ガソリンコンタミ検知器、ガソリンコンタミ検知器セット、その使用方法およびこれを用いて灯油や軽油がガソリンスタンドにおいてJIS規格を満たすかどうかを簡略的に判断する方法
【課題】少量のガソリンが灯油や軽油に混入した疑いのある場合に、混入量や引火点を推測するため、試料の引火点の程度を簡単かつ迅速に知ることができ、試料にガソリンによるコンタミがあるか否かを検知するためのガソリンコンタミ検知器および検知方法。
【解決手段】試料収納容器、容器中の試料内に空気を供給するための空気供給ライン、容器中に存在する気液平衡ガスを吸引するための吸引手段、吸引手段と容器との間に設けられた、気化ガソリン成分(気液平衡ガス中の炭化水素ガス)と反応して変色する反応剤を含有する反応管および前記反応管と取り替え可能なダミー管よりなることを特徴とするガソリンコンタミ検知器、ガソリンコンタミ検知セットおよびそれを用いて試料のコンタミの程度を検知したり、コンタミがあるか否かを簡単に検知したり、その灯油または軽油がJIS規格を満たすか否かを簡単に検知する方法。
【解決手段】試料収納容器、容器中の試料内に空気を供給するための空気供給ライン、容器中に存在する気液平衡ガスを吸引するための吸引手段、吸引手段と容器との間に設けられた、気化ガソリン成分(気液平衡ガス中の炭化水素ガス)と反応して変色する反応剤を含有する反応管および前記反応管と取り替え可能なダミー管よりなることを特徴とするガソリンコンタミ検知器、ガソリンコンタミ検知セットおよびそれを用いて試料のコンタミの程度を検知したり、コンタミがあるか否かを簡単に検知したり、その灯油または軽油がJIS規格を満たすか否かを簡単に検知する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば灯油や軽油中にガソリンが混入したことによりガソリンのコンタミネーション(以下、コンタミと略称する)が発生しているか否かを検知するため、それらの引火点を簡単に検知することができ、それによりガソリンのコンタミの有無を推定することができるガソリンコンタミ検知器、その使用方法およびこれを用いてJIS規格に規定する引火点の条件を満たすかどうかを簡略的に判断する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンスタンド(以下サービスステーションという)では、石油製品であるガソリン、軽油、灯油を販売している。これら石油製品の供給ルートの具体例を説明すると、製油所から出荷された石油製品は、タンクローリー、船舶などにより油槽所のタンクに移送される。油槽所からはタンクローリーによりサービスステーションのそれぞれの石油製品に対応するガソリン、軽油、灯油のタンクに供給され、その後ユーザーに販売される。
石油製品の種類の確認は各移送時において、それぞれの場所で毎回、書面、文字、色などの表示、機械的な鍵や電気的な鍵による信号をコンピューターなどで照合することなどにより行われ、混油防止が図られている。
しかしながら、各種混油防止装置によりその可能性は低下しているが、荷卸し作業において、たとえばガソリンが灯油や軽油に混入しガソリンコンタミが起こったのではないかという疑問が発生した場合は、混油事故防止の観点から、直ちにサービスステーションの地下タンクにある石油製品の性状を確認する必要がある。
【0003】
ガソリンが灯油や軽油に混入し、いわゆるガソリンコンタミが起こると、灯油や軽油の引火点が低くなり、灯油の場合にはストーブの異常燃焼による火災、軽油の場合にはディーゼルエンジンの燃料ポンプの潤滑不良を引き起こす恐れが生ずる。
【0004】
従来、軽油あるいは灯油中に少量のガソリンが混入し、いわゆるガソリンコンタミが起こった場合に、その混入量を確認するためには、引火点を測定することが有効であることが分かっていた。しかし、この場合現場での測定ができないのが実情であり、引火点を測定するためにはこれを試験機関にとどけて測定を依頼しなければならず、その結果がわかるまでに多くの日数を要していた。また、ガソリンの混入量が多い場合は引火点が常温以下となり、測定時に試験機器の損傷のみならず、火災を引き起こす危険性が大きい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の第1の目的は、灯油や軽油に、それより引火点の低い成分が混入したか否かを簡単にチェックすることのできるガソリンコンタミ検知器およびガソリンコンタミ検知方法を提供する点にある。
本発明の第2の目的は、少量のガソリンが灯油や軽油に混入した疑いのある場合に、この混入量や引火点を推測するために現場で、灯油や軽油中にガソリンが混入した疑いのある試料の引火点がどの程度かを簡単かつ迅速に知ることができ、それにより試料にガソリンによるコンタミがおこっているかどうかを検知するためのガソリンコンタミ検知器およびそれを用いて試料のコンタミの程度を検知したり、コンタミがあるか否かを簡単に検知したり、その灯油または軽油がJIS規格における引火点の要件を満たすか否かを安全側に評価し、簡単に検知する方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1は、試料を収納することのできる容器、容器中の試料内に空気を供給するための空気供給ライン、容器中に存在する気液平衡ガスを吸引するための吸引手段、吸引手段と容器との間に設けられた、気化ガソリン成分(気液平衡ガス中の炭化水素ガス)と反応して変色する反応剤を含有する反応管および前記反応管と取替え可能なダミー管よりなることを特徴とするガソリンコンタミ検知器に関する。
本発明の第2は、前記吸引手段は系中の気体を定量的に吸引できるものである請求項1記載のガソリンコンタミ検知器に関する。
本発明の第3は、前記反応管は、気体中の気化ガソリン成分が10ppm以上で、その濃度に応じて変色または着色する領域が変化し得る反応剤を含有するものである請求項1または2記載のガソリンコンタミ検知器に関する。
本発明の第4は、試料を収納することのできる容器、容器中の試料内に空気を供給するための空気供給ライン、容器中に存在する気液平衡ガスを吸引するための吸引手段、吸引手段と容器との間に設けられた、気化ガソリン成分(気液平衡ガス中の炭化水素ガス)と反応して変色する反応剤を含有する反応管、前記反応管と取替え可能なダミー管および図14または図15に対応する表示板よりなることを特徴とするガソリンコンタミ検知器に関する。
本発明の第5は、前記反応管が図14または図15の縦軸と同一の目盛が設けられているものである請求項4記載のガソリンコンタミ検知器に関する。
本発明の第6は、請求項1〜3いずれか記載のガソリンコンタミ検知器を用い、最初にダミー管を取り付け、一方、試料はそれを収納することのできる容器に入れ、ついで、吸引手段により気相部分が気液平衡に達するまで前記容器内の気相部分の気体を吸引した後、容器に空気が入りこまないようにして、ダミー管を「反応して変色する反応剤を含有する反応管」に取り替え、ついで所定量の気液平衡に達した容器内の気相部分の気体を吸引手段により吸引し、反応管の目盛のうち、どの部分まで反応剤が変色したかを読み取り、この数値から試料のコンタミの程度を検知することにより試料の引火点を推測する方法に関する。なお、ダミー管とは、反応管と同じ大きさであるが、その中に反応剤を含有していないものであり、たとえば、ただのガラス管とか、使用済みの反応管であることができる。このダミー管を用いることにより、気液平衡に達するまでの気相部分を吸引したとき、そのなかに含まれている気化ガソリン成分により新しい反応管の中の反応剤が反応してしまい反応管を無駄にするのを防止することができる。
本発明の第7は、請求項1〜3いずれか記載のガソリンコンタミ検知器を用い、最初にダミー管を取り付け、一方、試料はそれを収納することのできる容器に入れ、ついで、吸引手段により気相部分が気液平衡に達するまで前記容器内の気相部分の気体を吸引した後、容器に空気が入りこまないようにして、ダミー管を「反応して変色する反応剤を含有する反応管」に取り替え、ついで所定量の気液平衡に達した容器内の気相部分の気体を吸引手段により吸引し、反応管の目盛のうち、どの部分までが変色したかを読み取り、容器内の試料の温度が基準温度のときは反応管の目盛値をそのまま使用し、容器内の試料の温度が基準温度以外の温度のときはその値を基準温度の反応管の目盛値に換算し、得られた目盛値にもとづいて、試料のコンタミの程度を検知することにより試料の引火点を推測する方法に関する。
本発明の第8は、請求項1〜3いずれか記載のガソリンコンタミ検知器を用い、最初にダミー管を取り付け、一方、試料はそれを収納することのできる容器に入れ、ついで、吸引手段により気相部分が気液平衡に達するまで前記容器内の気相部分の気体を吸引した後、容器に空気が入りこまないようにして、ダミー管を「反応して変色する反応剤を含有する反応管」に取り替え、ついで所定量の気液平衡に達した容器内の気相部分の気体を吸引手段により吸引し、反応管の目盛のうち、どの部分まで反応剤が変色したかを読み取り、この数値を測定時の前記容器内の試料の温度とから、灯油の場合は図14を用いて、軽油の場合は図15を用いて、測定の対象となった灯油または軽油が、JIS規格の引火点の条件を満たすかどうかを安全側に評価し、簡略的に判断する方法に関する。
本発明の第9は、請求項4または5記載のガソリンコンタミ検知器セットを用い、最初にダミー管を取り付け、一方、試料はそれを収納することのできる容器に入れ、ついで、吸引手段により気相部分が気液平衡に達するまで前記容器内の気相部分の気体を吸引した後、容器に空気が入りこまないようにして、ダミー管を「反応して変色する反応剤を含有する反応管」に取り替え、ついで所定量の気液平衡に達した容器内の気相部分の気体を吸引手段により吸引し、灯油の場合は図14に対応する表示板における容器内の試料の温度に対応する位置に、軽油の場合は図15に対応する表示板における容器内の試料の温度に対応する位置に、反応管目盛軸と平行に前記反応管を置き、反応管内の反応剤が変色した部分と変色しない部分の境界位置が、灯油の場合は図14に対応した表示板における「問題なし」の領域にあるか、「要測定」の領域にあるか、あるいは「規格外」の領域にあるかを読み取り、また軽油の場合は図15に対応した表示板における「問題なし」の領域にあるか、「要測定」の領域にあるか、あるいは「規格外」の領域にあるかを読み取ることにより、測定の対象となった灯油または軽油が、JIS規格の引火点の条件を満たすかどうかを簡略的に判断する方法に関する。
【0007】
本発明で用いる反応剤は、ガソリンが気化した成分である軽質の炭化水素ガスと接触することにより変色または発色する化合物、例えば炭化水素ガスにより橙色から黒緑色に変色する酸化クロム(還元反応)を用いる。
【0008】
本発明の反応管は、前記反応剤を充填したものであり、気化ガソリン成分(気液平衡ガス中の炭化水素ガス)が10ppm以上の濃度(通常は10ppm〜3容量%の範囲内の濃度であるが、ガソリン成分濃度はいくら高くても使用可能である)の大小に応じた変色をする反応剤、例えば酸化クロムを充填した市販品(この商品は10ppm〜3容量%の間の濃度で微妙に変色の程度を異にする)、ガステック社製101あるいは101Lを用いることができる。反応剤は気化ガソリン成分と高い反応性を有するので、気化ガソリン成分の濃度に応じて、気化ガソリン成分と接触を開始する側の反応剤から逐次反応してゆくものであるため、気化ガソリンの量に対応して反応剤の変色または着色領域が図1の反応管7でいえば、左側より逐次右側に進行する。前記市販品はガラス製の反応管で、未使用品は中の反応剤が変色しないように内容を真空にし、両端のガラスを溶融封止したものであり、使用直前に両端部分を切断して、一方を気液平衡ガス供給用パイプに連結したビニール管に、他方を吸収手段に連結したビニール管に、それぞれ接続する。
【0009】
本発明で用いる前記試料を収納することができる容器としては、10〜1000ml程度の容積、好ましくは20〜500ml、とくに好ましくは50〜300mlの容積をもつものを使用する。このような容量をもつ容器を構成する材料にとくに制限はないが、例えばガラスびんなどを用いることができる。
【0010】
