説明

ガラス入り防火戸

【課題】 ガラス入りの防火戸5において、安価な構成で、加熱時における防火ガラス板7の保持力低下を防止し、防火戸5の窓枠6から防火ガラス板7が脱落しないようにする。
【解決手段】 防火戸5の窓枠6に形成されたガラス溝10の両側壁10a内側に夫々耐熱性充填材11を固着し、これらによって間に嵌入された防火ガラス板7の周縁部を挟持し、ガラス溝10の両側壁10a内側と防火ガラス板7の周縁部と耐熱性充填材11下面とを耐熱性封止材12で封着し、耐熱性充填材11を加熱膨張性材料とする一方、ガラス溝10の両側壁10a外側を、ガラス溝拘束部材13の凹状部13aに嵌入し、ガラス溝拘束部材13によって外側に広がらないように拘束した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災時の延焼防止を目的とした防火設備のうち、特に防火区画や防火壁の開口部などに用いられるガラス入り防火戸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長時間の遮炎性能を要求される防火区画や防火壁の開口部、避難階段の出入口などに用いられる防火戸の防火ガラス板を保持する手段として、特許文献1および特許文献2に記載されている防火ガラスの支持構造や、特許文献3に記載されている防火戸のガラス窓枠構造が知られている。これらは、窓枠材に形成した凹状のガラス溝内に、防火ガラス板を耐熱性充填材等で拘束・保持し、耐熱性封止材でこれらを封着している。
上記防火戸は、特定防火設備として建築基準法施行令第112条の規定による認定が必要で、ISOに準ずる認定試験に合格する必要がある。この試験方法は、試験体を過熱炉に入れ、炉内温度を耐火標準加熱温度曲線に沿って加熱開始から60分間で945゜Cに加熱上昇して行なわれ、この間の遮炎性・遮煙性・非損傷性などの防火性能が検証される。
この試験中、ガラス板はその軟化点を越える温度に長時間さらされ、破断・破損を免れたとしても軟化することにより自重によって垂れ下がる。この時、窓枠材加熱に伴う変形によりガラス溝が開いてしまうので、耐熱性充填材によるガラス板の保持力が失われてガラス板が枠材から脱落し、上枠や縦枠との間に隙間を生じてしまうこととなる。この結果、その隙間からの火炎の噴出が発生し、所定の遮炎性を満足することができず、上記認定試験に不合格となるという問題があった。この問題を解決するために、特許文献1〜3に示すガラス板の脱落を防止する手段が講じられている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−192743号公報
【特許文献2】特開2001−132352号公報
【特許文献3】特開平9−60442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている防火戸のガラス窓枠構造は、枠体(窓枠)に形成されるガラス溝の一側縁に係止片を突設すると共に、防火用ガラス板の上縁または上縁と側縁に鋼製の抜止部材を固定して抜止部材がガラス溝内で係止片に当接して抜け止め規制するようにしたもので、熱により抜止部材や係止片が変形したり、固定螺子が緩んだり、あるいはガラス溝自体が広がって防火用ガラス板が脱落するおそれがある。また、防火戸を構成する部品点数が多くコスト高である。
特許文献2に記載されている防火ガラスの支持構造は、枠体に形成したガラス板取付凹部(ガラス溝)に把持金具を付設し、その把持金具で防火ガラス板の周縁部を把持し、両把持片とガラス板取付け凹所の両縦辺間に耐熱性充填材として加熱膨張性材料を介在させたものである。この方法は、加熱膨張性材料によりある程度の保持力が得られるが、特許文献1と同様に、熱でガラス板取付凹部自体が広がってしまえばその効果は失われる。また、防火戸を構成する部品点数が多くコスト高であり、質量の大きい防火ガラス板の保持や衝撃に対して、保持力が不足する問題がある。
特許文献3に記載されている防火戸のガラス窓枠構造は、溝部材(ガラス溝)と、その溝部材に接合される側枠部材が、溝部材の側部の内側に重合する側面部を有し、側部と側面部とを所要間隔でスポット溶接し、溝部材にガラス板が挿入され、窓枠が加熱されることで外面側にある側枠部材がより加熱され、溝部材より大きな熱変形を生じ、この為側面部先端が溝中心側に迫出し、ガラス板を保持してその変形を拘束するものであるが、熱変形によって鋼板を波打たせるには、スポット溶接のピッチを枠体の大きさに合わせてその都度変更、試験をするする必要があり経済的ではなく、質量の大きい防火ガラス板の保持に対して不確実である。また、窓枠をスポット溶接して製作するので、曲げ加工に比べてコスト高である。
