説明

ガンの治療剤

【課題】ガン治療するための新規組成物の提供及び阻害する薬剤のスクリーニング方法の提供。
【解決手段】MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の発現を阻害する薬剤を含むか、あるいは、MCAF1タンパク質又はSp1タンパク質の活性を阻害する薬剤を含む、ガンを治療するための組成物。阻害する薬物は、(i)MCAF1遺伝子及び/又はSp1遺伝子を発現する細胞を試験化合物の非存在下及び存在下で培養する工程;(ii)MCAF1遺伝子及び/又はSp1遺伝子の発現のレベルを測定する工程;及び(iii)試験化合物の非存在下で測定される発現のレベルと比較したとき、発現のレベルを低下させる試験化合物を、MCAF1遺伝子及び/又はSp1遺伝子の発現を阻害するための薬剤として選択する工程からなるスクリーニング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MBD1関連クロマチン因子1(MCAF1)及び特異性タンパク質1(Sp1)の治療用途に関する。具体的には、本発明は、ガン細胞の増殖を阻害すること、ガン細胞のアポトーシスを高めること、及び/又は、ガンを治療することのための、MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の発現を阻害する薬剤の使用、及び、MCAF1タンパク質又はSp1タンパク質の活性を阻害する薬剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
テロメラーゼは、テロメアのヘキサマー反復を染色体の末端に付加するRNA依存性DNAポリメラーゼを含有する多サブユニット複合体である(1、2)。この酵素活性は通常、ほとんどの体細胞には存在せず、そのため、テロメアの段階的な喪失が細胞分裂により生じる。対照的に、85%を越えるガン性細胞及びインビトロ不死化細胞は、際限のない増殖のために要求されるテロメラーゼ活性を獲得する(3から6)。テロメラーゼ活性の再活性化は、遺伝的及び後成的な欠陥の潜在的危険性を増大させることによって細胞の形質転換の一因となり得る(7)。テロメラーゼ酵素は、2つの必須成分から、すなわち、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT;これはTERT遺伝子によってコードされる)、及び、テロメアのDNA合成のためのテンプレートとして役立つテロメラーゼRNA成分(TR;これはTERC遺伝子によってコードされる)からなる。TRはほとんどの組織において普遍的に発現し、これに対して、TERTはテロメラーゼ陽性細胞においてだけ発現する(8、9)。外因性TERTの導入は初代ヒト細胞を不死化することができ(10、11)、また、TERT及びTRの両方の過剰発現はテロメラーゼ活性を相乗的に増大させる(12)。テロメラーゼサブユニット遺伝子は生体内では適切に調節される必要があるので、TERT遺伝子及びTERC遺伝子の異常な発現は細胞の脱調節を誘導する。
【0003】
特異性タンパク質1(Sp1)はTERT遺伝子の転写制御において非常に重要な役割を果たす(13)。TERTコアプロモーターにおけるSp1の連続する結合部位である5つのGCボックスが存在する(14)。加えて、Sp1は、TERT遺伝子を細胞タイプ特異的な様式でトランスに活性化するためにc−Mycと協同することが知られている(15)。Sp1は、コアプロモーター及びエンハンサーの両方を標的とする遍在性タンパク質であるが、このタンパク質が、胃、結腸及び直腸、膵臓、乳房ならびに甲状腺の様々なガンにおいて高度に発現すること(16)は興味深いことである。従って、TERT遺伝子のSp1依存的発現は、ガン発生に向かう頻繁な経路を提供しているかもしれない。しかしながら、テロメラーゼ発現のSp1依存的制御の正確な機構は未だ解明されていない。
【0004】
