説明

ガス給湯装置

【課題】 簡単な制御を採用しつつもある程度正確な燃焼特性を実現することができ、排気抵抗下であっても本来の最大出力号数を発揮し得るガス給湯装置を提供する。
【解決手段】 ファンモータの負荷電流値の変化により排気抵抗の増大を検知し、ファンモータの回転数を所定量ずつ増加させる。併せて、FF制御号数にFB制御号数を加えて求めた出力号数演算値(S11)に対する上限側制限として、本来の設定最大出力号数から、設定最大出力号数に対しファン回転数のアップ回数と所定の増加号数とを乗じた号数を加えた拡大変更号数に変更する(S12〜S14)。一方、設定出湯温度と入水温度との温度差に基づいて演算した制御上の最大流量(S21)に対する上限側制限値である設定最大流量値(24L/min)は排気抵抗のない通常時のままに維持する(S22〜S24)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給排気通路の詰まりや、強風下における排気通路出口からの吹き込みにより、排気抵抗が増大したとしても、装置の本来の最大出力号数での燃焼量を発揮させ得るようにしたガス給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のガス給湯装置として、送風ファンのファンモータ電流値の変化に応じて、ガス比例弁への通電電流値を変更制御することにより、外乱(排気通路に吹き込む逆風等)により送風特性が変化しても、速やかにガス量を変更し得るようにしたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
さらに、給気部又は排気部に詰まりが生じた場合には送風ファンのファンモータの負荷電流値が減少することを利用して詰まり検知を行い、その駆動電流値がしきい値よりも低下すれば、ファンモータの回転数を増加するか、又は、ガス比例弁の開度を小さくするかの補正を行うものも知られている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第2870436号公報
【特許文献2】特開2003−14296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ガス給湯装置が高層住宅等に設置されている場合には、強風の影響を受け易くなり、排気通路出口からの強風の吹き込みにより排気抵抗が増大し易くなる。これに対し、通常はその排気抵抗の増大を検知すると、送風ファンのファンモータの回転数を所定量ずつ増加させて送風量(燃焼用空気の空気供給量)を一定に維持させるための制御が繰り返し行われることになる。例えば図8に能力1〜能力3までの3段階の燃焼能力切換が可能なガス給湯装置における出力号数(制御号数)と、ファン回転数との関係を示すように、実線で示す通常時の特性ラインが上記の如く所定回転数の1回の増加により一点鎖線で示す特性ラインに変化され、さらに2回目の所定回転数の増加が行われて二点鎖線で示す特性ラインに変化する、というようにファン回転数の繰り返しのアップ補正によって送風量を排気抵抗に抗して一定に維持させる制御が行われる。
【0006】
ところが、燃焼室においては排気通路側からの逆風流入により排気抵抗が増大している上に、給気通路側からは回転数が増大された送風により空気が押し込まれることになるため、燃焼室の内圧が増大傾向となる。このため、ガス比例弁を通してそれまでと同じガス量を供給制御したとしても、上記の内圧増大傾向に起因して燃焼室への実際のガス供給量が本来の制御上のそれよりも減少傾向となる。
【0007】
例えば図9に出力号数とバーナ1本当たりのガス量(ガス供給量)との関係を示すように、通常時には実線で示す特性ラインであったのが上記の図8の1回のファン回転数の増加後には一点鎖線の特性ラインに低下し、2回のファン回転数の増加後には二点鎖線の特性ラインまで低下するというように、ガス比例弁の開度は同じに維持したとしてもバーナに対する実際のガス供給量は減少することになる。この結果、燃焼量の減少を招き、最大出力号数が24号のガス給湯装置で本来はバーナ1本当たり最大2600kcal/h出力可能であるにも拘わらず、例えば2400kcal/hまでしか出力し得ないというように本来の給湯性能を発揮することができない状況を招来したり、あるいは、設定出湯温度の給湯を維持するためのFB(フィードバック)制御に基づき、給湯流量が絞られてしまったりする等の不都合を招くことになる。加えて、図9にも示すように燃焼量を低下させていく際の能力切換ポイントの燃焼量(ガス量)が吹き消えし易い領域(図9に破線で示す領域参照)Dsまで低下してしまうことにもなる。
