説明

ガルバノスキャナの制御方法、及びガルバノスキャナの制御システム

【課題】ガルバノスキャナに振動や特性ばらつき等の外的要因が発生しても、X軸、Y軸上を移動するガルバノスキャナが常に正確な直線をマーキングできるようにする。
【解決手段】2次元で移動するX軸、Y軸ガルバノスキャナが、X,Y座標の任意の2点A0、B0を移動するとき、移動指令値に基づいてガルバノスキャナが描く非線形な線分(a)とA0、B0を最短距離で結ぶ直線の線分(b)とのずれ量Δx、Δyを補正値とする。そして、移動指令値に対して補正値Δx、Δyを加算又は減算した値をX軸方向、Y軸方向の補正後移動指令値とする。さらに、X軸方向、Y軸方向の補正後移動指令値に基づいて、X軸、Y軸ガルバノスキャナをそれぞれ移動させる。これによって、X軸、Y軸ガルバノスキャナは、それぞれ、ずれ量Δx、Δyをゼロにするように移動するのでX軸、Y軸ガルバノスキャナがA0、B0間で描く線分は線分(b)となり直線化される

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガルバノスキャナの制御方法、及びガルバノスキャナの制御システムに関するものであり、特に、ホスト装置やコントローラなどの上位装置からのデータによってガルバノスキャナを指定の角度位置に制御すると共に、2次元座標の任意の2点間をマーキングする線分の直線性を制御するガルバノスキャナの制御方法、及びガルバノスキャナの制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガルバノスキャナは、レーザ光によりマーキング加工、切断加工または溶接加工などを行うレーザ加工装置等に広く使用されている。このようなガルバノスキャナは、例えば、テレビやパソコンの液晶パネルを加工するためのレーザ加工装置等に利用されている。図1は、ガルバノスキャナを用いたレーザ加工装置を示すシステム構成図である。同図において、レーザ加工装置は、レーザ1、ホストPC2、ガルバノスキャナコントロール用PC3、ガルバノスキャナドライバ4、及びガルバノスキャナ5によって構成されている。レーザ1は、被加工物にレーザ光を照射させるためのレーザ発生装置であり、ホストPC2は、レーザ加工に必要な加工データを出力するホスト装置である。また、ガルバノスキャナコントロール用PC3は、ホストPC2からの加工データにより2軸方向(X軸、Y軸)のガルバノスキャナドライバ4を介して、各軸(X軸、Y軸)のガルバノスキャナ5の動作を制御する。
【0003】
また、ガルバノスキャナコントロール用PC3は、ホストPC2からの加工データに基づいてガルバノスキャナ5の加工位置を計算し、計算後の加工データをガルバノスキャナドライバ4へ出力する。さらに、該ガルバノスキャナドライバ4はガルバノスキャナコントロール用PC3からの加工データを受信して、ガルバノスキャナ5を指定の角度位置に動作させる。尚、ここでは、X軸、Y軸方向の2軸駆動を行う2次元のガルバノスキャナのレーザ加工装置について説明したが、X軸、Y軸、Z軸方向の3軸駆動を行う3次元のガルバノスキャナのレーザ加工装置にも適用することができる。
【0004】
図2は、図1に示すガルバノスキャナによる加工状態を示す説明図である。図2に示すように、各ガルバノスキャナ5の軸端部には、レーザ光を反射させるミラー(ミラー用ホルダを含む)6が取り付けられている。このミラー6がホストPC2から指定された角度位置に動作することにより、レーザ発生装置1からのレーザ光Lの照射位置がコントロールされて、被加工物、例えば、回路基板7にIDマーク等のマーキング加工、切断加工または溶接加工などが行われる。尚、図中の符号8は、前記ミラーによって反射されたレーザ光を集光して回路基板7の加工面に焦点を結ぶFθレンズである。
【0005】
