ガラス基板用熱処理装置
【課題】ガラス基板用熱処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
炉体内部に配設したヒータで被処理物を加熱する熱処理装置において、前記ヒータは発熱体よりなるヒータ本体を、中空金属製のケース状の熱板中に収納して構成すると共に、熱板の両端間に熱板よりも熱膨張率の小さい金属製の緊張手段を介設することにより熱板にテンションを掛けるべく構成してなる熱処理装置である。また、炉体内部に配設したヒータで被加熱物を加熱する熱処理装置において、前記ヒータは、発熱体よりなるヒータ本体を中空金属製のケース状の熱板中に収納して構成すると共に、補強材の立上げ壁を熱板に貫通し、補強材の一側端部を炉体フレームに固定し、他側端部には熱膨張を吸収可能な熱膨張吸収機構を設けたことを特徴とする熱処理装置である。
【解決手段】
炉体内部に配設したヒータで被処理物を加熱する熱処理装置において、前記ヒータは発熱体よりなるヒータ本体を、中空金属製のケース状の熱板中に収納して構成すると共に、熱板の両端間に熱板よりも熱膨張率の小さい金属製の緊張手段を介設することにより熱板にテンションを掛けるべく構成してなる熱処理装置である。また、炉体内部に配設したヒータで被加熱物を加熱する熱処理装置において、前記ヒータは、発熱体よりなるヒータ本体を中空金属製のケース状の熱板中に収納して構成すると共に、補強材の立上げ壁を熱板に貫通し、補強材の一側端部を炉体フレームに固定し、他側端部には熱膨張を吸収可能な熱膨張吸収機構を設けたことを特徴とする熱処理装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板に熱処理を施す熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フラットパネルディスプレイ用(LCD、PDP、有機EL用等)のガラス基板に熱処理を施すために、ガラス基板毎にヒータを備えた多段式の熱処理装置または単段式の熱処理装置が知られている。各段のヒータは、被加熱物(ガラス基板等)の温度分布を考慮して、マイカヒータ等の面状ヒータをアルミニウム合金製の熱板に挟んだ構成を有するのが一般的である。熱板にアルミニウム合金を採用する理由としては、熱導電率が良好であり、熱放射率がアップするための表面処理が容易であり、軽量であり安価であることが挙げられる。
【0003】
最近では、例えば特許文献1に記載のように、コスト削減の目的のため、成形品のアルミニウム部材にシーズヒータを部分的に挿入した熱処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−175868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、面状ヒータをアルミニウム合金製の熱板に挟着したものは、ヒータの熱により、熱板がクリープによって撓んだり、変形したりする欠点があった。前記クリープとは、物体に接続応力が作用すると時間の経過と共に撓みが増大する現象である。
【0006】
前記のようなクリープを防ぐには熱板の熱剛性を高める必要があるが、熱剛性を高めると全体の高さが肉厚となり重量が増してしまう。また、肉厚の分だけ熱板のコストアップとなる。更に、ガラス基板の処理空間を確保するために段ピッチを大きく取ると、熱板の肉厚の分だけ熱処理装置全体の容量がアップしてコスト的にも不利となり、熱処理装置全体の加熱効率も低下すると共に、熱の均一性も損なわれる欠点があった。
【0007】
また、一般に熱板の撓みを防止するために支持部材で強制的に熱板の変形規制を行っている場合があるが、かかる支持部材の存在によって熱板の段ピッチが更に大きくなる等の支障を生起し、更に支持部材が熱放射の妨げとなって熱放射が不均一となり下段の被加熱物(ガラス基板)の温度分布が悪化する虞があった。
【0008】
かかる問題を考慮して前記特許文献1(特開2002−175868号公報)では、コストを低減する目的で方形状の箱型アルミニウム材よりなる発熱ケース中にシーズヒータを挿入したものが開示されている。しかし、この技術は線状のシーズヒータの発熱体が箱型のアルミニウム材である発熱ケースの貫通孔に挿入されただけであるため、加熱機能を十分に発揮することはできない。従って、発熱体を内蔵した熱板の温度分布にムラが生起しやすく、被加熱物の基板の温度精度を出しにくい欠点があった。
【0009】
また、発熱ケース中の貫通孔内面とその中に挿入されるシーズ管巻ヒータとは、線接触状態ではあるが、大半部は非接触状態でその間には間隙があるため発熱ケース中の貫通孔内は空間の多い状態となっている。従って、接触部分ではヒータから発熱ケースに熱が伝熱されるためシーズ管内に熱が滞留することはないが、大半を占める非接触部分では、伝導機能が阻害されてシーズ管内に熱が滞留して過熱状態となり、接触部分と非接触部分との温度差や熱膨張差による頻繁な熱応力によってシーズ管が割れるなどの損傷を生起し、発熱体の絶縁破壊を生じ、ヒータ等の発熱体の寿命が短くなる欠点を有していた。
【0010】
この発明は、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板に熱処理を施すための熱板の撓みを防止する熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、炉体内部に配設したヒータで被処理物を加熱する熱処理装置において、前記ヒータは発熱体よりなるヒータ本体を、中空金属製のケース状の熱板中に収納して構成すると共に、熱板の両端間に熱板よりも熱膨張率の小さい金属製の緊張手段を介設することにより熱板にテンションを掛けるべく構成してなる熱処理装置を提供せんとするものである。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、また、緊張手段は、熱板の材料よりも高強度で熱膨張率の小さい金属であることを特徴とする熱処理装置を提供せんとするものである。
【0013】
