説明

ガス遮断装置

【課題】ガス供給圧変動があっても正しく内管漏洩を検出できるガス遮断装置を提供することを目的とする。
【解決手段】通常の流量計測を行うための通常周期計測部14と、通常周期計測部14で計測された伝播時間を基に流量を演算する流量演算部15と、流量演算部15で演算された流量が所定範囲以下である場合に流量なしと判定する流量なし判定部16と、流量なし判定部16で流量なしと判断した場合に、通常周期計測部14の周期よりも短く、且つ、ガス圧供給変動よりも短い周期である0.001秒〜0.1秒程度の短い伝搬時間計測周期で、1日に1回程度の頻度で伝搬時間の計測を数秒〜数百秒間行う短周期計測部17と、短周期計測部17で伝搬時間を計測した結果を基に、流量演算部15で演算したガス流量が所定値以上で所定回数以上連続した場合、ガス漏れと判断する漏洩判定部18を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスメータ以後のガス使用時に、ガス使用上の安全を図る及びガス使用上の利便性を向上させるガス遮断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス器具の使用の際には、ガスの消し忘れやガス漏れなどによる事故を未然に防止するために、ガスのユーザ宅やガス供給路を管理しているガス事業者において、異常時に通報やガス供給路の遮断を行うシステムが普及しつつある。従来のガス保安装置としては、ガス流量などに基づき、大流量が流れたときにガスの供給を遮断したり、微小流量で長時間ガスが流れたときに遮断したり、流量区分別に所定流量で所定時間ガスが流れたときに遮断するものなどが用いられている。
【0003】
ガスのユーザの家屋等では、ガス供給路の入口部分にガス流量を計測するガスメータが設置されている。この種のガスメータとして、従来は所定の流量ごとに流れたガスの量を積算する膜式のガスメータが一般的であったが、最近では、超音波信号を用いて瞬時流量を求め、この瞬時流量を積算することでガスの流量を計測する超音波式のガスメータも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3490064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら前記従来の構成では、GHP等の大型燃焼機器が近接したところに設置されガス供給圧変動が激しい場合、流量の計測周期よりガス供給圧変動の周期が短いために変動した流量を測定してしまうことで、内管漏洩と判断してしまったり、逆に閾値を変更してガス供給圧変動で誤判定しないようにすると、実際に漏れが発生していても検出できなかったりしてしまう。また、常に計測周期を短くした場合に、電池の消耗が多くなってしまうという課題を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、ガス供給圧変動があっても正しく内管漏洩を検出できるガス遮断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明のガス遮断装置は、ガス供給管に連通する計測流路と、前記計測流路の上流側と下流側に配置された一対の超音波送受信器を備え、この一対の超音波送受信器間の超音波の伝播時間を測定するための伝搬時間計測部と、第1の周期毎に前記伝搬時間計測部で超音波の伝搬時間を計測する通常周期計測部と、前記通常周期計測部で計測した伝搬時間から流量を演算する流量演算部と、前記流量演算部の演算結果から流量なしを判定する流量なし判定部と、前記流量なし判定部で流量なしと判断した場合、定期的に且つ前記第1の周期よりも短い第2の周期毎に前記伝搬時間計測部で超音波の伝搬時間を計測する短周期計測部と、前記ガス供給管の漏洩を検知する漏洩判定部と、を備え、前記漏洩判定部は、前記短周期計測部で計測された伝播時間を用いて前記ガス供給管の漏洩を検知するものである。
【0008】
これにより、ガス供給圧変動よりも短い周期で流量計測することで、周期的なガス供給