ここで、図2に示すようなガルバノスキャナ5が、例えば、X,Y軸上の任意の2点A、B間を結ぶ線分のマーキングを行う場合の動作について説明する。図3は、従来のガルバノスキャナ5が2次元の座標で線分をマーキングするときの説明図である。図3において、先ず、ホストPC2が始点Aと終点Bについて補正計算を行い、該補正計算によって得られた補正値に基づいて目標始点A0と目標終点B0とを決定し、X軸用のガルバノスキャナ5とY軸用のガルバノスキャナ5を目標始点A0に合わせる。これによって、X軸用のガルバノスキャナ5とY軸用のガルバノスキャナ5はそれぞれ目標とする位置(目標始点A0)に移動すると共に、目標始点A0と目標終点B0の2点の位置が設定される。
【0006】
そして、X軸用のガルバノスキャナ5とY軸用のガルバノスキャナ5が目標始点A0から目標終点B0へ移動して、該2点間の線分をマーキングする際には、目標始点A0と目標終点B0の2点間の指令値の差分を等分して目標始点A0と目標終点B0の値を増減させて、移動時におけるx点,y点を決定しながら、X軸用のガルバノスキャナ5とY軸用のガルバノスキャナ5を目標終点B0の方向へ移動させてマーキングを行っている。すなわち、X軸用のガルバノスキャナ5とY軸用のガルバノスキャナ5は、最初に補正された目標始点A0と目標終点B0のみの情報に基づいて、目標始点A0と目標終点B0の間を移動して2点間の線分のマーキングを行っている。これによって、2点A0、B0間を結ぶ線分を容易にマーキングすることができるが、ガルバノスキャナの光学的特性及びfθレンズなどの外的要因に依存されて湾曲した線分(a)となることがある。
【0007】
また、被加工部材の加工領域の中心点に対して、予め用意した格子状座標の中心位置を一致させ、該格子状座標のX,Y座標系に基づいて前記加工領域の任意の2点を設定すると共に、設定された2点間を格子状座標のX,Y座標に従って結ぶことにより、2点間をほぼ直線状にマーキングする技術も開示されている(例えば、特許文献2参照)。この技術によれば、ガルバノスキャナやその機構部品に対して微調整を行うことなく、被加工部材における加工領域のマーキング位置の設定や、マーキングラインの直線性を容易に実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−178902号公報
【特許文献2】特開平7−164169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のような、予め補正された任意の2点間を結んで線分をマーキングする技術においては、ホストPCによって計算された補正値に基づいて補正された目標始点A0と目標終点B0の2点間を結んでいるので、比較的簡単に2点間の線分をマーキングすることができる。しかしながら、2点間を結ぶ線分は、補正された目標始点A0と目標終点B0の情報のみに基づいてマーキングされたものであり、マーキングされる線分の指令値そのものには補正計算が行われていない。言い換えると、補正された目標始点A0と目標終点B0の情報のみによって線分が引かれているので、線分が引かれる途中の段階で発生する機械的な歪(すなわち、非直線性)は全く補償されない。
【0010】
そこで、ガルバノスキャナの光学的特性やfθレンズなど機械的な歪、X軸、Y軸上を移動するガルバノスキャナが常に正確な直線をマーキングできるようにするために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、2次元の任意の2点間を移動するガルバノスキャナの制御方法であって、前記ガルバノスキャナを前記2点間で移動させるための移動指令値に対して常時補正計算を行い、補正値を求める第1のステップと、前記第1のステップで求められた補正値を用いて、前記移動指令値を補正する第2のステップと、前記第2のステップで補正された補正後移動指令値に基づいて、前記ガルバノスキャナを前記2点間で移動させる第3のステップとを含むことを特徴とするガルバノスキャナの制御方法を提供する。
【0012】
この方法によれば、ガルバノスキャナコントロール用PC3が、X,Y座標の任意の2点間でガルバノスキャナを移動させるための移動指令値に対して常時補正計算を行い、適正な補正値を求めている。そして、この補正値を用いて補正された補正後移動指令値に基づいて、ガルバノスキャナを2点間で移動させている。これによって、ガルバノスキャナが2点間で描く線分は必然的に直線近似される。
【0013】
