説明

ガラスペースト組成物

【課題】 ガラスペースト組成物の保存時の凝集・沈降安定性を従来に比し高め得るガラスペースト組成物の提供。
【解決手段】 アシル基と親水基とを2個以上ずつ有するアシル化合物の1種以上を含有することを特徴とするガラスペースト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体回路のセラミックパッケージ等の電子用、自動車用等に用いられるガラスペースト組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷用、電子用、自動車用等にガラスペースト組成物が使用されており、その組成は主としてガラスフリット、溶剤、有機バインダーからなるものであり、必要に応じて顔料、感光剤、可塑剤等が添加されている。ガラスペースト組成物は基板上に印刷塗布され、乾燥、焼成工程を経て製品となる。特に、半導体集積回路等の印刷用ガラスペーストにおいては、緻密なガラス膜を形成するために、ガラス粉末の粒径の小さいものを使用するようになっているが、粒径が小さいほどペーストの保存中にガラス粒子が凝集沈降しやすく、使用する際に再分散しなければならないという問題があった。
【0003】
特許文献1では、ガラス粉末と、極性有機溶剤を用いたビヒクルと、ポリカルボン酸型陰イオン界面活性剤とよりなるガラスペーストにより、保存時の粒子の沈降、気泡を抑制する技術を開示しているが、その効果はガラス粒子径が10μm以下のような微粒径の領域ではまだまだ不十分である。
【特許文献1】特開昭53−94181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ガラスペースト組成物の保存時の凝集・沈降安定性を従来に比し高め得るガラスペースト組成物の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の化合物、即ち、分子内にアシル基と親水基とを2個以上ずつ有する化合物(アシル化合物)の1種以上を含有するガラスペースト組成物を用いることで、保存時の沈降安定性を従来に比し高め得るガラスペースト組成物を得ることができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0006】
即ち本発明は、下記の通りである。
1.分子内にアシル基と親水基とを2個以上ずつ有するアシル化合物の1種以上を含有することを特徴とするガラスペースト組成物。
2.アシル化合物の少なくとも1種が、分子内にアミノ酸残基を有するものであることを特徴とする前記1.に記載のガラスペースト組成物。
3.アシル化合物の少なくとも1種が、下記一般式(1)に示す化合物であることを特徴とする前記1.または2.のいずれかに記載のガラスペースト組成物。
【0007】
【化1】

(上記一般式(1)において、Xはm個の官能基、およびそれ以外の置換基を有していてもよい分子量100万以下の直鎖または分枝鎖または環状鎖または芳香族炭化水素鎖であるスペーサーであり、Xに結合しているn(m≧n)個のQは、下記一般式(2)で表される置換基で、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。下記一般式(2)において、ZはXの有する官能基に由来する結合部であり、R1COは炭素原子数2〜20の飽和または不飽和の脂肪酸から誘導されるアシル基を示し、R2は水素であるか、またはヒドロキシル基またはカルボキシル基が置換していてもよい炭素原子数1〜3の低級アルキル基を示し、Yはカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基またはそれらの塩を示し、j、kはそれぞれ独立に0,1,2のいずれかであり、かつj、kは同時に0ではない。nは2〜20の整数を示す。)
【0008】
【化2】

4.さらに有機バインダーと溶媒を含むガラスペーストであることを特徴とする前記1.〜3.のいずれかに記載のガラスペースト組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明のガラスペースト組成物は、保存時の凝集・沈降安定性が高い、すなわち、分散性が良く、凝集・沈降の無い均一な状態を長期間保持することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について、特にその好ましい形態を中心に具体的に説明する。
