説明

ガラスシート切断装置

【課題】 ガラス枚葉シートの切り出しを高速化できるようにする。
【解決手段】 ガラス連続シート1を連続的に送り出すシート送り出しローラ3のシート送り方向xの下流側に、スクライバ6と、ガラス連続シート1のシート送り速度Vを保持するための送り速度保持ローラ7と、裂き割りローラ8を順に備える。裂き割りローラ8は、ガラス連続シート1のシート幅方向yの複数個所に接触させるためのローラ本体9L,9Rを、送り速度保持ローラ7によるシート送り速度Vよりも速い周速で、且つローラ本体9Lの周速Vがローラ本体9Rの周速Vよりも速くなるように回転駆動可能に備えた構成とする。ガラス連続シート1におけるスクライバ6で形成した傷に、送り速度保持ローラ7と裂き割りローラ8との間で作用させる張力を応力集中させることで、この傷を形成した個所を裂くように分割させてガラス枚葉シート4を切り出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続したガラスシートから使用目的に応じたサイズのガラス枚葉シートを切り出すための装置に関するもので、特に、ガラス連続シートに対して引き裂き力を作用させることによりガラス枚葉シートを切り出すようにするガラスシート切断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ用の基板ガラス等に用いるシート状(薄板状)のガラスの製造手法としては、主としてフローティング法(フロート法)及びフュージョン法が用いられている。この種のフローティング法やフュージョン法では、連続したガラスシート(以下、ガラス連続シートと云う)を生産するようにしてある。
【0003】
そのため、上記フローティング法やフュージョン法で生産されるガラス連続シートは、長手方向の所定間隔個所で切断(分割)して、使用目的に応じたサイズのガラス枚葉シートを切り出す必要がある。
【0004】
ところで、連続して製板される薄板ガラス(ガラス連続シート)を切断するための手法としては、上記薄板ガラスの切断を望む位置(以下、切断線という)に傷を入れるスクライブを行った後、該薄板ガラスの面に対して垂直な方向に往復動作する押し当て用の部材を備えた折り割り機構を用いて、上記押し当て用の部材を上記薄板ガラスの面に押し当てて、該薄板ガラスに、上記傷を入れた面とは反対の面側に湾曲させるような折り曲げ力を加えることにより、該薄板ガラスを折り割るようにする手法が広く用いられている(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
なお、ガラス板を切断する手法の1つとして、ガラス板にスクライブにより傷(スクライブ線)を刻設し、該スクライブによる傷に沿う一部領域に、クラック形成手段によりガラス板の表面から裏面に達するクラック基部を形成させた後、引き裂き力発生手段により上記ガラス板にスクライブによる傷を基準とする引き裂き力を作用させ、これにより、上記クラック基部を出発点として上記スクライブによる傷に沿う切断を進行させて該ガラス板の切断、分離を行わせる手法が従来提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0006】
又、ガラス板を切断する別の手法として、ガラス板を上流側搬送ベルトと下流側搬送ベルトが連続して設けられた搬送手段で搬送し、ガラス板の切断線(切断位置)にスクライブにより刻設した傷を上記上流側搬送ベルトと下流側搬送ベルトとの間に位置決めした状態で、上記ガラス板における切断線の両側を一対の挟持部で挟持して、上記切断線の位置でガラス板を折るときに、上記上流側搬送ベルトと下流側搬送ベルトを互いに引き離す方向に移動させて、切断面同士の当接を防止すると同時にクラックの進行を助長させるようにする手法が従来提案されている(たとえば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3638042号公報
【特許文献2】特許第4379807号公報
【特許文献3】特開平5−132328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、近年、上記フローティング法やフュージョン法により、従来よりも厚みが小さい(薄い)ガラス連続シート、たとえば、厚みが0.3mm以下となるようなガラス連続シートが生産されるようになってきており、この場合、一定量のガラス原料から生産されるガラス連続シートの長さが長くなることに伴って、該ガラス連続シートの生産速度がより高速化される傾向にある。
【0009】
このように、ガラス連続シートの生産速度が高速化された場合、該ガラス連続シートの切断に上記特許文献1に示されたような折り割り機構による切断手法を適用しようとすると、以下のような問題がある。
【0010】
すなわち、上記折り割り機構では、ガラス連続シートを折り割るためには、該ガラス連続シートの面に押し当てて折り曲げ力を付与するための押し当て用の部材を、該ガラス連続シートの面に対して垂直な方向に往復動作させる必要がある。したがって、上記のようなガラス連続シートの生産速度の高速化に対応するためには、上記押し当て用の部材の往復動作の高速化が必要とされるが、このような往復動作を、上記ガラス連続シートに付与する折り曲げ力を安定させた状態に保持したまま高速化させることは困難である。
【0011】
そのために、上記特許文献1に示されたような従来の折り割り機構による切断手法は、ガラス連続シートからのガラス枚葉シートの切り出しの高速化に対応するのは難しいというのが実状である。
【0012】
なお、特許文献2に示されたガラス板の切断手法は、ガラス板にスクライブによる傷を基準とする引き裂き力を作用させるための引き裂き力発生手段を用いるようにしてあるが、この引き裂き力発生手段は、上記ガラス板の面に対して垂直な方向に往復移動できるようにしてある二本のロッドからなる押動部材を、上記ガラス板の傷を入れた面とは反対側の面における上記傷の両側となる個所に押し付けるようにしてある。又、上記ガラス板の傷に沿う一部領域にガラス板の表面から裏面に達するクラック基部を形成させるためのクラック形成手段も、上記ガラス板の面に対して垂直な方向に往復移動できるようにしてある二本のロッドからなる押圧部材を備えた構成としてある。
