説明

ガス絶縁開閉装置状態監視システム

【課題】既存のGIS設備は、監視装置の設置が考慮されていないため、監視装置の追加設置が困難という課題があった。
【解決手段】少なくとも1つのGISの構成機器状況を、そのGISと離れた遠隔地にあるコンピュータで遠隔監視するためのガス絶縁開閉装置状態監視システム10であって、GISの構成機器状況の特定監視項目を監視するための監視センサに接続され、かつ、監視センサからの検出信号を信号処理して特定監視項目の監視情報を生成するために、特定監視項目毎にGISに取り付けられる少なくとも1つの個別監視ユニット12A−1と、個別監視ユニット12A−1、及び、コンピュータ15、17に接続され、かつ、個別監視ユニット12A−1の監視情報を、コンピュータ15、17に送信する信号処理ユニット11A−1とを有してガス絶縁開閉装置状態監視システムを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス絶縁開閉装置の状態監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
変電所に設置されるガス絶縁開閉装置(GIS)、または、ガス絶縁遮断器(GCB)の遠隔監視は、主に変電所の中央操作室のDCS(Distributed Control System)の制御システムで行われる。また、その監視項目は、主回路の電流、電圧、開閉装置等の遮断、投入など、変電所の運転に直接関係する項目に限られ、GIS内、又は、GCB内の部分放電、ガス圧力、動作時間などのGIS又はGCBの設備状況は、遠隔監視されていない。
【0003】
GISやGCBの設備状況の監視は、そのGIS又はGCBに設備状況監視用のセンサとセンサに接続された監視用計器がある場合は、監視用計器による現場監視で行われる。また、発電所などに設置されている既設のGISやGCBには、その設備状況監視用のセンサすらとりつけられていないものも多く、そのようなGISやGCBの監視は、GISやGCBの容器を開けて総点検を行う必要がある。
【0004】
このような現場監視方法では、異常状態の判別時間、並びに、復旧処理時間の長期化を招き、GISやGCBの運転信頼性の低下につながる。
そのため、GISやGCBの信頼性向上を図るため、既存のGISやGCBに、設備状況監視センサに遠隔監視用の中継器を新規に設置して、その中継器を介して、遠隔地にいる作業員やメーカ技術者が遠隔監視可能な状態監視システムが必要とされている。
【0005】
そのようなシステムとして、変電所より遠方での制御監視を行うための監視装置として、変電所に備え付けられた電力監視装置からのデータを、リモート端末で閲覧可能な状態に変換するために、電力監視装置とリモート端末にネットワーク接続したデータ変換装置が提案されている(特許文献1)。
【0006】
また、それぞれがプラントを監視する複数の監視制御システムをイントラネットと接続して、モバイルエージェントによりその複数の監視制御システムから保守情報を収集するプラント監視制御システムが提案されている(特許文献2)。
【0007】
さらに、GISに取付けられた遮断器へ電力入力検知のためのCTセンサ、開放指令入力検知のためのTCセンサ、接点コンタクト検知のためのCCセンサ、部分放電検知センサで検知された信号をデータ収集装置に集め、そのデータ収集装置からネットワークを介して遠隔にある監視サーバにより監視を行う遠隔監視システムが提案されている(特許文献3)。
【0008】
また、計器用変流器CTおよび計器用変圧器PTで検出した事故電流データを、インターネットのメールサービスを利用して、遠隔地の作業員や設備関連メーカに送信する変電所事故情報伝達システムが提案されている(特許文献4)。
【0009】
【特許文献1】特開2002−369410号公報
【特許文献2】特開2002−32122号公報
【特許文献3】特開2002−171696号公報
【特許文献4】特開2002−345173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記先行技術の遠隔監視システムは、いずれも、インターネット等による監視システムを提案しているが、問題は、設備状況監視のために既存または新規設置したセンサからの検出信号を遠隔装置に送信する中継器を、いかにして備え付けるかに関しては何の解決策も提案されていない。
【0011】
さらに、既存のGISやGCBは、設備状況を遠隔監視することが考慮されていないため、センサの検出信号を遠隔に送信するための中継器を備え付けるための十分なスペースがその制御盤内に無いため、上記のような中継器をGISやGCBに設置するのが困難となっている。