請求項3に記載の発明は、炉体内部に配設したヒータで被加熱物を加熱する熱処理装置において、前記ヒータは、発熱体よりなるヒータ本体を中空金属製のケース状の熱板中に収納して構成すると共に、補強材の立上げ壁を熱板に貫通し、補強材の一側端部を炉体フレームに固定し、他側端部には熱膨張を吸収可能な熱膨張吸収機構を設けたことを特徴とする熱処理装置を提供せんとするものである。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、発熱体よりなるヒータ本体は、面状の短冊形状を有しており、熱板内への挿入本数により熱板に対する占有面積を自在に調整可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1、2に記載に発明によれば、炉体内部の熱板中に収納したヒータ本体は、発熱体より構成すると共に熱板の両端に熱板よりも熱膨張率の小さい金属製の緊張手段を介設しているので、熱板の熱膨張を生起してもそれよりも小さい緊張手段の熱膨張率によって、熱板にテンションを掛けることができ、熱膨張による撓みを抑制することができる。従って、従来の熱板のように熱膨張による撓みを抑制するため熱板に厚みを増すなどの剛性を付与する構造を必要とせず、全体的に軽量化できる効果があり、その分炉体構造への重量負荷を可及的に低減することができる。同時に厚みを増す必要がないので熱板の段ピッチがその分小さくなり炉内の収納効率が高まり熱処理の作業効率も向上することができる効果がある。
【0016】
しかも、緊張手段も軽量化して熱板中に収納可能な構成とすれば、熱板の外周辺に熱線を妨げる異物がなくなるため被加熱物の温度分布に支障をきたす虞を解消することができる効果がある。
【0017】
このように、本発明では熱板にテンションを掛けて撓みを低減する構成であるため、重量の軽量化は勿論のこと、炉体の強度も上げる必要がなく、炉体の製造コストを廉価にすることができる。更には、熱処理装置の熱板容積を可及的に小さくできるため、過熱処理開始のための立上げ時間や終了時の立下げ時間が従来に比して短縮することができることになり、炉内のメンテナンス性を良好とすることができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、補強材を熱板の立上げ壁に貫通してその少なくとも一側端部には熱膨張吸収機構を設けているため、熱板の熱膨張を生起してもそれよりも小さい熱膨張率を有する補強材によって、熱板に直進性を付加することができ、熱膨張による撓みを抑制することができることになり、請求項1、2に記載と同様の効果を生起することができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、発熱体よりなるヒータ本体は、面状の短冊形状を有しており、熱板内への挿入本数により熱板に対する占有面積を自在に調整可能としたことにより、熱板全体の重量が低減されて熱板の撓みを可及的に抑制することができ、コスト的にも有利となる効果がある。更には、面状ヒータであるため熱板と面接触となって接触面積が可及的に大となるため、熱板の温度の均一化を図り、また、部分的な過熱状態も回避することができるためヒータ寿命も延ばすことができる。特に、面状ヒータとしての面接触によって発熱体の部分過熱を解消でき、熱板の温度分布にムラがなくなる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1におけるガラス基板用熱処理装置の概略構成を示した正面図である。
【図2】実施例1におけるガラス基板用熱処理装置の右側面視における断面を模式的に示した説明図である。
【図3A】実施例1におけるガラス基板用熱処理装置の熱板の構造を示した斜視図である。
【図3B】実施例1におけるガラス基板用熱処理装置の緊張手段を備えた熱板の構造を示した斜視図である。
【図3C】実施例1におけるガラス基板用熱処理装置の緊張手段を備えた熱板の構造を示した斜視図である。
【図4】実施例1におけるガラス基板用熱処理装置の左右支持フレームに横架された熱板の状態に示した側面図である。
【図5A】実施例2におけるガラス基板用熱処理装置の熱板の一端側の構造を示した斜視図である。
【図5B】実施例2におけるガラス基板用熱処理装置の熱板の他端側の構造を示した斜視図である。
【図6】実施例2におけるガラス基板用熱処理装置の左右支持フレームに横架された熱板の状態に示した側面図である。
【図7】実施例2におけるガラス基板用熱処理装置の補強材の一端部の固定構造を示した側面図である。
【図8】実施例2におけるガラス基板用熱処理装置の補強材の他端部の熱膨張吸収機構を示した側面図である。
【図9】実施例2におけるガラス基板用熱処理装置の熱板の撓み状態を説明する説明図である。
【図10】実施例2におけるガラス基板用熱処理装置のヒータの構造を示した斜視図である。
【図11】実施例1及び実施例2におけるガラス基板用熱処理装置の支持フレームが削除できる効果を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の熱処理装置は、ヒータを、発熱体よりなるヒータ本体をアルミニウム合金により押し出し成型した中空金属製のケース状の熱板中に収納して構成すると共に、熱板の両端間に熱板よりも熱膨張率の小さい金属製の緊張手段を介設することにより熱板にテンションを掛けるべく構成している。また、緊張手段は、熱板の材料よりも高強度で熱膨張率の小さいSUSなどの金属製のワイヤ又は丸棒としている。
【0022】
熱板の材料であるアルミニウム合金は、厚さを10mm〜50mm程度としている。
このように構成することにより、熱板の熱膨張を生起してもそれよりも小さい緊張手段の熱膨張率によって、熱板にテンションを掛けることができ、熱膨張による撓みを抑制することができる。このような構成により熱板の撓み防止を図ることができるので、熱板に厚みを増すなどの剛性を付与する構造を必要とせず、全体的に小型軽量化でき、炉体構造への重量負荷を可及的に低減することができ、かつ、熱板の段ピッチがその分小さくなり炉体の収納効率が高まる。
【0023】
また、他の実施例として、前記ヒータは、発熱体よりなるヒータ本体を中空金属製のケース状の熱板中に収納して構成すると共に、補強材を熱板の立上げ壁に貫通し、補強材の一側端部を炉体フレームに固定し、他側端部には熱膨張を吸収可能な熱膨張吸収機構を設けている。
【0024】
従って、熱板が熱膨張による撓みを生起せんとしても、熱板の熱膨張率よりも小さい補強材によって、熱膨張による熱板の撓みに対して直進性を付与して可及的に撓みを抑制することができることになり、上記した緊張手段によるテンションを熱板にかけるのと同様の効果を生起することができる。