請求項2記載の発明は、上記第1のステップで補正計算によって求められた補正値は、上記2点間を最短距離で結ぶ直線と上記ガルバノスキャナが上記移動指令値に基づいて移動するときにマーキングされる線分とのずれ量であり、上記第2のステップで上記移動指令値に対して補正される補正値は前記ずれ量であり、上記第3のステップで補正される上記補正後移動指令値は、上記移動指令値に対して前記ずれ量を加算又は減算した値であることを特徴とする請求項1記載のガルバノスキャナの制御方法を提供する。
【0014】
この方法によれば、ガルバノスキャナコントロール用PC3は、任意の2点間を最短距離で結ぶ直線とガルバノスキャナが移動指令値に基づいて任意の2点間を移動するときにマーキングされる非線形な線分とのずれ量を補正値としている。そして、補正前の移動指令値に対して前記ずれ量を加算又は減算して補正した値を補正後移動指令値とし、この補正後移動指令値に基づいてガルバノスキャナを2点間で移動させている。これによって、ガルバノスキャナは、2点間を最短距離で結ぶ直線と該2点間を非線形で結ぶ線分との差分をゼロにするように移動するので、ガルバノスキャナが描く線分は必然的に直線化される。
【0015】
請求項3記載の発明は、上記第1のステップにおいて求められる上記ずれ量は、上記2次元におけるX軸方向のずれ量ΔxとY軸方向のずれ量Δyに分類され、上記第2のステップにおいて上記移動指令値に対して補正される補正値は、前記X軸方向のずれ量Δxと前記Y軸方向のずれ量Δyであり、上記第3のステップで補正される上記補正後移動指令値は、上記移動指令値に対して、前記X軸方向のずれ量Δxと前記Y軸方向のずれ量Δyとをそれぞれ加算又は減算した値であることを特徴とする請求項2記載のガルバノスキャナの制御方法を提供する。
【0016】
この方法によれば、2点間を最短距離で結ぶ直線と該2点間を非線形で結ぶ線分との差分であるずれ量は、X軸方向のずれ量ΔxとY軸方向のずれ量Δyに分類される。そして、補正前の移動指令値に対してX軸方向のずれ量Δxを加算又は減算して求めたX軸方向の補正後移動指令値に基づいて、X軸方向のガルバノスキャナを移動させ、補正前の移動指令値に対してY軸方向のずれ量Δyを加算又は減算して求めたY軸方向の補正後移動指令値に基づいて、Y軸方向のガルバノスキャナを移動させている。これによって、X軸方向のガルバノスキャナ及びY軸方向のガルバノスキャナは、それぞれのずれ量に応じた補正を行いながら移動するので、X軸方向、Y軸方向共にずれ量のない直線を描くことができる。
【0017】
請求項4記載の発明は、2次元の任意の2点間を移動するガルバノスキャナの制御システムであって、前記ガルバノスキャナを前記2点間で移動させるための移動指令を出力する上位装置と、上位装置から受け取った指令を基に常時補正計算を行い、補正後移動指令値を求めるガルバノスキャナコントロール用PC3と、前記ガルバノスキャナコントロール用PC3で補正された補正後移動指令値に基づいて、前記ガルバノスキャナを前記2点間で移動させるサーボドライバとを備えることを特徴とするガルバノスキャナの制御システムを提供する。
【0018】
この構成によれば、ガルバノスキャナコントロール用PC3が、X,Y座標の任意の2点間でガルバノスキャナを移動させるための移動指令値に対して常時補正計算を行い、適正な補正後移動指令値を求めている。そして、該補正後移動指令値をサーボドライバへ送信している。そして、サーボドライバが、該補正後移動指令値に基づいてガルバノスキャナを任意の2点間で移動させている。これによって、ガルバノスキャナが2点間で描く線分は必然的に直線近似される。
【0019】
請求項5記載の発明は、ガルバノスキャナコントロール用PC3が保有する補正値は、上記2点間を最短距離で結ぶ直線と上記ガルバノスキャナが上記移動指令値に基づいて移動するときにマーキングされる線分とのずれ量であり、上記ガルバノスキャナコントロール用PC3は、前記ずれ量を用いて上記移動指令値を補正し、上記サーボドライバは、上記移動指令値に対して前記ずれ量を加算又は減算させて補正した上記補正後移動指令値を用いて、上記ガルバノスキャナを上記2点間で移動させることを特徴とする請求項4記載のガルバノスキャナの制御システムを提供する。
