説明

ガラスアンテナ

【課題】簡素なパターンで必要な感度を確保し、傾斜するボディフランジに沿って配設可能なアンテナを提供する。
【解決手段】ホット側エレメントとアース側エレメントとを備えるガラスアンテナであって、ホット側エレメントは、ホット側第1エレメントと、ホット側第2エレメントとを備え、アース側エレメントは、アース側第1エレメントと、アース側第2エレメントと、アース側第3エレメントと、アース側第4エレメントとを備え、ホット側第1エレメントは水平方向に延伸し、ホット側第2エレメントは第1線条、及び略水平な第2線条を含み、アース側第1エレメントは水平方向に延伸し、アース側第2エレメントはアース側第4エレメントと平行に配置され、アース側第3エレメントはアース側第4エレメントから離れる方向に延伸し、アース側第4エレメントは、ホット側給電点とボディフランジとの間に向かってボディフランジに沿って斜めに配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関し、特に、自動車用窓ガラスに設けられる地上波デジタルTV放送波、及びUHF帯アナログTV放送波を受信するのに好適なガラスアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用のガラスアンテナとしては、後部窓ガラスのデフォッガの加熱用導電線条の上部余白部あるいは下部余白部に設けたアンテナが広く提案され知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。後部窓ガラスにアンテナを設ける場合、後部窓ガラスの大半の領域には防曇用加熱線条が設けられており、その余白部にアンテナを設けることから、アンテナを設けるスペースが制限される。
【0003】
また、後部窓ガラスに設けられるアンテナでは、アンテナ感度を向上させるためにエレメント本数を増やしたり、デフォッガ領域内に縦エレメントを追加したりしていたが、これによって、アンテナパターンが複雑になり見栄えが悪くなったり、後方視界を妨げるといった問題点があった。また、エレメントの線条本数が増えることによりチューニングのための開発工数やコストが増加するという問題点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−124822号公報
【特許文献2】特開2008−5474号公報
【特許文献3】特開2007−295536号公報
【特許文献4】特開2006−197184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1〜4のガラスアンテナは、自動車の後部窓ガラスのうち、水平または垂直方向のボディフランジをアースとして利用するために、ボディフランジに平行に配置されている。
【0006】
一方で、後部窓ガラスの上部左右端にガラスアンテナを配置できれば、ガラスアンテナによる見栄えや視界の悪化を防ぐことができる。しかし、後部窓ガラスの上部左右のボディフランジが傾斜、又は、緩い曲線になっている場合、従来のガラスアンテナを、このボディフランジの傾斜部分に平行、又は、曲線に沿って配置した場合、アンテナの主なエレメントが斜めに配置され、水平偏波の放送波を良好に受信することが困難であった。
【0007】
本発明は、後部窓ガラスの隅部に配置しても、水平偏波の放送波を良好に受信することができるガラスアンテナの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、第1の発明は、ホット側エレメントとアース側エレメントとを備えるガラスアンテナであって、前記ホット側エレメントは、ホット側給電点と接続され、ホット側第1エレメントと、ホット側第2エレメントとを備え、前記アース側エレメントは、アース側給電点と接続され、アース側第1エレメントと、アース側第2エレメントと、アース側第3エレメントと、アース側第4エレメントとを備え、前記ホット側第1エレメントは、前記ホット側給電点と接続され、前記アース側給電点から離れるように水平方向に延伸し、前記ホット側第2エレメントは、前記ホット側給電点と接続され、前記アース側第4エレメントから離れるように延伸する第1線条と、前記ホット側第1エレメントと略平行に配置される第2線条と前記アース側第1エレメントは、前記ホット側第2エレメントに近づくように水平方向に延伸し、前記アース側第2エレメントは、前記アース側第1エレメントと接続され、前記アース側第4エレメントと平行に配置され、前記アース側第3エレメントは、前記アース側給電点より前記アース側第4エレメントから離れる方向に延伸し、その他端が前記アース側第2エレメントとを接続し、前記アース側第4エレメントは、前記アース側給電点と接続され、前記ホット側給電点とボディフランジとの間に向かってボディフランジに沿って斜めに配置されることによって、前記ボディフランジと容量結合することを特徴とするガラスアンテナである。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記ホット側第2エレメントは長さが異なる複数の第2線条を備えることを特徴とするガラスアンテナである。