【0025】
また、発熱体よりなるヒータ本体は、マイカ、セラミックなどの面状ヒータとし、熱板の内底面の面積の略1/2〜1/4の面積に形成している。
すなわち、熱板と面状ヒータの面積比は3:1程度が望ましい。
【0026】
特に、熱板内に収納する面状ヒータをアルミニウム合金などの熱伝導効率の良好な挟着材料で両面から挟着すると熱板の温度分布がより均一となり、発熱体の部分的な過熱状態も抑制することができる。
【0027】
更には、面状ヒータであるため熱板と面接触となって接触面積が可及的に大となるため、熱板の温度の均一化を図り、また、部分的な過熱状態も回避することができるためヒータ寿命も延ばすことができる。特に、面状ヒータとしての面接触によって発熱体の部分過熱を解消でき、熱板の温度分布にムラがなくなる。
【0028】
(実施例1)
以下、実施例1に係る熱処理装置について、図面を参照しながら詳説する。
【0029】
図1は、実施例1としてのガラス基板用熱処理装置Aの正面図を示している。
【0030】
図示するように、このガラス基板用熱処理装置Aは、箱型に形成した炉体1を備えており、内周面に断熱材(図示せず)またはヒータを貼設して、炉体1からの放熱を断熱したり、熱量を補うようにしたりしている。
【0031】
この炉体1の内部には、後述する加熱室3を多段に形成し、また、炉体1の前面部20には、各加熱室3に対応する位置を開口して基板収納口4を形成しており、炉外から基板収納口4を介して加熱室3にガラス基板Gをそれぞれ挿入し、複数のガラス基板Gを200〜300℃程度に加熱できるようにしている。
【0032】
また、炉体1の右側面部21及び左側面部22には、軸支持板23,23を立設しており、この両軸支持板23,23の間に枢軸6を炉体1の左右方向に向けて横架している。
【0033】
そして、この枢軸6には、前記基板収納口4を開閉する正面視略矩形状の開閉蓋5が軸支されており、上下方向に開閉可能としている。また、開閉蓋5は、正面視における面積が、基板収納口4よりも大となるようにしている。
【0034】
次に、実施例1に係るガラス基板用熱処理装置Aの内部構造について説明する。
【0035】
図2は、右側面視における断面を模式的に示した図である。
【0036】
図2に総合的に示すように、ガラス基板用熱処理装置Aの内部は、通電により発熱可能としたヒータ32を所定間隔を空けながら多段(本実施形態では8段)に配設している。
【0037】
そして、このヒータ32で上下に挟まれた空間を、加熱室3としている。すなわち、本実施形態におけるガラス基板用熱処理装置Aの内部には、加熱室3を7段形成している。図2中、2はガラス基板Gを支持する基板支持部材である。8は炉体1の背面を形成する背面板である。
【0038】
ヒータ32は、後にその構成を詳説するが、発熱体よりなるヒータ本体19を中空金属製のケース状の熱板11中に収納して構成すると共に、熱板11の両端間に熱板11よりも熱膨張率の小さい金属性の緊張手段を介設して熱板11にテンションを掛けるべく構成しており、このように構成することにより上下両面から熱を放射可能に形成しており、一つのヒータ32で、上下両側の加熱室3に収納したガラス基板Gを加熱することができる。
【0039】
すなわち、各加熱室3について着目すると、図2に示すように、加熱室3は、同加熱室3の内部に収納したガラス基板Gに対して、上面側に配設したヒータ32と、下面側に配設したヒータ32とで両面から加熱可能としている。
【0040】
また、各加熱室3の基板収納口4近傍には、炉体1の右側面部21及び左側面部22に両端を固定した前面支柱7が左右幅方向へ向けて固定してある。
【0041】
また、この加熱室3には、支持フレーム30を炉体1の前後方向(ガラス基板Gの挿入方向)に向けて複数本(本実施例では2本)配設している。
【0042】
次に、本発明のヒータ32の詳細について説明する。
まず、熱板11は、図3Aに示すように、例えば押出成型法によって前述の通り中空金属製のケース状にしており、方形状のケース状体の内部に補強用リブを兼ねて熱板11の長手方向に多数の仕切壁16を設けている。
【0043】
従って、この仕切壁16で形成される長手空間中に発熱体よりなるヒータ本体19、例えば、図10に示すように、マイカ、セラミック等の面状ヒータ19´を収納し、熱板11の内底面に配置する。
【0044】
このように形成された熱板11をガラス基板Gの挿入方向に多数個並設することにより、各段におけるヒータ32を構成する。各熱板11はその両端部を前記支持フレーム30により支持される。
【0045】
他方、この仕切壁16で形成された長手空間中には緊張手段として、熱板11の長手方向に沿って、金属製、例えば、SUS規格のワイヤ12(或いは丸棒)を挿通している。
【0046】
この緊張手段としてのワイヤ12は、熱板11と比較して熱膨張率の小さい金属であり、その両端は図3B及び図3Cに示すように、熱板11の前後側壁31から外部へ挿貫しており、ブラケット13を介して自由端部を前後側壁31に固定している。
【0047】
図3B及び図3C中、14は断面略コの字形状のブラケット13の基端部を折曲して形成した取付部であり、この取付部14によって、ブラケット13を熱板11の前後側壁31に突設固定する。15は取付用のボルトを示す。また、図3A中、17は中空ケースに形成された仕切壁16の下部に一部開口したワイヤ挿入溝であり、このワイヤ挿入溝17は熱板11の長手方向に沿って形成されたものである。
【0048】
すなわち、緊張手段としてのワイヤ12の両端は、熱板11の前後側壁31に突設した断面略コ字形状のブラケット13の天井部から突出させて、その突出端部Jに形成されたネジ部には締付け緊張ボルト18を螺合している。
【0049】
したがって、図4に示すように、締付け緊張ボルト18を螺進することにより、熱板11の前後側壁31間に架設状態のワイヤ12は中空ケースの熱板11間で緊張されて熱板11の前後方向にテンション負荷をかけることができる。
【0050】
なお、本実施例では、ワイヤ12を熱板11の左右両側下部にそれぞれ設けているが、ワイヤ12の本数と取り付け箇所は本実施例に限られず、ワイヤ12の本数を1本にしたり、ワイヤ12の取り付け箇所の熱板の上部に配設したりすることもできる。
