説明

ガス発生器用フィルター及びガス発生器

【課題】十分なガス冷却効果、スラグ捕集効果及び圧力調整性能を有するガス発生器用フィルター及びガス発生器を提供することを目的とする。
【解決手段】ガス発生器用フィルター100は、筒状の第1のフィルター層1と、前記第1のフィルター層1の外周に、前記第1のフィルター層1と同心となるように設けられている筒状の第2のフィルター層2とを備え、前記第1のフィルター層1と前記第2のフィルター層2とが、1本の金属線材を巻き回して形成されたものであり、前記第1のフィルター層1の密度が2.0×10−3〜4.0×10−3kg/cmであり、前記第2のフィルター層2の密度が0.5×10−3〜3.0×10−3kg/cmのものであり、前記第1のフィルター層の密度が、前記第2のフィルター層の密度よりも高いものである。また、ガス発生器はガス発生器用フィルター100を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ等を膨張させるガス発生器に使用されるガス発生器用フィルター及びガス発生器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス発生器は、自動車の衝突を検知すると、ガス発生剤を点火、燃焼して高温ガスを発生し、エアバッグを膨らませるもので、このガス発生器に備えられたフィルターは、発生した高温ガスを冷却し、高温ガスからスラグを除去するために使用されるものである。このガス発生器用フィルターとして、例えば、下記特許文献に開示されているものが知られている。特許文献1に開示されているフィルターは、一本の線材を芯金に巻き付けながら形成するもので、一本の線材から形成されているため、製造工程が煩雑でなく製造コストを抑えることができるとともに、各種車両の特性に応じたフィルターに作成して、エアバッグの展開速度を調節することができる。また、特許文献2に開示されているフィルターは、内層材と、外層材とを同軸状に組み合わせたものであり、異なる2層によって優れた冷却性能を有する。
【特許文献1】特開2001−171472号公報
【特許文献2】特開2001−301561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1のフィルターは、全層同じ張力を負荷しながら巻き付けた同一層からなり、スラグ捕集の際、粒子サイズ等の異なる種類のスラグを効率良く回収しにくい場合や、フィルター内での燃焼ガス圧力幅を広げにくい場合等があり、十分なガス冷却性能およびスラグ捕集効果が得られにくいことがあった。また、上記特許文献2のフィルターは、異なる2層からなるため、製造コストを抑えにくいことがあった。
【0004】
そこで、本発明は、製造工程が容易で製造コストを抑えることができ、十分なガス冷却性能及びスラグ捕集性能を有するとともに発生ガスの圧力調整性能を有するガス発生器用フィルター及びガス発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0005】
本発明のガス発生器用フィルターは、筒状の第1のフィルター層と、前記第1のフィルター層の外周に、前記第1のフィルター層と同心となるように設けられている筒状の第2のフィルター層とを備え、前記第1のフィルター層と前記第2のフィルター層とが、1本の金属線材を巻き回して形成されたものであり、前記第1のフィルター層の密度が2.0×10−3〜4.0×10−3kg/cmであり、前記第2のフィルター層の密度が0.5×10−3〜3.0×10−3kg/cmであり、前記第1のフィルター層の密度が、前記第2のフィルター層の密度よりも高いものである。
【0006】
また、本発明のガス発生器用フィルターは、前記第1のフィルター層において、前記金属線材を巻き回す張力が29〜50Nであり、前記第2のフィルター層において、前記金属線材を巻き回す張力が9〜40Nであるあるものが好ましい。
【0007】
