説明

ガラス建材の製造方法

【課題】 ガラス本来の特徴とは異なる表面意匠を備えていて、表面仕上材として十分に利用可能な優れた装飾性を有するガラス建材を提供する。
【解決手段】 夾雑物含有量が0〜1重量%の廃ガラス粉体(12)を型枠(10)内に充填し、その表面を型押した状態で、廃ガラス粉体(12)を半溶融状態で焼成することによって、ガラス建材(1)の表層部(2)を成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主として建物の外装材や内装材として好適に用いられるリサイクル軽量ガラス建材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、資源の有効利用の観点から、建物の解体時に生じる廃ガラスや各種ガラス製品の製造時に破材として生じる廃ガラスを破砕或いは粉砕し、その廃ガラス粒体や廃ガラス粉体に各種の添加物を混合して焼成することで、ガラス建材として再生させるといった試みがなされている。
【0003】
しかし、この種のガラス建材としては、平滑さや光沢といったガラス自体の美しさを強調した表面意匠を備えたものが主流であり、仕上がりが単調で装飾性に乏しかった。廃ガラスを利用したリサイクルガラス建材の市場性を高めるためには、ガラス本来の特徴に固執せずに、様々な表面意匠を備えたガラス建材を展開していく必要があった。
【0004】
このため、近年においては、例えば特許文献1や特許文献2にも開示されているように、型押によって表面を凹凸形状にして、天然石の風合いを表現したり、深い陰影や重厚感を表現したようなガラス本来の特徴とは異なる表面意匠を有する各種ガラス建材が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−342961号公報
【特許文献2】特開平8−118338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、廃ガラスには、ガラス以外の夾雑物が含まれていることが多い。例えば、建物の解体時に窓サッシ等から回収される廃ガラスには、アルミニウム等の金属類や樹脂類が夾雑物として含まれている。
【0007】
従って、上記のようなガラス本来の特徴とは異なる表面意匠を備えたガラス建材であっても、廃ガラスを単に破砕或いは粉砕して利用する場合には、夾雑物が予期せぬ要素となって表面意匠に悪影響を与えることがあり、特に装飾性が要求される建物内外壁の表面仕上げ材としては利用し難いといった問題があった。
【0008】
そこで、この発明は、上記の不具合を解消して、ガラス本来の特徴とは異なる表面意匠を備えていて、表面仕上材として十分に利用可能な優れた装飾性を有するガラス建材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、この発明のガラス建材の製造方法は、夾雑物含有量が0〜1重量%の廃ガラス粉体を型枠内に充填し、その表面を型押した状態で、前記廃ガラス粉体を焼成して、表面に凹凸を有する表層部を成形したことを特徴とする。この場合、廃ガラス粉体に着色剤を混入して型枠内に充填したり、廃ガラス粉体を型枠内に充填した後に着色剤を散布して、着色を施している。
【0010】
また、廃ガラス粉体を前記型枠内に充填した後に着色剤を散布した場合には、型押部材を前記型枠内の廃ガラス粉体に届くまで押し込んで型押することで、前記廃ガラス粉体を表層部の表面に露出させている。
【0011】
さらに、上記の製造方法において、前記表層部の表面の凹所を、夾雑物含有量が0〜1重量%の棒状又は塊状の廃ガラスで埋めて、その上から夾雑物含有量が0〜1重量%の板状の廃ガラスを被せて、これら廃ガラスを焼成することによって、前記表層部の表面を部分的に深みのある透明層で覆うようにしている。
【0012】
また、前記廃ガラス粉体を700℃〜1000℃で焼成して、廃ガラス粉体の半溶融状態での焼成を実現している。
【0013】
さらに、前記表層部の裏面側に、廃ガラス粉体又は廃ガラス粒体を焼成してなる基層部を形成している。
【発明の効果】
【0014】
この発明のガラス建材の製造方法では、夾雑物を含まないか若しくは極微量に含む廃ガラス粉体を主原料としているので、この主原料を焼成しても夾雑物が表面意匠に悪影響を及ぼすことがなく、表面仕上材として十分に利用可能な装飾性に優れたガラス建材を得ることができる。