前記容器に入れる試料の量は、前記容器の1/4〜4/5、好ましくは1/3〜2/3程度を占める量であることが好ましい。この程度の量が試験を安定的にミスなく実施できる。
【0011】
本発明で用いる吸引手段は、系中の気体を定量的に吸引できる機能をもつものが好ましい。このような吸引手段としては、手動吸引ポンプ、流量計付吸引ポンプなどがあるが、危険物を取り扱うため電気を使用しない手段が好ましい。吸収ポンプは、逆止弁がついているタイプのものが好ましい。また、吸引手段と反応管またはダミー管の間にはコックを設けることが好ましい。また、気液平衡ガス供給用パイプと反応管またはダミー管の間にもコックを設けることが好ましい。ただし、これらのコックがなくても容器内に空気が入り込んで容器内の気液平衡を崩すおそれはほとんどない。
【0012】
吸引量としては、容器中の気体容積を基準にして、その容積の0.2〜5倍、好ましくは0.5〜2倍とすることができる。
【0013】
通常、ガソリンの気化ガスを含んだ気体中の炭化水素ガス(気化ガソリン成分)の濃度は、温度やガソリンの種類によっても異なるが、ほぼ20〜35容量%である。これに対して、灯油や軽油の気化ガスを含んだ気体中の炭化水素濃度は極めて低く、前記炭化水素濃度は、灯油の場合で0.05〜0.09容量%、軽油の場合で0.05容量%以下である。本発明では、軽油や灯油中に微量のガソリンが混入した場合、その気化ガスを含んだ気体中の炭化水素濃度が顕著に高くなるのを利用して、ガソリンの混入を検知するものである。
【0014】
図1を参照して本発明の具体例を説明する。1はガラスびん、2はゴム栓、3は空気導入用パイプ、4は試料(液体)、5は気相(気体)、6は気液平衡ガス供給用パイプ(L字管)、7は反応管(目盛付)、8は吸引手段であり、反応管7は、気液平衡ガス供給用パイプ6と吸引手段8との間に着脱自在に取り付けられている。空気導入用パイプの液側の先端には、デヒューザーストーンを付ける場合もある。デヒューザーストーンは導入される空気の液体中の気泡サイズを小さくするための器具で、容器内の気相部分の気液平衡状態をより確実に達成することができる。また試料4の液温を測定するための手段を付設することが好ましい。一番簡単な手段は空気導入用パイプ中に温度計を挿入する方法であるが、これに限定されるものではない。また使用する温度計もいろいろのタイプの温度計を用いることができる。
なお、後段の実施例や比較例に用いたガソリンコンタミ検知器は、ガラスびん1の容積は200ml、ここにはいっている試料(液体)は100ml、気相(気体)100ml、吸引手段8は一気に100mlが吸引できるが、50mlづつ2回に分けて吸引できるようになっており、〔0015〕における1回の吸引は50mlである。また、反応管7はガステック社製101を用いていたが、これは、内径約3mm、外径約5mm、全長約13cm、反応剤充填部分の長さ約5cmのものである。
【0015】
図1の装置の具体的使用方法の1例としては、まず反応管7をとりはずし、反応管7の代りにダミー管、例えば使用済みの反応管や反応剤が充填されていない単なるガラス管を取り付けた後、気相5の容積の半分の量を2回にわけて吸引手段を用いて吸引する(吸引回数は2回)。この吸引により系外の空気が空気導入用パイプを通ってガラスびん1内の試料4内に導入され、試料がバブリングされる。このバブリングによってガラスびん1内の気相5は気液平衡したガスで満たされる。
この段階で前記ダミー管をとりはずしガラスびん1内の気液平衡したガスが漏れないようにして、反応管を取りつけ、もう一度気相5の容積の半分の量を吸引手段により吸引する(吸引回数は3回目に当る)。吸引が終了した後、反応管の目盛値を読みとり、この目盛値から試料中に混入したガソリン量を推定する。ガラスびん1内の気液平衡したガスが漏れないようにするために気液平衡ガス供給用パイプの端部またはその近傍に開閉自在のコックなどの空気流入阻止手段を取り付けておき、このコックなどの空気流入阻止手段を「閉」の状態で前記ガラス管と反応管7の交換を行い、交換完了後に前記コックなどの空気流入阻止手段を「開」の状態とするという方法を採用してもよい。
図9は、試験試料(1.0容量%ガソリン汚染灯油)を容器に入れ、それぞれの吸引回数に対応して反応管7を入れかえ、それぞれの吸引回数に対応した反応管7の目盛値を読みとってグラフにしたものである。この図9からわかるように、容器内の気相の容積の半分づつを吸引してゆくと、ほぼ3回目の吸引の時から気液平衡が達成されていると理解することができる。いいかえれば、気相の容積全量を1回吸引しておけば、その後の気相は一応気液平衡が達成されているとみなすことができる。
【0016】
測定温度が基準温度以外の温度のとき、反応管の目盛値を基準温度の反応管の目盛値に換算する方法について、基準温度が25℃の場合を例として以下に説明する。
反応管の目盛から、ガソリンが混入した灯油や軽油の引火点を推測するための式としては、簡便なものとして、下記式(3)または式(4)を挙げることができ、この式を用いた計算方法は実施例1〜6および比較例1〜4に示している。しかし、この式(3)と式(4)は、測定温度(液温)がいずれも25℃のときにのみ適用できるものである。
そこで、通常のサービスステーションが設置されている常識的な環境であれば、いずれの環境条件でも反応管の目盛から、ガソリンが混入した灯油や軽油の引火点を推測できるようにするため、実際に測定を行った試料温度から、試料温度25℃で測定を行った場合のデータに換算する方法を下記に説明する。そして、測定温度が25℃のときは反応管の目盛をみただけで、また測定温度が25℃以外のときは、その測定温度の反応管の目盛から25℃の反応管の目盛値に換算するだけで、試料の品質を簡単かつ迅速に判断することができる。このケースは実施例7および8に示す。
【0017】
(1)試料が灯油の場合、
実際に測定を行なった時の試料温度における目盛値から、試料温度25℃で測定した時の目盛値に換算するための方法
【数1】
なお、αは同一試料を温度のみ異なるが他の条件は同一の実験を、少なくとも3種の温度条件で実施し、その反応管で測定した結果(測定温度とその測定温度における実測目盛値)を温度に対して指数関数と近似して得られた定数であり、eは自然対数の底である。任意のコンタミ量の試料に対する定数は概知のコンタミ量の試料に対して得られた定数を用いて補完法により計算できる。ちなみに実施例7では、簡略化のため表10のガソリンコンタミ量0.5%と1.0%の場合の指数関数の近似式から算出した指数の平均値である0.026を用いた。
(2)試料が軽油の場合、
実際に測定を行った時の試料温度における目盛値から、試料温度25℃で測定した時の目盛値に換算するための方法は、以下のとおりである。
【数2】
なお、βは同一試料を温度のみ異なるが他の条件は同一の実験を、少なくとも3種の温度条件で実施し、その反応管で測定した結果(測定温度とその測定温度における実測目盛値)を温度に対して指数関数と近似して得られた定数であり、eは自然対数の底である。任意のコンタミ量の試料に対する定数は概知のコンタミ量の試料に対して得られた定数を用いて補完法により計算できる。ちなみに実施例8では、簡略化のため表11のガソリンコンタミ量0.5%と1.0%の場合の指数関数の近似式から算出した指数の平均値である0.024を用いた。
【0018】
(A)25℃における反応管目盛値がどの程度以下であれば汚染を受けていても灯油あるいは軽油としてのJIS規格を満たしている(灯油あるいは軽油として取扱っても安全である)、(B)25℃における反応管の目盛値がどの範囲にあるものが灯油あるいは軽油としてのJIS規格を満たすかどうかのグレーゾーンにある(灯油あるいは軽油として取扱ったとき安全か危険かの微妙な領域にある、いいかえれば、それぞれのJIS規格を満たすかどうかの微妙なものであり、しかるべき検査機関における分析が必要)、(C)25℃における反応管の目盛値がどの程度以上であれば灯油あるいは軽油としてのJIS規格を満たさないもの(灯油として取り扱うのは危険)と判断してよいかの(A)、(B)、(C)の各ケースについて、数々の実験を重ねた。
そして、25℃における反応管内の気相における気液平衡ガス中の軽質炭化水素分(ガソリンの汚染に基因する成分)を測定した反応管の目盛値と引火点のデータを基にして、最小二乗法により高い相関関係のある一次関数を導き出した。その具体的手法を図に示した。図10は灯油の場合を、図11は軽油の場合を示す。
なお、灯油の場合も、軽油の場合も、図10や図11上において、式で示すとおり、引火点と目盛値の関係は一次関数で表すことができる(式中、yは縦軸、xは横軸となる)。このような場合、一方の数値がわかれば、他方の数値を予測することができる。このときの2つの数値の間の関係の強さを示す統計量Rは、図10の場合は0.955、図11の場合は0.959であり、この値から、引火点と目盛値は極めて高い相関関係があることが分る。ここから本請求項4、5および9の発明が生れた。なお、反応管の目盛は、気相中のガソリン成分の容量%に対応するものである。
【0019】
JIS規格によれば、灯油の引火点は40℃以上であることが定められており、軽油の引火点は50℃以上であることが定められている。このことを念頭において、下記の判断基準を適用することが適当であると判断した。
【0020】
<灯油の場合>
(A−1)25℃における反応管の目盛値が0.17未満のものは、ガソリンのコンタミによる危険性はなく、灯油としてのJIS規格における引火点の条件(40℃以上)を満たすもの「問題なし」の領域と解釈してよい。
(B−1)25℃における反応管の目盛値が0.17〜0.36のものは、ガソリンのコンタミによる危険性がある恐れがあるため、試験機関により灯油としてのJIS規格における引火点の条件を満足するか否かの測定が必要(要測定)。
(C−1)25℃における反応管の目盛値が0.36を上廻っているものは、ガソリンのコンタミによる危険性があり、灯油としてのJIS規格における引火点の条件を満たさない(規格外)と判断してよい。
【0021】
<軽油の場合>
(A−2)25℃における反応管の目盛値が0.23未満のものは、ガソリンのコンタミによる危険性はなく、軽油としてのJIS規格を満たすもの「問題なし」の領域と解釈してよい。
(B−2)25℃における反応管の目盛値が0.23〜0.31のものは、ガソリンのコンタミによる危険性がある恐れがあるため、試験機関により軽油としてのJIS規格における引火点の条件を満足するか否かの測定が必要(要測定)。
(C−2)25℃における反応管の目盛値が0.31を上廻っているものは、ガソリンのコンタミによる危険性があり、軽油としてのJIS規格における引火点の条件を満たさない(規格外)と判断してよい。
【0022】
前記(A)、(B)、(C)における判断は25℃における反応管の目盛値を基準としたものであるが、反応管の内の反応剤は、軽質炭化水素を感知するものであるため、測定温度が高くなると炭化水素の蒸気圧が高くなるので、当然反応管の目盛値も大きくなるという温度依存性がある。このことは逆に言えば温度が低くなると反応管の目盛値は小さくなる。
そこで、標準温度以外の種々の温度での測定結果を用いた判断基準が必要となる。
【0023】
そのため、測定温度と反応管の目盛値の関係図、すなわち安全か危険かの判定図を作成することが好ましい。
そのために、ガソリンコンタミ量が0.00%、0.25%、0.50%、0.75%、1.00%(%はいずれも容量%)の灯油及び軽油のサンプルをつくり、サンプル温度5℃、15℃、25℃、30℃における反応管の目盛値を求めた。
その結果は、下記表に示すとおりである。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
表1および表2を用いてグラフ化したのが図12および図13である。
【0027】
今まで述べてきたとおり、測定に供する灯油や軽油のサンプルの測定時における温度が何度であるかは非常に重要である。タンクに貯められている灯油や軽油を採取して、室内に持ちこみ、室内で測定を行うとすると、採取したときのサンプルの温度と実際に測定するときの温度は大抵の場合一致しない。したがって、測定時のサンプルは、所定時間測定室内に静置しておくことが好ましい。