【0008】
一方、これらに対処するために、上記の排気抵抗の増大の程度を検出し、その増大程度に基づいて燃焼室の内圧上昇程度を正確に把握し、それに応じて送風量やガス供給量を調整制御(補正制御)することも考えられるものの、制御の複雑化を招いたり、新たなセンサ類(例えば燃焼室内の圧力検出のための機器)の追加が必要になったりすることになる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、比較的簡単な制御を採用しつつもある程度正確な燃焼特性を実現することができ、排気抵抗下であっても本来の最大出力号数を発揮し得るガス給湯装置を提供することにある。又、併せて確実な燃焼作動をも実現させることも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、燃料ガスを燃焼させて排気ガスを排気通路から排出させる燃焼バーナと、この燃焼バーナに対するガス供給量を変更制御することにより燃焼量を変更調整するガス比例弁と、上記燃焼バーナに対しファンモータの回転作動により燃焼用空気を供給する送風ファンと、上記燃焼バーナの燃焼熱により入水を熱交換加熱して出湯させる熱交換器とを備え、上記燃焼量の変更調整と、入水から出湯に至る流量調整とにより設定出湯温度の湯を出湯させるようにしたガス給湯装置を対象にして、次の特定事項を備えることとした。すなわち、上記排気通路の排気抵抗の増大を検出したとき、上記燃焼バーナに対する空気供給量を維持すべく上記送風ファンのファン回転数を増大させる一方、ガス比例弁によるガス供給量の変更調整上の上限制限値に対応するものとして予め定められた流量調整上の上限制限値をそのままに維持した状態で、上記ガス供給量の変更調整上の上限制限値を増大側に変更させる排気抵抗発生時制御手段を備えるようにした(請求項1)。
【0011】
この発明の場合、ガス供給量の変更調整上の上限制限値(例えば設定最大出力号数)が増大側に変更されるため、たとえガス比例弁から設定最大出力号数のガス供給量を供給したとしても、排気抵抗とファン回転数の増大とにより燃焼室の内圧上昇を受けて実際のガス供給量は減少傾向になるところ、上記の設定最大出力号数よりも増大された出力号数に基づきガス比例弁によるガス供給量が増大補正可能となって、内圧上昇した燃焼室に対しても本来の設定最大出力号数に基づくガス供給量を供給し得るようになる。その一方、排気抵抗の度合に応じて、つまり燃焼室の内圧上昇度合に応じてガス供給量の増加度合等を本来は正確に求める必要があるところ、単にガス供給量の変更調整上の上限制限値を増大側に変更するだけという処理であっても、例えば上記の設定最大出力号数に対応して定められた流量調整上の上限制限値(例えば設定最大流量値)は排気抵抗のない通常時と同じ条件のままにされるため、例えばFB制御により過大なガス供給量が要求されたとしても上記の設定最大流量値の制限により燃焼量が過度に至ってしまうことが抑制されることになる。以上より、比較的簡単な制御を採用しつつもある程度正確な燃焼特性を実現することが可能となり、排気抵抗下にあっても本来の設定最大出力号数を発揮し得ることになる。
【0012】
本発明における燃焼バーナとして、それぞれ独立して燃料ガスの供給・遮断が可能な2以上の燃焼バーナ部を備え、燃料ガスの選択的供給切換により燃焼させる燃焼バーナ部を切換えることで燃焼能力が段階的に切換制御されるように構成されたものとし、上記排気抵抗発生時制御手段として、上記排気通路の排気抵抗の増大を検出したとき、上記ファン回転数の増大に対応して上記燃焼バーナの燃焼能力の切換制御上の小ガス量側境界を規定するガス量設定値をより増大側に変更させる構成とすることができる(請求項2)。上記の燃焼室の内圧上昇に起因して実際のガス供給量が減少傾向になって燃焼能力の切換制御上の小ガス量側境界のガス量が吹き消えし易い領域まで減少してしまい、失火のおそれを招いてしまうことがある。これに対し、上記の如く切換制御上の小ガス量側境界を規定するガス量設定値をより増大側に変更させることにより、失火のおそれを確実に回避して、排気抵抗下であっても確実な燃焼作動を実現させることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
