説明

ガラス溶融のための改善された電気特性を有する酸化錫

【課題】ガラス溶融のための改善された電気特性を有する電極を提供すること。
【解決手段】主成分SnOを含む組成物から形成された酸化錫系電極が開示される。本組成物は、CuO、bZnO、およびcSbを含む添加剤を含み、ここでa、b、およびcは、それぞれの成分のwt%を示し、0.2≦(a+b)/c<1.0である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に酸化錫系電極、特に、ガラス溶融用途に使用する電極を対象とする。
【背景技術】
【0002】
商業的なガラス溶融の操作は、通常天然ガスまたはオイル等の化石燃料に使用に依存する。電気エネルギーの使用もエネルギーの追加的な資源として、エネルギーの主な資源として、または電気炉内での単独のエネルギー源として可能である。後者の場合には、電気炉は高伝導性でガラスを直接通る電極の間に電流を流すことで直接ガラスを加熱する耐火性電極を利用する。そうした電極は、技術的にかなり充分に研究されてきた。しかし、新技術の開発およびLCDおよびプラズマディスプレイを含むフラットディスプレイでの利用等の高性能ガラス成分への増加する要求により、増加する要求は、ガラスの機械的および光学的性能、および同様にガラス溶融設備の性能に置かれてきた。
【0003】
電気炉の操作に関して、米国特許番号第3,287,284号明細書(現譲受人によって共通に所有されている)に詳細が記載されている種々の酸化錫系電極組成物が使用されてきた。米国特許番号第3,287,284号明細書に記載されている技術が10年たっている一方で、新規な酸化錫電極材料の開発が、成熟技術の範囲でますます増加して共通になり、米国特許番号第3,287,284号明細書は、重要な最新材料を示す。記載されているように、酸化錫系組成物は、例えば焼締または抵抗率での助けとなる種々の成分を含む。記載された種々の添加剤の中で、米国特許番号第3,287,284号明細書は、酸化銅、酸化亜鉛および酸化アンチモンの組み合わせを利用する。成分はかなり広い成分範囲、すなわち0.1〜0.5%の酸化銅、0.5〜1.0%の酸化亜鉛、および0.7〜1.2%の酸化アンチモンで記載される一方で、他方では、実際、かなり狭い範囲内に減少されて実行される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
米国特許番号第3,287,284号明細書に記載されるある実施可能な態様が、望ましい特性を有する一方で、さらに安定な電気的特性を有する等、熱サイクルの関数としての安定した電気抵抗率等、およびさらに良い低温での抵抗率等の改善された酸化錫系電極の技術で要求が存在し続ける。例えば、該米国特許番号、284は、100℃で0.15〜2.5Ω・cmの範囲を示す(shows a range or 0.15 〜2.5Ω・cm at 100 ℃)。ほかの特性は、望ましい低温抵抗率および他の特性と同様に、腐食特性での改善、気孔率の減少、目立った開放気孔率を含む。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一形態によれば、酸化錫系電極は、SnOからなる主成分と、それぞれa、b、およびcの量で、CuO、ZnO、およびSbを含む添加剤とを含む組成物から形成される。特定の特性によると、0.2≦(a+b)/c<1.0である。
【0006】
本発明の別の形態によれば、炉内に暴露する複数の酸化錫系電極を含む炉を有するガラス溶解装置が提供される。それぞれの電極は、SnOからなる主成分と、それぞれa、b、およびcの量で、CuO、ZnO、およびSbを含む添加剤とを含む組成物から形成される。特定の態様によると、0.2≦(a+b)/c<1.0である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の態様による種々の酸化錫系電極を示す。
【図2】図2は、ガラス溶融炉中の酸化錫ベース電極の実施を具体的に示す。
【図3】図3は、一回熱サイクルを通った、温度の関数としての特定サンプルの測定された体積抵抗率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一形態によれば、酸化錫系電極が、電極の特性を変更する特定の酸化物を有する主成分としてSnOを含む組成物の焼結によって形成される。そうした酸化物はそれぞれa、b、およびcの量でCuO、ZnO、Sbを含む。用語「主成分」は組成物の50wt%超を意味し、そこから本発明により電極が形成され、SnOで表される。
【0009】