【0011】
本発明でいうガラスペースト組成物は、ガラス粉末の1種以上を溶媒中に分散してなるペースト状のもので、該組成物中に少なくとも特定の構造を有するアシル化合物の1種以上を含んでなる組成物である。ここでいうアシル化合物とは、構造的には分子内に少なくともアシル基と親水基とを2個以上ずつ有する構造の化合物である。
【0012】
2個以上のアシル基は、それぞれ独立して異なっていても同一でもよい。それぞれのアシル基は、炭素原子数2〜20の飽和または不飽和の脂肪酸から誘導されるものが好ましく、直鎖、分岐、環状を問わない。ただし、カルボキシル基となっているものを含まない。
【0013】
アシル基としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸のような直鎖脂肪酸;
【0014】
2−ブチル−5−メチルペンタン酸、2−イソブチル−5−メチルペンタン酸、ジメチルオクタン酸、ジメチルノナン酸、2−ブチル−5−メチルヘキサン酸、メチルウンデカン酸、ジメチルデカン酸、2−エチル−3−メチルノナン酸、2,2−ジメチル−4−エチルオクタン酸、メチルドコサン酸、2−プロピル−3−メチルノナン酸、メチルトリデカン酸、ジメチルドデカン酸、2−ブチル−3−メチルノナン酸、メチルテトラデカン酸、エチルトリデカン酸、プロピルドデカン酸、ブチルウンデカン酸、ペンチルデカン酸、ヘキシルノナン酸、2−(3−メチルブチル)−3−メチルノナン酸、2−(2−メチルブチル)−3−メチルノナン酸、ブチルエチルノナン酸、メチルペンタデカン酸、エチルテトラデカン酸、プロピルトリデカン酸、ブチルドデカン酸、ペンチルウンデカン酸、ヘキシルデカン酸、ヘプチルノナン酸、ジメチルテトラデカン酸、ブチルペンチルヘプタン酸、トリメチルトリデカン酸、メチルヘキサデカン酸、エチルペンタデカン酸、プロピルテトラデカン酸、ブチルトリデカン酸、ペンチルドデカン酸、ヘキシルウンデカン酸、ヘプチルデカン酸、メチルヘプチルノナン酸、ジペンチルヘプタン酸、メチルヘプタデカン酸、エチルヘキサデカン酸、エチルヘキサデカン酸、プロピルペンタデカン酸、ブチルテトラデカン酸、ペンチルトリデカン酸、ヘキシルドデカン酸、ヘプチルウンデカン酸、オクチルデカン酸、ジメチルヘキサデカン酸、メチルオクチルノナン酸、メチルオクタデカン酸、エチルヘプタデカン酸、ジメチルヘプタデカン酸、メチルオクチルデカン酸、メチルノナデカン酸、メチルノナデカン酸、ジメチルオクタデカン酸、ブチルヘプチルノナン酸のような分岐脂肪酸;
【0015】
オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、カプロレイン酸、ウンデシレン酸、リンデル酸、トウハク酸、ラウロレイン酸、トリデセン酸、ツズ酸、ミリストレイン酸、ペンタデセン酸、ヘキセデセン酸、パルミトレイン酸、ヘプタデセン酸、オクタデセン酸、オレイン酸、ノナデセン酸、ゴンドイン酸のような直鎖モノエン酸;
【0016】
メチルヘプテン酸、メチルノネン酸、メチルウンデセン酸、ジメチルデセン酸、メチルドデセン酸、メチルトリデセン酸、ジメチルドデセン酸、ジメチルトリデセン酸、メチルオクタデセン酸、ジメチルヘプタデセン酸、エチルオクタデセン酸のような分岐モノエン酸;
【0017】
リノール酸、リノエライジン酸、エレオステアリン酸、リノレン酸、リノレンエライジン酸、プソイドエレオステアリン酸、パリナリン酸、アラキドン酸のようなジまたはトリエン酸;
【0018】
オクチン酸、ノニン酸、デシン酸、ウンデシン酸、ドデシン酸、トリデシン酸、テトラデシン酸、ペンタデシン酸、ヘプタデシン酸、オクタデシン酸、ノナデシン酸、ジメチルオクタデシン酸のようなアセチレン酸;
【0019】
メチレンオクタデセン酸、メチレンオクタデカン酸、アレプロール酸、アレプレスチン酸、アレプリル酸、アレプリン酸、ヒドノカルプン酸、ショールムーグリン酸、ゴルリン酸、α−シクロペンチル酸、α−シクロヘキシル酸、α−シクロペンチルエチル酸のような環状酸;
から誘導されるものがあげられる。
【0020】
また、アシル基は、天然油脂から得られる脂肪酸由来のアシル基でも良く、上記の炭素原子数2〜20の飽和または不飽和脂肪酸を80%以上含む混合脂肪酸由来のアシル基が好ましい。例えば、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、ツバキ油脂肪酸、菜種油脂肪酸、パーム核油脂肪酸等から誘導されるアシル基等が挙げられる。これらのアシル基を有するアシル化合物は2種以上組み合わせて用いても良い。アシル基の炭素数は、分散能を高める観点から8〜20であることが好ましい。
