説明

ガラス基板装填装置及びガラス基板の装填方法及びガラス基板の製造方法

【課題】本発明は収納容器の各収納部にガラス基板を一枚ずつ確実に挿入することを課題とする。
【解決手段】ガラス基板装填装置10は、移動テーブル20と、固定ベース30と、ガラス基板挿入機構40と、テーブル駆動用空気シリンダ50と、収納容器送り機構60とを有する。ガラス基板挿入機構40は、ガラス基板保持部170を昇降駆動用空気シリンダ180により昇降させると共に、昇降動作に連動してガラス基板Wを保持または開放する。収納容器送り機構60は、移動テーブル20がテーブル駆動用空気シリンダ50の駆動力により複数の収納部72の整列方向に移動する際、収納容器70を一つの収納部72の間隔(1ピッチ分)ずつ移動させるように、固定ベース30に対する移動テーブル20の移動位置(距離)を位置決めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板を収納容器の複数の収納部に収納させるガラス基板装填装置及びガラス基板の装填方法及びガラス基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、磁気記録用ディスクの基材として用いられるガラス基板の製造工程においては、樹脂製の収納容器の内部に形成された各収納部に複数のガラス基板を一枚ずつ収納し、複数のガラス基板を当該収納容器と共に研削、研磨、洗浄、乾燥、検査などの各工程間を移送している。
【0003】
ガラス基板用の収納容器としては、例えば、特許文献1、2にみられるように、内部に複数の収納部が整列されており、各収納部にガラス基板が挿入されると、上部開口を蓋により密閉するように構成されたものが用いられる。
【0004】
また、特許文献1に記載された上記収納容器では、一枚のガラス基板が二つの収納部に斜め挿入されたり、あるいは複数の収納部を順番に挿入できずに未挿入の収納部が残ってしまうことを防止するため、ガラス基板の挿入位置をひとつ置きの位置にガイドするガイド部材を収納容器の上部開口に装着するものがある。そして、収納容器の内壁に形成された複数の収納部のうち例えば、偶数列の収納部にガラス基板が挿入されると、上記ガイド部材を一つ分ずらして奇数列の収納部にガラス基板を挿入している。
【0005】
また、特許文献2に記載された収納容器では、各収納部間を仕切るガイド板が設けられたガイド部材を当該収納容器の上部開口に装着し、ガラス基板の挿入位置をガイドすると共に、収納部の挿入されたガラス基板同士が接触しないようにガイド板に保護材を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−261594号公報
【特許文献2】特開2007−95200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記収納容器にガラス基板を一枚ずつ挿入する際は、各収納部に薄くて透明なガラス基板が挿入されていることを上方から視認しづらいので、上記ガイド部材によって挿入位置がガイドされていても既にガラス基板が挿入されている収納部に間違えて別のガラス基板を挿入してガラス基板を損傷させてしまうという問題があった。
【0008】
また、ガイド部材によってガイドされた位置にガラス基板を挿入する際に、間違えて一つ飛ばして隣りの収納部に挿入してしまうと、未挿入の収納部が残ってしまうことになる。
【0009】
また、ガラス基板の製造工程においては、ガラス基板の表面が乾燥している状態で微細な塵埃が付着してしまうと洗浄工程でも除去できないケースがあるので、収納容器を水槽に沈めた状態でガラス基板を挿入し、ガラス基板の表面が乾燥しないようにしている。そのため、収納容器を電動モータにより駆動し、当該モータを電気系統で制御するように構成された装置を用いて自動的に収納容器の各収納部に装填させようとしても、当該装置及び電動モータや電装部品が水に浸ることになるので、電気制御を必要とする構成の装填装置を用いるには、防水など特別な処理が必要であった。
【0010】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、上記課題を解決したガラス基板装填装置及びガラス基板の装填方法及びガラス基板の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
(1)本発明は、複数のガラス基板を所定間隔で整列させた状態に収納する複数の収納部を有する収納容器に前記ガラス基板を装填するガラス基板装填装置において、
前記収納容器が固定される移動テーブルと、
前記移動テーブルを移動可能に支持する固定ベースと、
前記収納容器の前記複数の収納部のうち前記ガラス基板が未挿入になっている一の前記収納部に前記ガラス基板を挿入するガラス基板挿入機構と、
前記移動テーブルを前記収納容器と共に前記複数の収納部の整列方向に移動させるテーブル駆動用空気シリンダと、
前記移動テーブルが前記テーブル駆動用空気シリンダの駆動力により前記複数の収納部の整列方向に移動する際、前記収納容器の前記複数の収納部のうち未だ前記ガラス基板が挿入されていない前記収納部を前記基板挿入機構の底部開口に対向させるように、前記移動テーブルの移動位置を位置決めする収納容器送り機構と、
を備えたことを特徴とする。
(2)本発明の前記収納容器送り機構は、
前記複数の収納部に前記ガラス基板が挿入されると信号を出力するスイッチと、
前記テーブル駆動用空気シリンダの駆動力により移動された前記移動テーブルが移動前の位置に戻らないように前記固定ベースに係止するロック機構と、
前記移動テーブルを前記複数の収納部のうち一つ分の距離を移動させるように前記テーブル駆動用空気シンリンダのピストンロッドのストロークを制限する移動位置制限機構と、
を備えたことを特徴とする。
(3)本発明の前記移動位置制限機構は、
前記固定ベースに設けられた前記移動方向に延在形成された送り用ラックと、
前記テーブル駆動用空気シリンダのピストンロッドの先端に設けられ、前記移動テーブルを前記収納部の一つ分の距離を移動させるときに前記送り用ラックに係合する送り用ラチェットと、を有し、
前記ロック機構は、
前記移動テーブルに設けられた前記移動方向に延在形成された戻り防止用ラックと、
