説明

ガラス板の表面の筋状及び面状の加工をするための方法及び装置

【課題】加工の前後にガラス板を方向転換する必要がなく、片面だけのコーティングの除去や相前後する両面のコーティングの除去を行なうことができる方法及び装置の提供。
【解決手段】除層すべき表面の領域内に、少なくとも一対のプラズマノズル5,6が配設され、プラズマ光線14,15用の出口が、対向するガラス板2の幅広側の表面37,38に向けて相互に及び同時にそれぞれ整向され、プラズマノズルの対の両ノズル5,6が一緒に制御及び運転され、選択的にノズル対の両ノズル5,6の一方から表面37,38の一方の領域か、両ノズル5,6から同時に表面37,38の2つの領域が、プラズマ光線14,15の作用を受け、この場合、表面37,38のプラズマ光線14,15の作用を受ける領域内でコーティング11,12が除去され、同時にガラス表面が活性化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも片面に表面コーティングを有するガラス板が加工及び移動装置にセットされ、プラズマノズルによりプラズマ光線が発生され、プラズマノズルがガラス板の表面に渡り移動され、このプラズマ光線が除去すべきコーティングを有するガラス板の表面領域に向けて整向され、コーティングがプラズマ光線により少なくとも部分的に除去される、筋状及び面状の加工をするための、特にガラス板の表面の有機質及び無機質のコーティングの部分的な除去をするための方法に関する。本発明は、更に、ガラス板の幅広側用の支持面を有する加工及び移動装置と、プラズマ光線を発生させるための少なくとも1つのプラズマノズル用の移動及び支持装置とを有し、プラズマノズルが、ガラス板の幅広側の表面に向けて整向された、プラズマ光線用の出口を有する前面を備える、前記の方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
公知の合わせガラスは、互いに平行に配設され、かつ周縁領域をスペーサによって互いに結合されている少なくとも2つのガラス板から成る。絶縁用合わせガラスの場合、非常にしばしばガラス板の少なくとも一方の内向面はコーティングを備えている。このコーティングは、例えば熱線又は光線を反射することによって、公知のように機能の改善に役立つ。防火用合わせガラスの場合、部分的に絶縁用合わせガラスの場合と同じコーティングが使用される。例えば有機質又は無機質の層が使用される。このコーティングは、例えば火災時に防火ペーストからのガラスの破片の良好な分離を可能にするという課題を有する。2つより多くのガラス板から成る合わせガラスの場合、若干の例で、室内に存在するガラス板は、両側もコーティングされている。周縁領域に使用されるガラス板間のスペーサは、樹脂又は金属の成形体か、弾性的なスペーサ材料から成るストランドから成る。成形体は、周縁部接合接着剤又は自己付着特性によりガラス板と接合される。スペーサ材料は、大抵は自己付着特性を備える。スペーサ成形体又はスペーサ材料から成るストランドに加えて、しばしば、更にシール材料から成るストランドも取り付けられる。公知の周縁部接合接着剤と付着性のスペーサ材料は、ガラス表面に良好に付着するために最適化及び設定されている。しかしながら、これらは、コーティングに対して不十分にしか付着しないか、全く付着しないか、幾つかのコーティングの酸化特性に基づいて室内に対して最適なシールを何ら保証しない。従って、これらコーティングは、接着剤接合又は他の理由から「純粋な」ガラス面に対する作業が行なわれる至るところで、再び除去しなければならない。この場合、コーティングの部分的な除去は、公知のようにガスの炎又は適当な機械装置、例えば研磨ディスクによって行なうことができる。
【0003】
特許文献1から、絶縁用合わせガラス用のガラス板のコーティングの筋状の除去に関する方法及び装置が公知である。ここに記載されたガラス板の場合、片面に金属酸化物−金属−金属酸化物型の部分的に反射する多重層が取り付けられている。ディスクの周縁部に沿った多重層の筋状の除去をするために、切断装置を有するガスバーナが連結されており、このガスバーナは、周縁領域のコーティングを燃焼させる。コーティングの筋状の除去は、ここではガラス板の所望のサイズへの切断と同時に行なわれる。この装置は、両面のコーティングの筋状の領域を除去すべきである両面をコーティングしたガラス板を180°方向転換しなければならないという欠点を有する。引き続き、ガラス板は、2度もコーティングの除去をするためのバーナを有する相応の設備に案内しなければならない。この工程は、非常に費用と時間がかかる。片面をコーティングしたガラス板は、常に、ガラスのコーティングをした面がガスバーナを有する装置に向けて整向されるように除層装置に投入しなければならない。従って、ガラス板の一部は、加工の前に相応の費用をもって方向転換しなければならない。後で複数のガラス板を1つの合わせガラスに組み立てるために、更にまた各第2のガラスは方向転換されなければならない。加えて、コーティングを燃焼させることは、速度を制限してしか行なうことができない。