【0015】
しかも、型押によってガラス建材の表層部の表面に凹凸を形成し、また適宜着色を施すことによって、ガラス本来の特徴とは異なる様々な表面意匠を実現して、廃ガラスを利用したリサイクルガラス建材の市場性を高めることができる。
【0016】
さらに、着色した表層部の表面に廃ガラス粉体を露出させたり、表層部の表面を部分的に深みのある透明層で覆うようにすることで、表層部の表面において要所要所にアクセントをつけて、単に表層部の表面を型押して凹凸を形成するときよりもガラス建材の表情を豊かにすることができる。
【0017】
また、廃ガラス粉体を半溶融状態で焼成することで、ガラス建材の表層部の表面を艶消し状態とすることができ、ガラス本来の特徴から大きく脱却した表面意匠として、装飾性をさらに高めることができる。しかも、焼成温度を700℃〜1000℃、好ましくは約800℃といった低温にすることで、熱排出量及び二酸化炭素排出量を抑えて、環境負荷をより一層低減することができる。
【0018】
さらに、表層部の裏面側に基層部を設けて2層構造とすることで、表層部において意匠性を高め、基層部において物性や経済性を高めるといったように機能を分担させることができ、装飾性に優れた強度的に強くて安価なガラス建材とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
この発明の第1実施形態に係るガラス建材は、建物の解体時に生じる廃ガラスや工場等において各種ガラス製品の製造時に破材として生じる廃ガラスを、分別精製して再利用したものであり、ガラス本来の特徴とは異なる表面意匠を備えている。
【0020】
図1及び図2は、第1実施形態に係るガラス建材(1)を示しており、このガラス建材(1)は、表層部(2)と基層部(3)とからなる2層構造となっている。
【0021】
表層部(2)は、例えば粒径が10μm〜100μmで、夾雑物含有量が0〜1重量%となるように調整された廃ガラス粉体を用いて、この廃ガラス粉体に発泡剤や顔料等の着色剤を適宜添加してなる原料を、半溶融状態で焼結することによって構成されている。主原料となる廃ガラス粉体の夾雑物含有量を0〜1重量%に調整しているのは、夾雑物含有量が1重量%よりも多くなると、夾雑物が表面意匠に悪影響を与え、特に表面仕上材としての利用に支障をきたすからである。
【0022】
この表層部(2)においては、廃ガラス粉体が互いに完全に溶融することなく融着し合った状態となっている。すなわち、粒度の細かい廃ガラス粉体が芯部を残したまま外表面部分においてのみ融着し合った状態となっている。このため、表層部(2)の表面には、微細な凹凸が生じていて、その表面に当たった光は乱反射して拡散する。これにより、表層部(2)の表面は、艶消し状態となっている。しかも、この表層部(2)の表面には、型押によって比較的大きな凹凸模様(4)が形成されている。従って、この表層部(2)は、ガラス本来の特徴とは異なる御影石等の天然石の自然な風合いを表現している。
【0023】
基層部(3)は、廃ガラス粉体又は廃ガラス粒体に発泡剤等を適宜添加してなる原料を、半溶融状態で焼成することによって構成されている。この基層部(3)は、ガラス建材の意匠性に影響を与えるものではないので、主として物性や経済性を考慮して構成されている。従って、使用する廃ガラス粉体や廃ガラス粒体としては、意匠性が考慮される表層部(2)のときのような夾雑物含有量は要求されず、夾雑物を1重量%よりも多く含んでいても良い。
【0024】
このガラス建材(1)の製造に際しては、まず、建物の解体時に生じる廃ガラスや工場等において各種ガラス製品の製造時に破材として生じる廃ガラスを回収して、それら廃ガラスを夾雑物を含まない部分と含む部分とに分別する。そして、夾雑物を含まない部分については、そのまま破砕及び粉砕して、夾雑物含有量が0重量%の廃ガラス粉体を得るようにしている。また、夾雑物を含む部分については、例えばロールクラッシャーやハンマークラッシャーで破砕及び粉砕しながらガラスと夾雑物とを篩い分けて、夾雑物含有量が1重量%以下になるように調整する。
【0025】