前記移動テーブルが前記収納部の一つ分の距離を移動した後に前記戻り防止用ラックに係合する戻り防止用ラチェットと、を有することを特徴とする。
(4)本発明の前記スイッチは、空気圧式スイッチからなり、前記テーブル駆動用空気シリンダに供給される圧縮空気の供給経路を切り替える空気圧制御系統に接続され、押圧操作により空気信号を前記空気圧制御系統に出力することを特徴とする。
(5)本発明の前記スイッチは、前記ガラス基板挿入機構に供給された前記ガラス基板が前記収納容器の前記収納部に挿入されたことを検出すると共に、前記信号を出力することを特徴とする。
(6)本発明の前記ガラス基板挿入機構は、
前記移動テーブルに固定された前記収納容器の上方に昇降可能に設けられ、前記ガラス基板を保持または開放するように開閉動作するガラス基板保持部と、
該ガラス基板保持部を昇降させる昇降駆動用空気シリンダと、
該昇降駆動用空気シリンダにより前記ガラス基板保持部が前記収納容器に接近されると共に、前記ガラス基板保持部に保持された前記ガラス基板を開放させ、前記収納容器の前記収納部に投下させる開閉機構と、
を有することを特徴とする。
(7)本発明の前記ガラス基板は、磁気記録媒体用ガラス基板であることを特徴とする。
(8)本発明は、ガラス基板を製造する各工程におけるガラス基板の装填方法において、
前記工程の作業が終了した前記ガラス基板を、前記請求項1乃至7の何れかに記載されたガラス基板装填装置を用いて収納容器の複数の収納部の夫々に装填することを特徴とする。
(9)本発明は、板形状を有するガラス素基板を加工してガラス基板を製造する各工程間で、前記ガラス基板を収納容器に収納して移送するガラス基板の製造方法において、
前記工程の作業が終了した前記ガラス基板を、前記請求項1乃至7の何れかに記載されたガラス基板装填装置により前記複数の収納部の夫々に装填し、前記複数の収納部に前記ガラス基板が装填された前記収納容器を次の工程へ移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、移動テーブルがテーブル駆動用空気シリンダの駆動力により複数の収納部の整列方向に移動する際、収納容器の複数の収納部のうち未だガラス基板が挿入されていない収納部をガラス基板挿入機構の底部開口に対向させるように、固定ベースに対する移動テーブルの移動位置を制限するため、収納容器の各収納部にガラス基板を一枚ずつ確実に挿入でき、同じ収納部に2枚目のガラス基板を挿入したり、あるいは未挿入の収納部を残して次の収納部にガラス基板を挿入してしまうことや、2つの収納部に一枚のガラス基板を斜めに挿入することを防止できる。また、収納容器に収納されたガラス基板が乾燥しないように水槽に浸した状態でも電気的な部品や配線がないので安定的に動作してガラス基板を一枚ずつ複数の収納部の夫々に挿入させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明によるガラス基板装填装置の一実施例の概略構成を示す正面図である。
【図2】図1に示すガラス基板装填装置の側面図である。
【図3A】ガラス基板挿入機構のガラス基板保持部を説明するための平面図である。
【図3B】ガラス基板挿入機構の開閉機構を説明するための斜視図である。
【図4A】ガラス基板挿入機構の動作前を説明するための正面図である。
【図4B】ガラス基板挿入機構の動作後を説明するための正面図である。
【図5】ガラス基板挿入機構の動作後を説明するための側面図である。
【図6A】収納容器送り機構の動作前を説明するための図である。
【図6B】収納容器送り機構の送り動作を説明するための図である。
【図6C】収納容器送り機構のテーブル移動後の次の動作を説明するための図である。
【図7】空気圧制御系統の構成を示す系統図である。
【図8】空気圧制御系統の変形例を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【実施例1】
【0015】
〔ガラス基板装填装置の構成〕
図1は本発明によるガラス基板装填装置の一実施例の概略構成を示す正面図である。図2は図1に示すガラス基板装填装置の側面図である。
【0016】
図1及び図2に示されるように、ガラス基板装填装置10は、移動テーブル20と、固定ベース30と、ガラス基板挿入機構40と、テーブル駆動用空気シリンダ50と、収納容器送り機構60とを有する。
【0017】
移動テーブル20は、X1、X2方向にスライド可能に支持されており、上面に収納容器70が固定される凹部21を有しており、当該凹部21により収納容器70の固定位置が位置決めされる。収納容器70は、ガラス基板Wが1枚ずつ収納可能とされた複数の収納部72がX1、X2方向に整列されるように形成され、且つ上側がガラス基板Wの挿入または取出し操作が行えるように開口になっている。また、収納容器70は、収納部72の内部にガラス基板Wの表面が乾燥しないように水を注入しても良い。あるいは、収納容器70全体が水槽内に水没されることで収納部72に収納されたガラス基板Wの乾燥を防止する構成としても良い。
【0018】
尚、収納容器70の複数の収納部72は、収納容器70の内壁両側及び底部側から中心に向かって突出する仕切り部74によって仕切られており、当該仕切り部74の中心部分は、U字状に形成された空間がX1、X2方向に貫通するように構成されているので、注入された水が各収納部72を流通するように構成されている。また、各収納部72の底部にも開口が設けられており、この底部側の開口によっても各収納部72が連通されている。
【0019】
ガラス基板Wは、例えば磁気記録用ディスクに用いられ、外径及び内径が各ディスクサイズに応じた所定の寸法に形成されている。
【0020】
固定ベース30は、移動テーブル20の下側に配され、移動テーブル20の両側に突出する張り出し部22を移動可能に支持する支持部32を有する。
【0021】
ガラス基板挿入機構40は、固定ベース30の支持部32の上面に起立するように設けられ、収納容器70の複数の収納部72のうちガラス基板Wが未挿入になっている一の収納部72にガラス基板Wを一枚ずつ挿入するように構成されている。尚、ガラス基板挿入機構40の詳細な構成については、後述することとする。
【0022】