圧変動がある状態において、ガス供給圧で流量が多くなるときも少なくなる時も計測することで平均化できるため、正確にガス流量を計測することができる。また、定期的に短時間だけ短い周期で流量計測するため電池の消耗が増加することなく実現できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のガス遮断装置によれば、GHP等によるガス供給圧変動が発生しても、内管漏洩の判断が可能となり、ガス使用上の安全を図ることができ、ガス使用上の利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1におけるガス遮断装置の構成を示すブロック図
【図2】同実施の形態における超音波送受信器の配置を示す構成図
【図3】同実施の形態におけるガス供給圧力変動と計測周期の関係を示す図
【図4】本発明の第2の実施の形態におけるガス遮断装置の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、ガス供給管に連通する計測流路と、前記計測流路の上流側と下流側に配置された一対の超音波送受信器を備え、この一対の超音波送受信器間の超音波の伝播時間を測定するための伝搬時間計測部と、第1の周期毎に前記伝搬時間計測部で超音波の伝搬時間を計測する通常周期計測部と、前記通常周期計測部で計測した伝搬時間から流量を演算する流量演算部と、前記流量演算部の演算結果から流量なしを判定する流量なし判定部と、前記流量なし判定部で流量なしと判断した場合、定期的に且つ前記第1の周期よりも短い第2の周期毎に前記伝搬時間計測部で超音波の伝搬時間を計測する短周期計測部と、前記ガス供給管の漏洩を検知する漏洩判定部と、を備え、前記漏洩判定部は、前記短周期計測部で計測された伝播時間を用いて前記ガス供給管の漏洩を検知するもので、ガス供給圧変動よりも短い周期で流量計測することで、周期的なガス供給圧変動がある状態において、ガス供給圧で流量が多くなるときも少なくなる時も計測することで平均化できるため、正確にガス流量を計測することができる。また、所定時間毎に短時間だけ短い周期で流量計測するため電池の消耗が増加することなく実現できる。
【0012】
第2の発明は、特に第1の発明の第2の周期を前記第1の周期の1/10以下としたものである。
【0013】
第3の発明は、特に第1または第2の発明において、前記短周期計測部で計測した伝播時間から求めた最小ガス流量と最大ガス流量の差から、ガス供給圧変動の有無を判断するガス供給圧変動有無判定部と、前記短周期計測部で計測した伝播時間から求めた流量を基にガス供給圧変動周期を推定するガス供給圧変動判定部と、前記ガス供給圧変動判定部で判定した周期に合致しないように前記第1の周期を変更する計測周期変更部を有したもので、通常周期計測部の周期を変えることでガス供給圧の周期と合致しない状態で計測できるため、周期的なガス供給圧変動がある状態において、ガス供給圧で流量が多くなるときも少なくなる時も計測することで平均化できるため、正確にガス流量を計測することができる。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係るガス遮断装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態では、ガスのユーザの家屋等に設置されるガスメータを利用するガス遮断装置の構成例を示す。
【0016】
このガス遮断装置10は、屋外または屋内の所定位置に設置される。
【0017】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。ガス遮断装置10は、計測流路30に配置された伝搬時間計測部12、タイマ部13、通常周期計測部14、流量演算部15、流量なし判定部16、短周期計測部17、漏洩判定部18、制御部20、遮断弁21、遮断弁駆動部22、電池23を有して構成される。
【0018】
なお、伝搬時間計測部12は、図2に示すように、計測流路30に連通する矩形断面を持つ計測流路30を有し、この計測流路30の相対向する流路壁の上流側と下流側には、一対の超音波送受信器31、32が配置されている。これらの超音波送受信器31、32は、超音波伝播経路が計測流路30を流動するガス流を斜めに横切るように設定され、交互に超音波を送受信させることによって、ガス流に対して順方向と逆方向に超音波の伝搬を行う。
【0019】
タイマ部13は、超音波信号の伝搬時間計測周期の時間をカウントするものである。通常は約2秒程度の周期で計測するための時間をカウントし、且つGHP等の作動によるガス供給圧変動は10Hz程度に対して影響を排除するため0.01秒〜0.1秒程度の計測周期をカウントするものである。