本発明者らは、メチル化DNA結合ドメインタンパク質1(MBD1)がMBD1関連クロマチン因子1(MCAF1)(これはまた、ATFa関連調節因子(AM)及びATF7結合タンパク質(ATF7IP)として知られている(18))と相互作用することを最初に見出した(17)。MCAF1は、メチル化されたDNA領域における遺伝子サイレンシングのために、MBD1の転写抑制ドメインと結合し、さらにはSETドメイン二叉化1(SET domain bifurcated 1)(SETDB1)を動員する(17、19)。AM/MCAF1は、SETドメインを有するERG関連タンパク質(ESET)(ヒトSETDB1のマウスホモログ(20))によるリシン残基9(H3K9)におけるジメチルヒストンH3からトリメチルヒストンH3への変換を促進させる。従って、MCAF1は、ヘテロクロマチンアセンブリーを介するMBD1依存的な転写抑制に関与する。以前の解析結果では、MCAF1及びSp1が機能的に関連づけられることが示唆されている(17、19、21);例えば、MCAF1は、エプスタイン・バールウイルスのRtaタンパク質によるSp1媒介の転写を高める(22)。加えて、Sp1は、TFIIB、TFIIE、TBP/TFIIDを含む様々な基礎的転写因子と、また、さらには、様々な転写メディエーター、例えば、Sp1のために要求される補因子(CRSP)、と相互作用することが知られている(23)。これらの転写メディエーターは、調節情報を、Sp1と、コアRNAポリメラーゼIIを含む基礎的転写装置との間において伝達する(24)。
【発明の概要】
【0005】
テロメラーゼサブユニット遺伝子におけるMCAF1及びSp1の転写役割を調べることは非常に興味深いことである。
【0006】
本発明者らの研究中に、本発明者らは、MCAF1が、多くの異なる組織に由来したヒトのガンにおいて高度に発現することを見出しており、このことは、MCAF1が腫瘍形成において重要な役割を有することを示唆している。一貫して、本発明者らのデータは、MCAF1が、ガン細胞におけるテロメラーゼ活性のSp1依存的維持のために要求されることを明らかにしている。MCAF1又はSp1の特異的なノックダウンはTERT及びTERCの両方の発現を低下させ、その結果、テロメラーゼ活性の低下をもたらした。RNAポリメラーゼIIの活性型及び基本転写因子がMCAF1又はSp1の喪失によってTERTプロモーターから放出された。MCAF1の2つの進化的に保存されたドメインがSp1及び基本転写装置との直接的な相互作用に関わっていた。これらのデータは、腫瘍形成における一般的な機構であり得るテロメラーゼサブユニット遺伝子のSp1依存的発現を促進するMCAF1の転写メディエーター様機能について解明した。
【0007】
すなわち、本発明は下記を提供する:
[1]MBD−1関連クロマチン因子1(MCAF1)遺伝子又は特異性タンパク質1(Sp1)遺伝子の発現を阻害する薬剤を含む、ガンを治療するための医薬組成物。
【0008】
[2]前記薬剤が、
(i)MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の発現をRNA干渉(RNAi)によって阻害又は抑制する核酸;
(ii)MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の転写産物に対するアンチセンス核酸又はその一部分;及び
(iii)MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の転写産物を特異的に切断するためのリボザイム活性を有する核酸
からなる群より選択される、項目[1]による医薬組成物。
【0009】
[3]MCAF1タンパク質又はSp1タンパク質の活性を阻害する薬剤を含む、ガンを治療するための医薬組成物。
【0010】
[4]前記薬剤が、MCAF1タンパク質又はSp1タンパク質に特異的に結合する抗体である、項目[3]による医薬組成物。
【0011】
[5]前記薬剤が、MCAF1タンパク質とSp1タンパク質との間の結合を阻害する薬剤である、項目[3]又は項目[4]による医薬組成物。
【0012】
[6]前記ガンが、胃ガン、乳ガン又は肺ガンである、項目[1]から項目[5]のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【0013】