テーブル駆動用空気シリンダ50は、移動テーブル20を収納容器70と共に複数の収納部72の整列方向(X1、X2方向)に移動させる駆動力を発生する駆動源であり、移動テーブル20の下面に取り付けられている。また、テーブル駆動用空気シリンダ50の本体54の端部には、移動テーブル20を1ピッチずつ移動させる際の移動距離(各収納部72の間隔に対応する距離)に応じてピストンロッド52のストロークを調整するストローク調整部56が設けられている。
【0023】
収納容器送り機構60は、移動テーブル20がテーブル駆動用空気シリンダ50の駆動力により複数の収納部72の整列方向(X1、X2方向)に移動する際、収納容器70を一つの収納部72の間隔(1ピッチ分)ずつ移動させるように、固定ベース30に対する移動テーブル20の移動位置(距離)を位置決めするように構成されている。
〔移動収納容器送り機構60の構成〕
図2に示されるように、移動収納容器送り機構60は、送りスイッチ80と、ロック機構90と、移動位置制限機構100とを有する。
【0024】
送りスイッチ80は、空気圧式スイッチからなり、収納容器70の収納部72にガラス基板Wが挿入され、手動操作によりオンになると、所定圧力の空気信号を出力する。
【0025】
また、送りスイッチ80は、テーブル駆動用空気シリンダ50に供給される圧縮空気の供給経路を切り替える空気圧制御系統200(図7を参照)に接続され、押圧操作により空気信号を空気圧制御系統200に出力する。
【0026】
ロック機構90は、戻り防止用ラック110と、戻り防止用ラチェット120と、コイルバネ130とを有する。
【0027】
戻り防止用ラック110は、複数の歯112が連続して移動方向(X1、X2方向)に延在形成され、戻り防止ギヤとして移動テーブル20の下面に設けられている。また、戻り防止用ラック110は、各歯112がのこ歯形状に形成され、X1方向側が傾斜し、X2方向側が垂直になるように形成されている。各歯112の間隔(ピッチ)は、移動テーブル20に固定された収納容器70の移動方向(X1、X2方向)における各収納部72の間隔と同じ寸法に形成されている。
【0028】
戻り防止用ラチェット120は、固定ベース30より起立したブラケット122の軸122aにより上下方向に回動可能に支持されており、軸122aよりX2方向に延在する一端に爪部120aが設けられ、軸122aよりX1方向に延在する他端にコイルバネ130が掛止されている。また、戻り防止用ラチェット120は、コイルバネ130のバネ力により上方(反時計方向)に付勢されているので、爪部120aが歯112の垂直側と係合するロック位置に保持されている。
【0029】
また、テーブル駆動用空気シリンダ50の駆動力により移動テーブル20がX1方向に移動する際、戻り防止用ラチェット120の爪部120aは、歯112の傾斜側に押されて下方に押し下げられるため、移動テーブル20のX1方向の移動を妨げないように設けられている。
【0030】
このとき、移動テーブル20は、テーブル駆動用空気シリンダ50の本体54が固定されているため、ピストンロッド52が縮み方向(X2方向)に移動すると共に、その反力でX1方向に移動する。また、テーブル駆動用空気シリンダ50の駆動力により移動テーブル20をX1方向に移動させようとすると、前記ロック機構90の戻り防止用ラチェット120の爪部120aが戻り防止用ラック110の歯112の垂直側により移動テーブル20が係止される。
【0031】
戻り防止用ラチェット120は、移動テーブル20がX1方向に移動する際に、爪部120aが戻り防止ラック110の歯112の傾斜側に押されて下方(時計方向)に回動することで、歯112を乗り越えることができる。移動テーブル20がX2方向に移動する際は、部120aが戻り防止用ラック110の歯112の垂直側に当接する。
【0032】
ロック機構90は、テーブル駆動用空気シリンダ50が作動しない停止状態のとき、戻り防止用ラチェット120が歯112の垂直側に当接することで、移動テーブル20がX2方向に戻らないように移動テーブル20を係止すると共に、1ピッチ分の移動位置(距離)を位置決めする。
【0033】
移動位置制限機構100は、テーブル駆動用空気シリンダ50の上記駆動により移動テーブル20がX1方向に移動する際に、移動テーブル20を複数の収納部72のうち一つ分の距離を移動させるように移動テーブル20の移動量を制限するように構成されている。
〔移動位置制限機構100の構成〕
図2及び図6Aに示されるように、移動位置制限機構100は、送り用ラック140と、送り用ラチェット150と、コイルバネ158とを有する。
【0034】
送り用ラック140は、複数の歯142が連続して移動方向(X1、X2方向)に延在形成され、送りギヤとして固定ベース30の上面に設けられている。また、送り用ラック140は、各歯142がのこ歯形状に形成され、X2方向側が傾斜し、X1方向側が垂直になるように形成されており、送り用ラチェット150が各歯142の垂直側と係合するように設けられている。各歯142の間隔(ピッチ)は、収納容器70の移動方向(X1、X2方向)における各収納部72の間隔と同じ寸法に形成されている。
【0035】
送り用ラック140は、テーブル駆動用空気シリンダ50のピストンロッド52が縮む方向(X2方向)に移動する際に、歯142の垂直側が送り用ラチェット150に係止される。このとき、移動テーブル20は、テーブル駆動用空気シリンダ50の本体54が固定されているため、ピストンロッド52が縮む方向(X2方向)に移動すると共に、その反力でX1方向に移動する。尚、移動テーブル20がX1方向に移動する際は、前記ロック機構90による係止が解除される。
【0036】
送り用ラチェット150は、テーブル駆動用空気シリンダ50のピストンロッド52の先端に支持された支持部材152により回動可能に支持され、コイルバネ158のバネ力により下方に付勢されている。また、支持部材152は、X1、X2方向に延在する長孔152aと、当該長孔152aに嵌合する軸152bとを有する。軸152bは、送り用ラチェット150の基端部に結合されており、送り用ラチェット150を上下方向に回動可能に支持している。
【0037】
従って、送り用ラチェット150の先端下側に突出する爪部150aは、テーブル駆動用空気シリンダ50のピストンロッド52が縮む方向(X2方向)に移動する際に、送り用ラック140の歯142の垂直側に当接し、ピストンロッド52が伸び方向(X1方向)に移動する際には送り用ラック140の歯142の傾斜側に押されて上方に回動することで、歯142を乗り越えることができる。