【0004】
ガラス板のコーティングの部分的な除去をするための別の解決策は特許文献2から公知である。これは、自動車ガラスの撥水コーティングの部分的な除去をするための装置である。ガスバーナの個所には、プラズマバーナの使用が提案される。プラズマ光線は、標準的なガスの炎に比べ本質的に正確に設定された光線横断面を備え、比較的小さい光線横断面に設定することもできる。ここでも、両幅広側をコーティングしたガラス板が方向転換されなければならず、両面のコーティングを部分的に除去すべきである場合は、2度も設備に案内しなければならないという欠点がある。加えて、プラズマ光線を適用する場合には、プラズマノズルとガラス板の表面間の間隔を比較的正確に遵守しなければならないという問題がある。間隔が非常に小さい場合、プラズマ光線が消えてしまうか、不十分な除層工程の結果が生じる。間隔が非常に大きい場合、除層は同様に不十分となり、余分なコーティングがあとに残る。これは、コーティングを部分的に除去したガラス板を生産した場合の障害及びスクラップを生じさせる。この公知の装置に対して、どのようにしてプラズマノズルとガラス板の表面間の間隔を正確に遵守することができるかの解決策は何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許第3403682号明細書
【特許文献2】国際公開第0119745号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、加工の前後にガラス板を方向転換する必要がなく、片面だけのコーティングの除去や相前後する両面のコーティングの除去又は同時の両面のコーティングの除去を行なうことができ、1つのガラス板の任意の面領域のコーティングの除去を行なうことができ、同時に各プラズマノズルと幅広側の表面間の最適な間隔の維持を保証する、ガラス板の表面の有機質及び無機質のコーティングを筋状及び面状に除去することができる方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の上位概念に記載の方法の場合は、本発明に従ってこの請求項1を特徴付ける特徴によって解決され、請求項6の上位概念に記載の装置の場合は、この請求項6を特徴付ける特徴によって解決される。本発明の有利な発展的構成は、従属請求項の特徴により得られる。
【0008】
本発明による方法の場合、除層すべきガラス板表面の領域内に、少なくとも一対のプラズマノズルが配設され、プラズマ光線用の出口が、対向するガラス板の幅広側の表面に向けて相互に及び同時にそれぞれ整向される。プラズマノズルの対の両ノズルは一緒に制御及び運転される。選択的にノズル対の両ノズルの一方から表面の一方の領域か、両ノズルから同時に2つの表面の2つの領域が、プラズマ光線の作用を受ける。この場合、表面のプラズマ光線の作用を受ける領域内でコーティングが除去され、同時にガラス表面が活性化される。少なくとも一対のプラズマノズルの配設により、また両プラズマ光線が相互に整向されることにより、ガラス板を2つのプラズマ光線間に案内すること又はプラズマノズルの対をガラス板の両側を運動させることができる。この場合、プラズマノズルの対の両ノズルは一緒に制御及び運転され、必要に応じて両ノズルの一方又は両ノズルを同時に運転させることができる。ガラス板が片面だけコーティングされている場合、1つの対の、コーティングされた表面が整向されているノズルだけが運転される。この場合、設備に案内されるガラス板は、任意の方法で前面又は背面をコーティングすることができる。必要に応じて、前面のノズル又は背面のノズルが運転され、相応の表面にプラズマ光線が作用される。従って、コーティングされた表面が常に同じ方向に整向されるように、設備に投入する前のガラス板をすることは、もはや必要ない。設備から出た後でも、部分的に除層されたガラス板は、既に正しい位置で設備内に投入することができ、引き続き直接他のガラス板と1つの合わせガラスに組み立てることができるので、もはや方向転換する必要がない。両幅広側の表面がコーティングされているガラス板は、1つの作業工程で両面を除層することができ、従ってもはや方向転換し、2度も設備に案内する必要がない。この加工方法は、ガラス板の方向転換と設備の複数回の通過が省略されるので、加工ステップを低減する。