以上、説明したように、請求項1又は請求項2のガス給湯装置によれば、排気抵抗とファン回転数の増大制御とに起因して内圧上昇した燃焼室に対しても、本来の設定最大出力号数に基づくガス供給量を供給し得るようになって、本来の設定最大出力号数に基づく燃焼を実現させることができるようになる。そして、かかる効果を、単にガス供給量の変更調整上の上限制限値を増大側に変更するだけという処理により実現させつつも、流量調整上の上限制限値を排気抵抗のない通常時と同じ条件のままに維持させることにより、燃焼量が過大になることを抑制して上記の設定最大出力号数に基づく燃焼状態をほぼ正確に実現させることができる。以上より、比較的簡単な制御を採用しつつもある程度正確な燃焼特性を実現することができ、排気抵抗下にあっても本来の設定最大出力号数を発揮させることができるようになる。
【0014】
特に請求項2によれば、燃焼能力を段階的に切換える燃焼バーナを採用したとしても、失火のおそれを確実に回避して、排気抵抗下であっても確実な燃焼作動を実現させることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係るガス給湯装置を示す。同図において、2はハウジング1内に収容された缶体であり、この缶体2内には熱交換器3と、ガスを燃料として燃焼させる2以上(図例では2群)の燃焼バーナ部4a,4bとが配設され、下側にはファンモータ51の回転作動により燃焼用空気を供給する送風ファン5が設けられている。上記の2以上の燃焼バーナ部4a,4bによって燃焼バーナが構成されている。
【0017】
上記熱交換器3には、水道管又は高架水槽から給水される水を上記熱交換器3に入水させる入水管6と、上記熱交換器3において加熱された湯を出湯させる出湯管7とが互いに連通して結合されている。出湯管7は図示省略の給湯管と接続され、この給湯管を通して台所や洗面所等の給湯栓に給湯するようになっている。上記入水管6には入水流量を検出する入水流量センサ8と、入水温度を検出する入水温度センサ9とが介装され、上記出湯管7には、熱交換器3から出た直後の出湯温度を検出することにより缶体2の温度を検出する缶体温度センサ10と、給湯流量を制御する流量調節弁11と、上記給湯栓に給湯される出湯の温度を検出する出湯温度センサ12とが介装されている。上記各温度センサ9,10,12は例えばサーミスタ等により構成されている。
【0018】
また、上記入水管6と出湯管7との間にはバイパス管13が接続され、このバイパス管13の途中には入水管6からの水道水のバイパス流量を調節するバイパス水量調節弁14が介装されている。このバイパス水量調節弁14が後述のコントローラ21により制御されて混水により出湯温度の温度調節(温調)が行われるようになっている。
【0019】
上記複数の燃焼バーナ部4a,4bはそれぞれ複数本(第1燃焼バーナ部4aが例えば4本,第2燃焼バーナ部4bが例えば6本)のバーナを備えたものであり、この各燃焼バーナ部4a,4bには、燃料ガス供給源側から燃焼用燃料としてガスを供給するガス供給管15が接続されている。このガス供給管15には燃料ガス供給源側から順に元栓としての元ガス電磁弁16と、ガスの供給流量を調整するガス比例弁17とが介装されている。そして、このガス比例弁17の下流側で上記ガス供給管15が分岐され、上記第1燃焼バーナ部4aに対し第1能力切換弁GV1を介してガスが供給され、上記第2燃焼バーナ部4bに対し第2能力切換弁GV2を介してガスが供給されるようになっている。この第1及び第2能力切換弁GV1,GV2の選択的開閉切換制御と、ガス比例弁16のガス供給量の変更調整制御とにより、燃焼能力を段階的・連続的に変更調整可能として出湯能力を可変としている。例えば第1能力切換弁GV1のみ開にして第1燃焼バーナ部4aのみを燃焼させる(能力1)、第1能力切換弁GV1を閉じて第2能力切換弁GV2のみを開にして第2燃焼バーナ部4bのみを燃焼させる(能力2)、あるいは、第1及び第2能力切換弁GV1,GV2を共に開にして第1及び第2燃焼バーナ部4a,4bの双方を燃焼させる(能力3)、というように、能力1〜能力3までの燃焼量の能力切換が可能となっている。
【0020】
