説明

ガス発生器

【課題】車両に搭載する人員拘束装置用ガス発生器に関する。
【解決手段】ハウジング13内に配置された内筒部材17内部には、カップ状容器40内に収容された吸着剤36が配置されている。カップ状容器40は、開口部側がハウジング天井部11a(リテーナ24)との間に気体の流通が可能な間隙が形成されるようにして配置されている。作動時には、カップ状容器40はX軸方向に移動してリテーナ24に当接されて開口部が閉じられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載する人員拘束装置用ガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に取り付けられるエアバッグ装置等の人員拘束装置に使用するガス発生器は、固形ガス発生剤を使用したパイロ型ガス発生器が汎用されている。
パイロ型ガス発生器では、作動後において発生した有害ガスや、作動前にガス発生剤を湿気から保護するため水分を吸着除去する発明や、同じく作動前において固形ガス発生剤の分解により生じた成分を吸着除去する発明が提案されている。
【0003】
特許文献1では、インフレータのガス流路に設けられたフィルタ中に、ガス発生剤の燃焼により発生した有害残渣を吸着するための吸着活性物質を担持する発明が開示されている(特許請求の範囲参照)。
【0004】
特許文献2では、ガス発生器中のフィルタ部材7と環状カバー25との間の上部空間S2内に、ガス発生剤5の燃焼で発生した水分を除去するための水分除去剤を配置する実施形態が示されている(段落番号0020参照)。
【0005】
特許文献3では、ガス発生剤の分解により生じた各種ラジカルを吸着するための吸着剤をガス発生剤燃焼室内に配置した発明が開示されている(段落番号0053、0054参照)。
【0006】
特許文献1の発明では、燃焼残渣の吸着を目的としていること、特許文献2の発明では、水分吸着剤をバーストディスク20によって燃焼室と隔離しており、ガス発生器の作動後において、ガス発生剤が燃焼して生じた成分と吸着剤を接触させる発明であり、前記接触が容易になるようにガスの排出経路に吸着剤が配置されている。
このため、特許文献3の発明のようにガス発生器の作動前にガス発生剤から発生した成分を吸着保持することは困難である。
【0007】
特許文献3の発明では、ガス発生器の作動前において、ガス発生剤と吸着剤が連続空間系内に配置されているものであり、ガス発生器の作動後においても前記配置状態には変化はない。このため、ガス発生器の作動後において、高温ガスと吸着剤が接触することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−139239号公報
【特許文献2】特開平10−297415号公報
【特許文献3】特開平2001−213688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ガス発生器内に配置した吸着剤により、ガス発生器の作動前においてガス発生器内の水分やガス発生剤の分解に影響するガスを吸着することができ、ガス発生器の作動時においては、固形ガス発生剤から発生した燃焼ガスと吸着剤が接触することを防止できる、エアバッグ装置等の乗員拘束装置用ガス発生器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、課題の解決手段として、
ガス排出口を有するハウジング内部に内筒部材が配置され、前記内筒部材内部のハウジング底部側に点火手段が配置され、前記内筒部材周囲の燃焼室内に固形ガス発生剤が収容されたガス発生器であり、
さらに前記ハウジング内部には、前記固形ガス発生剤と分離してカップ状容器内に収容された吸着剤が配置されており、
前記カップ状容器が、その開口部が、前記ハウジングの天井部又は前記ハウジングの天井部に配置された部材との間にカップ状容器内外の気体の流通が可能な間隙が形成されるようにして配置され、その底部側が、前記カップ状容器の外周壁面の少なくとも一部が前記内筒部材の内周壁面と正対するようにして嵌め込まれて配置されており、
ガス発生器の作動時において、前記点火手段から生じた衝撃により前記カップ状容器が移動して、前記ハウジング天井部又は前記ハウジング天井部に配置された部材と当接することにより前記開口部が閉じられる、乗員拘束装置用ガス発生器を提供する。
【0011】