【0013】
よって、上記特許文献2に示されたガラス板の切断手法によるガラス板の切断速度を高速化させるには、上記押動部材や押圧部材の往復動作の高速化が必要になる。
【0014】
しかも、上記特許文献2に示されたガラス板の切断手法は、ガラス板を、切断線が上下方向に配置されるようにした姿勢で吊り下げ支持する必要があるため、前述のフローティング法やフュージョン法で生産されるガラス連続シートからのガラス枚葉シートの切り出しに対応させることは難しい。
【0015】
特許文献3に示されたガラス板の切断手法は、基本的にはガラス板を折り割る手法であり、該ガラス板を折る操作を実施する毎に、ガラス板の搬送手段に備えた上流側搬送ベルトと下流側搬送ベルトのうちのいずれか一方を回動方向に往復動作させる必要がある。
【0016】
よって、上記特許文献3に示されたガラス板の切断手法によるガラス板の切断速度を高速化させるには、上記上流側搬送ベルトと下流側搬送ベルトのうちのいずれか一方の回動方向への往復動作の高速化が必要になる。
【0017】
しかも、上記特許文献3には、上記ガラス板を折るときに、該ガラス板の搬送手段に備えた上流側搬送ベルトと下流側搬送ベルトを互いに引き離す方向に移動させる考えは示されているが、該各搬送ベルトの駆動によって折り割られたガラス板の分割片同士を引き離す考えは全く示唆されていない。
【0018】
そこで、本発明は、ガラス連続シートよりガラス枚葉シートを切り出すことができると共に、該ガラス連続シートに対してガラス枚葉シートを切り出すための力を付与する部材の往復動作を不要にできて、上記ガラス連続シートからのガラス枚葉シートの切り出しの高速化を図ることができるガラスシート切断装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、ガラス連続シートを連続的に送り出すようにしてあるシート送り出しローラのシート送り方向の下流側に、上記ガラス連続シートの表面に上記シート送り方向と直交するシート幅方向に延びる傷を形成するためのスクライバと、該ガラス連続シートにおける上記スクライバを通過した部分の上記シート送り方向へのシート送り速度を上記シート送り出しローラによるシート送り速度と同じ速度に保持するための送り速度保持ローラと、上記ガラス連続シートのシート幅方向の複数個所に接触させるためのローラ本体を有する裂き割りローラを順に備え、且つ上記裂き割りローラは、上記ガラス連続シートのシート幅方向に配列された複数のローラ本体を、上記送り速度保持ローラによるガラス連続シートのシート送り速度よりも速い周速で且つ上記シート幅方向の一端寄りのローラ本体の周速がシート幅方向の他端寄りローラ本体の周速よりも速くなるように回転駆動可能に備えてなるものとした構成を有するガラスシート切断装置とする。
【0020】
又、上記構成において、ガラス連続シートを、厚みが0.1mm〜0.3mmのガラス連続シートとした構成とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明のガラスシート切断装置によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)ガラス連続シートを連続的に送り出すようにしてあるシート送り出しローラのシート送り方向の下流側に、上記ガラス連続シートの表面に上記シート送り方向と直交するシート幅方向に延びる傷を形成するためのスクライバと、該ガラス連続シートにおける上記スクライバを通過した部分の上記シート送り方向へのシート送り速度を上記シート送り出しローラによるシート送り速度と同じ速度に保持するための送り速度保持ローラと、上記ガラス連続シートのシート幅方向の複数個所に接触させるためのローラ本体を有する裂き割りローラを順に備え、且つ上記裂き割りローラは、上記ガラス連続シートのシート幅方向に配列された複数のローラ本体を、上記送り速度保持ローラによるガラス連続シートのシート送り速度よりも速い周速で且つ上記シート幅方向の一端寄りのローラ本体の周速がシート幅方向の他端寄りローラ本体の周速よりも速くなるように回転駆動可能に備えてなるものとした構成としてあるので、ガラス連続シートにおけるスクライバで傷を形成した個所が、送り速度保持ローラと裂き割りローラとの間に配置されるときに、上記送り速度保持ローラによるシート送り速度と、上記裂き割りローラの各ローラ本体の周速との速度差に基づいて上記ガラス連続シートに作用する張力を、該傷の形成個所に応力集中させて、該ガラス連続シートを、該傷の形成個所で分割してガラス枚葉シートを切り出すことができる。これにより、上記ガラス連続シートからのガラス枚葉シートの切り出しを連続的に行うことができる。
(2)上記ガラス連続シートからガラス枚葉シートを切り出すための力の付与は、上記送り速度保持ローラによるシート送り速度と、上記裂き割りローラの各ローラ本体の周速との速度差に基づく張力で実現できるため、上記ガラス連続シートに対して折り曲げ力を付与する必要をなくすことができる。このため、ガラス連続シートに折り曲げ力を付与するために従来必要とされていた該ガラス連続シートの面に対して垂直な方向へ往復動作させる部材を不要にすることができる。
(3)よって、本発明のガラスシート切断装置では、上記ガラス連続シートからのガラス枚葉シートの切り出しの高速化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のガラスシート切断装置の実施の一形態を示すもので、(a)は切断線の個所の切断前の状態を示す概略平面図、(b)は切断線の個所を引き裂いて切断するときの状態を示す概略平面図である。
