説明

ガス発生器

【課題】低温の高圧ガスを噴出するガス発生器を提供する。
【解決手段】ガス発生器(10)は、ケーシング(20)にガス発生剤が装填され、ガス発生剤の反応により高圧ガスを噴出する。ケーシング(20)から高圧ガスが噴出するケーシング(20)のガス出口部(21)には、高圧ガスから吸熱する吸熱部材(40)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス発生器に関し、特に、高圧ガスの低温化対策に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス発生器には、特許文献1に開示されているように、火薬式アクチュエータに設けられているものがある。この火薬式アクチュエータは、図8に示すように、各種の車両に適用され、シリンダ(a)とピストン(b)とガス発生器(c)とを備えている。そして、例えば、衝突検知センサが衝突を検知すると、ガス発生器(c)に装填された火薬が燃焼し、該ガス発生器がシリンダ(a)内に高圧ガス(d)を噴出してピストン(b)を移動させる。この移動によりエンジンフードを持ち上げ、歩行者の衝突時におけるフードの大きな変形量を確保している。
【特許文献1】特開2004−330912号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の火薬式アクチュエータにおけるガス発生器(c)は、図7に示すように、高圧ガス(d)を燃焼後の高温のまま噴射する。そして、この高温の高圧ガス(d)をシリンダ(a)に供給する。したがって、高温の高圧ガス(d)がピストン(b)を一旦作動させた後に急激に温度が低下する。この温度低下によってシリンダ(a)内の高圧ガス(d)の体積が減少し、ピストン(b)を作動状態に維持することができないという問題があった。
【0004】
そこで、低温の高圧ガスを発生する新たなガス発生器の出現が叫ばれていた。
【0005】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、低温の高圧ガスを噴出するガス発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、ケーシング(20)にガス発生剤が装填され、該ガス発生剤の反応により高圧ガスを噴出するガス発生器を対象としている。そして、上記ケーシング(20)から高圧ガスが噴出するケーシング(20)のガス出口部(21)には、高圧ガスから吸熱する吸熱手段(40)が設けられている。
【0007】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記ケーシング(20)は、ヒューズ(51)の遮断部に高圧ガスを噴出するように上記ガス出口部(21)がヒューズ(51)に対向するように配置されている。
【0008】
第3の発明は、上記第1の発明において、上記ケーシング(20)は、シリンダ(61)に収納されたピストン(62)を高圧ガスによって移動させるアクチュエータ本体(65)に設けられている。
【0009】
第4の発明は、上記第1の発明において、上記吸熱手段(40)は、セラミック粒子が充填され、高圧ガスが通過する際に該高圧ガスの熱を吸収するように構成されている。
【0010】
第5の発明は、上記第1の発明において、上記吸熱手段(40)は、金属メッシュを備え、高圧ガスが通過する際に該高圧ガスの熱を吸収するように構成されている。
【0011】
したがって、上記第1の発明では、ガス発生剤の反応により高温の高圧ガスを発生する。そして、吸熱手段(40)が高圧ガスから吸熱する。具体的に、上記第4の発明では、吸熱手段(40)のセラミック粒子が吸熱し、また、上記第5の発明では、吸熱手段(40)の金属メッシュが吸熱する。この結果、低温となった高圧ガスが噴出される。
【0012】
特に、第2の発明では、ヒューズ(51)の遮断部に高圧ガスを噴出して該ヒューズ(51)の遮断部のアーク放電を吹き飛ばす。この際、高圧ガスが冷却されてイオン化していないことから、放電が抑制される。
【0013】
また、第3の発明では、高圧ガスがシリンダ(61)に供給され、ピストン(62)が移動することになる。その際、高圧ガスが低温となっているので、体積の減少が抑制され、ピストン(62)が移動位置を維持する。
【発明の効果】
【0014】
上記本発明によれば、高圧ガスの吸熱手段(40)を設けるようにしたために、低温の高圧ガスを噴出させることができる。この結果、上記高圧ガスの温度変化による影響を確実に抑制することができる。
【0015】
特に、第2の発明によれば、高圧ガスでヒューズ(51)の遮断部のアーク放電を吹き飛ばした際、高圧ガスが冷却されてイオン化していないことから、放電を確実に抑制することができる。
【0016】
また、第3の発明によれば、ピストン(62)を移動させた高圧ガスが冷却されていることから、体積の減少が生じないので、ピストン(62)を移動した位置に確実に維持させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
〈実施形態1〉
図1及び図2に示すように、本実施形態のガス発生器(10)は、自動車の安全装置などに用いられ、高圧ガス(11)を発生してエアバッグなどを駆動させるものである。
【0019】
上記ガス発生装置は、ケーシング(20)と、ガス発生剤の密閉容器(30)及び吸熱部材(40)とを備えている。
【0020】