【0020】
通常周期計測部14は、タイマ部13でカウントされた約2秒程度の伝搬時間計測周期で伝搬時間計測部12を用いて伝搬時間の計測を行うものである。
【0021】
流量演算部15は、伝搬時間計測部12で検出した伝搬時間とガス供給からめた伝搬時間より計測流路を流れるガスの流量を演算する。
【0022】
流量なし判定部16は、前記流量演算部15で求めた流量が所定範囲以下かどうか判定するものである。
【0023】
短周期計測部17は、流量なし判定部16で流量が所定範囲以下と判断した場合に、タイマ部13でカウントされる周期の10分1以下でガス圧供給変動よりも短い周期である0.001秒〜0.1秒程度の短い伝搬時間計測周期で伝搬時間計測部12を用いて1日に1回程度の頻度で定期的に伝搬時間の計測を数秒〜数百秒間行うものである。尚、計測時間については電池の消耗を鑑み設定する。
【0024】
漏洩判定部18は、前記短周期計測部17で伝搬時間を計測した結果を基に、前記流量演算部15で演算したガス流量が所定値以上で所定回数以上連続した場合、ガス漏れと判断するものである。
【0025】
制御部20は、流量演算部15により算出されたガス流量値情報や積算流量値情報などの流量情報、及び、ガス遮断装置10にて用いる各種情報を記憶し、保安処理部の機能を有し、ガス遮断装置各部の動作制御、通信、警告やガスの遮断などの保安処理を行うものである。ここで、制御部20は、マイクロコンピュータ(マイコン)等を構成するプロセッサ及び動作プログラムにより構成され、プロセッサにおいて所定の動作プログラムを実行して対応する処理を行うことにより、各機能が実現される。
【0026】
遮断弁21は、計測流路30の経路中に接続され、制御部20からの指示に基づいて遮断弁駆動部22からの信号により計測流路30を閉塞してガスの供給を遮断するものである。
【0027】
電池23は、リチウム電池等を用いてガス遮断装置の電源とするものである。
【0028】
次に、伝搬時間計測部12における流量計測の方法を図2を用いて説明する。図2において、超音波送受信器31、32間の距離、すなわち測定距離をL、ガス流に対する超音波伝播経路の角度をφ、超音波送受信器31、32の上流から下流への超音波伝播時間をt1、下流から上流への超音波伝播時間をt2、音速をCとすると、流速Vは以下の式により求められる。
【0029】
V=L/2cosφ((1/t1)−(1/t2)) …(1)
この流速Vと計測流路30の断面積とからガス流の瞬時流量を算出する。
【0030】
次に、動作について図3を用いて説明する。図3は、GHP等の使用によりガス供給圧変動が生じている場合の流量波形と、計測周期との関係を示す図で、図に示すように通常周期計測部14は、タイマ部13でカウントされた約2秒程度の計測周期(第1の周期)で伝搬時間計測部12を用い伝搬時間の計測を繰り返し行っている。また、後述の短周期計測部17は、通常周期計測部14の計測周期の10分の1以下で、圧力変動の周期よりも短い周期(第2の周期)で伝搬時間の計測を行っている。
【0031】
流量演算部15は、伝搬時間計測部12で検出した伝搬時間とガス供給からめた伝搬時間より計測流路30を流れる流量に換算する。
【0032】
流量なし判定部16は、流量演算部15で求めた流量が所定範囲以下であれば流量なしと判定し、流量なし判定部16で流量なしと判定された場合、短周期計測部17はタイマ部13でカウントされたガス圧供給変動よりも短い周期である0.001秒〜0.1秒程度の短い伝搬時間計測周期で1日に1回程度の頻度で定期的に伝搬時間の計測を所定時間T(例えば、数秒〜数百秒間)或いは所定回数行うように構成されており、ガスの供給圧変動による伝搬時間変動を平均化するため、ガス供給圧変動の影響を無くすことができる。
【0033】
漏洩判定部18は、短周期計測部17で伝搬時間を計測した結果を基に、流量演算部15で演算したガス流量が所定値以上で所定回数以上連続した場合、ガス漏れと判断する。
【0034】
尚、短期間計測の周期や1日1回程度の頻度や流量の所定範囲や漏洩検知と判断する回数等は、マイクロコンピュータのROM、RAMやEEPROM等の記憶手段にあらかじめ設定しておく。
【0035】