【図2】図1の装置の概略側面図である。
【図3】図1の装置における裂き割りローラの詳細を示すもので、(a)は側面図、(b)は(a)のA−A方向矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0024】
図1(a)(b)乃至図3(a)(b)は本発明のガラスシート切断装置の実施の一形態を示すもので、以下のようにしてある。
【0025】
すなわち、本発明のガラスシート切断装置は、フローティング法やフュージョン法により連続生産されるガラス連続シート1、又は、上記フローティング法やフュージョン法により生産されたガラス連続シート1を予め巻き取って形成した図1(a)(b)及び図2に示す如きロール2より繰り出されるガラス連続シート1を、所定のシート送り速度Vで連続的に送り出すためのシート送り出しローラ3を備える。
【0026】
ここで、本明細書では、上記シート送り出しローラ3により送り出されるガラス連続シート1の移動方向に沿う方向を、シート送り方向x(図1(a)(b)、図2、図3(a)参照)と云うものとする。又、該シート送り方向xと直交する方向を、シート幅方向y(図1(a)(b)、図3(b)参照)と云うものとする。
【0027】
上記シート送り出しローラ3により連続的に送り出されるガラス連続シート1については、予め、切り出しを所望するガラス枚葉シート4のサイズに応じたシート送り方向xの所定間隔位置毎に、シート幅方向yに延びる図1(a)に二点鎖線で示す如き切断線(切断位置)5が設定してあるものとする。
【0028】
上記シート送り出しローラ3のシート送り方向xの下流側には、上記ガラス連続シート1の表面に、該ガラス連続シート1に設定してある上記切断線5に沿って傷を付ける機能を備えたスクライバ6を設ける。
【0029】
上記スクライバ6のシート送り方向xの下流側には、該スクライバ6により切断線5に沿う傷が付けられた上記ガラス連続シート1のシート送り方向xへのシート送り速度Vを、上記シート送り出しローラ3によるシート送り速度Vと同じ速度に保持するための送り速度保持ローラ7を設ける。
【0030】
更に、上記送り速度保持ローラ7のシート送り方向xの下流側には、上記ガラス連続シート1の幅方向の複数個所に接触させるための複数のローラ本体、たとえば、図1に示すように、上記ガラス連続シート1におけるシート幅方向yの両端寄りの2個所に接触させるための2つのローラ本体9L,9Rを備えた裂き割りローラ8を設ける。該裂き割りローラ8は、上記シート幅方向yに配列された上記複数のローラ本体9L,9Rを、上記送り速度保持ローラ7によるシート送り速度Vよりも速い周速で、且つ上記シート幅方向yの一端寄りのローラ本体9Lの周速Vが、シート幅方向yの他端寄りのローラ本体9Rの周速Vよりも速くなるように、すなわち、V>V>Vの条件を満たすように回転駆動可能に備えてなる構成とする。
【0031】
詳述すると、本発明のガラスシート切断装置は、ガラス連続シート1として、その厚みが従来よりも小さい(薄い)、0.1mm〜0.3mmとなるガラス連続シート1を主たる処理対象としてある。これは、ガラス連続シート1の厚みが0.1mm未満になると、スクライバ6で傷を形成した段階で上記シート送り出しローラ3と送り速度保持ローラ7の周速の誤差に起因する程度の小さい張力の変動によっても上記傷の部分でのクラックの進行が生じる可能性があるためであり、一方、ガラス連続シート1の厚みが0.3mmを超えると、スクライバ6で形成する傷の深さの該ガラス連続シート1の厚みに対する比が小さくなり易いため、後述するようなガラス連続シート1に対して作用させる張力を上記傷に応力集中させても、該傷の個所を裂くように分割させるのが難しくなるためである。
【0032】
上記シート送り出しローラ3は、ガラス連続シート1におけるシート幅方向yの複数個所、たとえば、シート幅方向y両端寄りの2個所に対応する位置に、該ガラス連続シート1の表面(上面)と裏面(下面)にそれぞれ接触させるためのローラ本体10を、該ガラス連続シート1を挟むように上下方向に並べて配置してある。
【0033】
更に、上記シート送り出しローラ3は、図示しないが、上記ガラス連続シート1の表面側に配置された各ローラ本体10と、ガラス連続シート1の裏面側に配置された各ローラ本体10を、該各ローラ本体10のガラス連続シート1に接する側がシート送り方向xへ移動するようになる所定の回転方向へ、該各ローラ本体10の周速が上記シート送り速度Vに一致するようになる回転速度で、同期して回転駆動するための駆動装置を備えた構成としてある。
【0034】
なお、上記シート送り出しローラ3の駆動装置としては、上記各ローラ本体10を上記所定の回転方向、回転速度で同期して回転駆動できるようにしてあれば、たとえば、上記各ローラ本体10に個別の駆動モータを接続して該各駆動モータの運転を制御するようにした構成、あるいは、ガラス連続シート1の表面側に配置されたローラ本体10同士、及び、ガラス連続シート1の裏面側に配置されたローラ本体10同士を、それぞれシート幅方向yに延びる動力伝達軸で接続すると共に、該各動力伝達軸に個別の駆動モータを接続して、該各駆動モータの運転を制御するようにした構成等、いかなる形式の駆動装置を採用してもよい。
【0035】
又、図示してないが、上記シート送り出しローラ3には、上記ガラス連続シート1の表面側に配置されたローラ本体10と、上記ガラス連続シート1の裏面側に配置されたローラ本体10を、それぞれ上記ガラス連続シート1の表面と裏面に密着させる方向に付勢するための付勢手段を備えてなる構成としてあるものとする。なお、上記図示しない付勢手段における付勢力の付与形式は、ばねやアクチュエータの伸縮力、又は、部材の重量等を利用する等、任意の形式を採用してよいことは勿論である。これにより、上記ガラス連続シート1の表面側と裏面側の各ローラ本体10の間に上記ガラス連続シート1を配置した状態とすると、該上下のローラ本体10を上記ガラス連続シート1の表面側と裏面側からそれぞれ密着させて挟むことができ、よって、該各ローラ本体10と、上記ガラス連続シート1との滑りを防止することができるようにしてある。
