ガリレオの複数のAltBOC信号を復調する受信機及びその方法
【課題】ガリレオの複数の測位衛星からのAltBOC信号を復調する簡易化された方法及び装置を提供すること。
【解決手段】疑似乱数符号で変調された直交成分(E5aQ, E5bQ)と同相成分(E5aI, E5bI)とを有する少なくとも2つの副搬送波(E5a, E5b)を含む複数のAltBOC信号を復調する方法は、AltBOC信号を中間周波信号に変換し、中間周波信号の帯域を制限し、帯域が制限された中間周波信号を標本化し、標本化信号を取得する工程と、搬送波の位相を生成し、標本化信号の位相を搬送波の位相だけ回転させる工程と、搬送波の位相だけ位相を回転した標本化信号の相関を計算する工程と、搬送波の位相だけ位相を回転した標本化信号の相関を計算するために必要な副搬送波(E5a, E5b)の疑似乱数符号と位相を生成する工程を含む。
【解決手段】疑似乱数符号で変調された直交成分(E5aQ, E5bQ)と同相成分(E5aI, E5bI)とを有する少なくとも2つの副搬送波(E5a, E5b)を含む複数のAltBOC信号を復調する方法は、AltBOC信号を中間周波信号に変換し、中間周波信号の帯域を制限し、帯域が制限された中間周波信号を標本化し、標本化信号を取得する工程と、搬送波の位相を生成し、標本化信号の位相を搬送波の位相だけ回転させる工程と、搬送波の位相だけ位相を回転した標本化信号の相関を計算する工程と、搬送波の位相だけ位相を回転した標本化信号の相関を計算するために必要な副搬送波(E5a, E5b)の疑似乱数符号と位相を生成する工程を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位システム(Global Navigation Satellite System)の受信機(以下単に、“(GNSS)受信機”という)に関し、詳しくは、ガリレオの複数の人工衛星からの信号(alternate binary offset carrier satellite signals、以下単に、“AltBOC信号”という)を処理する受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
測位システム(Global Navigation Satellite System)の受信機(以下単に「受信機」という。)は、軌道上の複数の測位用人工衛星からの信号に基づいて位置を決定する。各人工衛星は、少なくとも1つの搬送波を使って信号を送信している。搬送波は、“1”及び“0”の乱数列からなる2進疑似乱数符号(PRN)で変調されている。2進疑似乱数符号(PRN)の“1”及び“0”は、「コードチップ(code chips)」といい、コードチップ時間(code chip time)での“1”から“0”又は“0”から“1”への遷移を「コードチップ遷移(code chip transitions)」という。各人工衛星は、固有の2進疑似乱数符号(PRN)を使用し、GNSS受信機は、信号に含まれる2進疑似乱数符号(PRN)を決定することによって受信した信号と人工衛星とを関連付けることができる。
【0003】
GNSS受信機は、人工衛星が信号を送信した時間とその受信機が信号を受信した時間との時間差を算出し、算出した時間差に基づいて人工衛星から受信機までの距離又は疑似レンジを算出する。同様にして、少なくとも4つの人工衛星から受信機までの距離又は疑似レンジを算出し、算出した距離又は疑似レンジを用いて、その受信機の位置を決定する。
【0004】
GNSS受信機は、時間差を決定するため、通信機内で生成されたPRN符号と受信した信号のPRN符号とを同期させ、通信機内で生成されたPRN符号が受信したPRN符号に対してどれ位シフトしているかを判定し、距離又は疑似レンジを算出する。更に詳しくは、送信機内で生成したPRN符号と人工衛星から受信したPRN符号とを合わせ、時間差を決定し、地球上の位置を決定する。
【0005】
符号の同期動作は、人工衛星からのPRN符号の捕捉動作とPRN符号のトラッキング動作を含んでいる。GNSS受信機は、PRN符号を捕捉するために相関を計算する。GNSS受信機は、PRN符号の捕捉後、符号のトラッキングを実行する。通常、(i)受信した信号のPRN符号と受信機内の位相を進めたPRN符号との相関と(ii)受信した信号のPRN符号と受信機内の位相を遅らせたPRN符号との相関との差分を算出する。GNSS受信機は、受信した信号のPRN符号と受信機内で生成したPRN符号のズレに比例する誤差信号を生成する遅延ロックループ(DLL)でその差分を使用する。誤差信号は、PRN符号生成器を制御するために使用され、PRN符号生成器は、DLL誤差信号を最小にするために通信機内で生成するPRN符号をシフトする。
【0006】
GNSS受信機は、一般には、受信機内で生成される搬送波との相関を計算し、人工衛星からの搬送波と受信機内で生成される搬送波とを一致させる。これを実行するため、受信機は、搬送波トラッキングPLL(Phase Lock Loop)を使用する。
【0007】
欧州委員会(European Commission)及び欧州宇宙機構(European Space Agency)は、ガリレオとして知られる測位システム(GNSS)を開発している。ガリレオの人工衛星は、E5a帯域(1176.45MHz)の2つの信号とE5b帯域(1207.14MHz)の2つの信号を、AltBOC変調を用いて、中心周波数が1191.795MHzで70MHz以上の広帯域の1つの信号に合成し、合成した信号を送信している。AltBOC信号の生成は、http://europa.eu.int/comm./dgs/energy_transport/galileo/documents/technical_en.htm の the Galileo Signal Task Force of the European commission "Status of Galileo Frequency and Signal Design", G. W. Hein, J. Godet, JX. Issler, J.C. Martin, P. Erhard, R. Lucas-Rodriguez and T. Pratt, 25.09.2002.に開示されている。ガリレオの人工衛星は、夫々独自のPRN符号を送信し、受信機は、受信した信号と人工衛星とを関連付けている。したがって、受信機は、人工衛星が信号を送信した時間と受信機が信号を受信した時間の時間差に基づいて距離又は疑似レンジを決定する。
【0008】
LOC信号(standard linear offset Carrier)が時間領域で正弦波信号sin(ωot)を変調し、その信号の上側波帯とそれに対応する下側波帯に対する周波数をシフトする。BOC変調は、矩形波sign(sin(ωot))を使って周波数シフトを達成する。そして、BOC(fS, fC)と示される。記号fSは、副搬送波(矩形波)の周波数であり、記号fCは、コードチッピングレートである。BOC(15.345MHz, 10.23MHz)の場合、通常、BOC(15, 10)と略記される。
【0009】
複素指数関数ejω0tによる時間領域での信号の変調は、信号を上側波帯にシフトする。AltBOC変調は、複素指数関数又は副搬送波で変調されたE5a及びE5bの帯域の信号を生成することであり、生成された信号がBOC信号(BOC like signal)として受信される。E5a及びE5bの各帯域は、同相成分(I)及び直交成分(Q)を下側波帯にシフトされたE5a符号及び上側波帯にシフトされたE5b符号と関連付けている。直交成分はパイロット信号で変調され、同相成分はデータ信号で変調される。
【0010】
AltBOC変調は、E5a(I及びQ)信号とE5b(I及びQ)信号が、従来の2進位相変調(Binary Phase Shift Keying(BPSK(10))として独立に処理でき、トラッキングノイズやマルチパスに関して非常に性能が向上している。
【0011】
AltBOC変調からの復調では、ベースバンドAltBOC信号がAltLOC信号に近似される。
【0012】
C1(t)は、E5b成分(E5bI)のPRN符号で、d1(t)は、対応するビット変調である。
【0013】
C2(t)は、E5b成分(E5aI)のPRN符号で、d2(t)は、対応するビット変調である。
【0014】
C3(t)は、E5bパイロット成分(E5bQ)のPRN符号である。
【0015】
C4(t)は、E5aパイロット成分(E5aQ)のPRN符号である。
【0016】
指数関数は、E5a及びE5bの副搬送波の変調を示す。
【0017】
ωsは、側波帯オフセット信号の角周波数であり、ωs=2πfS, fS=15.345MHsである。
【0018】
実際には、式S(t)が付加的な項を含み、各副搬送波が量子化される。説明を簡略にするため、式には含めていない。式S(t)は、1191.795MHzの搬送波E5で変調される。
【0019】
文献には、その位置から見えるところにある人工衛星からのAltBOCが記述され、受信機側の処理は僅かであった。
【0020】
非特許文献「Comparison of AWGN Code Tracking Accuracy for Alternative-BOC, complex-LOC and complex-BOC Modulation Options in Galileo E5-Band, M. Soellner and Ph. Erhard, GNSS 2003, April 2003」には、図1に示すように、AltBOCパイロット信号成分をトラッキングするAltBOC受信機が開示されている。
【0021】
図1において、受信機は、アンテナ1を介して、見えるところにある人工衛星からのAltBOC複素符号を含む信号を受信する。受信した高周波信号(RF信号)がRF/IF部2に入力される。RF/IF部2は、従来の方法で高周波信号を受信機内の各信号に応じた中間周波信号(IF信号)に変換する。バンドパスフィルタは、このIF信号を必要な帯域に制限する。次いで、ナイキストの定理に基づいてサンプリングされ、同相成分(I)と直交成分(Q)が生成される。帯域幅は、AltBOC複素符号の第1調波が通過できる幅とする必要がある。広帯域であれば、比較的鋭い符号片遷移となり、明確な相関ピークが得られる。
【0022】
AltBOC受信機は、NCO型の局部発振器4を備えている。この局部発振器4は、中間周波信号に同期し、Mビットの位相回転角を生成し、Nビットの中間周波信号を受け取る位相回転器3に加えている。位相回転器3は、位相を回転したNビットの中間周波信号を3つの複素相関器に加えている。複素相関器は、掛け算器(signal multiplier)10, 11, 12と、積分器(integrator)13, 14, 15を夫々有し、積分器13,14,15は、予め設定された積分時間Tintで掛け算器10, 11, 12から信号を積分している。
【0023】
受信機は、チップレート(code chipping rate)fCに同期するNCO型の局部発振器5を備えている。この局部発振器5は、人工衛星毎に複素PRN符号を生成する。生成されたPRN符号は、マルチビット遅延線7の3つのセルE, P, Lに入力され、時間通りのPRN符号と、時間より進んだPRN符号と、時間より遅れたPRN符号とが生成され、掛け算器10, 11, 12に入力される。