上記ケーシング(20)は、例えば、一端が開放された有底円筒体に形成され、開放端部がガス出口部(21)に構成されている。
【0021】
上記密閉容器(30)は、ガス発生剤(例えば、火薬)が充填され、破裂可能に形成されている。そして、上記ケーシング(20)には、図示しないが、ガス発生剤を着火燃焼させるための着火装置を備え、該着火装置がコントローラ(図示省略)に接続されている。そして、上記ガス発生器(10)は、着火装置の作動により火薬が燃焼を開始し、つまり、ガス発生剤が反応を開始し、高圧ガス(11)を発生するように構成されている。
【0022】
上記吸熱部材(40)は、ケーシング(20)におけるガス出口部(21)に設けられている。上記吸熱部材(40)は、着火装置の作動により発生した高圧ガス(11)から吸熱する吸熱手段を構成している。上記吸熱部材(40)は、セラミック粒子が充填され、高圧ガス(11)が通過する際に該高圧ガス(11)の熱を吸収するように構成されている。つまり、着火装置の作動により発生した高圧ガス(11)がガス出口部(21)よりケーシング(20)の外部に噴出する前に上記吸熱部材(40)を通過し、この通過の際にセラミック粒子が熱を吸収し、高圧ガス(11)の温度を低下させる。
【0023】
尚、上記吸熱部材(40)は、セラミック粒子に代えて金属メッシュを備え、高圧ガス(11)が通過する際に該高圧ガス(11)の熱を吸収するように構成してもよい。
【0024】
−作用−
次に、上記ガス発生器(10)の動作について説明する。
【0025】
先ず、例えば、衝突検知センサが歩行者等の衝突を感知すると、ガス発生装置に作動信号が入力される。この作動信号によって着火装置が作動して火薬が燃焼を開始し、つまり、ガス発生剤が反応を開始する。該ガス発生剤が反応すると、密閉容器(30)内に高圧ガス(11)が充満し、密閉容器(30)内の圧力が上昇して該密閉容器(30)が破裂し、高圧ガス(11)がガス出口部(21)からケーシング(20)の外部に噴出する。この噴出の際、高圧ガス(11)が吸熱部材(40)を通過するので、高圧ガス(11)の熱が吸収され、高圧ガス(11)が低温となって噴出する(図2参照)。
【0026】
−実施形態1の効果−
上記実施形態によれば、高圧ガス(11)の吸熱部材(40)を設けるようにしたために、低温の高圧ガス(11)を噴出させることができる。この結果、上記高圧ガス(11)の温度変化による影響を確実に抑制することができる。例えば、駆動したエアバッグを駆動状態のままに維持させることができる。
【0027】
〈実施形態2〉
次に、本発明の実施形態2を図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
本実施形態は、図3及び図4に示すように、電力遮断器(50)にガス発生器(10)を適用したものである。
【0029】
具体的に、上記電力遮断器(50)は、ヒューズ(51)を備え、所定値以上の過電流が流れると該ヒューズ(51)が遮断されるように構成されている。そして、上記ガス発生器(10)は、ヒューズ(51)に遮断部に向かって高圧ガス(11)を噴射するように配置されている。
【0030】
つまり、上記ガス発生器(10)のケーシング(20)は、ヒューズ(51)の遮断部に高圧ガス(11)を噴出するように上記ガス出口部(21)がヒューズ(51)に対向するように配置されている。そして、上記ガス発生器(10)の構成は、実施形態1と同様である。
【0031】
したがって、上記ヒューズ(51)に過電流が流れると該ヒューズ(51)が遮断される。この遮断とによって着火装置が作動してガス発生剤が反応を開始する。該ガス発生剤の反応により密閉容器(30)が破裂し、高圧ガス(11)がケーシング(20)の外部に噴出する。この噴出の際、高圧ガス(11)が吸熱部材(40)を通過するので、高圧ガス(11)の熱が吸収され、高圧ガス(11)が低温となって噴出する。
【0032】
この低温の高圧ガス(11)がヒューズ(51)の遮断部を流れ、該ヒューズ(51)の遮断部に発生するアーク放電を吹き飛ばす(図4参照)。その際、高圧ガス(11)が冷却されて低温となっており、イオン化していないので、放電を確実に抑制することができる。
【0033】
〈実施形態3〉
次に、本発明の実施形態3を図面に基づいて詳細に説明する。
【0034】
本実施形態は、図5及び図6に示すように、ガス圧式アクチュエータである火薬式アクチュエータ(60)にガス発生器(10)を適用したものである。
【0035】
上記火薬式アクチュエータ(60)は、自動車の前端部に衝突した歩行者の二次衝突の衝撃を緩和するためのもので、自動車のエンジンフードの下方に設けられ、衝突信号が入力されると、エンジンフードを強制的に持ち上げるものである。
【0036】
上記火薬式アクチュエータ(60)は、シリンダ(61)と、該シリンダ(61)内に設けられたピストン(62)とを備えている。
【0037】
上記シリンダ(61)は、円筒状に形成されている。一方、上記ピストン(62)は、円盤状のピストン部(63)とロッド部(64)とを備えている。上記ピストン部(63)は、シリンダ(61)内に摺動自在に設けられている。上記ロッド部(64)の一端(下端)はピストン部(63)に連結されている。そして、上記ロッド部(64)は、シリンダ(61)を貫通し、他端である上端がシリンダ(61)の外部に露出している。上記シリンダ(61)とピストン(62)とによってアクチュエータ本体(65)が構成されている。