[6a]前記ガンが、乳ガン、脳ガン、頭頸部ガン、骨ガン、皮膚ガン、メラノーマ、口腔ガン、舌ガン、鼻咽頭ガン、咽頭ガン(pharyngeal cancer、laryngeal cancer)、食道ガン、甲状腺ガン、肺ガン、胃ガン、肝ガン、肝臓ガン、膵臓ガン、胆嚢ガン、胆管ガン、副腎ガン、膀胱ガン、腎臓ガン、前立腺ガン、精巣ガン、卵巣ガン、子宮ガン、子宮頸ガン、子宮内膜ガン、腸ガン、結腸ガン、直腸ガン、肛門ガン、リンパ腫、白血病、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、前リンパ性白血病、毛様細胞性白血病、大顆粒リンパ芽球性白血病、真性赤血球増加症、本態性血小板増加症、慢性好中球性白血病、骨髄線維症又は成人T細胞白血病/リンパ腫である、項目[1]から項目[5]のいずれか一項による医薬組成物。
【0014】
[6b]放射性同位体、治療タンパク質、低分子量医薬品、又は、治療遺伝子を含むベクターをさらに含む、項目[1]から項目[5]のいずれか一項による医薬組成物。
【0015】
[7]下記の工程:
(i)MCAF1遺伝子及び/又はSp1遺伝子を発現する細胞を試験化合物の非存在下及び存在下で培養する工程;
(ii)MCAF1遺伝子及び/又はSp1遺伝子の発現のレベルを測定する工程;及び
(iii)試験化合物の非存在下で測定される発現のレベルと比較したとき、発現のレベルを低下させる試験化合物を、MCAF1遺伝子及び/又はSp1遺伝子の発現を阻害するための薬剤として選択する工程
を含む、MCAF1遺伝子及び/又はSp1遺伝子の発現を阻害する薬剤についてスクリーニングするための方法。
【0016】
[8]下記の工程:
(i)MCAF1タンパク質及びSp1タンパク質を試験化合物の非存在下及び存在下で所望の溶液において混合する工程;
(ii)MCAF1タンパク質及び/又はSp1タンパク質の間での結合のレベルを試験化合物の非存在下及び存在下で測定する工程;及び
(iii)試験化合物の非存在下で測定される結合のレベルと比較したとき、結合のレベルを低下させる試験化合物を、MCAF1タンパク質及び/又はSp1タンパク質の活性を阻害するための薬剤として選択する工程
を含む、MCAF1タンパク質及び/又はSp1タンパク質の活性を阻害する薬剤についてスクリーニングするための方法。
【0017】
[9]下記の工程:
(i)MCAF1遺伝子、Sp1遺伝子、TERT遺伝子及びTERC遺伝子を発現する細胞を試験化合物の非存在下及び存在下で培養する工程;
(ii)TERT遺伝子及び/又はTERC遺伝子の発現のレベルを測定する工程;及び
(iii)試験化合物の非存在下で測定されるTERT遺伝子及び/又はTERC遺伝子の発現のレベルと比較したとき、TERT遺伝子及び/又はTERC遺伝子の発現のレベルを低下させる試験化合物を、MCAF1タンパク質及び/又はSp1タンパク質の活性を阻害するための薬剤として選択する工程
を含む、MCAF1タンパク質及び/又はSp1タンパク質の活性を阻害する薬剤についてスクリーニングするための方法。
【0018】
[10]下記の工程:
(i)MCAF1タンパク質、Sp1タンパク質及びテロメラーゼを試験化合物の非存在下及び存在下で所望の溶液において混合する工程;
(ii)テロメラーゼ活性のレベルを測定する工程;
(iii)試験化合物の非存在下で測定されるテロメラーゼ活性のレベルと比較したとき、テロメラーゼ活性のレベルを低下させる試験化合物を、MCAF1タンパク質及び/又はSp1タンパク質の活性を阻害するための薬剤として選択する工程
を含む、MCAF1タンパク質及び/又はSp1タンパク質の活性を阻害する薬剤についてスクリーニングするための方法。
【0019】
[11]前記混合する工程が、MCAF1遺伝子、Sp1遺伝子、TERT遺伝子及びTERC遺伝子を発現することができる細胞を試験化合物の非存在下及び存在下で培養することを含む、項目[10]による方法。
【0020】
[12]ガン性細胞又はインビトロ不死化細胞の増殖を阻害する薬剤についてスクリーニングするために使用される、項目[7]から項目[11]のいずれか一項による方法。
【0021】
[13]ガン性細胞のアポトーシスを促進させる薬剤についてスクリーニングするために使用される、項目[7]から項目[11]のいずれか一項による方法。