尚、本実施の形態では、計測流路30に相対向する流路壁の上流側と下流側に、一対の超音波送受信器31、32を配置する構成を例として説明したが、計測流路の入口に上流側の超音波送受信器31、計測流路の出口に下流側の超音波送受信器32を設置する構成にも対応できる。
【0036】
また、計測流路の流路壁の同一面に上流側の超音波送受信器31と下流側の超音波送受信器32を距離を置いて設置し、流路壁の反射面を介して超音波送受信器31と下流側の超音波送受信器32の超音波信号の送受信する構成にも対応できる。
【0037】
(実施の形態2)
図4は本発明の実施の形態2に係るガス遮断装置の構成を示すブロック図である。
【0038】
ここで、ガス供給圧変動有無判定部40は、短周期計測部17で検出した流量を用いて最小ガス流量と最大ガス流量の差から、ガス供給圧変動の有無を判断するものである。
【0039】
ガス供給圧変動判定部41は、短周期計測部17で検出した流量を基に、ガス供給圧変動周期を推定するものである。
【0040】
計測周期変更部42は、ガス供給圧変動判定部41で判定した周期に合致しないように前記通常周期計測部14の計測周期を0.001秒〜0.1秒程度変えてガスの供給圧変動による伝搬時間変動を平均化するものである。
【0041】
上記構成により、通常周期計測部の周期を変更することができ、ガス供給圧の周期と合致しない状態で計測できるため、周期的なガス供給圧変動がある状態に、ガス供給圧で流量が多くなるときも少なくなる時も計測することで平均化できるため、正確にガス流量を計測することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、ガスの供給圧力変動の影響を受けず、ガスの漏洩検知を正確に判定できるため、ガス使用上の安全性及び誤判定を防止することができる。これにより、ガス使用上の安全を図る及びガス使用上の利便性を向上させるガス遮断装置に有用である。
【符号の説明】
【0043】
10 ガス遮断装置
12 伝搬時間計測部
13 タイマ部
14 通常周期計測部
15 流量演算部
16 流量なし判定部
17 短周期計測部
18 漏洩判定部
20 制御部
21 遮断弁
22 遮断弁駆動部
23 電池
30 計測流路
31、32 超音波送受信器
40 ガス供給圧変動有無判定部
41 ガス供給圧変動判定部
42 計測周期変更部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給管に連通する計測流路と、
前記計測流路の上流側と下流側に配置された一対の超音波送受信器を備え、この一対の超音波送受信器間の超音波の伝播時間を測定するための伝搬時間計測部と、
第1の周期毎に前記伝搬時間計測部で超音波の伝搬時間を計測する通常周期計測部と、
前記通常周期計測部で計測した伝搬時間から流量を演算する流量演算部と、
前記流量演算部の演算結果から流量なしを判定する流量なし判定部と、
前記流量なし判定部で流量なしと判断した場合、定期的に且つ前記第1の周期よりも短い第2の周期毎に前記伝搬時間計測部で超音波の伝搬時間を計測する短周期計測部と、
前記ガス供給管の漏洩を検知する漏洩判定部と、を備え、
前記漏洩判定部は、前記短周期計測部で計測された伝播時間を用いて前記ガス供給管の漏洩を検知するガス遮断装置。
【請求項2】
前記第2の周期を前記第1の周期の1/10以下としたことを特徴とする請求項1記載のガス遮断装置。
【請求項3】
前記短周期計測部で計測した伝播時間から求めた最小ガス流量と最大ガス流量の差から、ガス供給圧変動の有無を判断するガス供給圧変動有無判定部と、
前記短周期計測部で計測した伝播時間から求めた流量を基にガス供給圧変動周期を推定するガス供給圧変動判定部と、
前記ガス供給圧変動判定部で判定した周期に合致しないように前記第1の周期を変更する計測周期変更部を有した請求項1または2記載のガス遮断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−194142(P2012−194142A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60204(P2011−60204)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】