また特許文献3に記載されている防火戸のガラス窓枠構造は、図6,7に示すように、窓枠の両端と溝部材に、窓枠を胴縁に連結するアンカーを溶接するためのアンカー取付部材を溶接して接合しているが、接合部とガラス板の保持部(溝部材の側部)との距離が離れているので、溝部材の広がりを防止する効果は無く、熱により溝部材が広がってガラス板が脱落するおそれがある。
本発明は、従来技術における上記問題点を解決するもので、安価な構成で、加熱時における窓枠のガラス板保持力の低下を防止し、窓枠から防火ガラス板が脱落しないガラス入り防火戸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、防火区画や防火壁の開口部を塞ぐ防火戸であって、窓枠に形成したガラス溝にガラス板を嵌入保持して構成したガラス入り防火戸において、ガラス溝内側に設けた耐熱性充填材でガラス板の周縁部を挟持し、ガラス溝とガラス板と耐熱性充填材とを耐熱性封止材で封着し、ガラス溝の両側壁外側をガラス溝拘束部材で拘束して両側壁が外側に広がらないようにしたことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1記の構成において、前記耐熱性充填材を加熱膨張性材料としたことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2の構成において、前記窓枠の外周に前記ガラス溝拘束部材を複数設け、ガラス溝拘束部材にアンカーの一端を固着し、他端を前記開口部の胴縁に固着して窓枠を前記防火壁に固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、加熱時において耐熱性充填材の防火ガラス板に対する保持力の低下を抑えることができ、窓枠から防火ガラス板の脱落を防止することができる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、加熱時における耐熱性充填材の膨張によって防火ガラス板の保持力が増加し、防火ガラス板の脱落防止に対してより効果的である。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2の効果に加えて、ガラス溝拘束部材にアンカーの一端を固着したので、アンカー取付部材を別途設ける必要が無く安価である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、防火区画や防火壁の開口部を塞ぐガラス入り防火戸の一例を示した図である。防火壁1は、防火戸5の窓枠4周囲に配設された胴縁3内側の開口部4を塞ぐ防火性能を有する防火戸5と、難燃性の壁材2で構成されている。
【0008】
図2は、防火戸5の固定部拡大図で、図3はその断面図である。防火戸5の窓枠6の外周には、アンカー取付部材8が複数設けられ、アンカー取付部材8に溶接した複数のアンカー9が開口部4の胴縁3に溶接されて、窓枠6が防火壁1に固定されている。
【0009】
図4は、実施形態の防火戸の窓枠構造を示す斜視図で、防火戸5は、窓枠6に形成されたガラス溝10に、防火ガラス板7が嵌入保持されて構成されている。ガラス溝10の両側壁10a内側には、夫々耐熱性充填材11が固着され、これらによって間に嵌入された防火ガラス板7の周縁部を挟持している。そして、ガラス溝10の両側壁内側と防火ガラス板7の周縁部と耐熱性充填材11下面とを耐熱性封止材12で封着している。耐熱性充填材11は、例えばセラミックウールなどの難燃材が使用され、本発明の実施の形態では、耐熱性充填材11を加熱膨張性材料であるセラミックファイバー複合材とした。これら耐熱性充填材11は弾力があり、この弾力が防火ガラス板7を窓枠6内に挟持する保持力となる。また、耐熱性封止材12は、例えばシリコンなどのシーリング剤である。
一方、ガラス溝10の両側壁10a外側は、ガラス溝拘束部材13の凹状部13aに嵌入され、ガラス溝拘束部材13で拘束されて両側壁10aが外側に広がらないようにしている。
