説明

ガス遮断器

【課題】遮断時の加熱室の内壁の損傷を低減し、極間の絶縁劣化を抑制するガス遮断器を得る。
【解決手段】第1の開閉部材8aと第2の開閉部材8bとを橋絡する第3の開閉部材9が動作軸を移動して開極するガス遮断器であって、第1の開閉部材8aと第2の開閉部材8bとの間に配置したアーク室10と、アーク室10と連通して設けられた圧力室16と、アーク室10から圧力室16に流入するガスを排出する排出口18と、上記動作軸の周方向にアーク室10を取り囲む加熱室11と、アーク室10と加熱室11とをアーク室10の上記周方向で連通する吹き付けスリット12と、加熱室11の上記周方向の外壁を形成する絶縁性の区分壁13と、区分壁13から吹き付けスリット12に向かって突出する突出部14aを有して、先端部14aaで吹き付けスリット12と対向する樹脂材からなる冷却板14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発電所および変電所において動作電流と過電流を投入および遮断するために使用されるガス遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のガス遮断器の焼損型開閉装置においては、一対の焼損リングによって境界が区切られたアーク室に続いて、圧力室が開閉軸線方向から上記アーク室を挟み込むように配置されている。また、一対の接触チューリップが上記開閉軸線方向から上記一対の焼損リングを挟み込むように配置されており、遮断動作前は、上記一対の接触チューリップが上記開閉軸線に沿って直動する開閉ピンにより橋絡されており、遮断動作時に、この開閉ピンを上記一対の接触チューリップから引き抜くことで、上記一対の焼損リング間、つまり上記アーク室内にアークが形成される。
【0003】
上記アーク室は、加熱室によって上記開閉軸線を中心線として同心的に取り囲まれており、上記アーク室と上記加熱室は、上記一対の焼損リングの間の周方向の吹き付けスリットにて連通している。従って、この吹き付けスリットを通ってアークより輻射される熱により、上記過熱室内に高い圧力が発生する。
【0004】
上記加熱室内に高い圧力が発生した後で、次の電流零点を通過する祭に、上記加熱室から絶縁ガスが上記吹き付けスリットと上記焼損リングを通って上記圧力室内へ流入することで、ガス流が必然的にアークと交叉し、交叉範囲においてイオン化されたガスを十分に除去するので、上記電流零点を通過後にはアークが発生せず、消弧が完了する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11―329191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のガス遮断器では、このような焼損型開閉装置(消弧装置)を用いているため、遮断動作時に、上記一対の接触チューリップを橋絡する上記開閉ピンを引き抜くことで発生するアークに起因した高温のガスが、上記吹き付けスリットを介して上記加熱室を構成する絶縁材料製の壁に吹き付けられ、損傷を受ける。この加熱室内壁の損傷により極間の絶縁劣化が生じ、遮断不能が発生するおそれがあると言う問題点があった。
【0007】
この発明は、上述のような問題点を解決するためになされたものであり、加熱室の内壁の損傷を低減し、極間の絶縁劣化を抑制するガス遮断器を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るガス遮断器においては、投入状態において第1の開閉部材と第2の開閉部材とを互いに橋絡する第3の開閉部材が、動作軸の所定方向へと移動することにより、第1の開閉部材と第2の開閉部材との間を開放するガス遮断器であって、第1の開閉部材と第2の開閉部材との間に配置され、開放にともないアークが発生する空間を形成するアーク室と、動作軸の方向の少なくとも一方にアーク室と連通して設けられた圧力室と、アーク室から圧力室に流入するガスを排出する排出口と、動作軸の周方向にアーク室を取り囲むように配置された加熱室と、アーク室と加熱室とをアーク室の周方向で連通する吹き付けスリットと、加熱室の周方向の外壁を形成する絶縁性の区分壁と、区分壁から吹き付けスリットに向かって突出する突出部を有して、先端部で吹き付けスリットと対向する樹脂材からなる冷却板とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、加熱室に、吹き付けスリットと先端部で対向する冷却板を設けることにより、遮断動作時に吹き付けスリットから流入する高温ガスを冷却するとともに、絶縁性の区分壁に直接高温のガスが吹付けられないようにすることができる。