そして、これら夾雑物含有量を抑えた廃ガラス粉体にドロマイト等の発泡剤を添加混入して、ボールミルでさらに微粉砕する。その後、水ガラス等を散布しながら造粒した後、篩機によって、粒度の細かい表層部成形用の廃ガラス粉体と、粒度の粗い基層部成形用の廃ガラス粉体とに分級する。表層部成形用の廃ガラス粉体には、例えば粘土質の顔料等からなる着色剤を添加混入する。
【0026】
続いて、図3に示すように、型枠(10)内に基層部成形用の廃ガラス粉体(11)を充填した後、その上から表層部成形用の廃ガラス粉体(12)を散布する。そして、例えば鉄板にシリコンコーキング材で模様付けした型押部材(13)を使用して、この型押部材(13)の模様付き面(13a)を表層部成形用の廃ガラス粉体(12)の表面に押し付けて型押することで、凹凸模様(4)を転写する。この状態で、焼成炉において、表層部成形用の廃ガラス粉体(12)及び基層部成形用の廃ガラス粉体(11)を約700℃〜1000℃、好ましくは約800℃で約1時間保持して、これら廃ガラス粉体(11)(12)を半溶融状態で焼成して、表層部(2)と基層部(3)とが一体化した2層構造のガラス建材(1)を得る。
【0027】
このようにして得られたガラス建材(1)は、表層部(2)の表面が凹凸模様(4)を有する艶消し状態となっており、建物の外装材等の表面仕上材として十分に利用可能な装飾性に優れたものとなっている。なお、着色剤の色や量、混入の仕方等を適量調整すれば、バリエーションに富んだ各種色調のガラス建材を得ることができる。また、大判サイズでの製造設備があれば、高意匠外壁パネルを製造することも可能である。
【0028】
図4及び図5は、第2実施形態に係るガラス建材(20)を示しており、このガラス建材(20)においては、表層部(21)の表面に部分的に深く彫り込んだ深溝(22)(22)…が形成されて、ガラス本来の特徴とは異なる砂岩調の質感を表現している。
【0029】
このガラス建材(20)の製造に際しては、図6に示すように、型枠(10)内における表層部成形用の廃ガラス粉体(12)の表面に、粘土質の顔料等からなる着色剤(23)を散布する。そして、深彫り用突起(24)(24)…付きの型押部材(25)を使用して、この型押部材(25)の模様付き面(25a)を、着色剤(23)を散布した表層部成形用の廃ガラス粉体(12)の表面に押し付けて、深彫り用突起(24)(24)…が着色剤(23)を貫通して表層部成形用の廃ガラス粉体(12)に届くまで押し込むようにして型押することで、凹凸模様(26)を転写する。この状態で、焼成炉において、表層部成形用の廃ガラス粉体(12)及び基層用の廃ガラス粉体(11)を半溶融状態で焼成する。
【0030】
このようにして得られたガラス建材(20)は、表層部(21)の表面が全体的に着色剤(23)による着色が施された艶消し状態となっていて、深く彫り込んだ部分すなわち深溝(22)(22)…において、表層部成形用の廃ガラス粉体(12)が露出して、その廃ガラス粉体(12)の色が筋状に現れた状態となっており、建物の外装材等の表面仕上材として十分に利用可能な装飾性に優れたものとなっている。なお、その他の構成や製造方法は、第1実施形態に係るガラス建材(1)のときと同様である。
【0031】
図7及び図8は、第3実施形態に係るガラス建材(30)を示しており、このガラス建材(30)においては、表層部(31)の表面が部分的に深みのある透明層(32)で覆われていて、ガラス本来の特徴とは異なる奥行き感のある表情となっている。
【0032】
このガラス建材(30)の製造に際しては、図9に示すように、型押によって生じる表層部成形用の廃ガラス粉体(12)の表面における細長い凹所(33)(33)…を、夾雑物含有量が0〜1重量%の棒状又は塊状の廃ガラス(34)(34)…によって埋めて、その上から表層部成形用の廃ガラス粉体(12)の表面全体を覆うようにして夾雑物含有量が0〜1重量%の板状の廃ガラス(35)を被せる。
【0033】
この状態で、焼成炉において、表層部成形用及び基層部成形用の廃ガラス粉体(11)(12)、及び後載せした廃ガラス(34)(35)…を焼成する。これにより、表層部(31)の表面に、廃ガラス(34)(35)…が一体的に融着してなる深みを有する透明層(32)が形成される。
【0034】
