説明

ガラス板包装容器

【課題】サイズの異なるガラス板の包装に対応することができるとともに、耐衝撃性の高いガラス板包装容器を提供する。
【解決手段】ガラス板包装容器10は、ガラス板G1、G2が固定される背板12、及びフラップから構成される。フラップ18、20にはフラップ14、16の面ファスナの雄材22に係合される面ファスナの雌材24が取り付けられ、背板12には孔28、長孔32、孔34、36、38、長孔40、42、44が開口される。孔28と長孔32および孔34と長孔40には、それぞれ荷締め部材が挿入され、ガラス板のサイズに応じて、孔36と長孔42に、及び/又は孔38と長孔44に荷締め部材が挿入される。荷締め部材を、各々張設して端部同士を溶着によって係合する。この後、フラップ14、16を折り畳み、次にフラップ18、20を折り畳み、フラップ18、20の面ファスナの各雌材24をフラップ14、16の各雄材22に係合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板包装容器に係り、特に一品一葉のガラス板を包装するガラス板包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ用ガラス、プラズマディスプレイ用ガラス等のFPD(Flat Panel Display)用ガラス基板は、特許文献1等に開示された大型のガラス板梱包体に多数枚積層されて梱包され、このガラス板梱包体を輸送車両に搭載することで目的地まで搬送される。
【0003】
ところで、一品一葉のガラス板として製造された住宅用ガラス板、又は補修用の自動車用ガラス板は、特許文献1のガラス板梱包体に梱包して搬送しようとすると、大型のガラス板梱包体が場所をとるため輸送効率が悪い。このため、このような一品一葉のガラス板は、そのガラス板のみを包装して輸送することが、輸送効率を向上させる観点から望まれている。
【0004】
特許文献2に開示された平板体の包装体は、ガラス板用ではなく平板状美術陶器用のものであるが、この包装体を用いてガラス板を包装することが考えられる。
【0005】
この包装体は、ボール紙からなる段ボールによって作製されており、平板状美術陶器が貼り付けられる中央片と、この中央片の両側に折り畳み片とを備え、中央片に平板状美術陶器を貼り付け、両サイドの折り畳み片を重畳するように折り畳むことで、平板状美術陶器を包装する。
【0006】
ところで、特許文献2の包装体をガラス板の包装体として利用した場合、上記包装形態では、ガラス板が包装体の内部でガタつくことから、バンド等の帯状締結体によって包装体の上から包装体とガラス板とを固定する必要がある。
【0007】
図16は、2本のバンド1、1を用いて包装体2とガラス板3とを固定した包装体2の斜視図である。バンド1、1で締結する前の包装体2とガラス板3とは、図17(A)で示すように、ガラス板3の端面3A、3Aと包装体2の縁部2A、2Aとの間に隙間4が存在し、この隙間4によってガラス板3が包装体2内でガタつく。よって、この隙間4を無くすために、バンド1で包装体2を強く締結して包装体2の縁部2A、2Aを潰し、図17(B)の如くガラス板3の端面3A、3Aに包装体2の縁部2A、2Aを密着させて、ガラス板3のガタつきを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−111424号公報
【特許文献2】特開2001−163386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2の包装体は、包装品のサイズに応じて作製されるものなので汎用性はなく、よって、サイズの異なるガラス板には対応することができないという問題があった。
【0010】
また、特許文献2の包装体において、図17(B)の如くバンド1で締結した包装体2を輸送車両で搬送すると、輸送時の振動によって、包装体2の縁部2Aが他の輸送物に衝突した場合、その衝撃が縁部2Aからガラス板3の端面3Aに直接伝わるため、ガラス板3の端面3Aが破損するという不具合があった。ガラス板3は、その表面よりも端面3Aに衝撃が加わった場合に破損し易いという特性がある。