上記構成によれば、エアバッグ用のガス発生器の部品として用いられ、ガス発生器が作動した際には、第2層よりも密度の高い第1層において、十分なスラグ捕集効果が得られるとともに、初期において、フィルター内室で熱がこもりやすくなり、フィルター内側において短時間でより高い圧力を発生させやすいものとすることができる。そして、第1層よりも密度の低い第2層において、その後、フィルター外側へ放出される発生ガスの冷却効果をさらに向上させることができるとともに、フィルター内部で発生したガスの圧力を調整して、ガス速度を緩やかにすることができるので、エアバッグを適正な速度で展開させることができる。また、上記のようにフィルターの層密度が異なるので、スラグ捕集の際に粒子サイズ等の異なる種類のスラグを効率良く回収することができ、フィルター内での燃焼ガス圧力幅をより広げやすいものとすることができる。さらに、一本の金属線材を巻き回して形成されているため、製造が容易で製造コストを抑えることができる。以上より、一定の容積内において十分なスラグ捕集性能及びガス冷却性能を有するとともに発生ガス圧力調整性能を有する、製造容易なガス発生器用フィルターを提供することができる。
【0008】
本発明のガス発生器は、ガス放出孔を有するハウジングと、前記ハウジング内に形成され、燃焼により高温ガスを発生するガス発生剤が装填されている燃焼室と、点火薬を内包しており、前記ハウジング内に装着され、前記燃焼室内のガス発生剤を着火燃焼させるガス発生剤点火手段とを備えたガス発生器であって、前記ハウジングの内周に周方向にわたって、上記のいずれかに記載のフィルターをさらに備えているものである。
【0009】
上記構成によれば、一定の容積内において、十分なスラグ捕集性能及びガス冷却性能を有するとともに発生ガス圧力調整性能を有するガス発生器用フィルターを備えているので、十分なスラグ捕集性能及びガス冷却性能を有するとともにエアバッグを適正な速度で展開させることができるガス発生器を提供することができる。また、製造が容易なフィルターを備えているため、ガス発生器の製造自体も容易となり製造コストを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<第1実施形態>
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係るガス発生器用フィルターについて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るガス発生器用フィルターの断面図である。
【0011】
図1において、ガス発生器用フィルター100は、1本の金属線材を筒状に巻き回して形成された中空円筒状のものであり、巻き回し途中において一度張力を変えて形成されたものである。ガス発生器用フィルター100は、フィルター100内側に位置する第1層1と、フィルター100外側に位置する第2層2とからなり、フィルター100の内側には空間3が形成されている。この空間3には、ガス発生器用フィルター100が図示しないガス発生器の部品として用いられた際、ガス発生剤等が装填される。また、金属線材は、例えば、鉄、銅等が用いられる。
【0012】
第1層1は、密度が2.0×10−3〜4.0×10−3kg/cmのものに形成されているものである。なお、密度は、2.0×10−3〜4.0×10−3kg/cmの範囲で、一定でも、適宜変化してもよい。ここで、第1層1は、金属線材の張力が29N〜50Nの範囲で金属線材を巻き回して上記密度のものに形成したものである。なお、金属線材の張力は、上記密度の範囲内になるように、29N〜50Nの範囲で、一定であったり、適宜変化させたりしている。
【0013】
第2層2は、密度が0.5×10−3〜3.0×10−3kg/cmのものに形成されているものである。なお、密度は、0.5×10−3〜3.0×10−3kg/cmの範囲で、一定でも、適宜変化してもよい。ここで、第2層2は、金属線材の張力が9N〜40Nの範囲で金属線材を巻き回して上記密度のものに形成したものである。なお、金属線材の張力は、上記密度の範囲内になるように、9N〜40Nの範囲で、一定であったり、適宜変化させたりしている。そして、第2層2の密度は、第1層1の密度よりも低いものに形成されている。
【0014】
次に、ガス発生器用フィルター100の製造方法について説明する。まず、一本の金属線材を心材に巻きつけて中空円筒状に形成する。ここで、金属線材を心材に巻きつける際、フィルター100層の密度が2.0×10−3〜4.0×10−3kg/cmとなるように、29N〜50Nの張力を負荷しながら金属線材を心材に巻きつけて第1層1を形成し、次に、フィルター100層の密度が0.5×10−3〜3.0×10−3kg/cmとなるように、9N〜40Nの張力を負荷しながら金属線材を心材に巻きつけて第2層2を形成する。なお、第1層1の密度が、第2層2の密度よりも高いものとなるように巻きつける。そして、金属線材を巻きつけた後、心材を抜き取り、巻きつけた金属線材を焼結して、形状を固定する。