【0010】
また、第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記ホット側第2エレメントは、互いに電磁結合するように近接する位置に平行に配置される2本以上の線条を含むことを特徴とするガラスアンテナである。
【0011】
また、第4の発明は、第1乃至第3のいずれか一つの発明において、前記アース側第1エレメントは、互いに電磁結合するように近接する位置に平行に配置される2本以上の線条を含むことを特徴とするガラスアンテナである。
【0012】
また、第5の発明は、第1乃至第4のいずれか一つの発明において、前記アース側第3エレメントは、前記アース側給電点から前記アース側第4エレメントと平行に前記ホット側給電点に近づくように延伸する第4線条と、前記アース側第4エレメントから離れる方向に延伸し、前記アース側第2エレメントと前記第4線条とを接続する第5線条とを含むことを特徴とするガラスアンテナである。
【0013】
また、第6の発明は、第1乃至第5のいずれか一つの発明において、前記ホット側エレメントは、さらに、ホット側第3エレメントを備え、前記ホット側第3エレメントは、前記ホット側給電点と接続され、前記アース側第4エレメントから離れるように延伸する第6線条と、前記アース側エレメントに近づくように水平方向に延伸する第7線条とを含むことを特徴とするガラスアンテナである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のアンテナは、1本のアース側第4エレメントをボディフランジに近接させ、他のアース側エレメントを給電点の反対側に配設することによって、必要なアンテナ感度を確保しつつ、アンテナパターンを簡素化でき、さらに、アンテナ特性の調整も容易で、開発期間を短縮することができる。
【0015】
よって、前部窓ガラスに配設した場合でも、運転者の視界の妨げにならず、小型かつ高性能のアンテナを提供することができる。
【0016】
さらに、アンテナエレメント、導体部及び給電点の全部又は一部を窓ガラス周辺部のセラミックペ−スト層上に重ねて設けたので、車外からはアンテナが見えにくくなり、見栄えが良好になる。
【0017】
さらに、本発明のアンテナは、自動車用の窓ガラス等の傾斜した接地面に配置するので、水平偏波を良好な感度によって受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態のアンテナの構成図。
【図2】本発明の第2の実施の形態のアンテナの構成図。
【図3】本発明の第3の実施の形態のアンテナの構成図。
【図4】本発明の第4の実施の形態のアンテナの構成図。
【図5】本発明の実施の形態のアンテナを自動車の後部窓ガラスに配置した例を示す図。
【図6】本発明の実施の形態のアンテナの周波数特性図。
【図7】本発明の実施の形態のアンテナの指向特性図。
【図8】本発明の実施の形態の対比例のアンテナの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態のアンテナについて説明する。
【0020】
<第1の実施の形態>
図1に示すアンテナは、自動車の後部窓ガラスの左上部分のボディフランジ2に沿うように配置されるアンテナである。
【0021】
第1の実施の形態のアンテナは、ホット側第1エレメント11、ホット側第2エレメント12、12’、ホット側給電点6、アース側給電点7、アース側第1エレメント21、21’、アース側第2エレメント22、アース側第3エレメント23、及び、アース側第4エレメント24を、略同一平面上に備える。
【0022】
なお、以下において、ホット側第1エレメント11、ホット側第2エレメント12、12’を、ホット側エレメント群10と称する。また、アース側第1エレメント21、21’、アース側第2エレメント22、アース側第3エレメント23、及びアース側第4エレメント24を、アース側エレメント群20と称する。
【0023】
ホット側第1エレメント11は、その端点においてホット側給電点6に接続され、ホット側給電点6から離れるように、水平方向に延伸する。
【0024】