【0009】
方法の合目的な形成では、1つの対の両プラズマノズルが、共通の軸に整向され、この共通の軸上に互いに所定の間隔を置いて配設される。本発明によれば、更に、ガラス板の設備の移動中及び/又はガラス板に沿ったノズル対の移動中に、プラズマノズル間の領域内での、ガラス板の幅広側の表面の位置の変化が、間隔センサによって確認されることを提案する。この位置の変化に依存して、プラズマノズルの対は、それぞれガラス板に対してほぼ直角にガラス板の表面の位置の変化の方向に移動される。この方法ステップは、ガラス板の表面とプラズマノズル間の間隔の簡単な調整及び補正を可能にする。1つのノズル対の両ノズルの同時移動により、ガラス板の両表面に対するノズルの間隔を常に最適にすることも保証される。これにより、ガラス板の湾曲又は表面の凹凸を補正することができるが、ガラス板が最適に設備に案内されてない場合には、部分的にガラス板の位置の偏差も補正することができる。
【0010】
本発明の別の形成では、ガラス板の幅広側の表面の位置の変化が所定の移動値を上回った場合にだけ、プラズマノズルの対の移動が行なわれる。この場合、所定の移動値は、ガラス板の中立位置に関する値を、プラズマノズルの前面とガラス表面間の最大許容作動間隔と、プラズマノズルの前面とガラス表面間の最小許容作動間隔の差から求めることによって確認される。この措置は、ガラス板の両表面に対する両ノズルの関係が決して最小間隔を下回ることがなく、決して最大間隔を上回ることがないことを保証する。これは、プラズマ光線が消えないで、同時に除層工程が常に最適な品質及び完全さで経過することを保証する。この場合、ガラス板の中立位置は、ガラス板が正確に両ノズル間の中心に存在する位置である。この位置で、ガラス板の両側はそれぞれのガラス表面とノズル間の間隔が同じ大きさである。その場合には、1つの対の両ノズル間の自由な間隔は、ガラス板の厚さに最大間隔を加え最小間隔を加えた和によって決定される。
【0011】
本発明による装置の場合、ガラス板用の支持面の両側にそれぞれ1つのプラズマノズルが配設されており、両プラズマノズルが1つの対を構成し、これら両ノズルの前面が相互に整向されている。各プラズマノズルに間隔センサが配設されており、この間隔センサが、プラズマノズルの前面とガラス板の表面間の最小間隔を決定する。ノズル対のノズルの両前面間に自由な間隔が有り、この間隔が、少なくともガラス板の厚さにプラズマノズルの前面の最小間隔の2倍を加え許容移動値を加えた和に相当する。この本発明による配設は、ガラス板を方向転換する必要のない1つのガラス板の両面の加工を可能にするという利点をもたらす。筋状にガラス板の表面のコーティングの一部を除去する加工工程中には、選択的に両ノズルの一方か、同時に両ノズルを運転することができる。この場合、各ノズルの間隔センサは、ノズルの前面とガラス板の表面間の最小間隔を下回らず、最大間隔も上回らないことを保証する。これは、ノズルから出るプラズマ光線の所望かつ最適な機能を保証するために必要である。両ノズルが相互に整向されているので、両間隔センサも相互に整向されており、ガラス板の両側に機能ユニットを構成する。この場合、1つのノズル対の両ノズルの前面間の自由な間隔は、少なくともガラス板の厚さに最小間隔の2倍を加え予め設定した許容移動値を加えた和に相当するように選択される。この場合、許容移動値は、最小間隔を下回ること又は最大間隔を上回ることなく、両ノズル間をガラス板が移動することができるだけの大きさである。これにより、ノズルから出るプラズマ光線が消えることも、非常に強く散乱することもできないことが保証される。従って、許容移動値は、プラズマ光線がその最適な作用を発揮する許容領域にも相当する。ガラス板が、中立位置に、即ち正確に両ノズル間の中心に存在する場合は、各ノズルの前面とガラス板の表面間の間隔が最小間隔と許容移動値の半分の和に相当する。
【0012】
本発明によれば、更に、間隔センサが機械的なスペーサであり、このスペーサが、プラズマノズルの前面からガラス板の表面の方向に延在することを提案する。両ノズル間のガラス板の中立位置で、ガラス板の表面に向けて整向されたスペーサの前端部が、ガラス板の表面に対して自由な間隔を備える。この場合、この自由な間隔は、ガラス板の許容移動値の半分に相当する。従って、機械的なスペーサの長さは、少なくともプラズマノズルの前面とガラス表面間の最小許容間隔に相当する。しかしながらまた、機械的なスペーサの長さは、加工の品質の確保のために合目的であることが分かった場合には大きくすることもできる。
【0013】