ちなみに灯油および軽油100mlを後述の実施例1〜8で用いているガラスびん(直径55mm、容積200ml)に入れ、ガラスびんの中央部分に温度計を挿入し、25℃の室内に静置したとき、液温が25℃になるまでの時間を調べてみたところ、下記のとおりであった。
採取時の温度 液温が室温と平衡になるまでの時間
0℃ 47分
5℃ 44分
10℃ 40分
15℃ 33分
20℃ 22分
したがって、採取時の温度を考慮に入れたうえで、測定を行うことが好ましい。
現場で測定を行う場合は、ガラスびんに採取してから1時間測定室に静置した後、測定を行うようにすれば、その室温がすなわちサンプルの温度と考えてよい。
【0028】
請求項4、5および9の発明は、図14または図15のグラフにおける縦軸として目盛つき反応管を利用する図14は図12において25℃で反応管目盛値0.17および0.36をそれぞれ通過する曲線を選択して図示したものであり、図15は図13において25℃で反応管目盛値0.23および0.31を通過する曲線をそれぞれ選択して図示したものである。試料が灯油のときは図14に対応するグラフを表示したものを用い、試料が軽油のときは図15に対応するグラフを表示したものを用いる。表示板の縦軸に相当する反応管の目盛は、図14に対応する場合も、図15に対応する場合も同一であるから、反応管の目盛は、軽油の場合も灯油の場合も同一である。
図14または図15のグラフにおける横軸は、容器内の試料の温度であるから、図14または図15のグラフに相当する表示板の横軸における対応温度のところに反応管を位置させ、かつ、反応管の目盛のゼロ点を図14または図15の0.00の位置にセットすれば、直ちに試験試料が「問題なし」、すなわちJIS規格の引火点以上のものか、「要測定」すなわちガソリンコンタミのためJIS規格の引火点を下回っている恐れがあり、試験機関における引火点の測定が必要であるものか、または「規格外」すなわちガソリンコンタミのためJIS規格の引火点を下回っているものか、を直ちに決定することができる。
【0029】
前記表示板は、(イ)ガソリンコンタミ検知器と前記表示板とが別々になっている場合と(ロ)ガソリンコンタミ検知器と一体になっている場合がある。
【0030】
(イ)のガソリンコンタミ検知器と前記表示板が別々になっている場合には、請求項1〜3いずれか記載のガソリンコンタミ検知器を用い、反応管をダミー管に取り替え、一方、試料はそれを収納することのできる容器に入れ、ついで、吸引手段により気相部分が気液平衡に達するまで前記容器内の気相部分の気体を吸引した後、容器に空気が入りこまないようにして、ダミー管を「反応剤を含有する反応管」に取り替え、ついで所定量の気液平衡に達した容器内の気相部分の気体を吸引手段により吸引した後、ガソリンコンタミ検知器から反応管を取り外し、別途、例えば机の上に用意した「表示板」の縦軸として反応管の目盛を使用し、反応管の変色位置が図14または図15に対応する表示板の「問題なし」の領域にあるか、「要測定」の領域にあるか、「規格外」の領域にあるか、を読み取る。
【0031】
(ロ)のガソリンコンタミ検知器と表示板が一体となっている場合には、たとえば図16の説明のように取り扱えばよい。一体化の方法はとくに制限はないが、着脱自在方式とすることが好ましい。
表示板をガソリンコンタミ検知器に取り付けて使用する場合の1具体例を図16に示す。この例では反応管それ自体に目盛を設けるのが困難な場合の例を示しており、反応管それ自体と目盛板を一体化したものを反応管7として取り扱っている。もちろん反応管それ自体に目盛が付けられる場合に反応管それ自体に目盛を付けてもよいことは当然である。〔なお、これらの点は、前記(イ)の場合にも(ロ)の場合にも言えることである。〕図16における表示板9は図14に対応しているケースであるから、この場合はガソリンコンタミ灯油の検査に使用するものである。なお、図16のように表示板をガソリンコンタミ検知器に一体的に取り付けた場合における前記目盛板は透明合成樹脂板を用いることが好ましい。
【0032】
また、図16のガソリンコンタミ検知器セットにおいて、図14や図15を表示した表示板における容器内の試料の温度に対応する縦軸の位置に前記反応管が配置されるように反応管と表示板の位置関係を調節する手段としては、表示板を水平方向に移動させてもよいし、反応管を水平方向に移動させてもよい。
【0033】
本発明のガソリンコンタミ検知器は、ある程度分解した状態で、例えば図17の写真に示すようにスポンジクッションを入れたトランク内に収納し、簡単に持ち運びできるようにすることができる。
図17のガソリンコンタミ検知器は、図1のものをトランクに収納した場合のものである。
【発明の効果】
【0034】
(1)本発明により、少量のガソリンが軽油あるいは灯油などに混入してコンタミが起こったと懸念される場合に、このコンタミの程度を現場で簡単かつごく短時間で測定し、該当品への品質影響度を推定し、その対応を直ちにとることができる。
これにより、引火点が規格を外れた商品を誤って販売することを未然に防止できる。
(2)本発明により、測定温度が基準温度(たとえば25℃)のときは反応管の目盛を見ただけで、また、測定温度が基準温度(たとえば25℃)以外のときは、その測定温度の反応管の目盛値から基準温度(たとえば25℃)の反応管の目盛値に換算するだけで、試料の規格への該当性を簡単かつ迅速に判断することができる。
(3)とくに、請求項4または5のガソリンコンタミ検知器セットを用いた請求項9の発明によれば、測定時の液温と反応管の目盛値が、灯油の場合は図14の縦軸の目盛に、軽油の場合は図15の目盛に、それぞれ対応しているので、図14または図15の縦軸の位置に反応管をあてがい、反応管の変色位置が、表示板における「問題なし」の範囲内にあれば、確実に引火点がJIS規格を満たすものと直ちに判断でき、「規格外」の範囲内にあれば、確実に引火点がJIS規格を満たさないものと直ちに判断できる。なお表示板が「要測定」の範囲内にある場合には速断できないので、しかるべき試験機関に分析を依頼することになる。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、請求項4、5、9の発明は、ここまでの説明で充分であるから、実施例は設けていない。図16は1つの実施例ということができる。
【0036】
実験例
(1)ガソリンコンタミ量と引火点の関係
灯油や軽油にガソリンが混入した場合のガソリンコンタミ量と引火点の関係を実験により求めた。この引火点は、JIS K 2265により求めたものである。灯油にガソリンが混入した場合のガソリンコンタミ量と引火点の関係を表3および図2に示し、軽油にガソリンが混入した場合のガソリンコンタミ量と引火点の関係を表4および図3に示す。なお、本実験例で用いたガソリンはJIS K 2202、2号のレギュラーガソリン、灯油はJIS K 2203、1号の灯油、軽油はJIS K 2204、1号の軽油である。なお、表1と表3、あるいは表2と表4を対比すると、ガソリンコンタミ量が同じでも引火点が多少異なっているが、これは表1と表3、あるいは表2と表4の実験に用いたガソリンや灯油あるいは軽油が、それぞれ同一のロットのものを用いていなかったことによるものである。本発明は、このようなロット毎の差があっても充分使用することができる装置と方法を提供するものである。
【表3】
【表4】
【0037】
(2)ガソリンコンタミ量と反応管目盛値との関係
ガソリンコンタミ量と反応管目盛値との関係を表5および図4に示す。
【表5】
【0038】
(3)ガソリンが混入した灯油または軽油の反応管目盛値と引火点推測値との関係
ガソリンコンタミ量を媒介変数として、表3および表5に基づいて、反応管目盛値とガソリンが混入した灯油の引火点推測値を図5に実線で示す。同様に表4および表5に基づいて、反応管目盛値とガソリンが混入した軽油の引火点推測値を図6に実線で示す。
図5における黒四角マークは灯油のJIS K 2265に基づく引火点を示し、図6における黒四角マークは軽油のJIS K 2265に基づく引火点を示す。また、図5および図6における実線は、それぞれの黒四角マークに相当する数字を直線近似したものであり、それぞれ下記式(3)、式(4)として表示される。
【0039】
【数3】
各係数は引火点の軸に対する切片と傾きから求め、この例においては、A1=4、B1=43、A2=3、B2=80であるが、ガソリンの種類や灯・軽油の種類などにより、数字が異なってくることがある。
【0040】
実施例1〜8および比較例1〜4において使用した反応管および吸引装置などは以下に述べる通りである。
反応管(製品名、検知管):ガステック社製101(JIS K 0804準拠)
吸引装置 :ガステック社製気体採取器
サンプル量 :100ミリリットル
吸引量 : 50ミリリットル
*測定時の油温は約25℃
〔測定前準備(試料準備、ガス置換)〕
(1)試料を図1に示すガラスびん1の中央部にある標線内に入るように注ぎ込む(約1
00ml)。
(2)栓2を(しっかり)閉める。
図のように
(3)L字型(L字型部分のみは可撓性材料、例えばゴム質のものを用いることが好まし
い。)の気液平衡ガス供給用パイプに付いている可撓性管の端にダミー管の一方を付
ける。前記ダミー管は、既に測定済でいらなくなった反応管を使用すると便利かつ経
済的である。
(4)ダミー管のもう一方に吸引手段をつけて、100ml吸引する。バブリングが終了
するまで(約1分半)そのままに保つ。
(吸引手段を100mlの目盛に合わせて、一気にカチッと音がするまで引く。)
(5)ダミー管をはずす。
〔測定〕
(6)反応管の両端を折り、一方を可撓性管、もう一方を吸引手段につけて吸引手段を5
0mlに合わせて一気にカチッと音がするまで引くことにより50ml吸引する。バ
ブリングが終了するまで(約50秒)そのままに保つ。
(7)反応管をはずし、目盛値を読み取る。
(8)栓をはずし、試料温度を測る。
(9)読み取った目盛値と試料温度より、前記式(1)〜(4)にしたがって補正値を
算出する。
【0041】
実施例1〜2
軽油に少量のガソリンを混ぜて測定。測定時の油温は約25℃。
図4により反応管の読みから推定ガソリン混入量を求めた。
【表6】
実測ガソリン混入量はJIS K 2536に規定するC5以下留分のガスクロマトグラフ分析方法により求めたものであり、推定ガソリン混入量は、図4を用いて反応管目盛から求めた値である。
【0042】
実施例3〜6
軽油に一定量(0、0.5、1、2%)のガソリンを混ぜて測定。
反応管の読みから、図4を用いて推定ガソリン混入量を求めると共に、数3の式(4)を用いて推定引火点を求めた。
【表7】
実測引火点は、サンプル3〜5ではペンスキー・マルテンス式引火点試験機を、サンプル6ではタグ密閉式引火点試験機(引火点がかなり低いと推定したため)を用いて測定したものであり、いずれもJIS K 2265に準拠したものである。
サンプル6で推定引火点と実測引火点にかなりの差が出ているが、これは引火点の試験法が違うために起こったものと思われる。
【0043】
比較例1〜2
測定前の100mlの吸引を省略し、気液平衡を達成させずにサンプル4とサンプル5を用いて測定。
反応管の目盛値から、図4を用いて推定ガソリン混入量を求めると共に、数3の式(4)を用いて推定引火点を求めた。
【表8】
実測引火点は、比較例1においてはペンスキー・マルテンス式引火点試験機を用い、比較例2においてはタグ密閉式引火点試験機(引火点がかなり低いと推定したため)を用い、実施例3〜6と同様に測定したものである。
気液平衡が達成されていないため、反応管の目盛値は低くなる。それにより、ガソリンの混入量が低めに、引火点は高めに算出される。
【0044】
比較例3〜4
容器開放部に密栓をせず〔図1におけるゴム栓を用いない〕にサンプル5とサンプル6を用いて測定。
反応管の読みから、図4を用いて推定ガソリン混入量を求めると共に、数3の式(4)を用いて推定引火点を求めた。
【表9】
実測引火点は、比較例3においてはペンスキー・マルテンス式引火点試験機を用い、比較例4ではタグ密閉式引火点試験機(引火点がかなり低いと推定したため)を用い、実施例3〜6と同様に測定したものである。
外気中の空気も反応管に導入されるため、反応管の目盛値が比較例1、2よりさらに低くなる。したがって、ガソリンの混入量が低めに、引火点は高めに算出される。