【0022】
[14]ガンを治療するための薬剤についてスクリーニングするために使用される、項目[7]から項目[11]のいずれか一項による方法。
【0023】
[15]前記ガンが、胃ガン、乳ガン又は肺ガンである、項目[14]による方法。
【0024】
[15a]前記ガンが、乳ガン、脳ガン、頭頸部ガン、骨ガン、皮膚ガン、メラノーマ、口腔ガン、舌ガン、鼻咽頭ガン、咽頭ガン、食道ガン、甲状腺ガン、肺ガン、胃ガン、肝ガン、肝臓ガン、膵臓ガン、胆嚢ガン、胆管ガン、副腎ガン、膀胱ガン、腎臓ガン、前立腺ガン、精巣ガン、卵巣ガン、子宮ガン、子宮頸ガン、子宮内膜ガン、腸ガン、結腸ガン、直腸ガン、肛門ガン、リンパ腫、白血病、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、前リンパ性白血病、毛様細胞性白血病、大顆粒リンパ芽球性白血病、真性赤血球増加症、本態性血小板増加症、慢性好中球性白血病、骨髄線維症又は成人T細胞白血病/リンパ腫である、項目[14]による方法。
【0025】
[16]MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の発現を阻害する薬剤を含む組成物。
【0026】
[17]前記薬剤が、
(i)MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の発現をRNA干渉(RNAi)によって阻害又は抑制する核酸;
(ii)MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の転写産物に対するアンチセンス核酸又はその一部分;及び
(iii)MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の転写産物を特異的に切断するためのリボザイム活性を有する核酸
からなる群より選択される、項目[16]による組成物。
【0027】
[18]MCAF1タンパク質又はSp1タンパク質の活性を阻害する薬剤を含む組成物。
【0028】
[19]前記薬剤が、MCAF1タンパク質とSp1タンパク質との間の結合を阻害する薬剤である、項目[18]による組成物。
【0029】
[20]前記薬剤が、MCAF1タンパク質又はSp1タンパク質に特異的に結合する抗体である、項目[19]に記載の組成物。
【0030】
[21]ガン性細胞又は不死化細胞の増殖を阻害するために使用される、項目[16]から項目[20]のいずれか一項による組成物。
【0031】
[22]ガン性細胞又は不死化細胞のアポトーシスを高めるために使用される、項目[16]から項目[20]のいずれか一項による組成物。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】進化的に保存されたドメインを介するSp1とのMCAF1複合体を示す。(A)MCAF1及びSp1の機能的ドメイン。MCAF1は2つの進化的に保存されたドメイン(Domain)(ドメイン1及びドメイン2)を有する。Sp1は、セリン及びトレオニンが多い領域(S/T)を伴う2つの転写活性化ドメイン(Activation domain)と、DNA結合活性を有する3つのジンクフィンガー(Zinc finger)とを含有する。MCAF1及びSp1の細菌により発現させた部分がプルダウンアッセイのために示される。(B)MCAF1と、Sp1との間での直接的な相互作用。固定化されたGST融合MCAF1(Δ10、Δ18及びΔ8)をHeLa核抽出物とインキュベーションした(左側)。MCAF1のドメイン1(Δ18)及びドメイン2(Δ8)の両方がSp1のジンクフィンガードメインに結合した(右側)。(C)MCAF1及びSp1の複合体形成。内因性のMCAF1及びSp1をHeLa細胞において免疫沈殿させた。インプット(Input)は反応混合物におけるタンパク質の10%を示す(B及びC)。
