説明

ガソリン類の携帯容器

【目的】 静電気に起因する火災発生のおそれのないガソリン類の携帯容器を提供する。
【構成】 容器本体(11)に給油口部(13)及び把手部(12)を形成してなり、ガソリン類を収納して携帯できるようにしたガソリン類の携帯容器において、容器本体、給油口部及び把持部を合成樹脂材料を用いて製造する。容器本体、給油口部及び把持部には導線(20,220)又は導体(21,22、221,222)を線状、網目状又は板状に延びかつ相互に接続して設ける。外部燃料受け口側の静電気は給油口部の導線又は導体を経て容器本体の導線又は導体に逃がすとともに、容器本体の静電気は把持部の導線又は導体を経て人体に逃がす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はガソリン類の携帯容器に関し、特に静電気による火災のおそれを確実に防止できるようにした携帯容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車輛の燃料タンク内にガソリンが少なく、給油所に着くまでに燃料切れになって車輛が停止してしまうことがある。かかる場合、給油所でガソリンを携帯容器に入れて車輛まで運び、車輛タンクに給油する必要がある。
【0003】
また、給油所では車輛の燃料タンクのドレインの下方に携帯容器の注入口部を位置させ、車輛の燃料タンクからガソリンを抜くことも行われている。
【0004】
通常、この種の携帯容器は軽量で持ち運びに便利であることから、合成樹脂材料で製造されることが多い。
【0005】
他方、空気が乾燥している場合、車体や携帯容器には静電気が帯電しやすい。特に、合成樹脂製の携帯容器の場合には容器内でガソリン等が揺れることによっても携帯容器に静電気が帯電するおそれがある。その結果、携帯容器と車体等との間に火花が飛び、ガソリン蒸気に引火し、火災の発生が懸念される。
【0006】
そこで、ガソリン等の運搬には静電気の帯電し難い金属製の携帯容器を使用することが求められている(特許文献1)。
【0007】
また、炭素粉、導電性フレークあるいは導電性繊維を混入した合成樹脂材料を用いて成型し、静電気対策を行った合成樹脂製の携帯容器が提案されている(特許文献2、特許文献3)。
【0008】
【特許文献1】特開昭63−67256号公報
【特許文献2】特開昭58−55029号公報
【特許文献3】特開平59−45899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1記載の金属製の携帯容器では少容量の場合には手軽に持ち運びできるが、ある程度の容量、例えば18リットル程度になると、重くなって持ち運び難くなる。
【0010】
他方、特許文献2、3記載の携帯容器では合成樹脂材料で製作されているので、18リットル程度の容量になっても持ち運びできるものの、炭素粉、導電性フレークあるいは導電性繊維を混入しただけでは静電気を確実に逃がすことが難しい。
【0011】
この発明は、かかる問題点に鑑み、軽く、静電気に起因する火災発生を確実に防止できるようにしたガソリン類の携帯容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明に係るガソリン類の携帯容器は、容器本体に給油口部及び把手部を形成してなり、ガソリン類を収納して携帯できるようにしたガソリン類の携帯容器において、 上記容器本体、給油口部及び把持部が合成樹脂材料を用いて製造され、上記容器本体、給油口部及び把持部には導線又は導体が線状、網目状又は板状に延びかつ相互に接続して設けられており、外部燃料受け口側の静電気を上記給油口部の導線又は導体を経て上記容器本体の導線又は導体に逃がすとともに、上記容器本体の静電気を上記把持部の導線又は導体を経て人体に逃がすようになしたことを特徴とする。
【0013】
本発明の特徴の1つは給油口部及び容器本体の全体に導線又は導体を線状、網目状又は板状に設け、これらの導線又は導体を把持部の導線又は導体に接続するようにした点にある。
【0014】
