増加の要因となる。
【0022】
ところで、フィルタ6の内部には、上述したように大きさの異なる空孔が連続して繋がることで複数のガス通路が形成されているので、フィルタ6に吸収された結露水は、表面張力が強く働く部位に集まり、液水で満たされない部位が存在するようになる。そして、仕切り板10によってフィルタ6を仕切ることで、フィルタ6内のガス流動を促進し、フィルタ6の上下面で常時ガスが出入りするようにしている。
【0023】
このため、液水で満たされない部位が存在する状態が維持され、フィルタ6内にある複数のガス通路が全て液水で詰まることがない。
【0024】
図3は、ガス流れをさらに促進するための変形例を示す図である。
【0025】
この例で用いる仕切り板20は、ガス配管2内に突き出た部分が、ガス流れに直交する方向からガス流れ上流側に向かって所定の角度θだけ傾いている。これにより、ガス量が少ない場合でも有効にフィルタ6内にガスを導入されることができ、例えば、ガス量が大きく変化する自動車用燃料電池システムのガス配管に適用する場合、広い流量範囲でフィルタ6内のガス流動を促進できる。
【0026】
なお、突き出した部分の形状は、図示した平面に限られず、例えばスプーン状の凹形状でも構わない。また、傾きθは、ゼロ度〜90度の範囲で上記効果が得られるが、適用するシステムに応じて設定すればよい。また、図1ではフィルタ6の切り込みを有する1体部品であり、センサ素子室7側の一定範囲は仕切り板10により仕切られていないが、仕切り板10の上流側用と下流側用の2つのフィルタを用いても構わない。
【0027】
以上により本実施形態では、次のような効果を得ることができる。
【0028】
(1)ガス配管2内を流れるガスが導入されるセンサ素子室7と、導入されたガスの物理量を検出する側温抵抗体を含む素子カバー1aと、ガス配管2とセンサ素子室7との間に設けたフィルタ6と、フィルタ6を複数の通路に仕切る仕切り板10と、を備える。そして、仕切り板10のガス配管2側の一部がガス配管2内に突出している。このため、仕切り板10のガス配管2内に突出した部分に衝突した被測定ガスの一部がフィルタ6内に供給され、フィルタ6内部でガスの流れを形成する。このガス流れにより、フィルタ6の仕切り板10より上流側部分で水蒸気の捕集性が向上し、下流側で排水性が向上する。このようにフィルタ6の排水性が向上すると、フィルタ6の表面に液膜が形成されることで素子カバー1aまでガスが供給されにくくなることを防止できる。このためガス物理量の検出精度の低下を抑制することができる。
【0029】
(2)仕切り板20のガス配管2内への突出した部分が、ガス流れに直交する方向からガス流れ上流側に向かって所定の角度θだけ傾いているので、これに衝突したガスが、フィルタ6内に供給され易くなる。
【0030】
なお、上述した説明では、素子カバー1a内に側温抵抗体を設けることによりガスの濃度を検出する構成としたが、素子カバー1a内に設けるセンサの構成を変更することにより、温度、圧力等の物理量を検出するようにしてもよい。
【0031】
第2実施形態について説明する。
【0032】
図4は、本実施形態に係るガス物理量検出装置1の構成について、図1と同様に示す図である。図5、図6はフィルタ6を開口部3側から見た断面図である。
【0033】
図1の構成とは、フィルタ6が、センサ筐体8に組み付けた収納ケース8a内に収められている点で相違する。仕切り板30も収納ケース8a内に固定されている。
【0034】
図1のようにセンサ筐体8とフィルタ6が別体の場合には、事前にセンサ取付部4へ仕切り板10を固定しておく必要があり、組立の際にはフィルタ6を挿入してから、センサ筐体8をセンサ取付部4に取り付ける、という工程になる。しかし、図4のようにセンサ筐体8とフィルタ6をアッセンブリ化することで、製造品質管理が容易になりコスト低下を図ることができる。
【0035】
ところで、センサ筐体8がセンサ取付部4にネジ締結される場合には、仕切り板30の回転方向の位置にバラツキが生じるため、仕切り板30に衝突したガスが上流側開口部3aに導入されにくくなるおそれがある。例えば、仕切り板10の側面10aがガス流れと平行になる場合等である。
【0036】
そこで、センサ筐体8がセンサ取付部4にネジ締結される場合には、図5に示すように、開口部3側から見た場合に十字状となる仕切り板30aによって、フィルタ6をフィルタ6a〜6dに4分割すればよい。
【0037】
このような構成にすれば、仕切り板30aがガス流れに対してどのような回転方向位置になっても、仕切り板30aのいずれかの部分に衝突したガスはフィルタ6に導入されて、フィルタ6内のガス流が促進される。
【0038】
なお、4分割に限らず、3分割であっても同様の作用・効果が得られる。
【0039】
また、仕切り板30aと収納ケース8aを一体に形成し、かつフィルタ6が収まる部分を、図6に示すように円形断面にしてもよい。この場合、円柱状のフィルタ6を製作するだけでよく、切り欠きを設ける工程が不要となるので、フィルタ性能のバラツキを小さくすることができる。ここで、円形は真円である必要はなく、楕円形であってよい。
【0040】
以上により本実施形態では、第1実施形態と同様の効果に加え、さらに、次のような効果が得られる。
【0041】