【0024】
積分器13乃至15から出力される信号CE, CP, CLは、局部発振器(NCO Oscillators)4,5を駆動するための搬送波の位相及び符号誤り信号を生成するために使われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
AltBOC 符号生成器6は、複雑でマルチビットであるという問題があった。すなわち、AltBOC 符号生成器6が、パイロット成分だけがトラッキングされることを仮定し、次式を用いてAlt−LOCベースバンド信号を量子化している。
【0026】
このような複雑なベースバンド信号は扱いにくいし、図1に示される受信機は、遅延線、掛け算器、積分器などの各要素が複数のマルチビット数を扱っていることを暗に示している。
【0027】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、ガリレオの複数の測位衛星からのAltBOC信号を復調する簡易化された方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
この課題は、本発明の復調方法により達成される。本発明の復調方法は、疑似乱数符号で変調された直交成分と同相成分とを有する少なくとも2つの副搬送波を含む複数のAltBOC信号を復調する復調方法において、
前記直交成分はデータ無しのパイロット信号で、前記同相成分はデータ信号で夫々変調された成分であり、
前記AltBOC信号を中間周波信号に変換し、前記中間周波信号の帯域を制限し、前記帯域が制限された中間周波信号を標本化し、標本化信号を取得する工程と、
搬送波の位相を生成し、前記搬送波の位相だけ前記標本化信号の位相を回転する工程と、
前記位相を回転した標本化信号の相関を計算する工程を含む。
【0029】
本発明の復調方法は、前記位相を回転した標本化信号の相関を計算するために使用される疑似乱数符号と副搬送波の位相を、副搬送波毎に、生成する工程を含む。
【0030】
本発明の復調方法は、各副搬送波の疑似乱数符号を位相角に変換し、副搬送波の時間通りの位相角と、前記時間通りの位相角より進んだ少なくとも1つの位相角と、前記時間通りの位相角より遅れた少なくとも1つの位相角とを取得する工程を含み、前記相関を計算する工程は、副搬送波毎に、前記位相を回転した標本化信号の位相を前記時間通りの位相角と、前記時間通りの位相角より進んだ少なくとも1つの位相角と、前記時間通りの位相角より遅れた少なくとも1つの位相角の夫々だけ回転し、時間通りの位相角だけ位相を回転した信号と、時間通りの位相角より進んだ少なくとも1つの位相角だけ位相を回転した信号と、時間通りの位相角より遅れた少なくとも1つの位相角だけ位相を回転した信号とを取得する工程と、前記位相を回転した各信号を予め定義された時間だけ積分する工程を含む。
【0031】
本発明の復調方法は、前記位相を回転した標本化信号の相関を計算する前に、前記位相を回転した標本化信号の位相を副搬送波の位相だけ回転し、副搬送波毎に、位相を回転した標本化信号を取得する工程を含む。
【0032】
本発明の復調方法は、更に、前記疑似乱数符号のビットをシフトし、時間通りの疑似乱数符号と、時間より進んだ少なくとも1つの疑似乱数符号と、時間より遅れた少なくとも1つの疑似乱数符号とを取得する工程を含み、前記相関を計算する工程は、前記時間通りの疑似乱数符号、前記時間より進んだ少なくとも1つの疑似乱数符号及び前記時間より遅れた少なくとも1つの疑似乱数符号と前記位相を回転した各信号とを合成し、合成した各信号を予め定義された時間だけ積分し、副搬送波毎に、時間通りの相関信号と、時間より進んだ少なくとも1つの相関信号と、時間より遅れた少なくとも1つの相関信号とを取得する工程を含む。前記復調方法は、副搬送波毎に、前記時間より進んだ少なくとも1つの相関信号の位相と前記時間より遅れた少なくとも1つの相関信号の位相を一定の位相角だけ回転する工程と、前記相関信号の加算と、一定の位相角だけ位相を回転した相関信号の加算と、一定の位相角だけ位相を回転した相関信号の加算とを実行し、加算した結果の相関信号を取得する工程とを有する低速の後工程を含む。
【0033】
本発明の復調方法は、副搬送波毎に、合成搬送波と副搬送波の合成周波数を決定する工程を含み、前記疑合成搬送波と副搬送波の周波数を使って、前記搬送波の位相及び副搬送波の位相だけ位相を回転する工程が1つの位相を回転する工程に合成する。
【0034】
本発明の復調方法は、前記相関を計算する工程が、副搬送波毎に、前記位相を回転した標本化信号と前記副搬送波の疑似乱数符号とを合成する工程と、この合成で得た信号を予め定義された時間で積分し、相関信号を取得する工程とを含む。
【0035】
本発明の復調方法は、更に、低速の相関後工程を含み、この相関後工程は、副搬送波の相関信号から合成相関信号を合成し、副搬送波の相関信号から合成相関信号を合成し、前記合成相関信号は、前記搬送波の位相を回転する工程を制御する発振器を駆動するPLL弁別の入力として使用され、前記合成相関信号は、前記搬送波の位相を回転する工程を制御する発振器を駆動するPLL弁別の入力として使用される。
【0036】
本発明の復調方法は、次式を用い、
CE5,EmL= j(CE5a,0−CE5b,0)
前記副搬送波(E5a, E5b)の相関信号(CE5a,0, CE5b,0)から合成相関信号CE5,EmLを取得する。
【0037】
本発明の復調方法は、次式を用いてDLL弁別を実行し、
D = Real[CE5,EmL・C*E5,0]
記号Realは、カッコ内の複素数の実数部を返す関数を示し、
記号Dは、前記疑似乱数符号及び各副搬送波の位相を生成する発振器を駆動するために使用される信号である。
【0038】
本発明の復調方法は、前記DLL弁別では、前記局部発振器を駆動するための信号Dが、
D = Imag[CE5b,0・C*E5a,0]
で定義され、内積を算出し、算出した内積の虚部から前記信号Dを取得する。
【0039】
本発明の復調器は、疑似乱数符号で変調された直交成分と同相成分とを有する少なくとも2つの副搬送波を含む複数のAltBOC信号を復調する装置において、前記副搬送波は、データ無しのパイロット信号で変調された直交成分と、データ信号で変調された同相成分とを有する。本発明の復調器は、上述の方法に基づいて前記AltBOC信号を復調する手段を備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態のAltBOC信号を復調する受信機及びその方法について説明する。AltBOC復調方法では、パイロットチャンネルが信号E5aQ, E5bQの合成で形成され、AltBOCパイロット信号が、C3, C4成分からできている。
【0041】
ここで、ωs は、側波帯のオフセット信号の角周波数、ωs = 2πfS, fS = l5.345 MHzである。
【0042】
原理的には、副搬送波の複素共役を掛けた符号列CiとSP(t)の相関を計算し、例えば、C3(t)成分をトラッキングすること、その成分が復調される。受信機は、C3(t)・e―j(ωst+π/2)との相関を計算する必要がある。無限の広帯域を仮定すると、相関関数CE5bQ(τ)が容易に導き出される。
【0043】
ここで、記号 ∝ は比例関係にあることを示し、
関数triangle(τ)= 1−|τ|(|τ|<TC), triangle(τ)= 0(これ以外のとき)であり、
記号τは、受信した信号と受信機内で生成される符号及び副搬送波との間の時間差であり、
記号Tintは、積分時間であり、
記号TCは、単位時間当たりの符合長である。
【0044】
信号CE5bQ(τ)の変化が、符号トラッキングエラーの関数として図2に示されている。曲線17及び18は、この関数の実成分(I)及び虚成分(Q)であり、曲線16は、この関数の大きさを示している。τの複素関数であり、符号と副搬送波がずれているとき、エネルギーがIブランチからQブランチに移動する。符号と副搬送波のズレが完全に取り除けないとき、相関ピークをトラッキングすることはできない。搬送波ループが符号ループに比べて早いのでQブランチのエネルギーがゼロになり、結果として、符号ループがBPSK相関ピークとなる。
【0045】
BOC方式を使うために必要な情報は、もう一方の側波帯が2fS=ωs/πで送信される。相関関数CE5aQ(τ)は、SP(t)とC4(t)・ej(ωst+π/2)の相関を計算することによって与えられる。
【0046】
図3のフレネルダイアグラムから複素相関CE5aQ(τ)及びCE5bQ(τ)が直感的に理解できる。このダイアグラムでは、2つの相関がI及びQ面上のベクトルとして表されている。符号遅延τが増すとき、CE5aQ及びCE5bQは、+ωst及び−ωstだけ夫々回転し、振幅がtriangle関数に従って増加するので、図に示すように2つの螺旋となる。
【0047】
合成相関ピーク関数(combined correlation peak function)は、2つの相関CE5aQとCE5bQを加算することで得られ、それは図3のベクトルの和に対応している。
【0048】
図4に示すように、AltBOC相関ピーク関数に対応する関数CE5Q(τ)は、全符号遅れに対して実数(曲線36)である。虚部(曲線17)はゼロであり、それ故、符号トラッキングに使用される。
【0049】
パイロット信号のチャンネルでは、合成相関信号E5a/E5bは、E5aのピークとE5bのピークの和である。データ信号のチャンネルでは、同じ原理が使用される。しかしながら、データビットを合成前に取り除く必要がある。E5データ相関ピークが次式で与えられる。
【0050】
このビット評価プロセスは、ビットエラーの可能性が高い、すなわち、信号対ノイズ比(C/N0)が低いところで実行される。
【0051】
本発明では、AltBOC復調器の5つの実施例が得られる。相関前工程と相関後工程とを明確に区分して、AltBOCのベースバンド処理が実行される。
【0052】
AltBOC復調器は、パイロット信号がトラッキングされることを仮定している。しかしながら、データチャンネルがトラッキングされてもよい。
【0053】
AltBOC相関ピークは、受信した信号とC3(t)・e−j(ωst+π/2)及びC4(t)・ej(ωst−π/2)との相関とそれら2つの相関の和を取ることが示された。受信機では、符号及び搬送波の局部発振器を共有する2つの特定のチャンネルで、これが実行される。
【0054】
以上説明したように、C3成分の相関は、受信信号とC3(t)・e−j(ωst+π/2)との相関を含んでいる。この動作は、受信信号を−ωst−π/2だけ回転し、C3にPRN符号列を掛け、積分することに等しい。この乗算は、符合が「1」のとき、0度の回転であり、符合が「−1」のとき、180度の回転である。以上から、図5に示されるAltBOC復調器が導かれる。
【0055】