【0045】
実施例7
灯油試料を用いた、反応管目盛値と測定温度との関係
ガソリンによるコンタミを測定する際の試料温度に対して、反応管の目盛値がどのように変化するかを調べるために、異なるガソリンコンタミ量の灯油試料を四種類(0.0%、0.5%、1.0%、1.5%)用意し、四種類の温度条件(5℃、15℃、25℃、30℃)下で、本発明のガソリンコンタミ検知器により、ガソリンによるコンタミの測定を行ったところ、反応管の目盛値は下記表のとおりであった。また、別途JIS K 2265による引火点を求め、参考までに表に記した。
【表10】
この表10のデータを用いて、測定温度が25℃における反応管の目盛値とJIS K
2265の引火点との関係を図7に示す。JIS K 2265の引火点が40℃(JIS K 2203の灯油の規格値)の場合の反応管の目盛値を図7より推算すると0.28となる。
また、各測定温度と反応管の目盛値の関係は指数関数で近似することが可能であり、例えばガソリンコンタミ量0.5%および1.0%の場合、式(5)、(6)として表示される。
【数4】
簡略化のため、上記式(5)、(6)の指数の平均値である0.026を用いて、「各測定温度の反応管目盛値」を「25℃の反応管目盛値」に換算する方法を下記式で表示する。
【数5】
以上の点から、
前記試料が灯油のとき、その目盛値〔測定温度が25℃のときはその値、それ以外の温度のときは式(1′)を用いた換算値〕が0.28より下回る場合は図7からみて、JIS K 2203の灯油の引火点の規格値40℃以上を満たしていると考えられる。ただし、反応管の誤差としてはJIS K 0804で指示精度±35%以下と規定されていることと、灯油の引火点に若干の幅があることを考慮して、5℃程度高く引火点が推算される目盛値(0.15)をガソリンによるコンタミの判断基準とすることとする。
この基準によれは、ガソリンコンタミ検知器の反応管の目盛値(換算値も含む)が
0.15以下の場合 :実質的なコンタミはない。引火点は40℃以上と推定で
き、JIS K 2203の灯油としての引火点条件を
満足していると判断できる。
0.15を上回る場合 :コンタミがあると考えられ、JIS K 2265によ
る引火点の確認が必要である。
と判断することができる。
【0046】
実施例8
実施例1〜6とは異なる軽油試料を用いた、反応管目盛値と測定温度との関係
ガソリンによるコンタミを測定する際の試料温度に対して、反応管の目盛値がどのように変化するかを調べるために、異なるガソリンコンタミ量の軽油試料を四種類(0.0%、0.5%、1.0%、1.5%)用意し、四種類の温度条件(5℃、15℃、25℃、30℃)下で、本発明のガソリンコンタミ検知器により、ガソリンによるコンタミの測定を行ったところ、反応管の目盛値は下記表のとおりであった。また、別途JIS K 2265による引火点を求め、参考までに表に記した。
【表11】
この表11のデータを用いて、測定時の温度が25℃における反応管の目盛値とJIS
K 2265の引火点との関係を図8に示す。JIS K 2265の引火点が50℃(JIS K 2204の軽油の規格値)の場合の反応管の目盛値を図8より推算すると0.36となる。
また、各測定時の温度と反応管の目盛値の関係は指数関数で近似することが可能であり、例えばガソリンコンタミ量0.5%および1.0%の場合、式(7)、(8)として表示される。
【数6】
簡略化のため、上記式(7)、(8)の指数の平均値である0.024を用いて、「各測定温度の反応管目盛値」を「25℃の反応管目盛値」に換算する方法を下記式で表示する。
【数7】
以上の点から、
前記試料が軽油のとき、その目盛値〔測定温度が25℃のときはその値、それ以外の温度のときは式(2′)を用いた換算値〕が0.36より下回る場合は、図8からみて、JIS K 2204の軽油の引火点の規格値50℃以上を満たしていると考えられる。ただし、反応管の誤差としてはJIS K 0804で指示精度±35%以下と規定されていることと、軽油の引火点に若干の幅があることを考慮して、10℃程度高く引火点が推算される目盛値(0.20)をガソリンによるコンタミの判断基準とすることととする。
この基準によれば、ガソリンコンタミ検知器の反応管の目盛値(換算値も含む)が
0.2以下の場合 :実質的なコンタミはない。引火点は50℃以上と推定で
き、軽油のJIS K 2204の軽油(特1号、1号、
2号)としての引火点条件を満足していると判断できる。
0.2を上回る場合 :コンタミがあると考えられ、JIS K 2265による
引火点の確認が必要である。
と判断することができる。
本発明は、試料を検査するとき、その都度JISの引火点を調べなくても、コンタミの有無を実質的に判断できる点に特徴をもつものであるから、通常の本発明の実施に当っては、JIS引火点を調べることなく、それぞれの測定時の温度における反応管の目盛値を25℃の目盛値に換算(試料温度が25℃のときは換算不要)した数値で判断するものである(実施例7においても同様)。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明のガソリンコンタミ検知器の1具体例を示す。
【図2】灯油にガソリンが混入した場合のガソリンコンタミ量と引火点の関係を示す。
【図3】軽油にガソリンが混入した場合のガソリンコンタミ量と引火点の関係を示す。
【図4】ガソリンコンタミ量と反応管目盛値との関係を示す。
【図5】ガソリンが混入した灯油引火点推測値と反応管目盛値の関係を示す。
【図6】ガソリンが混入した軽油引火点推測値と反応管目盛値の関係を示す。
【図7】ガソリンが混入した灯油の25℃における反応管目盛値とJIS引火点との関係を示す。
【図8】ガソリンが混入した軽油の25℃における反応管目盛値とJIS引火点との関係を示す。
【図9】試験液体(1.0容量%のガソリンにより汚染された灯油)を容器に入れ、それぞれの吸引回数に対応して反応管を入れかえ、それぞれの吸引回数に対応した反応管の目盛値を読みとってグラフにしたものである。
【図10】灯油にガソリンが0〜1.0%の範囲で混入された汚染灯油を実施例で用いた図1に示すガソリンコンタミ検知器にかけ、その目盛値を調べると共に、そのサンプルの引火点をJISにより測定し、これをプロットし、そこから式y=−32.129x+48.048の関係式を求めて、これを線引きしたグラフである。
【図11】軽油にガソリンが0〜0.1%の範囲で混合された汚染軽油を実施例で用いた図1に示すガソリンコンタミ検知器にかけ、その目盛値を調べると共に、そのサンプルの引火点をJISにより測定し、これをプロットし、そこから式y=−73.751x+74.308の関係式を求めて、これを線引きしたグラフである。
【図12】表1を元に作成した汚染灯油のコンタミ検知器の測定結果を示すグラフである。
【図13】表2を元に作成した汚染軽油のコンタミ検知器の測定結果を示すグラフである。
【図14】図1の装置を用いて得られた反応管目盛値と測定温度から、簡易的に汚染灯油がJIS規格を満たすものかどうかを判断できる簡易判断表であり、表示板として利用できる。
【図15】図1の装置を用いて得られた反応管目盛値と測定温度から、簡易的に汚染軽油がJIS規格を満たすものかどうかを判断できる簡易判断表であり、表示板として利用できる。
【図16】本発明のガソリンコンタミ検知器のもう1つの具体例を示す。
【図17】本発明のガソリンコンタミ検知器をトランクに収納した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
1 ガラスびん
2 ゴム栓
3 空気導入用パイプ
4 試料
5 気相(気体)
6 気液平衡ガス供給用パイプ
7 反応管
8 吸引手段
9 表示板
10 反応剤変色部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば灯油や軽油中にガソリンが混入したことによりガソリンのコンタミネーション(以下、コンタミと略称する)が発生しているか否かを検知するため、それらの引火点を簡単に検知することができ、それによりガソリンのコンタミの有無を推定することができるガソリンコンタミ検知器、その使用方法およびこれを用いてJIS規格に規定する引火点の条件を満たすかどうかを簡略的に判断する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンスタンド(以下サービスステーションという)では、石油製品であるガソリン、軽油、灯油を販売している。これら石油製品の供給ルートの具体例を説明すると、製油所から出荷された石油製品は、タンクローリー、船舶などにより油槽所のタンクに移送される。油槽所からはタンクローリーによりサービスステーションのそれぞれの石油製品に対応するガソリン、軽油、灯油のタンクに供給され、その後ユーザーに販売される。
石油製品の種類の確認は各移送時において、それぞれの場所で毎回、書面、文字、色などの表示、機械的な鍵や電気的な鍵による信号をコンピューターなどで照合することなどにより行われ、混油防止が図られている。
しかしながら、各種混油防止装置によりその可能性は低下しているが、荷卸し作業において、たとえばガソリンが灯油や軽油に混入しガソリンコンタミが起こったのではないかという疑問が発生した場合は、混油事故防止の観点から、直ちにサービスステーションの地下タンクにある石油製品の性状を確認する必要がある。
【0003】
ガソリンが灯油や軽油に混入し、いわゆるガソリンコンタミが起こると、灯油や軽油の引火点が低くなり、灯油の場合にはストーブの異常燃焼による火災、軽油の場合にはディーゼルエンジンの燃料ポンプの潤滑不良を引き起こす恐れが生ずる。
【0004】
従来、軽油あるいは灯油中に少量のガソリンが混入し、いわゆるガソリンコンタミが起こった場合に、その混入量を確認するためには、引火点を測定することが有効であることが分かっていた。しかし、この場合現場での測定ができないのが実情であり、引火点を測定するためにはこれを試験機関にとどけて測定を依頼しなければならず、その結果がわかるまでに多くの日数を要していた。また、ガソリンの混入量が多い場合は引火点が常温以下となり、測定時に試験機器の損傷のみならず、火災を引き起こす危険性が大きい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の第1の目的は、灯油や軽油に、それより引火点の低い成分が混入したか否かを簡単にチェックすることのできるガソリンコンタミ検知器およびガソリンコンタミ検知方法を提供する点にある。
本発明の第2の目的は、少量のガソリンが灯油や軽油に混入した疑いのある場合に、この混入量や引火点を推測するために現場で、灯油や軽油中にガソリンが混入した疑いのある試料の引火点がどの程度かを簡単かつ迅速に知ることができ、それにより試料にガソリンによるコンタミがおこっているかどうかを検知するためのガソリンコンタミ検知器およびそれを用いて試料のコンタミの程度を検知したり、コンタミがあるか否かを簡単に検知したり、その灯油または軽油がJIS規格における引火点の要件を満たすか否かを安全側に評価し、簡単に検知する方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1は、試料を収納することのできる容器、容器中の試料内に空気を供給するための空気供給ライン、容器中に存在する気液平衡ガスを吸引するための吸引手段、吸引手段と容器との間に設けられた、気化ガソリン成分(気液平衡ガス中の炭化水素ガス)と反応して変色する反応剤を含有する反応管および前記反応管と取替え可能なダミー管よりなることを特徴とするガソリンコンタミ検知器に関する。
本発明の第2は、前記吸引手段は系中の気体を定量的に吸引できるものである請求項1記載のガソリンコンタミ検知器に関する。
本発明の第3は、前記反応管は、気体中の気化ガソリン成分が10ppm以上で、その濃度に応じて変色または着色する領域が変化し得る反応剤を含有するものである請求項1または2記載のガソリンコンタミ検知器に関する。