【0038】
尚、送り用ラチェット150の裏側には、移動テーブル20をスタート位置に復帰させる際に送り用ラチェット150を上方に回動させた状態に保持する送り用ラチェット保持機構が設けられている。この送り用ラチェット保持機構は、移動テーブル20をX2方向に移動させてスタート位置に戻す際に、送り用ラチェット150を上方に回動させて送り用ラチェット150が送り用ラック140に係合しないように退避させるように動作する。
【0039】
また、移動収納容器送り機構60では、送り用ラック140の歯142、戻り防止用ラック110の歯112ならびにテーブル駆動用空気シリンダ50のストローク選定により、収納容器70の収納部の間隔(3mm〜15mm)に対して任意のピッチとなるように容易に対応できる。
〔ガラス基板挿入機構40の構成〕
図1に示されるように、ガラス基板挿入機構40は、下動位置検出スイッチ160と、ガラス基板保持部170と、昇降駆動用空気シリンダ180と、開閉機構190とを有する。ガラス基板保持部170は、昇降駆動用空気シリンダ180によりガラス基板Wが挿入されるガラス基板保持位置(ZA)からガラス基板Wを収納容器70に投下するガラス基板投下位置(ZB)との間を昇降する。
【0040】
下動位置検出スイッチ160は、空気圧式スイッチからなり、ガラス基板Wが挿入されたガラス基板保持部170がガラス基板投下位置(ZB)に降下したとき、押圧されて空気信号を検出信号として出力する。
【0041】
ガラス基板保持部170は、昇降駆動用空気シリンダ180により移動テーブル20に固定された収納容器70の上方で昇降可能に設けられ、昇降動作に連動してガラス基板Wを保持または開放するように開閉可能に構成されている。
【0042】
昇降駆動用空気シリンダ180は、本体181が固定ベース30の支持部32の上面に起立した状態に取付けられている。また、昇降駆動用空気シリンダ180は、ピストンロッド182の先端に設けられた連結部184がガラス基板保持部170を支持しており、ピストンロッド182の上下動によりガラス基板保持部170を上下方向に駆動する。
【0043】
図3A、図3Bに示されるように、ガラス基板保持部170は、連結部184に支持された固定側の第1の保持部174と、第1の保持部174に対して水平方向に移動可能に支持された第2の保持部176とを有する。
【0044】
第1の保持部174及び第2の保持部176は、夫々ガラス基板Wの左半分、右半分を覆うように形成されると共に、上方からみると内部にガラス基板Wが挿入される空間を有するようにコ字状に形成されている。また、第2の保持部176は、後述する開閉機構190により第1の保持部174に対してY1、Y2方向にスライドして開動作又は閉動作し、ガラス基板Wを収納容器70の複数の収納部72のうち未挿入の各収納部72に順番にガラス基板Wを順次挿入する。
【0045】
第1の保持部174の裏面には、ブラケット171が固定されている。このブラケット171とピストンロッド182の先端に設けられた連結部184との間には、水平方向に延在する第1のロッド172及び第2のロッド173が横架されている。
【0046】
また、一対のロッド172、173は、Y1、Y2方向にスライドするスライド部材175を支持している。スライド部材175の裏面には、可動側カムフォロアー194が設けられている。可動側カムフォロアー194は、例えば、回転ローラからなり、後述する固定側ガイドカム192のカム面に沿って移動しながらスライド部材175をY1方向又はY2方向に移動させる。
【0047】
また、ブラケット171とスライド部材175との間には、コイルバネ179が張設されている。スライド部材175は、一対のロッド172、173により移動方向をガイドされると共に、コイルバネ179のバネ力によってY2方向に付勢されている。
【0048】
すなわち、第2の保持部176は、コイルバネ179のバネ力により可動側カムフォロアー194を固定側ガイドカム192のカム面に押圧するようにY2方向に付勢されている。また、第2の保持部176は、第1の保持部174に近接するY1方向に移動した保持状態にあるとき、ガラス基板Wの外周をテーパ状の内壁で保持している。
【0049】
図3Bに示されるように、開閉機構190は、固定部材(図示せず)により支持された固定側ガイドカム192と、固定側ガイドカム192に摺接する可動側カムフォロアー194とよりなる。また、固定側ガイドカム192は、ガラス基板保持部170がガラス基板投下位置(ZB)に降下する過程で可動側カムフォロアー194が摺接する第1のカム面192aと、ガラス基板保持部170がガラス基板保持位置(ZA)に上昇しているときに可動側カムフォロアー194が摺接する第2のカム面192bとを有する。
【0050】
図4Aはガラス基板挿入機構40の動作前を説明するための正面図である。図4Bはガラス基板挿入機構40の動作後を説明するための正面図である。図5はガラス基板挿入機構40の動作後を説明するための側面図である。尚、図4A、図4Bにおいて、固定ベース30及び移動収納容器送り機構60を省略している。
【0051】
図4A及び図4Bに示されるように、開閉機構190は、昇降駆動用空気シリンダ180によりガラス基板保持部170が収納容器70に接近するガラス基板投下位置(ZB)に降下されると共に、可動側カムフォロアー194が固定側ガイドカム192のカム面192aに摺接する。尚、図4A及び図4Bにおいて、上記可動側カムフォロアー194は、第2のロッド173の裏面側に隠れて見えない。
【0052】
ガラス基板保持部170は、第1の保持部174及び第2の保持部176にガラス基板Wが挿入されると、ガラス基板保持位置(ZA)からガラス基板投下位置(ZB)に降下すると共に、開閉機構190の可動側カムフォロアー194が固定側ガイドカム192の第2のカム面192bに摺接する。これにより、第2の保持部176はY2方向にスライドして第1の保持部174とのY方向の間隔を広げる。このとき、ガラス基板保持部170の底部開口171は、ガラス基板投下位置(ZB)に降下したとき収納容器70の複数の収納部72のうちX1方向側の未挿入の収納部72の上方に近接し、対向する位置にある。