ホット側第2エレメント12、12’は、その一端がホット側給電点6と接続され、給電点側に配置される第1線条12A、12A’及び、第1線条12A、12A’の他端と接続される第2線条12B、12B’によって構成される。第1線条12A、12A’は、アース側第4エレメント24と略直交し、アース側第4エレメント24から離れる方向に延伸する。この第1線条12Aは、反射などの影響を受け、偏波面が傾いた電波を受信するためのエレメントであるため、水平方向と比較して斜めに配置される。また、第2線条12Bは、ホット側給電点6から離れるように、水平方向に延伸する。
【0025】
また、ホット側第2エレメント12、12’は、それぞれの一端がホット側給電点6に接続され、略平行に延在する2本の線条からなり、ホット側第2エレメント12’の第1線条12A’、第2線条12B’は、それぞれホット側第2エレメント12の第1線条12A、第2線条12Bより短くなっている。
【0026】
ホット側給電点6とアース側給電点7とは、各々ホット側エレメント群10及びアース側エレメント群20と接続される。
【0027】
アース側第3エレメント23は、その一端がアース側給電点7と接続され、アース側第4エレメント24から離れる方向に延伸し、他端においてアース側第2エレメント22と接続される。アース側第3エレメント23は、ホット側第2エレメント12の第1線条12Aと略平行に延在する。アース側第2エレメント22とアース側第3エレメント23とは、アース側第2エレメント22の中間点近辺で接続される。アース側第2エレメント22は、その一端が2本のアース側第1エレメント21、21’と接続され、アース側第4エレメント24と略平行に延在する。
【0028】
2本のアース側第1エレメント21、21’は、ホット側第1エレメント11、及びホット側第2エレメント12、12’の第2線条12B、12B’と略平行に延在する。
【0029】
アース側第4エレメント24は、ボディフランジ2に沿って配置され、アース側給電点7と接続される。なお、ホット側第1エレメント11とボディフランジ2との間隔よりも、アース側第4エレメント24とボディフランジ2との間隔が狭くなるように、アース側第4エレメント24が配置される。
【0030】
第1の実施の形態では、ボディフランジ2の上側隅部が斜め、すなわち、水平と所定の角度で配置されているので、アース側第4エレメント24は、ボディフランジ2に沿うように斜めに配置される。なお、ボディフランジ2の上側隅部が緩い曲線であっても、アース側第4エレメント24は、ボディフランジ2に沿うように斜めに配置される。
【0031】
次に、第1の実施の形態のアンテナの各エレメントの長さについて説明する。
【0032】
第1の実施の形態のアンテナのホット側第1エレメント11の長さは、ガラスの波長短縮率をα、受信帯域の中心周波数(共振周波数)の波長をλとすると、約α×λ/2であるが、ホット側第1エレメント11が受信帯域のうち低中域側の電波を受信するためのエレメントであるため、α×λ/2以上であることが望ましい。
【0033】
ホット側第2エレメント12の第2線条12Bの長さは、ガラスの波長短縮率をα、受信帯域の中心周波数(共振周波数)の波長をλとすると、約α×λ/4であるが、第2線条12Bは受信帯域のうち中高域の電波を受信するためのエレメントであるため、第2線条12Bの長さはα×λ/4以下であることが望ましい。
【0034】
第1線条12Aの長さも、受信帯域の中心周波数の波長をλとすると約α×λ/4以下である。これは、第1線条12Aは、中高域の電波を受信するためのエレメントであるためである。
【0035】
2本のホット側第2エレメント12、12’は、両エレメントが電磁結合するように狭い間隔で配置されている。
【0036】
2本のアース側第1エレメント21、21’の長さは略同一であり、受信帯域の中心周波数の波長をλとすると約α×λ/2であり、該2本のエレメントは、電磁結合するように狭い間隔で配置されている。
【0037】
なお、アース側第2エレメント22とアース側第4エレメント24の長さを、各々波長をλとすると約α×λ/4とした場合、本実施の形態のアンテナは、良好な感度(利得)が得られる。
【0038】
図1に示すアンテナは、日本のUHFテレビ帯(周波数帯470〜770MHz)、又は地上デジタル放送波帯(周波数帯470〜710MHz)のアンテナに適用した場合の長さである。
【0039】
具体的には、ホット側第1エレメント11の長さは、160mmであり、約560MHz程度の周波数の約α×λ/2に相当する。本実施の形態のアンテナは、ホット側第1エレメント11が、110mm〜180mmであれば、対応する周波数において同様な感度が得られる。