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、サイズの異なるガラス板の包装に対応することができるとともに、耐衝撃性の高いガラス板包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記目的を達成するために、矩形状のガラス板が載置される矩形状のベース部材と、前記ベース部材の4辺のうち少なくとも対向する2辺に備えられるとともに、前記ベース部材に向けて折り畳まれる一対の折り畳み部材と、を有し、前記ベース部材には、該ベース部材の第1の短辺から第1の距離をもって備えられた第1の孔と、該ベース部材の前記第1の短辺から第2の距離をもって備えられるとともに前記ベース部材の第1の長辺に沿った方向に長径を有する第1の長孔と、該ベース部材の前記第1の長辺から第3の距離をもって備えられた第2の孔と、該ベース部材の前記第1の長辺から第4の距離をもって備えられるとともに前記第1の短辺に沿った方向に長径を有する第2の長孔と、が備えられ、前記第1の孔と前記第1の長孔に挿入されて端部同士が係合されることにより、前記ベース部材に載置された前記ガラス板を前記ベース部材に保持させる第1の保持部材と、前記第2の孔と前記第2の長孔に挿入されて端部同士が係合されることにより、前記ベース部材に載置されたガラス板を前記ベース部材に保持させる第2の保持部材と、を有することを特徴とするガラス板包装容器を提供する。
【0013】
本発明によれば、ガラス板をベース部材に載置した後、第1の保持部材を第1の孔と第1の長孔とに挿入し、第1の保持部材に張力を与えて第1の保持部材の端部同士を係合させるとともに、第2の保持部材を第2の孔と第2の長孔とに挿入し、第2の保持部材に張力を与えて第2の保持部材の端部同士を係合させる。
【0014】
これにより、ガラス板は、その直交する2辺のうち第1の辺(第1の端部)が第1の孔を基準として位置決めされ、第2の辺(第2の端部)が第2の孔を基準として位置決めされてベース部材にしっかりと固定される。この固定形態において、ガラス板の第1の辺は、第1の孔がベース部材の第1の短辺から第1の距離をもって備えられているので、包装容器の端部から所定の隙間をもって固定される。また、ガラス板の第2の辺は、第2の孔がベース部材の第1の長辺から第3の距離をもって備えられているので、包装容器の端部から所定の隙間をもって固定される。更に、第1の辺に対向するガラス板の第3の辺(第3の端部)は、第1の長孔内に位置していることから包装容器の端部から所定の隙間をもって固定される。そして、第2の辺に対向するガラス板の第4の辺(第4の端部)は、第2の長孔内に位置していることから包装容器の端部から所定の隙間をもって固定される。よって、包装容器の端部に衝撃が加わっても、その衝撃は前記隙間が緩衝材となり、ガラス板の第1乃至第4の辺に直接伝達しないので、耐衝撃性が向上する。
【0015】
また、サイズの異なるガラス板をベース部材に固定する際には、長孔の長さ分だけ対応できるので、サイズの異なるガラス板であっても、第1、第2の保持部材によってベース部材にしっかりと固定することができる。
【0016】
よって、本発明によれば、サイズの異なるガラス板の包装に対応することができるとともに、耐衝撃性の高いガラス板包装容器を提供できる。
【0017】
第1、第2の保持部材としては、荷締めベルト、ポリプロピレンバンド(以下単にPPバンドという)を例示できる。なお、本明細書において、「辺」と「端部」とは同意である。
【0018】
本発明のガラス板包装容器は、前記第1の孔の中心と前記第1の長孔の中心を結ぶ第1の中心線において、前記第1の中心線が前記ベース部材の第1の長辺と並行になるように前記第1の孔と前記第1の長孔とが設けられ、前記第2の孔の中心と前記第2の長孔の中心を結ぶ第2の中心線において、前記第2の中心線が前記ベース部材の第1の短辺と並行になるように前記第2の孔と前記第2の長孔とが設けられていることが好ましい。
【0019】
本発明によれば、ベース部材に対してガラス板は、ベース部材の各4辺に対してガラス板の各4辺が平行に固定されるとともに、第1、第2の保持部材によって十字状に固定される。よって、ガラス板をベース部材に安定して固定することができる。
【0020】
本発明のガラス板包装容器は、前記第1の孔は、前記第1の短辺に沿って、前記第1の短辺から前記第1の距離をもって複数備えられ、前記第1の長孔は、前記第1の中心線が前記第1の長辺に平行になるように複数備えられ、前記第2の孔は、前記第1の長辺に沿って、前記第1の長辺から前記第3の距離をもって複数備えられ、前記第2の長孔は、前記第2の中心線が前記第1の短辺に平行になるように複数備えられていることが好ましい。
【0021】
本発明によれば、2本以上の第1の保持部材、及び2本以上の第2の保持部材によってガラス板がベース部材に固定されるので、ガラス板をベース部材に更にしっかりと固定することができる。本発明は、大サイズのガラス板に好適である。
【0022】
本発明のガラス板包装容器は、前記一対の折り畳み部材の前記ベース部材に対向する面には、前記第1の孔に対向する第3の孔、前記第1の長孔に対向する第3の長孔、前記第2の孔に対向する第4の孔、及び前記第2の長孔に対向する第4の長孔が備えられていることが好ましい。
