ガラス熔融装置およびガラス熔融方法
【課題】相当量のガラス原料であっても、縦型円筒状のガラス熔融塔中を落下させながら、迅速かつ安定的に熔融可能なガラス熔融装置およびガラス熔融方法を提供する。
【解決手段】ガラス原料を供給するガラス原料供給口18aを有する原料供給装置18と、供給された落下状態のガラス原料28を加熱して、熔融ガラスとする縦型円筒状のガラス熔融塔14と、を順次に備えたガラス熔融装置10およびそれを用いたガラス熔融方法であって、縦型円筒状のガラス熔融塔14に、その接線方向に対して、少なくとも燃料ガスを供給する第1のノズル12a,12cおよび酸素含有ガスを供給する第2のノズル12b,12dを備えた管状火炎生成装置12が設けてある。
【解決手段】ガラス原料を供給するガラス原料供給口18aを有する原料供給装置18と、供給された落下状態のガラス原料28を加熱して、熔融ガラスとする縦型円筒状のガラス熔融塔14と、を順次に備えたガラス熔融装置10およびそれを用いたガラス熔融方法であって、縦型円筒状のガラス熔融塔14に、その接線方向に対して、少なくとも燃料ガスを供給する第1のノズル12a,12cおよび酸素含有ガスを供給する第2のノズル12b,12dを備えた管状火炎生成装置12が設けてある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス熔融装置およびガラス熔融方法に関する。特に、相当量のガラス原料であっても、落下させながら、極めて迅速かつ安定的に熔融することが可能なガラス熔融装置およびガラス熔融方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉末状態のガラス原料を、所定のガスバーナーを用いて加熱熔融させ、所定粘度を有する溶液状態の熔融ガラスとするガラスの溶解装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的には、図11に示すように、溶解室202の前後に、原料投入部203と、清澄室204と、をそれぞれ連設するとともに、溶解室202に、燃焼火炎を生成する複数本のガスバーナー201(201a〜201e)を備えたガラスの溶解装置200であって、溶解室202の原料投入部側に設置した少なくとも一つのガスバーナーに、ガラス原料又はカレット又はこれらの混合原料の少なくとも一部を含む粉粒体を、ガスバーナー201a、201bの燃焼火炎中に供給するガラス原料供給手段207を設けてなるガラスの溶解装置200である。
【0003】
また、陽極(プラズマトーチ)と、陰極との間に高電圧をかけてアークを発生させ、これに作動ガス(空気等)を適用して、プラズマ流を形成する構成のプラズマ装置を用いたガラス熔融装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
より具体的には、図12(a)〜(b)に示すように、ガラス原料の一部または全部を粒子状に成形して調整された混合ガラス原料(W)が通過する際に、炭酸塩の分解反応温度以上に加熱するプラズマ加熱熔融装置306によって、気相雰囲気を形成する原料加熱部303と、加熱されたガラス原料が上部に供給される構成であって、ガラス融液308を貯留するためのガラス融液部304と、を含んでなるガラス熔融装置301である。
【0004】
さらに、ガラス溶解炉等に適用される横型円筒状の輝炎バーナであって、管状火炎が形成できるとともに、輝炎を形成して、火炎輻射も利用できる輝炎バーナが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
より具体的には、図13(a)〜(b)に示すように、横型円筒状の燃焼空間402を形成するバーナ本体401の内面に、接線方向に向けて空気と燃料ガスとの混合気を噴出させる噴出部404を備え、当該噴出部404から噴出した混合気が燃焼空間402において旋回し、管状火炎を形成して燃焼する構成である。
それとともに、燃焼空間402の軸方向における一端402aの壁面中心部に、当該壁面中心部から、軸方向に燃料ガスを噴射させる軸方向燃料噴射部405を備え、燃焼空間402の軸方向における他端402bから輝炎408を噴出させる構成の輝炎バーナ450である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−11953号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開2006−199549号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】特開2009−222291号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたガラス熔融装置では、比較的多量のガラス原料を熔解させることができるものの、熔融ガラスとするのに、数十時間という相当な熔解時間を要するという問題が見られた。
また、熔融窯のメンテナンス等のために、ガラス熔融装置の動作を停止する必要が生じた場合であっても、ガラス熔融装置を所定温度に低下させて必要な作業をした後、高温状態にして再稼動するためには、過度に長時間を要することから、事実上不可能であるという問題が見られた。
したがって、開示されたガラス熔融装置において、メンテナンスという概念はなく、動作を停止する必要が生じた場合には、装置全体を廃棄して、交換しなければならず、極めて不経済であった。
【0007】
また、特許文献2に開示されたガラス熔融装置は、比較的少量のガラス原料を熔融させる場合については、プラズマ熔融装置を用い、比較的短時間で熔融できる可能性はあるものの、スポット的な加熱方式であることから、相当量のガラス原料を熔融させる場合には適用できないという問題が見られた。
また、ガラス熔融装置に提供するガラス原料を所定粒径、例えば、3mm以下の粒子状に成形しなければならないという制約があって、工程数が増えたり、製造時間が長くなったり、さらには、製造時の歩留まりが低下したりするという問題も見られた。
【0008】
さらに、特許文献3に開示された管状火炎を含む輝炎バーナを用いた場合であっても、ソーダ石灰ガラス原料等について、迅速かつ均一に熔解できないという問題が見られた。
すなわち、ソーダ石灰ガラス原料等は、珪砂等の天然成分を主成分としているほか、融点等が異なる異種原料を多く含んでおり、それらガラス原料の平均粒径(D50)のばらつきが大きい上に、炭酸ガスが発生しやすいとう事実がある。
よって、これらのガラス原料の平均粒径(D50)のばらつきや、炭酸ガスの影響によって、ソーダ石灰ガラス原料の熔解時間が長くなったり、熔解状態が不均一になったりするという問題が見られた。
【0009】
そこで、本発明の発明者らは、鋭意研究した結果、所定の原料供給装置と、管状火炎生成装置を含むガラス熔融塔と、を順次に備えることによって、落下中のガラス原料を、迅速かつ連続的に熔融できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、相当量のガラス原料であっても、ガラス原料を所定粒径に成形することなく、かつ、発生する炭酸ガス等の影響を排除して、迅速かつ連続的に熔融可能なガラス熔融装置、およびそのようなガラス熔融装置を用いてなる、ガラス原料の効率的な熔融方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、ガラス原料を供給するガラス原料供給口を有する原料供給装置と、供給された落下状態のガラス原料を加熱して、熔融ガラスとする縦型円筒状のガラス熔融塔と、を順次に備えたガラス熔融装置であって、縦型円筒状のガラス熔融塔に、その接線方向に対して、燃料ガスを供給する第1のノズルおよび酸素含有ガスを供給する第2のノズルを備えた管状火炎生成装置が設けてあることを特徴とするガラス熔融装置が提供され、上述した課題を解決することができる。
すなわち、このような原料供給装置と、ガラス熔融塔と、を順次に備えることによって、ガラス原料を所定粒径に成形することなく、かつ、発生する炭酸ガス等の影響を排除して、熔融させるガラス原料量の如何によらず、落下中のガラス原料を、迅速かつ連続的に熔融することができる。
そして、このように構成することによって、ガラス原料の熔融に寄与した管状火炎が、縦型円筒状のガラス熔融塔の内壁に沿って移動し、得られた熔融ガラスに到達可能なことから、それをさらに加熱保温する熱源として利用でき、ひいては、ガラス原料の熔融に際して、極めて高いエネルギー効率を得ることができる。
また、このようなガラス熔融塔の下方端に、得られた熔融ガラスの貯留部を設け、そこで、撹拌しながら、所定時間滞留させることによって、仮に、加熱熔融が不十分なガラス原料等があったとしても、均一流動状態の熔融ガラスとすることができる。
【0011】
また、本発明のガラス熔融装置を構成するにあたり、管状火炎生成装置として、鉛直方向に沿って、上方から、少なくとも第1の管状火炎生成装置および第2の管状火炎生成装置が設けてあり、これら第1の管状火炎生成装置および第2の管状火炎生成装置に対応して、第1のガラス原料供給口および第2のガラス原料供給口がそれぞれ設けてあることが好ましい。
このように構成することによって、複数種のガラス原料を熔融させる場合であっても、ガラス原料ごとに、複数ある管状火炎生成装置およびガラス原料供給口を選択し、相当量のガラス原料であっても、より安定的に熔融することができる。
【0012】
また、本発明のガラス熔融装置を構成するにあたり、原料供給装置に撹拌装置が設けてあって、当該撹拌装置が、超音波振動装置、圧電振動装置、モータ振動装置、回転ミキサ、またはスクリューフィーダーのいずれか一つであることが好ましい。
このように構成することによって、ガラス原料の凝集を有効に防止し、相当量のガラス原料であっても、より安定的に熔融することができる。
【0013】
また、本発明のガラス熔融装置を構成するにあたり、原料供給装置の下方に、所定幅のスリットが設けてあり、当該スリットを介して、ガラス原料をカーテン状に落下させながら、縦型円筒状のガラス熔融塔に対して、定量的に供給する定量供給装置が設けてあることが好ましい。
このように構成することにより、ガラス原料の連続的かつ定量的な供給を可能とし、相当量のガラス原料であっても、より安定的に熔融することができる。
【0014】
また、本発明のガラス熔融装置を構成するにあたり、原料供給装置と、円筒状のガラス熔融塔との間に、断熱装置または冷却装置が設けてあることが好ましい。
このように構成することにより、原料供給装置に、ガラス原料を所定時間滞留させた場合であっても、その間の加熱に起因した凝集を容易に防止することができる。
【0015】
また、本発明のガラス熔融装置を構成するにあたり、ガラス熔融塔の下方端に、得られた熔融ガラスをさらに加熱熔融させるための加熱装置を備えることが好ましい。
このように構成することにより、環境条件等の変動やガラス原料の配合ばらつき等に起因し、管状火炎生成装置のみの加熱によっては、ガラス原料が完全熔解状態にならない場合が生じたとしても、ガラス熔融塔とは別の加熱装置によって、均一温度かつ良好な流動状態の熔融ガラスとすることができる。
【0016】
また、本発明のガラス熔融装置を構成するにあたり、ガラス熔融塔で得られた熔融ガラスを流動させながら、炭酸ガスを脱泡するガラス清澄装置をさらに備えることが好ましい。
このようにガラス熔融塔の端部である熔融ガラスの取り出し口等に、ガラス清澄装置をさらに備えることによって、炭酸ガス発生によるガラス状態の不均一化を有効に防止することができ、ひいては、泡の少ない熔融ガラスを用いて、所定の機械的強度等を有するガラス容器を安定的に製造することができる。
【0017】
また、本発明の別の態様は、ガラス原料を供給する原料供給装置におけるガラス原料供給口から供給された落下状態のガラス原料を加熱して、熔融ガラスとするガラス熔融方法であって、ガラス原料供給口から、縦型円筒状のガラス熔融塔に、前記ガラス原料を供給する工程と、供給された落下状態のガラス原料を、縦型円筒状のガラス熔融塔に備えてある管状火炎生成装置によって、加熱し、熔融ガラスとする工程と、を含むことを特徴とするガラス熔融方法である。
すなわち、このように落下状態のガラス原料を、縦型管状火炎を用いて加熱することによって、熔融させるガラス原料量の如何によらず、ガラス原料を所定粒径に成形することなく、かつ、発生する炭酸ガス等の影響を排除して、極めて高いエネルギー効率でもって、迅速かつ連続的に熔融することができる。
【0018】
また、本発明のガラス熔融方法を実施するに際して、ガラス原料の平均粒径を10〜800μmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように実施することにより、縦型管状火炎によるガラス原料のより均一加熱を可能とし、相当量あるいは複数種のガラス原料であっても、より安定的に熔融することができる。
【0019】
また、本発明のガラス熔融方法を実施するに際して、管状火炎生成装置における管状火炎生成用ガスとして、炭化水素ガスおよび空気を用いた後、切り替えて、炭化水素ガスおよび酸素を用いることが好ましい。
このように実施することにより、最初は、炭化水素ガスおよび空気を用いて、より安全な着火を確保することができ、その後、切り替えて、炭化水素ガスおよび酸素を用いることによって、ガラス原料をさらに安定的に熔解することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明のガラス熔融装置の概略図である。
【図2】図2は、管状火炎生成装置の一例を説明するために供する図である。
【図3】図3は、攪拌供給装置としてのスクリューフィーダーの概略図である。
【図4】図4(a)〜(b)は、定量供給装置の一例を説明するために供する図である。
【図5】図5(a)〜(b)は、本発明のガラス熔融装置によって得られた熔解ガラスの固化物および熔融されるガラス原料を説明するために供する図である。
【図6】図6は、管状火炎生成装置の半径方向位置における火炎温度分布を説明するために供する図である。
【図7】図7(a)〜(c)は、管状火炎生成用ガスの種類(CH4/O2、C3H8/O2、H2/O2)とそれら当量比の、火炎温度に及ぼす影響を説明するために供する図である。
【図8】図8は、ガラス熔融塔におけるシャッター、断熱装置または冷却装置、別の加熱装置、ガラス清澄装置、着火装置、およびガスセンサをそれぞれ説明するために供する図である。
【図9】図9(a)〜(b)は、耐熱保護部材を周囲に備えたガラス熔融装置を説明するために供する図である。
【図10】図10は、ガラス原料の平均粒径と、加熱時間との関係を説明するために供する図である。
【図11】図11は、従来のガラス熔融装置(ガスバーナーを備えたガラス熔融装置)を説明するために供する図である。
【図12】図12(a)〜(b)は、従来の別のガラス熔融装置(プラズマ熔融装置を備えたガラス熔融装置)を説明するために供する図である。
【図13】図13(a)〜(b)は、従来の管状火炎を含む輝炎バーナを説明するために供する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、図1に例示するように、ガラス原料28を供給するガラス原料供給口18aを有する原料供給装置18と、供給された落下状態のガラス原料28を加熱して、熔融ガラスとする縦型円筒状のガラス熔融塔14と、を順次に備えたガラス熔融装置10であって、縦型円筒状のガラス熔融塔14に、その接線方向に対して、少なくとも燃料ガスを供給する第1のノズル12a、12cおよび酸素含有ガスを供給する第2のノズル12b、12dを備えた管状火炎生成装置12が設けてあることを特徴とするガラス熔融装置10である。