【0021】
アシル化合物に含まれる2個以上の親水基は、それぞれ独立して異なっていても同一でもよい。親水基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸残基、リン酸残基若しくはそれらの塩等、又はオキシアルキレン基、ポリエチレングリコール基等、又はアミノ基、4級アンモニウム基、ピリジニウム基、スルホニウム基若しくはそれらの塩等があげられる。親水基は、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基若しくはそれらの塩であることが好ましい。
【0022】
アシル化合物に含まれるアシル基または親水基の数は、それぞれ2個以上60個以下であることが好ましく、2個以上40個以下であることがより好ましい。さらには2個以上20個以下であることが特に好ましい。
【0023】
アシル化合物を塩として用いる場合には、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、塩基性アミノ酸塩等とするのが好ましく、具体的には、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、亜鉛等の金属、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の有機アミン、アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸等から任意に選ばれる1種または2種以上との塩とするのがより好ましい。これらの中でも、ナトリウム塩、カリウム塩、有機アミン塩、塩基性アミノ酸塩が特に好ましい。また、水性スラリーを用いて導電性ペーストを製造する場合には、有機アミン塩、塩基性アミノ酸塩等とすることが好ましい。
【0024】
ガラスペースト組成物において、ガラスペースト組成物に含有されるアシル化合物の少なくとも1種が、一般式(1)および(2)で示されるアシル化合物であることが好ましい。
【0025】
ここでいうアシル化合物は、構造的には一般式(1)および(2)に示すように分子内に少なくとも1個以上のアシル基と親水基とをそれぞれ有する化合物を、適当なスペーサーで連結した構造のものである。
【0026】
一般式(2)中、R1COで示されるアシル基は独立して、すなわち、それぞれ異なっても同一でもよく、上記したように炭素原子数2〜20の飽和または不飽和の脂肪酸から誘導されるものであれば何でも良く、直鎖、分岐、環状を問わない。
【0027】
一般式(2)中、R1COで示されるアシル基は、好ましくは炭素原子数8〜20の飽和または不飽和の脂肪酸から誘導されるものがよい。
【0028】
一般式(2)中、R2は水素であるか、または、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基若しくはそれらの塩等が置換していてもよい炭素原子数1〜3の低級アルキル基であり、低級アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシ(イソ)プロピル基、ジヒドロキシ(イソ)プロピル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、スルホエチル基等が挙げられる。
【0029】
一般式(1)中、Xに結合したn個の置換基Q(式(2))は、それぞれ互いに、異なっても同一でもよい。また、式(2)は、いわゆる酸性アミノ酸がN−アシル化されたものを示すものであり、それらは光学異性体例えばD−体、L−体、ラセミ体であるかは問わない。
【0030】
酸性アミノ酸は、分子中に存在するカルボキシル基とアミノ基の数がそれぞれ2個と1個のモノアミノジカルボン酸であり、アミノ基はN−メチル基またはN−エチル基でもかまわない。また光学異性体例えばD−体、L−体、ラセミ体であるかは問わない。酸性アミノ酸としては、例えばグルタミン酸、アスパラギン酸、ランチオニン、β−メチルランチオニン、シスタチオニン、ジエンコール酸、フェリニン、アミノマロン酸、β−オキシアスパラギン酸、α−アミノ−α−メチルコハク酸、β−オキシグルタミン酸、γ−オキシグルタミン酸、γ−メチルグルタミン酸、γ−メチレングルタミン酸、γ−メチル−γ−オキシグルタミン酸、α−アミノアジピン酸、α−アミノ−γ−オキシアジピン酸、α−アミノピメリン酸、α−アミノ−γ−オキシピメリン酸、β−アミノピメリン酸、α−アミノスベリン酸、α−アミノセバシン酸、パントテン酸等が挙げられる。