上記出湯能力、つまり熱交換器3での熱交換後の出力(熱量)としては、最大出力号数が例えば24号の仕様であれば、所定の最小出力号数〜24号の範囲で出湯能力が可変とされている。なお、1.0号とは1L/分の水を25℃昇温させ得る出湯能力のことであり、燃焼によるガス消費量分の発熱量に熱交換効率を乗じたものに相当する。
【0021】
上記の燃焼バーナ部4a,4bは、送風ファン5から燃焼用空気の送風供給を受けて燃焼され、その燃焼熱で熱交換器3内を流れる入水を熱交換加熱する一方、排気ガスが排気通路2aを通して外部に排出される。
【0022】
上記の燃焼バーナ部4a,4b等により構成される燃焼系の燃焼作動による給湯運転はMPUやメモリー等を備えたコントローラ21(図2参照)により制御されるようになっており、このコントローラ21により設定出湯温度に基づく給湯を行う給湯運転制御を基本として排気抵抗が生じた場合の補正制御等の各種制御が行われるようになっている。すなわち、上記コントローラ21は、図2に示すように、リモコン22と接続され、給湯制御手段23と、排気抵抗発生時制御手段24とを備えており、リモコン22や各種センサ8,9,10,12からの出力信号や、ファンモータ51への通電電流値の変化等に基づいて上記の燃焼系や流量調節弁11他を作動制御するようになっている。
【0023】
上記記給湯制御手段23は、FF(フィードフォワード)制御やFB(フィードバック)制御を前提として、空気量制御部25、ガス量制御部26、流量制御部27及び能力切換制御部28等の各処理をFF制御号数FB制御号数等の制御号数(出力号数)に基づき実行するようになっている。かかる給湯制御手段23による基本の給湯制御について説明すると、ユーザがリモコン22に対し所望の湯温(設定出湯温度)を入力設定した状態で給湯栓を開くと入水管6から水が入水され、入水流量センサ8から最低作動水量(MOQ)以上の流量検出を受けて燃焼作動させて給湯運転制御が開始され、そして、使用者が給湯栓を締めて入水流量センサ8からの検出値が最低作動流量よりも低くなれば、燃焼系による燃焼を停止させて給湯運転制御が終了される。
【0024】
上記の給湯運転制御は、上記燃焼系を上記設定出湯温度の湯が出湯されることになるように燃焼作動させることにより行われる。この燃焼作動制御は、まずは入水流量センサ8や入水温度センサ9からの検出値に基づき上記設定出湯温度に対応するFF制御号数に基づいて燃焼作動させ、次に缶体温度センサ10又は出湯温度センサ12からの検出温度に基づくFB制御号数を加味して燃焼作動させる。以上のFF制御号数又はFB制御号数という目標制御号数に基づく燃焼作動は、能力切換制御部28による第1及び第2能力切換GV1,GV2の選択的開作動により燃焼作動させる燃焼バーナ部4a,4bの数を所定数に設定した上で、所定の空燃比で上記目標制御号数に相当するガス供給量及び空気供給量となるようにガス量制御部26及び空気量制御部25から作動信号を出力することにより実現される。すなわち、所定のガス供給量となるようにガス比例弁17に対しガス量制御部26から作動信号が出力され、所定の空燃比を実現させる空気供給量になるように所定の回転数で作動させるための作動信号が送風ファン5のファンモータ51に空気量制御部25から出力され、これにより、目標制御号数、つまり所定の出力号数の燃焼状態にされる。
【0025】
上記FF制御号数は、入水流量センサ8からの入水流量と、入水温度センサ9からの入水温度と、設定出湯温度とに基づいて、入水を設定出湯温度まで昇温させるのに必要な燃焼量(熱量)として演算により得られるものである。そして、上記FB制御号数は、例えば出湯温度センサ12により検出される実際の出湯温度と、設定出湯温度との温度差に基づいて、実際の出湯が設定出湯温度になるようにFF制御号数に対する号数の増減分が定められる。
【0026】
排気抵抗が生じていない通常時のガス量制御部26による制御は図3(a)に示すように行われる。すなわち、上記のFF制御号数により燃焼が開始された後は、FB制御号数を演算して、そのFB制御号数を上記FF制御号数にプラスして出力号数(出力号数=FF制御号数+FB制御号数)の演算処理を行う(ステップS110)。演算された出力号数(図3では「FF+FB」と表示)がガス供給量の上限制限値としての最大出力号数(MAX号数:例えば24号)よりも大きいか否かを判別し(ステップS120)、大きければ出力号数としてはMAX号数を設定する一方(ステップS130)、最大出力号数よりも小さければ演算された出力号数をそのまま用いて(ステップS140)、ガス出力処理を行う(ステップS150)。ガス出力処理は上述のガス比例弁17に対する作動信号と、送風ファン5に対する作動信号の出力とにより行われ、これが繰り返される。要するに、出力号数がMAX号数を超えることにならないように制限しているのである。