【0053】
そして、上記第2の保持部176の開放動作により、ガラス基板保持部170の底部開口171のY方向の横幅がガラス基板Wの直径よりも幅広に拡幅された時点でガラス基板Wが収納容器70の収納部72に投下される。そのため、ガラス基板保持部170に保持されたガラス基板Wは、第2の保持部176がY2方向にスライドすると共に、ガラス基板保持部170の底部開口171から収納容器70の収納部72に投下される。
【0054】
ここで、上記ガラス基板挿入機構40の動作について説明する。
【0055】
ガラス基板に対する当該工程での作業が終了すると、図4Aに示されるように、ガラス基板Wはガラス基板保持位置(ZA)に上昇しているガラス基板保持部170に上方から挿入される。このとき、図3Bに示されるように、可動側カムフォロアー194が固定側ガイドカム192の第1のカム面192aに摺接するため、第2の保持部176が第1の保持部174に近接した位置に保持されており、ガラス基板Wの落下が阻止される。
【0056】
図4B及び図5に示されるように、送りスイッチ80が押圧操作されて空気信号が空気圧制御系統200に供給されると共に、昇降駆動用空気シリンダ180のピストンロッド182が縮み方向(Z2方向)に駆動されてガラス基板保持部170を降下させる。ガラス基板保持部170がガラス基板保持位置(ZA)からガラス基板投下位置(ZB)に降下する過程において、可動側カムフォロアー194が固定側ガイドカム192の第2のカム面192bに摺接するため、第2の保持部176がY2方向にスライドして第1の保持部174と第2の保持部176とのY方向の間隔が広がり、ガラス基板Wが開放されて収納容器70の収納部72に落下する。このガラス基板Wが挿入される収納部72は、後述するように移動収納容器送り機構60によりガラス基板Wがまだ挿入されていない未挿入の収納部である。
【0057】
また、ガラス基板保持部170がガラス基板保持位置(ZA)からガラス基板投下位置(ZB)に降下した時点で、昇降駆動用空気シリンダ180の連結部184が下動位置検出スイッチ160を押圧し、昇降駆動用空気シリンダ180のピストンロッド182の降下動作を停止させる。そして、昇降駆動用空気シリンダ180は、空気圧制御系統200により空気圧の供給先が切り替えられると共に、ピストンロッド182を伸び方向(Z1方向)に移動させ、ガラス基板保持部170をガラス基板保持位置(ZA)に上昇させる(図4Aを参照)。
〔収納容器送り機構60の動作〕
図6Aは収納容器送り機構60の動作前を説明するための図である。図6Aに示されるように、送り用ラチェット150は、先端下側に突出する爪部150aをコイルバネ158のバネ力により送り用ラック140の歯142−1の垂直側に当接させている。この状態で、テーブル駆動用空気シリンダ50のピストンロッド52が縮む方向(X2方向)に駆動されると、その反力がテーブル駆動用空気シリンダ50の本体54が固定された移動テーブル20をX1方向に移動させる駆動力として作用する。
【0058】
図6Bは収納容器送り機構60の送り動作を説明するための図である。図6Bに示されるように、テーブル駆動用空気シリンダ50のピストンロッド52が縮み方向(X2方向)に駆動された場合、上記のように送り用ラチェット150の爪部150aが送り用ラック140の歯142−1の垂直側を押圧して移動テーブル20をX1方向に移動させる駆動力(反力)が発生するため、移動テーブル20はX1方向に移動する。
【0059】
そして、移動テーブル20がX1方向に移動すると、前述したロック機構90の戻り防止用ラチェット120は、爪部120aが戻り防止用ラック110の歯112の傾斜側に押されて下方に回動し、移動テーブル20が収納容器70の一ピッチ分(収納部72の一つ分の距離)移動した時点でコイルバネ130のバネ力により付勢された爪部120aが戻り防止用ラック110の歯112の垂直側に係合して一ピッチ分の移動位置を位置決めする。
【0060】
図6Cは収納容器送り機構60のテーブル移動後の次の動作を説明するための図である。図6Cに示されるように、テーブル駆動用空気シリンダ50のピストンロッド52が伸び方向(X1方向)に駆動されると、送り用ラチェット150の爪部150aが送り用ラック140の歯142−1の傾斜側を押圧されて上方に回動することで、歯142−1を乗り越えることができる。そして、送り用ラチェット150の爪部150aは、移動テーブル20が収納容器70の一ピッチ分(収納部72の一つ分の距離)移動した時点で、コイルバネ158のバネ力によりX1方向側に隣接された歯142−2の垂直部に係合する。
【0061】
このピストンロッド52の伸び方向の動作により、テーブル駆動用空気シリンダ50においては、次のテーブル移動動作による一ピッチ分の移動ストロークが確保される。
〔空気圧制御系統200の構成〕
図7は空気シリンダに圧縮空気を供給するための空気圧制御系統200を示す図である。図7に示されるように、空気圧制御系統200は、圧縮空気が貯蔵されたエア源210からの空気信号(圧縮空気)の供給先を切り替えるように構成されており、送りスイッチ80と、シリンダ用切替弁220とを有する。エア源210としては、例えば、圧縮空気が蓄圧されたタンクや小型ボンベ、あるいは圧縮空気を生成する空気圧縮機などが用いられる。
【0062】
エア源210の圧縮空気は、空気配管H1、H2を介して送りスイッチ80及びシリンダ用切替弁220に供給される。シリンダ用切替弁220は、送りスイッチ80、または下動位置検出スイッチ160からの空気信号(圧縮空気)の供給によって切り替わり、テーブル駆動用空気シリンダ50及び昇降駆動用空気シリンダ180の供給先(シリンダ室)を切り替える。
【0063】
また、テーブル駆動用空気シリンダ50及び昇降駆動用空気シリンダ180の各シンリンダ室に連通する空気配管H3〜H6には、圧縮空気の流量を絞る可変絞りKと逆流防止弁Gとを並列に配した流量調整部230、240、250、260が設けられている。尚、流量調整部230、240、250、260は、圧縮空気をテーブル駆動用空気シリンダ50及び昇降駆動用空気シリンダ180に供給する際は、可変絞りK及び逆流防止弁Gから供給し、ピストン動作により圧縮空気をテーブル駆動用空気シリンダ50及び昇降駆動用空気シリンダ180からの空気を排気する際は、逆流防止弁Gが閉止し、可変絞りKにより設定された流量で排気される。そのため、テーブル駆動用空気シリンダ50及び昇降駆動用空気シリンダ180では、可変絞りKの絞り量に応じた空気流量によってピストン動作速度が調整される。