これにより、容器本体、給油口部及び把持部に静電気が帯電しても、この静電気は作業者が手で把持部を握った時に手から人体を通って地面に逃げる。また、外部燃料受け口、例えば車輛の燃料タンクの受け口側に静電気が帯電している場合であっても給油口部が燃料タンクの受け口と接触すると、静電気は給油口部、容器本体及び把持部から人体を通って地面に逃げる。
【0015】
その結果、空気が乾燥し、静電気が帯電しやすい状況であっても、作業者が携帯容器の把持部を握った時あるいは握っている間に携帯容器に帯電したあるいは携帯容器に移動してきた静電気が人体に逃げるので、放電が発生することはなく、静電気に起因する火災を確実に防止できる。
【0016】
また、携帯容器は合成樹脂材料で製造されているので、軽量で、持ち運びやすく、例えば給油所までの距離が長い場合にも楽に持ち運ぶことができる。
【0017】
容器本体及び給油口部の導線又は導体は静電気を逃がす上で重要である。この導線又は導体は静電気の帯電する部位のみに設けてもよいが、その部位を特定することは難しい。そこで、導線又は導体は容器本体及び給油口部の全体にわたって線状又は網目状に設けるのがよい。
【0018】
この導線又は導体は携帯容器の軽量性を損なわないように注意する必要がある。そこで、導線又は導体は線状、網目状又は板状に設けるのがよく、導線を採用する場合には銅系、鉄系、アルミ系等の導線を利用できる。また、導線又は導体は容器本体及び給油口部の壁面外表面又は内表面に接着剤や粘着テープ等を用いて貼着してもよく、又容器本体、給油口部及び把持部を金型で成型する際に導線又は導体を金型内にレイアウトして合成樹脂を注入し、容器本体や給油口部の壁面内部に埋設するようにしてもよい。さらに、導体を設ける場合にはメッキ又は導電性塗料の塗布によって形成した導電性の薄層を採用することもできる。
【0019】
把手部及び給油口部は容器本体に比して小さいので、全部を導体で形成しても携帯容器の軽量性は損なわれることはないが、軽量性を確保する上で、合成樹脂製の把手部及び給油口部の外表面又は内表面に導線又は導体を線状、網目状又は板状に設けるのがよい。
【0020】
給油口部の形状は特に限定されないが、一般的にはホース状である。外部燃料受け口は車輛燃料タンクの受け口ばかりでなく、他の構造物や機械装置等の燃料の給油を受ける受け口も含まれる。
【0021】
さらに、静電気に起因する火災をより確実に防止する上で、容器本体の静電気が地面に逃げるようにアース線を設けるのがよい。
【0022】
ガソリン類とはガソリン、軽油、灯油、アルコール等、高揮発性・高着火性の液体が全て含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1ないし図3は本発明に係るガソリン類の携帯容器の好ましい実施形態を示す。携帯容器10では容器本体11が合成樹脂材料でほぼ直方体状に成形され、容器本体11には上面中央に把手部12が一体的に形成され、その前方及び後方には円形開口を有する環状の取付フランジ110、111が突設され、取付フランジ110、111の外周面には雄ねじが刻設されている。
【0024】
容器本体11の前方取付フランジ110には環状の合成樹脂製キャップ130が着脱可能に螺合され、キャップ130の中央穴には合成樹脂製の給油ホース(給油口部)13が挿通されて抜け止めされている。
【0025】
容器本体11の後方取付フランジ111には環状の合成樹脂製キャップ140が着脱可能に螺合され、キャップ140の中央にはエアー抜き穴141が形成され、エアー抜き穴141にはこれを上方から封鎖するエアー抜き栓14が設けられ、エアー抜き栓14の下方には止め板142が設けられ、止め板142とエアー抜き穴141の周縁との間にはコイルばね143が縮装され、エアー抜き栓14はエアー抜き穴141の封鎖方向に付勢され、容器本体11内の圧力が上昇したときにコイルばね143のばね力に抗して上方に押し上げられて容器本体11内の圧力を開放するようになっている。
【0026】
容器本体11の壁面内には銅線(導線)20が所定の間隔をあけて縦方向及び横方向に直線状に延びて埋設され、把手部12の外表面には把持すべき部位に銅板(導体)21が巻付けられて固定され、銅板21には容器本体11の銅線20が接続されている。
【0027】