このため、加熱室の内壁の損傷を低減し、極間の絶縁劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1を示すガス遮断器の主要部の断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1を示す消弧装置の断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1の冷却板の突出部の変形例を示す断面図である。
【図4】この発明の実施の形態1の冷却板の突出部の別の変形例を示す断面図である。
【図5】この発明の実施の形態1の冷却板の固定部の変形例を示す断面図である。
【図6】この発明の実施の形態2を示す消弧装置の断面図である。
【図7】この発明の実施の形態2の冷却板の突出部の変形例を示す断面図である。
【図8】この発明の実施の形態2の冷却板の突出部の別の変形例を示す断面図である。
【図9】この発明の実施の形態2の冷却板の固定部の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、この発明を実施するための実施の形態1におけるガス遮断器の主要部の断面図を示すものである。同図中、中心で上下に延びる一点鎖線(中心線)を境として、左側に投入状態、右側に遮断完了状態をそれぞれ示している。また、同図中、破線で囲んだ部分が、上記中心線に対して同軸状に構成された消弧装置1となっている。消弧装置1外周側には、固定側外壁2と可動側外壁3との間に設けられた円筒形絶縁外壁4が設けられ、これら外壁内に絶縁媒体かつ消弧媒体となるガスが密閉されている。また、円筒形絶縁外壁4と消弧装置1との間には、固定側外壁2と可動側外壁3とを、上記投入状態で橋絡し上記遮断完了状態で開極する主通電導体5が配置されている。この主回路の電流を通電する主通電導体5は、駆動装置(図示せず)と機械的に接続されている。
【0012】
図2は、図1の破線で囲んだ同軸状に構成された消弧装置1を示す断面図である。消弧装置1は上下に分離可能であり、図2の上側に固定側外壁2と電気的に接続された第1の固定側通電部材6aが、下側に可動側外壁3と電気的に接続された可動側通電部材7がそれぞれ配置されている。第1の固定側通電部材6aには、第2の固定側通電部材6bが上側へ接続解除が可能なように通電結合されており、第2の固定側通電部材6bの中央の開口内には、第1の開閉部材8a、例えば、弾性的な複数の接触フィンガーを備えた接触チューリップが、通電結合されている。上記接触フィンガーは、周方向に並べて配置され、上記中心線側に斜め下方へと延び、スリットによって分離されている。一方、可動側通電部材7の中央の開口内には、第2の開閉部材8b、例えば、弾性的な複数の別の接触フィンガーを備えた別の接触チューリップが、通電結合されている。上記別の接触フィンガーは、周方向に並べて配置され、上記中心線側に斜め上方へと延び、別のスリットによって分離されている。
【0013】
投入状態においては、第1および第2の開閉部材8a、8bは、上記中心線を動作軸として上記駆動装置(図示せず)によって移動する第3の開閉部材9、例えば、開閉ピンによって橋絡されており、第1および第2の開閉部材8a、8bのそれぞれの接触フィンガーが、第3の開閉部材9の外周面にて接触している。その際、上記それぞれ接触フィンガーが弾性的に変形するので、上記外周面には大きな接触圧力が発生する。一方、遮断完了状態においては、第3の開閉部材9が、上記駆動装置によって上記動作軸に沿って第2の開閉部材8bより下方へと移動しており、第1の開閉部材8aと第2の開閉部材8bは開放されている。
【0014】