【0064】
送りスイッチ80は、例えば、4ポート2位置弁からなり、操作部82が押圧操作されないときは、空気配管H1を遮断(閉止)している。また、送りスイッチ80は、上端の操作部82が押圧されると、圧縮空気をシリンダ用切替弁220に供給(開放)するように切り替わり、操作部82への押圧力が解除されると共にバネ84のバネ力によって操作前の状態に復帰してシリンダ用切替弁220への圧縮空気の供給を停止する。
【0065】
シリンダ用切替弁220は、例えば、5ポート2位置弁からなり、送りスイッチ80からの圧縮空気の圧力によって切り替わり、空気配管H4、H5を介してテーブル駆動用空気シリンダ50の第2のシリンダ室50B及び昇降駆動用空気シリンダ180の第1のシリンダ室180Aに圧縮空気を供給する。また、シリンダ用切替弁220は、下動位置検出スイッチ160が配された空気配管H7からの空気信号(圧縮空気)が供給されると、テーブル駆動用空気シリンダ50の第1のシリンダ室50A及び昇降駆動用空気シリンダ180の第2のシリンダ室180Bに圧縮空気を供給するように切り替わる。
【0066】
下動位置検出スイッチ160は、例えば、3ポート2位置弁からなり、ガラス基板保持部170が上昇しているときは、空気配管H7を遮断(閉止)している。また、下動位置検出スイッチ160は、昇降駆動用空気シリンダ180のピストンロッド182が縮み方向(Z2方向)に駆動されてガラス基板保持部170を降下させたときに連結部184に当接する当接部162と、弁部復帰用のバネ164とを有する。
【0067】
そのため、ガラス基板保持部170が降下して連結部184が下動位置検出スイッチ160の当接部162に当接すると、下動位置検出スイッチ160は、空気配管H7からの空気信号(圧縮空気)をシリンダ用切替弁220に供給(開放)するように切り替わる。これにより、シリンダ用切替弁220は、作動前の状態に復帰すると共に、空気配管H4、H5を介してテーブル駆動用空気シリンダ50の第1のシリンダ室50A及び昇降駆動用空気シリンダ180の第2のシリンダ室180Bに圧縮空気を供給する。これにより、昇降駆動用空気シリンダ180のピストンロッド182が伸び方向(Z1方向)に駆動される。そして、連結部184が当接部162から離間すると、下動位置検出スイッチ160は、バネ164のバネ力により復帰してシリンダ用切替弁220への圧縮空気の供給を停止する。これにより、テーブル駆動用空気シリンダ50のピストンロッド52及び昇降駆動用空気シリンダ180のピストンロッド182を動作前の状態に復帰させる。
【0068】
また、テーブル駆動用空気シリンダ50の右端に設けられたストローク調整部56は、ロッド56aの挿入長さを調整することでピストン51及びピストンロッド52のストロークを任意の長さに調整できる。
〔空気圧制御系統200の動作手順〕
ここで、上記空気圧制御系統200における空気信号(圧縮空気)の流れと共に、各部の動作手順について図7を参照して説明する。
(手順1):作業者は、図4Aに示すように各工程における作業が終了したガラス基板Wをガラス基板保持部170に挿入した後、送りスイッチ80の操作部82を押圧操作する。このとき、ガラス基板保持部170は、ガラス基板保持位置(ZA)に上昇している(図1、図2を参照)。
(手順2):送りスイッチ80は、空気配管H1を連通し、空気源210からの空気信号(圧縮空気)をシリンダ用切替弁220に供給する。これにより、シリンダ用切替弁220は、空気配管H3、H6に圧縮空気を供給するように切り替わると共に、他の空気配管H4、H5を大気開放(大気圧)とする。
(手順3):空気配管H3から供給された圧縮空気は、流量調整部230によって調整された流量によって昇降駆動用空気シリンダ180の第1のシリンダ室180Aに供給される。これと共に、空気配管H6から供給された圧縮空気は、流量調整部260の可変絞りKによって調整された流量によってテーブル駆動用空気シリンダ50の第2のシリンダ室50Bに供給される。
【0069】
これにより、テーブル駆動用空気シリンダ50は、第2のシリンダ室50Bの圧力上昇によりピストン51及びピストンロッド52をX1方向に駆動する。このとき、ピストンロッド52の先端部に設けられた送り用ラチェット150は、爪部150aが送り用ラック140の歯142−1の傾斜側を押圧されて上方に回動することで、歯142を乗り越えた後、爪部150aがコイルバネ158のバネ力によりX1方向側に隣接された歯142の垂直部に係合する。従って、送り用ラチェット150は、一ピッチ分(収納部72の一つ分の距離)移動した位置の歯142の垂直部に係合する。
(手順4):昇降駆動用空気シリンダ180は、第1のシリンダ室180Aの圧力上昇によりピストン185及びピストンロッド182を降下させて、ガラス基板保持部170をガラス基板投下位置(ZB)に降下させる。(図4B、図5を参照)
ガラス基板保持部170は、ガラス基板投下位置(ZB)に降下する過程において、可動側カムフォロアー194が固定側ガイドカム192の第2のカム面192bに摺接するため、第2の保持部176がY2方向にスライドして第1の保持部174と第2の保持部176とのY方向の間隔が広がり、ガラス基板保持部170に保持されたガラス基板Wが開放されて収納容器70の未挿入の収納部72に挿入される。
(手順5):ガラス基板保持部170がガラス基板投下位置(ZB)に降下すると共に、連結部184が下動位置検出スイッチ160の当接部162に当接する。これにより、下動位置検出スイッチ160は、空気配管H7を連通して空気源210からの空気信号(圧縮空気)をシリンダ用切替弁220に供給する。これにより、シリンダ用切替弁220は、送りスイッチ80が操作される前の状態に戻される。
(手順6):シリンダ用切替弁220は、空気配管H3、H6を大気開放(大気圧)とすると共に、他の空気配管H4、H5に圧縮空気を供給するように切り替わる。
【0070】