【0015】
次に、ガス発生器用フィルター100が図示しないガス発生器の部品として用いられ、ガス発生器が作動した際のフィルター100を通過する発生ガスの流れについて説明する。空間3内に装填された図示しないガス発生剤を着火燃焼させて発生した高温ガスは、ガス発生器用フィルター100の内側から第1層1へ入り、第1層1においてスラグ捕集及びガス冷却がされる。ここで、第1層1は、第2層2より高密度のフィルターになるように形成されており、粒子サイズの比較的小さいスラグを効率良く回収することができ、十分なスラグ捕集効果が得られるとともに、フィルター内側において短時間でより高い圧力を発生させやすいものとなる。そして、第1層1を通過したガスは、第2層2においてもスラグ捕集及びガス冷却がされる。ここで、第2層2は、第1層1より低密度のフィルターになるように形成されており、残りのスラグを回収し、第1層1を通過したガスの温度を下げるとともに、ガス速度を緩やかにし、フィルター100の外側へ放出されるガス温度及びガス速度を調節する。そして、ガスは、第2層2を通過してフィルター100の外側に放出され、図示しないエアバッグを膨張展開させる。
【0016】
本実施形態によれば、エアバッグ用のガス発生器の部品として用いられ、ガス発生器が作動した際には、第2層2よりも密度の高い第1層1において十分なスラグ捕集効果が得られるとともに、初期において、フィルター100内室で熱がこもりやすくなり、フィルター100内側において短時間でより高い圧力を発生させやすいものとなる。そして、第1層1よりも密度の低い第2層2において、その後、フィルター100外側へ放出される発生ガスの冷却効果をさらに向上させることができるとともに、フィルター100内部で発生したガスの圧力を調整して、ガス速度を緩やかにすることができるので、図示しないエアバッグを適正な速度で膨張展開することができる。また、第1層1と第2層2との層密度が異なるので、スラグ捕集の際に粒子サイズ等の異なる種類のスラグを効率良く回収することができ、フィルター100内での燃焼ガス圧力幅がより広げやすいものとなる。さらに、一本の金属線材を巻き回して形成されているため、製造が容易で製造コストを抑えることができる。以上より、一定の容積内において十分なスラグ捕集性能及びガス冷却性能を有するとともに発生ガス圧力調整性能を有する、製造容易なガス発生器用フィルター100を提供することができる。
【0017】
<第2実施形態>
次に、本発明の第1実施形態に係るガス発生器用フィルター100と同様の構成のガス発生器用フィルターを用いたガス発生器の実施形態について説明する。図2は、本発明の第2実施形態に係るガス発生器の断面図である。なお、第1実施形態におけるガス発生器用フィルター100における符号1及び2がふられている各部と、本実施形態において符号11及び12がふられている各部は、順に同様のものであるので、説明を省略することがある。
【0018】
図2において、ガス発生器200は、長尺円筒状のハウジング21と、燃焼により高温ガスを発生するガス発生剤22の外周部に長手方向に沿って配設され、第1層11及び第2層12を有するフィルター23と、ガス発生剤22を着火燃焼させるもととなる火炎を発生する点火器24と、点火器24で発生した火炎のエネルギーを増幅する伝火剤25を収容するエンハンサカップ26と、点火器24及びエンハンサカップ26をそれぞれかしめ固定しているホルダ27とを有している。そして、点火器24と、伝火剤25と、エンハンサカップ26と、ハウジング21の軸端部28において、かしめ固定されているホルダ27との構成で、ガス発生剤22の点火手段としての機能を有している。
【0019】
ハウジング21は、ガス放出孔29aが形成されている外筒材29からなるもので、例えば鉄等の金属で形成されている。ガス放出孔29aからは、ガス発生剤22の燃焼により発生した高温・高圧のガスがフィルター23を通過して、冷却、濾過されて放出される。また、各ガス放出孔29aを閉塞するようにシールテープ30が外筒材29の内周面に貼着されている。シールテープ30は、アルミ箔等で薄板帯状に形成されており、ガス発生剤22の燃焼時の圧力を調整すると共に、外部から水分やゴミがガス発生器200内に侵入するのを防止する役割を果たすものである。
【0020】
フィルター23は、単一の金属線材を筒状に巻き回した中空円筒状に形成されているものであり、第1層11と第2層12とからなる。また、フィルター23の中空の筒状部分の両端には、クッション材31、32が配設されている。