本発明のガス発生器は、内部に配置した吸着剤により、ガス発生器が作動する前に固形ガス発生剤から生じたラジカル成分(上記の特許文献3参照)のほか、ガス発生器内部に存在する水分を吸着保持するものであり、ガス発生器の作動により発生した成分(上記の特許文献1、2参照)を吸着保持するものではない。
なお、上記のガス発生器内部に存在する水分は、ガス発生器の製造過程においてガス発生器内に僅かに混入した水分である。
【0012】
本発明のガス発生器では、吸着剤はカップ状容器に収容されている。
カップ状容器は、開口部側が内筒部材のハウジング天井部側になり、底部側が内筒部材のハウジング底部側になるように嵌め込まれて配置されている。
開口部は、ハウジングの天井部又はハウジングの天井部に配置された部材との間にカップ状容器内外の気体の流通が可能な間隙が形成されるようにして配置されている。
底部側は、カップ状容器の外周壁面の全部と内筒部材の内周壁面が正対した状態(即ち、カップ状容器の全部が嵌め込まれた状態)で嵌め込まれていてもよいし、カップ状容器の外周壁面の一部と内筒部材の内周壁面が正対した状態(即ち、カップ状容器の一部が嵌め込まれた状態)で嵌め込まれていてもよい。ここで「正対している」とは、接触していてもよいし、僅かな間隔をおいていてもよいことを意味する。
なお、カップ状容器の一部が嵌め込まれた状態のときには、残部のカップ状容器の嵌め込まれていない外周壁面は、内筒部材からハウジング天井部側に飛び出した状態にすることもできる。
【0013】
本発明のガス発生器は、作動前においては、カップ状容器内外の気体の流通が可能な状態となっているため、ガス発生器(特に燃焼室)内の気体とカップ状容器内の気体が流通可能状態になっている。このため、作動前においては、ガス発生器(特に燃焼室)内の気体とカップ状容器内の吸着剤が接触可能な状態になっている。
【0014】
本発明のガス発生器は、内筒部材内にカップ状容器の全部又は一部が嵌め込まれているため、作動時において、点火手段(点火器又は点火器と伝火薬等)から発生した衝撃を受けて前記容器が移動して、前記ハウジング天井部又は前記ハウジング天井部に配置された部材と当接することで前記間隙が塞がれるようになっている。このため、作動時においては、ガス発生剤の燃焼により発生した燃焼ガスとカップ状容器内の吸着剤を接触し難くすることができる。
なお、カップ状容器の全部又は一部が内筒部材内に嵌め込まれているのは、上記のとおり、作動時において点火手段から発生した衝撃を受けたとき、その衝撃を利用してカップ状容器を移動させるためである。よって、カップ状容器の一部のみが嵌め込まれている場合には、カップ状容器の高さの1/3以上が嵌め込まれていることが好ましい。
ここでハウジング天井部に配置された部材は、例えば、ハウジング内に筒状フィルターを配置したとき、筒状フィルターの位置決めや燃焼ガスのショートパスを防止するためにハウジング天井面に当接して配置された円板状のリテーナ、ガス発生剤を保持するためのクッション材等が挙げられる。
なお、使用する固形ガス発生剤の種類によってはフィルターが省略される場合もあるから、リテーナ自体は必要に応じて使用されるものである。
【0015】
本発明のガス発生器において、内筒部材の内部に吸着剤が収容されたカップ状容器を配置する方法は特に制限されるものではなく、以下の配置方法(I)〜(VII)のようにして配置することができる。
【0016】
(I)内筒部材内に点火手段として、電気式の点火器とアルミニウム等からなる袋状容器に充填された伝火薬からなる公知の組み合わせを使用するとき、電気式点火器の上に袋状容器に入った伝火薬をおき、さらにその上に吸着剤が収容されたカップ状容器を配置する方法。このとき、点火器とカップ状容器で伝火薬を固定するようにしてもよい。
(II)内筒部材内にカップ状容器を圧入して配置する方法。
(III)カップ状容器として、開口部側の外径が底面側の外径よりも大きくされた形状のもので、底面部と開口部の間が環状斜面で形成されており、さらに前記開口部側の外径が内筒部材の内径よりも大きく、かつ前記底面側の外径が前記内筒部材の内径よりも小さくなるように調整されているものを使用し、これを内筒部材に嵌め込んで配置する方法。
(IV)カップ状容器が、内筒部材の内部に形成された環状段差部又は環状突起部に底面が当接された状態で配置する方法。
内筒部材の内部に形成された環状段差部は、内筒部材の内径の大小により形成された段差部である。