本発明の第4は、試料を収納することのできる容器、容器中の試料内に空気を供給するための空気供給ライン、容器中に存在する気液平衡ガスを吸引するための吸引手段、吸引手段と容器との間に設けられた、気化ガソリン成分(気液平衡ガス中の炭化水素ガス)と反応して変色する反応剤を含有する反応管、前記反応管と取替え可能なダミー管および図14または図15に対応する表示板よりなることを特徴とするガソリンコンタミ検知器に関する。
本発明の第5は、前記反応管が図14または図15の縦軸と同一の目盛が設けられているものである請求項4記載のガソリンコンタミ検知器に関する。
本発明の第6は、請求項1〜3いずれか記載のガソリンコンタミ検知器を用い、最初にダミー管を取り付け、一方、試料はそれを収納することのできる容器に入れ、ついで、吸引手段により気相部分が気液平衡に達するまで前記容器内の気相部分の気体を吸引した後、容器に空気が入りこまないようにして、ダミー管を「反応して変色する反応剤を含有する反応管」に取り替え、ついで所定量の気液平衡に達した容器内の気相部分の気体を吸引手段により吸引し、反応管の目盛のうち、どの部分まで反応剤が変色したかを読み取り、この数値から試料のコンタミの程度を検知することにより試料の引火点を推測する方法に関する。なお、ダミー管とは、反応管と同じ大きさであるが、その中に反応剤を含有していないものであり、たとえば、ただのガラス管とか、使用済みの反応管であることができる。このダミー管を用いることにより、気液平衡に達するまでの気相部分を吸引したとき、そのなかに含まれている気化ガソリン成分により新しい反応管の中の反応剤が反応してしまい反応管を無駄にするのを防止することができる。
本発明の第7は、請求項1〜3いずれか記載のガソリンコンタミ検知器を用い、最初にダミー管を取り付け、一方、試料はそれを収納することのできる容器に入れ、ついで、吸引手段により気相部分が気液平衡に達するまで前記容器内の気相部分の気体を吸引した後、容器に空気が入りこまないようにして、ダミー管を「反応して変色する反応剤を含有する反応管」に取り替え、ついで所定量の気液平衡に達した容器内の気相部分の気体を吸引手段により吸引し、反応管の目盛のうち、どの部分までが変色したかを読み取り、容器内の試料の温度が基準温度のときは反応管の目盛値をそのまま使用し、容器内の試料の温度が基準温度以外の温度のときはその値を基準温度の反応管の目盛値に換算し、得られた目盛値にもとづいて、試料のコンタミの程度を検知することにより試料の引火点を推測する方法に関する。
本発明の第8は、請求項1〜3いずれか記載のガソリンコンタミ検知器を用い、最初にダミー管を取り付け、一方、試料はそれを収納することのできる容器に入れ、ついで、吸引手段により気相部分が気液平衡に達するまで前記容器内の気相部分の気体を吸引した後、容器に空気が入りこまないようにして、ダミー管を「反応して変色する反応剤を含有する反応管」に取り替え、ついで所定量の気液平衡に達した容器内の気相部分の気体を吸引手段により吸引し、反応管の目盛のうち、どの部分まで反応剤が変色したかを読み取り、この数値を測定時の前記容器内の試料の温度とから、灯油の場合は図14を用いて、軽油の場合は図15を用いて、測定の対象となった灯油または軽油が、JIS規格の引火点の条件を満たすかどうかを安全側に評価し、簡略的に判断する方法に関する。
本発明の第9は、請求項4または5記載のガソリンコンタミ検知器セットを用い、最初にダミー管を取り付け、一方、試料はそれを収納することのできる容器に入れ、ついで、吸引手段により気相部分が気液平衡に達するまで前記容器内の気相部分の気体を吸引した後、容器に空気が入りこまないようにして、ダミー管を「反応して変色する反応剤を含有する反応管」に取り替え、ついで所定量の気液平衡に達した容器内の気相部分の気体を吸引手段により吸引し、灯油の場合は図14に対応する表示板における容器内の試料の温度に対応する位置に、軽油の場合は図15に対応する表示板における容器内の試料の温度に対応する位置に、反応管目盛軸と平行に前記反応管を置き、反応管内の反応剤が変色した部分と変色しない部分の境界位置が、灯油の場合は図14に対応した表示板における「問題なし」の領域にあるか、「要測定」の領域にあるか、あるいは「規格外」の領域にあるかを読み取り、また軽油の場合は図15に対応した表示板における「問題なし」の領域にあるか、「要測定」の領域にあるか、あるいは「規格外」の領域にあるかを読み取ることにより、測定の対象となった灯油または軽油が、JIS規格の引火点の条件を満たすかどうかを簡略的に判断する方法に関する。
【0007】
本発明で用いる反応剤は、ガソリンが気化した成分である軽質の炭化水素ガスと接触することにより変色または発色する化合物、例えば炭化水素ガスにより橙色から黒緑色に変色する酸化クロム(還元反応)を用いる。
【0008】
本発明の反応管は、前記反応剤を充填したものであり、気化ガソリン成分(気液平衡ガス中の炭化水素ガス)が10ppm以上の濃度(通常は10ppm〜3容量%の範囲内の濃度であるが、ガソリン成分濃度はいくら高くても使用可能である)の大小に応じた変色をする反応剤、例えば酸化クロムを充填した市販品(この商品は10ppm〜3容量%の間の濃度で微妙に変色の程度を異にする)、ガステック社製101あるいは101Lを用いることができる。反応剤は気化ガソリン成分と高い反応性を有するので、気化ガソリン成分の濃度に応じて、気化ガソリン成分と接触を開始する側の反応剤から逐次反応してゆくものであるため、気化ガソリンの量に対応して反応剤の変色または着色領域が図1の反応管7でいえば、左側より逐次右側に進行する。前記市販品はガラス製の反応管で、未使用品は中の反応剤が変色しないように内容を真空にし、両端のガラスを溶融封止したものであり、使用直前に両端部分を切断して、一方を気液平衡ガス供給用パイプに連結したビニール管に、他方を吸収手段に連結したビニール管に、それぞれ接続する。
【0009】
本発明で用いる前記試料を収納することができる容器としては、10〜1000ml程度の容積、好ましくは20〜500ml、とくに好ましくは50〜300mlの容積をもつものを使用する。このような容量をもつ容器を構成する材料にとくに制限はないが、例えばガラスびんなどを用いることができる。
【0010】
前記容器に入れる試料の量は、前記容器の1/4〜4/5、好ましくは1/3〜2/3程度を占める量であることが好ましい。この程度の量が試験を安定的にミスなく実施できる。
【0011】
本発明で用いる吸引手段は、系中の気体を定量的に吸引できる機能をもつものが好ましい。このような吸引手段としては、手動吸引ポンプ、流量計付吸引ポンプなどがあるが、危険物を取り扱うため電気を使用しない手段が好ましい。吸収ポンプは、逆止弁がついているタイプのものが好ましい。また、吸引手段と反応管またはダミー管の間にはコックを設けることが好ましい。また、気液平衡ガス供給用パイプと反応管またはダミー管の間にもコックを設けることが好ましい。ただし、これらのコックがなくても容器内に空気が入り込んで容器内の気液平衡を崩すおそれはほとんどない。
【0012】
吸引量としては、容器中の気体容積を基準にして、その容積の0.2〜5倍、好ましくは0.5〜2倍とすることができる。
【0013】
通常、ガソリンの気化ガスを含んだ気体中の炭化水素ガス(気化ガソリン成分)の濃度は、温度やガソリンの種類によっても異なるが、ほぼ20〜35容量%である。これに対して、灯油や軽油の気化ガスを含んだ気体中の炭化水素濃度は極めて低く、前記炭化水素濃度は、灯油の場合で0.05〜0.09容量%、軽油の場合で0.05容量%以下である。本発明では、軽油や灯油中に微量のガソリンが混入した場合、その気化ガスを含んだ気体中の炭化水素濃度が顕著に高くなるのを利用して、ガソリンの混入を検知するものである。
【0014】
図1を参照して本発明の具体例を説明する。1はガラスびん、2はゴム栓、3は空気導入用パイプ、4は試料(液体)、5は気相(気体)、6は気液平衡ガス供給用パイプ(L字管)、7は反応管(目盛付)、8は吸引手段であり、反応管7は、気液平衡ガス供給用パイプ6と吸引手段8との間に着脱自在に取り付けられている。空気導入用パイプの液側の先端には、デヒューザーストーンを付ける場合もある。デヒューザーストーンは導入される空気の液体中の気泡サイズを小さくするための器具で、容器内の気相部分の気液平衡状態をより確実に達成することができる。また試料4の液温を測定するための手段を付設することが好ましい。一番簡単な手段は空気導入用パイプ中に温度計を挿入する方法であるが、これに限定されるものではない。また使用する温度計もいろいろのタイプの温度計を用いることができる。
なお、後段の実施例や比較例に用いたガソリンコンタミ検知器は、ガラスびん1の容積は200ml、ここにはいっている試料(液体)は100ml、気相(気体)100ml、吸引手段8は一気に100mlが吸引できるが、50mlづつ2回に分けて吸引できるようになっており、〔0015〕における1回の吸引は50mlである。また、反応管7はガステック社製101を用いていたが、これは、内径約3mm、外径約5mm、全長約13cm、反応剤充填部分の長さ約5cmのものである。
【0015】
図1の装置の具体的使用方法の1例としては、まず反応管7をとりはずし、反応管7の代りにダミー管、例えば使用済みの反応管や反応剤が充填されていない単なるガラス管を取り付けた後、気相5の容積の半分の量を2回にわけて吸引手段を用いて吸引する(吸引回数は2回)。この吸引により系外の空気が空気導入用パイプを通ってガラスびん1内の試料4内に導入され、試料がバブリングされる。このバブリングによってガラスびん1内の気相5は気液平衡したガスで満たされる。
この段階で前記ダミー管をとりはずしガラスびん1内の気液平衡したガスが漏れないようにして、反応管を取りつけ、もう一度気相5の容積の半分の量を吸引手段により吸引する(吸引回数は3回目に当る)。吸引が終了した後、反応管の目盛値を読みとり、この目盛値から試料中に混入したガソリン量を推定する。ガラスびん1内の気液平衡したガスが漏れないようにするために気液平衡ガス供給用パイプの端部またはその近傍に開閉自在のコックなどの空気流入阻止手段を取り付けておき、このコックなどの空気流入阻止手段を「閉」の状態で前記ガラス管と反応管7の交換を行い、交換完了後に前記コックなどの空気流入阻止手段を「開」の状態とするという方法を採用してもよい。
図9は、試験試料(1.0容量%ガソリン汚染灯油)を容器に入れ、それぞれの吸引回数に対応して反応管7を入れかえ、それぞれの吸引回数に対応した反応管7の目盛値を読みとってグラフにしたものである。この図9からわかるように、容器内の気相の容積の半分づつを吸引してゆくと、ほぼ3回目の吸引の時から気液平衡が達成されていると理解することができる。いいかえれば、気相の容積全量を1回吸引しておけば、その後の気相は一応気液平衡が達成されているとみなすことができる。
【0016】
測定温度が基準温度以外の温度のとき、反応管の目盛値を基準温度の反応管の目盛値に換算する方法について、基準温度が25℃の場合を例として以下に説明する。
反応管の目盛から、ガソリンが混入した灯油や軽油の引火点を推測するための式としては、簡便なものとして、下記式(3)または式(4)を挙げることができ、この式を用いた計算方法は実施例1〜6および比較例1〜4に示している。しかし、この式(3)と式(4)は、測定温度(液温)がいずれも25℃のときにのみ適用できるものである。
そこで、通常のサービスステーションが設置されている常識的な環境であれば、いずれの環境条件でも反応管の目盛から、ガソリンが混入した灯油や軽油の引火点を推測できるようにするため、実際に測定を行った試料温度から、試料温度25℃で測定を行った場合のデータに換算する方法を下記に説明する。そして、測定温度が25℃のときは反応管の目盛をみただけで、また測定温度が25℃以外のときは、その測定温度の反応管の目盛から25℃の反応管の目盛値に換算するだけで、試料の品質を簡単かつ迅速に判断することができる。このケースは実施例7および8に示す。
【0017】
(1)試料が灯油の場合、
実際に測定を行なった時の試料温度における目盛値から、試料温度25℃で測定した時の目盛値に換算するための方法
【数1】