【0031】
Xに付くn個の置換基(式(2))は、酸性アミノ酸がL−酸性アミノ酸分子である場合が、生分解性に優れることから好ましい。
【0032】
一般式(2)中、Zは、Xに置換したm個(m≧n、かつ、2〜20の整数)の官能基(ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基)に由来する結合部(−O−、−NR3−、−S−)である。ここで、R3は水素、または炭素原子数1〜10のアルキル基若しくはアルケニル基若しくはアリール基若しくはアルキルアリール基である。
【0033】
一般式(1)中、Xはヒドロキシル基、アミノ基、チオール基から選ばれる1種または2種以上からなるm個の官能基を有する分子量100万以下の直鎖または分枝鎖または環状鎖または芳香族炭化水素鎖であるスペーサーであり、Xは、前記ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基以外の置換基を有していてもよい。
【0034】
一般式(1)中、Xは好ましくはヒドロキシル基、アミノ基、チオール基から選ばれる1種または2種以上の官能基をm個有する分子量100万以下のm価の化合物の残基であって、ヒドロキシル基、アミノ基、チオール基以外の置換基を有していてもよい化合物残基である。ここで、m価の上記化合物は、m個の官能基に由来する結合を作りうることを意味する。それらは光学異性体例えばD−体、L−体、ラセミ体であるかは問わない。
【0035】
このようなm価の化合物としては、例えば、セリン、トレオニン、システイン、シスチン、シスチンジスルホキシド、シスタチオニン、メチオニン、アルギニン、リジン、チロシン、ヒスチジン、トリプトファン、オキシプロリン等のアミノ酸類;
【0036】
アミノエタノール、アミノプロパノール、アミノブタノール、アミノペンタノール、アミノヘキサノール、アミノプロパンジオール、アミノエチルエタノールアミン、アミノエチルアミノエタノール、アミノクレゾール、アミノナフトール、アミノナフトールスルホン酸、アミノヒドロキシ安息香酸、アミノヒドロキシブタン酸、アミノフェノール、アミノフェネチルアルコール、グルコサミン等の分子内にアミノ基とヒドロキシル基を有する化合物類;
【0037】
メルカプトエタノール、メルカプトフェノール、メルカプトプロパンジオール、グルコチオース等の分子内にチオール基とヒドロキシル基を有する化合物類;
【0038】
アミノチオフェノール、アミノトリアゾールチオール等の分子内にチオール基とアミノ基を有する化合物類;
が挙げられる。また、タンパク質やペプチド等、またはそれらを加水分解したもの等でも良い。
【0039】
また、一般式(1)中、Xは好ましくはヒドロキシル基以外の置換基を有していてもよい分子量100万以下のm価(m≧n)のポリヒドロキシル化合物残基である。ここで、m価のポリヒドロキシル化合物は、m個のエステル結合を作りうることを意味する。それらは光学異性体例えばD−体、L−体、ラセミ体であるかは問わない。
【0040】
このようなm価のポリヒドロキシル化合物としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ジメチロールシクロヘキサン、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、イソプレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ソルバイト、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ダイマージオール、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、酒石酸、ジヒドロキシ酒石酸、メバロン酸、3,4−ジヒドロキシけい皮酸、3,4−ジヒドロキシヒドロけい皮酸、ヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシステアリン酸、ジヒドロキシフェニルアラニン等およびこれらの各異性体等の2価ヒドロキシル化合物;