一つの特徴により、それぞれの添加剤の相対量は、種々の範囲内に制御される。例えば、CuOは、約0.025wt%以上の量で存在してもよい。他の態様では、さらに約0.035wt%以上、または約0.045wt%以上等のより多い量のCuOを有する。CuOの上限は、約0.10wt%以下等の約0.15wt%であってもよい。実施可能な態様でのCuOの特定量は約0.05wt%であった。
【0010】
次に酸化亜鉛成分に目を向けると、ある態様は、約0.40〜約0.60wt%の範囲内等の約0.25〜約0.975wt%の範囲を必要とする。下記のある態様は、約0.50wt%のZnOの量を有する。
【0011】
酸化アンチモン成分に目を向けると、Sbは約0.75〜約1.25wt%の範囲内等の約0.50〜約1.5wt%の範囲内で存在してもよい。ある態様では、約1.0wt%の量のSbであった。
【0012】
酸化錫は、一般的に組成物の約95wt%以上、さらに典型的には組成物の約98wt%以上を形成する主成分である、酸化錫の特定の形態については、他の態様はグロッグ(grog)または焼成された粉末の形態を利用した一方で、ある態様は基本的に完全反応性(バージン)SnO粉末を利用する。しばしばこのグロッグ粉末は少量の他の酸化物を含む。これらの少量の他の酸化物は、組成物の、2wt%まで、一般的に1wt%以下、また0.5wt%以下に相当することができ、それによって本発明の態様に従った酸化錫系電極が形成される。他の酸化物が提供される範囲内において、特にCuO、ZnO、またはSbを含めて、そうした酸化物は、上記の添加剤パッケージを構成、または一部と考えられず、むしろ電極組成物のSnO系一部として考えられる。
【0013】
上記に記載された種々の添加剤に関連する前出のwt%の範囲は、特に実施可能な例の製造において特に有用である可能性がある。本発明の一形態では、相互に対して添加剤の相対的な量を関連付けることによって、関連する組成の特徴を特に特定する。特定の特徴に従って、特定範囲で提供されるそれぞれの添加剤のそれぞれの含有量だけでなく、成分間の関係も、あるパラメーターの範囲内で画定される。ある態様では、0.2≦(a+b)/c<1.0である。すなわちCuOたすZnOの合計量をSbの含有量で割ると0.2以上、そして1.0以上である。他の態様によれば、前出の(a+b)/cの割合は、0.8または0.7未満等の0.9未満である。他の態様によれば、(a+b)/cの値は0.3以上である。
【0014】
さらに、a/bの比率(ZnOに対するCuO)は、あるパラメーターの範囲内に限定されてもよい。例えば、a/bは0.05超であり、そして0.7未満である。a/b比率の上限は0.6または0.5以下等、さらに低くてもよい。ある態様では、0.18以下等の約0.20以下の低められたa/b比率を有してもよい。
【0015】
典型的に、本発明の態様による酸化錫系電極の形成は、原料の混合で始まる。高い焼締への要求が燃焼された状態の収縮への環境へのハイグリーン(high green)につながるため、酸化錫電極の製造は、困難な工程である。しかし、記載された酸化錫電極の製造のために、以下の工程が続いた。反応性で焼成された粉末が、焼結添加剤および電子性ドーパントと、充分に均一な混合に達するまで力強く混ぜられ;そして、コンパクトな緑色の物体になるように、モールドが満たされ、真空にされ高圧で静水圧プレスされ;いったんプレスされると緑色の物体は少なくとも1400℃の温度で燃焼される。燃焼されたブロックは、最後に必要な寸法まで機械加工される。
【0016】
結果として形成された酸化錫系電極は、図1に示された弾丸形円筒型の一つ10または一般的な長方形または多角形12を含む種々の幾何的輪郭をとってもよい。実際の電極の実装は、ガラスの溶解が提供される炉20の内部24に曝された電極10を示す図2で図式的に見ることが可能である。
【0017】
本発明の態様により、結果として生じた酸化錫系電極は、種々の望ましい特性を有することが見出された。一つの特徴によれば、電極は、約0.7体積%以下等、約0.5体積%以下またはさらに小さい等の厳重にコントロールされた開放気孔率を有してもよい。ある態様は、約0.4体積%以下の開放気孔率を有し、そして実際ある実施可能な例では、0.3体積%および0.2体積%の開放気孔率を有することが見出された。相対開放気孔率は、腐食耐性を改善するために電極へのガラス溶融の相対的な侵入を弱めることによって、改善された長期の耐久性を与えるためには、特に重要である。ある類似の方法では電極のバルク密度は、約6.60g/cm以上等、または約6.70g/cm以上等、比較的高くてもよい。
【0018】