【0021】
クッション材31、32は、フィルター23の内側に充填されているガス発生剤の動きを固定している板状部材であり、ガス発生剤22を保持するように配設されており、ガス発生剤22の振動による粉状化を抑止するものである。クッション材31は、点火手段とガス発生剤22との間の仕切り部材として設けられ、フィルター23の内側の中空部分の点火器24側の端部に配設されている。また、クッション材32は、フィルター23の内側の中空部分の他端部に配設されている。
【0022】
エンハンサカップ26は、底部に1つの孔26aを有するとともに、開口部にフランジ26bを有している。孔26aの内側にはシール部材33が貼付されている。ここで、一変形例として、シール部材33は、孔26aの外側に貼付されていてもよい。また、エンハンサカップ26の底部は、クッション材31に当接しており、フランジ26bはホルダ27の突起部27aによってかしめ固定されている。このエンハンサカップ26には、鉄などの比較的固く、熱に強いとされる金属材料が用いられている。
【0023】
点火器24は、複数の電極ピン24aと、電極ピン24aが貫設されている図示しない塞栓と、カップ状部材24b内に充填されている図示しない伝火剤と、カップ状部材24bの開口部側及び電極ピン24aを覆っている図示しない絶縁体とを有している。塞栓は、例えばステンレス、アルミニウム、銅、鉄等の金属で形成されている。また、電極ピン24aも、塞栓と同様にステンレス、アルミニウム、銅、鉄等の金属で形成されている。電極ピン24aは、塞栓内では、例えばガラス、樹脂等の絶縁体(図示せず)でその周囲が覆われ、互いに絶縁されている。また、電極ピン24aの一端(カップ状部材24b側)は、発熱部(図示せず)によって架橋形成されている。点火器24は、衝突センサからの衝突信号に基づいて通電発火されて、火炎をエンハンサカップ26内に噴出し、伝火剤25を着火した後、ガス発生剤22を強制的に着火燃焼させるものである。
【0024】
ホルダ27は、点火器24及びエンハンサカップ26を保持している。また、ホルダ27は、ハウジング21の一端部に嵌挿されており、ハウジング21の軸端部28とともにかしめることによって保持され、ハウジング21の一端を閉鎖している。
【0025】
次に、ガス発生器200の作動を説明する。衝突センサが自動車の衝突を検出すると、ガス発生器200の点火器24に信号を送り、点火器24内で点火薬(図示せず)を発火させることによって、ガス及び火炎を発生させる。点火器24のガス及び火炎はエンハンサカップ26内に噴出し、伝火剤25を効率よく着火燃焼させる。そして、着火した伝火剤25から発生する火炎が、シール部材33を破り、孔26aを介して、ガス発生剤22に向けて噴出され、ガス発生剤22を着火燃焼させることで、高温ガスを効率よく発生させる。
【0026】
発生した高温高圧のガスはフィルター23内に流入し、スラグ捕集及びガス冷却がされる。特に、第2層12よりも密度の高い第1層11において、粒子サイズの比較的小さいスラグが効率良く回収されて十分なスラグ捕集効果が得られるとともに、フィルター23内室で熱がこもりやすくなり、フィルター23内側において短時間でより高い圧力が発生されやすくなる。そして、第1層11よりも密度の低い第2層12において、残りのスラグが効率良く回収されるとともに、フィルター23外側へ放出されるガスの冷却効果をさらに向上させることができる。また、第2層12において、フィルター23内部で発生したガスの圧力を調整して、ガス速度を緩やかにし、ガス速度が適正に調整されたガスがフィルター23を通過する。その後、さらにガス発生剤22の燃焼が進み、外筒材29内が所定圧力に達すると、各ガス放出孔29aを閉塞しているシールテープ30が破裂し、各ガス放出孔29aからガスがエアバッグ(図示しない)に放出され、エアバッグを急速に膨張展開させる。
【0027】
本実施形態によれば、一定の容積内において、十分なスラグ捕集性能及びガス冷却性能を有するとともに発生ガス圧力調整性能を有するガス発生器用フィルター23を備えているので、十分なスラグ捕集性能及びガス冷却性能を有するとともにエアバッグを適正な速度で展開させることができるガス発生器200を提供することができる。また、製造が容易なフィルター23を備えているため、ガス発生器200の製造自体も容易となり製造コストを抑えることができる。さらに、フィルター23内側第1層11の密度が、フィルター23外側第2層12の密度よりも高いので、フィルター23内室で熱がこもりやすくなり、フィルター23内側において短時間でより高い圧力を発生させやすいガス発生器200を提供することができる。そして、フィルター23外側へ放出される発生ガスの冷却効果をさらに向上させることができる。