【0020】
この構成によれば、ガルバノスキャナコントロール用PC3は、任意の2点間を最短距離で結ぶ直線とガルバノスキャナが移動指令値に基づいて任意の2点間を移動するときにマーキングされる非線形な線分とのずれ量を補正値としている。そして、ガルバノスキャナコントロール用PC3が、補正前の移動指令値に対して前記ずれ量を加算又は減算して補正した値を補正後移動指令値とし、この補正後移動指令値をサーボドライバへ送信している。これによって、サーボドライバは、該補正後移動指令値に基づいてガルバノスキャナを2点間で移動させている。これによって、ガルバノスキャナは、2点間を最短距離で結ぶ直線と該2点間を非線形で結ぶ線分との差分をゼロにするように移動するので、ガルバノスキャナが描く線分は必然的に直線化される。
【0021】
請求項6記載の発明は、上記ガルバノスキャナコントロール用PC3が求める上記ずれ量は、上記2次元におけるX軸方向のずれ量ΔxとY軸方向のずれ量Δyに分類され、上記ガルバノスキャナコントロール用PC3が上記移動指令値に対して補正する補正値は、前記X軸方向のずれ量Δxと前記Y軸方向のずれ量Δyであり、上記サーボドライバは、上記移動指令値に対して、前記X軸方向のずれ量Δxと前記Y軸方向のずれ量Δyとをそれぞれ加算又は減算させて補正した上記補正後移動指令値を用いて、上記ガルバノスキャナを上記2点間で移動させることを特徴とする請求項5記載のガルバノスキャナの制御システムを提供する。
【0022】
この構成によれば、ガルバノスキャナコントロール用PC3は、2点間を最短距離で結ぶ直線と該2点間を非線形で結ぶ線分との差分であるずれ量を、X軸方向のずれ量ΔxとY軸方向のずれ量Δyに分類している。そして、ガルバノスキャナコントロール用PC3は、補正前の移動指令値に対してX軸方向のずれ量Δxを加算又は減算して求めた値をX軸方向の補正後移動指令とし、補正前の移動指令値に対してY軸方向のずれ量Δyを加算又は減算して求めた値をY軸方向の補正後移動指令値として、それぞれの補正後移動指令値をX軸方向及びY軸方向のサーボドライバへ送信している。そして、X軸方向のサーボドライバがX軸方向の補正後移動指令値に基づいてX軸方向のガルバノスキャナを移動させ、Y軸方向のサーボドライバがY軸方向の補正後移動指令値に基づいてY軸方向のガルバノスキャナを移動させている。これによって、X軸方向のガルバノスキャナ及びY軸方向のガルバノスキャナは、それぞれの軸方向のずれ量に応じた補正を行いながら移動するので、X軸方向、Y軸方向共にずれ量のない直線を描くことができる。
【発明の効果】
【0023】
請求項1記載の発明は、ガルバノスキャナの移動指令値に対して常時補正計算を実施して移動指令値を補正しているので、ガルバノスキャナは任意の2点間を結ぶ線分を直線化することができる。
【0024】
請求項2記載の発明は、任意の2点間を結ぶ直線とガルバノスキャナが移動指令値に基づいて任意の2点間で描く非線形な線分とのずれ量をゼロにするように補正が行われるので、請求項1記載の発明の効果に加えて、ガルバノスキャナが任意の2点間で描く線分をより定量的に直線近似することができる。
【0025】
請求項3記載の発明は、前記ずれ量をX軸方向のずれ量ΔxとY軸方向のずれ量Δyとに分類して、X軸方向のガルバノスキャナとY軸方向のガルバノスキャナを個別に移動させているので、請求項2記載の発明の効果に加えて、X軸方向のガルバノスキャナ、Y軸方向のガルバノスキャナ共にずれ量のない直線を描くことができる。
【0026】
請求項4記載の発明は、ガルバノスキャナコントロール用PC3が、ガルバノスキャナの移動指令値に対して常時補正計算を実施して移動指令値を補正しているので、ガルバノスキャナは任意の2点間を結ぶ線分を直線化することができる。
【0027】
請求項5記載の発明は、ガルバノスキャナコントロール用PC3が、任意の2点間を結ぶ直線とガルバノスキャナが移動指令値に基づいて任意の2点間で描く非線形な線分とのずれ量をゼロにするように補正を行っているので、請求項4記載の発明の効果に加えて、ガルバノスキャナが任意の2点間で描く線分をより定量的に直線近似することができる。