【0023】
本発明によれば、第1の孔、第1の長孔、第3の孔、及び第3の長孔に第1の保持部材を通して荷締めし、第2の孔、第2の長孔、第4の孔、及び第4の長孔に第2の保持部材を通して荷締めすることにより、ガラス板はベース部材と折り畳み部材とに挟まれて固定される。よって、ガラス板は包装容器全体にしっかりと固定される。また、バンドなどの保持部材がガラスと接触する部分が減るために、ガラス面の保護やガラス面の汚れ防止という効果もある。また面取りされていないガラスを梱包した場合ガラスエッジ部分での保持部材が損傷を受ける恐れがあるが、本発明によれば保持部材の損傷の恐れが低減する。
【0024】
本発明のガラス板包装容器は、前記ベース部材と前記一対の折り畳み部材とは別体に構成されて直接又は接合片を介して接合されることが好ましい。
【0025】
ベース部材と折り畳み部材とを一体品で作製することができないほどの大サイズのガラス板を包装する場合には、本発明の如く、ベース部材と一対の折り畳み部材とを別体に構成し、双方を直接又は接合片を介して接合する。これにより、大サイズのガラス板包装用の包装容器を提供できる。
【0026】
本発明のガラス板包装容器は、前記一対の折り畳み部材は、二つ折り可能な折り線を備え、二つ折りされた際の対向面には面ファスナ(hook-and-loop fastener)の雄材が取り付けられていることが好ましい。
【0027】
本発明によれば、大サイズ用の包装容器は広い収納スペースを要するが、本発明の如く、一対の折り畳み部材を折り線に沿って二つ折りにし、面ファスナの雄材(hook)同士を係合させることにより、二つ折りの状態を保持することができる。これにより、大サイズの包装容器を展開した状態で収納するよりも、その収納スペースを省スペース化することができる。
【0028】
本発明のガラス板包装容器は、前記一対の折り畳み部材の前記面ファスナの雄材は、前記ベース部材と一体又は別体の他の一対の折り畳み部材に取り付けられた面ファスナの雌材と係合されることが好ましい。
【0029】
本発明は、ベース部材の4辺全てに折り畳み部材を設けた形態である。本発明によれば、一対の折り畳み部材をベース部材に向けて折り畳むとともに、他の一対の折り畳み部材を、先に折り畳んだ一対の折り畳み部材に向けて折り畳み、先に折り畳んだ一対の前記面ファスナの雄材に、他の一対の折り畳み部材に取り付けられた面ファスナの雌材(loop)を係合させる。これにより、4枚の折り畳み部材が固定されるので、ガラス板を包装した包装容器を安定して搬送することができる。
【0030】
本発明のガラス板包装容器は、前記ベース部材及び前記一対の折り畳み部材は、樹脂製又は紙製であることが好ましい。
【0031】
本発明の包装容器は、プラスチック製の段ボールでもよく、気泡が内在された樹脂シートでもよく、紙製の段ボールでもよい。プラスチック、樹脂製の場合には、ベース部材と折り畳み部材とを接合する場合、超音波溶着することで双方を容易に接合することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、サイズの異なるガラス板の包装に対応することができるとともに、耐衝撃性の高いガラス板包装容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1の実施の形態に係るガラス板包装容器の展開図
【図2】図1に示したガラス板包装容器の斜視図
【図3】(A)、(B)はガラス板包装容器の背板にサイズの異なるガラス板が固定された状態を示す背板の平面図
【図4】(A)は図3(A)に対応するガラス板包装容器の断面図、(B)は図3(B)に対応するガラス板包装容器の断面図
【図5】ガラス板を包装したガラス板包装容器の斜視図
【図6】荷締めベルトの斜視図
【図7】第2の実施の形態に係るガラス板包装容器の展開図
【図8】背板とフラップとの第1の接合形態を示した要部拡大断面図
【図9】背板とフラップとの第2の接合形態を示した要部拡大図
【図10】背板とフラップとが接合されたガラス板包装容器の斜視図
【図11】(A)、(B)はガラス板包装容器の背板にサイズの異なるガラス板が固定された状態を示す背板の平面図
【図12】ガラス板の包装手順を示したガラス板包装容器の斜視図
【図13】(A)は図11(A)に対応するガラス板包装容器の断面図、(B)は図11(B)に対応するガラス板包装容器の断面図
【図14】ガラス板を包装したガラス板包装容器の斜視図
【図15】ガラス板包装容器の収容状態を示した説明図
【図16】従来のガラス板包装容器の斜視図