【0036】
したがって、上記構成としてあるシート送り出しローラ3によれば、ガラス連続シート1の表面側に配置された各ローラ本体10と、ガラス連続シート1の裏面側に配置された各ローラ本体10の間に、上記ロール2より繰り出したガラス連続シート1を挟んだ状態で、上記図示しない駆動装置を運転して、上記各ローラ本体10を、上記所定の回転方向、回転速度で同期して回転駆動することにより、上記ガラス連続シート1を、シート送り方向xの下流側へ上記シート送り速度Vで連続的に送り出すことができるようにしてある。
【0037】
上記スクライバ6は、上記シート送り方向xに対して傾斜角θで斜め方向に延びるガイドレール11が、上記ガラス連続シート1の上方を跨ぐように設置してある。更に、上記ガイドレール11に沿ってシート幅方向yに走行(往復動)可能にしてあるガイドブロック12に、カッター又はレーザー等によりガラス表面に傷を付けることができるようにしてあるスクライバ本体13が下向きに取り付けられた構成としてある。
【0038】
更に、上記スクライバ本体13が取り付けてあるガイドブロック12は、上記ガイドレール11の一端側から他端側、すなわち、シート送り方向xに傾斜して配置してあるガイドレール11のシート送り方向xの上流側に位置する一端側から、シート送り方向xの下流側に位置する他端側へ該ガイドレール11に沿って走行させるときの速度vを、上記シート送り速度Vに(v・cosθ)が一致するように設定してある。これにより、上記ガイドレール11の一端側から他端側へ上記速度vで走行する上記ガイドブロック12に取り付けられた上記スクライバ本体13は、シート送り方向xへ、上記シート送り出しローラ3により連続的に送り出されるガラス連続シート1のシート送り速度Vに同期した移動速度で移動させることができるようにしてある。
【0039】
よって、上記ガラス連続シート1にシート幅方向yに延びるよう設定された切断線5の一端側が、上記ガイドレール11の一端寄りにガイドブロック12と共に待機させたスクライバ本体13の下方に達したときに、スクライバ本体13が取り付けてある上記ガイドブロック12を、上記ガイドレール11の一端側から他端側へ速度vでの走行を開始させると共に、上記スクライバ本体13により、その真下に位置する上記ガラス連続シート1の表面に傷を付けるようにすることで、該ガラス連続シート1の表面に、シート幅方向yに延びる切断線5に沿って傷を付けることができるようにしてある。
【0040】
ところで、前述したように、本発明のガラスシート切断装置は、厚みが従来よりも小さい(薄い)、0.1mm〜0.3mmとなるガラス連続シート1を主たる処理対象としている。このために、上記スクライバ6にて上記ガラス連続シート1の表面に付ける傷の深さが、従来一般的に用いられているスクライバによりガラス表面に付ける傷の深さと同様であるとしても、上記ガラス連続シート1の厚みに対する上記スクライバ6により形成する傷の深さの比は、従来よりも大となる。
【0041】
このように、本発明のガラスシート切断装置では、上記ガラス連続シート1の厚みに対する上記スクライバ6により形成する傷の深さの比を、従来に比して大とすることで、後述するように、ガラス連続シート1に折り曲げ力を付与する処理を要することなく、ガラス連続シート1における上記スクライバ6で形成した傷の両側に互いに引き離す方向への張力を作用させることのみで、該傷の部分で該ガラス連続シート1を裂くように分割できて、該ガラス連続シート1からのガラス枚葉シート4の切り出しを実現できるようにしてある。
【0042】
なお、上記ガラス連続シート1が化学強化ガラスである場合は、上記スクライバ6にて該ガラス連続シート1の表面に切断線5に沿って傷を付けるときに、化学強化ガラスにおけるガラス表面の強化層(圧縮応力層)を貫通する深さの傷を形成するようにしてあるものとする。
【0043】
上記送り速度保持ローラ7は、上記シート送り出しローラ3と同様の構成としてある。
【0044】
すなわち、該送り速度保持ローラ7は、ガラス連続シート1におけるシート幅方向yの複数個所、たとえば、シート幅方向y両端寄りの2個所に対応する位置に、該ガラス連続シート1の表面(上面)と裏面(下面)にそれぞれ接触させるためのローラ本体10と、該各ローラ本体10を所定の回転方向へ、所定の回転速度で同期して回転駆動するための図示しない駆動装置と、上記ガラス連続シート1の表面側と裏面側に配置された各ローラ本体10を、それぞれ上記ガラス連続シート1の表面と裏面に密着させる方向に付勢するための図示しない付勢手段を備えた構成としてある。
【0045】
これにより、上記送り速度保持ローラ7では、上記ガラス連続シート1におけるスクライバ6を通過した部分を、該ガラス連続シート1の表面側と裏面側に配置された各ローラ本体10の間に挟んだ状態で、上記図示しない駆動装置の運転により、上記各ローラ本体10を、上記所定の回転方向、回転速度で同期して回転駆動した状態とすることにより、該各ローラ本体10とガラス連続シート1との滑りを防いだ状態で、該ガラス連続シート1の切断線5に沿う傷が付けられた部分のシート送り速度Vを、上記シート送り出しローラ3により送り出される上記ガラス連続シート1のシート送り速度Vと一致した速度に保持できるようにしてある。
【0046】
上記裂き割りローラ8は、図3(a)(b)に示すように、ガラス連続シート1のシート幅方向yの両端縁部と対応する位置に、上記ローラ本体9Lを備えたローラユニット14Lと、ローラ本体9Rを備えたローラユニット14Rを、それぞれ該ガラス連続シート1を挟んで、その表面側と裏面側に配置されるように2台ずつ設けた構成としてある。
【0047】
