説明

ガレート単結晶及び並びに高温用圧電素子及び高温用圧電センサー

【課題】400℃を越える高い温度範囲でも使用することができ、さらにその抵抗率の温度依存性が小さい高温領域圧電素子用材料を提供する。
【解決手段】REGa5−xAlSiO14(式中、REは希土類を表し、0<x<5)、RETa0.5Ga5.5−xAl14(式中、REは希土類を表し、0<x<5.5)及びRENb0.5Ga5.5−xAl14(式中、REは希土類を表し、0<x<5.5)からなる群から選択される組成を有し、100℃〜600℃の範囲の抵抗率変化が10以下であることを特徴とする。酸化性ガスを含む不活性ガス雰囲気中で溶液から単結晶を育成し、次いで、不活性ガス中の酸化性ガスのモル分率(z)を、前記育成工程における酸化性ガスのモル分率よりも低下させて冷却を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Al添加希土類ガレート単結晶、該単結晶を用いた高温用圧電素子及び該圧電素子を用いた高温用圧電センサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、圧力又は力を計測するために、圧電センサーがしばしば使用されている。圧電センサーは、センサー自体の変位がなく、応答速度が速く、小型である等の優れた特性を有している。しかしながら、圧電センサーはセンサー素子のキューリー温度を越えて使用することができないために、例えばセンサー素子として水晶を用いる場合には、400℃を超える温度範囲では使用できず、内燃機関の燃焼室内で混合気が爆発する際の1000℃を越える温度範囲での気圧(燃焼圧)変動を直接測定することはできない。
【0003】
一方、高温で使用する目的で、キューリー点の存在しない希土類ガレート(La3Ga5SiO14)単結晶を用いることが提案されている(例えば特許文献1参照)。希土類ガレート単結晶は融点も1500℃であり、1000℃を超える温度範囲でも圧電センサーとして使用可能である。しかしながら、希土類ガレート単結晶は、その抵抗率の温度依存性が大きく、高い温度範囲ではその抵抗率が小さくなり、十分な電圧を保持することができないために、燃焼圧変動を精度よく測定することができないという問題点も有している。
【0004】
【特許文献1】特開平10−54773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、100℃以上、特に400℃を超える高い温度範囲でも使用することができ、さらにその抵抗率の温度依存性が小さいガレート単結晶及びその作成方法並びに高温用圧電素子及び圧電センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、酸化性ガスを含む不活性ガス雰囲気中で溶液から単結晶を育成し、次いで、不活性ガス中の酸化性ガスのモル分率(z)を、前記育成工程における酸化性ガスのモル分率よりも低下させて冷却を行い、作成した単結晶を、酸化性ガスを含まない不活性ガス雰囲気中で熱処理する作製方法により作成されたことを特徴とするガレート酸化物単結晶である。
【0007】
請求項2に係る発明は、0≦z≦1%であることを特徴とする請求項1記載のガレート酸化物単結晶である。
【0008】
請求項3に係る発明は、0≦z≦0.5%であることを特徴とする請求項2記載のガレート酸化物単結晶である。
【0009】
請求項4に係る発明は、前記酸化性ガスはOであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載のガレート酸化物単結晶である。
【0010】

請求項5に係る発明は、前記ガレート酸化物単結晶は希土類ガレート酸化物であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載のガレート酸化物単結晶である。
【0011】