アーク室10は、第1および第2の開閉部材8a、8bのそれぞれの接触フィンガーの先端部によって規定されたアーク発生空間であり、環状の加熱室11によって取り囲まれている。加熱室11は、第1の開閉部材8aと第2の開閉部材8bとを上下に分離するすき間によって、アーク室10に連通しており、上記すき間により周方向の吹き付けスリット12が形成されている。加熱室11の周方向の外壁は、絶縁性の円筒状の区分壁13にて形成され、閉鎖されている。区分壁13は、例えば、エポキシ樹脂などの繊維強化樹脂(FRP)、フッ素樹脂、およびフッ素樹脂に添加剤を加えた混合材料などにて形成されている。区分壁13の内側には、区分壁13の内面を覆う樹脂材からなる冷却板14が配置されている。
【0015】
冷却板14は、例えば、フッ素樹脂、フッ素樹脂に添加剤を加えた混合材料、およびポリアセタール(POM)などにて形成されており、区分壁13に近接する円筒状の固定部14bと、この固定部14bの内壁面の中央部分から吹き付けスリット12に向かって突出する突出部14aとで構成され、第2の固定側通電部材6bと可動側通電部材7とによって固定部14bが挟持されている。突出部14aは、固定部14bと連なるリング状の立ち上り部14abと、その内周に吹き付けスリット12と対向して取り囲むように設けられた円筒状の先端部14aaにて構成され、その断面はT字状となっている。つまり、冷却板14の吹き付けスリット12と対向しない部分に窪み11aを設けることで、リング状の空間を形成している。このリング状の空間を設けることにより、極間の沿面距離が長くなる。
【0016】
また、第1の開閉部材8aおよび第2の開閉部材8bの加熱室11側の面には、それぞれ円錐状の第1のカバー15aおよび第2のカバー15bが設けられおり、上記接触チューリップおよび上記別の接触チューリップを構成するそれぞれの接触フィンガー間の上記スリットおよび上記別のスリットを通したガスの流れが、発生しないようにしている。
【0017】
アーク室10の上方には、第1の開閉部材8aの上記中心線に設けられた開口にて連通する圧力室16が配置されている。圧力室16の上部には、圧力室カバー17の中央部の開口によって排出口18が形成されている。
【0018】
次に遮断時の動作について説明する。図1の中心線より左側の投入状態では、主回路の電流は、主に固定側外壁2から主通電導体5を経て可動側外壁3へと流れている。遮断指令により駆動装置(図示せず)が動作を開始すると、主通電導体5が固定側外壁2および可動側外壁3と摺動接触状態を保ちながら下方と駆動されると共に、第3の開閉部材9が第1および第2の開閉部材8a、8bとそれぞれ摺動接触状態を保ちながら下方と駆動される。この時、まず、主通電導体5が固定側外壁21から機械的に離れ、主回路の電流の経路は、主通電導体5を経由する経路から消弧装置1を経由する経路へと転流する。続いて、図2の上記中心線より右側に破線で示すように第3の開閉部材9が第1の開閉部材8aから機械的に離れ、第1の開閉部材8aと第3の開閉部材9との間、つまりアーク室10内でアークが発生する。さらに、第3の開閉部材9が下方に移動して、第3の開閉部材9が第2の開閉部材8bから機械的に離れると、アークは第1の開閉部材8aと第2の開閉部材8bとの間(それぞれの接触フィンガーの先端部の間)へと移行する。
【0019】
アークによって熱せられたアーク室10内の高温のガスは高圧となり、吹き付けスリット12を通して加熱室11に流入する。さらに、アークから輻射される熱により、加熱室11内のガスが加熱されるので、加熱室11内に高い圧力が発生する。上述の吹き付けスリット12を通して加熱室11に流入した高温のガスは、吹き付けスリット12に対向するように配置された冷却板14の突出部14aの先端部14aaに直接吹付けられる。突出部14aは樹脂材にて構成されているので、高温のガスが吹付けられることにより、溶融して蒸発する。この溶融および蒸発するときに高温のガスのエネルギーを奪い温度を下げると共に、蒸発した樹脂のガスが、高温のガスと混合することでガスの温度をさらに低下させる。一般的に温度の低下は加熱室11の圧力の低下要因となるが、一方で樹脂材の蒸発に伴って大量のガスが供給されるので、突出部14aを設けることで加熱室11の圧力は上昇する。つまり、消弧に好ましい比較的低温で且つ高圧のガスを加熱室11に発生させることができる。
【0020】