(V)カップ状容器として開口部にフランジ部を有するものを使用し、前記フランジ部が内筒部材のハウジング天井部側の周縁部に当接されるように配置する方法。
(VI)カップ状容器として開口部にフランジ部を有するものを使用し、前記フランジ部が内筒部材の内部に形成された環状段差部又は環状突起部に当接された状態で配置する方法。
内筒部材の内部に形成された環状段差部は、内筒部材の内径の大小により形成された段差部である。
(VII)カップ状容器として周面に環状段差部を有するものを使用し、前記環状段差部が、前記内筒部材の内部に形成された環状段差部又は環状突起部に当接された状態で配置する方法。
カップ状容器の周面に形成された環状段差部は、カップ状部材の外径及び/又は内径の大小により形成された段差部である。
内筒部材の内部に形成された環状段差部は、内筒部材の内径の大小により形成された段差部である。
【0017】
本発明では、カップ状容器の開口部が、気体の連通可能な複数の連通孔を有する蓋部で覆われているものでもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のガス発生器によれば、作動前には、内部に配置された吸着剤により、内部の水分や固形ガス発生剤から生じたラジカル成分が吸着保持され、作動時には、吸着剤と燃焼ガスとの接触が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のガス発生器の一実施形態を示す軸方向断面図(作動前の図)。
【図2】図1のガス発生器の作動時の軸方向断面図
【図3】図1のガス発生器の別実施形態を示す軸方向部分断面図。
【図4】(a)は、図1とはさらに別の実施形態を示す軸方向の部分断面図(作動前)、(b)は、(a)の作動後の状態を示す軸方向の部分断面図。
【図5】図4のガス発生器の別実施形態を示す軸方向部分断面図。
【図6】本発明のガス発生器のさらに別の実施形態を示す軸方向部分断面図。
【図7】図6のガス発生器の別実施形態を示す軸方向部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(1)図1、図2で示すガス発生器
図1は、本発明のガス発生器10の作動前における状態を示す軸方向断面図である。
ハウジング13は、ディフューザシェル11とクロージャシェル12から形成されている。
ディフューザシェル11は、周壁部に複数のガス排出口14を有し、内側から公知のシール部材(図示せず)で閉塞されている。
クロージャシェル12は、底部12aにハウジング13内側に折れ曲がった筒状部12bと、筒状部12bの上端から半径方向内側に折れ曲がった環状部12cが形成されている。
環状部12cで形成された中央孔に公知の電気式点火器14が取り付けられている。
点火器14は、点火器本体16が樹脂15によってクロージャシェル12と一体に形成されている。
【0021】
ハウジング13内部の中央部には、内筒部材17が配置されている。内筒部材17は、下端部17aは、クロージャシェル12の筒状部12bに圧入され、上端部17bはディフューザシェル11の天井部11aから離れた状態で配置されている。
内筒部材17の周壁部には、複数の伝火孔19が形成されており、作動前にはシール部材(図示せず)で閉塞されている。
【0022】
内筒部材17内部の下部(ハウジング底部12a側)には点火手段室20が形成されており、点火手段室20には点火器14が配置され、点火器14の上には袋状容器に充填された伝火薬22が配置されている。
伝火薬22としては、ボロン硝石や、特開2005−199867号公報に記載された燃焼温度の高いガス発生剤等を使用することができる。
【0023】
内筒部材17の外側の空間は燃焼室26であり、固形ガス発生剤28が充填されている。ガス発生剤28としては、例えば特開2005−199867号公報に記載された燃焼温度の低いガス発生剤等を用いることができる。固形ガス発生剤28は、単孔、多孔、ペレット、ディスク、ブロック等の公知の形状のものを用いることができる。
【0024】
燃焼室26は、外周が筒状のフィルタ32によって囲まれている。フィルタ32は、上端部32aがディフューザシェル11の天井部11aに当接され、下端部32bがクロージャシェル12の底部12aに当接されている。
さらにフィルタ32は、外周面はハウジング13の周壁部と隙間33を形成するように配置されている。このような隙間33を形成することで、燃焼室26で発生した燃焼ガスが、フィルタ32の全体を通過しやすく、フィルタ32が有効に使用される。