【0028】
請求項6記載の発明は、ガルバノスキャナコントロール用PC3が、前記ずれ量をX軸方向のずれ量ΔxとY軸方向のずれ量Δyとに分類して、X軸方向のガルバノスキャナとY軸方向のガルバノスキャナを個別に移動させているので、請求項5記載の発明の効果に加えて、X軸方向のガルバノスキャナ、Y軸方向のガルバノスキャナ共にずれ量のない直線を描くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】ガルバノスキャナを用いた従来のレーザ加工装置を示すシステム構成図。
【図2】図1に示すガルバノスキャナによる加工状態を示す説明図。
【図3】従来のガルバノスキャナ5が2次元の座標で線分をマーキングするときの説明図。
【図4】本発明に係るガルバノスキャナ用のドライバユニットの構成を示すブロック図。
【図5】2次元動作のガルバノスキャナがX軸とY軸における任意の2点間を移動するときの線分のマーキングを示す説明図。
【図6】2次元動作のガルバノスキャナがマーキングした線分によって一つの領域を形成した状態を示す説明図。
【図7】本発明に係るガルバノスキャナの制御方法の処理手順を示すフローチャート。
【図8】従来のガルバノスキャナによって領域をマーキングした場合の説明図。
【図9】本発明によるガルバノスキャナの制御方法によって領域をマーキングした場合の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、ガルバノスキャナの光学的特性やfθレンズなど機械的な歪、X軸、Y軸上を移動するガルバノスキャナが常に正確な直線をマーキングできるようにするという目的を達成するために、ガルバノスキャナを2点間で移動させるための移動指令値に対して常時補正計算を行い、補正値を求める第1のステップと、第1のステップで求められた補正値を用いて移動指令値を補正する第2のステップと、第2のステップで補正された補正後移動指令値に基づいて、ガルバノスキャナを2点間で移動させる第3のステップとを含む構成とすることによって実現した。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の好適な一実施例を図4乃至図9に従って詳細に説明する。なお、本実施例は、図1及び図2に示したレーザ加工装置に使用されるガルバノスキャナ制御装置、すなわち、上位装置、例えばホストPCから出力される位置情報によりガルバノスキャナを指定角度位置に動作制御すると共に、該ホストPCから出力されるガルバノスキャナの移動指令値に対して常時補正計算を行うことにより、2点間をマーキングする線分の非線形歪を補正して該2点間の線分を直線化させる装置に適用したものである。
【0032】
すなわち、本実施例の一つの側面は、図1を参照すると、ユーザ側で使用する有効動作角度範囲と、角度位置指定デジタルデータの動作角度範囲とを合わせるべく、角度位置指令デジタルデータを必要最小限にデータ変換して、ガルバノスキャナ制御装置を精度良く動作制御できるように構成したものである。
【0033】
また、本実施例のもう一つの側面は、図1を参照すると、X軸とY軸の2次元を移動するガルバノスキャナ5が任意の2点間を移動するとき、ホストPC2が、自己の内部に予め格納されている理想的な直線と、移動指令値に基づいてガルバノスキャナ5が2点間にマーキングした線分とのずれ量(線分歪)をあらかじめ計算し、該線分歪を補正するための補正値をガルバノスキャナコントロール用PC3へ送信している。そして、ガルバノスキャナコントロール用PC3が、移動指令値に対して前記補正値を加算又は減算した補正後移動指令値をガルバノスキャナドライバ4へ送信している。これによって、ガルバノスキャナドライバ4が、補正後移動指令値に基づいてX軸とY軸のガルバノスキャナ5を駆動することにより、該ガルバノスキャナドライバ4は2点間を結ぶ線分を直線化してマーキングすることができる。
【0034】
このようにして、本実施例の一つの側面によって任意の2点の各位置を精度良く位置決めすると共に、本実施例のもう一つの側面によって2点間を結ぶ線分の直線化を図っている。