なお、αは同一試料を温度のみ異なるが他の条件は同一の実験を、少なくとも3種の温度条件で実施し、その反応管で測定した結果(測定温度とその測定温度における実測目盛値)を温度に対して指数関数と近似して得られた定数であり、eは自然対数の底である。任意のコンタミ量の試料に対する定数は概知のコンタミ量の試料に対して得られた定数を用いて補完法により計算できる。ちなみに実施例7では、簡略化のため表10のガソリンコンタミ量0.5%と1.0%の場合の指数関数の近似式から算出した指数の平均値である0.026を用いた。
(2)試料が軽油の場合、
実際に測定を行った時の試料温度における目盛値から、試料温度25℃で測定した時の目盛値に換算するための方法は、以下のとおりである。
【数2】
なお、βは同一試料を温度のみ異なるが他の条件は同一の実験を、少なくとも3種の温度条件で実施し、その反応管で測定した結果(測定温度とその測定温度における実測目盛値)を温度に対して指数関数と近似して得られた定数であり、eは自然対数の底である。任意のコンタミ量の試料に対する定数は概知のコンタミ量の試料に対して得られた定数を用いて補完法により計算できる。ちなみに実施例8では、簡略化のため表11のガソリンコンタミ量0.5%と1.0%の場合の指数関数の近似式から算出した指数の平均値である0.024を用いた。
【0018】
(A)25℃における反応管目盛値がどの程度以下であれば汚染を受けていても灯油あるいは軽油としてのJIS規格を満たしている(灯油あるいは軽油として取扱っても安全である)、(B)25℃における反応管の目盛値がどの範囲にあるものが灯油あるいは軽油としてのJIS規格を満たすかどうかのグレーゾーンにある(灯油あるいは軽油として取扱ったとき安全か危険かの微妙な領域にある、いいかえれば、それぞれのJIS規格を満たすかどうかの微妙なものであり、しかるべき検査機関における分析が必要)、(C)25℃における反応管の目盛値がどの程度以上であれば灯油あるいは軽油としてのJIS規格を満たさないもの(灯油として取り扱うのは危険)と判断してよいかの(A)、(B)、(C)の各ケースについて、数々の実験を重ねた。
そして、25℃における反応管内の気相における気液平衡ガス中の軽質炭化水素分(ガソリンの汚染に基因する成分)を測定した反応管の目盛値と引火点のデータを基にして、最小二乗法により高い相関関係のある一次関数を導き出した。その具体的手法を図に示した。図10は灯油の場合を、図11は軽油の場合を示す。
なお、灯油の場合も、軽油の場合も、図10や図11上において、式で示すとおり、引火点と目盛値の関係は一次関数で表すことができる(式中、yは縦軸、xは横軸となる)。このような場合、一方の数値がわかれば、他方の数値を予測することができる。このときの2つの数値の間の関係の強さを示す統計量Rは、図10の場合は0.955、図11の場合は0.959であり、この値から、引火点と目盛値は極めて高い相関関係があることが分る。ここから本請求項4、5および9の発明が生れた。なお、反応管の目盛は、気相中のガソリン成分の容量%に対応するものである。
【0019】
JIS規格によれば、灯油の引火点は40℃以上であることが定められており、軽油の引火点は50℃以上であることが定められている。このことを念頭において、下記の判断基準を適用することが適当であると判断した。
【0020】
<灯油の場合>
(A−1)25℃における反応管の目盛値が0.17未満のものは、ガソリンのコンタミによる危険性はなく、灯油としてのJIS規格における引火点の条件(40℃以上)を満たすもの「問題なし」の領域と解釈してよい。
(B−1)25℃における反応管の目盛値が0.17〜0.36のものは、ガソリンのコンタミによる危険性がある恐れがあるため、試験機関により灯油としてのJIS規格における引火点の条件を満足するか否かの測定が必要(要測定)。
(C−1)25℃における反応管の目盛値が0.36を上廻っているものは、ガソリンのコンタミによる危険性があり、灯油としてのJIS規格における引火点の条件を満たさない(規格外)と判断してよい。
【0021】
<軽油の場合>
(A−2)25℃における反応管の目盛値が0.23未満のものは、ガソリンのコンタミによる危険性はなく、軽油としてのJIS規格を満たすもの「問題なし」の領域と解釈してよい。
(B−2)25℃における反応管の目盛値が0.23〜0.31のものは、ガソリンのコンタミによる危険性がある恐れがあるため、試験機関により軽油としてのJIS規格における引火点の条件を満足するか否かの測定が必要(要測定)。
(C−2)25℃における反応管の目盛値が0.31を上廻っているものは、ガソリンのコンタミによる危険性があり、軽油としてのJIS規格における引火点の条件を満たさない(規格外)と判断してよい。
【0022】
前記(A)、(B)、(C)における判断は25℃における反応管の目盛値を基準としたものであるが、反応管の内の反応剤は、軽質炭化水素を感知するものであるため、測定温度が高くなると炭化水素の蒸気圧が高くなるので、当然反応管の目盛値も大きくなるという温度依存性がある。このことは逆に言えば温度が低くなると反応管の目盛値は小さくなる。
そこで、標準温度以外の種々の温度での測定結果を用いた判断基準が必要となる。
【0023】
そのため、測定温度と反応管の目盛値の関係図、すなわち安全か危険かの判定図を作成することが好ましい。
そのために、ガソリンコンタミ量が0.00%、0.25%、0.50%、0.75%、1.00%(%はいずれも容量%)の灯油及び軽油のサンプルをつくり、サンプル温度5℃、15℃、25℃、30℃における反応管の目盛値を求めた。
その結果は、下記表に示すとおりである。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】
表1および表2を用いてグラフ化したのが図12および図13である。
【0027】
今まで述べてきたとおり、測定に供する灯油や軽油のサンプルの測定時における温度が何度であるかは非常に重要である。タンクに貯められている灯油や軽油を採取して、室内に持ちこみ、室内で測定を行うとすると、採取したときのサンプルの温度と実際に測定するときの温度は大抵の場合一致しない。したがって、測定時のサンプルは、所定時間測定室内に静置しておくことが好ましい。
ちなみに灯油および軽油100mlを後述の実施例1〜8で用いているガラスびん(直径55mm、容積200ml)に入れ、ガラスびんの中央部分に温度計を挿入し、25℃の室内に静置したとき、液温が25℃になるまでの時間を調べてみたところ、下記のとおりであった。
採取時の温度 液温が室温と平衡になるまでの時間
0℃ 47分
5℃ 44分
10℃ 40分
15℃ 33分
20℃ 22分
したがって、採取時の温度を考慮に入れたうえで、測定を行うことが好ましい。
現場で測定を行う場合は、ガラスびんに採取してから1時間測定室に静置した後、測定を行うようにすれば、その室温がすなわちサンプルの温度と考えてよい。
【0028】
請求項4、5および9の発明は、図14または図15のグラフにおける縦軸として目盛つき反応管を利用する図14は図12において25℃で反応管目盛値0.17および0.36をそれぞれ通過する曲線を選択して図示したものであり、図15は図13において25℃で反応管目盛値0.23および0.31を通過する曲線をそれぞれ選択して図示したものである。試料が灯油のときは図14に対応するグラフを表示したものを用い、試料が軽油のときは図15に対応するグラフを表示したものを用いる。表示板の縦軸に相当する反応管の目盛は、図14に対応する場合も、図15に対応する場合も同一であるから、反応管の目盛は、軽油の場合も灯油の場合も同一である。
図14または図15のグラフにおける横軸は、容器内の試料の温度であるから、図14または図15のグラフに相当する表示板の横軸における対応温度のところに反応管を位置させ、かつ、反応管の目盛のゼロ点を図14または図15の0.00の位置にセットすれば、直ちに試験試料が「問題なし」、すなわちJIS規格の引火点以上のものか、「要測定」すなわちガソリンコンタミのためJIS規格の引火点を下回っている恐れがあり、試験機関における引火点の測定が必要であるものか、または「規格外」すなわちガソリンコンタミのためJIS規格の引火点を下回っているものか、を直ちに決定することができる。
【0029】
前記表示板は、(イ)ガソリンコンタミ検知器と前記表示板とが別々になっている場合と(ロ)ガソリンコンタミ検知器と一体になっている場合がある。
【0030】
(イ)のガソリンコンタミ検知器と前記表示板が別々になっている場合には、請求項1〜3いずれか記載のガソリンコンタミ検知器を用い、反応管をダミー管に取り替え、一方、試料はそれを収納することのできる容器に入れ、ついで、吸引手段により気相部分が気液平衡に達するまで前記容器内の気相部分の気体を吸引した後、容器に空気が入りこまないようにして、ダミー管を「反応剤を含有する反応管」に取り替え、ついで所定量の気液平衡に達した容器内の気相部分の気体を吸引手段により吸引した後、ガソリンコンタミ検知器から反応管を取り外し、別途、例えば机の上に用意した「表示板」の縦軸として反応管の目盛を使用し、反応管の変色位置が図14または図15に対応する表示板の「問題なし」の領域にあるか、「要測定」の領域にあるか、「規格外」の領域にあるか、を読み取る。
【0031】
(ロ)のガソリンコンタミ検知器と表示板が一体となっている場合には、たとえば図16の説明のように取り扱えばよい。一体化の方法はとくに制限はないが、着脱自在方式とすることが好ましい。
表示板をガソリンコンタミ検知器に取り付けて使用する場合の1具体例を図16に示す。この例では反応管それ自体に目盛を設けるのが困難な場合の例を示しており、反応管それ自体と目盛板を一体化したものを反応管7として取り扱っている。もちろん反応管それ自体に目盛が付けられる場合に反応管それ自体に目盛を付けてもよいことは当然である。〔なお、これらの点は、前記(イ)の場合にも(ロ)の場合にも言えることである。〕図16における表示板9は図14に対応しているケースであるから、この場合はガソリンコンタミ灯油の検査に使用するものである。なお、図16のように表示板をガソリンコンタミ検知器に一体的に取り付けた場合における前記目盛板は透明合成樹脂板を用いることが好ましい。
【0032】
また、図16のガソリンコンタミ検知器セットにおいて、図14や図15を表示した表示板における容器内の試料の温度に対応する縦軸の位置に前記反応管が配置されるように反応管と表示板の位置関係を調節する手段としては、表示板を水平方向に移動させてもよいし、反応管を水平方向に移動させてもよい。
【0033】
本発明のガソリンコンタミ検知器は、ある程度分解した状態で、例えば図17の写真に示すようにスポンジクッションを入れたトランク内に収納し、簡単に持ち運びできるようにすることができる。
図17のガソリンコンタミ検知器は、図1のものをトランクに収納した場合のものである。
【発明の効果】
【0034】
(1)本発明により、少量のガソリンが軽油あるいは灯油などに混入してコンタミが起こったと懸念される場合に、このコンタミの程度を現場で簡単かつごく短時間で測定し、該当品への品質影響度を推定し、その対応を直ちにとることができる。
これにより、引火点が規格を外れた商品を誤って販売することを未然に防止できる。
(2)本発明により、測定温度が基準温度(たとえば25℃)のときは反応管の目盛を見ただけで、また、測定温度が基準温度(たとえば25℃)以外のときは、その測定温度の反応管の目盛値から基準温度(たとえば25℃)の反応管の目盛値に換算するだけで、試料の規格への該当性を簡単かつ迅速に判断することができる。
(3)とくに、請求項4または5のガソリンコンタミ検知器セットを用いた請求項9の発明によれば、測定時の液温と反応管の目盛値が、灯油の場合は図14の縦軸の目盛に、軽油の場合は図15の目盛に、それぞれ対応しているので、図14または図15の縦軸の位置に反応管をあてがい、反応管の変色位置が、表示板における「問題なし」の範囲内にあれば、確実に引火点がJIS規格を満たすものと直ちに判断でき、「規格外」の範囲内にあれば、確実に引火点がJIS規格を満たさないものと直ちに判断できる。なお表示板が「要測定」の範囲内にある場合には速断できないので、しかるべき試験機関に分析を依頼することになる。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、請求項4、5、9の発明は、ここまでの説明で充分であるから、実施例は設けていない。図16は1つの実施例ということができる。