フィルタ32は、少なくとも軸X方向に圧縮可能で、ディフューザシェル11とクロージャシェル12によって、軸X方向に圧縮された状態でハウジング13内部に配置されている。
フィルタは特開平10−119705号公報に記載されているような、編んだ線材を折り曲げて圧縮成形したものや、1本の線材を多数回巻回して形成したものが使用できる。
【0025】
フィルタ32の上端部32aの内周側には、リテーナ24が配置されている。リテーナ24は、ディフューザシェル11の天井部11aに当接された円板部24aと、フィルタ32上端部32aの内周側に当接された筒状部24bを有している。
リテーナ24は、フィルタ32の上端部32aとディフューザシェル11の天井部11aとの間の隙間をカバーし、燃焼ガスが前記隙間を通って流れるショートパスが防止される。なお、リテーナ24は省略することもできる。
【0026】
内筒部材17の上端部17b側には、吸着剤36が収容されたカップ状容器40が底部側から嵌め込まれている。カップ状容器40の外周壁面41と内筒部材17の内周壁面18は一部(外周壁面41の1/3以上)が正対(接触)した状態になっている。
カップ状容器は、耐熱性や耐久性の観点から、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属からなるものである。なお、吸着剤がこぼれ落ちない程度の多孔容器内に吸着剤を入れた後、その多孔容器をカップ状容器40内に入れることもできる。
図1の実施形態では、内筒部材17の内径とカップ状容器40の外径の寸法を調整することで、内筒部材17内にカップ状容器40が圧入されて固定されている(上記配置方法(II))。
そして、カップ状容器40の開口端部40aは、リテーナ24との間に気体の流通ができる程度の間隙が形成されるように配置されている。
前記間隙は、吸着剤36が前記間隙から燃焼室26内にこぼれ落ちることがないようにするため、吸着剤36の大きさと前記間隙の大きさを調整することが好ましい。図1の実施形態では、吸着剤36の大きさと関連して、約1〜5mmの間隙を形成することが好ましい。
【0027】
カップ状容器40は、図1に示す実施形態(II)の配置方法に代えて、図3に示す上記配置方法(IV)で配置することもできる。
図3は、内筒部材17の内周面に形成された環状突起部17cにカップ状部材の底面40bが当接された状態(置かれた状態で)で配置されている。環状突起部17cは、カップ状部材40を配置できるものであれば、連続的な環状である必要はなく、複数の突起からなる不連続の環状のものでもよい。
カップ状容器40の外周壁面41と内筒部材17の内周壁面18は全部が正対(接触)した状態になっている。
【0028】
吸着剤36としては、特許文献3の段落番号0027〜0029に記載されたものを用いることができ、具体的には、下記のものを挙げることができる。
吸着剤としては、合成ゼオライト(モレキュラシーブ)、天然ゼオライト、活性アルミナ、シリカゲル、活性炭及び粘土(例えば、酸性白土、ベントナイト、ケイソウ土、カオリン、タルク)、硫酸ジルコニア等の固体超強酸、固体リン酸、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア等の固体酸等があり、この中から1種あるいは複数種を組み合わせて使用することが出来る。これらの中でも特に合成ゼオライトが好ましい。
【0029】
ゼオライトの場合、直径が0.5mmから2mmの球形ビーズタイプのものが好ましいが、ペレットタイプも使用することができる。ゼオライトは、自重の最大20質量%の水分を吸着する事が知られており、充填するガス発生剤の質量に対して1〜30質量%の範囲で加えることが好ましい。
【0030】
吸着剤36は、そのままカップ状容器40内に収容されていてもよいし、気体の流通ができ、かつ吸着剤36を保持できるような袋(例えば、網製の袋)内に充填されたものがカップ状容器40内に収容されていてもよい。
また吸着剤36は、気体との接触面積が増大されるようにするため、ハニカム状や格子状の支持体に固定されたものを用いることもできる。
【0031】
次に、図1、図2により、本発明のガス発生器の作動前における吸着剤の作用と、作動後の動作を説明する。
<作動前>