【0051】
このように構成することにより、熱板11の前後方向にワイヤ12によるテンション負荷がかかると、加熱炉中で熱板11が熱膨張して変形や撓みを生起せんとしても、テンション負荷によって熱膨張による変形や撓みを阻止することができる。
【0052】
この結果、熱板11を薄く形成すると共に軽量にすることができ、段ピッチを小さくすることができる。また、ワイヤ12が軽量であり、しかもそのワイヤ12を熱板11内に収納するような構造とするため、ワイヤ12による熱放射の妨げが生起されることなく、ガラス基板Gへの熱放射の均一性をより高めることができる。
【0053】
(実施例2)
この発明の実施例2は、熱板11中に仕切壁16にて形成された長手状空間中に挿貫した補強材25によって、熱板11の熱膨張による変形や撓み等を防止するものである。
【0054】
すなわち、図5A及び図5Bに示すように、補強材25はアルミニウム合金よりも高温に強い材料、例えば、SUS規格の金属を用い、熱膨張率も熱板11よりも小さくしている。補強材25は角材形状として熱板11の仕切壁16間の空間に挿貫して、その両端を炉体内部に配設した支持フレーム30上に載置固定している。
【0055】
その載置固定構造としては、図7に示すように、補強材25の端部に縦孔26を形成し、縦孔26中に固定ボルト28を挿貫して支持フレーム30上に補強材25の端部を載置固定している。これにより、補強材25の端部が支持フレーム30に固定され、熱板11の撓みによる変形を補強材25の直進性によって防止している。
【0056】
また、図7に示すように、補強材25の端部と支持フレーム30との間には一定のクリアランスを保持すべく、支持スペーサ29を介設しており、この支持スペーサ29によって補強材25は熱板11の内底面に密着することなく熱板11の中心部分に一定のクリアランスを保持して挿貫されるようにしている。
【0057】
図8に示すように、補強材25の一方の端部には、スペーサ用パイプ27を挿貫し、該スペーサ用パイプ27の上端より固定ボルト28を挿貫して支持フレーム30上に補強材25を載置している。
【0058】
スペーサ用パイプ27は、支持スペーサ29と補強材25との重畳した厚みよりもやや長い高さを有して形成されており、補強材25の伸長を後述する長孔34で吸収しやすくしている。
【0059】
しかも、補強材25の一方の端部には、図8に示すように、熱膨張吸収機構36を設けている。熱膨張吸収機構36は、補強材25が炉内加熱により多少熱膨張した場合、膨張分を吸収すべく、補強材25端部に形成した長孔34であり、その長孔34中には金属製のスペーサ用パイプ27(カラー)を挿貫し、固定ボルト28を挿入したスペーサ用パイプ27は長孔34中を摺動して補強材25の膨張を吸収しながら補強材25と支持フレーム30との載置状態を維持している。
【0060】
このように、支持フレーム30に補強材25が密着して摺動不可とならないようにスペーサ用パイプ27の高さにより補強材25に一定のガタを形成して長孔34を介して補強材25が摺動可能としている。
【0061】
このように構成することにより補強材25に常に直進性を保持させておくことができ、図9に示すように、ガラス基板Gに熱処理を施す温度帯(略300℃)では、熱板11が熱膨張により撓んで反り返り等の変形をしようとしても、補強材25の直進性により、変形が規制されて熱板11そのものの水平形状を保持(図6に示す)できる。
【0062】
なお、補強材25の形状は自身のもつ直進性を利用して熱板11の変形を矯正するものであるため、補強材25を挿貫する仕切壁16の断面空間と補強材25の各断面形状は、例えば、矩形状の相似形或いは横幅密着状態としておくとよい。このような形状とすることにより、熱板11の長手方向の熱膨張変形のみならず、幅方向の変形にも対応することが可能となる。
【0063】
また、図10に示すように、発熱体よりなるヒータ本体19は、マイカやセラミックの面状ヒータ19´とすることにより、熱板11との面接触による密着性を可及的に向上することができ、熱の均一分布機能を更に良好にすることができる。図中、33は、ヒータ本体19に給電する電線である。
【0064】
また、かかる面状ヒータ19´をアルミニウム合金等の熱伝導率の良好な挟着材料35で挟着しておくと、熱板11の温度分布が一層均一化されて、部分的な過熱を抑制することができる。
【0065】
更には、アルミニウム合金製の押出し成形品である熱板11は厚さを略10〜50mmとし、熱板11内底面と面状ヒータ19´との面積比は例えば略3:1となるような短冊形状の面状ヒータ19´の貼着をすることにより、熱板11の温度分布をより均一化できる。
【0066】
また、ヒータ本体19の面積を小さくした分、熱板11の重量及びコストを低減することができる。なお、このヒータ本体19の面積低減構造は、上記実施例1にも適用することができる。
【0067】
さらに、実施例1及び実施例2とも、図11に示すように、熱板11の撓みを防止できるので、従来熱処理装置Aの中央に配設していた支持フレーム30を削除することができ、その支持フレーム30による伝熱の妨げを低減することができ、ガラス基板Gへの熱放射をより均一にすることができる。
【符号の説明】
【0068】
A ガラス基板用熱処理装置
1 炉体
11 熱板
12 ワイヤ
25 補強材
32 ヒータ
36 熱膨張吸収機構
【技術分野】
【0001】
この発明は、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板に熱処理を施す熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フラットパネルディスプレイ用(LCD、PDP、有機EL用等)のガラス基板に熱処理を施すために、ガラス基板毎にヒータを備えた多段式の熱処理装置または単段式の熱処理装置が知られている。各段のヒータは、被加熱物(ガラス基板等)の温度分布を考慮して、マイカヒータ等の面状ヒータをアルミニウム合金製の熱板に挟んだ構成を有するのが一般的である。熱板にアルミニウム合金を採用する理由としては、熱導電率が良好であり、熱放射率がアップするための表面処理が容易であり、軽量であり安価であることが挙げられる。
【0003】