【0027】
又、流量制御部27は、MAX号数を超えることのないように設定最大流量値(例えば24L/min)を定めておき、流量調節弁11による流量変更調節が流量調整上の上限制限値である上記の設定最大流量値を超えることにならないように流量制御するようになっている。すなわち、図3(b)に示すように、現在の燃焼状態での制御上の最大流量として設定出湯温度と検出入水温度との温度差でMAX号数を除することにより求め(ステップS21)、この最大流量が上記の24L/minよりも多ければ24L/minに制限し(ステップS22でYES,ステップS23)、小さければステップS21で演算された値をそのまま用いて(ステップS22でNO)、流量調節弁11による流量制御を行う。
【0028】
上記排気抵抗発生時制御手段24は、上記の燃焼作動中に排気抵抗が生じれば、送風ファン5の回転数を設定回転数ずつアップさせる基本制御部分と、制御号数(出力号数)に対する制限(上限をMAX号数とする制限)を増大側に変更拡大する最大ガス量変更制御部分と、能力切換制御部28における能力切換ポイントの設定最小ガス量及び設定出力号数を増大側に変更する能力切換ポイント変更制御部分との各制御を実行するようになっている。
【0029】
上記の基本制御部分は、図4に示すように、ファンモータ51に対する負荷電流値の変化を監視し(ステップS1)、その負荷電流値が低下すると(ステップS1でYES)、その低下量が予め設定されたしきい値である判定量よりも大きければ排気抵抗が発生したと判定する一方(ステップS2でYES)、判定量よりも小さければ対策が必要な排気抵抗は生じてはいないと判定して上記のステップS1の負荷電流値の変化の監視を継続する(ステップS2でNO)。そして、排気抵抗が発生したと判定された場合には、送風ファン5の回転数を設定回転数だけ増大させ(ステップS3)、その回転数をアップさせた回数であるアップ回数Nに「1」を加える(ステップS4)。このアップ回転数Nが所定回数(例えば10回)に達するまでステップS1〜ステップS4を繰り返し、その都度、送風ファン5の回転数を設定回転数ずつ増大させる(ステップS5でNO,ステップS1〜S4)。そして、このアップ回数Nが所定回数を超えてもなおファンモータ電流値が低下し続ければ、燃焼の強制停止等の異常処理を実行する(ステップS6)。かかる基本制御部分による制御だけであれば、前述の図8に示すような特性ラインの変更が行われることになる。
【0030】
上記の最大ガス量変更制御部分は、図3(a)に示す通常時のガス量制御部26による制御を、図5(a)に示す排気抵抗発生時のガス量制御部26による制御に変更させる一方、図3(b)に示す流量制御部27による流量制御は図5(b)に示すように図3(b)のものから変更せずに同じ制御内容をそのまま維持させるようになっている。要するに、図5(a)ではMAX号数に基づく上限を増大側に拡大変更させるものの、24L/minという設定最大流量値の制限は通常時のままに維持させるようになっている。すなわち、図5(a)に示すように、FF制御号数により燃焼が開始された後は、上記のステップS110と同様に、FB制御号数を演算し、そのFB制御号数を上記FF制御号数にプラスして出力号数(出力号数=FF制御号数+FB制御号数)の演算処理を行う(ステップS11)。演算された出力号数(「FF+FB演算」)が、MAX号数にファン回転数のアップ分に対応する付加号数(ファン回転数のアップ回数N×所定の設定増加号数A)を加えた拡大変更号数よりも大きいか否かを判別し(ステップS12)、大きければ出力号数としては上記拡大変更号数を設定する一方(ステップS13)、上記拡大変更号数よりも小さければ演算された出力号数をそのまま用いて(ステップS14)、上記のステップS150と同様のガス出力処理を行う(ステップS15)。要するに、出力号数の上限側制限値をMAX号数から上記の拡大変更号数に変更しているのである。
【0031】