【0038】
上記ロッド部(64)の上端は、火薬式アクチュエータ(60)の作動時に、エンジンフードに接触して該エンジンフードを持ち上げるように構成されている。
【0039】
上記ガス発生器(10)は、シリンダ(61)の閉塞端部に取り付けられている。上記ガス発生器(10)の構成は、実施形態1と同様であり、高圧ガス(11)をシリンダ(61)に噴出するように構成されている。
【0040】
−作用及び効果−
次に、上記火薬式アクチュエータ(60)の動作について説明する。
【0041】
例えば、衝突検知センサが歩行者の衝突を感知すると、上記火薬式アクチュエータ(60)へ衝突信号が入力される。該衝突信号が入力すると、着火装置が作動して火薬が燃焼を開始し、つまり、ガス発生剤が反応を開始する。該ガス発生剤が反応すると、密閉容器(30)が破裂し、高圧ガス(11)がシリンダ(61)に噴出する(図6参照)。
【0042】
その際、高圧ガス(11)が吸熱部材(40)を通過するので、高圧ガス(11)の熱が吸収され、高圧ガス(11)が低温となってシリンダ(61)に噴出する。この高圧ガス(11)の噴出力により、シリンダ(61)からピストン(62)が突出する。そして、このピストン(62)の突出により、自動車のエンジンフードが持ち上げる。このピストン(62)がエンジンフードを持ち上げた際、高圧ガス(11)が冷却されていることから、体積の減少が生じないので、ピストン(62)を移動した位置に確実に維持させることができる。
【0043】
〈その他の実施形態〉
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0044】
上記実施形態1は、自動車の安全装置などに用いられるガス発生器(10)について説明したが、本発明は、これらに限られず、ガス発生剤によって高圧ガス(11)を噴出するガス発生器(10)に適用することができることは勿論である。
【0045】
また、実施形態3のガス発生器(10)は、必ずしもシリンダ(61)の端部に設けられるものに限られず、ピストン(62)に設けるものなどであってもよいことは勿論である。
【0046】
また、上記各実施形態では、ガス発生器(10)のガス発生剤として火薬を用いたが、これに限定されず、本発明のガス発生器(10)は、反応によりガスを発生するものであればよい。
【0047】
尚、以上の各実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明したように、本発明は、ガス発生剤の反応により高圧ガスを発生させるガス発生器について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、実施形態1のガス発生器の概略断面側面図である。
【図2】図2は、高圧ガスの噴出時を示す実施形態1のガス発生器の概略断面側面図である。
【図3】図3は、実施形態2の電力遮断器のガス発生器の概略断面側面図である。
【図4】図4は、高圧ガスの噴出時を示す実施形態2のガス発生器の概略断面側面図である。
【図5】図5は、実施形態3の火薬式アクチュエータの概略断面側面図である。
【図6】図6は、高圧ガスの噴出時を示す実施形態3の火薬式アクチュエータの概略断面側面図である。
【図7】図7は、従来のガス発生器の概略断面側面図である。
【図8】図8は、従来のガス発生器を用いた火薬式アクチュエータの概略断面側面図である。
【符号の説明】
【0050】
10 ガス発生器
11 高圧ガス
20 ケーシング
21 ガス出口部
30 密閉容器
40 吸熱部材(吸熱手段)
50 電力遮断器
51 ヒューズ
60 火薬式アクチュエータ
61 シリンダ
62 ピストン
65 アクチュエータ本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(20)にガス発生剤が装填され、該ガス発生剤の反応により高圧ガスを噴出するガス発生器であって、
上記ケーシング(20)から高圧ガスが噴出するケーシング(20)のガス出口部(21)には、高圧ガスから吸熱する吸熱手段(40)が設けられている
ことを特徴とするガス発生器。
【請求項2】
請求項1において、
上記ケーシング(20)は、ヒューズ(51)の遮断部に高圧ガスを噴出するように上記ガス出口部(21)がヒューズ(51)に対向するように配置されている
ことを特徴とするガス発生器。
【請求項3】
請求項1において、
上記ケーシング(20)は、シリンダ(61)に収納されたピストン(62)を高圧ガスによって移動させるアクチュエータ本体(65)に設けられている
ことを特徴とするガス発生器。
【請求項4】
請求項1において、
上記吸熱手段(40)は、セラミック粒子が充填され、高圧ガスが通過する際に該高圧ガスの熱を吸収するように構成されている
ことを特徴とするガス発生器。
【請求項5】
請求項1において、
上記吸熱手段(40)は、金属メッシュを備え、高圧ガスが通過する際に該高圧ガスの熱を吸収するように構成されている
ことを特徴とするガス発生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−82788(P2009−82788A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253387(P2007−253387)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】