請求項6に係る発明は、前記ガレート酸化物単結晶は、REGa5−xAlSiO14(式中、REは希土類を表し、0<x<5)、RETa0.5Ga5.5−xAl14(式中、REは希土類を表し、0<x<5.5)及びRENb0.5Ga5.5−xAl14(式中、REは希土類を表し、0<x<5.5)からなる群から選択される組成を有することを特徴とする請求項5記載のガレート酸化物単結晶である。
【0012】
請求項7に係る発明は、REGa5−xAlSiO14においては0<x<1.5、
RETa0.5Ga5.5−xAl14においては0<x<1.65、
RENb0.5Ga5.5−xAl14においては0<x<1.65
であることを特徴とする請求項6記載のガレート酸化物単結晶である。
【0013】
請求項8に係る発明は、前記ガレート酸化物は、RE3−xAEGa5−x−yAlSiO14(式中、REは希土類を表し、AEはアルカリ土類金属を表す。0<x≦3、0<y<1.5)、RE3−xAETa0.5+x/2Ga5.5−x/2−yAl14(式中、REは希土類を表し、AEはアルカリ土類金属を表す。0<x≦3、0<y<1.65)及びRE3−xAENb0.5+x/2Ga5.5−x/2−yAl14(式中、REは希土類を表し、AEはアルカリ土類金属を表す。0<x≦3、0<y<1.65)からなる群から選択される組成を有することを特徴とする請求項5記載のガレート酸化物単結晶である。
【0014】
請求項9に係る発明は、請求項1ないし8のいずれか1項記載の単結晶からなることを特徴とする圧電素子である。 請求項10に係る発明は、請求項9記載の圧電素子を用いたことを特徴とする高温用圧電センサーである。
請求項11に係る発明は、100℃〜600℃の範囲で用いられることを特徴とする請求項10記載の高温用圧電センサーである。
【0015】
参考発明は以下の通りである。
請求項1に係る発明は、REGa5−xAlSiO14(式中、REは希土類を表し、0<x<5)、RETa0.5Ga5.5−xAl14(式中、REは希土類を表し、0<x<5.5)及びRENb0.5Ga5.5−xAl14(式中、REは希土類を表し、0<x<5.5)からなる群から選択される組成を有し、100℃〜600℃の範囲の抵抗率変化が10以下であることを特徴とするガレート単結晶である。
請求項2に係る発明は、REGa5−xAlSiO14においては0<x<1.5、
RETa0.5Ga5.5−xAl14においては0<x<1.65、
RENb0.5Ga5.5−xAl14においては0<x<1.65
であることを特徴とする請求項1記載の単結晶である。
請求項3に係る発明は、RE3−xAEGa5−x−yAlSiO14(式中、REは希土類を表し、AEはアルカリ土類金属を表す。0<x≦3、0<y<1.5)、RE3−xAETa0.5+x/2Ga5.5−x/2−yAl14(式中、REは希土類を表し、AEはアルカリ土類金属を表す。0<x≦3、0<y<1.65)及びRE3−xAENb0.5+x/2Ga5.5−x/2−yAl14(式中、REは希土類を表し、AEはアルカリ土類金属を表す。0<x≦3、0<y<1.65)からなる群から選択される組成を有し、100℃〜600℃の範囲の抵抗率変化が10以下であることを特徴とするガレート単結晶である。
すなわち、請求項1に係る発明において、REの一部又は全部をAEで置き換えてもよい。
請求項4に係る発明は、酸化性ガスを含む不活性ガス雰囲気中で溶液から単結晶を育成し、次いで、不活性ガス中の酸化性ガスのモル分率(z)を、前記育成工程における酸化性ガスのモル分率よりも低下させて冷却を行うことを特徴とするガレート酸化物単結晶の作成方法である。
不活性ガスとしては、例えば、Arガス、窒素ガスなどがあげられる。酸化性ガスとしては酸素ガスが好ましい。
請求項5に係る発明は、0≦z≦1%であることを特徴とする請求項4記載のガレート酸化物単結晶の作成方法である。
請求項6に係る発明は、0≦z≦0.5%であることを特徴とする請求項4記載のガレート酸化物単結晶の作成方法である。
請求項7に係る発明は、前記酸化性ガスはOであることを特徴とする請求項4ないし6のいずれか1項記載のガレート酸化物単結晶の作成方法である。