さらにある態様では、酸化錫系電極は、望ましい電気抵抗率レベルを有することが見出され;電気抵抗率は、100℃で約1Ω・cm以上であり、そして100℃で約0.5Ω・cm以下、100℃で0.25Ω・cm以下、さらに100℃で約0.1Ω・cm以下までもの電気抵抗率を有するように制限されていてもよい。注目すべきことに、前出の電気抵抗率特性は、形成された状態の酸化錫系電極と連動しており、特に不利益となる後工程アニーリングへの必要または要求が無い。すなわち、電気抵抗率を改変するためにアニーリングを利用または活用する先行技術は、通常1以上の熱サイクルへの暴露の後、目立った抵抗率の劣化に苦しむ。対照的に、本発明の態様は、1以上の熱サイクルを通った後でさえも、より優れた長期間の電気的特性を示す。酸化錫系電極は、熱サイクルへの暴露の後400℃で1×10−1Ω・cmの最大体積抵抗率の増加がある抵抗率を維持する。この抵抗率変化の定量化のために利用される加熱は、通常、約1100℃等の少なくとも900℃の温度に昇温して行われる。別の態様は、熱サイクルへの暴露の後、400℃で1×10−2Ω・cmの抵抗率の最大増加等の2x10−2Ω・cmの抵抗率の最大増加を有する。
【0019】
本発明の態様に従って、酸化錫系電極の組成の特徴が、各一つの添加剤の相対的な含有量に焦点を定めるだけでなく、包括的な全体の添加剤パッケージの範囲、およびそれらの内部関係を定量化することに焦点を置き考慮する方法で開発された。この点で、先行技術がかなり広い組成の特徴を特定する一方で、この最新技術は、一般的には、密度、開放気孔率、低温電気抵抗率、熱サイクルを通る間の電気抵抗率の維持、腐食耐性、熱衝撃抵抗性、および関連するパラメーターに関して、種々の添加剤間の内部関係の認識および電極性能を改善するための組成の特徴の定量化に失敗した。この技術に記載された広い組成の特徴の実際の実施についての詳細な分析は、この技術がここに記載される添加剤間の組成関係の効果の認識に、一般的に失敗したことを明らかにする。
【0020】
さらなる形態によると、本発明は、1以上の酸化錫系電極が炉の内部に伸び、そして該内部に露出し、個々の電極がSnOからなる主成分と、a=CuO、b=ZnO、およびC=Sbを含む添加剤とを含むガラスの溶融が提供される内部を画定する炉を含むガラス溶融装置であって、ここでa、b、およびcが、それぞれ成分CuO、ZnO、およびSbのwt%を表わし、0.2≦(a+b)/c<1.0である、ガラス溶融装置について言及する。酸化錫系電極の内容で上記に記載された全ての好ましい態様および特徴は、本発明のガラス溶融装置にも適用される。
【実施例】
【0021】
特定の実施可能な実施例に目を向けると、いくつかの異なる組成物が、上記の同じ基本工程フローを利用して調製されテストされた。組成のおよび測定されたサンプルZn3,Zn7およびZn8の物理特性は下の表に与えられる。
【0022】
【表1】

【0023】
報告されたデータからかなり明らかなように、サンプルZn3および特にZn7は望ましい特徴を有する。報告されたように、低室温抵抗率、素晴しくコントロールされた開放気孔率、および高密度は、望ましい電気的特性と結び付けられている。例えば、サンプルは、高温(1100℃)での電気抵抗率と同様に、低温(100℃)で望ましい低電気抵抗率を有することが見出された。さらに、低温電気抵抗率特性は、1100℃での熱サイクルの後、維持されることが見出された。さらに、熱サイクル実施前後の400℃での電気抵抗率は、比較的公称のものであることが見出された。注目すべきことに、サンプルZn3は約1×10−3の電気抵抗率(デルタ、Δ)の増加を示した一方で、Zn7は、事実上電気抵抗率の増加が0であるその量より小さい電気抵抗率デルタΔを示した。比較例T1186に対してプロットされたサンプルZn3、Zn7、Zn8の実際のデータが、図3に示される。T1186は、0.5wt%のCuO、0.9〜1.0wt%のSb、および残りがSnOである公称の組成を有する商業的に入手可能な、最新の酸化錫系電極に相当する。
【0024】
さらに、実施可能な実施例は、T1186と関連するベースラインの基準(100)に比較して、より優れた腐食耐性を示した。動的腐食テスト手順は、溶融ガラスにサンプルを供することによってガラスの腐食耐性を決定するために行われた。テスト手順では、サンプルは、溶融ガラスのるつぼ内で回転して、炉内の動的な使用状態をシミュレートした。ガラスに飽和する溶解された耐火物による腐食の減少が、長期実験のケースでのテストの間に、ガラスを変更することによって最小化することが可能である。サンプルは、テストの前後での体積測定の違いを測定することによって評価された。全体の腐食、ガラスラインより上でのサンプルの揮発/収縮、および表面下の腐食、ガラスラインより下での腐食を含む2つサンプルの測定結果が得られた。腐食インデックスは、参照サンプル(T1186)/サンプル×100の相対的な体積損失(ΔV-V)によって算出された。参照サンプルは100のインデックスを有し、100のインデックスより高いサンプルの腐食耐性は、従って参照サンプルより高いインデックスを有する。Zn3およびZn7の特定の場合では、腐食インデックスは、106および107であることが見出され、それぞれ、より優れた腐食耐性を示した。