図5に示すように、AltBOC復調器は、アンテナ1を介して視野内の複数の人工衛星からのAltBOC符号が含まれる高周波信号(RF信号)を受信する。RF信号は、RF/IF部2に入力される。RF/IF部2では、受信した高周波信号を受信器の各信号と混合可能な中間周波信号(IF信号)に変換し、帯域通過フィルタでIF信号の帯域を制限し、帯域が制限されたIF信号をナイキストの定理が満たされるレートでサンプリングし、既知の方法でNビットの同相成分(I)と直交成分(Q)を生成する。帯域通過フィルタの帯域幅は、AltBOC複合信号を通過させるに十分な広さがあり、約51MHzである。帯域幅が広い場合には、受信した符号の変化も比較的に鋭く、相関のピークもはっきりしている。
【0056】
AltBOC復調器は、例えば、NCO型の局部発振器4を備えている。この局部発振器4は、中間周波信号に同期し、Mビットの位相回転角を生成し、NビットのIF信号を受け取っている位相回転器3に加える。位相回転器3は、局部発振器4からの位相回転角でIF信号の位相を回転し、位相を回転したIF信号を並列接続の3つの位相回転器25, 26, 27に出力する。次いで、3つの積分器28, 29, 30が、位相回転器25, 26, 27からの信号を積分時間Tintで積分する。
【0057】
AltBOC復調器は、更に、局部発振器(NCO)5を備えている。この局部発振器5は、チップレートfCの信号と同期し、周波数fS = 1.5fCの副搬送波を生成し、副搬送波の位相生成器21とE5b符号生成器21を駆動している。E5b符号生成器21の出力がPRN位相検出器22と接続されている。副搬送波位相生成器20は、符号の局部発振器(NCO)5からのチップレートfSの信号でMビットの副搬送波の位相を生成する。E5bQ符号生成器21は、符号の局部発振器(NCO)5からのチップレートfCの信号でE5bQ符号(0又は1)を生成する。PRN位相検出器は、符号列(0又は1)を位相回転角0又はπに変換する。
【0058】
副搬送波の位相生成器の出力信号とPRN位相検出器の出力信号を加算器23で加算する。加算器23の出力信号(Mビットで符号化された実数)が、マルチビット遅延線の3つのセルE, P, Lを制御するための位相シフト信号であり、マルチビット遅延線のセルE, P, Lは、時間通りのPRN信号と、位相の進んだPRN信号と、位相の送れたPRN信号とを生成し、位相シフトした信号として位相回転器25, 26, 27に加えられる。
【0059】
積分器28乃至30からの相関信号CE5b,−1, CE5b,0, CE5b,1が弁別器(discriminators)に入力され、弁別器は、局部発振器4, 5を制御するために使用される符号と搬送波の位相ズレを検出する。
【0060】
図5の復調器は、図1の従来のAltBOC復調器と比較して、2つの大きな相違点がある。1つは、遅延線7への入力が実数値信号の形での位相シフトである。もう1つは、積分前の掛け算が位相回転に置き換えられている。
【0061】
この構成は、図1の標準的な構成の復調器よりも小さいけれど、従来の1ビット遅延器の構成よりも大きい。
【0062】
図5の復調器は、E, P, L位相回転器25, 26, 27が同じ周波数及び一定の位相差で回転、すなわち、P位相回転器26で位相シフト−ωst−π/2を加え、E位相回転器25で位相シフト−ωs(t+dTC/2)−π/2を加え、L位相回転器27で位相シフト−ωs(t−dTC/2)−π/2を加えるので大幅に改善される。ここで、記号dは、±ωsdTC/2の一定の位相差であり、積分後に加えられる。
【0063】
図6は、図5の復調器より更に最適化され、相違点は以下の通りである。
【0064】
3つの位相回転器25, 26, 27が掛け算器33, 34, 35に置き換えられている。
【0065】
副搬送波の位相回転器(E5bQ)31が搬送波の位相回転器3と掛け算器33, 34, 35の夫々の間に挿入され、e−j(ωst+π/2)だけ位相を回転している。
【0066】
マルチビットの遅延線24が1ビットの遅延線32に置き換えられ(PRN位相検出器は除去され)、E5b位相発生器で直接制御されている。
【0067】
2つの掛け算器36, 37がE及びL積分器28, 29の出力信号にe−jα, ejαだけ挿入している。
【0068】
掛け算器36, 37は、相関後の(積分後の)低速の工程に属し、これ以外は、相関が計算される前の工程で高速で実行される。
【0069】
従来のBPSK復調器と比較すると、副搬送波の位相回転器31が付加されている。副搬送波の位相回転器31の位相は、符号の発振器(NCO)5で制御される。α=ωsdTC/2の場合、図5の復調器の構成と数学的に等価である。しかしながら、それ以外の値の場合、位相差を変えることができる。
【0070】
図5及び図6のAltBOC復調器は、簡潔に説明するため、3つの複素相関器(時間通りの位相のもの、進んだ位相のもの、及び遅れた位相のもの)を備えるとしたが、更に2つの相関器(更に進んだ位相のものと遅れた位相のもの)を備えてもよい。
【0071】
図5及び図6の復調器は、任意の数の相関器にまで拡張される。例えば、n個の遅れ位相の相関器とm個の進み位相の相関器が使用され、相関器に遅延線のセルから信号が夫々供給される。記号CE5b.0は、時間通りの位相の相関器からの信号に対応している。一般に、進み位相及び遅れ位相の相関は、遅延線のセルからの信号を用いて、時間通りの位相の相関に対して算出され、記号CE5b,1, CE5b,−1で表される。
【0072】
図5及び図6は、復調器の副搬送波E5a, E5bの各チャンネルの構成を示している。AltBOC受信機では、E5信号の2つのチャンネルが纏められ、それらの相関が加算され、AltBOC相関信号が生成される。図6の復調器から導かれた合成チャンネルが図7に示されている。
【0073】
図7の復調器は、RF/IF部2と、位相回転器(Carrier rotator)3と、搬送波及び符号の局部発振器(NCO)4, 5を備えている。
【0074】
復調器は、副搬送波E5a, E5b毎に、副搬送波の位相回転器31a, 31bと、遅延器32a, 32bに供給するE5a/E5b符号生成器21a, 21bと、3つの相関器E, P, Lを含んでいる。相関器E, P, Lは、掛け算器33a, 34a, 35a, 33b, 34b, 35bと積分器28a, 29a, 30a, 28b, 29b, 30bを含んでいる。副搬送波E5a, E5b夫々の位相を進めた分岐と位相を遅らせた分岐は、要素e−jα及びejαを掛ける掛け算器36a, 37a, 36b, 37bを含んでいる。副搬送波の位相回転器31bは、e−j(ωs+π/2)だけ位相を回転し、一方、副搬送波の位相回転器31aは、ej(ωs+π/2)だけ位相を回転する。
【0075】
チャンネルE5aは、符号の局部発振器(NCO)5と副搬送波の位相回転器(E5aQ)31aの間に設けられた掛け算器41aを備えている。掛け算器41aは、符号の局部発振器(NCO)5からの信号に−1に等しい要素を掛けている。加算器42乃至44は、2つのチャンネル(副搬送波E5a及びE5b)の出力を加算し、相関信号CE5,1、CE5,0、CE5,−1を出力する。
【0076】
式(4)及び式(5)を展開すると、相関CE5b,k、CE5a,kの式(8)乃至(13)が得られる。
【0077】
ここで、α=ωsdTC/2=2πfSdTC/2であり、間隔dは、遅延線32のクロック周波数によって決定される。間隔dは、一般に、0.1から1までの値が採用される。
【0078】
復調器は、相関CE5,kを使用して符号の位相及び搬送波の位相を弁別する。弁別器の出力は、符号及び位相のトラッキングエラーに比例している。
【0079】
PLL弁別器で使用される信号は、時間通りの相関信号CE5,0で、DLL弁別器で使用される信号は、進みの相関信号と遅れの相関信号との差分が示された合成相関信号CE5,EmLである。
【0080】
d=1/(2fSTC)=1/(2*15.345/10.23)=1/3の場合、α=π/2となり、合成相関信号CE5,EmLは、小さいトラッキングエラーτに対するj(CE5a,0−CE5b,0)に比例することを示している。このため、符号及び搬送波のトラッキングが時間通りの相関(CE5a,0, CE5b,0)から算出され、構成の複雑が低減される。
【0081】
この特性が、α=π/2を考慮し、式(14)に式(8)乃至(13)を代入し、相関CE5,EmLの式を書き換えると明らかになる。
【0082】
一方、符号トラッキングエラーが十分小さい(τ<<1)の場合には、j(CE5a,0−CE5b,0)は次のようになる。
【0083】
この関係は、相関相関CE5,EmLがj(CE5a,0−CE5b,0)に比例することを示している。要素(2−d)は、単に、増幅要素であることには関係ない。
【0084】
d=1/3の場合、図8に示された構成と図7に示された構成は等価となる。
【0085】
この構成では、符号遅延線32a及び32bを備えておらず、副搬送波毎に、1つの相関器を有している。各相関器は、副搬送波E5a、E5bと対応する位相回転器31a、31bの出力と副搬送波E5a、E5bと対応する符号生成器21a、21bからの符号を受け取る掛け算器51a、51bと、1つの積分器52a、52bを有している。積分器52a、52bの出力CE5a,0及びCE5b,0は、時間通りの相関信号CE5,0を取得するために加算器63に加えられ、時間より進んだ位相の相関信号と時間より遅れた位相の相関信号との差分を示す合成相関信号CE5,EmL=j(CE5a,0−CE5b,0)を取得するために比較器64とjを掛ける掛け算器65に加えられる。
【0086】
この構成では、副搬送波毎に相関器が1つなので、復調器の構成が非常に簡易化され、ゲートカウント(gate count)という点から見て、非常に効率よく改善されている。
【0087】
最後に示した復調器では、時間より進んだ位相の相関信号と時間より遅れた位相の相関信号の相関を用いずにAltBOC信号をトラッキングしている。図9に示すように、フレネルダイアグラムに描くと直感的に理解できる。符号ズレτは、相関信号CE5a,0と相関信号CE5b,0の間の角度に比例し、相関ベクトルは、φ=2ωstである。また、ダイアグラム上に「E-L Corr」と記され、ベクトルCE5a,0からベクトルCE5b,0を差し引き、90度だけ回転することによって得られるベクトルj(CE5a,0−CE5b,0)は実数で、大きさは角度φに比例している。このため、AltBOC符号のトラッキングに時間より進んだ位相の相関信号と時間より遅れた位相の相関信号を用いずに符号ズレが時間通りの相関信号から取得される。
【0088】
図10の受信機は、図8のAltBOC復調器と、局部発振器4及び5を制御するPLL(Phase-Lock Loop)部及びDLL(Delay-Lock Loop)部を備えている。
【0089】
PLL部は、弁別器71を有し、弁別器71の出力PがPLLフィルタ72で濾波され、搬送波の局部発振器(NCO)4に加えられる。PLL弁別器71は、逆正接関数弁別器(arctan discriminator)であり、複素数CE5,0の角度を算出する。
【0090】