【0041】
グリセリン、トリオキシイソブタン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、2−メチル−2,3,4−ブタントリオール、2−エチル−1,2,3−ブタントリオール、2,3,4−ペンタントリオール、2,3,4−ヘキサントリオール、4−プロピル−3,4,5−ヘプタントリオール、2,4−ジメチル−2,3,4−ペンタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリヒドロキシステアリン酸等の3価ポリヒドロキシル化合物;
【0042】
ペンタエリスリトール、エリスリトール、1,2,3,4−ペンタンテトロール、2,3,4,5−ヘキサンテトロール、1,2,4,5−ペンタンテトロール、1,3,4,5−ヘキサンテトロール、ジグリセリン、ソルビタン等の4価ポリヒドロキシル化合物;
【0043】
アドニトール、アラビトール、キシリトール、トリグリセリン等の5価ポリヒドロキシル化合物;
【0044】
ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、イノシトール、ダルシトール、タロース、アロース等の6価ポリヒドロキシル化合物;
またはこれらの脱水縮合物、ポリグリセリン等が挙げられる。
【0045】
また、糖類、例えばエリスロース、スレオース、エリスルロース等のテトロース;
【0046】
リボース、アラビノース、キシロース、リクソース、キシルロース、リブロース等のペントース;アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ギューロース、イドース、ガラクトース、タロース、フラクトース、ソルボース、プシコース、タガトース等のヘキソース等の単糖類;
【0047】
マルトース、イソマルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、メリビオース、ラクトース、ツラノース、トレハロース、サッカロース、マンニトリオース、セロトリオース、ゲンチアノース、ラフィノース、メレチトース、セロテトロース、スタキオース等のオリゴ糖類;が挙げられる。
【0048】
また、その他の糖類、例えばヘプトース、デオキシ糖、アミノ糖、チオ糖、セレノ糖、アルドン糖、ウロン酸、糖酸、ケトアルドン酸、アンヒドロ糖、不飽和糖、糖エステル、糖エーテル、グリコシド等の残基でもよく、デンプン、グリコーゲン、セルロース、キチン、キトサン等の多糖類またはそれらを加水分解したものでもよい。
【0049】
また、一般式(2)中、Xは好ましくはアミノ基以外の置換基を有していてもよい分子量100万以下のm価のポリアミノ化合物残基である。ここで、m価のポリアミノ化合物は、m個の酸アミド結合を作りうることを意味する。それらは光学異性体例えばD−体、L−体、ラセミ体であるかは問わない。
【0050】
このようなm価のポリアミノ化合物としては、例えばN,N’−ジメチルヒドラジン、エチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノヘプタン、ジアミノオクタン、ジアミノノナン、ジアミノデカン、ジアミノドデカン、ジアミノアジピン酸、ジアミノプロパン酸、ジアミノブタン酸およびこれらの各異性体等の脂肪族ジアミン類;
【0051】
ジエチレントリアミン、トリアミノヘキサン、トリアミノドデカン、1,8−ジアミノ−4−アミノメチル−オクタン、2,6−ジアミノカプリン酸−2−アミノエチルエステル、1,3,6−トリアミノヘキサン、1,6,11−トリアミノウンデカン、ジ(アミノエチル)アミンおよびこれらの各異性体等の脂肪族トリアミン類;
【0052】
ジアミノシクロブタン、ジアミノシクロヘキサン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、トリアミノシクロヘキサン等の脂環族ポリアミン類;
【0053】
ジアミノベンゼン、ジアミノトルエン、ジアミノ安息香酸、ジアミノアントラキノン、ジアミノベンゼンスルホン酸、ジアミノ安息香酸、およびこれらの各異性体等の芳香族ポリアミン類;
【0054】