(3)センサ筐体8とフィルタ6をアッセンブリ化するので、製造品質管理が容易になりコスト低下を図ることができる、という効果が得られる。
【0042】
第3実施形態について説明する。
【0043】
図7は、本実施形態に係るガス物理量検出装置1の構成について、図1と同様に示す図である。
【0044】
図1に示す構成とは、仕切り板40のガス配管2内に突き出している部分に通過孔31を設けている点で相違する。通過孔31は、ガス配管2内に突き出した部分の、ガス配管2とフィルタ6との境界近傍に設ける。
【0045】
ガス配管2内では、ガス流が気液混相状態で流れる場合がある。そして、気液混相流の液水は、その多くがガス配管2の内壁に沿って流れてくる。
【0046】
そこで、図7に示すように通過孔31を設けると、内壁に沿って流れてくる液水を、フィルタ6内に巻き上げることなく下流側へ通過させることができる。すなわち、フィルタ6内のガスの流れを促進しつつ、フィルタ6内への液水の侵入を抑制することができる。
【0047】
以上により本実施形態では、第1実施形態と同様の効果に加え、更に次のような効果が得られる。
【0048】
(4)仕切り板40の、ガス配管2内に突き出した部分、かつガス配管2とフィルタ6との境界近傍に、通過孔31を設けるので、ガス配管2の内壁に沿って流れる液水が、フィルタ6内に導入されずにガス流の下流側へ通過する。これにより、フィルタ6内のガス流路が液水により閉塞されることを防止できる。
【0049】
第4実施形態について説明する。
【0050】
図8は、本実施形態に係るガス物理量検出装置1の構成について、図3と同様に示す図である。
【0051】
図3に示す構成とは、仕切り板50のガス流路に突き出している部分に通過孔41を設け、さらにフィルタ6内の部分にも連通孔42、43を設ける点で相違する。
【0052】
ガス流路に突き出している部分の通過孔41は、図7の通過孔31と同様に、フィルタ6内への液水の侵入を抑制する効果を発揮する。
【0053】
ところで、仕切り板50は、図3の仕切り板20と同様に、ガス流れに直交する方向からガス流れ上流側に向かって所定の角度θだけ傾いているので、ガス量が少ない場合でも有効にフィルタ6内にガスが導入され、これと同時に水蒸気分も導入される。このため、通過孔41によって液水の侵入を抑制しても、フィルタ6内での水蒸気捕集量は増大し液水溜まり速度が増す。
【0054】
そこで、連通孔42、43を設けることで、フィルタ6内が液水で詰まる前に液水を上流側から下流側にバイパスさせる。これにより、フィルタ6内へのガス導入量を増加させた場合でも、液水詰まりによる検出不具合を防止することができる。
【0055】
以上により本実施形態では、第1実施形態と同様の効果に加え、さらに次のような効果が得られる。
【0056】
(5)仕切り板50に、フィルタ6の仕切り板50より上流側部分と下流側部分とを連通する連通孔42、43を設ける。これにより、開口部3aから導入された加湿ガスがフィルタ6内で液水化しても、この液水が連通穴42、43を介して下流側へ移動し易くなるので、上流側部分に多量の液水が溜まる不具合を防止できる。
【0057】
第5実施形態について説明する。
【0058】
図9は、本実施形態に係るガス物理量検出装置1の構成について、図1と同様に示す図である。
【0059】
図1に示す構成とは、フィルタ6が異なる。本実施形態のフィルタ6は6h、6i、6jの3つに分割されている。フィルタ6jは、センサ素子室7の開口部分に対向し、ガス配管2方向へ所定の厚みをもつ。フィルタ6hは、フィルタ6jの下面から開口部3aにわたって設け、フィルタ6iはフィルタ6jの下面から開口部3bにわたって設ける。
【0060】
これらのフィルタ6h〜6jは、フィルタ6j>フィルタ6h>フィルタ6iの順に密度が高くなっている。また、検出するガス物理量はガス温度とする。
【0061】
検出素子室7内に被検出ガスを導入して濃度を測定する構成では、検出素子室7内のガス流が増大すると、ガス温度検出誤差が拡大する場合がある。
【0062】
そこで、検出素子室7に面しているフィルタ6jよりも開口部3a、3b側のフィルタ6h、6iを相対的に低密度にする。
【0063】
これにより、検出素子室7の近くまでは、相対的に低密度のフィルタ6hを介して多くのガスが導入されるので、検出素子室7への伝熱が向上する。そして、検出素子室7内へは、相対的に高密度のフィルタ6jを介してガスが導入されるので、検出素子室7内のガス流は抑えられる。すなわち、検出素子室7内のガス温度を、ガス配管2を流れるガス温度に近づけ、かつそれを精度よく検出することができる。
【0064】
一方、上流側開口部3a側のフィルタ6hを下流側開口部3b側のフィルタ6iよりも高密度にすることで、上流側開口部3aから導入されるガス中の水蒸気の捕集性を高めつつ、下流側開口部3bからの排水性を高めることができる。
【0065】
なお、仕切り板60に図8の連通孔42、43のような連通孔を設けることで、フィルタ6hで捕集した液水がフィルタ6i側に流れ易くなるので、水蒸気の捕集性と液水の排水性をさらに向上できる。
【0066】
なお、フィルタ密度は、フィルタを形成する繊維の編み込みの程度によって変えてもよいし、繊維の太さを変えてもよい。また、密度に代えて空間率で設定してもよい。