DLL部は、相関信号CE5,EmLを受け取るDLL弁別器と、符号の局部発振器(NCO)5と接続されるDLLフィルタ76とを備えている。このDLL弁別器は内積型であり、信号D = Real(CE5,EmL・C*E5,0)を算出する。DLL弁別器は、信号CE5,0が加えられる複素共役関数部73と、掛け算器65でjが掛けられた信号と複素共役関数部73からの信号との掛け算を実行する掛け算器74とを備えている。掛け算器74の複素信号の実数部を取り出す関数部75で信号Dが取得される。
【0091】
次のような代数操作で、図11に示された受信機が図10に示された受信機から導かれる。
【0092】
図11のDLL弁別器は、相関信号CE5a,0が入力される複素共役関数部81と、共役関数部81からの信号に相関信号CE5b,0を掛ける掛け算器82とを備えている。虚部抽出部83は、複素信号の虚部を返す関数Imag()を用いて掛け算器82からの複素信号の虚部を示す信号Dとして取得する。
【0093】
図11の受信機の変形態様として、虚部抽出部が角度演算部(すなわち、arctan弁別器71と機能が同じ)で置き換えられてもよい。
【0094】
図11の受信機は、図12に示すように更に最適化可能である。搬送波の位相回転器3の位相回転とその後に続く副搬送波の位相回転器31a, 31bの位相回転とを1つの位相回転に合成することができる。
【0095】
図12の受信機は、(副搬送波毎に)、搬送波の位相回転器3と、2つの局部発振器31a, 31bと、図11の掛け算器41aが、2つの位相回転器92a, 92bに置き換えられる。位相回転器92a, 92bは、RF/IF部2からの信号を受け取る。符号の局部発振器4の副搬送波の位相と搬送波の局部発振器3の位相とが加算器93aで加算され、搬送波の局部発振器3の位相と副搬送波の局部発振器4の位相とが加算器93bで加算される。加算結果は、チャンネルE5a, E5bの位相回転器92a, 92bに加えられる。
【0096】
図13の受信機は、これ以前に示した受信機の符号の局部発振器(NCO)が、更に簡単な構成の局部発振器(NCO)95と掛け算器96に置き換えられている。掛け算器96は、加算器93a, 93bに副搬送波の周波数fSが加えられるようチップレート(code chipping rate)fCを1.5倍している。PLLフィルタ72の出力は、チャンネルE5a, E5b夫々の搬送波の局部発振器(NCO)91a, 91bを駆動する加算器93a, 93bに加えられる。
【0097】
副搬送波E5aと副搬送波E5bの相関前の構成は同じである。副搬送波毎に、位相回転器92a, 92bと、局部発振器(NCO)91a, 91bと、符号生成器21a, 21bと、相関器とを備えている。更に、符号の局部発振器(NCO)がチャンネルE5a, E5b毎に設けられた場合、従来のBPSK(Binary Phase-Shift Keying)と同じで、AltBOC/BPSK受信機は、大いにメリットがある。
【0098】
言うまでもなく、図12及び13の受信機の構成は、図5乃至7の復調器にも当てはめられる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】従来の復調器の構成を示すブロック図
【図2】AltBOC信号の各成分を復調するための相関関数示すブロック図
【図3】信号成分E5aQ及びE5bQの相関関数のフレネルダイアグラムを示す図
【図4】信号成分E5aQとE5bQを合成する相関ピーク関数を示す図
【図5】本発明の第1の実施の形態のAltBOC復調器の構成を示すブロック図
【図6】本発明の第2の実施の形態のAltBOC復調器の構成を示すブロック図
【図7】図6に示された2チャンネルのAltBOC復調器の構成を示すブロック図
【図8】本発明の第3の実施の形態のAltBOC復調器の構成を示すブロック図
【図9】図8に示されたAltBOC復調器で得られる信号成分E5aQ及びE5bQの相関関数のフレネルダイアグラムを示す図
【図10】図8に示されたAltBOC復調器を備える第1の実施の形態のAltBOC受信機の構成を示すブロック図
【図11】図8に示されたAltBOC復調器を備える第2の実施の形態のAltBOC受信機の構成を示すブロック図
【図12】図11に示された受信機から派生した第3の実施の形態のAltBOC受信機の構成を示すブロック図
【図13】図11に示された受信機から派生した第4の実施の形態のAltBOC受信機の構成を示すブロック図
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位システム(Global Navigation Satellite System)の受信機(以下単に、“(GNSS)受信機”という)に関し、詳しくは、ガリレオの複数の人工衛星からの信号(alternate binary offset carrier satellite signals、以下単に、“AltBOC信号”という)を処理する受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
測位システム(Global Navigation Satellite System)の受信機(以下単に「受信機」という。)は、軌道上の複数の測位用人工衛星からの信号に基づいて位置を決定する。各人工衛星は、少なくとも1つの搬送波を使って信号を送信している。搬送波は、“1”及び“0”の乱数列からなる2進疑似乱数符号(PRN)で変調されている。2進疑似乱数符号(PRN)の“1”及び“0”は、「コードチップ(code chips)」といい、コードチップ時間(code chip time)での“1”から“0”又は“0”から“1”への遷移を「コードチップ遷移(code chip transitions)」という。各人工衛星は、固有の2進疑似乱数符号(PRN)を使用し、GNSS受信機は、信号に含まれる2進疑似乱数符号(PRN)を決定することによって受信した信号と人工衛星とを関連付けることができる。
【0003】
GNSS受信機は、人工衛星が信号を送信した時間とその受信機が信号を受信した時間との時間差を算出し、算出した時間差に基づいて人工衛星から受信機までの距離又は疑似レンジを算出する。同様にして、少なくとも4つの人工衛星から受信機までの距離又は疑似レンジを算出し、算出した距離又は疑似レンジを用いて、その受信機の位置を決定する。
【0004】
GNSS受信機は、時間差を決定するため、通信機内で生成されたPRN符号と受信した信号のPRN符号とを同期させ、通信機内で生成されたPRN符号が受信したPRN符号に対してどれ位シフトしているかを判定し、距離又は疑似レンジを算出する。更に詳しくは、送信機内で生成したPRN符号と人工衛星から受信したPRN符号とを合わせ、時間差を決定し、地球上の位置を決定する。
【0005】
符号の同期動作は、人工衛星からのPRN符号の捕捉動作とPRN符号のトラッキング動作を含んでいる。GNSS受信機は、PRN符号を捕捉するために相関を計算する。GNSS受信機は、PRN符号の捕捉後、符号のトラッキングを実行する。通常、(i)受信した信号のPRN符号と受信機内の位相を進めたPRN符号との相関と(ii)受信した信号のPRN符号と受信機内の位相を遅らせたPRN符号との相関との差分を算出する。GNSS受信機は、受信した信号のPRN符号と受信機内で生成したPRN符号のズレに比例する誤差信号を生成する遅延ロックループ(DLL)でその差分を使用する。誤差信号は、PRN符号生成器を制御するために使用され、PRN符号生成器は、DLL誤差信号を最小にするために通信機内で生成するPRN符号をシフトする。
【0006】
GNSS受信機は、一般には、受信機内で生成される搬送波との相関を計算し、人工衛星からの搬送波と受信機内で生成される搬送波とを一致させる。これを実行するため、受信機は、搬送波トラッキングPLL(Phase Lock Loop)を使用する。
【0007】
欧州委員会(European Commission)及び欧州宇宙機構(European Space Agency)は、ガリレオとして知られる測位システム(GNSS)を開発している。ガリレオの人工衛星は、E5a帯域(1176.45MHz)の2つの信号とE5b帯域(1207.14MHz)の2つの信号を、AltBOC変調を用いて、中心周波数が1191.795MHzで70MHz以上の広帯域の1つの信号に合成し、合成した信号を送信している。AltBOC信号の生成は、http://europa.eu.int/comm./dgs/energy_transport/galileo/documents/technical_en.htm の the Galileo Signal Task Force of the European commission "Status of Galileo Frequency and Signal Design", G. W. Hein, J. Godet, JX. Issler, J.C. Martin, P. Erhard, R. Lucas-Rodriguez and T. Pratt, 25.09.2002.に開示されている。ガリレオの人工衛星は、夫々独自のPRN符号を送信し、受信機は、受信した信号と人工衛星とを関連付けている。したがって、受信機は、人工衛星が信号を送信した時間と受信機が信号を受信した時間の時間差に基づいて距離又は疑似レンジを決定する。
【0008】
LOC信号(standard linear offset Carrier)が時間領域で正弦波信号sin(ωot)を変調し、その信号の上側波帯とそれに対応する下側波帯に対する周波数をシフトする。BOC変調は、矩形波sign(sin(ωot))を使って周波数シフトを達成する。そして、BOC(fS, fC)と示される。記号fSは、副搬送波(矩形波)の周波数であり、記号fCは、コードチッピングレートである。BOC(15.345MHz, 10.23MHz)の場合、通常、BOC(15, 10)と略記される。
【0009】
複素指数関数ejω0tによる時間領域での信号の変調は、信号を上側波帯にシフトする。AltBOC変調は、複素指数関数又は副搬送波で変調されたE5a及びE5bの帯域の信号を生成することであり、生成された信号がBOC信号(BOC like signal)として受信される。E5a及びE5bの各帯域は、同相成分(I)及び直交成分(Q)を下側波帯にシフトされたE5a符号及び上側波帯にシフトされたE5b符号と関連付けている。直交成分はパイロット信号で変調され、同相成分はデータ信号で変調される。
【0010】
AltBOC変調は、E5a(I及びQ)信号とE5b(I及びQ)信号が、従来の2進位相変調(Binary Phase Shift Keying(BPSK(10))として独立に処理でき、トラッキングノイズやマルチパスに関して非常に性能が向上している。
【0011】
AltBOC変調からの復調では、ベースバンドAltBOC信号がAltLOC信号に近似される。
【0012】
C1(t)は、E5b成分(E5bI)のPRN符号で、d1(t)は、対応するビット変調である。
【0013】
C2(t)は、E5b成分(E5aI)のPRN符号で、d2(t)は、対応するビット変調である。