ジアミノキシレン、ジ(アミノメチル)ベンゼン、ジ(アミノメチル)ピリジン、ジ(アミノメチル)ナフタレン、およびこれらの各異性体等の芳香脂肪族ポリアミン類;
【0055】
ジアミノヒドロキシプロパンおよびこれらの各異性体等のヒドロキシル基が置換したポリアミン類;等が挙げられる。
【0056】
また一般式(1)中、Xは好ましくはチオール基以外の置換基を有していてもよい分子量100万以下のm価のポリチオール化合物残基である。ここで、m価のポリチオール化合物は、m個のチオエステル結合を作りうることを意味する。それらは光学異性体例えばD−体、L−体、ラセミ体であるかは問わない。
【0057】
このようなm価のポリチオール化合物としては、例えば、ジチオエチレングリコール、ジチオエリトリトール、ジチオトレイトール等のジチオール化合物類等が挙げられる。
【0058】
Xは上に挙げた化合物の残基の中でも、炭素数1〜40の場合が好ましい、さらに好ましくはXは炭素数1〜20である。また、Xは天然に存在する型である場合の方が、生分解性に優れるという点で好ましい。
【0059】
一般式(2)中、Yで示されるカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基およびX中に含まれうるカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基等は、上記したように種々の塩基性物質との間に塩を形成し得る。
【0060】
このような一般式(1)および(2)で示されるアシル化合物の製造方法としては、一般式(3)で示されるN−アシル酸性アミノ酸無水物と、分子内にヒドロキシル基、アミノ基、チオール基から選ばれる1種または2種以上のm個の官能基を有する化合物とを、水および/または水と有機溶媒との混合溶媒中で反応させることによって、またはテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、四塩化炭素、クロロホルム、アセトン等の不活性溶媒を使用して、あるいは無溶媒で−5℃〜200℃でいずれかの融点以上の温度で混合して反応することで得ることができる。
【0061】
【化3】

【0062】
または一般式(1)および(2)で示されるアシル化合物は、N−アシル酸性アミノ酸モノ低級エステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル)とポリヒドロキシル化合物またはポリアミノ化合物またはポリチオール化合物、または分子内にヒドロキシル基、アミノ基、チオール基のうちいずれか2種または3種を有する化合物とをジメチルホルムアミド等の適当な溶媒中に溶解し、炭酸カリウム等の触媒を加え、減圧下に−5℃〜250℃で加熱反応させた後反応溶媒を除去することで得ることができる。あるいは、無溶媒で加熱溶融し、水酸化ナトリウム等の触媒を加えて室温〜250℃でエステル交換反応させてアシル化合物を得ることができる。
【0063】
ガラスペースト組成物において、アシル化合物の割合は、ガラスペースト組成物100質量部に対してアシル化合物が0.001〜10質量部が好ましい。アシル化合物の割合が、0.001質量部以上で分散効果が得られ、また10質量部以下で、ガラス膜への残量やピンホールの発生が起こりにくくなる。より好ましくはガラスペースト組成物100質量部に対してアシル化合物が0.1〜5質量部である。
【0064】
ガラスペースト組成物中のガラス粉末は、特に限定されるものではないが、例えばケイ酸鉛系、ホウケイ酸鉛系、等のガラス粉末で、平均粒子径が0.1〜30μmのものが挙げられ、好ましくは0.1〜10μmのものである。ガラス粉末のガラスペースト組成物中における含量は特に限定するものではなく、用途、目的等に応じて適宜調製することができる。さらに、必要に応じて、ガラス粉末の軟化温度、熱膨張率、比表面積、平均粒子径を適宜選ぶことができる。
【0065】