【0036】
実験例
(1)ガソリンコンタミ量と引火点の関係
灯油や軽油にガソリンが混入した場合のガソリンコンタミ量と引火点の関係を実験により求めた。この引火点は、JIS K 2265により求めたものである。灯油にガソリンが混入した場合のガソリンコンタミ量と引火点の関係を表3および図2に示し、軽油にガソリンが混入した場合のガソリンコンタミ量と引火点の関係を表4および図3に示す。なお、本実験例で用いたガソリンはJIS K 2202、2号のレギュラーガソリン、灯油はJIS K 2203、1号の灯油、軽油はJIS K 2204、1号の軽油である。なお、表1と表3、あるいは表2と表4を対比すると、ガソリンコンタミ量が同じでも引火点が多少異なっているが、これは表1と表3、あるいは表2と表4の実験に用いたガソリンや灯油あるいは軽油が、それぞれ同一のロットのものを用いていなかったことによるものである。本発明は、このようなロット毎の差があっても充分使用することができる装置と方法を提供するものである。
【表3】
【表4】
【0037】
(2)ガソリンコンタミ量と反応管目盛値との関係
ガソリンコンタミ量と反応管目盛値との関係を表5および図4に示す。
【表5】
【0038】
(3)ガソリンが混入した灯油または軽油の反応管目盛値と引火点推測値との関係
ガソリンコンタミ量を媒介変数として、表3および表5に基づいて、反応管目盛値とガソリンが混入した灯油の引火点推測値を図5に実線で示す。同様に表4および表5に基づいて、反応管目盛値とガソリンが混入した軽油の引火点推測値を図6に実線で示す。
図5における黒四角マークは灯油のJIS K 2265に基づく引火点を示し、図6における黒四角マークは軽油のJIS K 2265に基づく引火点を示す。また、図5および図6における実線は、それぞれの黒四角マークに相当する数字を直線近似したものであり、それぞれ下記式(3)、式(4)として表示される。
【0039】
【数3】
各係数は引火点の軸に対する切片と傾きから求め、この例においては、A1=4、B1=43、A2=3、B2=80であるが、ガソリンの種類や灯・軽油の種類などにより、数字が異なってくることがある。
【0040】
実施例1〜8および比較例1〜4において使用した反応管および吸引装置などは以下に述べる通りである。
反応管(製品名、検知管):ガステック社製101(JIS K 0804準拠)
吸引装置 :ガステック社製気体採取器
サンプル量 :100ミリリットル
吸引量 : 50ミリリットル
*測定時の油温は約25℃
〔測定前準備(試料準備、ガス置換)〕
(1)試料を図1に示すガラスびん1の中央部にある標線内に入るように注ぎ込む(約1
00ml)。
(2)栓2を(しっかり)閉める。
図のように
(3)L字型(L字型部分のみは可撓性材料、例えばゴム質のものを用いることが好まし
い。)の気液平衡ガス供給用パイプに付いている可撓性管の端にダミー管の一方を付
ける。前記ダミー管は、既に測定済でいらなくなった反応管を使用すると便利かつ経
済的である。
(4)ダミー管のもう一方に吸引手段をつけて、100ml吸引する。バブリングが終了
するまで(約1分半)そのままに保つ。
(吸引手段を100mlの目盛に合わせて、一気にカチッと音がするまで引く。)
(5)ダミー管をはずす。
〔測定〕
(6)反応管の両端を折り、一方を可撓性管、もう一方を吸引手段につけて吸引手段を5
0mlに合わせて一気にカチッと音がするまで引くことにより50ml吸引する。バ
ブリングが終了するまで(約50秒)そのままに保つ。
(7)反応管をはずし、目盛値を読み取る。
(8)栓をはずし、試料温度を測る。
(9)読み取った目盛値と試料温度より、前記式(1)〜(4)にしたがって補正値を
算出する。
【0041】
実施例1〜2
軽油に少量のガソリンを混ぜて測定。測定時の油温は約25℃。
図4により反応管の読みから推定ガソリン混入量を求めた。
【表6】
実測ガソリン混入量はJIS K 2536に規定するC5以下留分のガスクロマトグラフ分析方法により求めたものであり、推定ガソリン混入量は、図4を用いて反応管目盛から求めた値である。
【0042】
実施例3〜6
軽油に一定量(0、0.5、1、2%)のガソリンを混ぜて測定。
反応管の読みから、図4を用いて推定ガソリン混入量を求めると共に、数3の式(4)を用いて推定引火点を求めた。
【表7】
実測引火点は、サンプル3〜5ではペンスキー・マルテンス式引火点試験機を、サンプル6ではタグ密閉式引火点試験機(引火点がかなり低いと推定したため)を用いて測定したものであり、いずれもJIS K 2265に準拠したものである。
サンプル6で推定引火点と実測引火点にかなりの差が出ているが、これは引火点の試験法が違うために起こったものと思われる。
【0043】
比較例1〜2
測定前の100mlの吸引を省略し、気液平衡を達成させずにサンプル4とサンプル5を用いて測定。
反応管の目盛値から、図4を用いて推定ガソリン混入量を求めると共に、数3の式(4)を用いて推定引火点を求めた。
【表8】
実測引火点は、比較例1においてはペンスキー・マルテンス式引火点試験機を用い、比較例2においてはタグ密閉式引火点試験機(引火点がかなり低いと推定したため)を用い、実施例3〜6と同様に測定したものである。
気液平衡が達成されていないため、反応管の目盛値は低くなる。それにより、ガソリンの混入量が低めに、引火点は高めに算出される。
【0044】
比較例3〜4
容器開放部に密栓をせず〔図1におけるゴム栓を用いない〕にサンプル5とサンプル6を用いて測定。
反応管の読みから、図4を用いて推定ガソリン混入量を求めると共に、数3の式(4)を用いて推定引火点を求めた。
【表9】
実測引火点は、比較例3においてはペンスキー・マルテンス式引火点試験機を用い、比較例4ではタグ密閉式引火点試験機(引火点がかなり低いと推定したため)を用い、実施例3〜6と同様に測定したものである。
外気中の空気も反応管に導入されるため、反応管の目盛値が比較例1、2よりさらに低くなる。したがって、ガソリンの混入量が低めに、引火点は高めに算出される。
【0045】
実施例7
灯油試料を用いた、反応管目盛値と測定温度との関係
ガソリンによるコンタミを測定する際の試料温度に対して、反応管の目盛値がどのように変化するかを調べるために、異なるガソリンコンタミ量の灯油試料を四種類(0.0%、0.5%、1.0%、1.5%)用意し、四種類の温度条件(5℃、15℃、25℃、30℃)下で、本発明のガソリンコンタミ検知器により、ガソリンによるコンタミの測定を行ったところ、反応管の目盛値は下記表のとおりであった。また、別途JIS K 2265による引火点を求め、参考までに表に記した。
【表10】
この表10のデータを用いて、測定温度が25℃における反応管の目盛値とJIS K
2265の引火点との関係を図7に示す。JIS K 2265の引火点が40℃(JIS K 2203の灯油の規格値)の場合の反応管の目盛値を図7より推算すると0.28となる。
また、各測定温度と反応管の目盛値の関係は指数関数で近似することが可能であり、例えばガソリンコンタミ量0.5%および1.0%の場合、式(5)、(6)として表示される。
【数4】
簡略化のため、上記式(5)、(6)の指数の平均値である0.026を用いて、「各測定温度の反応管目盛値」を「25℃の反応管目盛値」に換算する方法を下記式で表示する。
【数5】
以上の点から、
前記試料が灯油のとき、その目盛値〔測定温度が25℃のときはその値、それ以外の温度のときは式(1′)を用いた換算値〕が0.28より下回る場合は図7からみて、JIS K 2203の灯油の引火点の規格値40℃以上を満たしていると考えられる。ただし、反応管の誤差としてはJIS K 0804で指示精度±35%以下と規定されていることと、灯油の引火点に若干の幅があることを考慮して、5℃程度高く引火点が推算される目盛値(0.15)をガソリンによるコンタミの判断基準とすることとする。
この基準によれは、ガソリンコンタミ検知器の反応管の目盛値(換算値も含む)が
0.15以下の場合 :実質的なコンタミはない。引火点は40℃以上と推定で
き、JIS K 2203の灯油としての引火点条件を
満足していると判断できる。
0.15を上回る場合 :コンタミがあると考えられ、JIS K 2265によ
る引火点の確認が必要である。
と判断することができる。
【0046】
実施例8
実施例1〜6とは異なる軽油試料を用いた、反応管目盛値と測定温度との関係
ガソリンによるコンタミを測定する際の試料温度に対して、反応管の目盛値がどのように変化するかを調べるために、異なるガソリンコンタミ量の軽油試料を四種類(0.0%、0.5%、1.0%、1.5%)用意し、四種類の温度条件(5℃、15℃、25℃、30℃)下で、本発明のガソリンコンタミ検知器により、ガソリンによるコンタミの測定を行ったところ、反応管の目盛値は下記表のとおりであった。また、別途JIS K 2265による引火点を求め、参考までに表に記した。
【表11】
この表11のデータを用いて、測定時の温度が25℃における反応管の目盛値とJIS
K 2265の引火点との関係を図8に示す。JIS K 2265の引火点が50℃(JIS K 2204の軽油の規格値)の場合の反応管の目盛値を図8より推算すると0.36となる。
また、各測定時の温度と反応管の目盛値の関係は指数関数で近似することが可能であり、例えばガソリンコンタミ量0.5%および1.0%の場合、式(7)、(8)として表示される。
【数6】
簡略化のため、上記式(7)、(8)の指数の平均値である0.024を用いて、「各測定温度の反応管目盛値」を「25℃の反応管目盛値」に換算する方法を下記式で表示する。
【数7】
以上の点から、
前記試料が軽油のとき、その目盛値〔測定温度が25℃のときはその値、それ以外の温度のときは式(2′)を用いた換算値〕が0.36より下回る場合は、図8からみて、JIS K 2204の軽油の引火点の規格値50℃以上を満たしていると考えられる。ただし、反応管の誤差としてはJIS K 0804で指示精度±35%以下と規定されていることと、軽油の引火点に若干の幅があることを考慮して、10℃程度高く引火点が推算される目盛値(0.20)をガソリンによるコンタミの判断基準とすることととする。
この基準によれば、ガソリンコンタミ検知器の反応管の目盛値(換算値も含む)が
0.2以下の場合 :実質的なコンタミはない。引火点は50℃以上と推定で
き、軽油のJIS K 2204の軽油(特1号、1号、
2号)としての引火点条件を満足していると判断できる。
0.2を上回る場合 :コンタミがあると考えられ、JIS K 2265による
引火点の確認が必要である。
と判断することができる。
本発明は、試料を検査するとき、その都度JISの引火点を調べなくても、コンタミの有無を実質的に判断できる点に特徴をもつものであるから、通常の本発明の実施に当っては、JIS引火点を調べることなく、それぞれの測定時の温度における反応管の目盛値を25℃の目盛値に換算(試料温度が25℃のときは換算不要)した数値で判断するものである(実施例7においても同様)。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明のガソリンコンタミ検知器の1具体例を示す。
【図2】灯油にガソリンが混入した場合のガソリンコンタミ量と引火点の関係を示す。
【図3】軽油にガソリンが混入した場合のガソリンコンタミ量と引火点の関係を示す。
【図4】ガソリンコンタミ量と反応管目盛値との関係を示す。
【図5】ガソリンが混入した灯油引火点推測値と反応管目盛値の関係を示す。
【図6】ガソリンが混入した軽油引火点推測値と反応管目盛値の関係を示す。
【図7】ガソリンが混入した灯油の25℃における反応管目盛値とJIS引火点との関係を示す。
【図8】ガソリンが混入した軽油の25℃における反応管目盛値とJIS引火点との関係を示す。
【図9】試験液体(1.0容量%のガソリンにより汚染された灯油)を容器に入れ、それぞれの吸引回数に対応して反応管を入れかえ、それぞれの吸引回数に対応した反応管の目盛値を読みとってグラフにしたものである。