【0014】
C3(t)は、E5bパイロット成分(E5bQ)のPRN符号である。
【0015】
C4(t)は、E5aパイロット成分(E5aQ)のPRN符号である。
【0016】
指数関数は、E5a及びE5bの副搬送波の変調を示す。
【0017】
ωsは、側波帯オフセット信号の角周波数であり、ωs=2πfS, fS=15.345MHsである。
【0018】
実際には、式S(t)が付加的な項を含み、各副搬送波が量子化される。説明を簡略にするため、式には含めていない。式S(t)は、1191.795MHzの搬送波E5で変調される。
【0019】
文献には、その位置から見えるところにある人工衛星からのAltBOCが記述され、受信機側の処理は僅かであった。
【0020】
非特許文献「Comparison of AWGN Code Tracking Accuracy for Alternative-BOC, complex-LOC and complex-BOC Modulation Options in Galileo E5-Band, M. Soellner and Ph. Erhard, GNSS 2003, April 2003」には、図1に示すように、AltBOCパイロット信号成分をトラッキングするAltBOC受信機が開示されている。
【0021】
図1において、受信機は、アンテナ1を介して、見えるところにある人工衛星からのAltBOC複素符号を含む信号を受信する。受信した高周波信号(RF信号)がRF/IF部2に入力される。RF/IF部2は、従来の方法で高周波信号を受信機内の各信号に応じた中間周波信号(IF信号)に変換する。バンドパスフィルタは、このIF信号を必要な帯域に制限する。次いで、ナイキストの定理に基づいてサンプリングされ、同相成分(I)と直交成分(Q)が生成される。帯域幅は、AltBOC複素符号の第1調波が通過できる幅とする必要がある。広帯域であれば、比較的鋭い符号片遷移となり、明確な相関ピークが得られる。
【0022】
AltBOC受信機は、NCO型の局部発振器4を備えている。この局部発振器4は、中間周波信号に同期し、Mビットの位相回転角を生成し、Nビットの中間周波信号を受け取る位相回転器3に加えている。位相回転器3は、位相を回転したNビットの中間周波信号を3つの複素相関器に加えている。複素相関器は、掛け算器(signal multiplier)10, 11, 12と、積分器(integrator)13, 14, 15を夫々有し、積分器13,14,15は、予め設定された積分時間Tintで掛け算器10, 11, 12から信号を積分している。
【0023】
受信機は、チップレート(code chipping rate)fCに同期するNCO型の局部発振器5を備えている。この局部発振器5は、人工衛星毎に複素PRN符号を生成する。生成されたPRN符号は、マルチビット遅延線7の3つのセルE, P, Lに入力され、時間通りのPRN符号と、時間より進んだPRN符号と、時間より遅れたPRN符号とが生成され、掛け算器10, 11, 12に入力される。
【0024】
積分器13乃至15から出力される信号CE, CP, CLは、局部発振器(NCO Oscillators)4,5を駆動するための搬送波の位相及び符号誤り信号を生成するために使われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
AltBOC 符号生成器6は、複雑でマルチビットであるという問題があった。すなわち、AltBOC 符号生成器6が、パイロット成分だけがトラッキングされることを仮定し、次式を用いてAlt−LOCベースバンド信号を量子化している。
【0026】
このような複雑なベースバンド信号は扱いにくいし、図1に示される受信機は、遅延線、掛け算器、積分器などの各要素が複数のマルチビット数を扱っていることを暗に示している。
【0027】
本発明は、従来の問題を解決するためになされたもので、ガリレオの複数の測位衛星からのAltBOC信号を復調する簡易化された方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
この課題は、本発明の復調方法により達成される。本発明の復調方法は、疑似乱数符号で変調された直交成分と同相成分とを有する少なくとも2つの副搬送波を含む複数のAltBOC信号を復調する復調方法において、
前記直交成分はデータ無しのパイロット信号で、前記同相成分はデータ信号で夫々変調された成分であり、
前記AltBOC信号を中間周波信号に変換し、前記中間周波信号の帯域を制限し、前記帯域が制限された中間周波信号を標本化し、標本化信号を取得する工程と、
搬送波の位相を生成し、前記搬送波の位相だけ前記標本化信号の位相を回転する工程と、
前記位相を回転した標本化信号の相関を計算する工程を含む。
【0029】
本発明の復調方法は、前記位相を回転した標本化信号の相関を計算するために使用される疑似乱数符号と副搬送波の位相を、副搬送波毎に、生成する工程を含む。
【0030】
本発明の復調方法は、各副搬送波の疑似乱数符号を位相角に変換し、副搬送波の時間通りの位相角と、前記時間通りの位相角より進んだ少なくとも1つの位相角と、前記時間通りの位相角より遅れた少なくとも1つの位相角とを取得する工程を含み、前記相関を計算する工程は、副搬送波毎に、前記位相を回転した標本化信号の位相を前記時間通りの位相角と、前記時間通りの位相角より進んだ少なくとも1つの位相角と、前記時間通りの位相角より遅れた少なくとも1つの位相角の夫々だけ回転し、時間通りの位相角だけ位相を回転した信号と、時間通りの位相角より進んだ少なくとも1つの位相角だけ位相を回転した信号と、時間通りの位相角より遅れた少なくとも1つの位相角だけ位相を回転した信号とを取得する工程と、前記位相を回転した各信号を予め定義された時間だけ積分する工程を含む。
【0031】
本発明の復調方法は、前記位相を回転した標本化信号の相関を計算する前に、前記位相を回転した標本化信号の位相を副搬送波の位相だけ回転し、副搬送波毎に、位相を回転した標本化信号を取得する工程を含む。
【0032】
本発明の復調方法は、更に、前記疑似乱数符号のビットをシフトし、時間通りの疑似乱数符号と、時間より進んだ少なくとも1つの疑似乱数符号と、時間より遅れた少なくとも1つの疑似乱数符号とを取得する工程を含み、前記相関を計算する工程は、前記時間通りの疑似乱数符号、前記時間より進んだ少なくとも1つの疑似乱数符号及び前記時間より遅れた少なくとも1つの疑似乱数符号と前記位相を回転した各信号とを合成し、合成した各信号を予め定義された時間だけ積分し、副搬送波毎に、時間通りの相関信号と、時間より進んだ少なくとも1つの相関信号と、時間より遅れた少なくとも1つの相関信号とを取得する工程を含む。前記復調方法は、副搬送波毎に、前記時間より進んだ少なくとも1つの相関信号の位相と前記時間より遅れた少なくとも1つの相関信号の位相を一定の位相角だけ回転する工程と、前記相関信号の加算と、一定の位相角だけ位相を回転した相関信号の加算と、一定の位相角だけ位相を回転した相関信号の加算とを実行し、加算した結果の相関信号を取得する工程とを有する低速の後工程を含む。
【0033】
本発明の復調方法は、副搬送波毎に、合成搬送波と副搬送波の合成周波数を決定する工程を含み、前記疑合成搬送波と副搬送波の周波数を使って、前記搬送波の位相及び副搬送波の位相だけ位相を回転する工程が1つの位相を回転する工程に合成する。
【0034】
本発明の復調方法は、前記相関を計算する工程が、副搬送波毎に、前記位相を回転した標本化信号と前記副搬送波の疑似乱数符号とを合成する工程と、この合成で得た信号を予め定義された時間で積分し、相関信号を取得する工程とを含む。
【0035】
本発明の復調方法は、更に、低速の相関後工程を含み、この相関後工程は、副搬送波の相関信号から合成相関信号を合成し、副搬送波の相関信号から合成相関信号を合成し、前記合成相関信号は、前記搬送波の位相を回転する工程を制御する発振器を駆動するPLL弁別の入力として使用され、前記合成相関信号は、前記搬送波の位相を回転する工程を制御する発振器を駆動するPLL弁別の入力として使用される。
【0036】
本発明の復調方法は、次式を用い、
CE5,EmL= j(CE5a,0−CE5b,0)
前記副搬送波(E5a, E5b)の相関信号(CE5a,0, CE5b,0)から合成相関信号CE5,EmLを取得する。
【0037】
本発明の復調方法は、次式を用いてDLL弁別を実行し、
D = Real[CE5,EmL・C*E5,0]
記号Realは、カッコ内の複素数の実数部を返す関数を示し、
記号Dは、前記疑似乱数符号及び各副搬送波の位相を生成する発振器を駆動するために使用される信号である。
【0038】
本発明の復調方法は、前記DLL弁別では、前記局部発振器を駆動するための信号Dが、
D = Imag[CE5b,0・C*E5a,0]
で定義され、内積を算出し、算出した内積の虚部から前記信号Dを取得する。
【0039】
本発明の復調器は、疑似乱数符号で変調された直交成分と同相成分とを有する少なくとも2つの副搬送波を含む複数のAltBOC信号を復調する装置において、前記副搬送波は、データ無しのパイロット信号で変調された直交成分と、データ信号で変調された同相成分とを有する。本発明の復調器は、上述の方法に基づいて前記AltBOC信号を復調する手段を備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態のAltBOC信号を復調する受信機及びその方法について説明する。AltBOC復調方法では、パイロットチャンネルが信号E5aQ, E5bQの合成で形成され、AltBOCパイロット信号が、C3, C4成分からできている。
【0041】
ここで、ωs は、側波帯のオフセット信号の角周波数、ωs = 2πfS, fS = l5.345 MHzである。
【0042】
原理的には、副搬送波の複素共役を掛けた符号列CiとSP(t)の相関を計算し、例えば、C3(t)成分をトラッキングすること、その成分が復調される。受信機は、C3(t)・e―j(ωst+π/2)との相関を計算する必要がある。無限の広帯域を仮定すると、相関関数CE5bQ(τ)が容易に導き出される。
【0043】
ここで、記号 ∝ は比例関係にあることを示し、
関数triangle(τ)= 1−|τ|(|τ|<TC), triangle(τ)= 0(これ以外のとき)であり、
記号τは、受信した信号と受信機内で生成される符号及び副搬送波との間の時間差であり、
記号Tintは、積分時間であり、
記号TCは、単位時間当たりの符合長である。
【0044】
信号CE5bQ(τ)の変化が、符号トラッキングエラーの関数として図2に示されている。曲線17及び18は、この関数の実成分(I)及び虚成分(Q)であり、曲線16は、この関数の大きさを示している。τの複素関数であり、符号と副搬送波がずれているとき、エネルギーがIブランチからQブランチに移動する。符号と副搬送波のズレが完全に取り除けないとき、相関ピークをトラッキングすることはできない。搬送波ループが符号ループに比べて早いのでQブランチのエネルギーがゼロになり、結果として、符号ループがBPSK相関ピークとなる。
