説明

ガラス基板の破損検出方法

【課題】ガラス基板の周囲に導電膜を形成し、導電膜の抵抗値を測定してそれの変化で導電膜の欠けや断線を検知し、それにより基板の破損を検出する。
【解決手段】ガラス基板1の周囲に切れ目なく導電膜2を形成し、その導電膜2に異なる位置で2本の引き出し線3を接続し、2本の引き出し線3間の抵抗値を測定してそれの変化を検知することでガラス基板の破損を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板の破損検出方法に関し、さらに詳しくは、たとえばプラズマディスプレイパネル(以下「PDP」と記す)のような薄型表示パネルに用いられるガラス基板の破損検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえばPDPのパネル基板(前面側および背面側の基板)に用いられるようなガラス基板の破損検出については、製造装置の処理工程に入れる前、あるいは製造工程から出した後に、CCDカメラやレーザー光利用の光学センサーなどにより形状を検出し、それによりガラス基板の破損を検出するようにしていた(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−181717
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、割れの基点となる基板周縁部の小さな欠けや、製造装置内での各種の処理前あるいは処理中に発生した割れを検出することは難しく、パネル製造中に基板に割れが生じた場合、製造装置にダメージを与えたり、割れたガラス基板の取り出しのために時間を要する、という問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、ガラス基板の周囲に導電膜を形成し、導電膜の抵抗値を測定してそれの変化で導電膜の欠けや断線を検知し、それにより基板の破損を検出するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ガラス基板の周囲に切れ目なく導電膜を形成し、その導電膜に異なる位置で2本の引き出し線を接続し、2本の引き出し線間の抵抗値を測定してそれの変化を検知することでガラス基板の破損を検出することからなるガラス基板の破損検出方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基板の微小な欠けでも導電膜の抵抗値が変化するので、微小な欠けの検出が容易となる。また、基板の周囲または側面に導電膜を切れ目なく形成するので、基板全周囲にわたって傷や欠けを隙間なく検出することができる。したがって、この系を製造装置に組み込むことで、製造工程の前後、および製造中における基板の割れや欠けを検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において、基板は、破損が生ずるものであればどのような材料で作製されたものであってもよいが、本発明は、主としてガラス基板等に好適に用いることができる。
【0009】
導電膜は、基板の周囲に切れ目なく形成されていればよいが、基板の側面の小さな欠けまで検出するためには、基板の側面に形成されていることが望ましい。導電膜は、導電性の材料で形成された膜であればよい。この導電膜は、当該分野で公知の各種の材料と方法を用いて形成することができる。導電膜に用いられる材料としては、例えば、ITO、SnO2(ネサ膜)、ZnOなどの透明な導電性材料や、Ag、Au、Al、Cu、Crなどの金属の導電性材料が挙げられる。導電膜の形成方法としては、当該分野で公知の各種の方法を適用することができる。たとえば、印刷などの厚膜形成技術を用いて形成してもよいし、物理的堆積法または化学的堆積法からなる薄膜形成技術を用いて形成してもよい。厚膜形成技術としては、スクリーン印刷法などが挙げられる。印刷法を用いる場合には、ペースト状の金属材料を印刷した後、焼成することで形成してもよい。また、メッキ法を適用することもできる。薄膜形成技術の内、物理的堆積法としては、蒸着法やスパッタ法などが挙げられる。化学的堆積方法としては、熱CVD法や光CVD法、あるいはプラズマCVD法などが挙げられる。
【0010】
本発明においては、導電膜に異なる位置で2本の引き出し線を接続する。この引き出し線としては、例えば銅や鉄などの金属製の導電性材料を適用すればよい。また、検知用接触子を代用してもよい。
【0011】
2本の引き出し線は、一方の引き出し線の接続点から他方の引き出し線の接続点に至る2つのルートの導電膜の長さが不均等になる位置に接続することが望ましい。具体的には、基板が矩形である場合には、2本の引き出し線を、基板の長辺の両端、または短辺の両端に接続することが望ましい。2本の引き出し線をこのように接続すると、一方の角部から他方の角部に至る2本の導電膜の長さが異なるので、2本の引き出し線間の抵抗値が変化した場合、その抵抗値によって、基板のどちらのルートの導電膜が断線しているのかが分かる。
【0012】
基板が矩形である場合、2本の引き出し線を、基板の対角線に位置する導電膜に接続してもよい。
【0013】
基板がPDP用のガラス基板である場合には、導電膜は、透明導電膜のパターニングによって透明電極を形成する際にガラス基板の周囲に残した透明導電膜を利用したものであってもよい。
【0014】