すなわち、このようにガラス熔融装置10を構成することによって、ガラス原料28を所定粒径に成形することなく、ガラス原料28そのものであっても、所定面積を有するとともに、面方向のみならず、鉛直方向にも均一な温度分布を有する管状火炎16によって、縦型円筒状のガラス熔融塔14の内部を落下中のガラス原料28を、迅速かつ連続的に熔融することができる。
また、縦型円筒状のガラス熔融塔14の内部で、鉛直方向に移動する管状火炎16を用いて、落下中のガラス原料28を熔解させることから、発生する炭酸ガスの影響を受けることが少なくなる。
その上、ガラス原料28の熔融に寄与した管状火炎16が、縦型円筒状のガラス熔融塔14の内壁に沿って移動し、得られた熔融ガラスの貯留部付近に到達可能なことから、かかる管状火炎16を利用して、得られた熔融ガラスをさらに加熱保温することができ、ひいては、ガラス原料28の熔融に際して、極めて高いエネルギー効率を得ることができる。
以下、適宜図面を参照しながら、第1の実施形態のガラス熔融装置について、具体的に説明する。
【0022】
1.原料供給装置
(1)基本的構成
原料供給装置18は、図1に示すように、縦型円筒状のガラス熔融塔14の上方に設けてあって、所定のガラス原料28を供給し、落下状態とするガラス原料供給口18aを備えている。
すなわち、このようなガラス原料供給口18aが、縦型円筒状のガラス熔融塔14の所定位置に設けてあり、かつ、相当量のガラス原料28を安定的供給するとともに、管状火炎16の安定性に影響を与えない構成であることが好ましい。
よって、図1に示すように、筒状の原料供給装置18であって、その一端としてのガラス原料供給口18aが管状火炎の中央付近に位置している一方、もう一方の端部には、ホッパー等を接続するためのガラス原料投入口18bが設けてあることが好ましい。
【0023】
なお、図示しないものの、原料供給装置18において、その内部に備えてあるスクリューねじ等によって、ガラス原料投入口18bから投入されたガラス原料28を、順次かつ定量的に移動させ、ガラス原料供給口18aから管状火炎16の中央付近に供給することが好ましい。
その上、ガラス原料供給口18aの先端部を下方に折り曲げることによって、管状火炎の16の中央付近に、ガラス原料28をさらに確実に供給することができ、ひいては、縦型円筒状のガラス熔融塔14の中心軸に沿って下方に落下させることができる。
【0024】
(2)複数のガラス原料供給口
また、一つの縦型円筒状のガラス熔融塔に対して、鉛直方向に、複数のガラス原料供給口(第1のガラス原料供給口および第2のガラス原料供給口)を設けることが好ましい。
この理由は、複数種のガラス原料を熔融させる場合であっても、ガラス原料の種類や平均粒径に応じて、複数のガラス原料供給口のいずれかを選択して、最適な熔融状態とすることができるためである。
したがって、融点が比較的高いボウ硝等については、相対的に上方に設けてある第1の管状火炎生成装置から投入し、融点が比較的低い珪砂や炭酸ナトリウム等については、相対的に下方に設けてある第2の管状火炎生成装置から投入することが好ましい。
さらにまた、平均粒径が比較的大きいガラス原料については、相対的に上方に設けてある第1の管状火炎生成装置から投入し、平均粒径が比較的小さいガラス原料については、相対的に下方に設けてある第2の管状火炎生成装置から投入することが好ましい。
【0025】
なお、鉛直方向に、複数の管状火炎生成装置(第1の管状火炎生成装置および第2の管状火炎生成装置)が設けてある場合、それに対応して、複数のガラス原料供給口(第1のガラス原料供給口および第2のガラス原料供給口)を設けることも好ましい。
この理由は、ガラス原料の種類や平均粒径等に応じて、複数ある管状火炎生成装置およびそれに対応したガラス原料供給口をそれぞれきめ細かく選択し、ガラス原料を、より安定的に熔融することができるためである。
【0026】
(3)撹拌装置
また、原料供給装置の一部に、ガラス原料を攪拌しながら供給するための撹拌装置が設けてあることが好ましい。
この理由は、このような撹拌装置を設けることによって、ガラス原料の凝集を有効に防止し、相当量のガラス原料であっても、より迅速かつ連続的に熔融することができるためである。
より具体的には、平均粒径が小さいほどガラス原料は凝集しやすい性質を有するものの、このような撹拌装置を設けることによって、個々のガラス原料に分離した状態で落下させることができ、ひいては、管状火炎生成装置によって、確実かつ安定的に、熔解することができる。
【0027】
そして、撹拌装置の種類についても特に制限されるものではないが、例えば、超音波振動装置、圧電振動装置、モータ振動装置、回転ミキサ、またはスクリューフィーダーのいずれか一つであることが好ましい。
この理由は、このような種類の撹拌装置であれば、比較的小型かつ少エネルギーの攪拌装置でありながら、ガラス原料の凝集を有効に防止し、相当量のガラス原料であっても、より安定的に熔融することができるためである。
【0028】
例えば、超音波振動装置は、周波数10〜20,000kHzの超音波振動子を備えており、ガラス原料に対して、所定振動を付与することによって、凝集防止を図るとともに、安定的な供給を図るための攪拌装置(振動撹拌装置)である。
また、圧電振動装置は、圧電体に加えられた力を電圧に変換する、あるいは電圧を力に変換する、いわゆる圧電効果を利用した受動素子を備えており、ガラス原料に対して、所定振動を付与することによって、凝集防止を図るとともに、安定的な供給を図るための攪拌装置である。
また、モータ振動装置は、モータの回転によって、隣接して設けてある振動板を震わせ、それによってガラス原料の凝集防止を図る攪拌装置である。
また、回転ミキサは、モータ等によって、所定回転数で回転する撹拌翼を所定容器内の内部に備えており、その撹拌翼によってガラス原料を回転移動させることによって、凝集防止を図る攪拌装置である。
【0029】
さらに、スクリューフィーダーは、図3に示すように、ガラス原料を貯蔵するとともに、所定量落下供給するためのホッパー52と、螺旋運動によって、ガラス原料を回転させながら移動させるための回転スクリュー装置54と、回転スクリュー装置54を駆動させるための駆動装置60と、を備えている。そして、制御装置62によって、これらの装置をそれぞれ制御動作させ、所定量のガラス原料28を、精度良く、出口58から下方に供給するための装置である。
したがって、このようなスクリューフィーダー50を用いた場合、相当量の粉状ガラス原料28であっても、均一かつ容易に撹拌することができるのみならず、ガラス原料28の管状火炎生成装置12への所定場所に、定量的に供給することが可能となる。すなわち、かかるスクリューフィーダー50を用いた場合、ガラス原料の撹拌供給装置としての機能を発揮することができる。
【0030】
(4)定量供給装置
また、図4(a)に定量供給装置70の斜視図、図4(b)に上方から見た定量供給装置70の平面図を示すが、所定幅のスリット72が設けてあり、当該スリット72を介して、ガラス原料28をカーテン状に落下させながら、縦型円筒状のガラス熔融塔14に対して、定量的に供給する定量供給装置70を備えることが好ましい。
この理由は、原料供給装置等の下方に、このような定量供給装置を設けることによって、ガラス原料の連続的かつ定量的な供給を可能とし、相当量のガラス原料であっても、より迅速かつ安定的に熔融することができるためである。
そして、原料供給装置と、ガラス熔融塔との間に、このように定量供給装置を設けてある場合、かかる定量供給装置が、断熱作用を発揮することから、原料供給装置におけるガラス原料の熱劣化を有効に防止することもできる。
【0031】
なお、図4(a)〜(b)に示すような定量供給装置70にスリット72を設ける場合、ガラス原料の種類や平均粒径、さらには熔融速度等にもよるが、当該スリット幅を0.1〜10mmとし、スリット長さを10〜100mmとすることが好ましい。
そして、例えば、平面形状が円形の回転容器74を備えるとともに、その内部で回転軸78の周りを、矢印Hで示す方向に、所定回転数、例えば、0.1〜30rpmで回転する、概長方形状の羽状物(ゴム製プロペラ等)76を設けることが好ましい。
すなわち、かかる羽状物76の回転駆動によって、回転容器74の内部に収容したガラス原料28を、回転容器74の内壁および底部に対して順次押圧し、ガラス原料28の凝集を防止しつつ、所定幅のスリット72からカーテン状にこそぎ落とすことが好ましい。
【0032】
2.ガラス熔融塔
(1)基本的構成
また、ガラス熔融塔14は、図1に示すように、縦型円筒状であることを特徴とする。
すなわち、断面形状が実質的に円形であって、所定の断面積を有する縦型円筒状のガラス熔融塔を用いることによって、管状火炎の形成が容易になるととともに、安定的な火炎状態を保持することができるためである。
そして、図2の拡大図に示すように、円形の内壁に沿って形成された管状火炎16の中心付近は、火炎と同等温度のホットエアとなるとともに、管状火炎とともに、渦流として移動する、かかるホットエアを利用することができるためである。
したがって、ホットエアの中に、原料供給装置18を用い、ガラス原料28を投入、落下させることによって、相当量のガラス原料28であっても、縦型円筒状のガラス熔融塔の底部までの落下時間である数秒以内に、迅速かつ安定的に熔融することが可能となる。
一例であるが、図5(a)に、所定のガラス熔融塔における管状火炎によって得られた熔融ガラスの固化物、および、図5(b)に、熔融される前の粉末状のガラス原料を示す。
【0033】
また、縦型円筒状のガラス熔融塔の形態(管直径や管長さ)についても、特に制限されるものでないが、通常、管直径については、5〜200mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる管直径が5mm未満の値になると、ガラス原料の単位時間当たりの熔融量が著しく低下したり、一旦熔融したガラス原料が、管壁に堆積したりする場合があるためである。
一方、かかる管直径が200mmを超えた値になると、管状火炎の安定性が低下したり、面方向の温度分布が不均一となったりする場合があるためである。
したがって、縦型円筒状のガラス熔融塔における管直径を、10〜100mmの範囲内の値とすることがより好ましく、管直径を、25〜80mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0034】
さらに、縦型円筒状のガラス熔融塔の管長さについても、通常、300〜10000mm(0.3m〜10m)の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる管長さが0.3m未満の値になると、ガラス原料の落下時間が過度に短くなって、均一加熱が困難となる場合があるためである。
一方、かかる管長さが10mを超えた値になると、管状火炎の安定性が低下したり、鉛直方向の温度分布が過度に不均一となったりする場合があるためである。
したがって、縦型円筒状のガラス熔融塔における管長さを、500〜5000mm(0.5m〜5m)の範囲内の値とすることがより好ましく、800〜2500mm(0.8m〜2.5m)の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0035】
その他、ガラス熔融塔については、ステンレス、白金、鉄、セラミック材料等の耐熱材料から構成することができ、全体として、鉛直方向に伸びた直線状の円管であることが基本的に好ましいが、上述した原料供給装置のガラス熔融塔における接続箇所、すなわち、管状火炎生成装置の上方については、ガラス原料の落下時間、落下状態、さらには落下場所を調整すべく、鉛直方向に対して、10〜80°傾斜した傾斜管とすることも好ましい。
さらに、後述する管状火炎生成装置を通過した箇所についても、管状火炎によって熔融したガラスの落下時間や落下状態を調整すべく、鉛直方向に対して、10〜80°傾斜した傾斜管とすることも好ましい。
【0036】
(2)管状火炎生成装置
また、管状火炎生成装置12は、図2の拡大図に示すように、縦型円筒状のガラス熔融塔14の接線方向に対して、少なくとも燃料ガスを供給する第1のノズル12a、12cおよび酸素含有ガスを供給する第2のノズル12b、12dを備えることを特徴とする。
そして、図1に示されるように、第1のノズル12a、12cから供給される燃料ガスは、流量計20および配管22a、22bを介して、燃料ガスボンベ22から供給されている。
また、第2のノズル12b、12dから供給される酸素含有ガス(純酸素)は、流量計20および配管24a、24bを介して、酸素含有ガスボンベ24から供給されている。
さらに、第2のノズル12b、12dの途中から供給される空気は、流量計20および配管26a、26bを介して、コンプレッサー26から供給されている。
【0037】
すなわち、図2中、矢印Aおよび矢印Cに示すように、第1のノズル12a、12cから供給されるとともに、第1のノズル出口14a、14cから噴出された燃料ガスと、矢印Bおよび矢印Dに示すように、第2のノズル12b、12dから供給されるとともに、第2のノズル出口14b、14dから噴出されたた酸素含有ガスと、が、ガラス熔融塔14の内壁に沿って急速混合されて、燃焼可能なガス層16bを形成することができる。
したがって、燃焼可能なガス層16bに着火することによって、所定厚さを有する渦流としての火炎層16aが、ガラス熔融塔14の内面壁に沿って形成され、管状火炎16の一部として、ガラス原料の迅速かつ均一加熱に寄与することになる。
【0038】
ここで、図6を参照して、管状火炎生成装置によって形成される管状火炎の半径方向位置(面方向)における温度分布について説明する。
すなわち、図6の横軸は、縦型円筒状のガラス熔融塔(管径:40mm)における半径方向位置(中心0mm、±20mm)を示しており、縦軸は、管状火炎生成装置によって形成される管状火炎の火炎温度(K)を示している。
そして、温度分布を示す特性曲線は、中心から約±20mm離れた端部、すなわち、内面壁付近においては、500K以下の相当低い温度を示している。
その一方、中心から0mm〜約±18mmの面方向領域においては、2200〜2400Kの極めて均一な高い温度であることを示している。
したがって、管状火炎を用いた場合、中心部を含めて、広範囲で得られる均一高温領域を利用して、相当量のガラス原料であっても、迅速かつ連続的に熔融することができる。
なお、図示しないものの、管状火炎生成装置によって形成される管状火炎は、渦流として移動することから、縦型円筒状のガラス熔融塔における面方向のみならず、鉛直方向においても、均一な温度分布を有することが判明している。
【0039】
次いで、図7(a)〜(c)を参照して、管状火炎生成装置によって形成される管状火炎の温度に及ぼす管状火炎生成用ガスにおける燃料ガス/酸素の当量比の影響について説明する。
すなわち、図7(a)の横軸は、管状火炎生成用ガスにおける燃料ガス(CH4/O2)の当量比(−)を示しており、縦軸は、形成される管状火炎の火炎温度(K)を示している。
また、図7(b)の横軸は、管状火炎生成用ガスにおける燃料ガス(C3H8/O2)の当量比(−)を示しており、縦軸は、形成される管状火炎の火炎温度(K)を示している。