【図17】図16の包装容器をバンドで締結固定した際の変形状態を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面に従って本発明に係るガラス板包装容器の好ましい実施の形態を詳説する。
【0035】
図1は、第1の実施の形態に係るガラス板包装容器10の展開図である。
【0036】
同図に示す包装容器10は、一品一葉のガラス板として製造された略矩形状の住宅用ガラス板、又は補修用の自動車用ガラス板を1枚又は少数枚包装する容器である。
【0037】
この包装容器10は、図2に示すようにサイズの異なる、例えば2種類のガラス板G1、G2が固定される矩形状の背板(ベース部材)12を備えている。図1、図2に示すように、背板12の4辺のうち、両側の短辺には一対のフラップ(折り畳み部材)14、16が谷折り線A、Bを介して一体に設けられている。また、背板12の4辺のうち、両側の長辺には一対のフラップ(他の一対の折り畳み部材)18、20が谷折り線C、Dを介して一体に設けられている。なお、実施の形態の包装容器10は、プラスチック製の段ボール、気泡が内在された樹脂シート、又は紙製の段ボールによって作製されている。すなわち、包装容器10は、クッション性を有するシート材又はパネル材によって作製されることが好ましい。
【0038】
フラップ14、16は、矩形状に構成されており、谷折り線A、Bに沿ってそれぞれ背板12に向けて折り畳まれると、その対向する短辺14A、16Aが突き合わせられる大きさに構成されている。なお、フラップ14、16は、上記大きさに限定されるものではなく、各々が折り重なる大きさであってもよい。
【0039】
また、フラップ18、20は、フラップ14、16よりも短い短冊状に構成されており、谷折り線C、Dに沿ってそれぞれ背板12に向けて折り畳まれる。このフラップ18、20には、先に折り畳まれたフラップ14、16の面ファスナの雄材22、22、22に係合される面ファスナの雌材24、24が取り付けられている。すなわち、雄材22に雌材24を係合させることにより、包装容器10は図1の展開形態から、図5に示す箱状形態になる。
【0040】
図1の如く背板12には、背板12の左短辺(第1の短辺:谷折り線Aと同一)26から第1の距離をもって備えられた孔(第1の孔)28と、左短辺26から第2の距離をもって備えられるとともに背板12の下長辺(第1の長辺:下側の谷折り線Cと同一)30に沿った方向に長径を有する長孔(第1の長孔)32と、背板12の下長辺30から第3の距離をもって備えられた孔(第2の孔)34、36、38と、下長辺30から第4の距離をもって備えられるとともに左短辺26に沿った方向に長径を有する長孔(第2の長孔)40、42、44が開口されている。
【0041】
孔28と長孔32には、図3(A)、(B)に示すようにPPバンド等の帯状の荷締め部材(第1の保持部材)46が挿入される。同様に、孔34と長孔40にも荷締め部材(第2の保持部材)48が挿入され、ガラス板のサイズに応じて、孔36と長孔42に、及び/又は孔38と長孔44に荷締め部材(第3、第4の保持部材)50、52が挿入される。
【0042】
すなわち、大サイズのガラス板G1を包装容器10に包装する場合には、包装容器10を平置き、又は縦置きにして図3(A)の如く、荷締め部材46を孔28と長孔32に、荷締め部材48を孔34と長孔40に、そして、荷締め部材52を孔38と長孔44にそれぞれ挿入する。そして、これらの荷締め部材46、48、52を、各々張設してガラス板G1を固定する。これにより、背板12に載置されたガラス板G1が背板12に固定される。この後、フラップ14、16を折り畳み、次にフラップ18、20を折り畳み、フラップ18、20の面ファスナの各雌材24、24…をフラップ14、16の各雄材22、22…に係合させる。これにより、包装容器10は箱状の搬送形態となる。なお、荷締め部材46、48、52の係合箇所を長孔32、40、44内に位置させることが、ガラス板G1に係合箇所による傷を付けさせない観点から好ましい。
【0043】
また、図3(B)の如く、小サイズのガラス板G2を包装容器10に包装する場合には、荷締め部材46を孔28と長孔32に、そして、荷締め部材48を孔34と長孔40に、そして、荷締め部材50を孔36と長孔42にそれぞれ挿入する。そして、これらの荷締め部材46、48、50を、各々張設して端部同士を図4(B)の断面図の如く溶着によって、又は不図示のストッパによって係合する。これにより、背板12に載置されたガラス板G2が背板12に固定される。この後、フラップ14〜20を前述の如く折り畳み、箱状の搬送形態とする。
【0044】