【0035】
図4は、本発明に係るガルバノスキャナ用のドライバユニットの構成を示すブロック図である。同図に示すように、ガルバノスキャナコントロール用PC3を構成するCPU11の入力部には、上位装置用インタフェース12が接続される。
【0036】
さらに、CPU11の出力部にはスキャナドライブ回路19を介してスキャナドライバ20が接続されている。スキャナドライブ回路19は、CPU11からの角度位置デジタルデータに基づき、ドライバ用の駆動信号を発生してスキャナドライバ20の動作を制御する。
【0037】
また、図4に示すガルバノスキャナ用のドライバユニットのもう一つの側面では、X軸及びY軸のガルバノスキャナの移動指令値に対して常時補正計算を行い、補正計算によって求められた補正値に基づいて移動指令値を補正しながら該ガルバノスキャナを移動させることにより、2点間を結ぶ線分の直線化を実現している。以下、2点間を結ぶ線分の直線化を実現する方法について詳細に説明する。
【0038】
図5は、2次元動作のガルバノスキャナがX軸とY軸における任意の2点間を移動するときの線分のマーキングを示す説明図である。図5において、線分(a)は2点間を結ぶ線分に歪成分が生じた非線形な線分であり、線分(b)は2点間を結ぶ線分に歪成分がない直線状な線分である。また、図6は、2次元動作のガルバノスキャナがマーキングした線分によって一つの領域を形成した状態を示す説明図であり、同図(a)は、図5の非線形な線分(a)によって形成された領域を示し、同図(b)は、図5の直線状の線分(b)によって形成された領域を示している。
【0039】
先ず、ガルバノスキャナが2点間に線分をマーキングする方法について、図5を参照しながら説明する。ガルバノスキャナ5を用いて、X軸,Y軸上の任意の2点A、B間を結ぶ線分のマーキングを行う場合は、最初に、ホストPC2が始点Aへの移動指令をガルバノスキャナコントロール用PC3に指令すると、ガルバノスキャナコントロール用PC3が補正計算を行い、該補正計算によって求められた補正値に基づいて目標始点A0を決定し、X軸用のガルバノスキャナ5とY軸用のガルバノスキャナ5を目標始点A0に合わせる。
【0040】
ここで、X軸用のガルバノスキャナ5とY軸用のガルバノスキャナ5が目標始点A0と目標終点B0の2点間を移動するとき、ガルバノスキャナコントロール用PC3が随時補正計算を行い、該補正計算によって求められた補正値に基づいて目標始点A0からから目標終点B0間を直線補間して目標始点A0と目標終点B0とを最短距離で結ぶ直線の線分(b)上を移動する
すなわち、本実施例による2次元の任意の2点間を移動するガルバノスキャナの制御方法によれば、ガルバノスキャナコントロール用PC3が、ガルバノスキャナ5を任意の2点間で移動させるための移動指令値に対して常時補正計算を行って補正後移動指令値を求めている。そして、この補正後移動指令値をガルバノスキャナドライバ4へ送信している。これによって、ガルバノスキャナドライバ4は、ガルバノスキャナコントロール用PC3から受信した補正後移動指令値に基づいてガルバノスキャナ5をA0,B0の2点間で移動させることができるので、ガルバノスキャナ5はA0,B0の2点間の線分を直線状にマーキングすることができる。
【0041】
このとき、ガルバノスキャナコントロール用PC3が保有している補正値は、A0,B0の2点間を最短距離で結ぶ直線状の線分(b)と、ガルバノスキャナ5が補正前の移動指令値に基づいて移動するときにマーキングされる非線形な線分(a)とのずれ量である。従って、ガルバノスキャナコントロール用PC3は、補正前の移動指令値に対して前記ずれ量を加算又は減算して補正後移動指令値を求めてガルバノスキャナドライバ4へ送信している。これによって、ガルバノスキャナドライバ4が補正後移動指令値によってガルバノスキャナ5を駆動すれば、ガルバノスキャナドライバ4は、必然的に、線分(a)と線分(b)のずれ量をゼロにするように移動するので、A0,B0の2点間を直線状の線分(b)でマーキングすることになる。
【0042】