電流が次の零点に向かって減少すると、アーク室10の圧力が低下して加熱室11の圧力がアーク室10より高くなるので、上述の消弧に好ましいガスが、加熱室11から吹き付けスリット12を通してアーク室10に流れ込み、さらには、第1の開閉部材8aの上記中心線上の開口を通って上方の圧力室16へと流出すると共に、第2の開閉部材8bの上記中心軸上の別の開口を通って下方の開極した第3の開閉部材9側へと流出する。このとき加熱室11から流出する消弧に好ましいガスが、第1および第2の開閉部材8a、8bの間に形成されているアークに吹付けられ、アークが冷却され消弧される。
【0021】
このとき、冷却板14の突出部14aの円筒形の区分壁13側には沿面距離が長くなるように空間11aが設けられているので、アークの消弧と共に極間に非常に高い電圧が印加されたとしても再点弧することなく遮断動作を完了することができる。
【0022】
また、上述のように、冷却板14の先端部14aaを吹き付けスリット12と対向するように配置したので、アーク室10からスリット12を通して加熱室11に流入する高温のガスの主な流れは、先端部14aaに直接吹付けられて拡散する。つまり、吹き付けスリット12側から見て先端部14aaの背面に位置する壁面には、直接的に高温のガスが吹き付けることがなく、壁面の損傷を低減することができる。さらに、樹脂材からなる先端部14aaが溶融して蒸発することで加熱室11内のガス温度が低下するので、加熱室11の内壁にふれるガス温度が低下して内壁の損傷が一層抑制される。
【0023】
この内壁の損傷の抑制と、冷却板14の吹き付けスリット12と対向しない部分に窪み11aを設けることによる極間の沿面距離の延長とにより、遮断後の極間の絶縁耐圧が一層向上するので、例えば遮断後に高いサージが発生しても極間の絶縁が破壊することがない。
【0024】
また、円筒状の区分壁13の内面を、冷却板14の円筒状の固定部14bにて覆うようにしているので、機械的強度が要求される絶縁性の区分壁13に比べて、高温のガスによる沿面劣化が発生しがたい樹脂材で加熱室11の内壁を構成できるので、極間の絶縁の信頼性が向上する。さらに、固定部14bに遮断後の極間の絶縁性能を担わせることで、区分壁13をより機械強度が強い材料として区分壁13を薄くすることも可能である。
【0025】
以上より、過熱室11内に吹き付けスリット12と対向する樹脂材の冷却板14を設けることにより、加熱室11内壁の損傷を低減して、絶縁劣化を抑制した極間の絶縁の信頼性が高いガス遮断器を得ることができると言える。
【0026】
なお、実施の形態1では、冷却板14の突出部14aの吹き付けスリット12と対向しない部分に窪み11aを設ける場合を示した。然し、窪み11aを設けない場合でも、消弧に好ましい比較的低温で且つ高圧のガスを加熱室11に発生できること、吹き付けスリット12側から見て先端部14aaの背面に位置する壁面に直接的に高温のガスが吹き付けることがなくなり、壁面の損傷が低減すること、および先端部14aaの樹脂材の溶融、蒸発にともない加熱室11内のガス温度が低下して加熱室11の内壁の損傷が一層抑制されることなどの効果がある。
【0027】
また、実施の形態1では、冷却板14の突出部14aの断面をT字状としたが、図3に示すように、吹き付けスリット12と対向する面を有するL字状の断面としても良く、図4に示すように、円筒状の区分壁13側が凸のくさび状断面を有するリング状としても良い。
【0028】
また、実施の形態1では、冷却板14全体を樹脂材にて一体に構成した場合を示したが、図5に示すように、冷却板14の固定部14bを、立ち上り部14abと一体に成形された円筒状の固定部中央部14baと、この固定部中央部14baを上下から挟み込む別部材の円筒状の固定部端部14bbとで構成してもよい。このような構成とした場合、冷却板14を製造するために用意する材料の寸法を小さくできる。樹脂材の場合、大きな寸法の材料を用意しようとすると、金型が大形化すると共に、ウエルドラインやボイドなどの欠陥が発生しやすくなる。これらの欠陥は、機械的欠陥や絶縁欠陥となりやすく、ガス遮断器の信頼性を低下させることがあるので、大形のガス遮断器を製造する場合は、上述のように冷却板14の固定部14bを分割すると、さらに好ましい。
【0029】
実施の形態2.