【0040】
ホット側第2エレメント12のうち第2線条12Bの長さは70mmであり、約640MHz程度の周波数の約α×λ/2に相当する。そして、2本のホット側第2エレメント12、12’の間隔は5mmである。
【0041】
また、各アース側第1エレメント21、21’の長さは150mmであり、アース側第2エレメント22の長さは75mmであり、アース側第3エレメント23の長さは20mmである。2本のアース側第1エレメント21、21’の間隔は5mmである。そして、アース側第2エレメント22とアース側第3エレメント23とは、アース側第2エレメント22がアース側第1エレメント21と接続される端点から、40mmの位置において、接続される。
【0042】
なお、第1の実施の形態のアンテナは車両の窓ガラス(例えば、図5に示す後部窓ガラス1)の室内面にパターンを形成しているため、ガラス板による波長短縮率αを0.6として、各エレメント長を計算した。
【0043】
また、本実施の形態のホット側給電点6、アース側給電点7のそれぞれに、図示しない同軸ケーブルの芯線、外皮線を接続し、図示しないチューナーに接続した。
【0044】
次に、第1の実施の形態のアンテナの動作原理について説明する。
【0045】
ホット側第1エレメント11と、ホット側第2エレメント12の第2線条12Bとは、水平偏波の電波を受信するためのエレメントである。ホット側第2エレメント12のうち第1線条12Aは、前述の通り、偏波面が傾いた電波を受信するためのエレメントである。
【0046】
第1の実施の形態のアンテナは、ホット側第1エレメント11を略水平に配置することによって、全方位から受信する地上波デジタルTV放送波帯の低中帯域の水平偏波の感度を向上させることができ、2本のホット側第2エレメント12、12’の少なくとも一方を略水平に配置することによって、全方位から受信する地上波デジタルTV放送波帯の中高帯域の水平偏波の感度を向上させすることができる。
【0047】
なお、ホット側第2エレメント12、12’を、複数本配置することによって車両の水平方向の指向特性が膨らむので、さらに受信感度を向上することができる。このため、電波環境のよい場所で第1の実施の形態のアンテナを設置する場合、ホット側第2エレメント12を1本のみ配置するようにしてもよい。一方、電波環境の悪い場所で本実施の形態のアンテナを設置する場合、ホット側第2エレメント12に略平行に複数本のエレメントを配置するようにしてもよい。
【0048】
アース側第1エレメント21、21’は、ホット側第1エレメント11と同様に、地上波デジタルTV放送波帯の低中域の水平偏波を受信するためのエレメントである。
【0049】
ホット側第2エレメント12、12’と同様に、アース側第1エレメント21、21を略平行に配置することによって、第1の実施の形態のアンテナは、地上波デジタルTV放送波帯の低中域の電波を全方位から受信する感度を向上させることができる。このため、電波環境がよい場所に本実施の形態のアンテナを設置する場合、2本あるアース側第1エレメント21、21’を1本のみ配置するようにしてもよい。一方、電波環境が悪い場所に本実施の形態のアンテナを設置する場合、アース側第1エレメント21に3本以上のエレメントが略平行に配置されてもよい。
【0050】
アース側第2エレメント22は、反射などの影響を受けたことによって偏波面が傾いた地上波デジタルTV放送波帯の中高域の電波を受信するためのエレメントである。
【0051】
本実施の形態のアンテナでは、ホット側エレメント群10とボディフランジ2との間に無効容量が発生するが、無効容量が増えることによるアンテナ感度の低下を防ぐために、アンテナのホット側エレメント群10をボディフランジ2から適度な距離、例えば、無効容量が無視できるほど小さくなる距離を保って配置している。なお、無効容量とは、アンテナを高周波回路とした場合に、接地側に発生する無効電流の大きさに対応する静電容量であり、ボディフランジ2との間に発生する無効容量によって、アンテナの受信感度が低下する。
【0052】
さらにアース側第4エレメント24をボディフランジ2とホット側給電点6との間に配置することにより、アンテナとボディフランジ2との間に発生する無効容量を吸収することができ、ホット側エレメント群10に与える影響を少なくし、アンテナの受信感度を向上させている。
【0053】
以上説明したように、第1の実施の形態によれば、自動車の窓ガラスの角部が傾斜している、又は、緩い曲線になっている場合でも、ボディフランジ2に沿った位置に配置されるアンテナを提供することができる。
【0054】