本発明の合目的な形成では、許容移動値が、プラズマノズルの前面とガラス表面間の最大許容作動間隔と、プラズマノズルの前面とガラス表面間の最小許容作動間隔の差によって決定されている。ノズル間をガラス板が許容可能な方法で移動することができるだけのこの移動値は、1つのノズル対のノズルが最小変化時に移動されるのではなく、偏差が加工の品質及び機能方法に障害を与える場合にだけ移動されることを保証する。
【0014】
本発明によれば、更に、プラズマノズルが回転ヘッドを備え、プラズマ光線が、回転ヘッドの前面で回転軸に対して偏心して出て、この軸を中心として回転することを提案する。このようなプラズマノズルは、それ自身公知である。本発明による解決策と関係して、このようなプラズマノズルは、ほぼプラズマノズルの前面の中心及び回転軸の領域内にスペーサを配設することができるという利点をもたらす。これは、著しい構造状の利点をもたらし、色々な実施形においてスペーサの配設を可能にする。スペーサが、前端部に摺動面を有する熱硬化性の樹脂要素から成る解決策が、特に有利であることが分かった。このような樹脂要素用の適当な材料は、フェノール樹脂のグループから成る材料、例えばフェノール樹脂硬質紙から成る棒である。このようなスペーサは、スペーサとの接触時のガラス表面の損傷を防止する。従って、1つのノズル対のノズルは、ガラス表面とのスペーサの接触時にスペーサによりガラス表面に対してほぼ直角に移動されるように支承することが可能である。この解決策は、非常に簡単で、それにもかかわらず非常に高い加工の安全をもたらす。
【0015】
本発明の別の形成では、間隔センサが非接触式のセンサであり、この非接触式のセンサが制御機器と接続されている。制御機器は、プラズマノズル対に作用する変位装置と協働する。この実施形の場合、それ自身公知の非接触式のセンサが、例えば光学センサが使用される。この場合、装置は、非接触式のセンサを使用する場合でも、上で既に説明したものと同じ自由な間隔を1つのノズル対のノズル間に備え、同じ許容移動値を備える。この場合、センサは、ガラス板のガラス表面の位置の万が一の変化を確認し、後に接続されたノズル用の制御機器及び変位装置への相応の測定及び制御信号を発信する。これは、プラズマノズルの前面とガラス表面間の最小間隔を下回らないことと、最大間隔を上回らないこととを生じさせる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】表面からの除層をするための加工装置を示す。
【図2】ガラス板のエッジ領域と一対のプラズマノズルの一部を示す。
【図3】一対のプラズマノズルを部分断面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図に関連させた実施例を基にして本発明を以下で説明する。
【0018】
図1は、合わせガラス仕上げラインの一部である除層装置1を示す。このような合わせガラス仕上げラインは、水平な仕上げラインとして構成されており、例えばガラス板2の前処理をするための装置と、示されている除層装置1と、スペーサを取り付けるための装置と、複数のガラス板を1つの合わせガラスユニットに組み立てるための組立装置とを有することができる。この場合、除層装置1は支持面3を有し、この支持面上に公知の方法でガラス板2が載置及び保持されている。支持面3の下の領域に載置及び搬送ベルト4が配設されており、その上にガラス板2が載置されている。この搬送ベルト4と搬送駆動機構10により、ガラス板2が水平方向に除層装置1を移送される。ガラス板2に対してほぼ直角に延在する軸22上に一対のプラズマノズル5,6が配設されている。これらプラズマノズル5,6は、プラズマを発生させるために必要な手段を備えているそれぞれ1つのユニット7もしくは8の一部である。除層装置1は、その他に支持装置9を備え、この支持装置は、ほぼ機械1の垂直方向で支持面3に対して平行に延在する。プラズマユニット7,8は、この支持装置9に沿って移動可能であり、これにより両プラズマノズル5,6も移動可能である。ノズル対の両プラズマノズル5,6は、相互に整向されており、ガラス板2を案内する自由な間隔を備える。プラズマノズル5から出るプラズマ光線は、ガラス板2の前表面37に向けて整向されている。プラズマノズル6から出るプラズマ光線は、ガラス板2の後表面38に向けて整向されている。これにより、ガラス板2の表面37だけ又は表面38だけ又は同時に両表面37と38にプラズマ光線を作用させ、加工することが可能である。水平方向には、ガラス板2を搬送ベルト4により水平方向に除層装置1のプラズマノズル5,6の傍らを移動移動させることによって、加工が行なわれる。