ここで背板12に固定されたガラス板G1、G2は、図3(A)、(B)において、その直交する左辺GAと下辺GBのうち左辺GAが孔28を基準として位置決めされ、下辺GBが孔34(36、38)を基準として位置決めされる。
【0045】
この固定形態において、ガラス板G1、G2の左辺GAは、孔28が背板12の左短辺26から第1の距離をもって備えられているので、図4(A)、(B)の如く、包装容器10の左端部から所定の隙間Sをもって固定される。また、ガラス板の下辺GBは、孔34(36、38)が背板12の下長辺30から第3の距離をもって備えられているので、包装容器10の下端部から所定の隙間をもって固定される。更に、左辺GAに対向するガラス板G1、G2の右辺GCは、図示の如く明らかに包装容器10の右端部から所定の隙間をもって固定される。そして、ガラス板G1、G2の上辺GDは、長孔40(42、44)内に位置していることから包装容器10の上端部から所定の隙間をもって固定される。なお、第1の距離及び第3の距離は、0を含むものとする。第1の距離及び第3の距離の好ましい範囲は0〜50mmであり、より好ましい範囲は2〜10mmである。
【0046】
よって、包装容器10の各端部に衝撃が加わっても、その衝撃は前記隙間Sが緩衝材となり、ガラス板G1、G2の各辺GA〜GDに直接伝達しないので、耐衝撃性が向上する。
【0047】
なお、ガラス板のサイズはガラス板G1、G2に限定されるものではない。例えば、ガラス板G1よりも若干小さいガラス板を包装する場合、長孔32の長さ分だけ対応できるので、そのガラス板であっても、背板12にしっかりと固定することができる。
【0048】
よって、第1の実施の形態の包装容器10によれば、耐衝撃性が向上するとともに、サイズの異なるガラス板の包装に対応することができる。
【0049】
また、図1の如く、包装容器10の孔28と長孔32とは、下長辺30に平行に、かつ下長辺30に沿って備えられている。すなわち、孔28の中心と長孔32の中心を結ぶ第1の中心線(不図示)において、この第1の中心線が下長辺30と並行になるように孔28と長孔32とが設けられている。そして、孔34、36、38と長孔40、42、44とは、左短辺26に平行に、かつ左短辺26に沿って備えられている。すなわち、孔34、36、38の中心と長孔40、42、44の中心を結ぶ第2の中心線(不図示)において、この第2の中心線が左短辺26と並行になるように孔34、36、38と長孔40、42、44とが設けられている。
【0050】
これにより、背板12に対してガラス板G1、G2は、図3(A)、(B)の如く背板12の各4辺に対してガラス板の各4辺GA〜GDが平行に固定されるとともに、荷締め部材46〜48によって十字状に固定される。よって、ガラス板G1、G2を背板12に安定して固定することができる。
【0051】
なお、実施の形態では、孔28及び長孔32を一組設けた包装容器10を例示したが、孔28及び長孔32を複数組み設けた包装容器であってもよい。すなわち、孔28を左短辺26に平行に、かつ左短辺26に沿って複数備え、長孔32を下長辺30に平行に、かつ左短辺26に沿って複数備えてもよい。これにより、ガラス板G1、G2は、2本以上の荷締め部材46によって背板12にしっかりと固定される。この形態は、大サイズのガラス板G1に好適である。
【0052】
ところで、この包装容器10は図1、図2の如く、フラップ14の背板12に対向する面に、孔28に対向する孔(第3の孔)54、孔34に対向する孔(第4の孔)56、及び長孔40に対向する長孔(第4の長孔)58が備えられている。また、フラップ16の背板12に対向する面には、長孔32に対向する長孔(第3の長孔)60、孔38に対向する孔(第4の孔)62、及び長孔44に対向する長孔(第4の長孔)64が備えられている。
【0053】
したがって、この包装容器10によれば、ガラス板G1を包装する場合、孔28、長孔32、孔54、及び長孔60に荷締め部材46を通して荷締めし、孔34、長孔40、孔56、長孔58に荷締め部材48を通して荷締めし、孔38、長孔44、孔62、及び長孔64に荷締め部材52を通して荷締めすることで、図5に示す包装形態になる。これにより、ガラス板G1、G2は、荷締め部材46〜52によって背板12とフラップ14、16とに挟持されるので、包装容器10内でガタ付くことなく確実に包装される。
【0054】
なお、荷締め部材46〜52はPPバンドの他、図6に示す荷締めベルト66を適用してもよい。荷締めベルト66を使用する場合には、包装容器10の搬入先で回収し、再利用することが好ましい。
【0055】
図7は、第2の実施の形態の包装容器100の展開図である。
【0056】