【0045】
BOC方式を使うために必要な情報は、もう一方の側波帯が2fS=ωs/πで送信される。相関関数CE5aQ(τ)は、SP(t)とC4(t)・ej(ωst+π/2)の相関を計算することによって与えられる。
【0046】
図3のフレネルダイアグラムから複素相関CE5aQ(τ)及びCE5bQ(τ)が直感的に理解できる。このダイアグラムでは、2つの相関がI及びQ面上のベクトルとして表されている。符号遅延τが増すとき、CE5aQ及びCE5bQは、+ωst及び−ωstだけ夫々回転し、振幅がtriangle関数に従って増加するので、図に示すように2つの螺旋となる。
【0047】
合成相関ピーク関数(combined correlation peak function)は、2つの相関CE5aQとCE5bQを加算することで得られ、それは図3のベクトルの和に対応している。
【0048】
図4に示すように、AltBOC相関ピーク関数に対応する関数CE5Q(τ)は、全符号遅れに対して実数(曲線36)である。虚部(曲線17)はゼロであり、それ故、符号トラッキングに使用される。
【0049】
パイロット信号のチャンネルでは、合成相関信号E5a/E5bは、E5aのピークとE5bのピークの和である。データ信号のチャンネルでは、同じ原理が使用される。しかしながら、データビットを合成前に取り除く必要がある。E5データ相関ピークが次式で与えられる。
【0050】
このビット評価プロセスは、ビットエラーの可能性が高い、すなわち、信号対ノイズ比(C/N0)が低いところで実行される。
【0051】
本発明では、AltBOC復調器の5つの実施例が得られる。相関前工程と相関後工程とを明確に区分して、AltBOCのベースバンド処理が実行される。
【0052】
AltBOC復調器は、パイロット信号がトラッキングされることを仮定している。しかしながら、データチャンネルがトラッキングされてもよい。
【0053】
AltBOC相関ピークは、受信した信号とC3(t)・e−j(ωst+π/2)及びC4(t)・ej(ωst−π/2)との相関とそれら2つの相関の和を取ることが示された。受信機では、符号及び搬送波の局部発振器を共有する2つの特定のチャンネルで、これが実行される。
【0054】
以上説明したように、C3成分の相関は、受信信号とC3(t)・e−j(ωst+π/2)との相関を含んでいる。この動作は、受信信号を−ωst−π/2だけ回転し、C3にPRN符号列を掛け、積分することに等しい。この乗算は、符合が「1」のとき、0度の回転であり、符合が「−1」のとき、180度の回転である。以上から、図5に示されるAltBOC復調器が導かれる。
【0055】
図5に示すように、AltBOC復調器は、アンテナ1を介して視野内の複数の人工衛星からのAltBOC符号が含まれる高周波信号(RF信号)を受信する。RF信号は、RF/IF部2に入力される。RF/IF部2では、受信した高周波信号を受信器の各信号と混合可能な中間周波信号(IF信号)に変換し、帯域通過フィルタでIF信号の帯域を制限し、帯域が制限されたIF信号をナイキストの定理が満たされるレートでサンプリングし、既知の方法でNビットの同相成分(I)と直交成分(Q)を生成する。帯域通過フィルタの帯域幅は、AltBOC複合信号を通過させるに十分な広さがあり、約51MHzである。帯域幅が広い場合には、受信した符号の変化も比較的に鋭く、相関のピークもはっきりしている。
【0056】
AltBOC復調器は、例えば、NCO型の局部発振器4を備えている。この局部発振器4は、中間周波信号に同期し、Mビットの位相回転角を生成し、NビットのIF信号を受け取っている位相回転器3に加える。位相回転器3は、局部発振器4からの位相回転角でIF信号の位相を回転し、位相を回転したIF信号を並列接続の3つの位相回転器25, 26, 27に出力する。次いで、3つの積分器28, 29, 30が、位相回転器25, 26, 27からの信号を積分時間Tintで積分する。
【0057】
AltBOC復調器は、更に、局部発振器(NCO)5を備えている。この局部発振器5は、チップレートfCの信号と同期し、周波数fS = 1.5fCの副搬送波を生成し、副搬送波の位相生成器21とE5b符号生成器21を駆動している。E5b符号生成器21の出力がPRN位相検出器22と接続されている。副搬送波位相生成器20は、符号の局部発振器(NCO)5からのチップレートfSの信号でMビットの副搬送波の位相を生成する。E5bQ符号生成器21は、符号の局部発振器(NCO)5からのチップレートfCの信号でE5bQ符号(0又は1)を生成する。PRN位相検出器は、符号列(0又は1)を位相回転角0又はπに変換する。
【0058】
副搬送波の位相生成器の出力信号とPRN位相検出器の出力信号を加算器23で加算する。加算器23の出力信号(Mビットで符号化された実数)が、マルチビット遅延線の3つのセルE, P, Lを制御するための位相シフト信号であり、マルチビット遅延線のセルE, P, Lは、時間通りのPRN信号と、位相の進んだPRN信号と、位相の送れたPRN信号とを生成し、位相シフトした信号として位相回転器25, 26, 27に加えられる。
【0059】
積分器28乃至30からの相関信号CE5b,−1, CE5b,0, CE5b,1が弁別器(discriminators)に入力され、弁別器は、局部発振器4, 5を制御するために使用される符号と搬送波の位相ズレを検出する。
【0060】
図5の復調器は、図1の従来のAltBOC復調器と比較して、2つの大きな相違点がある。1つは、遅延線7への入力が実数値信号の形での位相シフトである。もう1つは、積分前の掛け算が位相回転に置き換えられている。
【0061】
この構成は、図1の標準的な構成の復調器よりも小さいけれど、従来の1ビット遅延器の構成よりも大きい。
【0062】
図5の復調器は、E, P, L位相回転器25, 26, 27が同じ周波数及び一定の位相差で回転、すなわち、P位相回転器26で位相シフト−ωst−π/2を加え、E位相回転器25で位相シフト−ωs(t+dTC/2)−π/2を加え、L位相回転器27で位相シフト−ωs(t−dTC/2)−π/2を加えるので大幅に改善される。ここで、記号dは、±ωsdTC/2の一定の位相差であり、積分後に加えられる。
【0063】
図6は、図5の復調器より更に最適化され、相違点は以下の通りである。
【0064】
3つの位相回転器25, 26, 27が掛け算器33, 34, 35に置き換えられている。
【0065】
副搬送波の位相回転器(E5bQ)31が搬送波の位相回転器3と掛け算器33, 34, 35の夫々の間に挿入され、e−j(ωst+π/2)だけ位相を回転している。
【0066】
マルチビットの遅延線24が1ビットの遅延線32に置き換えられ(PRN位相検出器は除去され)、E5b位相発生器で直接制御されている。
【0067】
2つの掛け算器36, 37がE及びL積分器28, 29の出力信号にe−jα, ejαだけ挿入している。
【0068】
掛け算器36, 37は、相関後の(積分後の)低速の工程に属し、これ以外は、相関が計算される前の工程で高速で実行される。
【0069】
従来のBPSK復調器と比較すると、副搬送波の位相回転器31が付加されている。副搬送波の位相回転器31の位相は、符号の発振器(NCO)5で制御される。α=ωsdTC/2の場合、図5の復調器の構成と数学的に等価である。しかしながら、それ以外の値の場合、位相差を変えることができる。
【0070】
図5及び図6のAltBOC復調器は、簡潔に説明するため、3つの複素相関器(時間通りの位相のもの、進んだ位相のもの、及び遅れた位相のもの)を備えるとしたが、更に2つの相関器(更に進んだ位相のものと遅れた位相のもの)を備えてもよい。
【0071】
図5及び図6の復調器は、任意の数の相関器にまで拡張される。例えば、n個の遅れ位相の相関器とm個の進み位相の相関器が使用され、相関器に遅延線のセルから信号が夫々供給される。記号CE5b.0は、時間通りの位相の相関器からの信号に対応している。一般に、進み位相及び遅れ位相の相関は、遅延線のセルからの信号を用いて、時間通りの位相の相関に対して算出され、記号CE5b,1, CE5b,−1で表される。
【0072】
図5及び図6は、復調器の副搬送波E5a, E5bの各チャンネルの構成を示している。AltBOC受信機では、E5信号の2つのチャンネルが纏められ、それらの相関が加算され、AltBOC相関信号が生成される。図6の復調器から導かれた合成チャンネルが図7に示されている。
【0073】
図7の復調器は、RF/IF部2と、位相回転器(Carrier rotator)3と、搬送波及び符号の局部発振器(NCO)4, 5を備えている。
【0074】
復調器は、副搬送波E5a, E5b毎に、副搬送波の位相回転器31a, 31bと、遅延器32a, 32bに供給するE5a/E5b符号生成器21a, 21bと、3つの相関器E, P, Lを含んでいる。相関器E, P, Lは、掛け算器33a, 34a, 35a, 33b, 34b, 35bと積分器28a, 29a, 30a, 28b, 29b, 30bを含んでいる。副搬送波E5a, E5b夫々の位相を進めた分岐と位相を遅らせた分岐は、要素e−jα及びejαを掛ける掛け算器36a, 37a, 36b, 37bを含んでいる。副搬送波の位相回転器31bは、e−j(ωs+π/2)だけ位相を回転し、一方、副搬送波の位相回転器31aは、ej(ωs+π/2)だけ位相を回転する。
【0075】
チャンネルE5aは、符号の局部発振器(NCO)5と副搬送波の位相回転器(E5aQ)31aの間に設けられた掛け算器41aを備えている。掛け算器41aは、符号の局部発振器(NCO)5からの信号に−1に等しい要素を掛けている。加算器42乃至44は、2つのチャンネル(副搬送波E5a及びE5b)の出力を加算し、相関信号CE5,1、CE5,0、CE5,−1を出力する。
【0076】
式(4)及び式(5)を展開すると、相関CE5b,k、CE5a,kの式(8)乃至(13)が得られる。
【0077】
ここで、α=ωsdTC/2=2πfSdTC/2であり、間隔dは、遅延線32のクロック周波数によって決定される。間隔dは、一般に、0.1から1までの値が採用される。
【0078】
復調器は、相関CE5,kを使用して符号の位相及び搬送波の位相を弁別する。弁別器の出力は、符号及び位相のトラッキングエラーに比例している。
【0079】
PLL弁別器で使用される信号は、時間通りの相関信号CE5,0で、DLL弁別器で使用される信号は、進みの相関信号と遅れの相関信号との差分が示された合成相関信号CE5,EmLである。
【0080】
d=1/(2fSTC)=1/(2*15.345/10.23)=1/3の場合、α=π/2となり、合成相関信号CE5,EmLは、小さいトラッキングエラーτに対するj(CE5a,0−CE5b,0)に比例することを示している。このため、符号及び搬送波のトラッキングが時間通りの相関(CE5a,0, CE5b,0)から算出され、構成の複雑が低減される。
【0081】
この特性が、α=π/2を考慮し、式(14)に式(8)乃至(13)を代入し、相関CE5,EmLの式を書き換えると明らかになる。