上記各ローラユニット14L,14Rは、個別の支持フレーム15を備えている。この各支持フレーム15には、対応するローラ本体9L,9Rが、該各ローラ本体9L,9Rの回転軸16を回転自在に保持するブラケット17を介して取り付けてある。更に、上記支持フレーム15には、軸心方向が上記ローラ本体9L,9Rと平行となるように配置した個別の駆動モータ18を設置し、該駆動モータ18の出力軸19と、上記ローラ本体9L,9Rの回転軸16との間に、動力伝達機構20を設けた構成としてある。
【0048】
上記動力伝達機構20は、たとえば、上記ブラケット17の外側に突出させた上記ローラ本体9L,9Rの回転軸16の一端側に取り付けたプーリ21と、上記駆動モータ18の出力軸19に取り付けたプーリ22と、該各プーリ21,22同士の間に掛け回した無端状のベルト23とからなる構成としてある。これにより、上記駆動モータ18の運転時には、その出力軸19より出力される回転駆動力を、プーリ22とベルト23とプーリ21を介して上記ローラ本体9L,9Rの回転軸16へ伝達して、該ローラ本体9L,9Rを回転駆動できるようにしてあり、この際、上記駆動モータ18の回転数を制御することで、上記回転駆動されるローラ本体9L,9Rの周速を制御できるようにしてある。
【0049】
上記ローラユニット14L,14Rにおける動力伝達機構20は、ガラス連続シート1やガラス枚葉シート4に作用する衝撃を抑制するという観点から考えると、上記ベルト23とプーリ21,22からなる機構とすることが好適である。なお、上記動力伝達機構20は、上記駆動モータ18の出力軸19より出力される回転駆動力を、対応するローラ本体9L,9Rへ伝達して該ローラ本体9L,9Rを回転駆動することができるようにしてあれば、たとえば、図示してないが、上記各軸16,19に取り付けた個別のスプロケット同士の間に無端状のチェーンを掛け回した構成や、上記各軸に取り付けたギア同士の間で直接、あるいは、中間ギアやシャフトを介して回転駆動力を伝達するようにした構成等、図3(a)(b)に示した以外のいかなる構成の動力伝達機構20を採用するようにしてもよい。
【0050】
なお、図示してないが、上記各ローラユニット14L,14Rは、上記所定位置に配置した状態で支持部材に支持させると共に、上記ガラス連続シート1の表面側に配置された各ローラユニット14L,14Rと、上記ガラス連続シート1の裏面側に配置された各ローラユニット14L,14Rを、それぞれ上記ガラス連続シート1の表面と裏面に近接させる方向に付勢するための付勢手段を備えてなる構成としてあるものとする。なお、上記図示しない付勢手段における付勢力の付与形式は、ばねやアクチュエータの伸縮力、又は、部材の重量等を利用する等、任意の形式を採用してよいことは勿論である。これにより、上記ガラス連続シート1の表面側と裏面側に、上記各ローラユニット14L,14Rの各ローラ本体9L,9Rをそれぞれ密着させて、該各ローラ本体9L,9Rと、上記ガラス連続シート1との滑りを抑えることができるようにしてある。
【0051】
更に、上記裂き割りローラ8は、上記各ローラユニット14L,14Rの各駆動モータ18の運転を制御する制御装置24を備えた構成としてある。
【0052】
上記制御装置24は、上記各ローラユニット14L,14Rの駆動モータ18の運転を制御して、上記2台一組のローラユニット14Lについては、各ローラ本体9Lを、該各ローラ本体9Lのガラス連続シート1に接する側がシート送り方向xへ移動するようになる所定の回転方向へ、該各ローラ本体9Lの周速が前述した周速Vとなる回転速度で同期して回転駆動し、同時に、上記2台一組のローラユニット14Rについては、各ローラ本体9Rを、該各ローラ本体9Rのガラス連続シート1に接する側がシート送り方向xへ移動するようになる所定の回転方向へ、該各ローラ本体9Rの周速が前述した周速Vとなる回転速度で同期して回転駆動する機能を備えるようにしてある。
【0053】
したがって、以上の構成としてある裂き割りローラ8では、上記制御装置24により上記各ローラユニット14L,14Rの駆動モータ18の運転を制御して、上記2台一組のローラユニット14Lのローラ本体9Lを上記所定の回転方向へ周速Vとなる回転速度で同期して回転駆動し、且つ上記2台一組のローラユニット14Rのローラ本体9Rを上記所定の回転方向へ周速Vとなる回転速度で同期して回転駆動した状態とすると、上記送り速度保持ローラ7よりシート送り方向xへシート送り速度Vで送り出されるガラス連続シート1の先端部が、該裂き割りローラ8に達した時点で、該ガラス連続シート1のシート幅方向yの一端寄りの部分を、上記各ローラユニット14Lのローラ本体9L同士の間に受け入れて挟み、一方、該ガラス連続シート1のシート幅方向yの他端寄りの部分を、上記各ローラユニット14Rのローラ本体9R同士の間に受け入れて挟むことができるようにしてある。
【0054】
更に、上記裂き割りローラ8では、上記各ローラユニット14Lのローラ本体9Lが周速Vになるように回転駆動され、又、上記各ローラユニット14Rのローラ本体9Rが周速Vになるように回転駆動されていることに伴って、上記各ローラユニット14Lのローラ本体9L同士の間に挟まれている上記ガラス連続シート1のシート幅方向yの一端寄りの部分に対しては、該各ローラ本体9Lの周速Vに一致した速度でシート送り方向xの下流側へ向けて送るための力を付与できるようにしてあると共に、上記各ローラユニット14Rのローラ本体9R同士の間に挟まれている上記ガラス連続シート1のシート幅方向yの他端寄りの部分に対しては、該各ローラ本体9Rの周速Vに一致した速度でシート送り方向xの下流側へ向けて送るための力を付与できるようにしてある。
【0055】