同図に示す包装容器100は、背板102と一対のフラップ104、106とが別体に構成されている。
【0057】
背板102とフラップ104、106は、図8に示すように、背板102の端部103に、端部103に沿った谷折り線Aを付けて短冊状の端部103を折り曲げるとともに、フラップ104(106)の端部105に、端部105に沿った谷折り線Bを付けて短冊状の端部105を折り曲げ、これらの端部103、105同士を重ね合せ、超音波溶接等によって直接溶着する。符号108が溶着箇所である。
【0058】
また、図9に示すように、背板102とフラップ104(106)とを、谷折り線A、Bを有する短冊状の接合片110を介して超音波溶接等により間接的に溶着してもよい。符号112が溶着箇所である。ここで、図9の接合方法であると、別部材の接合片110が必要となり、この接合片110をフラップ104、106に各々接合しなければならないため、溶着箇所が図8の溶着箇所よりも2倍に増える。このため、背板102とフラップ104(106)との接合は、図8の接合方法が好ましい。なお、図8には、気泡が内在された樹脂シート製の包装容器100が示されている。
【0059】
また、図8の接合方法では、容器の端部にシート材(またはパネル材)の重ね合せ部ができるために、包装容器100の端部の耐衝撃性が向上する。
【0060】
背板102とフラップ104、106とを一体品で作製することができないほどの大サイズのガラス板を包装する場合には、第2の実施の形態の如く、背板102とフラップ104、106とを別体に構成し、双方を図8の如く直接、又は図9の如く接合片110を介して間接的に接合する。これにより、大サイズのガラス板包装用の包装容器100を提供できる。
【0061】
図7、図10に示すように背板102の4辺のうち、上下の長辺には一対のフラップ114、116が谷折り線C、Dを介して一体に設けられている。このフラップ114、116は、短冊状に構成されており、谷折り線C、Dに沿ってそれぞれ背板102に向けて折り畳まれる。このフラップ114、116には、先に折り畳まれたフラップ104、106の面ファスナの雄材118、118…に係合される面ファスナの雌材120、120…が取り付けられている。
【0062】
また、背板102には、背板102の左短辺(第1の短辺)122から第1の距離をもって備えられた二つの孔(第1の孔)124、126と、左短辺122から第2の距離をもって備えられるとともに背板102の下長辺(第1の長辺)128に沿った方向に長径を有する二つの長孔(第1の長孔)130、132と、左短辺122から第3の距離をもって備えられるとともに下長辺128に沿った方向に長径を有する二つの長孔(第1の長孔)134、136と、背板102の下長辺128から第4の距離をもって備えられた孔(第2の孔)138、140、142と、下長辺128から第5の距離をもって備えられるとともに左短辺122に沿った方向に長径を有する長孔(第2の長孔)144、146、148と、下長辺128から第6の距離をもって備えられるとともに左短辺122に沿った方向に長径を有する長孔(第2の長孔)150、152、154が開口されている。
【0063】
すなわち、孔124、126は、左短辺122に沿って、左短辺122から第1の距離をもって複数備えられている。また、長孔130、134は、孔124の中心と長孔130、134とを結ぶ中心線が下長辺128に平行になるように備えられ、同様に、長孔132、136は、孔126の中心と長孔132、136とを結ぶ中心線が下長辺128に平行になるように備えられている。
【0064】
また、孔138〜142は、下長辺128に沿って、下長辺128から第4の距離(請求項4においては第3の距離)もって備えられている。更に、長孔144、150は、孔138の中心と長孔144、150とを結ぶ中心線が左短辺122に平行になるように備えられ、同様に、長孔146、152は、孔140の中心と長孔146、152とを結ぶ中心線が左短辺122に平行になるように備えられている。同様に、長孔148、154は、孔142の中心と長孔148、154とを結ぶ中心線が左短辺122に平行になるように備えられている。
【0065】
図11(A)の如く、大サイズのガラス板G3(ガラス板G1よりも大サイズのガラス板)を包装容器100に包装する場合には、荷締め部材156を孔124と長孔134に、荷締め部材158を孔126と長孔136に、荷締め部材160を孔138と長孔150に、荷締め部材162を孔140と長孔152に、そして、荷締め部材164を孔142と長孔154にそれぞれ挿入する。そして、これら5本の荷締め部材156〜164を、各々張設して端部同士を溶着によって、又は不図示のストッパによって係合する。これにより、背板102に載置されたガラス板G3が背板102に固定される。この後、フラップ104、106を折り畳み、次にフラップ114、116を折り畳み、フラップ114,116の面ファスナの各雌材120、120…をフラップ104、106の各雄材118、118…に係合させる。これにより、包装容器100が箱状の搬送形態となる。