そして、空気配管H4から供給された圧縮空気は、流量調整部240によって調整された流量によって昇降駆動用空気シリンダ180の第2のシリンダ室180Bに供給される。そのため、昇降駆動用空気シリンダ180は、第2のシリンダ室180Bの圧力上昇によりピストン185及びピストンロッド182をZ1方向に駆動してガラス基板保持部170をガラス基板保持位置(ZA)に上昇させる(図4Aを参照)。
【0071】
これと共に、空気配管H5から供給された圧縮空気は、流量調整部250によって調整された流量によってテーブル駆動用空気シリンダ50の第1のシリンダ室50Aに供給される。そのため、テーブル駆動用空気シリンダ50は、第1のシリンダ室50Aの圧力上昇によりピストン51及びピストンロッド52をX2方向に駆動する。
【0072】
テーブル駆動用空気シリンダ50のピストンロッド52が縮み方向(X2方向)に駆動されると、送り用ラチェット150の爪部150aが送り用ラック140の歯142の垂直側を押圧する。その反力で移動テーブル20がX1方向に移動する。(図6A、図6Bを参照)
そして、移動テーブル20がX1方向に移動すると、前述したロック機構90の戻り防止用ラチェット120は、爪部120aが戻り防止用ラック110の歯112の傾斜側に押されて下方に回動した後、移動テーブル20が収納容器70の一ピッチ分(収納部72の一つ分の距離)移動した時点でコイルバネ130のバネ力により爪部120aが戻り防止用ラック110の歯112の垂直側に係合して一ピッチ分の移動位置を位置決めする。
【0073】
よって、収納容器70の未挿入の収納部72がガラス基板保持部170の降下によるガラス基板挿入位置(X1方向の停止位置)に移動して、当該ガラス基板挿入位置に位置決めされる。これで、収納容器70の未挿入の収納部72は、次に挿入されるガラス基板Wを収納可能とする待機状態となる。
【0074】
この後は、上記手順1に戻り、手順1〜手順6を繰り返す。このように、空気圧制御系統200により収納容器70の各収納部72にガラス基板Wを1枚ずつ確実に挿入でき、同じ収納部72に2枚目のガラス基板Wを挿入したり、あるいは未挿入の収納部72を残して次の収納部72にガラス基板Wを挿入してしまうことや、2つの収納部72に一枚のガラス基板Wを斜めに挿入することがなくなる。また、収納容器70に収納されたガラス基板Wが乾燥しないように水槽に浸した状態でも電気的な部品や配線がないので安定的に動作してガラス基板Wを一枚ずつ複数の収納部72の夫々に挿入させることができる。
【0075】
また、上記手順1〜手順6によって収納容器70の全ての収納部72のガラス基板Wが挿入完了した場合には、移動テーブル20をX2方向にスライド操作して初期位置に戻す。その際、図示しない送り用ラチェット保持機構により、送り用ラチェット150は爪部150aが歯142と干渉しないように送り用ラック140の歯142の上方に回動させた状態に保持される。
〔変形例〕
図8は空気圧制御系統の変形例を示す系統図である。図8において、上記図7と共通部分には、同一符合を付してその説明を省略する。
【0076】
図8に示されるように、変形例の空気圧制御系統200Aでは、ガラス基板保持部170の第1の保持部174の内壁に小型化された圧力スイッチ80Aが設けられている。圧力スイッチ80Aは、上記送りスイッチ80と同じ機能を有するものであり、ガラス基板Wが挿入されていないときは空気配管H1を遮断(閉止)し、ガラス基板Wがガラス基板保持部170に挿入されると配管H7を連通して圧縮空気(空気信号)をシリンダ用切替弁220に供給(開放)するように切り替わる。
【0077】
従って、圧力スイッチ80Aは、ガラス基板Wがガラス基板保持部170に挿入されると、圧縮空気(空気信号)をシリンダ用切替弁220に供給するため、上記送りスイッチ80のように作業者が押圧操作をする必要がなく、作業効率を高めることができる。
【0078】
また、空気圧制御系統200Aによる動作手順は、送りスイッチ80が圧力スイッチ80Aに置き換わることで、上記手順1〜手順6と同じなので、その説明は省略する。
〔磁気ディスク用ガラス基板の製造方法について〕
一般に、磁気ディスク用ガラス基板(「磁気記録媒体用ガラス基板」とも称す)及び磁気ディスクの製造工程は、以下の工程を含む。
(工程1)フロート法、フュージョン法またはプレス成形法で成形されたガラス素基板を、中央部に円孔を有する円盤形状に加工した後、内周側面と外周側面を面取り加工する。
(工程2)ガラス基板の側面部と面取り部を端面研磨する。
(工程3)ガラス基板の主平面を研磨する。研磨工程は、1次研磨のみでもよく、1次研磨と2次研磨を行ってもよく、2次研磨の後に3次研磨を行ってもよい。
(工程4)ガラス基板の精密洗浄を行い、磁気ディスク用ガラス基板を得る。
(工程5)磁気ディスク用ガラス基板の上に磁性層などの薄膜を形成し、磁気ディスクを製造する。
【0079】
上記磁気ディスク用ガラス基板及び磁気ディスクの製造工程において、(工程2)端面研磨工程の前後のうち少なくとも一方で主平面のラップ(例えば、遊離砥粒ラップ、固定砥粒ラップなど)を実施してもよく、各工程間にガラス基板の洗浄(工程間洗浄)やガラス基板表面のエッチング(工程間エッチング)を実施してもよい。なお、主平面のラップ(例えば、遊離砥粒ラップ、固定砥粒ラップなど)は広義の主平面の研磨である。
【0080】
さらに、磁気ディスク用ガラス基板に高い機械的強度が求められる場合、ガラス基板の表層に強化層を形成する強化工程(例えば、化学強化工程)を研磨工程前、または研磨工程後、あるいは研磨工程間で実施してもよい。
【0081】
本発明において、磁気ディスク用ガラス基板は、アモルファスガラスでもよく、結晶化ガラスでもよく、ガラス基板の表層に強化層を有する強化ガラス(例えば、化学強化ガラス)でもよい。また、本発明のガラス基板のガラス素基板は、フロート法で造られたものでもよく、フュージョン法で造られたものでもよく、プレス成形法で造られたものでもよい。
【0082】
本発明は、磁気ディスク用ガラス基板の製造工程において、上記各工程で加工されたガラス基板を収納容器に装填する際に適用される。収納容器に装填されたガラス基板は次工程に移送される、又は保管される。
【産業上の利用可能性】
【0083】
上記実施例では、磁気記録媒体用のガラス基板を製造する工程を例に挙げて説明したが、これに限らず、これ以外の用途で使用されるガラス基板を加工する各工程にも本発明を適用できるのは勿論である。