そのため、制御盤に、十分な設置スペースの無いGISに対しても、遠隔装置への中継器を設置可能なほどに小さい中継器が必要である。
【0012】
また、遠隔装置で、センサの検出データを処理する場合、ウェブサーバ等を介してその検出データを送信し、かつ、遠隔装置内で信号処理することになるため、遠隔装置側に高度な信号処理機能が必要となる。遠隔装置に高度な処理機能を要求すると、その処理機能を実現するための特定の高速CPUや処理アプリケーションが必要となるため、遠隔装置として設置可能なコンピュータは限定される。さらには、遠隔監視場所の限定となり、結果的に遠隔監視の利便性を損なうこととなる。
そのため、制御盤に設置する中継器は、単なるセンサの検出信号の中継器ではなく、監視項目毎に異常の判別等の高度な信号処理を行う機能を備える必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の課題を解決するために、本発明に係るガス絶縁開閉装置状態監視システムは、少なくとも1つのガス絶縁開閉装置の構成機器状況を、そのガス絶縁開閉装置と離れた遠隔地にあるコンピュータで遠隔監視するためのガス絶縁開閉装置状態監視システムであって、ガス絶縁開閉装置の構成機器状況の特定監視項目を監視するための監視センサに接続され、かつ、監視センサからの検出信号を信号処理して特定監視項目の監視情報を生成するために、特定監視項目毎にガス絶縁開閉装置に取り付けられる少なくとも1つの個別監視ユニットと、個別監視ユニット、及び、コンピュータに接続され、かつ、個別監視ユニットの監視情報を、コンピュータに送信する信号処理ユニットと、を有するガス絶縁開閉装置状態監視システムを提供する。
【0014】
また、本発明に係るガス絶縁開閉装置状態監視システムは、個別監視ユニットと、信号処理ユニットとをマルチドロップ方式のネットワークで接続することで、個別監視ユニットの新規追加又は削除を容易に行うことが可能である。
【0015】
さらに、第1のガス絶縁開閉装置に取付けられ、かつ、第1の監視情報を第1のネットワークを介してコンピュータに送信する第1の信号処理ユニットと、第2のガス絶縁開閉装置に取付けられ、かつ、第2の監視情報を第2のネットワークを介して第1の信号処理ユニットに送信する第2の信号処理ユニットとを有することで、複数のGISユニットあるいは複数の変電所からなるGIS装置の監視情報を集約して、上述のコンピュータに送信可能である。
【0016】
また、上記の信号処理ユニットは、ガス絶縁開閉装置の構成機器状況の特定監視項目を監視するための監視センサに接続され、かつ、監視センサからの検出信号を信号処理して特定監視項目の監視情報を生成しても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ガス絶縁開閉装置状態監視システムにおいて、信号処理ユニットをガス絶縁開閉装置毎に設置するようにしたので、ガス絶縁開閉装置毎の設備状況をデータ収集できる。また、これらの信号処理ユニットは、DCS等の中央操作室設置のシステムとは別個に設置可能であり、そのため、安価にシステムを構成することが可能である。
【0018】
また、特定監視項目毎に小型の個別監視ユニットを用意することで、GISの制御盤に十分な設置スペースが無い場合でも、その個別監視ユニットおよびその個別監視ユニットに接続された信号処理ユニットにより遠隔監視を行うことが可能である。
【0019】
さらにその個別監視ユニットは、特定監視項目毎に異常情報等の判別処理を迅速に行うことが可能であるため、遠隔設置されたコンピュータは、判別処理後の結果だけを取得する機能だけで十分であり、市販の安価なコンピュータとブラウザで、遠隔によるGISの設備状況を監視することが可能である。
【0020】
また、その個別監視ユニットは、特定監視項目毎に追加設置可能であるため、必要な特定監視項目に限定して、その対象となる個別監視ユニットを設置し、後に、容易にその個別監視ユニットを新規追加または削除することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態である遠隔監視システムの機能構成を示す図である。ガス絶縁開閉装置状態監視システム10は、A変電所にある複数のGISユニットから構成されるGIS設備の状態監視を行う。ガス絶縁開閉装置状態監視システム10は、各GISユニット1、2、3に取付けられた信号処理ユニット11A、11B、11Cを有する。