これにより、図1(a)に示すように、上記スクライバ6にて切断線5に沿って傷を付けた状態のガラス連続シート1が、上記送り速度保持ローラ7によりシート送り方向xの下流側へ順次シート送り速度Vで送り出されている状態で、その後、図1(b)に示すように、上記ガラス連続シート1における傷を付けた切断線5の部分が、上記送り速度保持ローラ7と上記裂き割りローラ8との間に配置されるようになると、該ガラス連続シート1における上記切断線5よりも基端寄りの部分は、上記送り速度保持ローラ7によりシート送り方向xへの移動速度が上記所定のシート送り速度Vに保持されるのに対し、該ガラス連続シート1における上記切断線5よりも先端寄りの部分に対しては、上記裂き割りローラ8にて、いずれも上記シート送り速度Vよりも大となるローラユニット14Lのローラ本体9Lの周速V、及び、ローラユニット14Rのローラ本体9Rの周速Vで該部分をシート送り方向xの下流側へ送る力が付与される。
【0056】
更に、この際、上記ガラス連続シート1における上記切断線5よりも先端寄りの部分のシート幅方向yの一端寄りの部分に対してローラユニット14Lのローラ本体9Lより該ローラ本体9Lの周速Vに応じて付与されるシート送り方向xの下流側へ送る力は、上記ガラス連続シート1における上記切断線5よりも先端寄りの部分のシート幅方向yの他端寄りの部分に対してローラユニット14Rのローラ本体9Rより該ローラ本体9Rの周速Vに応じて付与されるシート送り方向xの下流側へ送る力よりも大となる。
【0057】
したがって、上記ガラス連続シート1が、上記送り速度保持ローラ7と裂き割りローラ8の双方に接している場合は、該ガラス連続シート1における、上記送り速度保持ローラ7と裂き割りローラ8との間に配置されている部分に、シート送り方向xに沿う方向の張力が作用するようになる。
【0058】
この状態で、上記ガラス連続シート1のシート送り方向xへの移動に伴って、該ガラス連続シート1における上記スクライバ6で切断線5に沿って傷を付けた部分が、上記送り速度保持ローラ7と上記裂き割りローラ8との間に配置されるようになると、該各ローラ7,8間で上記ガラス連続シート1に作用していた張力が、該ガラス連続シート1における上記傷を付けた部分で応力集中を起こすようになる。更に、この際、上記裂き割りローラ8におけるシート幅方向yに配列されたローラ本体9Lと9Rの周速VとVとの速度差に起因して、上記ガラス連続シート1の切断線5に沿って傷を付けた部分に対しては、シート幅方向yの一端側に、他端側よりも大きな応力集中が生じるようになる。
【0059】
よって、上記ガラス連続シート1の上記切断線5に沿う傷を付けた部分では、上記した応力集中により該傷のシート幅方向yの一端部を起点とするクラックが生じると共に、該クラックが上記傷に沿ってシート幅方向yの他端側へ成長させられるようになり、このクラックが、該ガラス連続シート1におけるシート幅方向yの全長に亘って生じることで、該ガラス連続シート1が上記切断線5に沿う位置で裂くように分割されて、この分割された上記切断線5よりも先端側に位置していた部分が、ガラス枚葉シート4として切り出されるようにしてある。
【0060】
なお、上記裂き割りローラ8における上記ガラス連続シート1のシート幅方向yの一端寄りの部分に接触させるローラユニット14Lのローラ本体9Lの周速Vと、上記ガラス連続シート1のシート幅方向yの他端寄りの部分に接触させるローラユニット14Rのローラ本体9Rの周速Vとの速度差、及び、上記各周速V,Vと、上記送り速度保持ローラ7によるガラス連続シート1のシート送り速度Vとの速度差は、上記ガラス連続シート1の切断線5に沿って上記スクライバ6で付けた傷の部分について、該傷のシート幅方向yの一端部を起点としてクラックを発生させることができると共に、該クラックを上記傷に沿ってシート幅方向yの他端側へ成長させることができて、上記ガラス枚葉シート4を実際に切り出す作用が得られるように、予備実験等に基づいて定めるようにすればよい。
【0061】
又、上記裂き割りローラ8にて、上記ローラユニット14Lのローラ本体9Lの周速Vと、上記ローラユニット14Rのローラ本体9Rの周速Vとの速度差は、実際には、それほど大きくしなくても、上記ガラス連続シート1における切断線5に沿って傷を付けた部分に対して、クラックをシート幅方向yの一端側より他端側へ成長させる作用を与えることができる。そのため、上記ローラ本体9Lの周速Vと、ローラ本体9Rの周速Vとの速度差に起因して発生する上記ガラス連続シート1より切り出されたガラス枚葉シート4の姿勢のシート送り方向xからの傾きは、実際には微小に抑えることができる。これに対し、図1(b)では、図示する便宜上、上記ガラス連続シート1より切り出されたガラス枚葉シート4の姿勢のシート送り方向xからの傾きを拡大して示してある。
【0062】
上記裂き割りローラ8のシート送り方向xの下流側には、図1(a)(b)に示すように、該裂き割りローラ8の部分で上記したようにガラス連続シート1より切り出されるガラス枚葉シート4を予め設定された所定個所へ向けて搬送するための搬出手段として、たとえば、コロコンベヤ25が設けてある。該コロコンベヤ25におけるガラス枚葉シート4の搬送速度は、上記裂き割りローラ8におけるローラユニット14Lのローラ本体9Lの周速Vよりも速くなるように設定してあるものとする。これにより、上記裂き割りローラ8により切り出されるガラス枚葉シート4が、前回切り出されて上記コロコンベヤ25によって搬送されるガラス枚葉シート4に接触する虞が生じないようにしてある。
【0063】
なお、上記したように、上記ガラス連続シート1よりガラス枚葉シート4を切り出す際には、上記裂き割りローラ8におけるローラユニット14Lのローラ本体9Lの周速Vと、ローラユニット14Rのローラ本体9Rの周速Vとの速度差に起因して、上記切り出されるガラス枚葉シート4の姿勢が、シート送り方向xより傾くようになる。
【0064】
この点に鑑みて、上記ガラス枚葉シート4を払い出す際に、該ガラス枚葉シート4の姿勢のシート送り方向xからの傾きを修正する必要がない場合は、上記コロコンベヤ25によりそのまま払い出すようにすればよい。
【0065】