【0082】
一方、符号トラッキングエラーが十分小さい(τ<<1)の場合には、j(CE5a,0−CE5b,0)は次のようになる。
【0083】
この関係は、相関相関CE5,EmLがj(CE5a,0−CE5b,0)に比例することを示している。要素(2−d)は、単に、増幅要素であることには関係ない。
【0084】
d=1/3の場合、図8に示された構成と図7に示された構成は等価となる。
【0085】
この構成では、符号遅延線32a及び32bを備えておらず、副搬送波毎に、1つの相関器を有している。各相関器は、副搬送波E5a、E5bと対応する位相回転器31a、31bの出力と副搬送波E5a、E5bと対応する符号生成器21a、21bからの符号を受け取る掛け算器51a、51bと、1つの積分器52a、52bを有している。積分器52a、52bの出力CE5a,0及びCE5b,0は、時間通りの相関信号CE5,0を取得するために加算器63に加えられ、時間より進んだ位相の相関信号と時間より遅れた位相の相関信号との差分を示す合成相関信号CE5,EmL=j(CE5a,0−CE5b,0)を取得するために比較器64とjを掛ける掛け算器65に加えられる。
【0086】
この構成では、副搬送波毎に相関器が1つなので、復調器の構成が非常に簡易化され、ゲートカウント(gate count)という点から見て、非常に効率よく改善されている。
【0087】
最後に示した復調器では、時間より進んだ位相の相関信号と時間より遅れた位相の相関信号の相関を用いずにAltBOC信号をトラッキングしている。図9に示すように、フレネルダイアグラムに描くと直感的に理解できる。符号ズレτは、相関信号CE5a,0と相関信号CE5b,0の間の角度に比例し、相関ベクトルは、φ=2ωstである。また、ダイアグラム上に「E-L Corr」と記され、ベクトルCE5a,0からベクトルCE5b,0を差し引き、90度だけ回転することによって得られるベクトルj(CE5a,0−CE5b,0)は実数で、大きさは角度φに比例している。このため、AltBOC符号のトラッキングに時間より進んだ位相の相関信号と時間より遅れた位相の相関信号を用いずに符号ズレが時間通りの相関信号から取得される。
【0088】
図10の受信機は、図8のAltBOC復調器と、局部発振器4及び5を制御するPLL(Phase-Lock Loop)部及びDLL(Delay-Lock Loop)部を備えている。
【0089】
PLL部は、弁別器71を有し、弁別器71の出力PがPLLフィルタ72で濾波され、搬送波の局部発振器(NCO)4に加えられる。PLL弁別器71は、逆正接関数弁別器(arctan discriminator)であり、複素数CE5,0の角度を算出する。
【0090】
DLL部は、相関信号CE5,EmLを受け取るDLL弁別器と、符号の局部発振器(NCO)5と接続されるDLLフィルタ76とを備えている。このDLL弁別器は内積型であり、信号D = Real(CE5,EmL・C*E5,0)を算出する。DLL弁別器は、信号CE5,0が加えられる複素共役関数部73と、掛け算器65でjが掛けられた信号と複素共役関数部73からの信号との掛け算を実行する掛け算器74とを備えている。掛け算器74の複素信号の実数部を取り出す関数部75で信号Dが取得される。
【0091】
次のような代数操作で、図11に示された受信機が図10に示された受信機から導かれる。
【0092】
図11のDLL弁別器は、相関信号CE5a,0が入力される複素共役関数部81と、共役関数部81からの信号に相関信号CE5b,0を掛ける掛け算器82とを備えている。虚部抽出部83は、複素信号の虚部を返す関数Imag()を用いて掛け算器82からの複素信号の虚部を示す信号Dとして取得する。
【0093】
図11の受信機の変形態様として、虚部抽出部が角度演算部(すなわち、arctan弁別器71と機能が同じ)で置き換えられてもよい。
【0094】
図11の受信機は、図12に示すように更に最適化可能である。搬送波の位相回転器3の位相回転とその後に続く副搬送波の位相回転器31a, 31bの位相回転とを1つの位相回転に合成することができる。
【0095】
図12の受信機は、(副搬送波毎に)、搬送波の位相回転器3と、2つの局部発振器31a, 31bと、図11の掛け算器41aが、2つの位相回転器92a, 92bに置き換えられる。位相回転器92a, 92bは、RF/IF部2からの信号を受け取る。符号の局部発振器4の副搬送波の位相と搬送波の局部発振器3の位相とが加算器93aで加算され、搬送波の局部発振器3の位相と副搬送波の局部発振器4の位相とが加算器93bで加算される。加算結果は、チャンネルE5a, E5bの位相回転器92a, 92bに加えられる。
【0096】
図13の受信機は、これ以前に示した受信機の符号の局部発振器(NCO)が、更に簡単な構成の局部発振器(NCO)95と掛け算器96に置き換えられている。掛け算器96は、加算器93a, 93bに副搬送波の周波数fSが加えられるようチップレート(code chipping rate)fCを1.5倍している。PLLフィルタ72の出力は、チャンネルE5a, E5b夫々の搬送波の局部発振器(NCO)91a, 91bを駆動する加算器93a, 93bに加えられる。
【0097】
副搬送波E5aと副搬送波E5bの相関前の構成は同じである。副搬送波毎に、位相回転器92a, 92bと、局部発振器(NCO)91a, 91bと、符号生成器21a, 21bと、相関器とを備えている。更に、符号の局部発振器(NCO)がチャンネルE5a, E5b毎に設けられた場合、従来のBPSK(Binary Phase-Shift Keying)と同じで、AltBOC/BPSK受信機は、大いにメリットがある。
【0098】
言うまでもなく、図12及び13の受信機の構成は、図5乃至7の復調器にも当てはめられる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】従来の復調器の構成を示すブロック図
【図2】AltBOC信号の各成分を復調するための相関関数示すブロック図
【図3】信号成分E5aQ及びE5bQの相関関数のフレネルダイアグラムを示す図
【図4】信号成分E5aQとE5bQを合成する相関ピーク関数を示す図
【図5】本発明の第1の実施の形態のAltBOC復調器の構成を示すブロック図
【図6】本発明の第2の実施の形態のAltBOC復調器の構成を示すブロック図
【図7】図6に示された2チャンネルのAltBOC復調器の構成を示すブロック図
【図8】本発明の第3の実施の形態のAltBOC復調器の構成を示すブロック図
【図9】図8に示されたAltBOC復調器で得られる信号成分E5aQ及びE5bQの相関関数のフレネルダイアグラムを示す図
【図10】図8に示されたAltBOC復調器を備える第1の実施の形態のAltBOC受信機の構成を示すブロック図
【図11】図8に示されたAltBOC復調器を備える第2の実施の形態のAltBOC受信機の構成を示すブロック図
【図12】図11に示された受信機から派生した第3の実施の形態のAltBOC受信機の構成を示すブロック図
【図13】図11に示された受信機から派生した第4の実施の形態のAltBOC受信機の構成を示すブロック図
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疑似乱数符号で変調された直交成分(E5aQ, E5bQ)と同相成分(E5aI, E5bI)とを有する少なくとも2つの副搬送波(E5a, E5b)を含む複数のAltBOC信号を復調する復調方法において、
前記直交成分(E5aQ, E5bQ)はデータ無しのパイロット信号で、前記同相成分(E5aI, E5bI)はデータ信号で夫々変調された成分であり、
前記AltBOC信号を中間周波信号に変換し、前記中間周波信号の帯域を制限し、前記帯域が制限された中間周波信号を標本化し、標本化信号を取得する工程と、
搬送波の位相を生成し、前記搬送波の位相だけ前記標本化信号の位相を回転する工程と、
前記位相を回転した標本化信号の相関を計算する工程と、
前記位相を回転した標本化信号の相関を計算するために使用される疑似乱数符号と副搬送波(E5a, E5b)の位相を、副搬送波毎に、生成する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
各副搬送波の疑似乱数符号を位相角に変換し、副搬送波の時間通りの位相角と、前記時間通りの位相角より進んだ少なくとも1つの位相角と、前記時間通りの位相角より遅れた少なくとも1つの位相角とを取得する工程を含み、
前記相関を計算する工程は、副搬送波毎に、前記位相を回転した標本化信号の位相を前記時間通りの位相角と、前記時間通りの位相角より進んだ少なくとも1つの位相角と、前記時間通りの位相角より遅れた少なくとも1つの位相角の夫々だけ回転し、時間通りの位相角だけ位相を回転した信号と、時間通りの位相角より進んだ少なくとも1つの位相角だけ位相を回転した信号と、時間通りの位相角より遅れた少なくとも1つの位相角だけ位相を回転した信号とを取得する工程と、前記位相を回転した各信号を予め定義された時間(Tint)だけ積分する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記位相を回転した標本化信号の相関を計算する前に、前記位相を回転した標本化信号の位相を副搬送波の位相だけ回転し、副搬送波(E5a, E5b)毎に、位相を回転した標本化信号を取得する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
更に、前記疑似乱数符号のビットをシフトし、時間通りの疑似乱数符号と、時間より進んだ少なくとも1つの疑似乱数符号と、時間より遅れた少なくとも1つの疑似乱数符号とを取得する工程を含み、
前記相関を計算する工程は、前記時間通りの疑似乱数符号、前記時間より進んだ少なくとも1つの疑似乱数符号及び前記時間より遅れた少なくとも1つの疑似乱数符号と前記位相を回転した各信号とを合成し、合成した各信号を予め定義された時間(Tint)だけ積分し、副搬送波(E5a, E5b)毎に、時間通りの相関信号(CE5a,0, CE5b,0)と、時間より進んだ少なくとも1つの相関信号(CE5a,−1, CE5b,−1)と、時間より遅れた少なくとも1つの相関信号(CE5a,1, CE5b,1)とを取得する工程を含み、
前記復調方法は、副搬送波毎に、前記時間より進んだ少なくとも1つの相関信号の位相と前記時間より遅れた少なくとも1つの相関信号の位相を一定の位相角(jα, −jα)だけ回転する工程と、前記相関信号(CE5a,0, CE5b,0)の加算と、一定の位相角(jα, −jα)だけ位相を回転した相関信号(CE5a,−1, CE5b,−1)の加算と、一定の位相角(jα, −jα)だけ位相を回転した相関信号(CE5a,1, CE5b,1)の加算とを実行し、加算した結果の相関信号(CE5,1, CE5,0, CE5,−1)を取得する工程とを有する低速の後工程を含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
副搬送波毎に、合成搬送波と副搬送波の合成周波数を決定する工程を含み、