【0028】
<第3実施形態>
次に、本発明の第1実施形態に係るガス発生器用フィルター100と同様の構成のフィルターを用いたガス発生器の実施形態について説明する。図3は、本発明の第3実施形態に係るガス発生器の断面図である。なお、フィルター54は、第1実施形態に係るガス発生器用フィルター100と同様の構成からなり、第1実施形態におけるガス発生器用フィルター100における符号11及び12がふられている各部と、本実施形態において符号41及び42がふられている各部とは、順に同様のものであるので、説明を省略することがある。また、点火器55は、第2実施形態に係るガス発生器200における点火器24と同様の構成からなり、第2実施形態に係るガス発生器200の点火器24における24a及び24bがふられている各部と、本実施形態において符号55a及び55bがふられている各部は、順に同様のものであるので、説明を省略することがある。
【0029】
図3において、ガス発生器300は、蓋部材51と有底部材52とからなる略短円筒状のハウジング50と、ハウジング50の内部に配置され、燃焼により高温ガスを発生するガス発生剤53と、ハウジング50の内周部に配置され、ガス発生剤53をハウジング50の径方向において囲むように配置されているフィルター54と、外部からの通電により発火する点火器55と、点火器55及び内筒材56が固定され、有底部材52と一体となっているホルダ57とで構成されている。また、内筒材56の外側室には、リテーナリング58、59とクッション材60とが収容され、リテーナリング58、59は、それぞれ蓋部材51、有底部材52の内側に沿って設けられている。また、クッション材60は、リテーナリング58の内部側に沿って設けられている。
【0030】
蓋部材51は、ガス放出孔61を複数有する筒状部51aと、この筒状部51aの一端に設けられた底状部とを有するものであり、その開口部側において拡径し、フランジ形状を成している。また、各ガス放出孔61を閉塞するようにシールテープ62が蓋部材51の内側面に貼着されている。有底部材52は、同じく筒状部と底状部とを有するものであり、底状部の中心部に設けられているホルダ57と一体となっているものである。蓋部材51と有底部材52とは、有底部材52の開口部が蓋部材51の開口部の入り口付近でかみ合って、溶接等の手段で、互いに固定されている。ここで、蓋部材51及び有底部材52の材質としては、鉄、ステンレス、アルミニウム、鋼材等の金属製のものが挙げられる。
【0031】
フィルター54は、ハウジング50内部に形成されている円柱空間外側に、かつ、ハウジング50の内壁に沿って配置されているもので、第1層41と第2層42とからなる。このフィルター54は、軸方向に対しては蓋部材51と有底部材52とに挟み込まれるようにして固定され、また、周方向に対しては有底部材52の内周部に嵌め込まれる形態で固定されている。
【0032】
ガス発生剤53は、ハウジング50内部のフィルター54にて包囲されている内部空間に装填されているものである。
【0033】
内筒材56は、内部に充填されている着火薬63の着火によって火炎が放出される火炎放出孔56aを有するとともに、開口部にフランジ56bを有するものであり、フランジ56bは、ホルダ57にかしめ固定されている。この内筒材56には、鉄などの比較的固く、熱に強いとされる金属材料が用いられる。
【0034】
ホルダ57は、有底部材52の底部と一体となって固定されているものである。ホルダ57の材質としては、鉄、ステンレス、アルミニウム、鋼材等の金属製のものが挙げられる。
【0035】