また、第1の実施の形態のアンテナは、全方位における受信感度が高く、水平偏波と、偏波面が傾いた電波とを受信することが可能となるため、反射波が多い劣悪な電波環境であっても良好な受信特性を得ることができる。また、受信する電波に定められている周波数帯域のうち、広い範囲の周波数帯域において、受信感度を高めることができる。
【0055】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態のアンテナは、第1の実施の形態のアース側第3エレメント23(図1参照)の代わりに、アース側第5エレメント25を備える。第2の実施の形態のアンテナのアース側第2エレメント22の一端は、アース側給電点7と、アース側第5エレメント25によって接続され、他端は、アース側第1エレメント21、21’と接続される。
【0056】
なお、第2の実施の形態のアンテナのうち、前述した第1の実施の形態のアンテナと同じ構成及び機能については、同じ符号を付し、それらの説明を省略し、主に相違する部分について説明する。
【0057】
アース側第5エレメント25は、アース側給電点7と接続される給電点側の第4線条25A、及び、給電点側の第4線条25Aの他端と接続される第5線条25Bとによって構成される。なお、第5線条25Bの他端は、アース側第2エレメント22と接続される。
【0058】
第4線条25Aは、アース側給電点7から離れるようにホット側エレメント群10に向かって延伸し、アース側第4エレメント24と略平行に配置される。第5線条25Bは、第1線条12Aと略平行に配置される。
【0059】
以上説明したように、第2の実施の形態のアンテナは、第5線条25Bを、アース側第2エレメント22に沿って移動させて、第4線条25Aの長さと第5線条25Bの位置とを変更し、アンテナのインピーダンスを調整することができる。
【0060】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態のアンテナは、第2の実施の形態のアンテナに、ホット側給電点6に接続されるホット側第3エレメント13が備わる。ホット側第3エレメント13は、ホット側給電点6に接続される給電点側の第6線条13Aと、第6線条13Aの他端と接続される第7線条13Bとによって構成される。第6線条13Aは、アース側第4エレメント24から離れる方向に延伸し、第7線条13Bは、アース側エレメント群20に近づくように水平方向に延伸する。
【0061】
なお、第3の実施の形態のアンテナのうち、前述した第1及び第2の実施の形態のアンテナと同じ構成及び機能については、同じ符号を付し、それらの説明を省略し、主に相違する部分について説明する。
【0062】
ホット側第3エレメント13の第7線条13Bの長さは、ホット側第2エレメント12の第2線条12Bの長さと同程度とする。
【0063】
このため、第3の実施の形態のアンテナでは、ホット側第3エレメント13を追加することによって、受信周波数を広帯域化することができる。
【0064】
なお、第3の実施の形態のアンテナは、第2の実施の形態にホット側第3エレメント13を追加したものであるが、第1の実施の形態にホット側第3エレメント13を追加してもよい。
【0065】
<第4の実施の形態>
第4の実施の形態のアンテナは、第3の実施の形態のアンテナに、ホット側第4エレメント14が備わる。ホット側第4エレメント14は、ホット側第2エレメント12の水平部分である第2線条12B’と略平行する位置に配置され、第2線条12B’と電磁結合できる程度の近傍に配置される。ホット側第4エレメント14の長さは、第2線条12B’の長さと略同一である。
【0066】
なお、第4の実施の形態のアンテナのうち、前述した第1から第3の実施の形態のアンテナと同じ構成及び機能については、同じ符号を付し、それらの説明を省略し、主に相違する部分について説明する。
【0067】
以上説明したように、第4の実施の形態のアンテナは、ホット側第4エレメント14を追加することによって、車両の水平方向の指向特性を膨らます、すなわち、全方位での感度を向上させることができる。
【0068】
なお、第4の実施の形態のアンテナは、ホット側第3エレメント13及びホット側第4エレメント14を備えるが、第1及び第2の実施の形態にホット側第4エレメント14を追加してもよい。
【0069】
<アンテナの車両への搭載>
図5に示すように、後部窓ガラス1の中央部には、複数の加熱線条からなるデフォッガ4が配置される。デフォッガ4の両端はバスバー5、5に接続されており、各バスバー5、5は、それぞれ、電源及びグランドに接続される。後部窓ガラス1は、ボディフランジ2の開口部に取り付けられている。また、後部窓ガラス1の全周縁部には、ボディフランジ2と図5に示す点線との間に、セラミックベース層3が設けられる。