なお、説明のため、信号監視ユニットは3つのみ示すが、GISユニットの数に従い3つ以上あっても良い。
【0022】
信号処理ユニット11A、11B、11Cは、それぞれ、マイクロプロセッサボード21を搭載する。信号処理ユニット11Aのマイクロプロセッサボード21は、シリアルケーブルやIOケーブルによりセンサ12A、12B、12Cと接続され、また、そのマイクロプロセッサボード21は、CAN(Controller Area Network)に準拠したシリアルケーブルであるネットワークLAN1により、他の信号処理ユニット11B、11Cのマイクロプロセッサボードと相互に接続される。
【0023】
マイクロプロセッサボード21は、GISユニットに取付けられた部分放電監視、ガス圧力計測、事故点標定、動作時間計測、ストローク計測、開閉表示、制御電流/電圧計測、温度計測のためのセンサ12A、12B、12Cに、シリアル接続、IO端子接続等の接続方法により接続される。そして、マイクロプロセッサボード21は、センサA、12B、12Cからのアナログ情報を、IO認識やAD変換、さらに、信号処理し、GISユニットの計測・監視・表示用のデータを生成する。
【0024】
信号処理ユニット11Aは、さらに、デバイスサーバ31を有する。デバイスサーバ31は、マイクロプロセッサボード21とシリアル接続され、マイクロプロセッサボード21からのシリアルデータをパケット化等することにより、イーサネット(登録商標)送信用のデータに変換する。さらに、デバイスサーバ31は、インターネット接続のためのHTTP(Hypertext Transfer Protocol)、SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)等のプロトコルにより、インターネットやイントラネットに接続されたコンピュータとのデータ通信が可能である。
【0025】
この変換機能とインターネット通信機能を用いて、デバイスサーバ31は、信号処理ユニット11A、11B、11CのGISユニットの計測・監視・表示用のデータを、インターネットに接続した遠隔地設置のコンピュータ15、17に対して送信する。
【0026】
コンピュータ15、17は、単に計測データを管理・表示するのみとし、計測データの監視は各GISユニットに搭載した信号処理ユニット11A、11B、11Cにおいて実施する。例えば、信号処理ユニット11A、11B、11Cは、事故点標定を観測する場合は、事故発生時に事故点標定を行い、制御電流/電圧の計測を行う場合は、計測監視データが境界値を下回るもしくは超えるなどの場合に、主機器異常判定を実施する。
【0027】
そのため、コンピュータ15、17は、信号処理ユニット11A、11B、11Cによる判別処理後の評定や判定結果を取得する機能だけが要求され、そのため、市販の安価なコンピュータとブラウザで、遠隔でGISの設備状況を監視することが可能である。
【0028】
コンピュータ15は、HTTPを利用して、GISユニットの計測・監視・表示用のデータを、ブラウザに表示可能なコンピュータである。コンピュータ17は、SMTPを利用して、計測・監視・表示用のデータをメールのビューワによりテキスト表示可能なコンピュータである。コンピュータ17は、例えば、24時間監視を行う必要がある作業員やメーカ技術者の担当者などに、異常を知らせるためのものであっても良く、例えば、メール受信機能のある携帯電話であっても良い。
【0029】
信号処理ユニット11B、11Cは、コンピュータ15、17にデータ送信する機能を必要としないため、デバイスサーバ31を有しないが、その他の機能は、信号処理ユニット11Aと同じである。
【0030】
このように、GISに取付けた信号処理ユニット11A、11B、11Cにより、各計測データを遠隔地にあるコンピュータ15上で監視・管理・表示を行うことが可能である。
【0031】
図2は、本発明の実施形態である信号処理ユニットの機能構成を示す図である。
信号処理ユニット11Aは、マイクロプロセッサボード21と、デバイスサーバ31を有する。
【0032】
そして、マイクロプロセッサボード21は、センサ12A−1、12A−2、12A−3とIO又はシリアル接続されるAD変換器23、AD変換器23からのデジタル信号を処理して、GISユニットの監視・管理・表示データを生成するDSP(Digital Signal Processor)24、メモリ26、CAN(Controller Area Network)I/F28、監視・管理・表示データを、デバイスサーバ31へ送信するシリアルI/F29を有する。