次に、ガス発生器300の作動を説明する。車輌内に配置された衝突検知装置が、車輌の衝突を検知すると、その検知信号によって点火器55を点火し、その着火炎によって内筒材56内の着火薬63が着火される。着火薬63によって点火器55からの火炎の熱エネルギーが高められた火炎は、内筒材56側筒部に形成されている火炎噴出孔56aから噴出される。火炎噴出孔56aからの火炎は、蓋部材51及び有底部材52の方向に向って噴出され、ガス発生剤53を全体的に燃焼し、発生したガスがフィルター54内に流入する。第2層42よりも密度の高い第1層41において、粒子サイズの比較的小さいスラグが効率良く回収されて十分なスラグ捕集効果が得られるとともに、フィルター54内室で熱がこもりやすくなり、フィルター54内側において短時間でより高い圧力が発生されやすくなる。そして、第1層41よりも密度の低い第2層42において、残りのスラグが効率良く回収され、フィルター54外側へ放出されるガスの冷却効果をさらに向上させることができる。また、第2層42において、フィルター54内部で発生したガスの圧力を調整して、ガス速度を緩やかにし、ガス速度が適正に調整されたガスがフィルター54を通過する。その後、ハウジング50内のガス圧が上昇して所定の圧力に達すると、ガス放出孔61を閉塞しているシールテープ62が破裂し、ガス放出孔61から高圧のガスが噴出し、エアバッグ(図示せず)を瞬時に膨張展開させる。
【0036】
本実施形態によれば、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0037】
なお、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で設計変更できるものであり、上記実施形態に限定されるものではない。また、ガス発生器用フィルターの層は、本実施形態に係る2層に限らず、3層以上であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施形態に係るガス発生器用フィルターの断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るガス発生器の断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係るガス発生器の断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1、11、41 第1層
2、12、42 第2層
3 空間
21、50 ハウジング
22、53 ガス発生剤
24、55 点火器
24a、55a 電極ピン
24b、55b カップ状部材
25 伝火剤
26 エンハンサカップ
26a 孔
26b、56b フランジ
27、57 ホルダ
27a 突起部
28 軸端部
29 外筒材
29a、61 ガス放出孔
30、62 シールテープ
31、32、60 クッション材
33 シール部材
51 蓋部材
51a 筒状部
52 有底部材
56 内筒材
56a 火炎放出孔
58、59リテーナリング
63 着火薬
23、54、100 ガス発生器用フィルター
200、300 ガス発生器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の第1のフィルター層と、
前記第1のフィルター層の外周に、前記第1のフィルター層と同心となるように設けられている筒状の第2のフィルター層とを備え、
前記第1のフィルター層と前記第2のフィルター層とが、1本の金属線材を巻き回して形成されたものであり、
前記第1のフィルター層の密度が2.0×10−3〜4.0×10−3kg/cmであり、前記第2のフィルター層の密度が0.5×10−3〜3.0×10−3kg/cmであり、
前記第1のフィルター層の密度が、前記第2のフィルター層の密度よりも高いものであることを特徴とするガス発生器用フィルター。
【請求項2】
前記第1のフィルター層において、前記金属線材を巻き回す張力が29〜50Nであり、
前記第2のフィルター層において、前記金属線材を巻き回す張力が9〜40Nであることを特徴とする請求項1に記載のガス発生器用フィルター。
【請求項3】
ガス放出孔を有するハウジングと、
前記ハウジング内に形成され、燃焼により高温ガスを発生するガス発生剤が装填されている燃焼室と、
点火薬を内包しており、前記ハウジング内に装着され、前記燃焼室内のガス発生剤を着火燃焼させるガス発生剤点火手段とを備えたガス発生器であって、
前記ハウジングの内周に周方向にわたって、請求項1又は2に記載のフィルターをさらに備えていることを特徴とするガス発生器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−78739(P2009−78739A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250605(P2007−250605)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】