最近では、例えば特許文献1に記載のように、コスト削減の目的のため、成形品のアルミニウム部材にシーズヒータを部分的に挿入した熱処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−175868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、面状ヒータをアルミニウム合金製の熱板に挟着したものは、ヒータの熱により、熱板がクリープによって撓んだり、変形したりする欠点があった。前記クリープとは、物体に接続応力が作用すると時間の経過と共に撓みが増大する現象である。
【0006】
前記のようなクリープを防ぐには熱板の熱剛性を高める必要があるが、熱剛性を高めると全体の高さが肉厚となり重量が増してしまう。また、肉厚の分だけ熱板のコストアップとなる。更に、ガラス基板の処理空間を確保するために段ピッチを大きく取ると、熱板の肉厚の分だけ熱処理装置全体の容量がアップしてコスト的にも不利となり、熱処理装置全体の加熱効率も低下すると共に、熱の均一性も損なわれる欠点があった。
【0007】
また、一般に熱板の撓みを防止するために支持部材で強制的に熱板の変形規制を行っている場合があるが、かかる支持部材の存在によって熱板の段ピッチが更に大きくなる等の支障を生起し、更に支持部材が熱放射の妨げとなって熱放射が不均一となり下段の被加熱物(ガラス基板)の温度分布が悪化する虞があった。
【0008】
かかる問題を考慮して前記特許文献1(特開2002−175868号公報)では、コストを低減する目的で方形状の箱型アルミニウム材よりなる発熱ケース中にシーズヒータを挿入したものが開示されている。しかし、この技術は線状のシーズヒータの発熱体が箱型のアルミニウム材である発熱ケースの貫通孔に挿入されただけであるため、加熱機能を十分に発揮することはできない。従って、発熱体を内蔵した熱板の温度分布にムラが生起しやすく、被加熱物の基板の温度精度を出しにくい欠点があった。
【0009】
また、発熱ケース中の貫通孔内面とその中に挿入されるシーズ管巻ヒータとは、線接触状態ではあるが、大半部は非接触状態でその間には間隙があるため発熱ケース中の貫通孔内は空間の多い状態となっている。従って、接触部分ではヒータから発熱ケースに熱が伝熱されるためシーズ管内に熱が滞留することはないが、大半を占める非接触部分では、伝導機能が阻害されてシーズ管内に熱が滞留して過熱状態となり、接触部分と非接触部分との温度差や熱膨張差による頻繁な熱応力によってシーズ管が割れるなどの損傷を生起し、発熱体の絶縁破壊を生じ、ヒータ等の発熱体の寿命が短くなる欠点を有していた。
【0010】
この発明は、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板に熱処理を施すための熱板の撓みを防止する熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、炉体内部に配設したヒータで被処理物を加熱する熱処理装置において、前記ヒータは発熱体よりなるヒータ本体を、中空金属製のケース状の熱板中に収納して構成すると共に、熱板の両端間に熱板よりも熱膨張率の小さい金属製の緊張手段を介設することにより熱板にテンションを掛けるべく構成してなる熱処理装置を提供せんとするものである。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、また、緊張手段は、熱板の材料よりも高強度で熱膨張率の小さい金属であることを特徴とする熱処理装置を提供せんとするものである。
【0013】
請求項3に記載の発明は、炉体内部に配設したヒータで被加熱物を加熱する熱処理装置において、前記ヒータは、発熱体よりなるヒータ本体を中空金属製のケース状の熱板中に収納して構成すると共に、補強材の立上げ壁を熱板に貫通し、補強材の一側端部を炉体フレームに固定し、他側端部には熱膨張を吸収可能な熱膨張吸収機構を設けたことを特徴とする熱処理装置を提供せんとするものである。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、発熱体よりなるヒータ本体は、面状の短冊形状を有しており、熱板内への挿入本数により熱板に対する占有面積を自在に調整可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1、2に記載に発明によれば、炉体内部の熱板中に収納したヒータ本体は、発熱体より構成すると共に熱板の両端に熱板よりも熱膨張率の小さい金属製の緊張手段を介設しているので、熱板の熱膨張を生起してもそれよりも小さい緊張手段の熱膨張率によって、熱板にテンションを掛けることができ、熱膨張による撓みを抑制することができる。従って、従来の熱板のように熱膨張による撓みを抑制するため熱板に厚みを増すなどの剛性を付与する構造を必要とせず、全体的に軽量化できる効果があり、その分炉体構造への重量負荷を可及的に低減することができる。同時に厚みを増す必要がないので熱板の段ピッチがその分小さくなり炉内の収納効率が高まり熱処理の作業効率も向上することができる効果がある。
【0016】
しかも、緊張手段も軽量化して熱板中に収納可能な構成とすれば、熱板の外周辺に熱線を妨げる異物がなくなるため被加熱物の温度分布に支障をきたす虞を解消することができる効果がある。
【0017】
このように、本発明では熱板にテンションを掛けて撓みを低減する構成であるため、重量の軽量化は勿論のこと、炉体の強度も上げる必要がなく、炉体の製造コストを廉価にすることができる。更には、熱処理装置の熱板容積を可及的に小さくできるため、過熱処理開始のための立上げ時間や終了時の立下げ時間が従来に比して短縮することができることになり、炉内のメンテナンス性を良好とすることができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、補強材を熱板の立上げ壁に貫通してその少なくとも一側端部には熱膨張吸収機構を設けているため、熱板の熱膨張を生起してもそれよりも小さい熱膨張率を有する補強材によって、熱板に直進性を付加することができ、熱膨張による撓みを抑制することができることになり、請求項1、2に記載と同様の効果を生起することができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、発熱体よりなるヒータ本体は、面状の短冊形状を有しており、熱板内への挿入本数により熱板に対する占有面積を自在に調整可能としたことにより、熱板全体の重量が低減されて熱板の撓みを可及的に抑制することができ、コスト的にも有利となる効果がある。更には、面状ヒータであるため熱板と面接触となって接触面積が可及的に大となるため、熱板の温度の均一化を図り、また、部分的な過熱状態も回避することができるためヒータ寿命も延ばすことができる。特に、面状ヒータとしての面接触によって発熱体の部分過熱を解消でき、熱板の温度分布にムラがなくなる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1におけるガラス基板用熱処理装置の概略構成を示した正面図である。