【0025】
発明の態様は、酸化錫系電極および同じものを取り込んでいる構造として示され、そして記載された一方で、種々の改変および代替物が、本発明の範囲をいかなる形でも離れることなく製造可能であるため、本発明は、示された詳細に限定されることが意図されていない。例えば、追加的または均等な代替物が与えられることは可能であり、追加的または均等な製造プロセスは行使されることが可能である。そのままでは、さらにここで開示された本発明の改変および均等物は、ただのルーチンに過ぎない実験を使用する当業者に思い浮かぶ可能性があり、そうした全ての改変および均等物は、請求項によって定義される本発明の範囲内にあると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SnOからなる主成分と、
a=CuO、b=ZnO、およびc=Sbを含む添加剤と、
を含む組成物から形成された酸化錫系電極であって、
ここでa、b、およびcは、それぞれ、成分CuO、ZnO、およびSbのwt%を表し、そして0.2≦(a+b)/c<1.0である、電極。
【請求項2】
(a+b)/c<0.9である、請求項1の電極。
【請求項3】
(a+b)/c<0.8である、請求項1の電極。
【請求項4】
(a+b)/c<0.7である、請求項1の電極。
【請求項5】
(a+b)/c≧0.3である、請求項1の電極。
【請求項6】
0.05<a/b<0.7である、請求項1の電極。
【請求項7】
a/b<0.6である、請求項1の電極。
【請求項8】
a/b<0.5である、請求項1の電極。
【請求項9】
a≧0.025wt%の組成物である、請求項1の電極。
【請求項10】
ZnOが約0.50wt%の量で存在する、請求項1の電極。
【請求項11】
0.50≦c≦1.5wt%である、請求項1の電極。
【請求項12】
0.75≦c≦1.25wt%である、請求項1の電極。
【請求項13】
cが約1.0wt%である、請求項1の電極。
【請求項14】
SnOが組成物の95wt%以上を形成する、請求項1の電極。
【請求項15】
SnOが組成物の98wt%以上を形成する、請求項14の電極。
【請求項16】
SnOがバージンSnO粉末の形態で組成物中に提供される、請求項1の電極。
【請求項17】
SnOが焼成されたSnO粉末と混合したバージンSnO粉末の形態で組成物中に提供される、請求項1の電極。
【請求項18】
焼成されたSnO粉末が少量の他の酸化物を含む、請求項17の電極。
【請求項19】
電極が約0.7%以下の開放気孔率を有する、請求項1の電極。
【請求項20】
電極が100℃で約1Ω・cm以下の電気抵抗率を有する、請求項1の電極。
【請求項21】
100℃で約1Ω・cm以下の前記電気抵抗率がアニーリングなしで形成された状態で測定される、請求項20の電極。
【請求項22】
電極が100℃で約0.1Ω・cm以下の電気抵抗率を有する、請求項1の電極。
【請求項23】
熱サイクルへの暴露の後に、電極が400℃で1×10−1Ω・cmの最大体積抵抗率の増加を有する、請求項1の電極。
【請求項24】
電極が1×10−2Ω・cmの最大体積抵抗率の増加を有する、請求項23の電極。
【請求項25】
熱サイクルへの暴露の後に、400℃で電極が1×10−3の最大体積抵抗率の増加を有する、請求項23の電極熱。
【請求項26】
ガラス溶融が処理される内部を画定する炉と、
炉の内部に伸び、そして該内部に暴露する複数の酸化錫系電極であって、それぞれの電極がSnOからなる主成分と、a=CuO、b=ZnO、およびC=Sbを含む添加剤とを含む、ガラス溶融装置であって、ここでa、b、およびcは、それぞれ、成分CuO、ZnO、およびSbのwt%を示し、そして0.2≦(a+b)/c<1.0である、装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−148971(P2012−148971A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−58711(P2012−58711)
【出願日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【分割の表示】特願2007−522790(P2007−522790)の分割
【原出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(593150863)サン−ゴバン セラミックス アンド プラスティクス,インコーポレイティド (139)
【Fターム(参考)】