垂直方向には、プラズマユニット7,8と垂直な支持装置9によってプラズマノズル5,6をほぼ垂直方向に運動もしくは移動させ、その際にガラス板2の表面37,38の一方又は両方の加工をプラズマ光線によって行なうことによって、加工が行なわれる。この例では、図示した除層装置1は、幅広側の表面37,38の片面又は両面にコーティングがされているガラス板2のエッジ領域39を加工するために特別に形成されている。これは、公知のように絶縁用合わせガラス用のガラス板又は防火用合わせガラスの場合に使用されるようなコーティングのことである。本発明による装置により、このようなコーティングは筋状に、特にエッジ領域39に沿って除去することができる。しかしながらまた、垂直及び水平の駆動機構を相応に制御した場合には、ガラス板2の表面37,38上に任意のラインを描き、筋状に除層することもできる。既製の、即ち既にサイズに切断されたガラス板2の場合、装置は、特にエッジ領域39を除層するために使用される。これにより、樹脂又は金属から成るスペーサ成形体をガラス板2に接着すること、又はスペーサ材料から成るストランドをエッジ領域に射出することができる。更に分割されなければばらないガラス板2の場合には、ガラスを破断する相応の領域は本発明による装置により筋状に除層することができる。この場合、プラズマ光線は、コーティングを除去する際の非常に高い品質を可能にし、高い作業速度も可能にする。同時に、プラズマ光線のイオン化ガスは、公知のように、ガラス表面を活性化することによって、ガラス板2の表面に対する接着剤の付着性を改善する。
【0019】
図2は、両表面37,38にコーティング11,12を備えているガラス板2の垂直なエッジ領域39の部分断面図を示す。図示した例では、防火用合わせガラスにおいて使用するために設定されているガラス板2に関するものである。この合わせガラスは、3つのガラス板から成り、ガラス板2は中心に配設されている。仕上げられた合わせガラスの場合、この中心のガラス板2と外側の2つのガラス板間にそれぞれ1つのそれ自身公知の防火用ペーストの層が配設されている。両コーティング11,12は、いわゆるプライマであり、図示した例では無機質の層である。ガラス板2のエッジ領域39では、表面37,38の筋状の周縁領域16,17に沿ってコーティング11,12を除去しなければならない。このため、ガラス板2に対してほぼ直角に延在する軸22上に一対のプラズマノズル5,6が配設されている。これら両プラズマノズル5,6は、図1に関して説明したようにプラズマユニット7,8の一部である。両プラズマノズル5,6は、相互に整向されている。両プラズマノズル5,6の前面18,20は、軸22の方向に互いに間隔27を置いて位置決めされている。この間隔27は両ノズル5,6間の自由な間隔を定義し、この間隔内にガラス板2が存在する。ガラス板2が正確に両前面18,20間の中心に存在する場合、これは、軸13によって定義される中立位置と呼ばれる。両プラズマノズル5もしくは6の両前面18,20から、プラズマ光線14,15が出る。図示した例では、2つのプラズマ光線14,15が存在し、これらによりガラス板2が同時に両面を除層される。両プラズマノズル5,6は、軸22を中心として矢印40の方向に回転するノズルヘッド32,33を備える。このノズル構造は、正確に設定された集中させたプラズマ光線14,15の適用を可能にする。これらプラズマ光線14,15が回転軸22に対して偏心してノズルヘッド32,33から出るので、ノズルヘッド32,33の回転運動により、それにもかかわらずガラス板2の表面の比較的広い領域に作用させることができる。この場合、除層すべきである表面37,38の周縁領域16,17は、両ノズル5,6の組立軸もしくは回転軸22をガラス板2のエッジ39に対して移動させることによって変更することができる。
【0020】
両プラズマノズル5,6の前面18もしくは20には、機械的なスペーサ23もしくは24の形態の間隔センサが配設されている。これらスペーサ23,24は、そのガラス板2の表面37,38に向けて整向された端部に摺動面35及び36を備える。軸13上のガラス板2の中立位置で、間隔センサ23及び24のこれら摺動面35,36は、ガラス板2の表面37,38に対してそれぞれ間隔28を備える。ガラス板2が中立位置から逸脱した場合、ガラス板は、前にも後にも所定の移動値だけ移動させることができる。この場合、この所定の移動値31(図3参照)は、全体として間隔28の値の2倍に相当する。この所定の移動値31は、プラズマ光線が所望の加工品質を備え、消えることができない許容領域に相当する。