さらに、図7(c)の横軸は、管状火炎生成用ガスにおける燃料ガス(H2/O2)の当量比(−)を示しており、縦軸は、形成される管状火炎の火炎温度(K)を示している。
そして、図7(a)〜(c)の温度分布を示す特性曲線は、それぞれ管状火炎生成用ガスの種類によらず、当量比1付近で、形成される管状火炎において、最高火炎温度が得られることを示している。
したがって、管状火炎を用いた場合、管状火炎生成用ガスの種類によらず、管状火炎用形成ガスの当量比1付近で、最高火炎温度が得られることから、それを利用して、相当量のガラス原料であっても、迅速かつ連続的のみならず、安定的に熔融することができる。
【0040】
(3)複数の管状火炎生成装置
また、図示しないものの、鉛直方向に沿って、上方から、少なくとも第1の管状火炎生成装置および第2の管状火炎生成装置が設けてあることが好ましい。
この理由は、これら複数の管状火炎生成装置を設けることによって、管状火炎の温度や大きさ等の調整が容易になって、種々のガラス原料に対応して、それらを迅速かつ安定的に熔融することができるためである。
したがって、例えば、縦型円筒状のガラス熔融塔を長さ方向に二等分して、第1の管状火炎生成装置を二等分された上方部分に設け、第2の管状火炎生成装置を二等分された下方部分に設けることができる。
【0041】
(4)管状火炎生成装置の配置
また、管状火炎生成装置12の配置に関して、図1や図8に示すように、縦型円筒状のガラス熔融塔14の上方であっても良く、あるいは、図示しないものの、縦型円筒状のガラス熔融塔の下方であっても良い。
すなわち、管状火炎生成装置を、縦型円筒状のガラス熔融塔の上方に配置した場合、管状火炎が、上方から下方に向かって、渦を巻きながら降下することになるが、温度分布のばらつきが小さい管状火炎の中央付近に、ガラス原料を正確に供給することができる。
一方、管状火炎生成装置を、縦型円筒状のガラス熔融塔の下方に配置した場合、管状火炎が、下方から上方に向かって吹き上がることになるが、下方に落下するガラス原料と、管状火炎の中央付近に存在する熱風と、が対向することから、ガラス原料をさらに効率的に加熱することができる。
【0042】
(5)シャッター
また、図8に示すように、縦型円筒状のガラス熔融塔14の途中に、一つまたは二つ以上のシャッター80(80a、80b、80c)が設けてあることが好ましい。
この理由は、このようなガラス熔融塔の内部を所定空間ごとに仕切るシャッターを設けるとともに、それらを開閉することによって、ガラス熔融塔における管状火炎の形成場所や、ガラス熔融塔の温度分布を精度良く調整することができるためである。
したがって、このようなシャッターの開閉によって、ガラス原料の熔融状態をさらに綿密に制御したり、ガラス原料の熔融作業に伴う安全性を向上させたりすることができる。
【0043】
より具体的には、所定の管状火炎を形成する場合、図8に示すガラス熔融塔14に、矢印A、CおよびB、Dに示すように、複数の管状火炎生成用ガスを導入する前に、全てのシャッター80(第1〜第3のシャッター80a、80b、80c)を実質的に閉じておく。
次いで、過圧力状態とならないように、第1のシャッター80aを一部開放した状態にした後、ガラス熔融塔14の内部に、複数の管状火炎生成用ガスをそれぞれ導入する。そして、これらの管状火炎生成用ガスが内壁に沿って急速混合され、燃焼可能なガス層を形成した後に、着火装置19により、着火する。
この時、第1のシャッター80aは、一部開放状態ではあるものの、ガラス熔融塔14の途中が実質的に仕切られていることから、管状火炎形成室の容積は、比較的小さくなる。よって、複数の管状火炎生成用ガスが、すぐに着火可能状態となる。
また、管状火炎形成室に、残留酸素等が存在している場合であっても、管状火炎形成室の容積が比較的小さいことから、かかる残留酸素の悪影響を排除しやすくなる。
【0044】
次いで、第1のシャッター80aのみを開き、管状火炎形成室を大きくすることによって、管状火炎の形成領域を大きくする。
次いで、第1のシャッター80aのみならず、第2のシャッター80bも順次開き、管状火炎形成室を、当初の約2倍に大きくすることによって、管状火炎の形成領域をさらに大きくする。
最後に、第1および第2のシャッター80a、80bのみならず、第3のシャッター80cも順次開き、管状火炎形成室を当初の約3倍に大きくすることによって、管状火炎の形成領域をさらに大きくする。
すなわち、第1〜第3のシャッター80a、80b、80cを順次開き、管状火炎形成室を徐々に大きくすることによって、安全かつ安定的に、最終的に所望形成状態の管状火炎を得ることができる。
【0045】
3.その他の構成装置
(1)断熱装置または冷却装置
また、図8に示すように、原料供給装置18と、縦型円筒状のガラス熔融塔14との間に、断熱装置または冷却装置82が設けてあることが好ましい。
より具体的には、このような断熱装置または冷却装置によって、原料供給装置におけるガラス原料の温度を、例えば、100℃以下の値に制御することが好ましい。
この理由は、バッファー室やガラスウール充填室等の断熱装置や、水冷管等の冷却装置等が設けてあることにより、原料供給装置に、ガラス原料を所定時間滞留させた場合であっても、その間の凝集を容易に防止することができるためである。
【0046】
(2)追加加熱装置
また、図8に示すように、部分的熔解状態等のガラス原料が、矢印Jで示されるように供給された場合であっても、ガラス熔融塔14の下方端に、そのような熔融ガラスをさらに加熱熔融させるための追加加熱装置94を備えることが好ましい。
この理由は、このようにガラス熔融塔とは別に加熱装置を設けることによって、管状火炎生成装置のみの加熱によってはガラス原料が部分的熔解状態であったとしても、ガラス熔融塔とは別の加熱装置によって、均一温度かつ良好な流動状態の熔融ガラスとすることができるためである。
より具体的には、追加加熱装置として、ガスバーナー加熱炉、赤外線加熱炉、誘導加熱炉、電気加熱装置等の少なくとも一つを設けて追加加熱することによって、例えば、温度が1200〜2500℃の範囲であって、かつ、均一流動状態の熔融ガラスとすることができる。
なお、ガラス熔融塔の下方端に、上述した管状火炎生成装置が設けてある場合には、かかる管状火炎生成装置のさらに下方に、得られた熔融ガラスの貯留部を設けるとともに、そこに追加加熱装置を設ければ良い。
【0047】
(3)ガラス清澄装置
また、図8に示すように、ガラス熔融塔14の端部に設けてある熔融ガラスの取り出し口98の先に、ガラス熔融塔14で得られた熔融ガラス96を流動させながら、炭酸ガスを脱泡するガラス清澄装置100をさらに備えることが好ましい。
より具体的には、図8に示すように、横長のプ−ル状のガラス清澄装置100を設けて、熔融ガラス96を緩やかに流動させながら、さらには撹拌しながら、内部に含まれる炭酸ガスを、矢印Kで表わされる方向に、有効に脱泡することが好ましい。
この理由は、このようなガラス清澄装置をさらに備えることによって、炭酸ガス発生による熔融ガラスの流動状態の不均一化を有効に防止することができ、ひいては、泡が少ない熔融ガラスを用いて、所定の機械的強度等を有するガラス容器を安定的に製造することができるためである。
【0048】
(4)着火装置
また、図8に示すように、管状火炎形成装置12の近傍に、着火装置19を備えることが好ましい。
この理由は、このように着火装置を備えることによって、管状火炎形成用ガスに対して、安全かつ容易に着火して、管状火炎を形成することができるためである。
より具体的には、ガラス熔融塔の内部であって、管状火炎形成装置の近傍に、着火装置として、スパークプラグ着火装置、電熱線着火装置、パイロット火炎着火装置等の少なくとも一つを設けることが好ましい。
すなわち、図2に示すように、第1のノズル12a、12cから供給された燃料ガスと、第2のノズル12b、12dから供給された酸素含有ガスと、が急速混合されて、ガラス熔融塔14の内壁において均一に燃焼可能なガス層16bを形成することから、それに着火装置19によって着火することによって、迅速かつ簡便に、管状火炎16の一部として、火炎層16aを形成することができる。
【0049】
(5)ガスセンサおよび温度計
また、図8に示すように、ガラス熔融塔14の所定場所に、酸素、窒素、二酸化炭素等のガスセンサ84、86、90を備えることが好ましい。
この理由は、このようにガスセンサ84、86、90を備えることによって、過剰な酸素の滞留や、ガラス原料から発生した窒素、二酸化炭素等の滞留について検知することができるためである。したがって、このような滞留ガスに起因して、予想しない発火現象が生じたり、管状火炎の安定性が低下したりする現象を有効に防止することができる。
そして、さらに、ガスセンサ84、86、90とともに、温度計88を併用することが好ましい。
この理由は、このように温度計88を併用することによって、ガスセンサ84、86、90の検知精度を高めたり、これらガスセンサやガラス熔融塔14の故障診断にも使用することができるためである。
なお、酸素や窒素のガスセンサ84、86は、検知するガスの滞留特性等を考慮して、ガラス熔融塔14の比較的上方に設けることが好ましく、二酸化炭素のガスセンサ90は、ガラス熔融塔14の比較的下方に設けることが好ましい。
【0050】
(6)耐火構造
また、図9(a)に上方から見た平面図、図9(b)に側面図を示すように、ガラス熔融塔14の周囲を、耐熱保護部材32、例えば、耐火レンガ等の耐火物で被覆して、全体として、耐火構造とすることが好ましい。
この理由は、このように耐火構造とすることによって、ガラス熔融塔から外部に拡散する熱を防止し、ガラス熔融塔の耐久性や機械的強度を高めることができるためである。
より具体的には、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、窒化アルミニウム、窒化ジルコニウム、炭素材料等から構成された耐火レンガ等の耐火物を用いて、ガラス熔融塔の周囲を被覆することが好ましい。
そして、図9(a)〜(b)に示すように、金属製のフレーム部材30を用いて、耐熱保護部材32の周囲を、さらに補強することが好ましい。
【0051】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、ガラス原料を供給する原料供給装置におけるガラス原料供給口から供給された落下状態のガラス原料を加熱して、熔融ガラスとするガラス熔融方法であって、ガラス原料供給口から、縦型円筒状のガラス熔融塔に、ガラス原料を供給する工程(第1工程と称する場合がある。)と、供給された落下状態のガラス原料を、縦型円筒状のガラス熔融塔に備えてある管状火炎生成装置によって、加熱し、熔融ガラスとする工程(第2工程と称する場合がある。)と、を含むことを特徴とするガラス熔融方法である。
すなわち、ガラス原料を落下状態とする第1工程と、落下状態のガラス原料を、管状火炎によって加熱し、熔融ガラスとする第2工程と、を含むことによって、熔融させるガラス原料量の如何によらず、ガラス原料を所定粒径に成形することなく、かつ、発生する炭酸ガス等の影響を排除して、極めて高いエネルギー効率でもって、迅速かつ連続的に熔融することができる。
以下、第1工程および第2工程に分けて、第2の実施形態のガラス熔融方法について、具体的に説明する。
【0052】
1.第1工程
(1)ガラス原料の種類
第1工程において供給されるガラス原料の種類は特に制限されるものではないが、珪砂、ソーダ灰(炭酸ナトリウム)、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、石灰石、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硼砂、長石、ガラスカレット、金属等の一種単独または二種以上の混合物を使用することができる。
より具体的に、ソーダ石灰ガラスを構成する場合には、例えば、珪砂100重量部に対して、ソーダ灰を5〜50重量部、石灰石を5〜30重量部、水酸化アルミニウムを1〜30重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
また、ホウ珪酸ガラスを構成する場合には、例えば、珪砂100重量部に対して、水酸化アルミニウムを1〜10重量部、硼砂を1〜50重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
さらに、ソーダカリ石灰ガラスを構成する場合には、例えば、珪砂100重量部に対して、ソーダ灰を5〜30重量部、硝酸カリウムを5〜30重量部、石灰石を5〜30重量部、水酸化アルミニウムを1〜5重量部、硼砂を1〜10重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
【0053】
そして、これらのガラス原料を適宜配合して熔解させ、具体的に、下記酸化物配合量のガラス組成とすることが好ましい。
すなわち、融点が約1500℃のソーダ石灰ガラス組成とする場合、例えば、SiO2の配合量が73重量%、Na2O+K2Oの配合量が14重量%、CaO+MgOの配合量が11重量%、Al2O3の配合量が2.1重量%となることが好ましい。
【0054】
また、融点が約1600℃の抗菌性リン酸ガラス組成とする場合には、例えば、Ag2O、ZnO、CaO、B2O3およびP2O5を含み、かつ、全体量を100重量%としたときに、Ag2Oの配合量を0.2〜5重量%の範囲内の値、ZnOの配合量を2〜60重量%の範囲内の値、CaOの配合量を0.1〜15重量%の範囲内の値、B2O3の配合量を0.1〜15重量%の範囲内の値、およびP2O5の配合量を30〜80重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
【0055】
(2)ガラス原料の平均粒径
また、ガラス原料の平均粒径を、通常、10〜800μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、ガラス原料の平均粒径が10μm未満の値になると、過度に凝集しやすくなったり、取り扱いが困難になったり、さらには、ガラス原料コストが高くなって、経済的に不利になったりする場合があるためである。
一方、ガラス原料の平均粒径が800μmを超えた値になると、管状火炎生成装置によって、ガラス原料を均一に加熱することが困難となって、部分的にしか熔融しない場合があるためである。
したがって、ガラス原料の平均粒径を20〜500μmの範囲内の値とすることがより好ましく、30〜100μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0056】
ここで、図10に言及して、ガラス原料(SiO2系ガラス)の平均粒径と、加熱時間との関係を説明する。
すなわち、図10の横軸には、ガラス原料の平均粒径(mm)を採って示してあり、縦軸に、管状火炎を用いてガラス原料を熔融するのに必要な加熱時間(sec)を採って示してある。
そして、これらの関係を示す特性曲線から判断して、ガラス原料の平均粒径(mm)が1mm未満であれば、必要な加熱時間は1(sec)以下であるものの、ガラス原料の平均粒径(mm)が1.5mmを超えると、必要な加熱時間は2(sec)以上となって、倍以上に加熱時間が長くなっている。
よって、管状火炎生成装置によって、ガラス原料を十分に加熱する場合、ガラス原料の平均粒径が密接に加熱時間に影響することに留意するとともに、その平均粒径を所定範囲内の値に、可能な限り制御すべきである。