本発明においては、2本の引き出し線間の抵抗値を測定してそれの変化で導電膜の欠けや断線を検知し、それにより基板の破損を検出する。
【0015】
2本の引き出し線間の抵抗値を測定するには、2本の引き出し線間に乾電池などの直流電源を接続し、その電流値を測定することで2本の引き出し線間の抵抗値を測定することができる。
【0016】
以下、図面に示す実施例に基づいて本発明を詳述する。なお、本発明はこれによって限定されるものではなく、各種の変形が可能である。
【0017】
図1および図2は本発明の破損検出方法を示す説明図である。図1は基板の側面に導電膜を形成した例であり、図2は基板の平面上の周囲に導電膜を形成した例である。
【0018】
ガラス基板1は、たとえばPDPやLCD(液晶表示装置)、あるいはLED(有機EL表示装置)、FEDやSED(電子放出型平面表示装置)のような薄型表示パネルの前面側の基板または背面側の基板として使用されるガラス基板である。このガラス基板1は、複数枚の薄型表示パネル用のガラス基板を得るためのマザーボードであってもよいし、薄型表示パネル用に切断した後のガラス基板であってもよい。
【0019】
PDPのような薄型表示パネルの基板を複数枚切り出すマザーボードでは、ボードが大きいため、運搬時の微小な歪みや衝撃が大きな内部応力となってわずかな欠けからひび割れが発生することがある。したがって、本発明はこのような基板の割れや欠けの検出に好適に用いられる。
【0020】
本発明のガラス基板の破損検出方法では、まず、図1に示すように、ガラス基板1の側面(外周縁)に切れ目なく導電膜2を形成する。
【0021】
導電膜は、Cu、Agなどの金属の導電性材料を用いて形成する。この場合、形成方法はメッキ法を用いる。この他に、粒子状の材料にバインダー樹脂を加えてペースト状にした導電性材料を塗布することで形成してもよい。塗布後は焼成して、導電性材料を基板に融着させておくことが望ましいが、乾燥させるだけでもよい。
【0022】
導電膜は、ITO、SnO2(ネサ膜)、ZnOなどの導電性材料を用いて形成してもよい。この場合、形成方法は蒸着法やスパッタ法を用いる。導電膜2を成膜で形成した場合には、耐熱性があるので、パネルの製造工程で、例えば電極形成工程や誘電体層の形成工程のように、基板に加熱処理が施される場合でも導電膜2が消失したり、剥離することがない。
【0023】
導電膜2は、図2に示すように、ガラス基板1の平面上の周囲に形成してもよい。ガラス基板1の平面上の周囲とは、ガラス基板1の表面または裏面の周囲(表面周縁または裏面周縁)である。
【0024】
この場合、導電膜2を基板1の側面(外周縁)に形成する場合と比較して、導電膜2の形成位置が異なるだけで、用いる材料や形成方法は同じである。
【0025】
基板1がPDP用のガラス基板である場合、PDPの電極形成工程の際に同時に導電膜を形成するようにしてもよい。
【0026】
PDPの例えば前面側基板の製造工程では、ガラス基板の表面に透明電極を形成する場合、まず、基板全体にITOなどの透明導電膜を形成して、その上にレジストを形成する。そして、フォトリソの手法によりレジストをパターニングし、その後ウエットエッチングで不要な部分を除去することで、透明電極を形成するようにしている。
【0027】
したがって、基板全体に透明導電膜を形成して、レジストをパターニングする際、パターンを変更しておけば、製造工程の透明電極形成を利用して、基板1の周囲(表面周縁)に透明電極と同じ材料、例えばITOの導電膜2を形成することができる。
【0028】
このように、パネルの電極形成工程を利用することにより、製造装置の停止時間を短縮することができ、製造装置へ大きなダメージを与えることがなくなる。また、導電膜にITOのような比較的抵抗率の高いものを用いると、高い精度で基板の破損を検出することができる。
【0029】
図3および図4は導電膜の抵抗値を測定する状態を示す説明図である。
本発明のガラス基板の破損検出方法では、次に、導電膜2に異なる位置で2本の引き出し線3を接続する。そして、2本の引き出し線3の間に、例えば乾電池のような直流電源4を接続し、2本の引き出し線3のいずれか一方に直列に電流計5を接続する。そして、電流計5で2本の引き出し線3の間に流れる電流値を測定することで、導電膜2の抵抗値を測定する。引き出し線3には、銅や鉄などの金属製の導電性材料を用いる。電流計5は公知の電流計を用いる。
【0030】
図3に示すように、2本の引き出し線3は、基板1を周回する2つのルートの導電膜2に対し、導電膜2の長さが不均等になる位置に接続する。図では、基板1が矩形であるので、2本の引き出し線3を、基板1の長辺の両端に接続している。これは基板1の短辺の両端に接続してもよい。
【0031】
このように、2本の引き出し線3を、基板1の長辺の両端に接続した場合には、一方の引き出し線3の接続部から他方の引き出し線3の接続部に至る2本の導電膜2の長さが、L1>L2となるので、2本の引き出し線3間の抵抗値が変化した場合、その抵抗値によって、基板1のどちらのルートの導電膜2が断線しているのかが分かる。この点については後述する。
【0032】
図4に示すように、2本の引き出し線3は、基板1を周回する導電膜2に対し、導電膜2の長さを2等分する基板1の対角部に接続してもよい。ただし、基板1の対角部に接続すると、一方の引き出し線3の接続部から他方の引き出し線3の接続部に至る2本の導電膜2の長さが、L1=L2となるので、2本の引き出し線3間の抵抗値が変化しても、基板1のどちらのルートの導電膜2が断線しているのか不明である。したがって、2本の引き出し線3は、2つのルートの導電膜2の長さが不均等になる位置に接続することが望ましい。