請求項8に係る発明は、請求項4ないし7のいずれか1項記載の作成方法で作成したガレート酸化物単結晶を、酸化性ガスを含まない不活性ガス雰囲気中で熱処理することにより、欠陥による着色を低減させ、抵抗率の温度依存性を低減させたことを特徴とするガレート酸化物単結晶の作製方法である。
請求項9に係る発明は、前記ガレート酸化物は希土類ガレート酸化物であることを特徴とする請求項4ないし8のいずれか1項記載のガレート酸化物単結晶の作成方法である。
請求項10に係る発明は、前記ガレート酸化物は、REGa5−xAlSiO14(式中、REは希土類を表し、0<x<5)、RETa0.5Ga5.5−xAl14(式中、REは希土類を表し、0<x<5.5)及びRENb0.5Ga5.5−xAl14(式中、REは希土類を表し、0<x<5.5)からなる群から選択される組成を有することを特徴とする請求項9記載のガレート酸化物単結晶の作成方法である。
請求項11に係る発明は、REGa5−xAlSiO14においては0<x<1.5、
RETa0.5Ga5.5−xAl14においては0<x<1.65、
RENb0.5Ga5.5−xAl14においては0<x<1.65
であることを特徴とする請求項10記載のガレート酸化物単結晶の作成方法である。
請求項12に係る発明は、前記ガレート酸化物は、RE3−xAEGa5−x−yAlSiO14(式中、REは希土類を表し、AEはアルカリ土類金属を表す。0<x≦3、0<y<1.5)、RE3−xAETa0.5+x/2Ga5.5−x/2−yAl14(式中、REは希土類を表し、AEはアルカリ土類金属を表す。0<x≦3、0<y<1.65)及びRE3−xAENb0.5+x/2Ga5.5−x/2−yAl14(式中、REは希土類を表し、AEはアルカリ土類金属を表す。0<x≦3、0<y<1.65)からなる群から選択される組成を有することを特徴とする請求項9記載のガレート酸化物単結晶の作成方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、特に400℃を超える高い温度範囲でも使用することができ、さらにその抵抗率の温度依存性が小さいガレート単結晶及びその作成方法並びに高温用圧電素子及び圧電センサを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】La3Ga4.8Al0.2SiO14単結晶の写真
【図2】La3Ta0.5Ga5.3Al0.2O14単結晶の写真
【図3】La3Nb0.5Ga5.3Al0.2O14単結晶の写真
【図4】La3Ga5SiO14単結晶の写真
【図5】La3Ta0.5Ga5.5O14単結晶の写真
【図6】La3Nb0.5Ga5.5O14単結晶の写真
【図7】La3Ga4.8Al0.2SiO14単結晶の原子分布
【図8】La3Ta0.5Ga5.3Al0.2O14単結晶の原子分布
【図9】La3Nb0.5Ga5.3Al0.2O14単結晶の原子分布
【図10】La3Ga5SiO14単結晶の原子分布
【図11】La3Ta0.5Ga5.5O14単結晶の原子分布
【図12】La3Nb0.5Ga5.5O14単結晶の原子分布
【図13】抵抗率の温度依存性
【図14】d12の温度依存性
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
前記Al添加希土類ガレート単結晶の中でも、機械結合定数の温度依存性の観点から、RE(希土類元素)がLa、Pr及びNdが好ましく、特にLaが好ましい。
Al添加希土類ガレート単結晶がREGa5−xAlSiO14である場合、機械結合定数の温度依存性の観点から、xの範囲は0<x<1.5が好ましく、より好ましくは0<x<0.5である。また、Al添加希土類ガレート単結晶がRETa0.5Ga5.5−xAl14である場合、xの範囲は0<x<1.65が好ましく、より好ましくは0<x<0.5である。さらに、Al添加希土類ガレート単結晶がRENb0.5Ga5.5−xAl14である場合、xの範囲は0<x<1.65が好ましく、より好ましくは0<x<0.5である。
【0019】