ガラスペースト組成物の好ましい態様において、さらに有機バインダーを使用することで安定性を向上することができる。ここで有機バインダーは、焼成後に残存しないことが必要であり、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ノルメルブチル(メタ)アクリレレート、イソブチルメ(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のアクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール等のビニル系の非硬化型樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、ロジンエステル、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等の各種セルロース誘導体等の一般的にガラスペースト組成物にこれまで用いられた樹脂を用いることができ、特に限定はされない。ガラスペースト組成物中におけるバインダー含有量は、1〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましい。
【0066】
ガラスペースト組成物の好ましい態様において、溶媒としてはバインダーに対し良溶媒であることが好ましく、アルコール系、炭化水素系、エーテル系、エステル系の有機溶媒や水、またはこれらの混合溶媒を用いることができる。例えば、テルピネオール、ブチルカルビトール、カルビトールアセテート、テトラリン、ケロシン、デシルアルコール、デカン等を挙げることができる。
【0067】
ガラスペースト組成物において、上記の他必要に応じて、従来のガラスペースト組成物に通常用いられるような、高融点ガラスや、アルミナ、マグネシア、カルシア、コージュライト、シリカ、ムライト、ジルコン、ジルコニア等のセラミック粉末等のフィラー、またグリセリン、オレイン酸エチル、モノオレイン酸グリセリン、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、リン酸エステル、硫酸エステル、ポリアクリル酸またはその塩、ビニル−マレイン酸共重合体またはその塩、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物またはその塩、アシルアミノ酸またはその塩、ノニルフェニルエーテル系、オクチルフェニルエーテル系、アルキルアリルエーテル系、高分子エーテル系、脂肪酸時エタノールアミド等の分散剤や界面活性剤、また導電性金属粉末とキレート錯体を形成することができるエチレンジアミンやエチレンジアミン4酢酸またはその塩等のキレート化合物等、ポリエチレングリコール類、フタル酸エステル類、セバシン酸エステル類、アジピン酸エステル類、グリコール酸エステル類、クエン酸エステル類等の可塑剤、消泡剤、増粘剤、黒色または白色顔料、酸化防止剤、重合禁止剤等を適宜使用することができる。
【0068】
本発明のガラスペースト組成物は公知の方法で製造することが出来、例えば次のような方法によって製造することが出来る。
【0069】
ガラス粉末、有機バインダ、溶媒、アシル化合物および上記したようなその他の成分を撹拌機、またはボールミル、三本ロール、ニーダー等の混練機、解砕機等を用いて製造することができる。
【0070】
以下で、本発明を実施例等を用いてさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等の具体的態様に限定されるものではない。
【実施例1】
【0071】
各種物性の評価手段などは以下の通りである。
(ペースト安定性の評価)
【0072】
室温(25℃)で静置したガラスペースト組成物の長期間における沈降の有無を確認した。
評価基準
1か月以上沈降が確認されないもの ・・・ ○
1週間以上、1か月未満で沈降が確認されたもの ・・・ △
1週間未満で沈降が確認されたもの ・・・ ×
(ペースト凝集性の評価)
【0073】
室温で1週間静置したガラスペースト組成物をガラス板上に薄く延ばし、凝集物の有無を確認した。
評価基準
凝集物の確認されないもの ・・・ ○
明らかに凝集物が確認されるもの ・・・ ×
(アシル化合物の製造例1)
【0074】
L−リジン塩酸塩9.1g(0.05mol)を水57g中と混合した。この液を25%水酸化ナトリウム水溶液でpH範囲を10〜11に調整しながら、また反応温度を5℃に維持しながら、攪拌下にN−ラウロイル−L−グルタミン酸無水物31.1g(0.1mol)を2時間を要して添加し、反応を実施した。さらに30分攪拌を続けた後、ターシャリーブタノールを液中濃度20質量%となるように添加した後、75%硫酸を滴下して液のpH値を2に、また液の温度を65℃に調整した。滴下終了後、攪拌を停止し、20分間65℃で静置すると有機層と水層とに分層し、これから有機層を分離した。分離した有機層にターシャリーブタノールおよび水を添加して、温度を65℃にして20分攪拌した。攪拌停止後、静置すると有機層と水層とに分層した。得られた有機層に対して、同じ水洗操作をくり返した後、得られた有機層から溶媒を除去し、これを乾燥して式(4)に示すアシル化合物を含有する組成物を得た。