本発明の実施の形態では、窓枠6の外周にガラス溝拘束部材13が複数設けられ、ガラス溝拘束部材13の両面に鉄筋棒からなる4本のアンカー9の一端が溶接され、他端が開口部4の胴縁3に溶接されて窓枠6が防火壁1に固定されている。すなわち、ガラス溝拘束部材13とアンカー取付部材8は同一部材である。
【0010】
上記のように構成された防火戸5は、窓枠6に形成されたガラス溝10の両側壁10a外側がガラス溝拘束部材13で拘束されているので、加熱時の熱によって広がらないため、耐熱性充填材11の防火ガラス板7に対する保持力の低下を抑えて、窓枠6から防火ガラス板7の脱落を確実に防止することができる。また、従来に比べて防火戸5を構成する部品点数が少なく、窓枠6にスポット溶接する必要もないため安価であり、質量の大きい防火ガラス板7の保持や衝撃に対しても有効である。
さらに、防火ガラス板7の周縁部を挟持する耐熱性充填材11を加熱膨張性材料としたので、耐熱性充填材11が加熱時の熱により膨張することで防火ガラス板7の保持力が増加し、防火ガラス板7の脱落防止に対してより効果的である。
また、ガラス溝拘束部材13にアンカー9の一端を溶接し、アンカー取付部材8とガラス溝拘束部材13と同一部材として兼用したので、窓枠6にアンカー取付部材8を別途設ける必要が無く経済的である。
【0011】
なお、本発明のガラス入り防火戸は、上記実施形態の態様に何ら制限されるものではなく、ガラス溝拘束部材の形状、構造、配置等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で必要に応じて適宜変更することができる。例えば、上記実施形態では、ガラス溝拘束部材に平板状のものを使用しているが、図5に示すように断面コの字状に形成したガラス溝拘束部材14を使用してもよい。これにより、ガラス溝10の両側壁10a外側が嵌入されるガラス溝拘束部材14の凹状部14aの箇所が多くなり、ガラス溝10の拘束力をより増すことができ、加熱持においてより強固に防火ガラス板7を保持することができる。
また、ガラス溝拘束部材13,14に固着されるアンカー9は、必ずしも複数用いる必要はなく、材料も鉄筋棒に限らず平鋼やH形鋼などでもよい。そして、固着方法も溶接に限らず、例えばボルトやナットで固定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態のガラス入り防火戸の一例を示す正面図である。
【図2】図1におけるII部の拡大図である。
【図3】図2のIII−III断面図である。
【図4】実施形態のガラス入り防火戸の窓枠構造を示す斜視図である。
【図5】ガラス溝拘束部材を示す斜視図である。
【図6】従来のガラス入り防火戸の窓枠構造を示す斜視図である。
【図7】従来のガラス入り防火戸の窓枠構造をを示す断面図である。
【符号の説明】
【0013】
1 防火壁
3 胴縁
4 開口部
5 防火戸
6 窓枠
7 防火ガラス(ガラス板)
8 アンカー取付部材
9 アンカー
10 ガラス溝
10a 両側壁
11 耐熱性充填材
12 耐熱性封止材
13,14 ガラス溝拘束部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防火区画や防火壁の開口部を塞ぐ防火戸であって、窓枠に形成したガラス溝にガラス板を嵌入保持して構成したガラス入り防火戸において、ガラス溝内側に設けた耐熱性充填材でガラス板の周縁部を挟持し、ガラス溝とガラス板と耐熱性充填材とを耐熱性封止材で封着し、ガラス溝の両側壁外側をガラス溝拘束部材で拘束して両側壁が外側に広がらないようにしたことを特徴とするガラス入り防火戸。
【請求項2】
前記耐熱性充填材を加熱膨張性材料としたことを特徴とする請求項1記載のガラス入り防火戸。
【請求項3】
前記窓枠の外周に前記ガラス溝拘束部材を複数設け、ガラス溝拘束部材にアンカーの一端を固着し、他端を前記開口部の胴縁に固着して窓枠を前記防火壁に固定したことを特徴とする請求項1または2記載のガラス入り防火戸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−133083(P2010−133083A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307117(P2008−307117)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000241588)豊和工業株式会社 (230)
【Fターム(参考)】