給油ホース13には車輛燃料タンクの受け口と接触する先端部位に銅板(導体)22が巻付けられて固定され、給油ホース13内面には銅線(導線)220が長手方向に延びて貼付けられ、銅線220の先端は銅板22に接続されている。また、給油ホース13のキャップ130と容器本体11との間には環状銅板221が挟持され、環状銅板221には銅線220の後端が接続され、又環状銅板221には容器本体11の銅線20が接続されている。
【0028】
エアー抜き栓14のキャップ140と容器本体11との間にも環状銅板23が挟持され、環状銅板23にも容器本体11の銅線20が接続されている。
【0029】
例えば、給油所で携帯容器10の給油ホース13のキャップ130又はエアー抜き栓14のキャップ140を外し、容器本体11内にガソリンを注入した後、キャップ130又は140を螺合させ、把手部12を持って携帯容器10を下げ持ち運ぶ。携帯容器10は合成樹脂材料で製造されているので、軽量で、持ち運びやすく、長い距離であっても楽に運ぶことができる。
【0030】
作業者が把手部12を手で持った時に、携帯容器10に帯電した静電気は手から人体を通って地面に逃げ、携帯容器10の静電気はほとんどなくなっている。
【0031】
また、車輛の燃料タンクにガソリンを給油する場合、燃料タンクのキャップを外し、携帯容器10を持ち上げて車体の受け口に給油ホース13の先端を差し込み、ガソリンを給油する。
【0032】
給油ホース13を燃料タンクの受け口に差し込んだ時に、給油ホース13の銅板22が燃料タンクの受け口と接触し、車体に帯電した静電気は携帯容器10から手及び人体を通って地面に逃げ、車体の静電気もほとんどなくなる。
【0033】
その結果、空気が乾燥し、車体や携帯容器10に静電気が帯電していても、全て地面に逃げ、火花が飛んでガソリン蒸気に引火して火災が発生することはない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るガソリン類の携帯容器の好ましい実施形態を示す概略斜視図である。
【図2】上記実施形態における給油ホースの構造を示す図である。
【図3】上記実施形態におけるエアー抜き栓の構造を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
10 携帯容器
11 容器本体
12 把手部
13 給油ホース(給油口部)
20 銅線(導線)
21 銅板(導体)
22 銅板(導体)
220 銅線(導線)
221 環状銅板(導体)
23 環状銅板(導体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体に給油口部及び把手部を形成してなり、ガソリン類を収納して携帯できるようにしたガソリン類の携帯容器において、
上記容器本体、給油口部及び把持部が合成樹脂材料を用いて製造され、上記容器本体、給油口部及び把持部には導線又は導体が線状、網目状又は板状に延びかつ相互に接続して設けられており、
外部燃料受け口側の静電気を上記給油口部の導線又は導体を経て上記容器本体の導線又は導体に逃がすとともに、上記容器本体の静電気を上記把持部の導線又は導体を経て人体に逃がすようになしたことを特徴とするガソリン類の携帯容器。
【請求項2】
上記容器本体及び給油口部の導線又は導体は上記容器本体及び給油口部の内面又は外面に貼付けられ、上記把持部の導線又は導体は上記把持部の外表面を囲んで取付けられている請求項1記載のガソリン類の携帯容器。
【請求項3】
上記容器本体及び給油口部の導線又は導体は上記容器本体及び給油口部の内部に埋設され、上記把持部の導線又は導体は上記把持部の外表面を囲んで取付けられている請求項1記載のガソリン類の携帯容器。
【請求項4】
上記容器本体又は把持部の導線又は導体には静電気を地面に逃がすアース線が接続されている請求項1記載のガソリン類の携帯容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−302289(P2007−302289A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−132259(P2006−132259)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(592107978)
【Fターム(参考)】