なお、監視項目の数に従いセンサの数は決まるが、説明のため、センサの数は3つとする。また、AD変換器23のチャネル数も、センサの数に比例して図示した数よりも多くなる。尚、AD変換器23、メモリ26、CANI/F28、シリアルI/F29を内蔵するDSPを採用しても良い。
【0033】
また、デバイスサーバ31は、シリアルI/F29とシリアル通信するためのシリアルI/F32、シリアル通信により受信した監視・管理・表示データを、HTTP/SMTP等のインターネット用プロトコルに従ってデータ処理するためのCPU34、データ処理されたデータをインターネットに送信するためのNIC(Network Interface Card)36を有する。
【0034】
DSP24は、信号処理で非常に多く用いられる積和演算が高速に処理できるように、ハードウェア乗算器、乗算と加算が同時に行えるなど信号処理に特化した機能が実装されており、並列処理を意識した命令体系を採用して、1命令(1マシンサイクル)で複数の処理を実行することが可能である。メモリ26は、DSP24からのキャッシュデータ又はプログラムを格納するための高速メモリである。DSP24が、メモリ26用の外部バスにアクセスすることによる性能の低下があるため、データ量が多くない場合は、メモリ26を用いず、DSP24内部の高速メモリを使用しても良い。
【0035】
このようにDSP24の高速演算能力を利用することで、万一の事故による事故点標定や、計測監視データが境界値を下回るもしくは超えるなどの主機器異常判定計算を、信号処理ユニット11A、11B、11C内でリアルタイム処理することが可能である。
【0036】
CANI/F28は、自動車向けの通信プロトコルとして開発されたシリアル通信プロトコルである。CANは、1Mbps転送速度であり、制御系LANとしては、適度なアクセススピードを実現しており、エラー検出として送信テキスト2つ、受信テキスト3つのエラー検出機能があり、かつ、0〜8バイトと短いメッセージ構成がとなっているため、再送信などの場合、再送までの時間がかなり短くなる等の特徴がある。また、マルチマスタ方式の通信となり、バスアクセスの優先順位は、IDの低いものが優先となるなど、プロトコルが簡易にできており、そのため外部ノイズによる影響を受けにくいプロトコルである。
【0037】
このように、GISという高い信頼性が求められる装置に対して、DSP24の高速処理と、CANのような高い信頼性のあるプロトコルを通信手段として用いることで、信号処理ユニットは、リアルタイム処理と信頼性のある通信によるGIS監視機能を提供する。
【0038】
デバイスサーバ31には、例えば、LANTRONIX社のXportのような、シリアルインタフェースを持つデバイスのデータをイーサネット(登録商標)で通信できるデータに変換するデバイスが適用可能である。Xportのようなデバイスサーバ31は、シリアルI/F32と、イーサネット(登録商標)I/F36がその大きさの大半を占めるため、たばこの箱程度の大きさであり、信号処理ユニット11Aの小型化を可能にしている。
【0039】
マイクロプロセッサボード21の大きさは、DSP24が極めて小さいため小型化が可能であり、AD変換器23の大きさに依存する。そのため、AD変換器内臓のDSPを使うことで、信号処理ユニット11A、11B、11Cの大きさを変更可能である。また、低コスト化も可能である。
【0040】
このように、小型化可能なマイクロプロセッサボード21と、必要に応じて設置するデバイスサーバ31により、GIS毎に小型の信号処理ユニットを設置することが可能である。
【0041】
図3は、本発明の実施形態である個別監視処理ユニット及び信号処理ユニットの機能構成を示す図である。
信号処理ユニット11A−1は、図1および図2に示したセンサ接続用のAD変換器23の代わりに、個別監視ユニット25A、25B接続用のシリアルI/F27A、27Bを有する。なお、説明のため、個別監視ユニットは2つのみ示すが、監視項目毎に2つ以上あっても良い。
【0042】
図1および図2に示す信号処理ユニット11Aでは、センサ12A−1、12A−2、12A−3からの信号を直接信号処理ユニット11Aにより信号処理しているが、図3に示す信号処理ユニット11A−1は、各計測・監視・表示データのデータ処理は行わない。そのデータ処理は、個別監視ユニット25A、25Bが行い、信号処理ユニット11A−1は、個別監視ユニット25A、25Bからの計測・監視・表示データを受信する機能を有する。
【0043】