その一方、流量制御部27は、図5(b)に示すように、図3(b)にステップS21〜S24で示す通常時の制御と同じ制御、すなわち、設定最大流量値(例えば24L/min)を定めておき、流量調節弁11による流量変更調節がその設定最大流量値を超えることにならないように流量制御するようになっている。
【0032】
又、能力切換ポイント変更制御部分は、能力1〜能力3の能力切換ポイントの内、特に燃焼能力を低下させる際の能力切換ポイント(小ガス量側境界)の最小ガス量値(ガス量設定値)を増大側に変更する変更処理と、燃焼能力を低下させる際の能力切換を実行する能力切換ポイントの設定切換出力号数を増大側に変更する変更処理とを行うようになっている。これらの増大側変更は、上記と同様にファン回転数のアップ分に対応する増分ずつ付加して変更するようになっている。すなわち、最小ガス量値については、通常時の設定最小ガス量値に上記アップ回数N×設定増加ガス量Gという増分を加えるようにし、設定切換出力号数については、通常時の設定切換出力号数に上記アップ回数N×設定増加号数Bという増分を加えるようにする。
【0033】
以上の排気抵抗発生時制御手段24による制御により、ファン回転数は図6に示すように1回目の設定回転数のアップにより通常時の実線で示す特性ラインFnから一点鎖線の特性ラインF1へ、2回目の設定回転数のアップにより特性ラインF1から二点鎖線の特性ラインF2へ順次回転数増側に移動する。なお、図示を省略しているが3回目の設定回転数アップにより特性ラインは順次回転数増側に移動する。この際、併せて、変更後の特性ラインF1,F2,…の低下時の能力切換ポイントが上記の能力切換ポイント変更制御部分による最小ガス量値の増大側変更に基づく比例制御及び設定切換出力号数の増大側変更によって移動する(図8の基本制御部分だけによる場合と対比参照)。又、各燃焼能力切換段階(能力1〜能力3)における燃焼バーナ部4a,4bのバーナ1本当たりのガス量も図7に示すように、通常時の特性ラインSnから上記の1回目の回転数アップにより特性ラインS1(同図の一点鎖線参照)へ、2回目の回転数アップにより特性ラインS2(同図の二点鎖線参照)へそれぞれ移動する(3回目以降の特性ラインは図6と同様に省略している)。これらの特性ラインS1,S2,…も上記の最小ガス量値の増大側変更及び設定切換出力号数の増大側変更によって移動する(図9の基本制御部分だけによる場合と対比参照)。この結果、燃焼能力の低下側への能力切換の際の能力切換ポイントにおけるガス量値が吹き消えし易い領域Dsよりも大となって、失火を防止して確実な安定燃焼状態での能力切換が可能となる。
【0034】
又、最大ガス量変更制御部分による制御によってFF制御号数+FB制御号数に基づく燃焼作動においても、その演算後の出力号数(=FF制御号数+FB制御号数)の演算値がMAX号数を超えるものになったとしても、従来の如くMAX号数で上限が制限されることなく拡大変更号数まで許容されることになる。このため、MAX号数に対応する分だけガス比例弁17でのガス流量を制御しても実際のガス供給量は燃焼室内の内圧上昇に起因して本来制御のガス供給量よりも少なくなってしまうという不都合を解消して、燃焼室内への実際のガス供給量を排気抵抗に抗して本来のMAX号数に対応するガス供給量とすることができ本来の最大熱量(ガス量:図7で2600kcal/h)まで発揮させることができるようになる。しかも、かかる制御の際に、流量調節弁11が本来の通常時と同様の設定最大流量値に基づく制限の下で制御されるため、上記のFB制御号数(実際の出湯温度に基づく要求号数に近付けるための増減号数)が上記の元々の設定最大流量値の制限に基づいて演算されて出力号数が定められることになる。これにより、上記のMAX号数による制限を解除して拡大変更号数に上限を増大したとしても、演算される出力号数に上記の設定最大流量値に基づく制限がかかるため、本来のMAX号数に基づく本来の最大熱量(ガス量:2600kcal/h)よりも高くなることを抑制させることができる。
【0035】