ガラス板2の表面37,38の一方が両間隔センサ23,24の1つの摺動面35に接触し、更にこの方向に移動したら直ぐに、両プラズマノズル5,6が一緒に対として軸13に対する逸脱の方向に移動される。これを可能にするために、両プラズマノズル5,6は、相応に支承されているので、自由に移動すること及び/又は相応のコントロール用駆動機構によってガラス板2の表面37,38の移動を再調整することができる。図2に図示した機械的なスペーサ23,24は、敏感な光学的又は電子的センサを何ら必要としないので、特に簡単な解決策である。両プラズマノズルの一方5もしくは6だけが運転状態であり、従ってガラス板2の両表面37,38の一方だけが加工及び除層される場合でも、稼動中のプラズマノズル5もしくは6のガラス表面37もしくは38に対する間隔は対向するノズルもしくはそのスペーサと一緒にコントロールされる。これは、加工装置1において1つのガラス板2の加工を開始する前に両プラズマノズル5,6の前面18と20間の間隔27が正しい大きさに調整されることによって保証される。この間隔27は、図3から分かるように、ガラス板2の厚さ26にガラス表面からプラズマノズルの前面の最小間隔29の2倍を加え許容移動値31を加えた和を求めることによって確認される。許容移動値31(図3参照)は、プラズマノズル5もしくは6の前面18もしくは20とガラス表面37もしくは38間の最大許容作動間隔30と、プラズマノズル5もしくは6の前面18もしくは20とガラス表面37もしくは38間の最小許容作動間隔29の差を求めることによって予め設定される。この場合、最大許容作動間隔30は、プラズマ光線14もしくは15の最大長さであり、この長さでこのプラズマ光線14もしくは15は未だ最適に作業し、集束している。この場合、最小許容作動間隔29は、プラズマ光線14もしくは15の最小長さであり、この長さでこのプラズマ光線14もしくは15は未だ点いており、消えない。
【0021】
図3は、同様にガラス板2のエッジ領域39の部分断面図を示すが、水平なエッジ領域39を示す。この場合、見ることができるプラズマノズル5,6の部分領域は断面にして図示されている。図3に図示したガラス板2は、片面だけコーティング11でコーティングされており、しかも表面37がコーティングされている。従ってまた、プラズマノズル5だけが運転中であり、ガラス板2の表面37の部分領域の加工もしくは除層をするためのプラズマ光線14を発生させる。ガラス板2の対向する表面38がコーティングをされている場合には、選択的にプラズマノズル6が運転され、表面38の部分領域が図2に図示したプラズマ光線15の作用を受ける。この図では、プラズマ光線14,15用の出口19,21が回転軸22に対して偏心して配設されていることが分かる。両プラズマノズル5,6のノズルヘッド32,33が回転軸22を中心として矢印40の方向に回転するので、それにもかかわらずガラス板2の表面37,38の比較的広い筋が作用を受ける。両プラズマノズル5,6の回転ヘッド32,33内には機械的なスペーサ23,24が埋設されている。スペーサ23,24は、図示した例ではフェノール樹脂硬質紙から成る丸棒から成る。しかしながらまた、これらスペーサは、特にフェノール樹脂のグループから成る他の適当な材料から製造されていてもよい。スペーサ23,24は、固定要素34により位置決めされ、ノズルヘッド32,33内に保持される。両スペーサ23もしくは24の前端部35もしく36は、両プラズマノズル5,6の前面18もしくは20から突出している。この場合、スペーサ23,24の前端部35,36と両ノズル5,6の前面18,20間の間隔は、少なくとも、プラズマ光線14,15の正しい機能のために必要である最小必要作動間隔29と同じ大きさである。図3で、ガラス板2は、軸13による中立位置から逸脱した位置で図示されている。この場合、表面38は、スペーサ24の前端部もしくは相応の摺動面36に当接している。対向するガラス板2の表面37は、この位置でプラズマノズル5の前面18に対して最大許容作動間隔30を備える。ガラス板2の表面37とプラズマノズル5のスペーサ23の前端部35間には、所定の許容移動値31が形成されている。ガラス板2が更にプラズマノズル6の方向に移動した場合は、プラズマノズル6もこの方向に移動され、これにより対向するプラズマノズル5も移動される。この一緒の移動は、両プラズマノズル5,6が1つの対を構成し、一緒に制御及び移動されるので、強制的に行なわれる。しかしながらガラス板2がプラズマノズル5の方向に移動した場合には、一対のプラズマノズル5,6は、ガラス板2の表面37がスペーサ23の前端部35と接触するまで、図示した位置に留まっている。