図6は、この発明の実施の形態2による消弧装置1を示す断面図である。同図中、中心で上下に延びる一点鎖線(中心線)を境として、左側に投入状態、右側に遮断完了状態をそれぞれ示している。この実施の形態では、冷却板14の突出部14aの先端部14aaが多孔質の樹脂材にて構成されていること以外は、実施の形態1と同様であるので、以下においては実施に形態1と異なる点について説明する。
【0030】
なお、多孔質の樹脂材とは、例えば、フッ素樹脂、フッ素樹脂に添加剤を加えた混合材料、およびポリアセタール(POM)などを、機械加工、インサート成型、機械的発泡法、物理的発泡法、化学的発泡法、および中空細管をまとめて板状とするなど、それぞれの樹脂材に適した方法で多孔質化したものである。
【0031】
実施の形態1と同様に、遮断指令により駆動装置(図示せず)が動作し、第1の開閉部材8aと第2の開閉部材8bとを橋絡していた第3の開閉部材9が引き抜かれて、第1および第2の開閉部材8a、8bの間にアークが発生し、アークによって熱せられたアーク室10内の高温のガスは、吹き付けスリット12を通して加熱室11に流入する。加熱室11に流入した高温のガスは、吹き付けスリット12に対向するように配置された冷却板14の突出部14aの先端部14aaに直接的に吹き付けられる。
【0032】
先端部14aaは、多孔質の樹脂材で構成されているので、吹き付けられる高温のガスが多孔質内に入り、先端部4aaの表面のみならず多孔質の内部の樹脂材が溶融し、蒸発する。つまり、高温のガスが吹き付けられる突出部14aの先端部14aaが樹脂材の多孔質にて構成されているので、実施の形態1に比べて大量の樹脂材が溶融して蒸発する。これにより、実施の形態1に比べ、高温のガスの温度を低下させる作用および加熱室11の圧力を上昇させる作用がより向上する。つまり、実施の形態1よりも、より消弧に好ましい比較的低温で且つ高圧のガスを加熱室11に発生させることができる。
【0033】
このより消弧に好ましい比較的低温で且つ高圧のガスを効率的に発生させるには、多孔質の樹脂材内に十分な量の高温のガスが進入する必要があるので、樹脂材内の孔は独立せず、連通していることが好ましい。しかしながら、高温のガスが、多孔質の樹脂材の吹き付けスリット12側から区分壁13側まで高温のままで吹き抜ける孔となっていると、多孔質の樹脂材の全体が軟化、溶融して大きく変形もしくは損耗することになり、繰り返しの遮断性能を確保し難くなるおそれがある。そこで、上記孔の構成は、吹き付ける高温のガスにより多孔質の樹脂材の全体が軟化温度を超えないように適切な比率と形状にすることが好ましい。
【0034】
電流が次の零点に向かって減少すると、上記より消弧に好ましいガスが、第1および第2の開閉部材8a、8bの間に形成されているアークに吹き付けられ、アークが急速に冷却されて消弧し、急速に極間の絶縁が回復するので、より高い遮断性能が得られる。
【0035】
また、加熱室11内で拡散する高温のガスの温度をより低下させることができるので、高温のガスが直接吹き付ける先端部14aa以外の加熱室11の内壁の損傷を一層低減できる。
【0036】
なお、実施の形態2では、冷却板14の突出部14aの断面をT字状としたが、図7に示すように、突出部14aを吹き付けスリット12と対向する面を有するL字状の断面として、先端部14aaを多孔質の樹脂材で構成してもよく、図8に示すように、円筒状の区分壁13側が凸のくさび状断面を有するリング状として、先端部14aaを多孔質の樹脂材で構成してもよい。
【0037】
図8に示すように、多孔質の樹脂材の先端部14aaの区分壁13側の面を、非多孔質の立ち上り部14abにて保持するようにすれば、多孔質の樹脂材の孔の通気性を大きく構成しても、高温のガスが吹き付けスリット12側から区分壁13側へと貫通して流れることがないので、消弧に好ましい比較的低温で且つ高圧のガスの発生と、繰り返し遮断の信頼性を両立させることができる。