本発明は、希土類元素のサイトを一部もしくは全てをアルカリ土類金属に置き換えたものでもよい。すなわち、RE3−xAEGa5−x−yAlSiO14(式中、REは希土類元素を表し、AEはアルカリ土類金属を表す。)、RE3−xAETa0.5+x/2Ga5.5−x/2−yAl14(式中、REは希土類元素を表し、AEはアルカリ土類金属を表す。)及びRE3−xAENb0.5+x/2Ga5.5−x/2−yAl14(式中、REは希土類元素を表し、AEはアルカリ土類金属を表す。)からなる群から選択されるAl添加希土類ガレート単結晶である。
機械結合定数の温度依存性の観点から、AE(アルカリ土類)はBa、Sr、Ca及びMgが好ましく、特にBaおよびSrが好ましい。
Al添加希土類ガレート単結晶がRE3−xAEGa5−x−yAlSiO14(式中、REは希土類元素を表し、AEはアルカリ土類金属を表す。)である場合、機械結合定数の温度依存性の観点から、0<x≦3、0<y<1.5が好ましく、また、より好ましくは0<x≦3、0<y<0.5である。
また、Al添加希土類ガレート単結晶がRE3−xAETa0.5+x/2Ga5.5−x/2−yAl14(式中、REは希土類元素を表し、AEはアルカリ土類金属を表す。)及びRE3−xAENb0.5+x/2Ga5.5−x/2−yAl14(式中、REは希土類元素を表し、AEはアルカリ土類金属を表す。)である場合、0<x≦3、0<y<1.65が好ましい。
【0020】
本発明の混晶酸化物単結晶は、従来技術におけるいずれの公知の方法を用いても作製することができる。例えば、下記のようなチョクラルスキー法により作製することもできる。
【0021】
(REGa5−xAlSiO14単結晶の作製方法)
出発原料としては、RE、Ga、SiO、Alを用いる。これらの出発原料を目的組成となるように秤量し、振動攪拌機で混合した後、ペレット状に成型したものを電気炉(1200〜1300℃)で焼成してRETa0.5Ga5.5−xAl14単結晶を作製する。
得られた単結晶を坩堝に入れ、高周波ワークコイル等により加熱して溶融し、所定温度の融液とする。前記坩堝はイリジウム金属又はイリジウム合金坩堝である。なお、ルツボの外側と上方には、アルミナ系又はジルコニア系の断熱材を設け、ホットゾーンを形成するのが好ましい。結晶成長雰囲気は、β−Gaの分解反応を抑制する目的で、ArにOを最大で2%混合したガスを加えたものを用いる。雰囲気の制御には石英管製のチャンバーを用いる。
次に、種結晶を引き上げ軸に固定し、所定の回転数と引き上げ速度で融液から希土類ガレート単結晶インゴットを引き上げ育成する。この際、引き上げ軸につながる重量センサーで検出した結晶の重量変化信号により、コンピュータプログラムを用いて、単結晶インゴットの自動直径制御を行う。準備した材料が全て結晶化し、融液が無くなった時点で結晶成長終了となる。当該結晶はアフターヒーター内に保持されたまま室温まで徐々に冷却される。
結晶製造時の雰囲気は上述の通り、β−Gaの分解反応を抑制する目的で、ArにOを最大で2%混合したガスを加えたものを用いるが、製造後の冷却時にOの混合比を減らすことで、さらにその抵抗率の温度依存性が小さい高温領域圧電素子用材料を作製することができる。冷却時のOのモル分率zは0≦z≦1%であり、好ましくは0≦z≦0.5%であり、より好ましくは0%である。
【0022】
(RETa0.5Ga5.5−xAl14単結晶の作製方法)
出発原料として、RE、Ga、SiO、Al、Taを用いる。これらの出発原料を目的組成となるように秤量、混合した後、成型、焼成して単結晶を作製する。
単結晶成長は、上記と同様にして行う。
【0023】
(RENb0.5Ga5.5−xAl14単結晶の作製方法)
出発原料として、RE、Ga、Al、Nbを用いる。これらの出発原料を目的組成となるように秤量、混合した後、成型、焼成して単結晶を作製する。
単結晶成長は、上記と同様にして行う。
【0024】