カップ状容器40の開口端部40aとリテーナ24との間に気体の流通ができる程度の間隙が確保されているため、ガス発生器10内部の気体(特に燃焼室26内の気体)は、前記間隙を通ってカップ状容器40内の吸着剤36との接触が繰り返されることになる。
ガス発生器10のガス排出口はシール部材で閉塞されているので、外部から湿気が侵入することは防止されているが、製造過程にて、ガス発生器10の内部には僅かな水分が混入されていることが考えられる。
また特許文献3に記載されているとおり、密閉されたハウジング13内で固形ガス発生剤28から発生した各種ラジカル成分等が発生する可能性もある。
しかし、これらの水分やラジカル成分等は、カップ状容器40内の吸着剤36とガス発生器10内の気体が接触を繰り返す過程で吸着保持されるため、固形ガス発生剤28が悪影響を受けることが防止される。
【0032】
<作動後>
衝撃をセンサ(図示せず)が衝撃を感知すると、その信号によって作動電流が点火器14に送られて点火器14が作動し、次いで伝火薬22が着火して高温の火炎や高温ガスを発生させる。
これらは伝火孔19から燃焼室26に噴出し、固形ガス発生剤28を点火、燃焼させる。これによりガス発生剤28が燃焼して高温・高圧のガスを生成し、この燃焼ガスは、フィルタ32の全領域を通過し、冷却、ろ過され、ガス排出口14より噴出する。
【0033】
このとき、吸着剤36が収容されたカップ状容器40は、上記したように内筒部材17内に嵌め込まれているため、点火器14及び伝火薬22が着火したときの衝撃を底面が受けて、軸X方向上に瞬間的に移動する。
すると、それまで開口していたカップ状容器40の開口端部40aがリテーナ24(リテーナ24を使用していない構造であれば、ディフューザシェル11の天井部11a)と衝突して閉じられ、カップ状容器40と燃焼室26との流通が遮断される。
このため、前記衝突等の衝撃により吸着剤36が粉砕された場合でも、その粉砕物がカップ状容器40の外に漏れることが防止される。さらに、カップ状容器40内の吸着剤36と高温の燃焼ガスが接触することも防止される。
なお、上記のとおり、燃焼室26内で発生したガスは、外側方向に流れてガス排出口14から排出されるため、カップ状容器40の軸方向への移動自体は、ガスの排出動作には影響は与えない。
また、衝撃を受けてX軸方向に移動したカップ状容器40が、衝突後に反対方向に再移動したとしても、その時点ではガスの発生及び排出は完了されているため、何の悪影響も及ぼすことはない。
【0034】
(2)図4(a)、(b)で示すガス発生器
図4(a)、(b)は、図1のガス発生器10のうち、カップ状容器40をカップ状容器140に代えたほかは同じものである。
【0035】
図4(a)で示す収容容器140は、開口端部(図1の開口端部40aと同じ)の周縁から外側に向かって伸びたフランジ142を有している。
そして、フランジ142を内筒部材17の上端部17bに当接された状態で、カップ状容器140が内筒部材17の内部に挿入されている(上記の配置方法(V))。
このため、作動前の状態では、フランジ142とリテーナ24との間に間隙が形成されており、カップ状容器140内の吸着剤36とガス発生器内の気体が接触されるようになっている。作動前においては、図1で示すガス発生器10と同じ作用効果が得られる。
【0036】
ガス発生器の作動時においては、図4(a)から図4(b)のようにカップ状容器140が移動して間隙が閉塞され、図1で示すガス発生器10と同じ作用効果が得られる。
【0037】
フランジ142を有するカップ状容器140の配置方法は、図4に示す配置方法に代えて、図5に示す上記配置方法(VI)を適用することもできる。
図5では、内筒部材17の内周面に形成された環状段差部17dにカップ状部材のフランジ142が当接された状態で配置されている。
環状段差部17dは、内筒部材17の内径の大小により形成された環状の段差部であり、フランジ142を当接できるものであれば、連続的な環状である必要はなく、複数の突起からなる不連続の環状でもよい。
【0038】
(3)図6に示すガス発生器
図6は、図1のガス発生器10のうち、内筒部材17の形状を部分的に変え、さらにカップ状容器容器40をカップ状容器240に代えたほかは同じものであり、上記配置方法(VII)によりカップ状容器240が配置されている。
【0039】
内筒部材17は、図5に示すものと同じものであり、内周面に形成された環状段差部17dを有している。
図6に示すカップ状容器240は、開口部側の内周面に環状段差部240cを有しており、対応する外周面側にも環状段差部が形成されている。