【図10】灯油にガソリンが0〜1.0%の範囲で混入された汚染灯油を実施例で用いた図1に示すガソリンコンタミ検知器にかけ、その目盛値を調べると共に、そのサンプルの引火点をJISにより測定し、これをプロットし、そこから式y=−32.129x+48.048の関係式を求めて、これを線引きしたグラフである。
【図11】軽油にガソリンが0〜0.1%の範囲で混合された汚染軽油を実施例で用いた図1に示すガソリンコンタミ検知器にかけ、その目盛値を調べると共に、そのサンプルの引火点をJISにより測定し、これをプロットし、そこから式y=−73.751x+74.308の関係式を求めて、これを線引きしたグラフである。
【図12】表1を元に作成した汚染灯油のコンタミ検知器の測定結果を示すグラフである。
【図13】表2を元に作成した汚染軽油のコンタミ検知器の測定結果を示すグラフである。
【図14】図1の装置を用いて得られた反応管目盛値と測定温度から、簡易的に汚染灯油がJIS規格を満たすものかどうかを判断できる簡易判断表であり、表示板として利用できる。
【図15】図1の装置を用いて得られた反応管目盛値と測定温度から、簡易的に汚染軽油がJIS規格を満たすものかどうかを判断できる簡易判断表であり、表示板として利用できる。
【図16】本発明のガソリンコンタミ検知器のもう1つの具体例を示す。
【図17】本発明のガソリンコンタミ検知器をトランクに収納した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
1 ガラスびん
2 ゴム栓
3 空気導入用パイプ
4 試料
5 気相(気体)
6 気液平衡ガス供給用パイプ
7 反応管
8 吸引手段
9 表示板
10 反応剤変色部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を収納することのできる容器、容器中の試料内に空気を供給するための空気供給ライン、容器中に存在する気液平衡ガスを吸引するための吸引手段、吸引手段と容器との間に設けられた、気化ガソリン成分(気液平衡ガス中の炭化水素ガス)と反応して変色する反応剤を含有する反応管および前記反応管と取替え可能なダミー管よりなることを特徴とするガソリンコンタミ検知器。
【請求項2】
前記吸引手段は系中の気体を定量的に吸引できるものである請求項1記載のガソリンコンタミ検知器。
【請求項3】
前記反応管は、気体中の気化ガソリン成分が10ppm以上で、その濃度に応じて変色または着色する領域が変化し得る反応剤を含有するものである請求項1または2記載のガソリンコンタミ検知器。
【請求項4】
試料を収納することのできる容器、容器中の試料内に空気を供給するための空気供給ライン、容器中に存在する気液平衡ガスを吸引するための吸引手段、吸引手段と容器との間に設けられた、気化ガソリン成分(気液平衡ガス中の炭化水素ガス)と反応して変色する反応剤を含有する反応管、前記反応管と取替え可能なダミー管および図14または図15に対応する表示板よりなることを特徴とするガソリンコンタミ検知器。
【請求項5】
前記反応管が図14または図15の縦軸と同一の目盛が設けられているものである請求項4記載のガソリンコンタミ検知器。
【請求項6】
請求項1〜3いずれか記載のガソリンコンタミ検知器を用い、最初にダミー管を取り付け、一方、試料はそれを収納することのできる容器に入れ、ついで、吸引手段により気相部分が気液平衡に達するまで前記容器内の気相部分の気体を吸引した後、容器に空気が入りこまないようにして、ダミー管を「反応して変色する反応剤を含有する反応管」に取り替え、ついで所定量の気液平衡に達した容器内の気相部分の気体を吸引手段により吸引し、反応管の目盛のうち、どの部分まで反応剤が変色したかを読み取り、この数値から試料のコンタミの程度を検知することにより試料の引火点を推測する方法。
【請求項7】
請求項1〜3いずれか記載のガソリンコンタミ検知器を用い、最初にダミー管を取り付け、一方、試料はそれを収納することのできる容器に入れ、ついで、吸引手段により気相部分が気液平衡に達するまで前記容器内の気相部分の気体を吸引した後、容器に空気が入りこまないようにして、ダミー管を「反応して変色する反応剤を含有する反応管」に取り替え、ついで所定量の気液平衡に達した容器内の気相部分の気体を吸引手段により吸引し、反応管の目盛のうち、どの部分までが変色したかを読み取り、容器内の試料の温度が基準温度のときは反応管の目盛値をそのまま使用し、容器内の試料の温度が基準温度以外の温度のときはその値を基準温度の反応管の目盛値に換算し、得られた目盛値にもとづいて、試料のコンタミの程度を検知することにより試料の引火点を推測する方法。
【請求項8】
請求項1〜3いずれか記載のガソリンコンタミ検知器を用い、最初にダミー管を取り付け、一方、試料はそれを収納することのできる容器に入れ、ついで、吸引手段により気相部分が気液平衡に達するまで前記容器内の気相部分の気体を吸引した後、容器に空気が入りこまないようにして、ダミー管を「反応して変色する反応剤を含有する反応管」に取り替え、ついで所定量の気液平衡に達した容器内の気相部分の気体を吸引手段により吸引し、反応管の目盛のうち、どの部分まで反応剤が変色したかを読み取り、この数値を測定時の前記容器内の試料の温度とから、灯油の場合は図14を用いて、軽油の場合は図15を用いて、測定の対象となった灯油または軽油が、JIS規格の引火点の条件を満たすかどうかを簡略的に判断する方法。
【請求項9】
請求項4または5記載のガソリンコンタミ検知器セットを用い、最初にダミー管を取り付け、一方、試料はそれを収納することのできる容器に入れ、ついで、吸引手段により気相部分が気液平衡に達するまで前記容器内の気相部分の気体を吸引した後、容器に空気が入りこまないようにして、ダミー管を「反応して変色する反応剤を含有する反応管」に取り替え、ついで所定量の気液平衡に達した容器内の気相部分の気体を吸引手段により吸引し、灯油の場合は図14に対応する表示板における容器内の試料の温度に対応する位置に、軽油の場合は図15に対応する表示板における容器内の試料の温度に対応する位置に、反応管目盛軸と平行に前記反応管を置き、反応管内の反応剤が変色した部分と変色しない部分の境界位置が、灯油の場合は図14に対応した表示板における「問題なし」の領域にあるか、「要測定」の領域にあるか、あるいは「規格外」の領域にあるかを読み取り、また軽油の場合は図15に対応した表示板における「問題なし」の領域にあるか、「要測定」の領域にあるか、あるいは「規格外」の領域にあるかを読み取ることにより、測定の対象となった灯油または軽油が、JIS規格の引火点の条件を満たすかどうかを簡略的に判断する方法。
【請求項1】
試料を収納することのできる容器、容器中の試料内に空気を供給するための空気供給ライン、容器中に存在する気液平衡ガスを吸引するための吸引手段、吸引手段と容器との間に設けられた、気化ガソリン成分(気液平衡ガス中の炭化水素ガス)と反応して変色する反応剤を含有する反応管および前記反応管と取替え可能なダミー管よりなることを特徴とするガソリンコンタミ検知器。
【請求項2】
前記吸引手段は系中の気体を定量的に吸引できるものである請求項1記載のガソリンコンタミ検知器。
【請求項3】
前記反応管は、気体中の気化ガソリン成分が10ppm以上で、その濃度に応じて変色または着色する領域が変化し得る反応剤を含有するものである請求項1または2記載のガソリンコンタミ検知器。
【請求項4】
試料を収納することのできる容器、容器中の試料内に空気を供給するための空気供給ライン、容器中に存在する気液平衡ガスを吸引するための吸引手段、吸引手段と容器との間に設けられた、気化ガソリン成分(気液平衡ガス中の炭化水素ガス)と反応して変色する反応剤を含有する反応管、前記反応管と取替え可能なダミー管および図14または図15に対応する表示板よりなることを特徴とするガソリンコンタミ検知器。
【請求項5】
前記反応管が図14または図15の縦軸と同一の目盛が設けられているものである請求項4記載のガソリンコンタミ検知器。
【請求項6】
請求項1〜3いずれか記載のガソリンコンタミ検知器を用い、最初にダミー管を取り付け、一方、試料はそれを収納することのできる容器に入れ、ついで、吸引手段により気相部分が気液平衡に達するまで前記容器内の気相部分の気体を吸引した後、容器に空気が入りこまないようにして、ダミー管を「反応して変色する反応剤を含有する反応管」に取り替え、ついで所定量の気液平衡に達した容器内の気相部分の気体を吸引手段により吸引し、反応管の目盛のうち、どの部分まで反応剤が変色したかを読み取り、この数値から試料のコンタミの程度を検知することにより試料の引火点を推測する方法。
【請求項7】
請求項1〜3いずれか記載のガソリンコンタミ検知器を用い、最初にダミー管を取り付け、一方、試料はそれを収納することのできる容器に入れ、ついで、吸引手段により気相部分が気液平衡に達するまで前記容器内の気相部分の気体を吸引した後、容器に空気が入りこまないようにして、ダミー管を「反応して変色する反応剤を含有する反応管」に取り替え、ついで所定量の気液平衡に達した容器内の気相部分の気体を吸引手段により吸引し、反応管の目盛のうち、どの部分までが変色したかを読み取り、容器内の試料の温度が基準温度のときは反応管の目盛値をそのまま使用し、容器内の試料の温度が基準温度以外の温度のときはその値を基準温度の反応管の目盛値に換算し、得られた目盛値にもとづいて、試料のコンタミの程度を検知することにより試料の引火点を推測する方法。
【請求項8】
請求項1〜3いずれか記載のガソリンコンタミ検知器を用い、最初にダミー管を取り付け、一方、試料はそれを収納することのできる容器に入れ、ついで、吸引手段により気相部分が気液平衡に達するまで前記容器内の気相部分の気体を吸引した後、容器に空気が入りこまないようにして、ダミー管を「反応して変色する反応剤を含有する反応管」に取り替え、ついで所定量の気液平衡に達した容器内の気相部分の気体を吸引手段により吸引し、反応管の目盛のうち、どの部分まで反応剤が変色したかを読み取り、この数値を測定時の前記容器内の試料の温度とから、灯油の場合は図14を用いて、軽油の場合は図15を用いて、測定の対象となった灯油または軽油が、JIS規格の引火点の条件を満たすかどうかを簡略的に判断する方法。
【請求項9】
請求項4または5記載のガソリンコンタミ検知器セットを用い、最初にダミー管を取り付け、一方、試料はそれを収納することのできる容器に入れ、ついで、吸引手段により気相部分が気液平衡に達するまで前記容器内の気相部分の気体を吸引した後、容器に空気が入りこまないようにして、ダミー管を「反応して変色する反応剤を含有する反応管」に取り替え、ついで所定量の気液平衡に達した容器内の気相部分の気体を吸引手段により吸引し、灯油の場合は図14に対応する表示板における容器内の試料の温度に対応する位置に、軽油の場合は図15に対応する表示板における容器内の試料の温度に対応する位置に、反応管目盛軸と平行に前記反応管を置き、反応管内の反応剤が変色した部分と変色しない部分の境界位置が、灯油の場合は図14に対応した表示板における「問題なし」の領域にあるか、「要測定」の領域にあるか、あるいは「規格外」の領域にあるかを読み取り、また軽油の場合は図15に対応した表示板における「問題なし」の領域にあるか、「要測定」の領域にあるか、あるいは「規格外」の領域にあるかを読み取ることにより、測定の対象となった灯油または軽油が、JIS規格の引火点の条件を満たすかどうかを簡略的に判断する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−40960(P2007−40960A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−370881(P2005−370881)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000186913)昭和シェル石油株式会社 (322)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000186913)昭和シェル石油株式会社 (322)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]