ガラス板2がこの方向に更に移動した場合、ノズル対5,6は、更にまた一緒にこの反対方向に移動される。この本発明による運転方法と相応の装置により、ガラス板2の表面37もしくは38の位置の変化も、ガラス板2自体の位置変化も補正することができ、同時に、プラズマ光線14,15用の最小作動間隔を下回らず、プラズマノズル14,15用の最大作動間隔を上回らないことが、常に保証される。加えて、既に説明したように、選択的にガラス板2の表面37又はガラス板2の表面38の部分領域を加工すること又は同時にガラス板2の両表面37と38を加工することが可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 除層装置
2 ガラス板
3 支持面
4 搬送ベルト
5,6 プラズマノズル
7,8 プラズマユニット
9 支持装置
10 搬送駆動機構
11,12 コーティング
13 軸
14,15 プラズマ光線
16,17 周縁領域
18,20 プラズマノズルの前面
19,21 プラズマ光線用の出口
22 軸
23,24 間隔センサ(スペーサ)
26 ガラス板の厚さ
27 間隔
28 間隔
29 最小許容作動間隔(最小間隔)
30 最大許容作動間隔
31 移動値
32,33 ノズルヘッド
34 固定要素
35,36 摺動面(前端部)
37 ガラス板の前表面
38 ガラス板の後表面
39 ガラス板のエッジ領域
40 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面に表面コーティング(11,12)を有するガラス板(2)が加工及び移動装置(1)にセットされ、プラズマノズル(5,6)によりプラズマ光線(14,15)が発生され、プラズマノズル(5,6)がガラス板(2)の表面に渡り移動され、このプラズマ光線(14,15)が除去すべきコーティングを有するガラス板(2)の表面領域に向けて整向され、コーティング(11,12)がプラズマ光線(14,15)により少なくとも部分的に除去される、筋状及び面状の加工をするための、特にガラス板(2)の表面の有機質及び無機質のコーティングの部分的な除去をするための方法において、
除層すべき表面の領域内に、少なくとも一対のプラズマノズル(5,6)が配設され、プラズマ光線(14,15)用の出口(19,21)が、対向するガラス板(2)の幅広側の表面(37,38)に向けて相互に及び同時にそれぞれ整向され、プラズマノズルの対の両ノズル(5,6)が一緒に制御及び運転され、選択的にノズル対の両ノズル(5,6)の一方から表面(37,38)の一方の領域か、両ノズル(5,6)から同時に表面(37,38)の2つの領域が、プラズマ光線(14,15)の作用を受け、この場合、表面(37,38)のプラズマ光線(14,15)の作用を受ける領域内でコーティング(11,12)が除去され、同時にガラス表面が活性化されることを特徴とする方法。
【請求項2】
1つの対の両プラズマノズル(5,6)が、共通の軸(22)に整向され、この共通の軸(22)上に互いに所定の間隔(27)を置いて配設されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ガラス板(2)の移動中及び/又はノズル対(5,6)の移動中に、プラズマノズル(5,6)間の領域内での、ガラス板(2)の幅広側の表面(37,38)の位置の変化が、間隔センサ(23,24)によって確認され、プラズマノズル(5,6)の対が、それぞれガラス板(2)に対してほぼ直角にガラス板の表面(37,38)の位置の変化の方向に移動されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ガラス板(2)の幅広側の表面(37,38)の位置の変化が所定の許容移動値(31)を上回った場合にだけ、プラズマノズル(5,6)の対の移動が行なわれることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ガラス板(2)の位置の所定の許容移動値(31)が、プラズマノズル(5,6)の前面(18,20)とガラス表面(37,38)間の最大許容作動間隔(30)と、プラズマノズル(5,6)の前面(18,20)とガラス表面(37,38)間の最小許容作動間隔(29)の差から確認されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ガラス板(2)の幅広側用の支持面(3)を有する加工及び移動装置(1)と、プラズマ光線(14,15)を発生させるための少なくとも1つのプラズマノズル(5,6)用の移動及び支持装置(7,8,9)とを有し、プラズマノズル(5,6)が、ガラス板(2)の幅広側の表面(37,38)に向けて整向された、プラズマ光線(14,15)用の出口(19,21)を有する前面(18,20)を備える、筋状及び面状の加工をするための、特にガラス板(2)の表面(37,38)の有機質及び無機質のコーティング(11,12)の部分的な除去をするための請求項1に記載の方法を実施するための装置において、