前記疑合成搬送波と副搬送波の周波数を使って、前記搬送波の位相及び副搬送波の位相だけ位相を回転する工程が1つの位相を回転する工程に合成されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記相関を計算する工程は、副搬送波(E5a, E5b)毎に、前記位相を回転した標本化信号と前記副搬送波の疑似乱数符号とを合成する工程と、この合成で得た信号を予め定義された時間(Tint)で積分し、相関信号(CE5a,0, CE5b,0)を取得する工程とを含むことを特徴とする請求項3又は請求項5に記載の方法。
【請求項7】
更に、低速の相関後工程を含み、
この相関後工程は、副搬送波(E5a, E5b)の相関信号(CE5a,0, CE5b,0)から合成相関信号(CE5,0)を合成し、副搬送波(E5a, E5b)の相関信号(CE5,1, CE5,−1)から合成相関信号(CE5,EmL)を合成し、
前記合成相関信号(CE5,0)は、前記搬送波の位相を回転する工程を制御する発振器(4)を駆動するPLL弁別の入力として使用され、
前記合成相関信号(CE5,EmL)は、前記搬送波の位相を回転する工程を制御する発振器(5)を駆動するPLL弁別の入力として使用されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
次式を用い、
CE5,EmL = j(CE5a,0−CE5b,0)
前記副搬送波(E5a, E5b)の相関信号(CE5a,0, CE5b,0)から合成相関信号CE5,EmLを取得することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
次式を用いてDLL弁別を実行し、
D = Real[CE5,EmL・C*E5,0]
記号Realは、カッコ内の複素数の実数部を返す関数を示し、
記号Dは、前記疑似乱数符号及び各副搬送波の位相を生成する発振器(5)を駆動するために使用される信号であることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記DLL弁別では、前記局部発振器(5)を駆動するための信号Dが、
D = Imag[CE5b,0・C*E5a,0]
で定義され、内積を算出し、算出した内積の虚部から前記信号Dを取得することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の方法。
【請求項11】
疑似乱数符号で変調された直交成分(E5aQ, E5bQ)と同相成分(E5aI, E5bI)とを有する少なくとも2つの副搬送波(E5a, E5b)を含む複数のAltBOC信号を復調する装置において、
前記副搬送波(E5a, E5b)は、データ無しのパイロット信号で変調された直交成分(E5aQ, E5bQ)と、データ信号で変調された同相成分(E5aI, E5bI)とを有し、
請求項1乃至10の何れかに記載の方法に基づいて前記AltBOC信号を復調する手段を備えることを特徴とする装置。
【請求項1】
疑似乱数符号で変調された直交成分(E5aQ, E5bQ)と同相成分(E5aI, E5bI)とを有する少なくとも2つの副搬送波(E5a, E5b)を含む複数のAltBOC信号を復調する復調方法において、
前記直交成分(E5aQ, E5bQ)はデータ無しのパイロット信号で、前記同相成分(E5aI, E5bI)はデータ信号で夫々変調された成分であり、
前記AltBOC信号を中間周波信号に変換し、前記中間周波信号の帯域を制限し、前記帯域が制限された中間周波信号を標本化し、標本化信号を取得する工程と、
搬送波の位相を生成し、前記搬送波の位相だけ前記標本化信号の位相を回転する工程と、
前記位相を回転した標本化信号の相関を計算する工程と、
前記位相を回転した標本化信号の相関を計算するために使用される疑似乱数符号と副搬送波(E5a, E5b)の位相を、副搬送波毎に、生成する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
各副搬送波の疑似乱数符号を位相角に変換し、副搬送波の時間通りの位相角と、前記時間通りの位相角より進んだ少なくとも1つの位相角と、前記時間通りの位相角より遅れた少なくとも1つの位相角とを取得する工程を含み、
前記相関を計算する工程は、副搬送波毎に、前記位相を回転した標本化信号の位相を前記時間通りの位相角と、前記時間通りの位相角より進んだ少なくとも1つの位相角と、前記時間通りの位相角より遅れた少なくとも1つの位相角の夫々だけ回転し、時間通りの位相角だけ位相を回転した信号と、時間通りの位相角より進んだ少なくとも1つの位相角だけ位相を回転した信号と、時間通りの位相角より遅れた少なくとも1つの位相角だけ位相を回転した信号とを取得する工程と、前記位相を回転した各信号を予め定義された時間(Tint)だけ積分する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記位相を回転した標本化信号の相関を計算する前に、前記位相を回転した標本化信号の位相を副搬送波の位相だけ回転し、副搬送波(E5a, E5b)毎に、位相を回転した標本化信号を取得する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
更に、前記疑似乱数符号のビットをシフトし、時間通りの疑似乱数符号と、時間より進んだ少なくとも1つの疑似乱数符号と、時間より遅れた少なくとも1つの疑似乱数符号とを取得する工程を含み、
前記相関を計算する工程は、前記時間通りの疑似乱数符号、前記時間より進んだ少なくとも1つの疑似乱数符号及び前記時間より遅れた少なくとも1つの疑似乱数符号と前記位相を回転した各信号とを合成し、合成した各信号を予め定義された時間(Tint)だけ積分し、副搬送波(E5a, E5b)毎に、時間通りの相関信号(CE5a,0, CE5b,0)と、時間より進んだ少なくとも1つの相関信号(CE5a,−1, CE5b,−1)と、時間より遅れた少なくとも1つの相関信号(CE5a,1, CE5b,1)とを取得する工程を含み、
前記復調方法は、副搬送波毎に、前記時間より進んだ少なくとも1つの相関信号の位相と前記時間より遅れた少なくとも1つの相関信号の位相を一定の位相角(jα, −jα)だけ回転する工程と、前記相関信号(CE5a,0, CE5b,0)の加算と、一定の位相角(jα, −jα)だけ位相を回転した相関信号(CE5a,−1, CE5b,−1)の加算と、一定の位相角(jα, −jα)だけ位相を回転した相関信号(CE5a,1, CE5b,1)の加算とを実行し、加算した結果の相関信号(CE5,1, CE5,0, CE5,−1)を取得する工程とを有する低速の後工程を含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
副搬送波毎に、合成搬送波と副搬送波の合成周波数を決定する工程を含み、
前記疑合成搬送波と副搬送波の周波数を使って、前記搬送波の位相及び副搬送波の位相だけ位相を回転する工程が1つの位相を回転する工程に合成されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記相関を計算する工程は、副搬送波(E5a, E5b)毎に、前記位相を回転した標本化信号と前記副搬送波の疑似乱数符号とを合成する工程と、この合成で得た信号を予め定義された時間(Tint)で積分し、相関信号(CE5a,0, CE5b,0)を取得する工程とを含むことを特徴とする請求項3又は請求項5に記載の方法。
【請求項7】
更に、低速の相関後工程を含み、
この相関後工程は、副搬送波(E5a, E5b)の相関信号(CE5a,0, CE5b,0)から合成相関信号(CE5,0)を合成し、副搬送波(E5a, E5b)の相関信号(CE5,1, CE5,−1)から合成相関信号(CE5,EmL)を合成し、
前記合成相関信号(CE5,0)は、前記搬送波の位相を回転する工程を制御する発振器(4)を駆動するPLL弁別の入力として使用され、
前記合成相関信号(CE5,EmL)は、前記搬送波の位相を回転する工程を制御する発振器(5)を駆動するPLL弁別の入力として使用されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
次式を用い、
CE5,EmL = j(CE5a,0−CE5b,0)
前記副搬送波(E5a, E5b)の相関信号(CE5a,0, CE5b,0)から合成相関信号CE5,EmLを取得することを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
次式を用いてDLL弁別を実行し、
D = Real[CE5,EmL・C*E5,0]
記号Realは、カッコ内の複素数の実数部を返す関数を示し、
記号Dは、前記疑似乱数符号及び各副搬送波の位相を生成する発振器(5)を駆動するために使用される信号であることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記DLL弁別では、前記局部発振器(5)を駆動するための信号Dが、
D = Imag[CE5b,0・C*E5a,0]
で定義され、内積を算出し、算出した内積の虚部から前記信号Dを取得することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の方法。
【請求項11】
疑似乱数符号で変調された直交成分(E5aQ, E5bQ)と同相成分(E5aI, E5bI)とを有する少なくとも2つの副搬送波(E5a, E5b)を含む複数のAltBOC信号を復調する装置において、
前記副搬送波(E5a, E5b)は、データ無しのパイロット信号で変調された直交成分(E5aQ, E5bQ)と、データ信号で変調された同相成分(E5aI, E5bI)とを有し、
請求項1乃至10の何れかに記載の方法に基づいて前記AltBOC信号を復調する手段を備えることを特徴とする装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2008−512883(P2008−512883A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529319(P2007−529319)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009952
【国際公開番号】WO2006/027004
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(506010862)ヨーロピアン・スペース・エージェンシー (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009952
【国際公開番号】WO2006/027004
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(506010862)ヨーロピアン・スペース・エージェンシー (3)
【Fターム(参考)】
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