【図2】実施例1におけるガラス基板用熱処理装置の右側面視における断面を模式的に示した説明図である。
【図3A】実施例1におけるガラス基板用熱処理装置の熱板の構造を示した斜視図である。
【図3B】実施例1におけるガラス基板用熱処理装置の緊張手段を備えた熱板の構造を示した斜視図である。
【図3C】実施例1におけるガラス基板用熱処理装置の緊張手段を備えた熱板の構造を示した斜視図である。
【図4】実施例1におけるガラス基板用熱処理装置の左右支持フレームに横架された熱板の状態に示した側面図である。
【図5A】実施例2におけるガラス基板用熱処理装置の熱板の一端側の構造を示した斜視図である。
【図5B】実施例2におけるガラス基板用熱処理装置の熱板の他端側の構造を示した斜視図である。
【図6】実施例2におけるガラス基板用熱処理装置の左右支持フレームに横架された熱板の状態に示した側面図である。
【図7】実施例2におけるガラス基板用熱処理装置の補強材の一端部の固定構造を示した側面図である。
【図8】実施例2におけるガラス基板用熱処理装置の補強材の他端部の熱膨張吸収機構を示した側面図である。
【図9】実施例2におけるガラス基板用熱処理装置の熱板の撓み状態を説明する説明図である。
【図10】実施例2におけるガラス基板用熱処理装置のヒータの構造を示した斜視図である。
【図11】実施例1及び実施例2におけるガラス基板用熱処理装置の支持フレームが削除できる効果を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の熱処理装置は、ヒータを、発熱体よりなるヒータ本体をアルミニウム合金により押し出し成型した中空金属製のケース状の熱板中に収納して構成すると共に、熱板の両端間に熱板よりも熱膨張率の小さい金属製の緊張手段を介設することにより熱板にテンションを掛けるべく構成している。また、緊張手段は、熱板の材料よりも高強度で熱膨張率の小さいSUSなどの金属製のワイヤ又は丸棒としている。
【0022】
熱板の材料であるアルミニウム合金は、厚さを10mm〜50mm程度としている。
このように構成することにより、熱板の熱膨張を生起してもそれよりも小さい緊張手段の熱膨張率によって、熱板にテンションを掛けることができ、熱膨張による撓みを抑制することができる。このような構成により熱板の撓み防止を図ることができるので、熱板に厚みを増すなどの剛性を付与する構造を必要とせず、全体的に小型軽量化でき、炉体構造への重量負荷を可及的に低減することができ、かつ、熱板の段ピッチがその分小さくなり炉体の収納効率が高まる。
【0023】
また、他の実施例として、前記ヒータは、発熱体よりなるヒータ本体を中空金属製のケース状の熱板中に収納して構成すると共に、補強材を熱板の立上げ壁に貫通し、補強材の一側端部を炉体フレームに固定し、他側端部には熱膨張を吸収可能な熱膨張吸収機構を設けている。
【0024】
従って、熱板が熱膨張による撓みを生起せんとしても、熱板の熱膨張率よりも小さい補強材によって、熱膨張による熱板の撓みに対して直進性を付与して可及的に撓みを抑制することができることになり、上記した緊張手段によるテンションを熱板にかけるのと同様の効果を生起することができる。
【0025】
また、発熱体よりなるヒータ本体は、マイカ、セラミックなどの面状ヒータとし、熱板の内底面の面積の略1/2〜1/4の面積に形成している。
すなわち、熱板と面状ヒータの面積比は3:1程度が望ましい。
【0026】
特に、熱板内に収納する面状ヒータをアルミニウム合金などの熱伝導効率の良好な挟着材料で両面から挟着すると熱板の温度分布がより均一となり、発熱体の部分的な過熱状態も抑制することができる。
【0027】
更には、面状ヒータであるため熱板と面接触となって接触面積が可及的に大となるため、熱板の温度の均一化を図り、また、部分的な過熱状態も回避することができるためヒータ寿命も延ばすことができる。特に、面状ヒータとしての面接触によって発熱体の部分過熱を解消でき、熱板の温度分布にムラがなくなる。
【0028】
(実施例1)
以下、実施例1に係る熱処理装置について、図面を参照しながら詳説する。
【0029】
図1は、実施例1としてのガラス基板用熱処理装置Aの正面図を示している。
【0030】
図示するように、このガラス基板用熱処理装置Aは、箱型に形成した炉体1を備えており、内周面に断熱材(図示せず)またはヒータを貼設して、炉体1からの放熱を断熱したり、熱量を補うようにしたりしている。
【0031】
この炉体1の内部には、後述する加熱室3を多段に形成し、また、炉体1の前面部20には、各加熱室3に対応する位置を開口して基板収納口4を形成しており、炉外から基板収納口4を介して加熱室3にガラス基板Gをそれぞれ挿入し、複数のガラス基板Gを200〜300℃程度に加熱できるようにしている。
【0032】
また、炉体1の右側面部21及び左側面部22には、軸支持板23,23を立設しており、この両軸支持板23,23の間に枢軸6を炉体1の左右方向に向けて横架している。
【0033】
そして、この枢軸6には、前記基板収納口4を開閉する正面視略矩形状の開閉蓋5が軸支されており、上下方向に開閉可能としている。また、開閉蓋5は、正面視における面積が、基板収納口4よりも大となるようにしている。
【0034】
次に、実施例1に係るガラス基板用熱処理装置Aの内部構造について説明する。
【0035】
図2は、右側面視における断面を模式的に示した図である。
【0036】
図2に総合的に示すように、ガラス基板用熱処理装置Aの内部は、通電により発熱可能としたヒータ32を所定間隔を空けながら多段(本実施形態では8段)に配設している。