【0066】
また、図11(B)の如く、小サイズのガラス板G4(ガラス板G1よりも大サイズのガラス板)を包装容器100に包装する場合には、荷締め部材156を孔124と長孔130に、荷締め部材158を孔126と長孔132に、荷締め部材160を孔138と長孔150に、そして、荷締め部材162を孔140と長孔152にそれぞれ挿入する。そして、これら4本の荷締め部材156〜162を、各々張設して端部同士を溶着によって、又は不図示のストッパによって係合する。これにより、背板102に載置されたガラス板G4が背板102に固定される。この後、フラップ104、106、114、116を前述の如く折り畳み、箱状の搬送形態とする。
【0067】
なお、この包装容器100の効果は、包装容器10の効果と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0068】
一方、包装容器100は図7、図10の如く、フラップ104の背板102に対向する面に、孔124に対向する孔166、孔126に対向する孔168、孔138に対向する孔170、及び長孔144、150に対向する長孔172、174が備えられている。また、フラップ106の背板102に対向する面には、孔142に対向する孔176、長孔130、132に対向する長孔178、180、長孔134、136に対向する長孔182、184、及び長孔148、154に対向する長孔186、188が備えられている。
【0069】
したがって、この包装容器100によれば、例えばガラス板G3を包装する場合、まず、図12に示すようにガラス板G3を背板102に載置して、フラップ104、106を折り畳む。次に、図13(A)に示すように、孔166、孔124、長孔134、及び長孔182に荷締め部材156を通して荷締めし、孔168、孔126、長孔136、及び長孔184に荷締め部材158を通して荷締めし、孔170、孔138、長孔150、及び長孔174に荷締め部材160を通して荷締めし、孔176、孔142、長孔154、及び長孔188に荷締め部材164を通して荷締めし、図14に示す包装形態とする。これにより、ガラス板G3は背板102とフラップ104、106とに挟まれて確実に包装される。
【0070】
また、ガラス板G4を包装する場合には、まず、ガラス板G4を背板102に載置して、フラップ104、106を折り畳む。次に、図13(B)に示すように、孔166、孔124、長孔130、及び長孔178に荷締め部材156を通して荷締めし、孔168、孔126、長孔132、及び長孔180に荷締め部材158を通して荷締めし、孔170、孔138、長孔150、及び長孔174に荷締め部材160を通して荷締めし、包装形態とする。これにより、ガラス板G4は背板102とフラップ104、106とに挟まれて確実に包装される。
【0071】
ところで、図7、図10、図12に示すように包装容器100のフラップ104、106は、二つ折り可能な折り線E、Fを備え、二つ折りされた際の対向面には面ファスナの雄材118、118が取り付けられている。
【0072】
第2の実施の形態の大サイズ用の包装容器100は、広い収納スペースを要するが、図15の如く、フラップ104、106を折り線E、Fに沿って二つ折りにし、面ファスナの対向する雄材118、118同士を係合させることにより、二つ折りの状態を保持することができる。これにより、大サイズの包装容器100を展開した状態で収納するよりも、その収納スペースを省スペース化することができる。
【0073】
面ファスナの雄材(hook)同士を係合は弱い力で係合するために、特に包装作業中に簡単に外すことができ、作業効率がよくなる。
【0074】
背板102の長辺が2メートル前後になると、左右のフラップ104、106を広げた包装容器100のサイズは4メートルにもなる。このような大サイズの包装容器100にガラス板を狭い場所で包装しようとすると、ガラス板がフラップ104、106に引っ掛かり、包装容器100が倒れるおそれがある。そこで、フラップ104、106の長さが1メートル近くなるものは中間付近で180度折れ曲げて、フラップ104、106の各々の背中同士が接合する構造にすることが好ましい。
【0075】
また、包装容器100に形成されている多数の孔、及び長孔を、作業者の手掛け部とすることにより、作業者による包装容器100の運搬が容易になる。