このようにして得られたガラス建材(30)は、透明層(32)よって表面全体が光沢を有しているものの、要所要所に配された深み部分(36)(36)…がアクセントとなって、建物の内装材等の表面仕上材として十分に利用可能な装飾性に優れたものとなっている。
【0035】
なお、その他の構成や製造方法は、第1実施形態に係るガラス建材(1)のときと同様である。また、この第3実施形態においては、第2実施形態のときのように表層部成形用の廃ガラス粉体(12)の表面に着色剤を散布して着色したり、廃ガラス(34)(35)…自体を着色剤よって着色したり、或いは、着色剤を全く使用しなくても良い。
【0036】
この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の第1実施形態に係るガラス建材の斜視図である。
【図2】同じくその縦断面図である。
【図3】同じくその製造工程を示す図である。
【図4】この発明の第2実施形態に係るガラス建材の斜視図である。
【図5】同じくその縦断面図である。
【図6】同じくその製造工程を示す図である。
【図7】この発明の第3実施形態に係るガラス建材の斜視図である。
【図8】同じくその縦断面図である。
【図9】同じくその製造工程を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
(1)(20)(30) ガラス建材
(2)(21)(31) 表層部
(4)(26) 凹凸模様
(10) 型枠
(11) 基層部成形用の廃ガラス粉体
(12) 表層部成形用の廃ガラス粉体
(13)(25) 型押部材
(23) 着色剤
(32) 透明層
(33) 凹所
(34)(35) 廃ガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
夾雑物含有量が0〜1重量%の廃ガラス粉体を型枠内に充填し、その表面を型押した状態で、前記廃ガラス粉体を焼成して、表面に凹凸を有する表層部を成形したことを特徴とするガラス建材の製造方法。
【請求項2】
夾雑物含有量が0〜1重量%の廃ガラス粉体に着色剤を混入して型枠内に充填し、その表面を型押した状態で、前記廃ガラス粉体を焼成して、表面に凹凸を有する表層部を成形したことを特徴とするガラス建材の製造方法。
【請求項3】
夾雑物含有量が0〜1重量%の廃ガラス粉体を型枠内に充填した後に着色剤を散布し、その表面を型押した状態で、前記廃ガラス粉体を焼成して、表面に凹凸を有する表層部を成形したことを特徴とするガラス建材の製造方法。
【請求項4】
型押部材を前記型枠内の廃ガラス粉体に届くまで押し込んで型押することで、前記廃ガラス粉体を表層部の表面に露出させた請求項3記載のガラス建材の製造方法。
【請求項5】
型押によって生じる前記廃ガラス粉体の表面の凹所を、夾雑物含有量が0〜1重量%の棒状又は塊状の廃ガラスで埋めて、その上から夾雑物含有量が0〜1重量%の板状の廃ガラスを被せて、これら廃ガラスを焼成することによって、前記表層部の表面を部分的に深みのある透明層で覆うようにした請求項1乃至4のいずれかに記載のガラス建材の製造方法。
【請求項6】
前記廃ガラス粉体を半溶融状態で焼成した請求項1乃至5のいずれかに記載のガラス建材の製造方法。
【請求項7】
前記廃ガラス粉体を700℃〜1000℃で焼成した請求項1乃至6のいずれかに記載のガラス建材の製造方法。
【請求項8】
前記表層部の裏面側に、廃ガラス粉体又は廃ガラス粒体を焼成してなる基層部を形成した請求項1乃至7のいずれかに記載のガラス建材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−206381(P2006−206381A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−20897(P2005−20897)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係わる特許出願(経済産業省「次世代住宅技術開発(資源循環型住宅技術開発に係るものに限る。)廃ガラスの多孔質軽量建材への転換技術の開発」に係わる委託研究)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】