【0057】
なお、ガラス原料の平均粒径は、JIS Z8901に準拠し、「粒子の直径の算術平均値」として測定することができる。
より具体的には、ガラス原料の平均粒径は、例えば、レーザー方式の粒度測定装置や画像処理装置等によって求めた体積基準粒度分布における積算値50%での粒径(D50)として、測定することができる。
【0058】
(3)ガラス原料の供給方法
また、ガラス原料の供給方法としては特に制限されるものではないが、第1の実施形態で説明したように、所定の攪拌装置や定量供給装置を備えた原料供給装置を用い、均一かつ連続的に、粉体状のガラス原料を供給することが好ましい。
したがって、ガラス原料の種類によっても異なる場合があるが、例えば、断面積が1〜100cm2の縦型円筒状のガラス熔融塔に対して、通常、0.01〜1000g/secの供給速度で、粉体状のガラス原料を供給することが好ましい。
【0059】
2.第2工程
(1)管状火炎
第2工程は、縦型円筒状のガラス熔融塔に備えてある管状火炎生成装置によって生成された管状火炎によって、落下状態のガラス原料を加熱し、熔融ガラスとする工程である。
すなわち、第1のノズルから供給された燃料ガスと、第2のノズルから供給された酸素含有ガスと、が急速混合されて、ガラス熔融塔の内壁において均一に燃焼可能なガス層を形成し、さらにそれに着火することによって、所定厚さを有する渦流としての管状火炎が形成されるものである。
したがって、ガラス熔融塔の断面方向において、極めて均一な温度分布を有する管状火炎を使用して、ガラス原料の均一加熱が可能となる。
【0060】
(2)管状火炎生成ガス
また、管状火炎生成装置における管状火炎生成用ガスとして、最初は、炭化水素ガスおよび空気を用いた後、切り替えて、炭化水素ガスおよび酸素を用いることが好ましい。
この理由は、このように実施することによって、より安全な着火を確保することができ、かつ、さらに安全かつ迅速なガラス原料の熔解が可能となるためである。
すなわち、管状火炎生成用ガスとして、炭化水素ガスおよび空気を用いた場合、形成される管状火炎の温度が比較的低いものの、他のガスを用いた場合と比較して、より安全に着火することができる。
一方、管状火炎生成用ガスとして、炭化水素ガスおよび酸素を用いた場合、形成される管状火炎の温度が比較的高く、それを利用して、相当量のガラス原料であっても、迅速かつ連続的に熔解することができる。
【0061】
(3)スワール数
また、管状火炎生成装置における管状火炎のスワール数を0.6〜15の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるスワール数が0.6未満の値になると、管状火炎の安定性が著しく低下したり、ガラス熔融塔における形成位置の制御が困難となったりする場合があるためである。
一方、かかるスワール数が15を超えた値になると、断面積方向の温度分布が大きくなったり、管状火炎生成装置の内壁温度が過度に上昇し、管状火炎生成装置の耐久性が著しく低下したりする場合があるためである。
したがって、管状火炎生成装置における管状火炎のスワール数を1〜8の範囲内の値とすることがより好ましく、2〜6の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、かかる管状火炎のスワール数は、管状火炎生成装置におけるガス導入部の数、ガス導入部の面積(ガス導入部の長さ×幅)、縦型円筒状のガラス熔融塔の内径等によって、所定範囲の値に調整することができる。
【0062】
3.他の工程
(1)冷却工程
また、図8に示すように、ガラス原料を冷却するための断熱装置や冷却装置82を設けて、ガラス原料の熔融中、あるいは熔融前後において、所定の冷却工程を実施することが好ましい。
より具体的には、原料供給装置の周囲に水冷却管を配置したり、空冷用フィンを設けたりして、原料供給装置におけるガラス原料の温度を、例えば、100℃以下の温度とすることが好ましい。
この理由は、ガラス原料の温度が100℃を超えると、過度に凝集したり、ガラス原料の表面が一部変質したりして、所望の熔融ガラスとすることが困難となる場合があるためである。
したがって、冷却工程を実施して、原料供給装置におけるガラス原料の温度を20〜80℃の範囲内の温度とすることがより好ましく、30〜70℃の範囲内の温度とすることがさらに好ましい。
【0063】
(2)加熱工程
また、図8に示すように、ガラス熔融塔14において加熱されたガラス原料をさらに加熱するための、管状火炎生成装置とは異なる追加加熱装置94を設けて、さらに加熱する加熱工程(第2の加熱処理)を実施することが好ましい。
より具体的には、上述したように、ガスバーナー加熱炉等を設けて、ガラス熔融塔において加熱されたものの、一部未熔解のガラス原料等を追加加熱し、所定温度であって、均一流動状態の熔融ガラスとするための加熱工程を実施することが好ましい。
なお、かかる第2の加熱処理は、必ずしも常時実施する必要はなく、管状火炎生成装置による初期的加熱時や、ガラス原料の種類や平均粒径が比較的熔解困難な条件等の場合に、選択的に実施することができる。
【0064】
(3)ガラス清澄工程
また、図8に示すように、ガラス熔融塔14の端部である熔融ガラスの取り出し口98に、ガラス熔融塔14で得られた熔融ガラス96を流動等させながら、炭酸ガスを脱泡するための清澄装置100を設けて、所定のガラス清澄工程を実施することが好ましい。
この理由は、このようにガラス清澄工程を実施することによって、炭酸ガス発生による加熱温度の低下や不均一化を有効に防止することができ、ひいては、熔融ガラスを用いて、所定の機械的強度等を有するガラス容器を安定的に製造することができるためである。
【0065】
(4)ガラス成形工程
また、図示しないものの、公知のガラス成形機を用いて、ガラス成形工程を実施し、得られた熔融ガラスを用いて、ガラス容器等を成形することが好ましい。
より具体的には、一つまたは複数金型を用いて、プレス&ブロー法、ブロー&ブロー法、あるいはワンプレス法によって、所定形状を有するガラス容器等とすることが好ましい。
その他、同様の公知の抗菌性ガラス成形機を用いて、得られた熔融ガラスから、抗菌性ガラス粒子や抗菌性ガラスタブレットを形成することも好ましい。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を掲げて、本発明の内容を更に詳しく説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、これら実施例のみの記載に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において適宜変更することができる。
【0067】
[実施例1]
1.ガラス原料の熔融
(1)ガラス原料の準備
下記配合組成のガラス原料を、ソーダ石灰ガラス用原料(タイプA)として準備した。
珪砂(平均粒径D50:300μm) :100重量部
ソーダ灰(D50:1000μm未満) :30重量部
石灰石(D50:30μm) :25重量部
水酸化アルミニウム(D50:55μm):3重量部
【0068】
(2)ガラス原料の管状火炎による熔融
次いで、図1に示すガラス熔融装置を用い、管状火炎生成装置によって管状火炎を形成するとともに、原料供給装置(スクリューねじ)からガラス原料を連続的に供給し、縦型円筒状のガラス熔融塔(管直径:約50mm、長さ:1200mm)の内部を落下させながら、管状火炎によって、ガラス原料を熔解させた。
なお、管状火炎生成装置における管状火炎生成用ガスとして、炭化水素ガス(C3H8)および空気を当量比が1.0となるように用い、着火させて、管状火炎を形成した。
【0069】
2.熔融ガラスの評価
(1)評価1
得られた熔融ガラスを回収し、その固化物を目視観察し、以下の基準に沿って、熔融状態等を評価した。得られた結果を表1に示す。
◎:完全に熔解し、均一にガラス化されている。
○:ほぼ完全に熔解し、ほとんどが均一にガラス化されている。
△:一部が熔解して、不均一にガラス化されているもの、残留粉状物が多い。
×:ほとんど熔解しておらず、ガラス化されていないとともに、残留している粉状物が極めて多い。
【0070】
(2)評価2
管状火炎生成用ガスの種類を切り替えて、炭化水素ガス(C3H8)および酸素を当量比が1.0となるようにそれぞれを用いたほかは、評価1と同様に、得られた熔融ガラスを回収し、その固化物を目視観察し、評価1の基準に沿って、熔融状態等を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0071】
[実施例2]
実施例2においては、実施例1におけるガラス原料の種類を下記内容に変更し、ホウケイ酸ガラス用原料(タイプB)としたほかは、実施例1と同様に、熔融ガラスを作成して、固化物を評価した。
珪砂(D50:300μm) :100重量部
水酸化アルミニウム(D50:55μm):5重量部
硼砂(D50:20μm) :38重量部
【0072】
[実施例3]
実施例3においては、実施例1におけるガラス原料の種類を下記内容に変更し、
ソーダカリ石灰ガラス用原料(タイプC)としたほかは、実施例1と同様に、熔融ガラスを作成して、評価した。
珪砂(D50:300μm) :100重量部
ソーダ灰(D50:1000μm未満) :20重量部
硝酸カリウム(D50:5μm) :24重量部
石灰石(D50:30μm) :16重量部
水酸化アルミニウム(D50:55μm):3重量部
硼砂(D50:20μm) :5重量部
【0073】
[実施例4]
実施例4においては、実施例1におけるガラス原料の種類を下記内容に変更し、
抗菌成分として酸化亜鉛を含む抗菌性ガラス用原料(タイプD)としたほかは、実施例1と同様に、抗菌性の熔融ガラスを作成して、評価した。
リン酸(D50:1μm) :100重量部
炭酸マグネシウム(D50:5μm) :18重量部
炭酸カリウム(D50:25μm) :10重量部
酸化亜鉛(D50:1μm) :13重量部
【0074】
[比較例1]
比較例1においては、管状火炎装置の代わりにガスバーナー(火炎温度1600℃)を用いたほかは、実施例1と同様に、熔融ガラスを作成して、評価した。
【0075】
【表1】
【0076】
[実施例5〜8]
実施例5〜8においては、実施例1〜4で用いた炭化水素ガス(C3H8)の代わりに、都市ガス(CH4)を用いたほかは、実施例1等と同様に、熔融ガラスを作成して、評価した。
【0077】
[比較例2]
比較例2においては、管状火炎装置の代わりにガスバーナー(火炎温度1600℃)を用いたほかは、実施例5と同様に、熔融ガラスを作成して、評価した。
【0078】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のガラス熔融装置およびそれを用いたガラス熔融方法によれば、所定のガラス原料を供給し、落下状態とする原料供給装置と、管状火炎生成装置を含む縦型円筒状のガラス熔融塔と、を順次に備えることによって、熔融させるガラス原料量の如何によらず、管状火炎生成装置で生成された縦型管状火炎を用いて、迅速かつ安定的にガラス原料を熔融できるようになった。
すなわち、本発明によれば、ガラス原料種の交換や装置メンテナンス等が容易であって、ガラス容器や抗菌性ガラス等の生産効率が高い、経済的なガラス熔融装置およびそれを用いたガラス熔融方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0080】
10:ガラス熔融装置
12:管状火炎生成装置
12a、12c:燃料ガスを供給する第1のノズル
12b、12d:酸素含有ガスを供給する第2のノズル
14:ガラス熔融塔
14a、14c:第1のノズル出口
14b、14d:第2のノズル出口
16:管状火炎
16a:火炎層
16b:ガス層
18:原料供給装置
18a:ガラス原料供給口
18b:ガラス原料投入口
20:流量計
22:燃料ガスボンベ
24:酸素含有ガスボンベ
24a、24b:配管
26:コンプレッサー
26a、26b:配管
28:ガラス原料
30:金属フレーム
32:耐熱保護部材
50:スクリューフィーダー
70:定量供給装置
82:断熱装置または冷却装置
84、86、90:ガスセンサ
88:温度計
94:追加加熱装置
96:熔融ガラス
98:熔融ガラスの取り出し口
100:ガラス清澄室
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス熔融装置およびガラス熔融方法に関する。特に、相当量のガラス原料であっても、落下させながら、極めて迅速かつ安定的に熔融することが可能なガラス熔融装置およびガラス熔融方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉末状態のガラス原料を、所定のガスバーナーを用いて加熱熔融させ、所定粘度を有する溶液状態の熔融ガラスとするガラスの溶解装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的には、図11に示すように、溶解室202の前後に、原料投入部203と、清澄室204と、をそれぞれ連設するとともに、溶解室202に、燃焼火炎を生成する複数本のガスバーナー201(201a〜201e)を備えたガラスの溶解装置200であって、溶解室202の原料投入部側に設置した少なくとも一つのガスバーナーに、ガラス原料又はカレット又はこれらの混合原料の少なくとも一部を含む粉粒体を、ガスバーナー201a、201bの燃焼火炎中に供給するガラス原料供給手段207を設けてなるガラスの溶解装置200である。
【0003】
また、陽極(プラズマトーチ)と、陰極との間に高電圧をかけてアークを発生させ、これに作動ガス(空気等)を適用して、プラズマ流を形成する構成のプラズマ装置を用いたガラス熔融装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
より具体的には、図12(a)〜(b)に示すように、ガラス原料の一部または全部を粒子状に成形して調整された混合ガラス原料(W)が通過する際に、炭酸塩の分解反応温度以上に加熱するプラズマ加熱熔融装置306によって、気相雰囲気を形成する原料加熱部303と、加熱されたガラス原料が上部に供給される構成であって、ガラス融液308を貯留するためのガラス融液部304と、を含んでなるガラス熔融装置301である。
【0004】
さらに、ガラス溶解炉等に適用される横型円筒状の輝炎バーナであって、管状火炎が形成できるとともに、輝炎を形成して、火炎輻射も利用できる輝炎バーナが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
より具体的には、図13(a)〜(b)に示すように、横型円筒状の燃焼空間402を形成するバーナ本体401の内面に、接線方向に向けて空気と燃料ガスとの混合気を噴出させる噴出部404を備え、当該噴出部404から噴出した混合気が燃焼空間402において旋回し、管状火炎を形成して燃焼する構成である。
それとともに、燃焼空間402の軸方向における一端402aの壁面中心部に、当該壁面中心部から、軸方向に燃料ガスを噴射させる軸方向燃料噴射部405を備え、燃焼空間402の軸方向における他端402bから輝炎408を噴出させる構成の輝炎バーナ450である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−11953号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開2006−199549号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】特開2009−222291号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたガラス熔融装置では、比較的多量のガラス原料を熔解させることができるものの、熔融ガラスとするのに、数十時間という相当な熔解時間を要するという問題が見られた。
また、熔融窯のメンテナンス等のために、ガラス熔融装置の動作を停止する必要が生じた場合であっても、ガラス熔融装置を所定温度に低下させて必要な作業をした後、高温状態にして再稼動するためには、過度に長時間を要することから、事実上不可能であるという問題が見られた。
したがって、開示されたガラス熔融装置において、メンテナンスという概念はなく、動作を停止する必要が生じた場合には、装置全体を廃棄して、交換しなければならず、極めて不経済であった。
【0007】
また、特許文献2に開示されたガラス熔融装置は、比較的少量のガラス原料を熔融させる場合については、プラズマ熔融装置を用い、比較的短時間で熔融できる可能性はあるものの、スポット的な加熱方式であることから、相当量のガラス原料を熔融させる場合には適用できないという問題が見られた。
また、ガラス熔融装置に提供するガラス原料を所定粒径、例えば、3mm以下の粒子状に成形しなければならないという制約があって、工程数が増えたり、製造時間が長くなったり、さらには、製造時の歩留まりが低下したりするという問題も見られた。
【0008】
さらに、特許文献3に開示された管状火炎を含む輝炎バーナを用いた場合であっても、ソーダ石灰ガラス原料等について、迅速かつ均一に熔解できないという問題が見られた。
すなわち、ソーダ石灰ガラス原料等は、珪砂等の天然成分を主成分としているほか、融点等が異なる異種原料を多く含んでおり、それらガラス原料の平均粒径(D50)のばらつきが大きい上に、炭酸ガスが発生しやすいとう事実がある。
よって、これらのガラス原料の平均粒径(D50)のばらつきや、炭酸ガスの影響によって、ソーダ石灰ガラス原料の熔解時間が長くなったり、熔解状態が不均一になったりするという問題が見られた。
【0009】
そこで、本発明の発明者らは、鋭意研究した結果、所定の原料供給装置と、管状火炎生成装置を含むガラス熔融塔と、を順次に備えることによって、落下中のガラス原料を、迅速かつ連続的に熔融できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、相当量のガラス原料であっても、ガラス原料を所定粒径に成形することなく、かつ、発生する炭酸ガス等の影響を排除して、迅速かつ連続的に熔融可能なガラス熔融装置、およびそのようなガラス熔融装置を用いてなる、ガラス原料の効率的な熔融方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、ガラス原料を供給するガラス原料供給口を有する原料供給装置と、供給された落下状態のガラス原料を加熱して、熔融ガラスとする縦型円筒状のガラス熔融塔と、を順次に備えたガラス熔融装置であって、縦型円筒状のガラス熔融塔に、その接線方向に対して、燃料ガスを供給する第1のノズルおよび酸素含有ガスを供給する第2のノズルを備えた管状火炎生成装置が設けてあることを特徴とするガラス熔融装置が提供され、上述した課題を解決することができる。
すなわち、このような原料供給装置と、ガラス熔融塔と、を順次に備えることによって、ガラス原料を所定粒径に成形することなく、かつ、発生する炭酸ガス等の影響を排除して、熔融させるガラス原料量の如何によらず、落下中のガラス原料を、迅速かつ連続的に熔融することができる。
そして、このように構成することによって、ガラス原料の熔融に寄与した管状火炎が、縦型円筒状のガラス熔融塔の内壁に沿って移動し、得られた熔融ガラスに到達可能なことから、それをさらに加熱保温する熱源として利用でき、ひいては、ガラス原料の熔融に際して、極めて高いエネルギー効率を得ることができる。
また、このようなガラス熔融塔の下方端に、得られた熔融ガラスの貯留部を設け、そこで、撹拌しながら、所定時間滞留させることによって、仮に、加熱熔融が不十分なガラス原料等があったとしても、均一流動状態の熔融ガラスとすることができる。
【0011】
また、本発明のガラス熔融装置を構成するにあたり、管状火炎生成装置として、鉛直方向に沿って、上方から、少なくとも第1の管状火炎生成装置および第2の管状火炎生成装置が設けてあり、これら第1の管状火炎生成装置および第2の管状火炎生成装置に対応して、第1のガラス原料供給口および第2のガラス原料供給口がそれぞれ設けてあることが好ましい。
このように構成することによって、複数種のガラス原料を熔融させる場合であっても、ガラス原料ごとに、複数ある管状火炎生成装置およびガラス原料供給口を選択し、相当量のガラス原料であっても、より安定的に熔融することができる。
【0012】
また、本発明のガラス熔融装置を構成するにあたり、原料供給装置に撹拌装置が設けてあって、当該撹拌装置が、超音波振動装置、圧電振動装置、モータ振動装置、回転ミキサ、またはスクリューフィーダーのいずれか一つであることが好ましい。
このように構成することによって、ガラス原料の凝集を有効に防止し、相当量のガラス原料であっても、より安定的に熔融することができる。
【0013】
また、本発明のガラス熔融装置を構成するにあたり、原料供給装置の下方に、所定幅のスリットが設けてあり、当該スリットを介して、ガラス原料をカーテン状に落下させながら、縦型円筒状のガラス熔融塔に対して、定量的に供給する定量供給装置が設けてあることが好ましい。
このように構成することにより、ガラス原料の連続的かつ定量的な供給を可能とし、相当量のガラス原料であっても、より安定的に熔融することができる。
【0014】
また、本発明のガラス熔融装置を構成するにあたり、原料供給装置と、円筒状のガラス熔融塔との間に、断熱装置または冷却装置が設けてあることが好ましい。
このように構成することにより、原料供給装置に、ガラス原料を所定時間滞留させた場合であっても、その間の加熱に起因した凝集を容易に防止することができる。
【0015】
また、本発明のガラス熔融装置を構成するにあたり、ガラス熔融塔の下方端に、得られた熔融ガラスをさらに加熱熔融させるための加熱装置を備えることが好ましい。
このように構成することにより、環境条件等の変動やガラス原料の配合ばらつき等に起因し、管状火炎生成装置のみの加熱によっては、ガラス原料が完全熔解状態にならない場合が生じたとしても、ガラス熔融塔とは別の加熱装置によって、均一温度かつ良好な流動状態の熔融ガラスとすることができる。
【0016】
また、本発明のガラス熔融装置を構成するにあたり、ガラス熔融塔で得られた熔融ガラスを流動させながら、炭酸ガスを脱泡するガラス清澄装置をさらに備えることが好ましい。
このようにガラス熔融塔の端部である熔融ガラスの取り出し口等に、ガラス清澄装置をさらに備えることによって、炭酸ガス発生によるガラス状態の不均一化を有効に防止することができ、ひいては、泡の少ない熔融ガラスを用いて、所定の機械的強度等を有するガラス容器を安定的に製造することができる。
【0017】
また、本発明の別の態様は、ガラス原料を供給する原料供給装置におけるガラス原料供給口から供給された落下状態のガラス原料を加熱して、熔融ガラスとするガラス熔融方法であって、ガラス原料供給口から、縦型円筒状のガラス熔融塔に、前記ガラス原料を供給する工程と、供給された落下状態のガラス原料を、縦型円筒状のガラス熔融塔に備えてある管状火炎生成装置によって、加熱し、熔融ガラスとする工程と、を含むことを特徴とするガラス熔融方法である。
すなわち、このように落下状態のガラス原料を、縦型管状火炎を用いて加熱することによって、熔融させるガラス原料量の如何によらず、ガラス原料を所定粒径に成形することなく、かつ、発生する炭酸ガス等の影響を排除して、極めて高いエネルギー効率でもって、迅速かつ連続的に熔融することができる。
【0018】
また、本発明のガラス熔融方法を実施するに際して、ガラス原料の平均粒径を10〜800μmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように実施することにより、縦型管状火炎によるガラス原料のより均一加熱を可能とし、相当量あるいは複数種のガラス原料であっても、より安定的に熔融することができる。
【0019】
また、本発明のガラス熔融方法を実施するに際して、管状火炎生成装置における管状火炎生成用ガスとして、炭化水素ガスおよび空気を用いた後、切り替えて、炭化水素ガスおよび酸素を用いることが好ましい。
このように実施することにより、最初は、炭化水素ガスおよび空気を用いて、より安全な着火を確保することができ、その後、切り替えて、炭化水素ガスおよび酸素を用いることによって、ガラス原料をさらに安定的に熔解することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明のガラス熔融装置の概略図である。
【図2】図2は、管状火炎生成装置の一例を説明するために供する図である。
【図3】図3は、攪拌供給装置としてのスクリューフィーダーの概略図である。
【図4】図4(a)〜(b)は、定量供給装置の一例を説明するために供する図である。
【図5】図5(a)〜(b)は、本発明のガラス熔融装置によって得られた熔解ガラスの固化物および熔融されるガラス原料を説明するために供する図である。
【図6】図6は、管状火炎生成装置の半径方向位置における火炎温度分布を説明するために供する図である。
【図7】図7(a)〜(c)は、管状火炎生成用ガスの種類(CH4/O2、C3H8/O2、H2/O2)とそれら当量比の、火炎温度に及ぼす影響を説明するために供する図である。
【図8】図8は、ガラス熔融塔におけるシャッター、断熱装置または冷却装置、別の加熱装置、ガラス清澄装置、着火装置、およびガスセンサをそれぞれ説明するために供する図である。
【図9】図9(a)〜(b)は、耐熱保護部材を周囲に備えたガラス熔融装置を説明するために供する図である。
【図10】図10は、ガラス原料の平均粒径と、加熱時間との関係を説明するために供する図である。
【図11】図11は、従来のガラス熔融装置(ガスバーナーを備えたガラス熔融装置)を説明するために供する図である。
【図12】図12(a)〜(b)は、従来の別のガラス熔融装置(プラズマ熔融装置を備えたガラス熔融装置)を説明するために供する図である。
【図13】図13(a)〜(b)は、従来の管状火炎を含む輝炎バーナを説明するために供する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、図1に例示するように、ガラス原料28を供給するガラス原料供給口18aを有する原料供給装置18と、供給された落下状態のガラス原料28を加熱して、熔融ガラスとする縦型円筒状のガラス熔融塔14と、を順次に備えたガラス熔融装置10であって、縦型円筒状のガラス熔融塔14に、その接線方向に対して、少なくとも燃料ガスを供給する第1のノズル12a、12cおよび酸素含有ガスを供給する第2のノズル12b、12dを備えた管状火炎生成装置12が設けてあることを特徴とするガラス熔融装置10である。
すなわち、このようにガラス熔融装置10を構成することによって、ガラス原料28を所定粒径に成形することなく、ガラス原料28そのものであっても、所定面積を有するとともに、面方向のみならず、鉛直方向にも均一な温度分布を有する管状火炎16によって、縦型円筒状のガラス熔融塔14の内部を落下中のガラス原料28を、迅速かつ連続的に熔融することができる。
また、縦型円筒状のガラス熔融塔14の内部で、鉛直方向に移動する管状火炎16を用いて、落下中のガラス原料28を熔解させることから、発生する炭酸ガスの影響を受けることが少なくなる。
その上、ガラス原料28の熔融に寄与した管状火炎16が、縦型円筒状のガラス熔融塔14の内壁に沿って移動し、得られた熔融ガラスの貯留部付近に到達可能なことから、かかる管状火炎16を利用して、得られた熔融ガラスをさらに加熱保温することができ、ひいては、ガラス原料28の熔融に際して、極めて高いエネルギー効率を得ることができる。
以下、適宜図面を参照しながら、第1の実施形態のガラス熔融装置について、具体的に説明する。
【0022】
1.原料供給装置
(1)基本的構成
原料供給装置18は、図1に示すように、縦型円筒状のガラス熔融塔14の上方に設けてあって、所定のガラス原料28を供給し、落下状態とするガラス原料供給口18aを備えている。
すなわち、このようなガラス原料供給口18aが、縦型円筒状のガラス熔融塔14の所定位置に設けてあり、かつ、相当量のガラス原料28を安定的供給するとともに、管状火炎16の安定性に影響を与えない構成であることが好ましい。
よって、図1に示すように、筒状の原料供給装置18であって、その一端としてのガラス原料供給口18aが管状火炎の中央付近に位置している一方、もう一方の端部には、ホッパー等を接続するためのガラス原料投入口18bが設けてあることが好ましい。
【0023】
なお、図示しないものの、原料供給装置18において、その内部に備えてあるスクリューねじ等によって、ガラス原料投入口18bから投入されたガラス原料28を、順次かつ定量的に移動させ、ガラス原料供給口18aから管状火炎16の中央付近に供給することが好ましい。
その上、ガラス原料供給口18aの先端部を下方に折り曲げることによって、管状火炎の16の中央付近に、ガラス原料28をさらに確実に供給することができ、ひいては、縦型円筒状のガラス熔融塔14の中心軸に沿って下方に落下させることができる。
【0024】
(2)複数のガラス原料供給口
また、一つの縦型円筒状のガラス熔融塔に対して、鉛直方向に、複数のガラス原料供給口(第1のガラス原料供給口および第2のガラス原料供給口)を設けることが好ましい。
この理由は、複数種のガラス原料を熔融させる場合であっても、ガラス原料の種類や平均粒径に応じて、複数のガラス原料供給口のいずれかを選択して、最適な熔融状態とすることができるためである。
したがって、融点が比較的高いボウ硝等については、相対的に上方に設けてある第1の管状火炎生成装置から投入し、融点が比較的低い珪砂や炭酸ナトリウム等については、相対的に下方に設けてある第2の管状火炎生成装置から投入することが好ましい。
さらにまた、平均粒径が比較的大きいガラス原料については、相対的に上方に設けてある第1の管状火炎生成装置から投入し、平均粒径が比較的小さいガラス原料については、相対的に下方に設けてある第2の管状火炎生成装置から投入することが好ましい。
【0025】
なお、鉛直方向に、複数の管状火炎生成装置(第1の管状火炎生成装置および第2の管状火炎生成装置)が設けてある場合、それに対応して、複数のガラス原料供給口(第1のガラス原料供給口および第2のガラス原料供給口)を設けることも好ましい。
この理由は、ガラス原料の種類や平均粒径等に応じて、複数ある管状火炎生成装置およびそれに対応したガラス原料供給口をそれぞれきめ細かく選択し、ガラス原料を、より安定的に熔融することができるためである。
【0026】
(3)撹拌装置
また、原料供給装置の一部に、ガラス原料を攪拌しながら供給するための撹拌装置が設けてあることが好ましい。
この理由は、このような撹拌装置を設けることによって、ガラス原料の凝集を有効に防止し、相当量のガラス原料であっても、より迅速かつ連続的に熔融することができるためである。
より具体的には、平均粒径が小さいほどガラス原料は凝集しやすい性質を有するものの、このような撹拌装置を設けることによって、個々のガラス原料に分離した状態で落下させることができ、ひいては、管状火炎生成装置によって、確実かつ安定的に、熔解することができる。
【0027】
そして、撹拌装置の種類についても特に制限されるものではないが、例えば、超音波振動装置、圧電振動装置、モータ振動装置、回転ミキサ、またはスクリューフィーダーのいずれか一つであることが好ましい。
この理由は、このような種類の撹拌装置であれば、比較的小型かつ少エネルギーの攪拌装置でありながら、ガラス原料の凝集を有効に防止し、相当量のガラス原料であっても、より安定的に熔融することができるためである。
【0028】
例えば、超音波振動装置は、周波数10〜20,000kHzの超音波振動子を備えており、ガラス原料に対して、所定振動を付与することによって、凝集防止を図るとともに、安定的な供給を図るための攪拌装置(振動撹拌装置)である。
また、圧電振動装置は、圧電体に加えられた力を電圧に変換する、あるいは電圧を力に変換する、いわゆる圧電効果を利用した受動素子を備えており、ガラス原料に対して、所定振動を付与することによって、凝集防止を図るとともに、安定的な供給を図るための攪拌装置である。
また、モータ振動装置は、モータの回転によって、隣接して設けてある振動板を震わせ、それによってガラス原料の凝集防止を図る攪拌装置である。
また、回転ミキサは、モータ等によって、所定回転数で回転する撹拌翼を所定容器内の内部に備えており、その撹拌翼によってガラス原料を回転移動させることによって、凝集防止を図る攪拌装置である。
【0029】
さらに、スクリューフィーダーは、図3に示すように、ガラス原料を貯蔵するとともに、所定量落下供給するためのホッパー52と、螺旋運動によって、ガラス原料を回転させながら移動させるための回転スクリュー装置54と、回転スクリュー装置54を駆動させるための駆動装置60と、を備えている。そして、制御装置62によって、これらの装置をそれぞれ制御動作させ、所定量のガラス原料28を、精度良く、出口58から下方に供給するための装置である。
したがって、このようなスクリューフィーダー50を用いた場合、相当量の粉状ガラス原料28であっても、均一かつ容易に撹拌することができるのみならず、ガラス原料28の管状火炎生成装置12への所定場所に、定量的に供給することが可能となる。すなわち、かかるスクリューフィーダー50を用いた場合、ガラス原料の撹拌供給装置としての機能を発揮することができる。
【0030】
(4)定量供給装置
また、図4(a)に定量供給装置70の斜視図、図4(b)に上方から見た定量供給装置70の平面図を示すが、所定幅のスリット72が設けてあり、当該スリット72を介して、ガラス原料28をカーテン状に落下させながら、縦型円筒状のガラス熔融塔14に対して、定量的に供給する定量供給装置70を備えることが好ましい。
この理由は、原料供給装置等の下方に、このような定量供給装置を設けることによって、ガラス原料の連続的かつ定量的な供給を可能とし、相当量のガラス原料であっても、より迅速かつ安定的に熔融することができるためである。
そして、原料供給装置と、ガラス熔融塔との間に、このように定量供給装置を設けてある場合、かかる定量供給装置が、断熱作用を発揮することから、原料供給装置におけるガラス原料の熱劣化を有効に防止することもできる。
【0031】
なお、図4(a)〜(b)に示すような定量供給装置70にスリット72を設ける場合、ガラス原料の種類や平均粒径、さらには熔融速度等にもよるが、当該スリット幅を0.1〜10mmとし、スリット長さを10〜100mmとすることが好ましい。
そして、例えば、平面形状が円形の回転容器74を備えるとともに、その内部で回転軸78の周りを、矢印Hで示す方向に、所定回転数、例えば、0.1〜30rpmで回転する、概長方形状の羽状物(ゴム製プロペラ等)76を設けることが好ましい。
すなわち、かかる羽状物76の回転駆動によって、回転容器74の内部に収容したガラス原料28を、回転容器74の内壁および底部に対して順次押圧し、ガラス原料28の凝集を防止しつつ、所定幅のスリット72からカーテン状にこそぎ落とすことが好ましい。
【0032】
2.ガラス熔融塔
(1)基本的構成
また、ガラス熔融塔14は、図1に示すように、縦型円筒状であることを特徴とする。
すなわち、断面形状が実質的に円形であって、所定の断面積を有する縦型円筒状のガラス熔融塔を用いることによって、管状火炎の形成が容易になるととともに、安定的な火炎状態を保持することができるためである。
そして、図2の拡大図に示すように、円形の内壁に沿って形成された管状火炎16の中心付近は、火炎と同等温度のホットエアとなるとともに、管状火炎とともに、渦流として移動する、かかるホットエアを利用することができるためである。
したがって、ホットエアの中に、原料供給装置18を用い、ガラス原料28を投入、落下させることによって、相当量のガラス原料28であっても、縦型円筒状のガラス熔融塔の底部までの落下時間である数秒以内に、迅速かつ安定的に熔融することが可能となる。
一例であるが、図5(a)に、所定のガラス熔融塔における管状火炎によって得られた熔融ガラスの固化物、および、図5(b)に、熔融される前の粉末状のガラス原料を示す。
【0033】
また、縦型円筒状のガラス熔融塔の形態(管直径や管長さ)についても、特に制限されるものでないが、通常、管直径については、5〜200mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる管直径が5mm未満の値になると、ガラス原料の単位時間当たりの熔融量が著しく低下したり、一旦熔融したガラス原料が、管壁に堆積したりする場合があるためである。
一方、かかる管直径が200mmを超えた値になると、管状火炎の安定性が低下したり、面方向の温度分布が不均一となったりする場合があるためである。
したがって、縦型円筒状のガラス熔融塔における管直径を、10〜100mmの範囲内の値とすることがより好ましく、管直径を、25〜80mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0034】
さらに、縦型円筒状のガラス熔融塔の管長さについても、通常、300〜10000mm(0.3m〜10m)の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる管長さが0.3m未満の値になると、ガラス原料の落下時間が過度に短くなって、均一加熱が困難となる場合があるためである。
一方、かかる管長さが10mを超えた値になると、管状火炎の安定性が低下したり、鉛直方向の温度分布が過度に不均一となったりする場合があるためである。
したがって、縦型円筒状のガラス熔融塔における管長さを、500〜5000mm(0.5m〜5m)の範囲内の値とすることがより好ましく、800〜2500mm(0.8m〜2.5m)の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0035】
その他、ガラス熔融塔については、ステンレス、白金、鉄、セラミック材料等の耐熱材料から構成することができ、全体として、鉛直方向に伸びた直線状の円管であることが基本的に好ましいが、上述した原料供給装置のガラス熔融塔における接続箇所、すなわち、管状火炎生成装置の上方については、ガラス原料の落下時間、落下状態、さらには落下場所を調整すべく、鉛直方向に対して、10〜80°傾斜した傾斜管とすることも好ましい。
さらに、後述する管状火炎生成装置を通過した箇所についても、管状火炎によって熔融したガラスの落下時間や落下状態を調整すべく、鉛直方向に対して、10〜80°傾斜した傾斜管とすることも好ましい。
【0036】
(2)管状火炎生成装置
また、管状火炎生成装置12は、図2の拡大図に示すように、縦型円筒状のガラス熔融塔14の接線方向に対して、少なくとも燃料ガスを供給する第1のノズル12a、12cおよび酸素含有ガスを供給する第2のノズル12b、12dを備えることを特徴とする。
そして、図1に示されるように、第1のノズル12a、12cから供給される燃料ガスは、流量計20および配管22a、22bを介して、燃料ガスボンベ22から供給されている。
また、第2のノズル12b、12dから供給される酸素含有ガス(純酸素)は、流量計20および配管24a、24bを介して、酸素含有ガスボンベ24から供給されている。
さらに、第2のノズル12b、12dの途中から供給される空気は、流量計20および配管26a、26bを介して、コンプレッサー26から供給されている。
【0037】
すなわち、図2中、矢印Aおよび矢印Cに示すように、第1のノズル12a、12cから供給されるとともに、第1のノズル出口14a、14cから噴出された燃料ガスと、矢印Bおよび矢印Dに示すように、第2のノズル12b、12dから供給されるとともに、第2のノズル出口14b、14dから噴出されたた酸素含有ガスと、が、ガラス熔融塔14の内壁に沿って急速混合されて、燃焼可能なガス層16bを形成することができる。
したがって、燃焼可能なガス層16bに着火することによって、所定厚さを有する渦流としての火炎層16aが、ガラス熔融塔14の内面壁に沿って形成され、管状火炎16の一部として、ガラス原料の迅速かつ均一加熱に寄与することになる。
【0038】
ここで、図6を参照して、管状火炎生成装置によって形成される管状火炎の半径方向位置(面方向)における温度分布について説明する。
すなわち、図6の横軸は、縦型円筒状のガラス熔融塔(管径:40mm)における半径方向位置(中心0mm、±20mm)を示しており、縦軸は、管状火炎生成装置によって形成される管状火炎の火炎温度(K)を示している。
そして、温度分布を示す特性曲線は、中心から約±20mm離れた端部、すなわち、内面壁付近においては、500K以下の相当低い温度を示している。
その一方、中心から0mm〜約±18mmの面方向領域においては、2200〜2400Kの極めて均一な高い温度であることを示している。
したがって、管状火炎を用いた場合、中心部を含めて、広範囲で得られる均一高温領域を利用して、相当量のガラス原料であっても、迅速かつ連続的に熔融することができる。
なお、図示しないものの、管状火炎生成装置によって形成される管状火炎は、渦流として移動することから、縦型円筒状のガラス熔融塔における面方向のみならず、鉛直方向においても、均一な温度分布を有することが判明している。
【0039】
次いで、図7(a)〜(c)を参照して、管状火炎生成装置によって形成される管状火炎の温度に及ぼす管状火炎生成用ガスにおける燃料ガス/酸素の当量比の影響について説明する。
すなわち、図7(a)の横軸は、管状火炎生成用ガスにおける燃料ガス(CH4/O2)の当量比(−)を示しており、縦軸は、形成される管状火炎の火炎温度(K)を示している。
また、図7(b)の横軸は、管状火炎生成用ガスにおける燃料ガス(C3H8/O2)の当量比(−)を示しており、縦軸は、形成される管状火炎の火炎温度(K)を示している。
さらに、図7(c)の横軸は、管状火炎生成用ガスにおける燃料ガス(H2/O2)の当量比(−)を示しており、縦軸は、形成される管状火炎の火炎温度(K)を示している。
そして、図7(a)〜(c)の温度分布を示す特性曲線は、それぞれ管状火炎生成用ガスの種類によらず、当量比1付近で、形成される管状火炎において、最高火炎温度が得られることを示している。
したがって、管状火炎を用いた場合、管状火炎生成用ガスの種類によらず、管状火炎用形成ガスの当量比1付近で、最高火炎温度が得られることから、それを利用して、相当量のガラス原料であっても、迅速かつ連続的のみならず、安定的に熔融することができる。
【0040】
(3)複数の管状火炎生成装置
また、図示しないものの、鉛直方向に沿って、上方から、少なくとも第1の管状火炎生成装置および第2の管状火炎生成装置が設けてあることが好ましい。
この理由は、これら複数の管状火炎生成装置を設けることによって、管状火炎の温度や大きさ等の調整が容易になって、種々のガラス原料に対応して、それらを迅速かつ安定的に熔融することができるためである。
したがって、例えば、縦型円筒状のガラス熔融塔を長さ方向に二等分して、第1の管状火炎生成装置を二等分された上方部分に設け、第2の管状火炎生成装置を二等分された下方部分に設けることができる。
【0041】
(4)管状火炎生成装置の配置
また、管状火炎生成装置12の配置に関して、図1や図8に示すように、縦型円筒状のガラス熔融塔14の上方であっても良く、あるいは、図示しないものの、縦型円筒状のガラス熔融塔の下方であっても良い。
すなわち、管状火炎生成装置を、縦型円筒状のガラス熔融塔の上方に配置した場合、管状火炎が、上方から下方に向かって、渦を巻きながら降下することになるが、温度分布のばらつきが小さい管状火炎の中央付近に、ガラス原料を正確に供給することができる。
一方、管状火炎生成装置を、縦型円筒状のガラス熔融塔の下方に配置した場合、管状火炎が、下方から上方に向かって吹き上がることになるが、下方に落下するガラス原料と、管状火炎の中央付近に存在する熱風と、が対向することから、ガラス原料をさらに効率的に加熱することができる。
【0042】
(5)シャッター
また、図8に示すように、縦型円筒状のガラス熔融塔14の途中に、一つまたは二つ以上のシャッター80(80a、80b、80c)が設けてあることが好ましい。
この理由は、このようなガラス熔融塔の内部を所定空間ごとに仕切るシャッターを設けるとともに、それらを開閉することによって、ガラス熔融塔における管状火炎の形成場所や、ガラス熔融塔の温度分布を精度良く調整することができるためである。
したがって、このようなシャッターの開閉によって、ガラス原料の熔融状態をさらに綿密に制御したり、ガラス原料の熔融作業に伴う安全性を向上させたりすることができる。
【0043】
より具体的には、所定の管状火炎を形成する場合、図8に示すガラス熔融塔14に、矢印A、CおよびB、Dに示すように、複数の管状火炎生成用ガスを導入する前に、全てのシャッター80(第1〜第3のシャッター80a、80b、80c)を実質的に閉じておく。
次いで、過圧力状態とならないように、第1のシャッター80aを一部開放した状態にした後、ガラス熔融塔14の内部に、複数の管状火炎生成用ガスをそれぞれ導入する。そして、これらの管状火炎生成用ガスが内壁に沿って急速混合され、燃焼可能なガス層を形成した後に、着火装置19により、着火する。
この時、第1のシャッター80aは、一部開放状態ではあるものの、ガラス熔融塔14の途中が実質的に仕切られていることから、管状火炎形成室の容積は、比較的小さくなる。よって、複数の管状火炎生成用ガスが、すぐに着火可能状態となる。
また、管状火炎形成室に、残留酸素等が存在している場合であっても、管状火炎形成室の容積が比較的小さいことから、かかる残留酸素の悪影響を排除しやすくなる。
【0044】
次いで、第1のシャッター80aのみを開き、管状火炎形成室を大きくすることによって、管状火炎の形成領域を大きくする。
次いで、第1のシャッター80aのみならず、第2のシャッター80bも順次開き、管状火炎形成室を、当初の約2倍に大きくすることによって、管状火炎の形成領域をさらに大きくする。
最後に、第1および第2のシャッター80a、80bのみならず、第3のシャッター80cも順次開き、管状火炎形成室を当初の約3倍に大きくすることによって、管状火炎の形成領域をさらに大きくする。
すなわち、第1〜第3のシャッター80a、80b、80cを順次開き、管状火炎形成室を徐々に大きくすることによって、安全かつ安定的に、最終的に所望形成状態の管状火炎を得ることができる。
【0045】
3.その他の構成装置
(1)断熱装置または冷却装置
また、図8に示すように、原料供給装置18と、縦型円筒状のガラス熔融塔14との間に、断熱装置または冷却装置82が設けてあることが好ましい。
より具体的には、このような断熱装置または冷却装置によって、原料供給装置におけるガラス原料の温度を、例えば、100℃以下の値に制御することが好ましい。
この理由は、バッファー室やガラスウール充填室等の断熱装置や、水冷管等の冷却装置等が設けてあることにより、原料供給装置に、ガラス原料を所定時間滞留させた場合であっても、その間の凝集を容易に防止することができるためである。
【0046】
(2)追加加熱装置
また、図8に示すように、部分的熔解状態等のガラス原料が、矢印Jで示されるように供給された場合であっても、ガラス熔融塔14の下方端に、そのような熔融ガラスをさらに加熱熔融させるための追加加熱装置94を備えることが好ましい。
この理由は、このようにガラス熔融塔とは別に加熱装置を設けることによって、管状火炎生成装置のみの加熱によってはガラス原料が部分的熔解状態であったとしても、ガラス熔融塔とは別の加熱装置によって、均一温度かつ良好な流動状態の熔融ガラスとすることができるためである。
より具体的には、追加加熱装置として、ガスバーナー加熱炉、赤外線加熱炉、誘導加熱炉、電気加熱装置等の少なくとも一つを設けて追加加熱することによって、例えば、温度が1200〜2500℃の範囲であって、かつ、均一流動状態の熔融ガラスとすることができる。
なお、ガラス熔融塔の下方端に、上述した管状火炎生成装置が設けてある場合には、かかる管状火炎生成装置のさらに下方に、得られた熔融ガラスの貯留部を設けるとともに、そこに追加加熱装置を設ければ良い。
【0047】
(3)ガラス清澄装置
また、図8に示すように、ガラス熔融塔14の端部に設けてある熔融ガラスの取り出し口98の先に、ガラス熔融塔14で得られた熔融ガラス96を流動させながら、炭酸ガスを脱泡するガラス清澄装置100をさらに備えることが好ましい。
より具体的には、図8に示すように、横長のプ−ル状のガラス清澄装置100を設けて、熔融ガラス96を緩やかに流動させながら、さらには撹拌しながら、内部に含まれる炭酸ガスを、矢印Kで表わされる方向に、有効に脱泡することが好ましい。
この理由は、このようなガラス清澄装置をさらに備えることによって、炭酸ガス発生による熔融ガラスの流動状態の不均一化を有効に防止することができ、ひいては、泡が少ない熔融ガラスを用いて、所定の機械的強度等を有するガラス容器を安定的に製造することができるためである。
【0048】
(4)着火装置
また、図8に示すように、管状火炎形成装置12の近傍に、着火装置19を備えることが好ましい。
この理由は、このように着火装置を備えることによって、管状火炎形成用ガスに対して、安全かつ容易に着火して、管状火炎を形成することができるためである。
より具体的には、ガラス熔融塔の内部であって、管状火炎形成装置の近傍に、着火装置として、スパークプラグ着火装置、電熱線着火装置、パイロット火炎着火装置等の少なくとも一つを設けることが好ましい。
すなわち、図2に示すように、第1のノズル12a、12cから供給された燃料ガスと、第2のノズル12b、12dから供給された酸素含有ガスと、が急速混合されて、ガラス熔融塔14の内壁において均一に燃焼可能なガス層16bを形成することから、それに着火装置19によって着火することによって、迅速かつ簡便に、管状火炎16の一部として、火炎層16aを形成することができる。
【0049】
(5)ガスセンサおよび温度計
また、図8に示すように、ガラス熔融塔14の所定場所に、酸素、窒素、二酸化炭素等のガスセンサ84、86、90を備えることが好ましい。
この理由は、このようにガスセンサ84、86、90を備えることによって、過剰な酸素の滞留や、ガラス原料から発生した窒素、二酸化炭素等の滞留について検知することができるためである。したがって、このような滞留ガスに起因して、予想しない発火現象が生じたり、管状火炎の安定性が低下したりする現象を有効に防止することができる。
そして、さらに、ガスセンサ84、86、90とともに、温度計88を併用することが好ましい。
この理由は、このように温度計88を併用することによって、ガスセンサ84、86、90の検知精度を高めたり、これらガスセンサやガラス熔融塔14の故障診断にも使用することができるためである。
なお、酸素や窒素のガスセンサ84、86は、検知するガスの滞留特性等を考慮して、ガラス熔融塔14の比較的上方に設けることが好ましく、二酸化炭素のガスセンサ90は、ガラス熔融塔14の比較的下方に設けることが好ましい。
【0050】
(6)耐火構造
また、図9(a)に上方から見た平面図、図9(b)に側面図を示すように、ガラス熔融塔14の周囲を、耐熱保護部材32、例えば、耐火レンガ等の耐火物で被覆して、全体として、耐火構造とすることが好ましい。
この理由は、このように耐火構造とすることによって、ガラス熔融塔から外部に拡散する熱を防止し、ガラス熔融塔の耐久性や機械的強度を高めることができるためである。
より具体的には、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、窒化アルミニウム、窒化ジルコニウム、炭素材料等から構成された耐火レンガ等の耐火物を用いて、ガラス熔融塔の周囲を被覆することが好ましい。
そして、図9(a)〜(b)に示すように、金属製のフレーム部材30を用いて、耐熱保護部材32の周囲を、さらに補強することが好ましい。
【0051】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、ガラス原料を供給する原料供給装置におけるガラス原料供給口から供給された落下状態のガラス原料を加熱して、熔融ガラスとするガラス熔融方法であって、ガラス原料供給口から、縦型円筒状のガラス熔融塔に、ガラス原料を供給する工程(第1工程と称する場合がある。)と、供給された落下状態のガラス原料を、縦型円筒状のガラス熔融塔に備えてある管状火炎生成装置によって、加熱し、熔融ガラスとする工程(第2工程と称する場合がある。)と、を含むことを特徴とするガラス熔融方法である。
すなわち、ガラス原料を落下状態とする第1工程と、落下状態のガラス原料を、管状火炎によって加熱し、熔融ガラスとする第2工程と、を含むことによって、熔融させるガラス原料量の如何によらず、ガラス原料を所定粒径に成形することなく、かつ、発生する炭酸ガス等の影響を排除して、極めて高いエネルギー効率でもって、迅速かつ連続的に熔融することができる。
以下、第1工程および第2工程に分けて、第2の実施形態のガラス熔融方法について、具体的に説明する。
【0052】
1.第1工程
(1)ガラス原料の種類
第1工程において供給されるガラス原料の種類は特に制限されるものではないが、珪砂、ソーダ灰(炭酸ナトリウム)、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、石灰石、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硼砂、長石、ガラスカレット、金属等の一種単独または二種以上の混合物を使用することができる。
より具体的に、ソーダ石灰ガラスを構成する場合には、例えば、珪砂100重量部に対して、ソーダ灰を5〜50重量部、石灰石を5〜30重量部、水酸化アルミニウムを1〜30重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
また、ホウ珪酸ガラスを構成する場合には、例えば、珪砂100重量部に対して、水酸化アルミニウムを1〜10重量部、硼砂を1〜50重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
さらに、ソーダカリ石灰ガラスを構成する場合には、例えば、珪砂100重量部に対して、ソーダ灰を5〜30重量部、硝酸カリウムを5〜30重量部、石灰石を5〜30重量部、水酸化アルミニウムを1〜5重量部、硼砂を1〜10重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
【0053】
そして、これらのガラス原料を適宜配合して熔解させ、具体的に、下記酸化物配合量のガラス組成とすることが好ましい。
すなわち、融点が約1500℃のソーダ石灰ガラス組成とする場合、例えば、SiO2の配合量が73重量%、Na2O+K2Oの配合量が14重量%、CaO+MgOの配合量が11重量%、Al2O3の配合量が2.1重量%となることが好ましい。
【0054】
また、融点が約1600℃の抗菌性リン酸ガラス組成とする場合には、例えば、Ag2O、ZnO、CaO、B2O3およびP2O5を含み、かつ、全体量を100重量%としたときに、Ag2Oの配合量を0.2〜5重量%の範囲内の値、ZnOの配合量を2〜60重量%の範囲内の値、CaOの配合量を0.1〜15重量%の範囲内の値、B2O3の配合量を0.1〜15重量%の範囲内の値、およびP2O5の配合量を30〜80重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
【0055】
(2)ガラス原料の平均粒径
また、ガラス原料の平均粒径を、通常、10〜800μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、ガラス原料の平均粒径が10μm未満の値になると、過度に凝集しやすくなったり、取り扱いが困難になったり、さらには、ガラス原料コストが高くなって、経済的に不利になったりする場合があるためである。
一方、ガラス原料の平均粒径が800μmを超えた値になると、管状火炎生成装置によって、ガラス原料を均一に加熱することが困難となって、部分的にしか熔融しない場合があるためである。
したがって、ガラス原料の平均粒径を20〜500μmの範囲内の値とすることがより好ましく、30〜100μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0056】
ここで、図10に言及して、ガラス原料(SiO2系ガラス)の平均粒径と、加熱時間との関係を説明する。
すなわち、図10の横軸には、ガラス原料の平均粒径(mm)を採って示してあり、縦軸に、管状火炎を用いてガラス原料を熔融するのに必要な加熱時間(sec)を採って示してある。
そして、これらの関係を示す特性曲線から判断して、ガラス原料の平均粒径(mm)が1mm未満であれば、必要な加熱時間は1(sec)以下であるものの、ガラス原料の平均粒径(mm)が1.5mmを超えると、必要な加熱時間は2(sec)以上となって、倍以上に加熱時間が長くなっている。
よって、管状火炎生成装置によって、ガラス原料を十分に加熱する場合、ガラス原料の平均粒径が密接に加熱時間に影響することに留意するとともに、その平均粒径を所定範囲内の値に、可能な限り制御すべきである。
【0057】
なお、ガラス原料の平均粒径は、JIS Z8901に準拠し、「粒子の直径の算術平均値」として測定することができる。
より具体的には、ガラス原料の平均粒径は、例えば、レーザー方式の粒度測定装置や画像処理装置等によって求めた体積基準粒度分布における積算値50%での粒径(D50)として、測定することができる。
【0058】
(3)ガラス原料の供給方法
また、ガラス原料の供給方法としては特に制限されるものではないが、第1の実施形態で説明したように、所定の攪拌装置や定量供給装置を備えた原料供給装置を用い、均一かつ連続的に、粉体状のガラス原料を供給することが好ましい。
したがって、ガラス原料の種類によっても異なる場合があるが、例えば、断面積が1〜100cm2の縦型円筒状のガラス熔融塔に対して、通常、0.01〜1000g/secの供給速度で、粉体状のガラス原料を供給することが好ましい。
【0059】
2.第2工程
(1)管状火炎
第2工程は、縦型円筒状のガラス熔融塔に備えてある管状火炎生成装置によって生成された管状火炎によって、落下状態のガラス原料を加熱し、熔融ガラスとする工程である。
すなわち、第1のノズルから供給された燃料ガスと、第2のノズルから供給された酸素含有ガスと、が急速混合されて、ガラス熔融塔の内壁において均一に燃焼可能なガス層を形成し、さらにそれに着火することによって、所定厚さを有する渦流としての管状火炎が形成されるものである。
したがって、ガラス熔融塔の断面方向において、極めて均一な温度分布を有する管状火炎を使用して、ガラス原料の均一加熱が可能となる。
【0060】
(2)管状火炎生成ガス
また、管状火炎生成装置における管状火炎生成用ガスとして、最初は、炭化水素ガスおよび空気を用いた後、切り替えて、炭化水素ガスおよび酸素を用いることが好ましい。
この理由は、このように実施することによって、より安全な着火を確保することができ、かつ、さらに安全かつ迅速なガラス原料の熔解が可能となるためである。
すなわち、管状火炎生成用ガスとして、炭化水素ガスおよび空気を用いた場合、形成される管状火炎の温度が比較的低いものの、他のガスを用いた場合と比較して、より安全に着火することができる。
一方、管状火炎生成用ガスとして、炭化水素ガスおよび酸素を用いた場合、形成される管状火炎の温度が比較的高く、それを利用して、相当量のガラス原料であっても、迅速かつ連続的に熔解することができる。
【0061】
(3)スワール数
また、管状火炎生成装置における管状火炎のスワール数を0.6〜15の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるスワール数が0.6未満の値になると、管状火炎の安定性が著しく低下したり、ガラス熔融塔における形成位置の制御が困難となったりする場合があるためである。
一方、かかるスワール数が15を超えた値になると、断面積方向の温度分布が大きくなったり、管状火炎生成装置の内壁温度が過度に上昇し、管状火炎生成装置の耐久性が著しく低下したりする場合があるためである。
したがって、管状火炎生成装置における管状火炎のスワール数を1〜8の範囲内の値とすることがより好ましく、2〜6の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、かかる管状火炎のスワール数は、管状火炎生成装置におけるガス導入部の数、ガス導入部の面積(ガス導入部の長さ×幅)、縦型円筒状のガラス熔融塔の内径等によって、所定範囲の値に調整することができる。
【0062】
3.他の工程
(1)冷却工程
また、図8に示すように、ガラス原料を冷却するための断熱装置や冷却装置82を設けて、ガラス原料の熔融中、あるいは熔融前後において、所定の冷却工程を実施することが好ましい。
より具体的には、原料供給装置の周囲に水冷却管を配置したり、空冷用フィンを設けたりして、原料供給装置におけるガラス原料の温度を、例えば、100℃以下の温度とすることが好ましい。
この理由は、ガラス原料の温度が100℃を超えると、過度に凝集したり、ガラス原料の表面が一部変質したりして、所望の熔融ガラスとすることが困難となる場合があるためである。
したがって、冷却工程を実施して、原料供給装置におけるガラス原料の温度を20〜80℃の範囲内の温度とすることがより好ましく、30〜70℃の範囲内の温度とすることがさらに好ましい。
【0063】
(2)加熱工程
また、図8に示すように、ガラス熔融塔14において加熱されたガラス原料をさらに加熱するための、管状火炎生成装置とは異なる追加加熱装置94を設けて、さらに加熱する加熱工程(第2の加熱処理)を実施することが好ましい。
より具体的には、上述したように、ガスバーナー加熱炉等を設けて、ガラス熔融塔において加熱されたものの、一部未熔解のガラス原料等を追加加熱し、所定温度であって、均一流動状態の熔融ガラスとするための加熱工程を実施することが好ましい。
なお、かかる第2の加熱処理は、必ずしも常時実施する必要はなく、管状火炎生成装置による初期的加熱時や、ガラス原料の種類や平均粒径が比較的熔解困難な条件等の場合に、選択的に実施することができる。
【0064】
(3)ガラス清澄工程
また、図8に示すように、ガラス熔融塔14の端部である熔融ガラスの取り出し口98に、ガラス熔融塔14で得られた熔融ガラス96を流動等させながら、炭酸ガスを脱泡するための清澄装置100を設けて、所定のガラス清澄工程を実施することが好ましい。
この理由は、このようにガラス清澄工程を実施することによって、炭酸ガス発生による加熱温度の低下や不均一化を有効に防止することができ、ひいては、熔融ガラスを用いて、所定の機械的強度等を有するガラス容器を安定的に製造することができるためである。
【0065】
(4)ガラス成形工程
また、図示しないものの、公知のガラス成形機を用いて、ガラス成形工程を実施し、得られた熔融ガラスを用いて、ガラス容器等を成形することが好ましい。
より具体的には、一つまたは複数金型を用いて、プレス&ブロー法、ブロー&ブロー法、あるいはワンプレス法によって、所定形状を有するガラス容器等とすることが好ましい。
その他、同様の公知の抗菌性ガラス成形機を用いて、得られた熔融ガラスから、抗菌性ガラス粒子や抗菌性ガラスタブレットを形成することも好ましい。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を掲げて、本発明の内容を更に詳しく説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、これら実施例のみの記載に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において適宜変更することができる。
【0067】
[実施例1]
1.ガラス原料の熔融
(1)ガラス原料の準備
下記配合組成のガラス原料を、ソーダ石灰ガラス用原料(タイプA)として準備した。
珪砂(平均粒径D50:300μm) :100重量部
ソーダ灰(D50:1000μm未満) :30重量部
石灰石(D50:30μm) :25重量部
水酸化アルミニウム(D50:55μm):3重量部
【0068】
(2)ガラス原料の管状火炎による熔融
次いで、図1に示すガラス熔融装置を用い、管状火炎生成装置によって管状火炎を形成するとともに、原料供給装置(スクリューねじ)からガラス原料を連続的に供給し、縦型円筒状のガラス熔融塔(管直径:約50mm、長さ:1200mm)の内部を落下させながら、管状火炎によって、ガラス原料を熔解させた。
なお、管状火炎生成装置における管状火炎生成用ガスとして、炭化水素ガス(C3H8)および空気を当量比が1.0となるように用い、着火させて、管状火炎を形成した。
【0069】
2.熔融ガラスの評価
(1)評価1
得られた熔融ガラスを回収し、その固化物を目視観察し、以下の基準に沿って、熔融状態等を評価した。得られた結果を表1に示す。
◎:完全に熔解し、均一にガラス化されている。
○:ほぼ完全に熔解し、ほとんどが均一にガラス化されている。
△:一部が熔解して、不均一にガラス化されているもの、残留粉状物が多い。
×:ほとんど熔解しておらず、ガラス化されていないとともに、残留している粉状物が極めて多い。
【0070】
(2)評価2
管状火炎生成用ガスの種類を切り替えて、炭化水素ガス(C3H8)および酸素を当量比が1.0となるようにそれぞれを用いたほかは、評価1と同様に、得られた熔融ガラスを回収し、その固化物を目視観察し、評価1の基準に沿って、熔融状態等を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0071】
[実施例2]
実施例2においては、実施例1におけるガラス原料の種類を下記内容に変更し、ホウケイ酸ガラス用原料(タイプB)としたほかは、実施例1と同様に、熔融ガラスを作成して、固化物を評価した。
珪砂(D50:300μm) :100重量部
水酸化アルミニウム(D50:55μm):5重量部
硼砂(D50:20μm) :38重量部
【0072】
[実施例3]
実施例3においては、実施例1におけるガラス原料の種類を下記内容に変更し、
ソーダカリ石灰ガラス用原料(タイプC)としたほかは、実施例1と同様に、熔融ガラスを作成して、評価した。
珪砂(D50:300μm) :100重量部
ソーダ灰(D50:1000μm未満) :20重量部
硝酸カリウム(D50:5μm) :24重量部
石灰石(D50:30μm) :16重量部
水酸化アルミニウム(D50:55μm):3重量部
硼砂(D50:20μm) :5重量部
【0073】
[実施例4]
実施例4においては、実施例1におけるガラス原料の種類を下記内容に変更し、
抗菌成分として酸化亜鉛を含む抗菌性ガラス用原料(タイプD)としたほかは、実施例1と同様に、抗菌性の熔融ガラスを作成して、評価した。
リン酸(D50:1μm) :100重量部
炭酸マグネシウム(D50:5μm) :18重量部
炭酸カリウム(D50:25μm) :10重量部
酸化亜鉛(D50:1μm) :13重量部
【0074】
[比較例1]
比較例1においては、管状火炎装置の代わりにガスバーナー(火炎温度1600℃)を用いたほかは、実施例1と同様に、熔融ガラスを作成して、評価した。
【0075】
【表1】
【0076】
[実施例5〜8]
実施例5〜8においては、実施例1〜4で用いた炭化水素ガス(C3H8)の代わりに、都市ガス(CH4)を用いたほかは、実施例1等と同様に、熔融ガラスを作成して、評価した。
【0077】
[比較例2]
比較例2においては、管状火炎装置の代わりにガスバーナー(火炎温度1600℃)を用いたほかは、実施例5と同様に、熔融ガラスを作成して、評価した。
【0078】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のガラス熔融装置およびそれを用いたガラス熔融方法によれば、所定のガラス原料を供給し、落下状態とする原料供給装置と、管状火炎生成装置を含む縦型円筒状のガラス熔融塔と、を順次に備えることによって、熔融させるガラス原料量の如何によらず、管状火炎生成装置で生成された縦型管状火炎を用いて、迅速かつ安定的にガラス原料を熔融できるようになった。
すなわち、本発明によれば、ガラス原料種の交換や装置メンテナンス等が容易であって、ガラス容器や抗菌性ガラス等の生産効率が高い、経済的なガラス熔融装置およびそれを用いたガラス熔融方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0080】
10:ガラス熔融装置
12:管状火炎生成装置
12a、12c:燃料ガスを供給する第1のノズル
12b、12d:酸素含有ガスを供給する第2のノズル
14:ガラス熔融塔
14a、14c:第1のノズル出口
14b、14d:第2のノズル出口
16:管状火炎
16a:火炎層
16b:ガス層
18:原料供給装置
18a:ガラス原料供給口
18b:ガラス原料投入口
20:流量計
22:燃料ガスボンベ
24:酸素含有ガスボンベ
24a、24b:配管
26:コンプレッサー
26a、26b:配管
28:ガラス原料
30:金属フレーム
32:耐熱保護部材
50:スクリューフィーダー
70:定量供給装置
82:断熱装置または冷却装置
84、86、90:ガスセンサ
88:温度計
94:追加加熱装置
96:熔融ガラス
98:熔融ガラスの取り出し口
100:ガラス清澄室
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス原料を供給するガラス原料供給口を有する原料供給装置と、供給された落下状態のガラス原料を加熱して、熔融ガラスとする縦型円筒状のガラス熔融塔と、を順次に備えたガラス熔融装置であって、
前記縦型円筒状のガラス熔融塔に、その接線方向に対して、少なくとも燃料ガスを供給する第1のノズルおよび酸素含有ガスを供給する第2のノズルを備えた管状火炎生成装置が設けてあることを特徴とするガラス熔融装置。
【請求項2】
前記管状火炎生成装置として、鉛直方向に沿って、上方から、少なくとも第1の管状火炎生成装置および第2の管状火炎生成装置が設けてあり、これら第1の管状火炎生成装置および第2の管状火炎生成装置に対応して、第1のガラス原料供給口および第2のガラス原料供給口がそれぞれ設けてあることを特徴とする請求項1に記載のガラス熔融装置。
【請求項3】
前記原料供給装置に撹拌装置が設けてあって、当該撹拌装置が、超音波振動装置、圧電振動装置、モータ振動装置、回転ミキサ、またはスクリューフィーダーのいずれか一つであることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス熔融装置。
【請求項4】
前記原料供給装置の下方に、所定幅のスリットが設けてあり、当該スリットを介して、前記ガラス原料をカーテン状に落下させながら、前記縦型円筒状のガラス熔融塔に対して、定量的に供給する定量供給装置が設けてあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のガラス熔融装置。
【請求項5】
前記ガラス供給装置と、前記円筒状のガラス熔融塔との間に、断熱装置または冷却装置が設けてあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラス熔融装置。
【請求項6】
前記ガラス熔融塔の下方端に、得られた熔融ガラスをさらに加熱熔融させるための加熱装置を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のガラス熔融装置。
【請求項7】
前記ガラス熔融塔で得られた熔融ガラスを流動させながら、炭酸ガスを脱泡するガラス清澄装置をさらに備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のガラス熔融装置。
【請求項8】
ガラス原料を供給する原料供給装置におけるガラス原料供給口から供給された落下状態のガラス原料を加熱して、熔融ガラスとするガラス熔融方法であって、
前記ガラス原料供給口から、縦型円筒状のガラス熔融塔に、前記ガラス原料を供給する工程と、
前記供給された落下状態のガラス原料を、前記縦型円筒状のガラス熔融塔に備えてある管状火炎生成装置によって、加熱し、熔融ガラスとする工程と、
を含むことを特徴とするガラス熔融方法。
【請求項9】
前記ガラス原料の平均粒径を10〜800μmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項8に記載のガラス熔融方法。
【請求項10】
前記管状火炎生成装置における管状火炎生成用ガスとして、炭化水素ガスおよび空気を用いた後、切り替えて、炭化水素ガスおよび酸素を用いることを特徴とする請求項8または9に記載のガラス熔融方法。
【請求項1】
ガラス原料を供給するガラス原料供給口を有する原料供給装置と、供給された落下状態のガラス原料を加熱して、熔融ガラスとする縦型円筒状のガラス熔融塔と、を順次に備えたガラス熔融装置であって、
前記縦型円筒状のガラス熔融塔に、その接線方向に対して、少なくとも燃料ガスを供給する第1のノズルおよび酸素含有ガスを供給する第2のノズルを備えた管状火炎生成装置が設けてあることを特徴とするガラス熔融装置。
【請求項2】
前記管状火炎生成装置として、鉛直方向に沿って、上方から、少なくとも第1の管状火炎生成装置および第2の管状火炎生成装置が設けてあり、これら第1の管状火炎生成装置および第2の管状火炎生成装置に対応して、第1のガラス原料供給口および第2のガラス原料供給口がそれぞれ設けてあることを特徴とする請求項1に記載のガラス熔融装置。
【請求項3】
前記原料供給装置に撹拌装置が設けてあって、当該撹拌装置が、超音波振動装置、圧電振動装置、モータ振動装置、回転ミキサ、またはスクリューフィーダーのいずれか一つであることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス熔融装置。
【請求項4】
前記原料供給装置の下方に、所定幅のスリットが設けてあり、当該スリットを介して、前記ガラス原料をカーテン状に落下させながら、前記縦型円筒状のガラス熔融塔に対して、定量的に供給する定量供給装置が設けてあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のガラス熔融装置。
【請求項5】
前記ガラス供給装置と、前記円筒状のガラス熔融塔との間に、断熱装置または冷却装置が設けてあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラス熔融装置。
【請求項6】
前記ガラス熔融塔の下方端に、得られた熔融ガラスをさらに加熱熔融させるための加熱装置を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のガラス熔融装置。
【請求項7】
前記ガラス熔融塔で得られた熔融ガラスを流動させながら、炭酸ガスを脱泡するガラス清澄装置をさらに備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のガラス熔融装置。
【請求項8】
ガラス原料を供給する原料供給装置におけるガラス原料供給口から供給された落下状態のガラス原料を加熱して、熔融ガラスとするガラス熔融方法であって、
前記ガラス原料供給口から、縦型円筒状のガラス熔融塔に、前記ガラス原料を供給する工程と、
前記供給された落下状態のガラス原料を、前記縦型円筒状のガラス熔融塔に備えてある管状火炎生成装置によって、加熱し、熔融ガラスとする工程と、
を含むことを特徴とするガラス熔融方法。
【請求項9】
前記ガラス原料の平均粒径を10〜800μmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項8に記載のガラス熔融方法。
【請求項10】
前記管状火炎生成装置における管状火炎生成用ガスとして、炭化水素ガスおよび空気を用いた後、切り替えて、炭化水素ガスおよび酸素を用いることを特徴とする請求項8または9に記載のガラス熔融方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図5】
【公開番号】特開2012−240899(P2012−240899A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115307(P2011−115307)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000162917)興亜硝子株式会社 (19)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000162917)興亜硝子株式会社 (19)
【Fターム(参考)】
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