【0038】
また、実施の形態2では、冷却板14を、円筒状の固定部14bと突出部14aの基底側となる立ち上り部14abとを一体として、立ち上り部14abに別部材の多孔質の樹脂材の先端部14aaを密着させる場合を示したが、図9に示すように、固定部14bを、立ち上り部14abと一体に成形された円筒状の固定部中央部14baと、この固定部中央部14baを上下から挟み込む別部材の円筒状の固定部端部14bbとで構成してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 消弧装置、2 固定側外壁、3 可動側外壁、4 円筒形絶縁外壁、5 主通電導体、6a 第1の固定側通電部材、6b 第2の固定側通電部材、7 可動側通電部材、8a 第1の開閉部材、8b 第2の開閉部材、9 第3の開閉部材、10 アーク室、11 加熱室、11a 窪み、12 吹き付けスリット、13 区分壁、14 冷却板、14a 突出部、14aa 先端部、14ab 立ち上り部、14b 固定部、14ba 固定部中央部、14bb 固定部端部、15a 第1のカバー、15b 第2のカバー、16 圧力室、17 圧力室カバー、18 排出口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入状態において第1の開閉部材と第2の開閉部材とを互いに橋絡する第3の開閉部材が、動作軸の所定方向へと移動することにより、上記第1の開閉部材と上記第2の開閉部材との間を開放するガス遮断器であって、
上記第1の開閉部材と上記第2の開閉部材との間に配置され、上記開放にともないアークが発生する空間を形成するアーク室と、
上記動作軸の方向の少なくとも一方に、上記アーク室と連通して設けられた圧力室と、
上記アーク室から上記圧力室に流入するガスを排出する排出口と、
上記動作軸の周方向に上記アーク室を取り囲むように配置された加熱室と、
上記アーク室と上記加熱室とを、上記アーク室の上記周方向で連通する吹き付けスリットと、
上記加熱室の上記周方向の外壁を形成する絶縁性の区分壁と、
上記区分壁から上記吹き付けスリットに向かって突出する突出部を有して、先端部で上記吹き付けスリットと対向する樹脂材からなる冷却板とを備えたことを特徴とするガス遮断器。
【請求項2】
冷却板の吹き付けスリットと対向しない部分に、窪みを設けることを特徴とする請求項1記載のガス遮断器。
【請求項3】
冷却板は、円筒状の区分壁の内周面を覆う円筒状の固定部を有することを特徴とする請求項1記載のガス遮断器。
【請求項4】
突出部は、円筒状の区分壁から吹き付けスリット側へと延びる円盤状の立ち上り部と、上記立ち上り部の内周側に設けられて上記吹き付けスリットを取り囲む円筒状の先端部とを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のガス遮断器。
【請求項5】
突出部は、円筒状の区分壁の側が凸のくさび状断面を有するリング状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のガス遮断器。
【請求項6】
冷却板は、少なくとも吹き付けスリットと対向する部分が多孔質の樹脂材であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のガス遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−159539(P2011−159539A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21298(P2010−21298)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】