以上を要約すると、本発明に係るガルバノスキャナの制御方法によれば、ガルバノスキャナの移動指令値に対して常時補正計算を実施することにより、ガルバノスキャナが任意の2点間を移動する際の移動指令値に対してリアルタイムに適正な補正がなされる。これによってガルバノスキャナは直線移動することができるので、該ガルバノスキャナがマーキングする2点間の線分はほぼ直線となる。
【0043】
図7は、本発明に係るガルバノスキャナの制御方法の処理手順を示すフローチャートである。図7において、先ず、ガルバノスキャナコントロール用PC3は、ガルバノスキャナ5が直線移動するための目標差表(X,Y)を確認する(ステップS1)。次に、ガルバノスキャナコントロール用PC3は、ガルバノスキャナ5が目標座標(X,Y)に回帰するように移動指令値に対して補正計算を行う(ステップS2)。
【0044】
そして、ガルバノスキャナコントロール用PC3が、補正計算によって得られた補正値に基づいて演算された補正後移動指令値を確定する(ステップS3)。次に、ガルバノスキャナドライバ4が、補正後移動指令値に基づいてガルバノスキャナ5を移動させる(ステップS4)。このようにして、ガルバノスキャナ5がX,Y座標の2点間A0,B0を移動している間は、前述のステップS1からステップS4までの処理を繰り返す。これによって、ガルバノスキャナ5はX,Y座標の2点間A0,B0を直線移動することができる。
【0045】
次に、従来のガルバノスキャナによって歪成分のある線分で領域をマーキングした場合と、本発明のガルバノスキャナの制御方法によって歪成分を相殺して直線状の線分で領域をマーキングした場合の具体的な実施例について説明する。図8は、従来のガルバノスキャナによって領域をマーキングした場合の説明図である。また、図9は、本発明によるガルバノスキャナの制御方法によって領域をマーキングした場合の説明図である。
【0046】
図8に示すように、従来のガルバノスキャナによって領域をマーキングする場合は、同図(a)の指令座標に示すように、補正なしでマトリックス状の測定点に対して露光を行い、その歪量を測定する。露光結果は、同図(b)に示すように樽型歪のマトリックス状となり、測定した露光歪は関数Fによって表現される。この測定結果から、露光歪Fを打ち消すために、同図(c)に示すように、補正関数F-1を算出する。
【0047】
一方、図9に示すように、本発明によるガルバノスキャナの制御方法によって領域をマーキングする場合、同図(a)の目標座標aに示すように矩形の領域にガルバノスキャナを移動させるとき、その目標座標aは補正関数F-1によって補正計算され、同図(b)に示すようなガルバノスキャナの移動指令値はF-1(a)となる。その結果、移動指令値
-1(a)に基づいてガルバノスキャナを移動させると、同図(b)に示すように歪んだ領域となる。そこで、移動指令値F-1(a)をガルバノスキャナへ出力すると歪成分Fが加算される。その結果、補正後移動指令値はF(F-1(a))となり、ガルバノスキャナの移動位置は同図(c)に示すようになり、歪成分のない矩形の領域をマーキングすることができる。
【0048】
上記の実施例では、ガルバノスキャナによって任意の2点間の線分を直線化する場合について説明したが、任意の2点間を所望の曲線で結ぶこともできる。すなわち、上位装置に予め所望の曲線を格納しておき、ガルバノスキャナが走査しようとする線分と上位装置に格納された曲線との差分がゼロになるようにガルバノスキャナを制御すれば、必然的にガルバノスキャナによって所望の曲線をマーキングすることができる。これによって、矩形の領域に限らず、任意の曲線で囲まれた領域をマーキングすることもできる。
【0049】
本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によるガルバノスキャナの制御方法によれば、所望の領域を歪成分なく高精度にマーキングすることができるので、半導体基板や液晶パネルなどの電気部品を製造する半導体製造装置等に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 レーザ
2 ホストPC