【0070】
セラミックベース層3は、後部窓ガラス1の面上の全周縁部にスクリーン印刷したセラミックペーストを焼き付けることによって形成される。セラミックペーストは、低融点ガラスの粉末と顔料とをペースト状にしたものを用いるとよい。
【0071】
本実施の形態のアンテナ8は、後部窓ガラス1の左上部及び右上部の傾斜したボディフランジ2に沿って設置される。なお、ホット側給電点6、アース側給電点7、及び、アース側第4エレメント24は、見栄えをよくするため、セラミックベース層3上に配置されるとよい。セラミックベース層3上に配置されたエレメントは、ガラスの車内側の面上に設けられたセラミックベース層3上にペースト状の導体を焼き付けることによって形成される。
【0072】
ホット側給電点6、アース側給電点7、及び、アース側第4エレメント24を、セラミックベース層3に重ねて配置することによって、アンテナを外部から見ても、黒色のセラミックベース層3に覆われることによって、見栄えをよくすることができる。
【0073】
なお、左上部及び右上部が斜めに傾斜した辺を有するボディフランジ2を例示したが、ボディフランジ2の左上部及び右上部が緩い曲線である場合でも、ボディフランジ2とアース側第4エレメント24が容量結合するように、ボディフランジ2の左上部及び右上部の曲線に沿ってアース側第4エレメント24を配置することによって、本発明を適用することができる。
【0074】
<アンテナ特性>
図6には、本発明の実施の形態のアンテナ利得の周波数特性を太い実線で示し、図8に示す対比例のアンテナの特性を細い実線で示す。
【0075】
図8に示す対比例のアンテナ100は、ホット側第1エレメント101、ホット側第2エレメント102、ホット側第3エレメント103及びホット側第4エレメント104を含むホット側エレメント群、ホット側エレメント群と接続されるホット側給電点105A、アース側第1エレメント106、アース側第2エレメント107、アース側第3エレメント108及びアース側第4エレメント109を含むアース側エレメント群、及び、アース側エレメント群と接続されるアース側給電点105Bを備える。
【0076】
ホット側第1エレメント101及びホット側第2エレメント102は、ホット側給電点105Aと接続され、平行に延伸する。ホット側第3エレメント103及びホット側第4エレメント104は、ホット側給電点105Aと接続され、ホット側第1エレメント101と直角方向に延伸する。ホット側第2エレメント102及びホット側第3エレメント103は、途中で略直角に屈曲される。
【0077】
アース側第1エレメント106及びアース側第2エレメント107は、アース側給電点105Bと接続され、平行に延伸する。アース側第3エレメント108及びアース側第4エレメント109は、アース側給電点105Bと接続され、アース側第1エレメント106と直角方向に延伸する。
【0078】
図6に示す通り、本発明の第1の実施の形態は、地上波デジタルTV放送波帯の低中域(500MHz以上)から高域において、対比例のアンテナ100よりも高い感度(利得)が得られる。
【0079】
図7は、本発明の実施の形態のアンテナの指向特性を太い実線で示し、図8に示す対比例のアンテナの指向特性を細い実線で示す。
【0080】
図7は、本発明の実施の形態のアンテナを車両の後部窓ガラス1に搭載した場合(図5参照)の車両の水平方向の指向特性を示す説明図である。
【0081】
図7に示す通り、本発明の第1の実施の形態のアンテナは、水平面の全方位に等方位的な指向性を有する。さらに、対比例のアンテナ100よりほぼ全方位において高い感度が得られる。このため、本発明の実施の形態のアンテナによると、様々な方位から到来するUHF帯域の電波を確実に捕捉することができる。
【0082】
以上、日本における地上デジタル放送波(470〜710MHz)、及びUHFテレビ放送波の周波数帯のアンテナを例として、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、他の周波数帯のアンテナ、例えば、欧州諸国のUHF帯の地上デジタル放送波(470〜862MHz)、及び、欧州諸国のVHF帯の地上デジタル放送波(174〜862MHz)にも適用することができる。
【0083】
また、自動車用のガラスアンテナを例として、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、絶縁体又は誘電体上に形成されたパターンによるアンテナにも適用することができる。例えば、本発明のパターンが設けられた合成樹脂シートをガラス面に貼り付けたものでもよい。