【0033】
図5は導電膜の抵抗値を測定する場合の回路を示す説明図である。
本発明においては、次に、2本の引き出し線3間の抵抗値を測定することにより導電膜2の断線を調べ、それにより基板1の割れ・欠けなどを検出する。この抵抗値の測定は、電極形成、誘電体層形成等の各製造工程の前後に行って両者を比較してもよいし、製造途中で行ってもよく、任意の時点で行うことができる。
【0034】
基板1の側面または平面上の周囲に欠けが発生した場合、導電膜2の一部が欠損するため、導電膜2の抵抗値が変化する。したがって、電流計5で電流を測定して、導電膜の抵抗値を調べれば、導電膜2の欠損がわかる。
【0035】
例えば、直流電源4の電圧Eは一定であるので、導電膜L1の抵抗値をR1とし、導電膜L2の抵抗値をR2とすると、導電膜2が欠損していない場合には、合成抵抗値Rtは、Rt=(1/R1)+(1/R2)となり、電流値もそれに応じた値となる。
【0036】
したがって、基板1に電極形成や誘電体層形成等の各種の処理を施した後、電流値を測定し、RtがRt=R2となっていれば、導電膜L1が切断されていることがわかる。逆に、合成抵抗値RtがRt=R1となっていれば、導電膜L2が切断されていることがわかる。
【0037】
このように、片方の導電膜L1または導電膜L2が基板1の割れや欠けで切断されると、合成抵抗値が大きくなる。また、導電膜2の一部に欠けが発生すると、その部分の抵抗値が大きくなり、合成抵抗値が変化する。また、両方の導電膜L1および導電膜L2が切断されると、合成抵抗値が無限大になる。これにより、基板1の割れや欠けを検出することができる。
【0038】
そして、導電膜2の長さをL1≠L2にしておくと、電流値を測定して合成抵抗値Rtを算出することで、導電膜L1と導電膜L2のいずれが切断されたのかを判断することができる。
【0039】
この他に、導電膜の抵抗値の測定を、引き出し線の位置を変えて繰り返し行うことで、導電膜の切断された辺を特定することができる。また、各辺の導電膜の幅又は膜厚をそれぞれ異ならせて、各辺における導電膜の抵抗値を変えておくことにより、導電膜の切断された辺を容易に特定することができる。
導電膜のその他の機能としては、帯電されたガラス基板の除電を促すことができる。
【0040】
本発明のガラス基板の破損検出方法を、たとえばPDPやLCD、あるいはOLED、FED、SED等の製造工程に組み込むことにより、製造工程の前後、または製造中におけるガラス基板の割れや欠けを容易に検出することができる。なお、本発明のガラス基板の破損検出方法は、これらに限定されず、例えば半導体の製造にも応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の破損検出方法を示す説明図である。
【図2】本発明の破損検出方法を示す説明図である。
【図3】導電膜の抵抗値を測定する状態を示す説明図である。
【図4】導電膜の抵抗値を測定する状態を示す説明図である。
【図5】導電膜の抵抗値を測定する場合の回路を示す説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1 基板
2 導電膜
3 引き出し線
4 直流電源
5 電流計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板の周囲に切れ目なく導電膜を形成し、
その導電膜に異なる位置で2本の引き出し線を接続し、
2本の引き出し線間の抵抗値を測定してそれの変化を検知することでガラス基板の破損を検出することからなるガラス基板の破損検出方法。
【請求項2】
導電膜がガラス基板の側面に形成されてなる請求項1記載のガラス基板の破損検出方法。
【請求項3】
ガラス基板が矩形の基板からなり、各辺の導電膜の幅又は厚さをそれぞれ異ならしてなる請求項1記載のガラス基板の破損検出方法。
【請求項4】
2本の引き出し線が、一方の引き出し線の接続点から他方の引き出し線の接続点に至る2つのルートの導電膜の長さが不均等になる位置に接続されてなる請求項1記載のガラス基板の破損検出方法。
【請求項5】
ガラス基板が矩形の基板からなり、2本の引き出し線が、基板の長辺の両端、または短辺の両端に接続されてなる請求項1記載のガラス基板の破損検出方法。
【請求項6】
ガラス基板が矩形の基板からなり、2本の引き出し線が、基板の対角線に位置する導電膜に接続されてなる請求項1記載のガラス基板の破損検出方法。
【請求項7】
ガラス基板が、プラズマディスプレイパネル用のガラス基板からなり、
導電膜が、透明導電膜のパターニングによって透明電極を形成する際にガラス基板の周囲に残した透明導電膜を利用したものである請求項1記載のガラス基板の破損検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−258746(P2006−258746A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−79856(P2005−79856)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(599132708)富士通日立プラズマディスプレイ株式会社 (328)
【Fターム(参考)】