【図2】MCAF1がSp1依存的様式でテロメラーゼサブユニット遺伝子プロモーターに存在することを示す。(A)ヒトのTERTプロモーター領域及びTERCプロモーター領域の概略図。両方の遺伝子が、多数のSp1結合部位(Sp1-binding site)(白四角)及びエキソン(黒四角)を含有するプロモーター関連CpGアイランドを有していた。ChIP分析のために、PCR増幅フラグメントが灰色の線により示される。(B)テロメラーゼサブユニット遺伝子プロモーターにおけるMCAF1及びSp1の局在化。TERT遺伝子プロモーター及びTERC遺伝子プロモーターにおけるMCAF1及びSp1のChIP分析。MCAF1及びSp1をDNAに架橋し、特異的な抗体により沈殿させ、その後、特異的なプライマーを用いたPCR増幅を行った。ゲノムDNAをコントロール(Control)として使用した(インプット)。(C及びD)MCAF1及びSp1の特異的なsiRNA媒介ノックダウン。ウエスタンブロット分析のために、β−チューブリン(β-tubulin)がコントロールとして示される(C)。定量的RT−PCRのために、コントロールsiRNAの使用による相対的なmRNAレベル(Relative mRNA level)が1に正規化された(normalized)(D)。**P<0.01。(E)TERTプロモーター(TERT promoter)におけるMCAF1のSp1依存的局在化。コントロールsiRNA、及び、種が一致するIgGをコントロールとして使用した。値が、4つ以上の独立した実験からの平均及び標準偏差として示される。**P<0.01。
【図3】MCAF1−Sp1複合体がテロメラーゼ活性及び細胞増殖のために要求されることを示す。(A)MCAF1−Sp1複合体によるテロメラーゼサブユニット遺伝子のトランス活性化。テロメラーゼサブユニット遺伝子の定量的RT−PCR分析をMCAF枯渇細胞又はSp1枯渇細胞において行った。コントロールsiRNAの使用による相対的なmRNAレベルが1に正規化された。(B)MCAF1−Sp1複合体によるテロメラーゼ活性の維持。テロメラーゼ活性の定量的PCR分析をMCAF1枯渇細胞又はSp1枯渇細胞において行った。コントロールsiRNA及び1.0μgの細胞溶解物(cell lysate)による相対的なテロメラーゼレベルが1に正規化された。値が、4つ以上の独立した実験からの平均及び標準偏差として示される(A及びB)。**P<0.01、P<0.05。(C及びD)MCAF1−Sp1複合体による細胞増殖の維持。細胞数(cell number)を、MCAF1、Sp1又はTERTのノックダウンの後の示された時点で測定した。結果を3つの独立した実験から得た。誤差バーは標準偏差を示す。
【図4】MCAF1のSp1共役した転写メディエーター様機能を示す。(A及びB)MCAF1−Sp1複合体によるTERTプロモーターへの基本転写装置の導入。MCAF1又はSp1のノックダウンはTERTプロモーターにおけるRNAポリメラーゼIIの活性型[Pol II(Ser 5P)]及びERCC3を低下させた。値が、4つ以上の独立した実験からの平均及び標準偏差として示される(A及びB)。**P<0.01、P<0.05。(C)MCAF1、基本転写因子及びRNAポリメラーゼIIの複合体形成。MCAF1を抗MCAF1抗体によりHeLa核抽出物から沈殿させた(左側)。ERCC3、RNAポリメラーゼII(Pol II)、TFIIEα及びTFIIEβを同様に免疫沈殿させた(右側)。これらの免疫複合体を、示された抗体によりプローブ探査した。(D)MCAF1の保存されたドメインとの基本転写因子の相互作用。GST融合MCAF1(Δ10、Δ18及びΔ8)をHeLa核抽出物とインキュベーションした。結合したタンパク質を、示された抗体によりプローブ探査した。(E)MCAF1と、基本転写因子との間での直接的な相互作用。グルタチオン−アガロース上のGST−ERCC3及びGST−ERCC2をHisタグMCAF1(Δ10及びΔ8)とインキュベーションした。逆に、固定化されたGST−MCAF1(Δ10、Δ18及びΔ8)をHisタグTFIIEα及びHisタグTFIIEβと混合した。インプットは反応混合物におけるタンパク質の10%を示す(CからE)。