Alを添加していない希土類ガレート単結晶の抵抗率は、温度が高くなるほど小さくなり、その抵抗率変化は、100〜500℃の範囲で、一般に105を超えている。本発明のAl添加希土類ガレート単結晶の抵抗率変化は、100〜500℃の範囲で104以下であり、Alを添加していない対応する希土類ガレート単結晶と比較して、抵抗率の温度依存性が小さい。
【0025】
上述のAl添加希土類ガレート単結晶を用いる高温用圧電素子は例えば自動車用の燃焼圧センサー用素子として数百℃の環境においても使用可能である。
【0026】
上述のAl添加希土類ガレート単結晶を用いる高温用圧電素子を用いた高温用圧電センサーは、例えば自動車用の燃焼圧センサーとして数百℃の環境においても使用可能である。
【実施例】
【0027】
(実施例1:LaGa4.8Al0.2SiO14単結晶)
LaGa4.8Al0.2SiO14単結晶をチョクラルスキー法により作製した。LaGa4.8Al0.2SiO14単結晶の作製条件を表1に示す。
【0028】
(実施例2:LaTa0.5Ga5.3Al0.214単結晶)
LaTa0.5Ga5.3Al0.214単結晶をチョクラルスキー法により作製した。LaTa0.5Ga5.3Al0.214単結晶の作製条件を表1に示す。
【0029】
(実施例3:LaNb0.5Ga5.2Al0.214単結晶)
LaNb0.5Ga5.2Al0.214単結晶をチョクラルスキー法により作製した。LaNb0.5Ga5.2Al0.214単結晶の作製条件を表1に示す。
【0030】
(比較例1:LaGaSiO14単結晶)
LaGaSiO14単結晶をチョクラルスキー法により作製した。LaGaSiO14単結晶の作製条件を表1に示す。
【0031】
(比較例2:LaTa0.5Ga5.514単結晶)
LaTa0.5Ga5.514単結晶をチョクラルスキー法により作製した。LaTa0.5Ga5.514単結晶の作製条件を表1に示す。
【0032】
(比較例3:LaNb0.5Ga5.514単結晶)
LaNb0.5Ga5.514単結晶をチョクラルスキー法により作製した。LaNb0.5Ga5.514単結晶の作製条件を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
実施例1〜3及び比較例1〜3の単結晶の写真を図1〜6に、実施例1〜3及び比較例1〜3の単結晶の各原子分布を図7〜12に、実施例1〜3及び比較例1〜3の単結晶の抵抗率の温度依存性を図13に、実施例1〜3及び比較例1〜3の単結晶のd12の温度依存性を図14に示す。
【0035】
(実施例5:酸化性ガスのモル分率の影響)
本例では、単結晶作製後の冷却時における雰囲気中の酸化性ガス(本例ではOガス)のモル分率zを0〜2%の範囲で変化させた。
モル分率以外の作成条件は実施例1と同様とした。すなわち、育成時におけるOのモル分率は2%である。
100℃〜600℃の範囲の抵抗率変化を表2に示す。
【0036】
【表2】

表2に示すように、育成時と冷却時とでOモル分率を変化させなかった場合(No.8)に比べ、冷却時にOモル分率を低下させた場合は、抵抗変化率は小さくなっていることがわかる。特に、1%を境として急激に小さくなっていることがわかる。
【0037】
(実施例6:Alの組成比の影響)
本例では、LaGa5−xAlSiO14において、Alの組成比(x)を変化させて機械結合定数の温度依存性を調べた。
x以外の作成条件は実施例1と同様とした。
なお、機械結合定数の温度依存性はインピーダンス・ゲイン−フェーズ・アナライザーを用いて共振反共振法で測定した。
【0038】
【表3】

【0039】
(実施例7:アルカリ土類金属での置換)
本例では、実施例1において、Laの一部をBaで置換した。
他の点は実施例1と同様とした。

Baで置換した場合においても実施例1と同様の効果が達成された。
【0040】
(実施例8〜11:熱処理の効果)
本例では、単結晶作成後の、熱処理条件を変化させた。
【0041】
【表4】

【0042】