一方、ガラス枚葉シート4を払い出す際に、該ガラス枚葉シート4の姿勢のシート送り方向xからの傾きを修正する必要がある場合は、たとえば、図1(a)(b)に示すように、上記コロコンベヤ25の側方に姿勢補正ガイド26を装備して、該コロコンベヤ25により搬送される上記ガラス枚葉シート4を、該姿勢補正ガイド26に沿わせてガイドすることにより、該ガラス枚葉シート4の姿勢を、上記シート送り方向xに一致するように補正させるようにすればよい。
【0066】
なお、上記コロコンベヤ25の側方に姿勢補正ガイド26を装備する構成に代えて、上記裂き割りローラ8のシート送り方向xの下流側の近傍位置にあるコロコンベヤ25について、シート幅方向yの一端寄りのコロの回転駆動速度に比して、シート幅方向yの他端寄りのコロの回転駆動速度を高く設定する構成を採用して、上記裂き割りローラ8のシート送り方向xの下流側の近傍位置にあるコロコンベヤ25により搬送させるときに、上記ガラス枚葉シート4の姿勢を、上記シート送り方向xに一致するように補正させるようにしてもよい。
【0067】
なお、上記ガラス連続シート1のロール2、シート送り出しローラ3、スクライバ6、送り速度保持ローラ7、裂き割りローラ8、コロコンベヤ25は、いずれも架台等の図示しない支持手段により支持させてあるものとする。
【0068】
以上の構成としてある本発明のガラスシート切断装置を使用する場合は、上記シート送り出しローラ3、及び、送り速度保持ローラ7を運転して、該シート送り出しローラ3、及び、送り速度保持ローラ7により、ガラス連続シート1をシート送り方向xへ所定のシート送り速度Vで連続的に送るようにする。
【0069】
又、上記裂き割りローラ8にて、シート幅方向yの一端寄りに装備してあるローラ本体9Lと、シート幅方向yの他端寄りに装備してあるローラ本体9Rを、それぞれ前述した所定の周速VとVで回転駆動させるようにしておく。
【0070】
この状態で、上記ロール2より繰り出されて上記シート送り出しローラ3によってシート送り方向xへ送られるガラス連続シート1における予め設定してある切断線5の個所が、スクライバ6まで送られると、該スクライバ6により、上記切断線5に沿ってガラス表面に傷が形成される。
【0071】
その後、上記シート送り出しローラ3によるガラス連続シート1のシート送り方向xへの連続的な送り出しに伴って、該ガラス連続シート1における上記切断線5に沿う傷を形成した個所が、上記送り速度保持ローラ7まで送られた後に、該送り速度保持ローラ7と上記裂き割りローラ8との間に配置されるようになると、該ガラス連続シート1は、上記傷が形成してあった切断線5の個所で裂くように分割されて、該ガラス連続シート1の上記切断線5よりも先端側に位置していた部分が、ガラス枚葉シート4として切り出される。
【0072】
上記のようにしてガラス連続シート1より切り出されたガラス枚葉シート4は、上記裂き割りローラ8の各ローラ本体9L,9Rの周速V,Vが、共に上記送り速度保持ローラ7によるガラス連続シート1のシート送り速度Vよりも速く設定してあるので、上記ガラス連続シート1より速やかに引き離された後、上記裂き割りローラ8のシート送り方向xの下流側に搬出手段として設けてあるコロコンベヤ25により、予め設定された所定個所へ向けて搬送される。
【0073】
その後、上記ロール2より繰り出されるガラス連続シート1にて、予め設定してある切断線5の個所毎に、上記スクライバ6による切断線5に沿う傷の形成と、上記送り速度保持ローラ7と裂き割りローラ8との間での上記傷が形成してある切断線5の個所での分割の処理が順次繰り返して行われることにより、上記ガラス連続シート1よりガラス枚葉シート4の切り出しが連続的に行われるようになる。
【0074】
このように、本発明のガラスシート切断装置によれば、ガラス連続シート1からのガラス枚葉シート4の切り出しを連続的に行うことができる。
【0075】
又、上記ガラス連続シート1からガラス枚葉シート4を切り出すための力の付与は、該ガラス連続シート1における上記送り速度保持ローラ7と上記裂き割りローラ8との間に配置された部分に対して、上記送り速度保持ローラ7によるシート送り速度Vと、上記裂き割りローラ8の各ローラ本体9L,9Rの周速V,Vとの速度差に基づく張力を与えることで実現できるため、上記ガラス連続シート1に対して折り曲げ力を付与する必要をなくすことができる。
【0076】
このため、本発明のガラスシート切断装置では、ガラス連続シート1に折り曲げ力を付与するために従来必要とされていた該ガラス連続シート1の面に対して垂直な方向へ往復動作させる部材を不要にすることができる。
【0077】
しかも、送り速度保持ローラ7と上記裂き割りローラ8の回転速度は、部材を往復動作させる場合に比して、安定した高速化を容易に図ることができる。よって、本発明のガラスシート切断装置では、上記ガラス連続シート1からのガラス枚葉シート4の切り出しの高速化を図ることができる。
【0078】
なお、上記においては、裂き割りローラ8にて、シート幅方向yに配列された各ローラ本体9Lと9Rを、常に周速VとVで回転駆動するものとして示したが、たとえば、制御装置24により、通常は、上記裂き割りローラ8の各ローラ本体9Lと9Rを、上記送り速度保持ローラ7によるガラス連続シート1のシート送り速度Vと一致した周速となるように回転駆動させておき、上記ガラス連続シート1におけるスクライバ6で切断線5に沿う傷を形成した個所が、上記送り速度保持ローラ7と裂き割りローラ8との間に配置されるタイミングで、上記裂き割りローラ8の各ローラ本体9Lと9Rを、上記送り速度保持ローラ7によるシート送り速度Vよりも早い上記所定の周速VとVになるように加速させるようにしてもよい。
【0079】
このようにしても、上記ガラス連続シート1におけるスクライバ6で切断線5に沿う傷を形成した個所が、上記送り速度保持ローラ7と裂き割りローラ8との間に配置されると、該ガラス連続シート1の上記傷が形成してある切断線5の個所を裂くように分割させて、該ガラス連続シート1の上記切断線5よりも先端側に位置していた部分を、ガラス枚葉シート4として切り出すことができる。よって、この場合にも、上記と同様の効果を得ることができる。