3 ガルバノスキャナコントロール用PC
4 ガルバノスキャナドライバ
5 ガルバノスキャナ
6 ミラー
7 回路基板
8 Fθレンズ
11 CPU
12 上位装置用インタフェース
19 スキャナドライブ制御回路
20 スキャナドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元の任意の2点間を移動するガルバノスキャナの制御方法であって、
前記ガルバノスキャナを前記2点間で移動させるための移動指令値に対して常時補正計算を行い、補正値を求める第1のステップと、
前記第1のステップで求められた補正値を用いて、前記移動指令値を補正する第2のステップと、
前記第2のステップで補正された補正後移動指令値に基づいて、前記ガルバノスキャナを前記2点間で移動させる第3のステップと
を含むことを特徴とするガルバノスキャナの制御方法。
【請求項2】
上記第1のステップで補正計算によって求められた補正値は、上記2点間を最短距離で結ぶ直線と上記ガルバノスキャナが上記移動指令値に基づいて移動するときにマーキングされる線分とのずれ量であり、
上記第2のステップで上記移動指令値に対して補正される補正値は前記ずれ量であり、
上記第3のステップで補正される上記補正後移動指令値は、上記移動指令値に対して前記ずれ量を加算又は減算した値である
ことを特徴とする請求項1記載のガルバノスキャナの制御方法。
【請求項3】
上記第1のステップにおいて求められる上記ずれ量は、上記2次元におけるX軸方向のずれ量ΔxとY軸方向のずれ量Δyに分類され、
上記第2のステップにおいて上記移動指令値に対して補正される補正値は、前記X軸方向のずれ量Δxと前記Y軸方向のずれ量Δyであり、
上記第3のステップで補正される上記補正後移動指令値は、上記移動指令値に対して、前記X軸方向のずれ量Δxと前記Y軸方向のずれ量Δyとをそれぞれ加算又は減算した値である
ことを特徴とする請求項2記載のガルバノスキャナの制御方法。
【請求項4】
2次元の任意の2点間を移動するガルバノスキャナの制御システムであって、
前記ガルバノスキャナを前記2点間で移動させるための移動指令値に対して常時補正計算を行い、補正値を求める上位装置と、
前記上位装置が求めた補正値を用いて、前記移動指令値を補正するコントローラと、
前記コントローラで補正された補正後移動指令値に基づいて、前記ガルバノスキャナを前記2点間で移動させるサーボドライバと
を備えることを特徴とするガルバノスキャナの制御システム。
【請求項5】
上記上位装置が補正計算によって求めた補正値は、上記2点間を最短距離で結ぶ直線と上記ガルバノスキャナが上記移動指令値に基づいて移動するときにマーキングされる線分とのずれ量であり、
上記コントローラは、前記ずれ量を用いて上記移動指令値を補正し、
上記サーボドライバは、上記移動指令値に対して前記ずれ量を加算又は減算させて補正した上記補正後移動指令値を用いて、上記ガルバノスキャナを上記2点間で移動させる
ことを特徴とする請求項4記載のガルバノスキャナの制御システム。
【請求項6】
上記上位装置が求める上記ずれ量は、上記2次元におけるX軸方向のずれ量ΔxとY軸方向のずれ量Δyに分類され、
上記コントローラが上記移動指令値に対して補正する補正値は、前記X軸方向のずれ量Δxと前記Y軸方向のずれ量Δyであり、
上記サーボドライバは、上記移動指令値に対して、前記X軸方向のずれ量Δxと前記Y軸方向のずれ量Δyとをそれぞれ加算又は減算させて補正した上記補正後移動指令値を用いて、前記ガルバノスキャナを前記2点間で移動させる
ことを特徴とする請求項5記載のガルバノスキャナの制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−170209(P2011−170209A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35405(P2010−35405)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000139366)株式会社ワイ・イー・データ (39)
【Fターム(参考)】