表4に示すように、請求項8記載の熱処理条件では抵抗率変化が小さくなっているが、それ以外の条件では、抵抗率変化が大きくなっていることが分かる。さらに、請求項8記載の熱処理条件で熱処理を行ったガレート酸化物単結晶はは抵抗率の絶対値が二桁から四桁大きくなっている。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、特に400℃を超える高い温度範囲でも使用することができ、さらにその抵抗率の温度依存性が小さいガレート単結晶及びその作成方法並びに高温用圧電素子及び圧電センサを提供することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化性ガスを含む不活性ガス雰囲気中で溶液から単結晶を育成し、次いで、不活性ガス中の酸化性ガスのモル分率(z)を、前記育成工程における酸化性ガスのモル分率よりも低下させて冷却を行い、作成した単結晶を、酸化性ガスを含まない不活性ガス雰囲気中で熱処理する作製方法により作成されたことを特徴とするガレート酸化物単結晶。
【請求項2】
0≦z≦1%であることを特徴とする請求項1記載のガレート酸化物単結晶。
【請求項3】
0≦z≦0.5%であることを特徴とする請求項2記載のガレート酸化物単結晶。
【請求項4】
前記酸化性ガスはOであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれ
か1項記載のガレート酸化物単結晶。
【請求項5】
前記ガレート酸化物単結晶は希土類ガレート酸化物であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載のガレート酸化物単結晶。
【請求項6】
前記ガレート酸化物単結晶は、REGa5−xAlSiO14(式中、REは希土類を表し、0<x<5)、RETa0.5Ga5.5−xAl14(式中、REは希土類を表し、0<x<5.5)及びRENb0.5Ga5.5−xAl14(式中、REは希土類を表し、0<x<5.5)からなる群から選択される組成を有することを特徴とする請求項5記載のガレート酸化物単結晶。
【請求項7】
REGa5−xAlSiO14においては0<x<1.5、
RETa0.5Ga5.5−xAl14においては0<x<1.65、
RENb0.5Ga5.5−xAl14においては0<x<1.65
であることを特徴とする請求項6記載のガレート酸化物単結晶。
【請求項8】
前記ガレート酸化物は、RE3−xAEGa5−x−yAlSiO14(式中、REは希土類を表し、AEはアルカリ土類金属を表す。0<x≦3、0<y<1.5)、RE3−xAETa0.5+x/2Ga5.5−x/2−yAl14(式中、REは希土類を表し、AEはアルカリ土類金属を表す。0<x≦3、0<y<1.65)及びRE3−xAENb0.5+x/2Ga5.5−x/2−yAl14(式中、REは希土類を表し、AEはアルカリ土類金属を表す。0<x≦3、0<y<1.65)からなる群から選択される組成を有することを特徴とする請求項5記載のガレート酸化物単結晶。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項記載の単結晶からなることを特徴とする圧電素子。
【請求項10】
請求項9記載の圧電素子を用いたことを特徴とする高温用圧電センサー。
【請求項11】
100℃〜600℃の範囲で用いられることを特徴とする請求項10記載の高温用圧電センサー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2013−40093(P2013−40093A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−207445(P2012−207445)
【出願日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【分割の表示】特願2007−512894(P2007−512894)の分割
【原出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(502209796)株式会社福田結晶技術研究所 (17)
【Fターム(参考)】