ガラス板(2)用の支持面(3)の両側にそれぞれ1つのプラズマノズル(5,6)が配設されており、両プラズマノズル(5,6)が1つの対を構成し、これら両ノズル(5,6)の前面(18,20)が相互に整向されており、各プラズマノズル(5,6)に間隔センサ(23,24)が配設されており、この間隔センサが、プラズマノズル(5,6)の前面(18,20)とガラス板(2)の表面(37,38)間の最小間隔(29)を決定し、ノズル対のノズル(5,6)の両前面(18,20)間に自由な間隔(27)が有り、この間隔が、少なくともガラス板(2)の厚さ(26)にプラズマノズル(5,6)の前面(18,20)の最小間隔(29)の2倍を加え許容移動値(31)を加えた和に相当することを特徴とする装置。
【請求項7】
間隔センサ(23,24)が機械的なスペーサであり、このスペーサが、プラズマノズル(5,6)の前面(18,20)からガラス板(2)の表面(37,38)の方向に延在し、ガラス板(2)の表面(37,38)に向けて整向されたスペーサ(23,24)の前端部(35,36)が、ガラス板(2)の中立位置で、ガラス板(2)の表面(37,38)に対して自由な間隔(28)を備え、この間隔(28)が、許容移動値(31)の半分に相当することを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
許容移動値(31)が、プラズマノズル(5,6)の前面(18,20)とガラス表面(37,38)間の最大許容作動間隔(30)と、プラズマノズル(5,6)の前面(18,20)とガラス表面(37,38)間の最小許容作動間隔(29)の差によって決定されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の装置。
【請求項9】
プラズマノズル(5,6)が回転ヘッド(32,33)を備え、プラズマ光線(14,15)が、回転ヘッド(32,33)の前面(18,20)で回転軸(22)に対して偏心して出ることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1つに記載の装置。
【請求項10】
間隔センサもしくはスペーサ(23,24)が、ほぼプラズマノズル(5,6)の前面(18,20)の中心及び回転軸(22)の領域内に配設されていることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前端部(35,36)とプラズマノズル(5,6)の前面(18,20)間のスペーサ(23,24)の長さが、少なくとも、出口(19,21)とガラス板(2)の表面(37,38)間のプラズマ光線(14,15)用の最小限必要な作動間隔(29)と同じ大きさであることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項12】
間隔センサもしくはスペーサ(23,24)が、前端部(35,36)に摺動面を有する熱硬化性の樹脂要素から成ることを特徴とする請求項7又は11に記載の装置。
【請求項13】
スペーサ(23,24)が、フェノール樹脂のグループから成る材料で構成されていることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
間隔センサ(23,24)が非接触式のセンサであり、この非接触式のセンサが制御機器と接続されており、この制御機器が、プラズマノズル対に作用する変位装置(7,8)と接続されていることを特徴とする請求項6に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−176890(P2012−176890A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−112465(P2012−112465)
【出願日】平成24年5月16日(2012.5.16)
【分割の表示】特願2007−541627(P2007−541627)の分割
【原出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(502013067)ヴェトロテヒ・サン−ゴバン・(インターナショナル)・アクチェンゲゼルシャフト (3)
【Fターム(参考)】