【0037】
そして、このヒータ32で上下に挟まれた空間を、加熱室3としている。すなわち、本実施形態におけるガラス基板用熱処理装置Aの内部には、加熱室3を7段形成している。図2中、2はガラス基板Gを支持する基板支持部材である。8は炉体1の背面を形成する背面板である。
【0038】
ヒータ32は、後にその構成を詳説するが、発熱体よりなるヒータ本体19を中空金属製のケース状の熱板11中に収納して構成すると共に、熱板11の両端間に熱板11よりも熱膨張率の小さい金属性の緊張手段を介設して熱板11にテンションを掛けるべく構成しており、このように構成することにより上下両面から熱を放射可能に形成しており、一つのヒータ32で、上下両側の加熱室3に収納したガラス基板Gを加熱することができる。
【0039】
すなわち、各加熱室3について着目すると、図2に示すように、加熱室3は、同加熱室3の内部に収納したガラス基板Gに対して、上面側に配設したヒータ32と、下面側に配設したヒータ32とで両面から加熱可能としている。
【0040】
また、各加熱室3の基板収納口4近傍には、炉体1の右側面部21及び左側面部22に両端を固定した前面支柱7が左右幅方向へ向けて固定してある。
【0041】
また、この加熱室3には、支持フレーム30を炉体1の前後方向(ガラス基板Gの挿入方向)に向けて複数本(本実施例では2本)配設している。
【0042】
次に、本発明のヒータ32の詳細について説明する。
まず、熱板11は、図3Aに示すように、例えば押出成型法によって前述の通り中空金属製のケース状にしており、方形状のケース状体の内部に補強用リブを兼ねて熱板11の長手方向に多数の仕切壁16を設けている。
【0043】
従って、この仕切壁16で形成される長手空間中に発熱体よりなるヒータ本体19、例えば、図10に示すように、マイカ、セラミック等の面状ヒータ19´を収納し、熱板11の内底面に配置する。
【0044】
このように形成された熱板11をガラス基板Gの挿入方向に多数個並設することにより、各段におけるヒータ32を構成する。各熱板11はその両端部を前記支持フレーム30により支持される。
【0045】
他方、この仕切壁16で形成された長手空間中には緊張手段として、熱板11の長手方向に沿って、金属製、例えば、SUS規格のワイヤ12(或いは丸棒)を挿通している。
【0046】
この緊張手段としてのワイヤ12は、熱板11と比較して熱膨張率の小さい金属であり、その両端は図3B及び図3Cに示すように、熱板11の前後側壁31から外部へ挿貫しており、ブラケット13を介して自由端部を前後側壁31に固定している。
【0047】
図3B及び図3C中、14は断面略コの字形状のブラケット13の基端部を折曲して形成した取付部であり、この取付部14によって、ブラケット13を熱板11の前後側壁31に突設固定する。15は取付用のボルトを示す。また、図3A中、17は中空ケースに形成された仕切壁16の下部に一部開口したワイヤ挿入溝であり、このワイヤ挿入溝17は熱板11の長手方向に沿って形成されたものである。
【0048】
すなわち、緊張手段としてのワイヤ12の両端は、熱板11の前後側壁31に突設した断面略コ字形状のブラケット13の天井部から突出させて、その突出端部Jに形成されたネジ部には締付け緊張ボルト18を螺合している。
【0049】
したがって、図4に示すように、締付け緊張ボルト18を螺進することにより、熱板11の前後側壁31間に架設状態のワイヤ12は中空ケースの熱板11間で緊張されて熱板11の前後方向にテンション負荷をかけることができる。
【0050】
なお、本実施例では、ワイヤ12を熱板11の左右両側下部にそれぞれ設けているが、ワイヤ12の本数と取り付け箇所は本実施例に限られず、ワイヤ12の本数を1本にしたり、ワイヤ12の取り付け箇所の熱板の上部に配設したりすることもできる。
【0051】
このように構成することにより、熱板11の前後方向にワイヤ12によるテンション負荷がかかると、加熱炉中で熱板11が熱膨張して変形や撓みを生起せんとしても、テンション負荷によって熱膨張による変形や撓みを阻止することができる。
【0052】
この結果、熱板11を薄く形成すると共に軽量にすることができ、段ピッチを小さくすることができる。また、ワイヤ12が軽量であり、しかもそのワイヤ12を熱板11内に収納するような構造とするため、ワイヤ12による熱放射の妨げが生起されることなく、ガラス基板Gへの熱放射の均一性をより高めることができる。
【0053】
(実施例2)
この発明の実施例2は、熱板11中に仕切壁16にて形成された長手状空間中に挿貫した補強材25によって、熱板11の熱膨張による変形や撓み等を防止するものである。
【0054】
すなわち、図5A及び図5Bに示すように、補強材25はアルミニウム合金よりも高温に強い材料、例えば、SUS規格の金属を用い、熱膨張率も熱板11よりも小さくしている。補強材25は角材形状として熱板11の仕切壁16間の空間に挿貫して、その両端を炉体内部に配設した支持フレーム30上に載置固定している。
【0055】
その載置固定構造としては、図7に示すように、補強材25の端部に縦孔26を形成し、縦孔26中に固定ボルト28を挿貫して支持フレーム30上に補強材25の端部を載置固定している。これにより、補強材25の端部が支持フレーム30に固定され、熱板11の撓みによる変形を補強材25の直進性によって防止している。
【0056】
また、図7に示すように、補強材25の端部と支持フレーム30との間には一定のクリアランスを保持すべく、支持スペーサ29を介設しており、この支持スペーサ29によって補強材25は熱板11の内底面に密着することなく熱板11の中心部分に一定のクリアランスを保持して挿貫されるようにしている。
【0057】
図8に示すように、補強材25の一方の端部には、スペーサ用パイプ27を挿貫し、該スペーサ用パイプ27の上端より固定ボルト28を挿貫して支持フレーム30上に補強材25を載置している。
【0058】
スペーサ用パイプ27は、支持スペーサ29と補強材25との重畳した厚みよりもやや長い高さを有して形成されており、補強材25の伸長を後述する長孔34で吸収しやすくしている。
【0059】