以上より、出力号数についての上限側制限(MAX号数)を外して変更拡大号数へとラフに増大させる一方、元々MAX号数に対応して定められる設定最大流量値を通常のままに維持することで、排気抵抗に対応する分だけの回転数やガス供給量の必要増量分(例えば燃焼室の内圧上昇によるガス供給量の低下分の補正量)についての正確かつ複雑な必要アップ率等の演算等をする必要なく、排気抵抗が生じていても燃焼室への実際のガス供給量を本来のMAX号数に対応するものにすることができる上に、過度の燃焼量になることを抑制して最大側の燃焼量を本来の最大燃焼量に止めることができる。つまり、強風(例えば風速30m/sec)下に晒されて排気抵抗が生じたとしても、ガス給湯装置の最大出力号数の低下を防止して、本来の最大出力号数(例えば24号)での燃焼量を発揮させることができるようになる。そして、かかる効果を制御上の処理によって解決することができるため、ガス比例弁17として、大気圧とバランスさせる通常の安価なものを用いてガス給湯装置を構成することができ、例えば燃焼室の内圧とバランスさせる差圧検知式の高価なものを用いる必要もない。
【0036】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、上記実施形態では、排気抵抗の検出・判定をファンモータの電流値変化を監視することにより行っているが、これに限らず、他の手段を用いてもよい。例えばバーナセンサを用いて排気抵抗の発生を検出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態を示す模式図である。
【図2】実施形態のコントローラの構成を示すブロック図である。
【図3】基本制御部分に係る制御内容を示し、図3(a)はガス量制御のフローチャートであり、図3(b)は流量制御のフローチャートである。
【図4】排気抵抗発生時の送風量のアップ補正制御に係るフローチャートである。
【図5】変更制御部分に係る制御内容を示し、図5(a)はガス量制御のフローチャートであり、図5(b)は流量制御のフローチャートである。
【図6】変更制御部分に係る出力号数とファン回転数との関係図である。
【図7】変更制御部分に係る出力号数とバーナ1本当たりのガス量との関係図である。
【図8】単なるファン回転数のアップ補正制御に係る出力号数とファン回転数との関係図である。
【図9】図8のアップ補正制御の場合の出力号数とバーナ1本当たりのガス量との関係図である。
【符号の説明】
【0038】
2a 排気通路
3 熱交換器
4a,4b 燃焼バーナ部(燃焼バーナ)
5 送風ファン
17 ガス比例弁
24 排気抵抗発生時制御手段
51 ファンモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを燃焼させて排気ガスを排気通路から排出させる燃焼バーナと、この燃焼バーナに対するガス供給量を変更制御することにより燃焼量を変更調整するガス比例弁と、上記燃焼バーナに対しファンモータの回転作動により燃焼用空気を供給する送風ファンと、上記燃焼バーナの燃焼熱により入水を熱交換加熱して出湯させる熱交換器とを備え、上記燃焼量の変更調整と、入水から出湯に至る流量調整とにより設定出湯温度の湯を出湯させるようにしたガス給湯装置において、
上記排気通路の排気抵抗の増大を検出したとき、上記燃焼バーナに対する空気供給量を維持すべく上記送風ファンのファン回転数を増大させる一方、ガス比例弁によるガス供給量の変更調整上の上限制限値に対応するものとして予め定められた流量調整上の上限制限値をそのままに維持した状態で、上記ガス供給量の変更調整上の上限制限値を増大側に変更させる排気抵抗発生時制御手段を備えている、
ことを特徴とするガス給湯装置。
【請求項2】
請求項1記載のガス給湯装置であって、
上記燃焼バーナは、それぞれ独立して燃料ガスの供給・遮断が可能な2以上の燃焼バーナ部を備え、燃料ガスの選択的供給切換により燃焼させる燃焼バーナ部を切換えることで燃焼能力が段階的に切換制御されるように構成され、
上記排気抵抗発生時制御手段は、上記排気通路の排気抵抗の増大を検出したとき、上記ファン回転数の増大に対応して上記燃焼バーナの燃焼能力の切換制御上の小ガス量側境界を規定するガス量設定値をより増大側に変更させるように構成されている、
ことを特徴とするガス給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−57814(P2008−57814A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233064(P2006−233064)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【出願人】(503116659)ノーリツエレクトロニクステクノロジー株式会社 (155)
【Fターム(参考)】