信号処理ユニット11A−1は、他の信号処理ユニット11B、11Cからの計測・監視・表示データを収集して、デバイスサーバ31を介して、コンピュータ15、17にデータを送信する。他の信号処理ユニット11B、11CとのネットワークLAN1を用いた接続、および、監視データの受信、コンピュータ15、17への送信機能は、図1および図2に示した信号処理ユニット11Aと同じである。また、詳述しないが、他の信号処理ユニット11B、11Cは、信号処理ユニット11A−1と同様に個別監視ユニットを有することができる。
【0044】
信号処理ユニット11A−1は、AD変換器とそれに伴うケーブル数が減少し、信号処理ユニット11Aの大きさで支配的となっていた、センサからの接続ケーブルが無いため、信号処理ユニット11Aと比べてより小型化を図ることができる。
【0045】
個別監視計測ユニット25A、25Bは、信号処理ユニットとCAN規格に基づくネットワークLAN1とは異なるRS485などのマルチドロップ可能な規格を用いたネットワークLAN2により接続される構成とする。個別監視計測ユニット25A、25Bは、部分放電監視、ガス圧力計測、事故点標定、動作時間計測などの個別の監視項目毎に設置される。このような構成とすることで、各個別監視ユニット25A、25Bに加えて、監視項目毎に別な個別監視ユニットを追加、あるいは、個別監視ユニット25A、25Bの削除が容易に行える。
【0046】
個別監視ユニット25A、25Bは、それぞれ、センサからのアナログ信号変換用のAD変換器23A、23B、DSP24A、24B、シリアルI/F27A、27Bを有する。尚、AD変換器を内蔵したDSPを使用しても良い。
【0047】
個別監視ユニット25A、25Bは特定監視項目毎に用意されるため、センサ接続用のAD変換器23A、23Bは、特定のセンサとのみ接続される。例えば、特定監視項目がガス圧力計測のみである場合、ガス圧力センサとのみ接続されれば良い。そのため、AD変換器23A、23Bのチャネル数が1〜4程度になるため、AD変換器23A、23Bの大きさは、図2に示した信号処理ユニット11Aの多チャネル型のAD変換器23と比べて大幅に小さくすることが可能である。これにより、個別監視ユニット25A、25Bにおいて大きな部分を占めるAD変換器23A、23Bが小型化したことで、個別監視ユニット25A、25Bが小型化される。
【0048】
さらに、DSP24A、24Bは、監視項目が限定されているため、キャッシュデータやプログラムデータのデータ量が減少し、外部メモリを必要としない。そのため、個別監視ユニット25A、25Bは、図2に示した信号処理ユニット11Aと比べて、外部メモリ26が無い分、更なる小型化を可能にしている。
【0049】
このように監視項目が制限され、その監視項目に対応する機能も制限されるために、個別監視ユニット25A、25Bは、小型化でき、このため、図2に示す信号処理ユニット11A専用スペースより、より狭いGISの制御盤内スペースに、信号処理ユニット11A−1、個別監視ユニット25A、25Bを配置することが可能となる。
【0050】
従って、上述のように信号処理ユニット11A−1、個別監視ユニット25A、25Bの小型化により、設置スペースが制限される既設GISへの追加適用が容易に可能でありさらに、個別監視ユニットは監視項目毎に用意されるため、ユーザ側で最適な個別監視ユニットを選択することにより、ガス絶縁開閉装置状態監視システムの低コスト化が可能となる。
【0051】
また、上述したCANは、FlexRay(登録商標)などの規格を採用しても良い。FlexRay(登録商標)は、データ伝送速度は最大10Mビット/秒であり、データ伝送の方式は、遅延が生じにくいタイム・トリガ型であり、各ノードごとに一定のタイミングで送信権を与える通信方式であるため、CANが採用するイベント・ドリブン型と比べて、1つのノードが通信経路を占拠して遅延が生じるなどの通信路上のコリジョンが生じにくいなどの利点がある。
FlexRay(登録商標)規格を採用する場合、上述のCANI/F28は、FlexRayI/Fに変更される。
【0052】
以上説明したガス絶縁開閉装置状態監視システムの信号処理ユニット、個別監視ユニットは、小型のためGIS設備への適用が容易であり、このようなユニットによりGISの設備の連続的かつリアルタイムによる判断処理が可能となる。
【0053】
また、設置対象となるGISの制御盤等における設置スペース、および、遠隔監視したい監視項目に従って、個別監視ユニットの数、信号処理ユニットの構成を変えることができる。つまり、特定のセンサは、信号処理ユニットで信号処理し、他のセンサは、個別監視ユニットにより信号処理するなど、柔軟な装置構成によりガス絶縁開閉装置状態監視システムをGIS設備に適用可能である。