カップ状容器240は、内周面の環状段差部240cの外周面側が内筒部材17の内部に形成された環状段差部17dに当接された状態で配置されている。
カップ状容器の環状段差部240cは、カップ状容器240の外径及び内径の大小により形成された段差部である。
【0040】
(4)図7に示すガス発生器
図7に示すガス発生器は、図6の実施形態において、さらに蓋部250を組み合わせたものである。
蓋部250は、円形の底部251と周壁部252からなるものであり、底部251には気体の流通ができる複数の連通孔253が形成されている。連通孔253の大きさは、吸着剤36が飛び出さないように調整されている。蓋部250は、底部251が網からなるものでもよい。
蓋部250は、カップ状容器240の開口部に周壁部252が圧入されており、さらに環状段差部240cに周壁部252の周縁部が当接されている。
【0041】
カップ状部材240と蓋部250との組み合わせにすることにより、図1〜図6の実施形態と比べると、蓋部250と天井部11a(リテーナ24)との間隔を大きくすることができるようになる。このため、気体の流通がより容易になることから、カップ状容器240内の吸着剤と外部(燃焼室26内部)の気体との接触が促進されるようになる。
図7に示す実施形態の作動時には、図4(a)、(b)で示されるように、カップ状部材240と蓋部250が天井部11aに衝突して、蓋部250の連通孔が閉塞される。
【符号の説明】
【0042】
10 ガス発生器
11 ディフューザシェル
11a ハウジング天井部
12 クロージャシェル
12a ハウジング底部
13 ハウジング
14 電気式点火器
20 点火手段収容室
22 伝火薬
24 リテーナ
26 燃焼室
28 固形ガス発生剤
36 吸着剤
40 カップ状容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス排出口を有するハウジング内部に内筒部材が配置され、前記内筒部材内部のハウジング底部側に点火手段が配置され、前記内筒部材周囲の燃焼室内に固形ガス発生剤が収容されたガス発生器であり、
さらに前記ハウジング内部には、前記固形ガス発生剤と分離してカップ状容器内に収容された吸着剤が配置されており、
前記カップ状容器が、その開口部が、前記ハウジングの天井部又は前記ハウジングの天井部に配置された部材との間にカップ状容器内外の気体の流通が可能な間隙が形成されるようにして配置され、その底部側が、前記カップ状容器の外周壁面の少なくとも一部が前記内筒部材の内周壁面と正対するようにして嵌め込まれて配置されており、
ガス発生器の作動時において、前記点火手段から生じた衝撃により前記カップ状容器が移動して、前記ハウジング天井部又は前記ハウジング天井部に配置された部材と当接することにより前記開口部が閉じられる、乗員拘束装置用ガス発生器。
【請求項2】
前記カップ状容器が、その外周壁面の全部が前記内筒部材の内周壁面と正対するように内筒部材内に嵌め込まれて配置されている、請求項1記載の乗員拘束装置用ガス発生器。
【請求項3】
前記カップ状容器が開口部にフランジ部を有しており、前記フランジ部が前記内筒部材のハウジング天井部側の周縁部に当接された状態で配置されている、請求項1又は2記載の乗員拘束装置用ガス発生器。
【請求項4】
前記カップ状容器が開口部にフランジ部を有しており、前記フランジ部が、前記内筒部材の内部に形成された環状段差部又は環状突起部に当接された状態で配置されている、請求項1又は2記載の乗員拘束装置用ガス発生器。
【請求項5】
前記カップ状容器が周面に環状段差部を有しており、前記環状段差部が、前記内筒部材の内部に形成された環状段差部又は環状突起部に当接された状態で配置されている、請求項1又は2記載の乗員拘束装置用ガス発生器。
【請求項6】
前記カップ状容器が、前記内筒部材の内部に形成された環状段差部又は環状突起部に底面が当接された状態で配置されている、請求項1又は2記載の乗員拘束装置用ガス発生器。
【請求項7】
前記カップ状容器の開口部が、気体の連通可能な複数の連通孔を有する蓋部で覆われている、請求項1〜6のいずれか1項記載の乗員拘束装置用ガス発生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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