【0075】
【化4】

(アシル化合物の製造例2)
【0076】
製造例1において、N−ラウロイル−L−グルタミン酸無水物31.1gをN−ココイル−L−グルタミン酸無水物とした以外は、製造例1の方法と同じ条件で実施し、アシル化合物を含有する組成物を得た。
(アシル化合物の製造例3)
【0077】
製造例1において、N−ラウロイル−L−グルタミン酸無水物31.1gをN−ステアロイル−L−グルタミン酸無水物39.5gとし、反応温度を20℃とした以外は、製造例1の方法と同じ条件で実施し、アシル化合物を含有する組成物を得た。
[実施例1]
【0078】
ガラス粉末(PbO−B23系、平均粒子径5μm)75質量部、テルピネオール20質量部、エチルセルロース10質量部、製造例1のアシル化合物0.5質量部を分散剤とし、これらを3本ロールミルで混練してガラスペースト組成物を作成した。評価結果を表1に示す。
[実施例2]
【0079】
実施例1において、エチルセルロースの量を5質量部、製造例1のアシル化合物を製造例2のアシル化合物5質量部とした以外は、実施例1の方法と同じ条件で実施した。評価結果を表1に示す。
[実施例3]
【0080】
実施例2において、エチルセルロースの量を7質量部、製造例1のアシル化合物を製造例3のアシル化合物2質量部とした以外は実施例1と同じ条件で実施した。評価結果を表1に示す。
[比較例1]
【0081】
実施例1において、製造例1のアシル化合物を添加しなかった以外は、実施例1と同じ条件で実施した。評価結果を表1に示す。
[比較例2]
【0082】
実施例1において、製造例のアシル化合物をポリカルボン酸系界面活性剤(商標「ホモゲノールL−18」)とした以外は、実施例1と同じ条件で実施した。評価結果を表1に示す。
【0083】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内にアシル基と親水基とを2個以上ずつ有するアシル化合物の1種以上を含有することを特徴とするガラスペースト組成物。
【請求項2】
アシル化合物の少なくとも1種が、分子内にアミノ酸残基を有するものであることを特徴とする請求項1に記載のガラスペースト組成物。
【請求項3】
アシル化合物の少なくとも1種が、下記一般式(1)に示す化合物であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のガラスペースト組成物。
【化1】

(上記一般式(1)において、Xはm個の官能基、およびそれ以外の置換基を有していてもよい分子量100万以下の直鎖または分枝鎖または環状鎖または芳香族炭化水素鎖であるスペーサーであり、Xに結合しているn(m≧n)個のQは、下記一般式(2)で表される置換基で、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。下記一般式(2)において、ZはXの有する官能基に由来する結合部であり、R1COは炭素原子数2〜20の飽和または不飽和の脂肪酸から誘導されるアシル基を示し、R2は水素であるか、またはヒドロキシル基またはカルボキシル基が置換していてもよい炭素原子数1〜3の低級アルキル基を示し、Yはカルボキシル基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基またはそれらの塩を示し、j、kはそれぞれ独立に0、1、2のいずれかであり、かつj、kは同時に0ではない。nは2〜20の整数を示す。)
【化2】

【請求項4】
さらに有機バインダーと溶媒とを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガラスペースト組成物。

【公開番号】特開2006−232654(P2006−232654A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2005−235186(P2005−235186)
【出願日】平成17年8月15日(2005.8.15)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】