【0054】
そして、信号処理ユニットや個別監視ユニットによる判断処理結果が遠隔地にいる作業者や技術者にコンピュータを介して伝わることで、GIS異常の未然検出、あるいは、GIS異常発生後の迅速な異常処理が可能となる。
【0055】
このように、本発明に基づくガス絶縁開閉装置状態監視システムは、GISやGCBへの適用が容易で判断処理か可能であるので、GISやGCBの運転信頼性を向上させるとともに、GISやGCBに低コストで設置可能である。
また、このようなガス絶縁開閉装置状態監視システムは、GISやGCBに限定することなく電気関連設備に広範囲に適用されることが期待されることから、電気関連設備全体への信頼性向上に大きく貢献し、電力産業界において多大な利益をもたらす。
【0056】
以上説明した実施形態は典型例として挙げたに過ぎず、その各実施形態の構成要素を組合せること、その変形及びバリエーションは当業者にとって明らかであり、当業者であれば本発明の原理及び請求の範囲に記載した発明の範囲を逸脱することなく上述の実施形態の種趣の変形を行えることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態である遠隔監視システムの機能構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態である信号処理ユニットの機能構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態である個別監視処理ユニット及び信号処理ユニットの機能構成を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
10 ガス絶縁開閉装置状態監視システム
11 信号処理ユニット
12 センサ
21 マイクロプロセッサボード
23 AD変換器
24 DSP
25 個別監視ユニット
26 メモリ
27 シリアルI/F
28 CANI/F
29 シリアルI/F
31 デバイスサーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのガス絶縁開閉装置の構成機器状況を、そのガス絶縁開閉装置と離れた遠隔地にあるコンピュータで遠隔監視するためのガス絶縁開閉装置状態監視システムであって、
前記ガス絶縁開閉装置の構成機器状況の特定監視項目を監視するための監視センサに接続され、かつ、該監視センサからの検出信号を信号処理して該特定監視項目の監視情報を生成するために、該特定監視項目毎に前記ガス絶縁開閉装置に取り付けられる少なくとも1つの個別監視ユニットと、
前記ガス絶縁開閉装置に取り付けられ、前記個別監視ユニット及び前記コンピュータに接続され、かつ、前記個別監視ユニットの監視情報を、前記コンピュータに送信する信号処理ユニットと、
を有することを特徴とするガス絶縁開閉装置状態監視システム。
【請求項2】
前記個別監視ユニットと、前記信号処理ユニットは、マルチドロップ方式のネットワークで接続されることにより、前記個別監視ユニットの新規追加又は削除が可能な請求項1に記載のガス絶縁開閉装置状態監視システム。
【請求項3】
前記信号処理ユニットは、前記ガス絶縁開閉装置の構成機器状況の特定監視項目を監視するための前記監視センサに接続され、かつ、前記監視センサからの検出信号を信号処理して前記特定監視項目の監視情報を生成する請求項1又は2に記載のガス絶縁開閉装置状態監視システム。
【請求項4】
第1の前記ガス絶縁開閉装置に取付けられ、かつ、第1の前記監視情報を第1のネットワークを介して前記コンピュータに送信する第1の前記信号処理ユニットと、
第2の前記ガス絶縁開閉装置に取付けられ、かつ、第2の前記監視情報を第2のネットワークを介して第1の前記信号処理ユニットに送信する第2の前記信号処理ユニットと、を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載のガス絶縁開閉装置状態監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−22670(P2008−22670A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194114(P2006−194114)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【Fターム(参考)】