【符号の説明】
【0076】
G1、G2、G3、G4…ガラス板、10…包装容器、12…背板、14、16、18、20…フラップ、22…面ファスナの雄材、24…面ファスナの雌材、26…短辺、28…孔、30…下長辺、32…長孔、34、36、38…孔、40、42、44…長孔、46、48、50、52…荷締め部材、54…孔、56…孔、58、60…長孔、62…孔、64…長孔、66…荷締めバンド、100…包装容器、102…背板、104、106…フラップ、108…溶着箇所、110…接合片、114、116…フラップ、118…雄材、120…雌材、122…左短辺、124、126…孔、128…下長辺、130、132、134、136…長孔、138、140、142…孔、144、146、148、150、152、154…長孔、156、158、160、162、164…荷締め部材、166、168、170…孔、172、174…長孔、176…孔、178、180、182、184、186、188…長孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状のガラス板が載置される矩形状のベース部材と、
前記ベース部材の4辺のうち少なくとも対向する2辺に備えられるとともに、前記ベース部材に向けて折り畳まれる一対の折り畳み部材と、を有し、
前記ベース部材には、
該ベース部材の第1の短辺から第1の距離をもって備えられた第1の孔と、
該ベース部材の前記第1の短辺から第2の距離をもって備えられるとともに前記ベース部材の第1の長辺に沿った方向に長径を有する第1の長孔と、
該ベース部材の前記第1の長辺から第3の距離をもって備えられた第2の孔と、
該ベース部材の前記第1の長辺から第4の距離をもって備えられるとともに前記第1の短辺に沿った方向に長径を有する第2の長孔と、
が備えられ、
前記第1の孔と前記第1の長孔に挿入されて端部同士が係合されることにより、前記ベース部材に載置された前記ガラス板を前記ベース部材に保持させる第1の保持部材と、
前記第2の孔と前記第2の長孔に挿入されて端部同士が係合されることにより、前記ベース部材に載置されたガラス板を前記ベース部材に保持させる第2の保持部材と、
を有することを特徴とするガラス板包装容器。
【請求項2】
前記第1の孔の中心と前記第1の長孔の中心を結ぶ第1の中心線において、前記第1の中心線が前記ベース部材の第1の長辺と並行になるように前記第1の孔と前記第1の長孔とが設けられ、
前記第2の孔の中心と前記第2の長孔の中心を結ぶ第2の中心線において、前記第2の中心線が前記ベース部材の第1の短辺と並行になるように前記第2の孔と前記第2の長孔とが設けられている請求項1に記載のガラス板包装容器。
【請求項3】
前記第1の孔は、前記第1の短辺に沿って、前記第1の短辺から前記第1の距離をもって複数備えられ、
前記第1の長孔は、前記第1の中心線が前記第1の長辺に平行になるように複数備えられ、
前記第2の孔は、前記第1の長辺に沿って、前記第1の長辺から前記第3の距離をもって複数備えられ、
前記第2の長孔は、前記第2の中心線が前記第1の短辺に平行になるように複数備えられている請求項2に記載のガラス板包装容器。
【請求項4】
前記一対の折り畳み部材の前記ベース部材に対向する面には、前記第1の孔に対向する第3の孔、前記第1の長孔に対向する第3の長孔、前記第2の孔に対向する第4の孔、及び前記第2の長孔に対向する第4の長孔が備えられている請求項1、2又は3に記載のガラス板包装容器。
【請求項5】
前記ベース部材と前記一対の折り畳み部材とは別体に構成されて直接又は接合片を介して接合される請求項1〜4のいずれかに記載のガラス板包装容器。
【請求項6】
前記一対の折り畳み部材は、二つ折り可能な折り線を備え、二つ折りされた際の対向面には面ファスナの雄材が取り付けられている請求項5に記載のガラス板包装容器。
【請求項7】
前記一対の折り畳み部材の前記面ファスナの雄材は、前記ベース部材と一体又は別体の他の一対の折り畳み部材に取り付けられた面ファスナの雌材と係合される請求項6に記載のガラス板包装容器。
【請求項8】
前記ベース部材及び前記一対の折り畳み部材は、樹脂製又は紙製である請求項1〜7のいずれかに記載のガラス板包装容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−17128(P2012−17128A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155988(P2010−155988)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】