【0080】
この場合は、上記切り出されたガラス枚葉シート4が上記裂き割りローラ8を通過した時点で、該裂き割りローラ8の各ローラ本体9L,9Rの周速を、通常の周速に戻すようにすればよい。又、上記ガラス連続シート1における切断線5に沿う傷を形成した個所が上記送り速度保持ローラ7と裂き割りローラ8との間に配置されるタイミングの検出は、たとえば、上記スクライバ6から上記送り速度保持ローラ7までの距離と、シート送り速度Vを基に、上記スクライバ6でガラス連続シート1に傷を形成した個所が、上記送り速度保持ローラ7と裂き割りローラ8との間に配置されるようになるまでの経過時間を算出したり、上記ガラス連続シート1に形成した傷を検出する図示しないセンサを用いて、上記送り速度保持ローラ7と裂き割りローラ8との間にて、上記ガラス連続シート1の切断線5に沿う傷を形成した個所を直接検出する等、任意の検出手法を採用してよいことは勿論である。
【0081】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、裂き割りローラ8におけるシート幅方向yの一端寄りのローラ本体9Lと、シート幅方向yの他端寄りのローラ本体9Rについて、それぞれに設定されている周速VとVを入れ替えるようにしてもよい。この場合、上記裂き割りローラ8のシート送り方向xの下流側に設ける搬出手段であるコロコンベヤ25に装備して該裂き割りローラ8にて切り出されるガラス枚葉シート4の姿勢を補正するため姿勢補正ガイド26の向きを、シート幅方向yの両側で反転させるようにすればよい。
【0082】
又、上記裂き割りローラ8におけるシート幅方向yに配列するローラ本体の数は、ガラス連続シート1の幅寸法等に応じて、3以上としてもよい。この場合、上記裂き割りローラ8における各ローラ本体の周速は、送り速度保持ローラ7によるシート送り速度Vよりも速いという条件の下で、各ローラ本体のシート幅方向yの配置と配列順序に応じて、該各ローラ本体の周速に、遅速の傾斜を設けるようにすればよい。
【0083】
シート送り出しローラ3、及び、送り速度保持ローラ7におけるシート幅方向yのローラ本体10の配列数、及び、コロコンベヤ25におけるシート幅方向yのコロの配列数は、ガラス連続シート1の幅寸法や、上記ローラ本体10やコロのシート幅方向yの長さ寸法に応じて自在に変更してもよい。
【0084】
上記実施の形態では、ガラス連続シート1の送り方向xを水平方向とした場合について示したが、該ガラス連続シート1の送り方向は、上方から下方へ向けて垂直でもよく、又、送り方向の上流側が下流側よりも高くなるように傾斜していてもよい。更には、ガラス連続シート1より切り出されるガラス枚葉シート4が裂き割りローラ8を通過した時点で、該ガラス枚葉シート4を確実に搬出することができるようにしてあれば、上記ガラス連続シート1の送り方向は、送り方向の下流側が上流側よりも高くなるように傾斜していてもよい。
【0085】
ガラス連続シート1のロール2より繰り出されるガラス連続シート1に代えて、ガラス連続シート1を生産する製造設備より連続的に送り出されるガラス連続シート1から、ガラス枚葉シート4を切り出す場合に適用してもよい。
【0086】
スクライバ6にてガラス連続シート1に切断線5に沿って傷を形成する際に、後の工程で該傷の個所に生じさせるクラックの起端側となる上記切断線5のシート幅方向yの一端側の端部に、シート幅方向yの他の部分よりも深く傷を入れるようにしてもよい。
【0087】
裂き割りローラ8のシート送り方向xの下流側に設ける搬出手段は、該裂き割りローラ8の部分でガラス連続シート1より切り出されるガラス枚葉シート4を、予め設定してある所定の利用先に向けて搬送することができるようにしてあれば、搬送用のロボット等、コロコンベヤ25以外のいかなる形式の搬送手段を採用してもよい。
【0088】
ガラス連続シート1の幅寸法や、切り出されるガラス枚葉シート4の縦横比、更には、シート送り出しローラ3、送り速度保持ローラ7、裂き割りローラ8におけるローラ本体10,9L,9R、及び、コロコンベヤ25のコロの径寸法並びに軸心方向寸法は、いずれも図示するための便宜的なものであり、実際の寸法を反映したものではない。
【0089】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0090】
1 ガラス連続シート
3 シート送り出しローラ
6 スクライバ
7 送り速度保持ローラ
8 裂き割りローラ
9L,9R ローラ本体
シート送り速度
周速
周速
x シート送り方向
y シート幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス連続シートを連続的に送り出すようにしてあるシート送り出しローラのシート送り方向の下流側に、上記ガラス連続シートの表面に上記シート送り方向と直交するシート幅方向に延びる傷を形成するためのスクライバと、該ガラス連続シートにおける上記スクライバを通過した部分の上記シート送り方向へのシート送り速度を上記シート送り出しローラによるシート送り速度と同じ速度に保持するための送り速度保持ローラと、上記ガラス連続シートのシート幅方向の複数個所に接触させるためのローラ本体を有する裂き割りローラを順に備え、且つ上記裂き割りローラは、上記ガラス連続シートのシート幅方向に配列された複数のローラ本体を、上記送り速度保持ローラによるガラス連続シートのシート送り速度よりも速い周速で且つ上記シート幅方向の一端寄りのローラ本体の周速がシート幅方向の他端寄りローラ本体の周速よりも速くなるように回転駆動可能に備えてなるものとした構成を有することを特徴とするガラスシート切断装置。
【請求項2】
ガラス連続シートを、厚みが0.1mm〜0.3mmのガラス連続シートとした請求項1記載のガラスシート切断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate