説明

ガラス繊維集束剤及びガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物

【課題】耐熱性、機械的強度及び吸水特性に優れた成形体を製造可能なガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物が得られるガラス繊維集束剤を得る。
【解決手段】カルボジイミド基含有化合物:1〜5質量%と、ポリウレタン樹脂:1〜5質量%と、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と、当該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体:1〜5質量%と、シランカップリング剤:0.1〜1質量%と、潤滑剤0.01〜0.5質量%と、を、含むガラス繊維集束剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維集束剤及びガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリアミド樹脂やポリエステル樹脂は、優れた機械的特性(機械的強度、剛性や耐衝撃性等)を有することから、様々な産業分野で利用されている。
特に、ポリアミドは、機械的特性を高める目的で、ガラス繊維、ガラスフレーク、アルミナ繊維や層状無機化合物等の無機化合物フィラーと複合化して用いられることが多い。このうち、無機化合物としてガラス繊維と複合化する場合には、ポリアミドと複合化した際の界面状態を改質するために、シランカップリング剤やフィルム形成剤が一般に用いられている。
【0003】
さらに、ポリアミド樹脂の機械的特性を一層向上させる技術として、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物に関する技術が注目されている。
例えば、無水マレイン酸及び不飽和単量体の共重合体並びにシラン系カップリング剤を主たる構成成分とするガラス繊維集束剤で表面処理したガラス繊維と、ポリアミド樹脂とを複合化する。これにより、耐不凍液性を向上させるという技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、シランカップリング剤の末端にアリル基を導入した化合物を使用することにより、溶融ポリアミド樹脂中のガラス繊維の流動性を高める技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。さらに、ポリカルボジイミド樹脂、ポリウレタン樹脂やシランカップリング剤を用いて、ガラス繊維表面とポリアミド樹脂との耐水性を高める技術が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0004】
また、ガラス繊維の集束剤に関し、ポリウレタン樹脂、変性ポリプロピレン樹脂、シランカップリング剤及び少量のポリカルボジイミドからなる集束剤を含有するガラス繊維により、ポリプロピレン系樹脂の機械的強度を向上させる技術(例えば、特許文献4参照。)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−128479号公報
【特許文献2】特開2000−303359号公報
【特許文献3】特開平9−227173号公報
【特許文献4】特開2000−281391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動車部品や各種電子部品等にガラス繊維強化樹脂組成物を用いる場合、かかるガラス繊維強化樹脂組成物には高いレベルの耐熱性、機械的強度、さらには、吸水しても実用上十分な機械的強度を保持する優れた吸水特性が求められる。
しかしながら、上記従来の技術では、かかるレベルに達するガラス繊維強化樹脂組成物を安定的に得ることができない。そのため、上記の部品に適用可能であって、かつ安定供給可能な、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物に対する要求が高まっている。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、耐熱性、機械的強度及び吸水特性に優れたガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物を作製可能なガラス繊維集束剤、並びにそれを含有するガラスロービング及びガラスチョップドストランド等のガラス繊維、及びこれを含有するガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、カルボジイミド基含有化合物、ポリウレタン樹脂、所定の共重合体、シランカップリング剤、及び潤滑剤を構成要素とし、さらにこれらの各構成要素を所定範囲で含むガラス繊維集束剤を得、かつ当該ガラス繊維集束剤を含有するガラス繊維を用いたガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物を用いることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0009】
〔1〕
カルボジイミド基含有化合物:1〜5質量%と、
ポリウレタン樹脂:1〜5質量%と、
カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と、当該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体:1〜5質量%と、
シランカップリング剤:0.1〜1質量%と、
潤滑剤0.01〜0.5質量%と、
を、含む、ガラス繊維集束剤。
【0010】
〔2〕
前記共重合体は、無水マレイン酸とブタジエンとの共重合体、無水マレイン酸とエチレンとの共重合体、及び無水マレイン酸とスチレンとの共重合体、並びにこれらの混合物よりなる群から選択される1種以上である、前記〔1〕に記載のガラス繊維集束剤。
【0011】
〔3〕
前記〔1〕又は〔2〕に記載のガラス繊維集束剤を含有する、熱可塑性樹脂補強用ガラスロービング。
【0012】
〔4〕
前記〔1〕又は〔2〕に記載のガラス繊維集束剤を含有する、熱可塑性樹脂補強用ガラスチョップドストランド。
【0013】
〔5〕
前記〔3〕に記載の熱可塑性樹脂補強用ガラスロービング及び/又は前記〔4〕に記載の熱可塑性樹脂補強用ガラスチョップドストランドと熱可塑性樹脂とを含有するガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
【0014】
〔6〕
前記熱可塑性樹脂がポリアミドである前記〔5〕に記載のガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
【0015】
〔7〕
前記〔5〕又は〔6〕に記載のガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物を用いて成形した成形体。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐熱性、機械的強度及び吸水特性に優れた成形体を製造可能なガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物が得られるガラス繊維集束剤、並びにそれを含有するガラスロービング及びガラスチョップドストランド、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。
本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0018】
〔ガラス繊維集束剤〕
本実施形態のガラス繊維集束剤は、カルボジイミド基含有化合物1〜5質量%、ポリウレタン樹脂1〜5質量%、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と当該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体1〜5質量%、シランカップリング剤0.1〜1質量%、及び潤滑剤0.01〜0.5質量%を含有する。
【0019】
以下、ガラス繊維集束剤の構成要素について説明する。
<カルボジイミド基含有化合物>
前記カルボジイミド基含有化合物とは、一以上のカルボジイミド基を有する化合物を意味する。
前記カルボジイミド基含有化合物は、3−メチル−1−フェニル−3−ホスホレン−1−オキシド等のカルボジイミド化触媒の存在下、ジイソシアネート化合物を脱炭酸反応させることによって得られる。
前記ジイソシアネート化合物として、以下に制限されないが、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート及び脂環式ジイソシアネート、並びにこれらの混合物が挙げられる。
具体例として、以下に制限されないが、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアネート及び1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネートが挙げられる。
そして、上記のジイソシアネートをカルボジイミド化触媒の存在下でカルボジイミド化することによって、末端に2つのイソシアネート基を有する(ポリ)カルボジイミド化合物、すなわちカルボジイミド基含有化合物が得られる。
かかる(ポリ)カルボジイミド化合物の中でも、反応性向上の観点から、ジシクロヘキシルメタンカルボジイミドが好ましい。
【0020】
ポリカルボジイミドの縮合度は1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。
縮合度が1〜20の範囲内にある場合、均一性に優れた良好な水溶液又は水分散液が得られる。
さらに、縮合度が1〜10の範囲内にある場合、一層良好な水溶液又は水分散液が得られる。
【0021】
上記した末端に2つのイソシアネート基を有する(ポリ)カルボジイミド化合物に対し、さらにモノイソシアネート化合物を等モル量カルボジイミド化させる方法、またはポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルと等モル量反応させてウレタン結合を生成する方法等によって、末端にイソシアネート基を1つ有する(ポリ)カルボジイミド化合物を得ることもできる。モノイソシアネート化合物としては、以下に制限されないが、例えば、ヘキシルイソシアネート、フェニルイソシアネートやシクロヘキシルイソシアネート等が挙げられる。上記したポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、以下に制限されないが、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルやポリエチレングリコールモノエチルエーテルが挙げられる。
【0022】
<ポリウレタン樹脂>
ポリウレタン樹脂は、ガラス繊維集束剤として一般的に用いられるものであれば特に制限されない。
例えば、m−キシリレンジイソシアナート(XDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)(HMDI)やイソホロンジイソシアナート(IPDI)等のイソシアネートと、ポリエステル系やポリエーテル系のジオールとから合成されるものが好適に使用できる。
【0023】
<カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と当該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体>
この共重合体を構成する前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体としては、以下に制限されることはないが、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸や無水シトラコン酸が挙げられ、中でも無水マレイン酸が好ましい。
一方、前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体とは、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体とは異なる不飽和ビニル単量体をいう。前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体としては、以下に制限されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジクロロブタジエン、1,3−ペンタジエン、シクロオクタジエン、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレートが挙げられる。
中でもスチレンやブタジエンが好ましい。
【0024】
これらの組み合わせの中でも、無水マレイン酸とブタジエンとの共重合体、無水マレイン酸とエチレンとの共重合体、及び無水マレイン酸とスチレンとの共重合体、並びにこれらの混合物よりなる群から選択される1種以上であることがより好ましい。
【0025】
また、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と当該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体は、重量平均分子量が2,000以上であることが好ましい。また、より好ましくは2,000〜1,000,000であり、さらに好ましくは5,000〜500,000である。
なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。
【0026】
<シランカップリング剤>
シランカップリング剤は、通常、ガラス繊維の表面処理剤として用いられる。
シランカップリング剤としては、特に制限されないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランやN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランやγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類が挙げられる。
中でも、上記の列挙成分から選択される1種以上であることが好ましく、アミノシラン類がより好ましい。
【0027】
<潤滑剤>
潤滑剤は、ガラス繊維集束剤の調製に寄与する。
潤滑剤としては、目的に適した通常の液体または固体の任意の滑剤材料が使用可能である。以下に制限されないが、例えば、カルナウバワックスやラノリンワックス等の動植物系もしくは鉱物系のワックス、又は脂肪酸アミド、脂肪酸エステルもしくは脂肪酸エーテル、又は芳香族系エステルもしくは芳香族系エーテル等の界面活性剤が使用可能である。
【0028】
<その他のガラス繊維集束剤の成分>
本実施形態のガラス繊維集束剤は、上記の構成要素(構成成分)以外に、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩等を含んでもよい。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記アクリル酸のホモポリマーとしては、重量平均分子量1,000〜90,000であることが好ましく、より好ましくは1,000〜25,000である。
【0030】
アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマーを構成する前記アクリル酸と共重合体を形成するモノマーとしては、以下に制限されないが、例えば、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するモノマーのうち、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸及びメサコン酸よりなる群から選択される1種以上が挙げられる(但し、アクリル酸のみの場合を除く)。上記したモノマーのうちエステル系モノマーを1種以上有することが好ましい。
【0031】
前記アクリル酸のホモポリマー及び/又はコポリマーの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩としては、以下に制限されないが、具体例として、トリエチルアミン、トリエタノールアミンやグリシンが挙げられる。中和度は、他の併用薬剤(シランカップリング剤等)との混合溶液の安定性向上や、アミン臭低減の観点から、20〜90%とすることが好ましく、40〜60%とすることがより好ましい。
【0032】
塩を形成するアクリル酸のポリマーの重量平均分子量は、特に制限されないが、3,000〜50,000の範囲が好ましい。ガラス繊維の集束性向上の観点から、3,000以上が好ましく、樹脂組成物とした際の機械的特性向上の観点から、50,000以下が好ましい。
【0033】
〔ガラス繊維集束剤の製造方法〕
本実施形態のガラス繊維集束剤は、上述したカルボジイミド基含有化合物、ポリウレタン樹脂、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と当該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体と、シランカップリング剤と、潤滑剤とを、水で希釈することにより製造できる。
具体的には、それぞれ固形分として、カルボジイミド基含有化合物1〜5質量%、ポリウレタン樹脂1〜5質量%、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と当該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体1〜5質量%、シランカップリング剤0.1〜1質量%、及び潤滑剤0.01〜0.5質量%を水で希釈し、全質量を100質量%に調整することにより、ガラス繊維集束剤を調製することができる。
【0034】
本実施形態のガラス繊維集束剤が、上記<その他のガラス繊維集束剤の成分>に挙げた成分を含む場合には、アクリル酸のホモポリマー及び/又はアクリル酸とその他のモノマー成分とのコポリマーを好ましくは1〜10質量%、より好ましくは2〜5質量%、及び活性アミノ基を主鎖骨格にもつ反応型ポリウレタン樹脂を好ましくは1〜5質量%、より好ましくは2〜4質量%含んでいてもよい。
【0035】
本実施形態のガラス繊維集束剤中の、前記カルボジイミド基含有化合物((ポリ)カルボジイミド化合物)の配合量は、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物の機械的強度向上の観点から1質量%以上とすることが好ましく、ガラス繊維の集束性向上の観点から5質量%以下とすることが好ましい。
【0036】
本実施形態のガラス繊維集束剤中の、前記ポリウレタン樹脂の配合量は、ガラス繊維の集束性向上の観点から1質量%以上とすることが好ましく、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物の機械的強度向上の観点から5質量%以下とすることが好ましい。
【0037】
前記カルボジイミド基含有化合物と前記ポリウレタン樹脂との配合比率は、特に制限されないが、カルボジイミド基含有化合物/ポリウレタン樹脂が、質量比として、好ましくは1/2〜5/1であり、より好ましくは1/1〜5/1、さらに好ましくは1/1〜3/1である。上記した範囲内とすることにより、耐熱性が向上し、さらに吸水時の機械的特性の低下を抑制することができる。
【0038】
本実施形態のガラス繊維集束剤中の前記シランカップリング剤の配合量は、ガラス繊維の集束性向上、及びガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物の機械的強度向上の観点から、0.1〜1質量%とすることが好ましい。
【0039】
本実施形態のガラス繊維集束剤中の前記潤滑剤の配合量は、充分な潤滑性を与えるという観点から、0.01質量%以上とすることが好ましく、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物の機械的強度向上の観点から0.5質量%以下とすることが好ましい。
【0040】
また、アクリル酸のホモポリマー、及びアクリル酸とその他のモノマー成分とのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級のアミン塩より選択された1種以上のポリマーの、本実施形態のガラス繊維集束剤における配合量は、耐水強度を必要とする分野においては、吸水時のガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物の機械的強度向上の観点から1質量%以上とすることが好ましく、ガラス繊維の集束性、該組成物の色調、外観及び表面平滑性を向上させる観点から10質量%以下とすることが好ましい。
【0041】
本実施形態のガラス繊維集束剤は、使用態様に応じて、水溶液、コロイダルディスパージョンの形態、乳化剤を用いたエマルジョンの形態等、いずれの形態に調製してもよい。
【0042】
〔熱可塑性樹脂補強用ガラスロービング及び熱可塑性樹脂補強用ガラスチョップドストランド〕
本実施形態の熱可塑性樹脂補強用ガラスロービング及び熱可塑性樹脂補強用ガラスチョップドストランド(以下、これらを総称してガラス繊維と言う場合もある。)は、上述した本実施形態のガラス繊維集束剤を含有している。
なお、ここでいう「を含有する」とは、「を施した」、「を付与(添加)した」、「で処理してなる」と換言することができる。
また、前記熱可塑性樹脂補強用ガラスロービング及び前記熱可塑性樹脂補強用ガラスチョップドストランドは、ガラス繊維の形態を示すものである。
【0043】
〔熱可塑性樹脂補強用ガラスロービング及び熱可塑性樹脂補強用ガラスチョップドストランドの製造方法〕
本実施形態の熱可塑性樹脂補強用ガラスロービングは、上述した本実施形態のガラス繊維集束剤を、公知のガラス繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーター等の公知の方法を用いて、ガラス繊維に付与して製造したガラス繊維ストランドを乾燥することによって連続的に得られる。
本実施形態の熱可塑性樹脂補強用ガラスチョップドストランドは、前記ガラスロービングを所定の長さに切断することにより得られる。
ガラス繊維集束剤は、ガラス繊維100質量%に対し、固形分率として0.2〜3質量%相当を付与(添加)することが好ましく、より好ましくは0.3〜2質量%付与(添加)する。
ガラス繊維の集束を維持する観点から、ガラス繊維集束剤の添加量が、ガラス繊維100質量%に対し、固形分率として0.2質量%以上であることが好ましい。
一方、後述するガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物の熱安定性向上の観点から、3質量%以下であることが好ましい。また、ストランドの乾燥は切断工程後に行ってもよく、またはストランドを乾燥した後に切断してもよい。
【0044】
〔ガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物〕
本実施形態のガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物は、前記ガラス繊維と熱可塑性樹脂組成物とを含有している。
【0045】
<熱可塑性樹脂>
前記熱可塑性樹脂としては、以下に制限されないが、例えば、ポリアミド、ポリエステル、液晶ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルアミドが挙げられる。
中でも、優れた機械的特性(機械的強度、剛性や耐衝撃性等)をガラス繊維に付与できるという観点から、ポリアミドが好ましい。
【0046】
先ず、熱可塑性樹脂としての前記ポリアミドとは、主鎖に−CO−NH−(アミド)結合を有する高分子化合物を意味する。
例えば、ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、ω−アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、ジアミン及びジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド、並びにこれらの共重合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ポリアミドとしては、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0047】
先ず、前記ラクタムの開環重合で得られるポリアミドについて説明する。
ポリアミドの構成成分である単量体としてのラクタムは、以下に制限されないが、例えば、ピロリドン、カプロラクタム、ウンデカラクタムやドデカラクタムが挙げられる。
一方、ω−アミノカルボン酸としては、例えば、上記ラクタムの水による開環化合物であるω−アミノ脂肪酸が挙げられる。
なお、前記ラクタム又は前記ω−アミノカルボン酸は、それぞれ2種以上の単量体を併用して縮合させてもよい。
【0048】
次に、ジアミン及びジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミドについて説明する。
前記ジアミン(単量体)としては、例えば、ヘキサメチレンジアミンやペンタメチレンジアミン等の直鎖状の脂肪族ジアミン;2−メチルペンタンジアミンや2−エチルヘキサメチレンジアミン等の分岐型の脂肪族ジアミン;p−フェニレンジアミンやm−フェニレンジアミン等の芳香族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、シクロペンタンジアミンやシクロオクタンジアミン等の脂環式ジアミンが挙げられる。
前記ジカルボン酸(単量体)としては、例えば、アジピン酸、ピメリン酸やセバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸;フタル酸やイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。
上記した単量体としてのジアミン及びジカルボン酸は、それぞれ1種単独又は2種以上の併用により縮合させてもよい。
【0049】
上記により得られるポリアミドとしては、例えば、ポリアミド4(ポリα−ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、及びポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、並びにこれらを構成成分として含む共重合ポリアミドが挙げられる。
【0050】
前記共重合ポリアミドとしては、例えば、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンテレフタルアミドの共重合物、ヘキサメチレンアジパミド及びヘキサメチレンイソフタルアミドの共重合物、並びにヘキサメチレンテレフタルアミド及び2−メチルペンタンジアミンテレフタルアミドの共重合物が挙げられる。
【0051】
また、前記ポリアミドは、その分子末端のカルボキシル基又はアミノ基の数を調整したものを使用してもよい。
かかる調整の例として、以下に制限されないが、一塩基酸、二塩基酸、モノアミン化合物、ジアミン化合物、モノカルボン酸化合物及びジカルボン酸化合物よりなる群から選択される1種以上を末端調整剤として使用することにより末端基の数を調整する方法、縮重合するジアミンとジカルボン酸との配合量を調整する方法、前記分子末端のアミノ基とカルボン酸無水物とを反応させることにより両末端にカルボキシル基を有するようにする方法が挙げられる。
【0052】
さらに、前記ポリアミドの末端基としては、一般にアミノ基、又はカルボキシル基が存在する。
これらの末端基の比は、アミノ基濃度/カルボキシル基濃度として、好ましくは9/1〜1/9であり、より好ましくは6/4〜1/9、さらに好ましくは5/5〜1/9である。
上記した範囲内である場合、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物の機械的強度をより向上させることができる。
【0053】
また、前記ポリアミドの末端基であるアミノ基の濃度は、好ましくは10〜80μmol/gであり、より好ましくは15〜65μmol/gであり、さらに好ましくは20〜40μmol/gである。末端アミノ基の濃度が上記した範囲内の場合、機械的強度を有意に向上させることができる。
【0054】
末端アミノ基及び末端カルボキシル基の濃度は、1H−NMRにより測定される、各末端基に対応した特性シグナルの積分値によって求めることができる。
【0055】
上記のように、末端アミノ基及び末端カルボキシル基の数は、末端調整剤を用いることにより調整することができるが、この末端調整剤について、より具体的に説明する。
末端調整剤としては、一塩基酸、二塩基酸、モノアミン化合物、ジアミン化合物、モノカルボン酸化合物及びジカルボン酸化合物よりなる群から選択される1種以上が使用できる。
【0056】
前記一塩基酸とは、水中で1つのプロトンを放出可能な性質を有する酸を意味し、以下に制限されないが、例えば塩酸が挙げられる。
また、前記二塩基酸とは、水中で2つのプロトンを放出可能な性質を有する酸を意味し、例えば硫酸が挙げられる。
【0057】
前記モノアミン化合物としては、以下に制限されないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン及びジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン及びナフチルアミン等の芳香族モノアミン、並びにこれらの任意の混合物等が挙げられる。特に、反応性、沸点、封止末端の安定性や価格等の観点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン及びアニリンが好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
前記ジアミン化合物は、上述したポリアミドの材料として挙げたものを使用できる。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
前記モノカルボン酸化合物としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸及びイソブチル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸及びフェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸が挙げられる。
これらのカルボン酸化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
前記ジカルボン酸化合物としては、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸及びスベリン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、ジフェニルメタン−4,4'−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4'−ジカルボン酸及び4,4'−ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸から誘導される単位(ユニット)が挙げられる。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
熱可塑性樹脂としてのポリエステルとは、ジオール化合物とジカルボン酸化合物との縮重合によって得られる高分子化合物である。
前記ジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールが挙げられる。
前記ジカルボン酸としては、前記ジカルボン酸化合物として挙げたものを、使用できる。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
熱可塑性樹脂としてのポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンアジペートテレフタレート及びポリトリメチレンテレフタレートが挙げられる。
【0063】
熱可塑性樹脂としてのポリエステルアミドとは、ポリエステルブロックとポリアミドブロックとを有する共重合物である。
ポリエステルアミドは、例えば、任意に選択したポリエステルとポリアミドとの間のエステルアミド交換反応によって得ることができる。
【0064】
<ガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物のその他の成分>
上記した成分の他に、本実施形態の効果を損なわない範囲で、必要に応じてさらに他の成分を添加してもよい。
例えば、ガラス繊維以外の無機充填材、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光劣化防止剤、可塑剤、滑剤、離型剤、核剤、難燃剤、着色剤、染色剤や顔料等を添加してもよいし、他の熱可塑性樹脂を混合してもよい。
ここで、上記した他の成分はそれぞれ性質が大きく異なるため、各成分についての、本実施形態の効果をほとんど損なわない好適な含有率は様々である。そして、当業者であれば、上記した他の成分ごとの好適な含有率は容易に設定可能である。
【0065】
〔ガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態のガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物は、上述したガラス繊維集束剤を含有するガラス繊維と上述した熱可塑性樹脂とを複合化し、さらに所定のその他の成分を混合し、所定の単軸又は多軸押出機を用いて混練することにより製造できる。
具体的には、ガラス繊維としてガラスチョップドストランドを用いる場合、上流側供給口と下流側供給口とを備えた二軸押出機を使用し、上流側供給口から熱可塑性樹脂を供給して溶融させた後、下流側供給口からガラスチョップドストランドを供給して溶融混練する方法を用いることが好ましい。また、ガラスロービングを用いる場合も、公知の方法で複合することができる。
【0066】
本実施形態のガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物を製造する際、熱可塑性樹脂補強用ガラスロービング及び/又は熱可塑性樹脂補強用ガラスチョップドストランドからなるガラス繊維と、熱可塑性樹脂との配合比は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、ガラス繊維が1〜200質量部とすることが好ましく、より好ましくは5〜150質量部であり、さらに好ましくは15〜100質量部である。上記した範囲内の場合、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂組成物の流動性及び外観が共に一層優れたものとなる。
【0067】
〔ガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物を用いた成形体〕
本実施形態のガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物は、特に制限されることなく、例えば、射出成形による各種部品の成形体として利用できる。例えば、自動車用、機械工業用、電気・電子用、産業資材用、工業材料用、日用・家庭品用の各種部品が挙げられる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明の実施例と比較例を挙げて具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0069】
〔評価方法〕
以下、実施例及び比較例で行った評価方法について説明する。
(ガラス繊維集束剤の付着量)
ガラス繊維集束剤により表面処理されたガラス繊維を、10g精秤した後、650℃の電気炉において1時間加熱した。
この間の質量減少分をガラス繊維集束剤の付着量とした。
【0070】
(荷重たわみ温度)
後述する実施例及び比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、射出成形機(PS−40E:日精樹脂株式会社製)を用いて、ISO 3167に準拠し、多目的試験片A型の成形片を成形した。
その際、射出及び保圧の時間25秒、冷却時間15秒、金型温度80℃、溶融樹脂温度290℃に設定した。
得られた成形片を切削して使用し、厚さ80mm×巾10mm×長さ4mmの試験片を用いて、ISO 75に準拠し、曲げ応力1.80MPaの条件下、フラットワイズ法で荷重たわみ温度を測定した。
【0071】
(初期引張強度)
上記の多目的試験片(A型)を用いて、ISO 527に準拠し、引張速度5mm/分で引張試験を行い、初期(吸水前)の引張強度を測定した。
【0072】
(吸水後引張強度)
上記の多目的試験片(A型)を、80℃の温水中に72時間浸漬させた後、23℃で24時間静置した。
その後、ISO 527に準拠し、引張速度5mm/分で引張試験を行い、吸水後の引張強度を測定した。
【0073】
(吸水特性)
また、吸水後引張強度/初期引張強度を算出することによって、吸水前後で引張強度がどの程度保持されるか、すなわち吸水特性の程度を評価した。
【0074】
〔実施例1〕
固形分換算で、カルボジイミド基含有化合物4質量%[商品名:カルボジライト(登録商標)V−02、固形分率40質量%の水溶液(日清紡績株式会社製)]、ポリウレタン樹脂2質量%[商品名:ボンディック(登録商標)1050、固形分率50質量%の水溶液(大日本インキ株式会社製)]、無水マレイン酸とブタジエンとの共重合体4質量%[商品名:アクロバインダー(登録商標)BG−7、固形分率25質量%の水溶液(三洋化成工業株式会社製)]、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.6質量%[商品名:KBE−903、(信越化学工業株式会社製]、潤滑剤0.1質量%[商品名:カルナウバワックス(株式会社加藤洋行製)]となるように水で希釈し、全質量を100質量%に調整し、ガラス繊維集束剤を得た。
このようなガラス繊維集束剤を、溶融防糸された平均直径10μmのガラス繊維に対して、回転ドラムに巻き取られる途中に設けたアプリケーターによってガラス繊維に付着させた。
そして、その後に乾燥することによって、上記ガラス繊維集束剤で表面処理されたガラス繊維束のロービング(ガラスロービング)を得た。
その際、ガラス繊維は1,000本の束となるようにした。
ガラス繊維集束剤の付着量は、0.6質量%であった。
これを3mmの長さに切断して、ガラスチョップドストランドを得た。
【0075】
得られたガラスチョップドストランドを用いて、樹脂組成物を製造した。
溶融混練を行う押出機としては、押出機の上流側から1番目のバレルに上流側供給口を有し、且つ9番目のバレルに下流側供給口を有する、L/D(押出機のシリンダーの長さ/押出機のシリンダー径)=48(バレル数:12)の二軸押出機[ZSK−26MC:コペリオン社製(ドイツ)]を用いた。
前記二軸押出機において、上流側供給口からダイまでを290℃、スクリュー回転数200rpm、及び吐出量20kg/時間に設定した。
かかる条件下で、下記表1の上部に記載された割合となるように、上流側供給口よりポリアミド66[商品名:レオナ(登録商標)1300S−011(旭化成ケミカルズ社製)]を供給し、下流側供給口よりガラスチョップドストランドを供給した。
そして、かかるガラスチョップドストランドを溶融混練することで樹脂組成物のペレットを製造した。
得られた樹脂組成物を用いて、荷重たわみ温度、初期引張強度及び吸水後引張強度を評価した。
これらの評価結果等を下記表1に示した。
【0076】
〔実施例2〕
固形分換算で、カルボジイミド基含有化合物1質量%、ポリウレタン樹脂2質量%、無水マレイン酸とブタジエンとの共重合体4質量%、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.6質量%、潤滑剤0.1質量%となるようにし、水で希釈し、全質量を100質量%に調整し、ガラス繊維集束剤を得た。
その他の条件は、実施例1の場合と同様にして、ガラスロービングを得た。
ガラス繊維集束剤の付着量は、0.5質量%であった。
これを3mmの長さに切断して、ガラスチョップドストランドを得て、実施例1の場合と同様にして樹脂組成物のペレットを得た。
評価結果等を下記表1に示した。
【0077】
〔実施例3〕
固形分換算で、カルボジイミド基含有化合物4質量%、ポリウレタン樹脂2質量%、無水マレイン酸とブタジエンとの共重合体1質量%、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.6質量%、潤滑剤0.1質量%となるようにし、水で希釈し、全質量を100質量%に調整し、ガラス繊維集束剤を得た。
その他の条件は、実施例1の場合と同様にしてガラスロービングを得た。
ガラス繊維集束剤の付着量は、0.5質量%であった。
これを3mmの長さに切断して、ガラスチョップドストランドを得て、実施例1の場合と同様にして樹脂組成物のペレットを得た。
評価結果等を下記表1に示した。
【0078】
〔実施例4〕
固形分換算で、カルボジイミド基含有化合物4質量%、ポリウレタン樹脂2質量%、無水マレイン酸とエチレンとの共重合体4質量%、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.6質量%、潤滑剤0.1質量%となるようにし、水で希釈し、全質量を100質量%に調整し、ガラス繊維集束剤を得た。
その他の条件は、実施例1の場合と同様にしてガラスロービングを得た。
ガラス繊維集束剤の付着量は、0.6質量%であった。
これを3mmの長さに切断して、ガラスチョップドストランドを得て、実施例1の場合と同様にして樹脂組成物のペレットを得た。
評価結果等を下記表1に示した。
【0079】
〔実施例5〕
固形分換算で、カルボジイミド基含有化合物4質量%、ポリウレタン樹脂2質量%、無水マレイン酸とスチレンとの共重合体4質量%、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.6質量%、潤滑剤0.1質量%となるようにし、水で希釈し、全質量を100質量%に調整し、ガラス繊維集束剤を得た。
その他の条件は、実施例1の場合と同様にしてガラスロービングを得た。
ガラス繊維集束剤の付着量は、0.6質量%であった。
これを3mmの長さに切断して、ガラスチョップドストランドを得て、実施例1の場合と同様にして樹脂組成物のペレットを得た。
評価結果等を下記表1に示した。
【0080】
〔比較例1〕
固形分換算で、カルボジイミド基含有化合物4質量%、ポリウレタン樹脂2質量%、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.6質量%、潤滑剤0.1質量%となるようにし、水で希釈し、全質量を100質量%に調整し、ガラス繊維集束剤を得た。
その他の条件は、実施例1の場合と同様にしてガラスロービングを得た。
ガラス繊維集束剤の付着量は、0.5質量%であった。
これを3mmの長さに切断して、ガラスチョップドストランドを得て、実施例1の場合と同様にして樹脂組成物のペレットを得た。
評価結果等を下記表1に示した。
【0081】
〔比較例2〕
固形分換算で、ポリウレタン樹脂2質量%、無水マレイン酸とブタジエンとの共重合体4質量%、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン0.6質量%、潤滑剤0.1質量%となるようにし、水で希釈し、全質量を100質量%に調整し、ガラス繊維集束剤を得た。
その他の条件は、実施例1の場合と同様にして、ガラスロービングを得た。
ガラス繊維集束剤の付着量は、0.5質量%であった。
これを3mmの長さに切断して、ガラスチョップドストランドを得て、実施例1の場合と同様にして樹脂組成物のペレットを得た。
評価結果等を下記表1に示した。
【0082】
【表1】

【0083】
上記表1より、実施例1〜5と比較例1とを対比すると、ガラス繊維集束剤が、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と当該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体を含有する場合、ガラス繊維集束剤がこれを含有しない場合と比較して、得られるガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物の成形体によって測定した荷重たわみ温度、引張強度(初期、吸水後)、及び吸水後引張強度/初期引張強度の値が有意に高いことを確認した。
【0084】
また、実施例1及び2と、比較例2とを対比すると、ガラス繊維集束剤がカルボジイミド基含有化合物を含有する場合、ガラス繊維集束剤がこれを含有しない場合と比較して、得られるガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物の成形体によって測定した荷重たわみ温度、引張強度(初期、吸水後)、及び吸水後引張強度/初期引張強度の値が有意に高いことを確認した。
【0085】
〔実施例6、7〕
実施例1の場合と同様にして、ガラスロービング及びガラスチョップドストランドを得た。
このガラスチョップドストランドを用いて、下記表2に記載の割合になるようにポリアミド66とガラスチョップドストランドとを溶融混練した。
その他の条件は、実施例1の場合と同様にして樹脂組成物のペレットを得た。
評価結果等を下記表2に示した。
【0086】
〔比較例3、5〕
比較例1の場合と同様にして、ガラスロービング及びガラスチョップドストランドを得た。
このガラスチョップドストランドを用いて、下記表2に記載の割合になるように、ポリアミド66とガラスチョップドストランドとを溶融混練した。
その他の条件は、実施例1の場合と同様にして樹脂組成物のペレットを得た。
評価結果等を下記表2に示した。
【0087】
〔比較例4、6〕
比較例2の場合と同様にして、ガラスロービング及びガラスチョップドストランドを得た。
このガラスチョップドストランドを用いて、下記表2に記載の割合になるように、ポリアミド66とガラスチョップドストランドとを溶融混練した。
その他の条件は、実施例1の場合と同様にして樹脂組成物のペレットを得た。
評価結果等を下記表2に示した。
【0088】
【表2】

【0089】
上記表2に示すように、実施例6と比較例3及び比較例4とを対比し、実施例7と比較例5及び比較例6とを対比すると、実施例1〜5と比較例1及び2の対比結果と同様に、熱可塑性樹脂組成物中のガラス繊維含有量が異なる場合においても、ガラス繊維集束剤が、「カルボジイミド基含有化合物」と、「カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と、当該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体と、を構成単位として含む共重合体」を双方含有する場合、ガラス繊維集束剤がこれらのうちの少なくともいずれかを含有しない場合と比較して、荷重たわみ温度、引張強度(初期、吸水後)、及び吸水後引張強度/初期引張強度の値が有意に高いことを確認した。
【0090】
以上のことから、本実施形態のガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物は、耐熱性、機械的強度及び吸水特性に優れた成形体を製造可能であり、自動車部品や各種電子部品等にも十分なレベルで安定的に適用できることを見出した。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係るガラス繊維集束剤を含有するガラス繊維を用いたガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物は、自動車部品や電子部品(コネクタ、スイッチ)等、高レベルでの機械的物性が要求される成形品の材料として産業上の利用可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボジイミド基含有化合物:1〜5質量%と、
ポリウレタン樹脂:1〜5質量%と、
カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と、当該カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体以外の不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体:1〜5質量%と、
シランカップリング剤:0.1〜1質量%と、
潤滑剤0.01〜0.5質量%と、
を、含む、ガラス繊維集束剤。
【請求項2】
前記共重合体は、無水マレイン酸とブタジエンとの共重合体、無水マレイン酸とエチレンとの共重合体、及び無水マレイン酸とスチレンとの共重合体、並びにこれらの混合物よりなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載のガラス繊維集束剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガラス繊維集束剤を含有する、熱可塑性樹脂補強用ガラスロービング。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のガラス繊維集束剤を含有する、熱可塑性樹脂補強用ガラスチョップドストランド。
【請求項5】
請求項3に記載の熱可塑性樹脂補強用ガラスロービング及び/又は請求項4に記載の熱可塑性樹脂補強用ガラスチョップドストランドと熱可塑性樹脂とを含有するガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂がポリアミドである請求項5に記載のガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のガラス繊維強化熱可塑性樹脂組成物を用いて成形した成形体。

【公開番号】特開2010−269995(P2010−269995A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99045(P2010−99045)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】