【0067】
以上により本実施形態では、第1実施形態と同様の効果に加え、さらに次のような効果が得られる。
【0068】
(6)フィルタ6の密度は、仕切り板60より上流側部分の方が下流側部分よりも高密度である。これにより、上流側部分では液水の捕集性が良好となり、下流側部分では排水性が良好となる。
【0069】
なお、仕切り板60より上流側部分及び下流側部分の上端とセンサ素子室7との間に、さらに高密度のフィルタ6jを配置すると、素子カバー1aへのガスの直撃を防止できる。これにより、流れの影響が出やすいガス濃度センサの検出精度の維持と応答性の両立が図れる。
【0070】
第6実施形態について説明する。
【0071】
図10は、本実施形態に係るガス物理量検出装置1の、ガス配管2側端部付近の拡大図である。図1に示す構成とは、フィルタ6のガス配管2側の端部で、フィルタ6を形成する金属線の単線がガス配管2内に複数突き出ている点で異なる。
【0072】
上述した第1〜第5実施形態では、繊維を三次元状に不均一に編み込んだものを、そのままフィルタ6として使用している。したがって、フィルタ6のガス配管2側の端部は、複数のループ状の繊維が密集した状態になっている。
【0073】
これに対して、本実施形態では、繊維を三次元状に不均一に編み込んだ後で、一方の端部を切断したものをフィルタ6として使用する。端部を切断したことでループは破壊されて、単線が突き出た状態となる。この切断した側をガス配管2側の端部とする。
【0074】
複数の単線がガス配管2内に突き出ている状態は、ループ状のままの状態に比べて表面張力が格段に小さくなるので、排水性がより高まる。
【0075】
なお、複数の単線が突き出た状態は、上述したように三次元状に編み込んだ繊維を切断するだけで製作できるので、比較的容易に製作することができる。
【0076】
以上により本実施形態では、第1実施形態と同様の効果に加え、さらに次のような効果が得られる。
【0077】
(7)フィルタ6のガス配管2側の端部は、複数の単線がガス配管2内に突き出した状態となっているので、ループ状の場合と比べて表面張力が格段に小さくなり、排水性がより高まる。
【0078】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で様々な変更を成し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0079】
1 ガス物理量検出装置
2 ガス配管
3 開口部
4 センサ取付部
5 Oリング
6 フィルタ
7 センサ素子室
8 センサ筐体
10 仕切り板
20 仕切り板
30 仕切り板
40 仕切り板
41 通過孔
42 連通孔
43 連通孔
50 仕切り板
60 仕切り板
70 仕切り板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流路に設けた開口部を介してガス流路を流れるガスの一部が導入される検出素子室と、
この検出素子室に導入されたガスの物理量を検出する検出素子と、
前記ガス流路と前記検出素子室との間に設けたフィルタ部材と、
前記ガス流路から前記検出素子室方向に延びる板材であって、前記フィルタ部材の少なくとも前記開口部側端部から前記検出素子室方向の所定範囲を複数の通路に仕切るフィルタ分割体と、
を備えるガス物理量検出装置であって、
前記フィルタ分割体の前記ガス流路側端部付近が前記ガス流路内に突出していることを特徴とするガス物理量検出装置。
【請求項2】
前記フィルタ分割体の前記ガス流路内に突出している部分が、前記ガス流路内の流れ方向に向かって所定角度だけ傾いていることを特徴とする請求項1に記載のガス物理量検出装置。
【請求項3】
前記フィルタ分割体の前記ガス流路内に突出している部分が、前記突出部の前記フィルタ部材との境界近傍に前記突出部より上流側のガス流路と下流側のガス流路とを連通する連通孔を有することを特徴とする請求項1または2に記載のガス物理量検出装置。
【請求項4】
前記フィルタ分割体が、前記フィルタ部材の前記フィルタ分割体より上流側部分と下流側部分とを連通する連通孔を有することを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のガス物理量検出装置。
【請求項5】
前記フィルタ部材の密度は、前記フィルタ分割体より上流側部分の方が下流側部分よりも高密度であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載のガス物理量検出装置。
【請求項6】
前記フィルタ部材の前記ガス流路側の端部は、複数の単線が前記ガス流路内に突き出した状態となっていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載のガス物理量検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−271109(P2010−271109A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121742(P2009−121742)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】