しかも、補強材25の一方の端部には、図8に示すように、熱膨張吸収機構36を設けている。熱膨張吸収機構36は、補強材25が炉内加熱により多少熱膨張した場合、膨張分を吸収すべく、補強材25端部に形成した長孔34であり、その長孔34中には金属製のスペーサ用パイプ27(カラー)を挿貫し、固定ボルト28を挿入したスペーサ用パイプ27は長孔34中を摺動して補強材25の膨張を吸収しながら補強材25と支持フレーム30との載置状態を維持している。
【0060】
このように、支持フレーム30に補強材25が密着して摺動不可とならないようにスペーサ用パイプ27の高さにより補強材25に一定のガタを形成して長孔34を介して補強材25が摺動可能としている。
【0061】
このように構成することにより補強材25に常に直進性を保持させておくことができ、図9に示すように、ガラス基板Gに熱処理を施す温度帯(略300℃)では、熱板11が熱膨張により撓んで反り返り等の変形をしようとしても、補強材25の直進性により、変形が規制されて熱板11そのものの水平形状を保持(図6に示す)できる。
【0062】
なお、補強材25の形状は自身のもつ直進性を利用して熱板11の変形を矯正するものであるため、補強材25を挿貫する仕切壁16の断面空間と補強材25の各断面形状は、例えば、矩形状の相似形或いは横幅密着状態としておくとよい。このような形状とすることにより、熱板11の長手方向の熱膨張変形のみならず、幅方向の変形にも対応することが可能となる。
【0063】
また、図10に示すように、発熱体よりなるヒータ本体19は、マイカやセラミックの面状ヒータ19´とすることにより、熱板11との面接触による密着性を可及的に向上することができ、熱の均一分布機能を更に良好にすることができる。図中、33は、ヒータ本体19に給電する電線である。
【0064】
また、かかる面状ヒータ19´をアルミニウム合金等の熱伝導率の良好な挟着材料35で挟着しておくと、熱板11の温度分布が一層均一化されて、部分的な過熱を抑制することができる。
【0065】
更には、アルミニウム合金製の押出し成形品である熱板11は厚さを略10〜50mmとし、熱板11内底面と面状ヒータ19´との面積比は例えば略3:1となるような短冊形状の面状ヒータ19´の貼着をすることにより、熱板11の温度分布をより均一化できる。
【0066】
また、ヒータ本体19の面積を小さくした分、熱板11の重量及びコストを低減することができる。なお、このヒータ本体19の面積低減構造は、上記実施例1にも適用することができる。
【0067】
さらに、実施例1及び実施例2とも、図11に示すように、熱板11の撓みを防止できるので、従来熱処理装置Aの中央に配設していた支持フレーム30を削除することができ、その支持フレーム30による伝熱の妨げを低減することができ、ガラス基板Gへの熱放射をより均一にすることができる。
【符号の説明】
【0068】
A ガラス基板用熱処理装置
1 炉体
11 熱板
12 ワイヤ
25 補強材
32 ヒータ
36 熱膨張吸収機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉体内部に配設したヒータで被処理物を加熱する熱処理装置において、
炉前記ヒータは発熱体よりなるヒータ本体を、中空金属製のケース状の熱板中に収納して構成すると共に、熱板の両端間に熱板よりも熱膨張率の小さい金属製の緊張手段を介設することにより熱板にテンションを掛けるべく構成してなる熱処理装置。
【請求項2】
緊張手段は、熱板の材料よりも高強度で熱膨張率の小さい金属であることを特徴とする請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項3】
炉体内部に配設したヒータで被加熱物を加熱する熱処理装置において、
前記ヒータは、発熱体よりなるヒータ本体を中空金属製のケース状の熱板中に収納して構成すると共に、補強材を熱板に貫通し、補強材の一側端部を炉体フレームに固定し、他側端部には熱膨張を吸収可能な熱膨張吸収機構を設けたことを特徴とする熱処理装置。
【請求項4】
発熱体よりなるヒータ本体は、面状の短冊形状を有しており、熱板内への挿入本数により熱板に対する占有面積を自在に調整可能としたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の熱処理装置。
【請求項1】
炉体内部に配設したヒータで被処理物を加熱する熱処理装置において、
炉前記ヒータは発熱体よりなるヒータ本体を、中空金属製のケース状の熱板中に収納して構成すると共に、熱板の両端間に熱板よりも熱膨張率の小さい金属製の緊張手段を介設することにより熱板にテンションを掛けるべく構成してなる熱処理装置。
【請求項2】
緊張手段は、熱板の材料よりも高強度で熱膨張率の小さい金属であることを特徴とする請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項3】
炉体内部に配設したヒータで被加熱物を加熱する熱処理装置において、
前記ヒータは、発熱体よりなるヒータ本体を中空金属製のケース状の熱板中に収納して構成すると共に、補強材を熱板に貫通し、補強材の一側端部を炉体フレームに固定し、他側端部には熱膨張を吸収可能な熱膨張吸収機構を設けたことを特徴とする熱処理装置。
【請求項4】
発熱体よりなるヒータ本体は、面状の短冊形状を有しており、熱板内への挿入本数により熱板に対する占有面積を自在に調整可能としたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の熱処理装置。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−33680(P2013−33680A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169857(P2011−169857)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(390001568)昭和鉄工株式会社 (27)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(390001568)昭和鉄工株式会社 (27)
【Fターム(参考)】
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