【0084】
また、以上説明した本実施の形態のアンテナは、テレビ放送波の受信用の水平偏波のアンテナであるが、本実施の形態のアンテナを右回り(又は、左回り)に90度傾けて、垂直偏波用のアンテナとして、他の移動体通信用のアンテナを構成することもできる。
【0085】
また、アンテナエレメント、導体部及び給電点の全部又は一部を覆う樹脂製の車輛内装材を設けると、車内側からの見栄えも良好になる。
【符号の説明】
【0086】
1 後部窓ガラス
2 ボディフランジ
3 セラミックベース層
4 デフォッガ
5 バスバー
6 ホット側給電点
7 アース側給電点
8 本発明の実施の形態のアンテナ
10 ホット側エレメント群
11 ホット側第1エレメント
12、12’ ホット側第2エレメント
12A、12A’ 第1線条
12B、12B’ 第2線条
13 ホット側第3エレメント
13A 第6線条
13B 第7線条
14 ホット側第4エレメント
20 アース側エレメント群
21、21’ アース側第1エレメント
22 アース側第2エレメント
23 アース側第3エレメント
24 アース側第4エレメント
25 アース側第5エレメント
25A 第4線条
25B 第5線条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホット側エレメントとアース側エレメントとを備えるガラスアンテナであって、
前記ホット側エレメントは、ホット側給電点と接続され、ホット側第1エレメントと、ホット側第2エレメントとを備え、
前記アース側エレメントは、アース側給電点と接続され、アース側第1エレメントと、アース側第2エレメントと、アース側第3エレメントと、アース側第4エレメントとを備え、
前記ホット側第1エレメントは、前記ホット側給電点と接続され、前記アース側給電点から離れるように水平方向に延伸し、
前記ホット側第2エレメントは、前記ホット側給電点と接続され、前記アース側第4エレメントから離れるように延伸する第1線条と、前記ホット側第1エレメントと略平行に配置される第2線条とを含み、
前記アース側第1エレメントは、前記ホット側第2エレメントに近づくように水平方向に延伸し、
前記アース側第2エレメントは、前記アース側第1エレメントと接続され、前記アース側第4エレメントと平行に配置され、
前記アース側第3エレメントは、前記アース側給電点より前記アース側第4エレメントから離れる方向に延伸し、その他端が前記アース側第2エレメントと接続し、
前記アース側第4エレメントは、前記アース側給電点と接続され、前記ホット側給電点とボディフランジとの間に向かってボディフランジに沿って斜めに配置されることによって、前記ボディフランジと容量結合することを特徴とするガラスアンテナ。
【請求項2】
前記ホット側第2エレメントは長さが異なる複数の第2線条を備えることを特徴とする請求項1に記載のガラスアンテナ。
【請求項3】
前記ホット側第2エレメントは、互いに電磁結合するように近接する位置に平行に配置される2本以上の線条を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のガラスアンテナ。
【請求項4】
前記アース側第1エレメントは、互いに電磁結合するように近接する位置に平行に配置される2本以上の線条を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のガラスアンテナ。
【請求項5】
前記アース側第3エレメントは、
前記アース側給電点から前記アース側第4エレメントと平行に前記ホット側給電点に近づくように延伸する第4線条と、
前記アース側第4エレメントから離れる方向に延伸し、前記アース側第2エレメントと前記第4線条とを接続する第5線条とを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載のガラスアンテナ。
【請求項6】
前記ホット側エレメントは、さらに、ホット側第3エレメントを備え、
前記ホット側第3エレメントは、前記ホット側給電点と接続され、前記アース側第4エレメントから離れるように延伸する第6線条と、前記アース側エレメントに近づくように水平方向に延伸する第7線条とを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載のガラスアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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