【符号の説明】
【0084】
10 ガラス基板装填装置
20 移動テーブル
21 凹部
22 張り出し部
30 固定ベース
32 支持部
40 ガラス基板挿入機構
50 テーブル駆動用空気シリンダ
50A 第1のシリンダ室
50B 第2のシリンダ室
51 ピストン
52 ピストンロッド
54 本体
56 ストローク調整部
60 収納容器送り機構
70 収納容器
72 収納部
74 仕切り部
80 送りスイッチ
80A 圧力スイッチ
82 操作部
84 バネ
90 ロック機構
100 移動位置制限機構
110 戻り防止用ラック
112 歯
120 戻り防止用ラチェット
120a 爪部
122 ブラケット
122a 軸
130 コイルバネ
140 送り用ラック
142 歯
150 送り用ラチェット
150a 爪部
152 支持部材
152a 長孔
152b 軸
158 コイルバネ
160 下動位置検出スイッチ
162 当接部
164 バネ
170 ガラス基板保持部
171 底部開口
172 第1のロッド
173 第2のロッド
174 第1の保持部
176 第2の保持部
179 コイルバネ
180 昇降駆動用空気シリンダ
180A 第1のシリンダ室
180B 第2のシリンダ室
181 本体
182 ピストンロッド
184 連結部
190 開閉機構
192 固定側ガイドカム
192a 第1のカム面
192b 第2のカム面
194 可動側カムフォロアー
200、200A 空気圧制御系統
210 エア源
220 シリンダ用切替弁
230、240、250、260 流量調整部
H1〜H7 空気配管
W ガラス基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のガラス基板を所定間隔で整列させた状態に収納する複数の収納部を有する収納容器に前記ガラス基板を装填するガラス基板装填装置において、
前記収納容器が固定される移動テーブルと、
前記移動テーブルを移動可能に支持する固定ベースと、
前記収納容器の前記複数の収納部のうち前記ガラス基板が未挿入になっている一の前記収納部に前記ガラス基板を挿入するガラス基板挿入機構と、
前記移動テーブルを前記収納容器と共に前記複数の収納部の整列方向に移動させるテーブル駆動用空気シリンダと、
前記移動テーブルが前記テーブル駆動用空気シリンダの駆動力により前記複数の収納部の整列方向に移動する際、前記収納容器の前記複数の収納部のうち前記ガラス基板が挿入されていない未挿入の前記収納部を前記基板挿入機構の挿入口に対向させるように、前記移動テーブルの移動位置を位置決めする収納容器送り機構と、
を備えたことを特徴とするガラス基板装填装置。
【請求項2】
前記収納容器送り機構は、
前記複数の収納部に前記ガラス基板が挿入されると信号を出力するスイッチと、
前記テーブル駆動用空気シリンダの駆動力により移動された前記移動テーブルが移動前の位置に戻らないように前記固定ベースに係止するロック機構と、
前記移動テーブルを前記複数の収納部のうち一つ分の距離を移動させるように前記テーブル駆動用空気シンリンダのピストンロッドのストロークを制限する移動位置制限機構と、
を備える請求項1に記載のガラス基板装填装置。
【請求項3】
前記移動位置制限機構は、
前記固定ベースに設けられた前記移動方向に延在形成された送り用ラックと、
前記テーブル駆動用空気シリンダのピストンロッドの先端に設けられ、前記移動テーブルを前記収納部の一つ分の距離を移動させるときに前記送り用ラックに係合する送り用ラチェットと、を有し、
前記ロック機構は、
前記移動テーブルに設けられた前記移動方向に延在形成された戻り防止用ラックと、
前記移動テーブルが前記収納部の一つ分の距離を移動した後に前記戻り防止用ラックに係合する戻り防止用ラチェットと、を有する請求項1又は2に記載のガラス基板装填装置。
【請求項4】
前記スイッチは、空気圧式スイッチからなり、前記テーブル駆動用空気シリンダに供給される圧縮空気の供給経路を切り替える空気圧制御系統に接続され、押圧操作により空気信号を前記空気圧制御系統に出力する請求項1乃至3の何れかに記載のガラス基板装填装置。
【請求項5】
前記スイッチは、前記ガラス基板挿入機構に供給された前記ガラス基板が前記収納容器の前記収納部に挿入されたことを検出すると共に、前記信号を出力する請求項1乃至4の何れかに記載のガラス基板装填装置。
【請求項6】
前記ガラス基板挿入機構は、
前記移動テーブルに固定された前記収納容器の上方に昇降可能に設けられ、前記ガラス基板を保持または開放するように開閉動作するガラス基板保持部と、
該ガラス基板保持部を昇降させる昇降駆動用空気シリンダと、
該昇降駆動用空気シリンダにより前記ガラス基板保持部が前記収納容器に接近されると共に、前記ガラス基板保持部に保持された前記ガラス基板を開放させ、前記収納容器の前記収納部に投下させる開閉機構と、
を有する請求項1乃至5の何れかに記載のガラス基板装填装置。
【請求項7】
前記ガラス基板は、磁気記録媒体用ガラス基板である請求項1乃至6の何れかに記載のガラス基板装填装置。
【請求項8】
ガラス基板を製造する各工程におけるガラス基板の装填方法において、
前記工程の作業が終了した前記ガラス基板を、前記請求項1乃至7の何れかに記載されたガラス基板装填装置を用いて収納容器の複数の収納部の夫々に装填するガラス基板の装填方法。
【請求項9】
板形状を有するガラス素基板を加工してガラス基板を製造する各工程間で、前記ガラス基板を収納容器に収納して移送するガラス基板の製造方法において、
前記工程の作業が終了した前記ガラス基板を、前記請求項1乃至7の何れかに記載されたガラス基板装填装置により前記複数の収納部の夫々に装填し、前記複数の収納部に前記ガラス基板が装填された前記収納容器を次の工程へ移動させるガラス基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−96903(P2012−96903A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246519(P2010−246519)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】