【図5】MCAF1−Sp1複合体がTERTプロモーター領域におけるCpGメチル化に影響を及ぼすことを示す。TERT遺伝子のプロモーター及び第1エキソンにおける38個のCpGジヌクレオチドのメチル化状態を重亜硫酸ゲノム配列決定によってHeLa細胞において分析した。CpGジヌクレオチドが示される(部位1から38)。MCAF1又はSp1のノックダウンは、Sp1結合部位及びCTCF結合部位(CTCF-binding site)に近いCpGでのメチル化状態を変化させた。白丸、メチル化されていないCpG;黒丸、メチル化された(methylated)CpG。
【図6】ヒトのガン組織におけるMCAF1の過剰発現を示す。非ガン性組織及びガン性組織の連続切片:胃(A;aからd)、乳房(B;eからh)及び肺(C;iからn)。正常な組織はMCAF1の検出不能な発現又は非常に低い発現を示す(b、f及びj)。対照的に、MCAF1が、胃の腺ガン(d)、乳房の浸潤性腺管ガン(h)、ならびに、肺の腺ガン及び扁平上皮細胞ガン(それぞれ、l及びn)において高度に染色された。ヘマトキシリン及びエオシンによる染色(a、c、e、g、i、k及びm);MCAF1についての免疫染色(b、d、f、h、j、l及びn)。スケールバー、200μm。
【図7】(補充図1)MCAF1−Sp1がBRCA1遺伝子プロモーターに存在することを示す。(A)ヒトのBRCA1プロモーター領域の概略図。BRCA1遺伝子は、多数のSp1結合部位(白四角)及びエキソン(黒四角)を含有するプロモーター関連CpGアイランドを有した。ChIP分析のために、PCR増幅フラグメントが灰色の線により示される。(B)BRCA1遺伝子プロモーターにおけるMCAF1及びSp1の局在化。BRCA1遺伝子プロモーターにおけるMCAF1及びSp1のChIP分析。MCAF1及びSp1をDNAに架橋し、特異的な抗体により沈殿させ、その後、特異的なプライマーを用いたPCR増幅を行った。ゲノムDNAをコントロールとして使用した(インプット)。
【図8】(補充図2)HCT116細胞におけるテロメラーゼ遺伝子発現に対するMCAF1又はSp1のノックダウンの影響を示す。(A)MCAF1又はSp1の特異的なsiRNA媒介ノックダウン。定量的RT−PCRのために、コントロールsiRNAの使用による相対的なmRNAレベルが1に正規化された。**P<0.01。(B)MCAF1−Sp1複合体によるテロメラーゼサブユニット遺伝子のトランス活性化。テロメラーゼサブユニット遺伝子の定量的RT−PCR分析をMCAF1枯渇細胞又はSp1枯渇細胞において行った。コントロールsiRNAの使用による相対的なmRNAレベルが1に正規化された。値が、4つ以上の独立した実験からの平均及び標準偏差として示される。**P<0.01。
【図9】(補充図3)テロメラーゼ活性に対するTERTノックダウンの影響を示す。(A)TERTの特異的なsiRNA媒介ノックダウン。定量的RT−PCRのために、コントロールsiRNAの使用による相対的なmRNAレベルが1に正規化された。**P<0.01。(B)TERTによるテロメラーゼ活性の維持。テロメラーゼ活性の定量的PCR分析をTERT枯渇細胞において行った。コントロールsiRNA及び1.0μgの細胞溶解物による相対的なテロメラーゼレベルが1に正規化された。値が、4つ以上の独立した実験からの平均及び標準偏差として示される。**P<0.01、P<0.05。
【図10】(補充図4)ヒストン修飾に対するMCAF1又はSp1のノックダウンの影響を示す。MCAF1枯渇下又はSp1枯渇下でのTERTプロモーターにおける転写活性な特徴。H3アセチル化だけがSp1ノックダウン細胞において低下し、一方で、MCAF1又はSp1の枯渇は、何ら有意でない変化をH3K4メチル化及びH4アセチル化において示した(A及びB)。これらの特徴は、GAPDHプロモーター(GAPDH promoter)(C及びD)と比較した場合、TERTプロモーターでは低いレベルで見出された。種が一致するコントロールIgGを使用した。値が、4つ以上の独立した実験からの平均及び標準偏差として示される。**P<0.01。
【図11】(補充図5)ヒトのガン組織におけるMCAF1の過剰発現を示す。(A)ヒトのガン組織におけるMCAF1の免疫染色レベルの概要。70%を越える調べられたガンがMCAF1の高まった発現を示す。(B)発現状態が乳ガン組織によって表される。ガン細胞の核において見出されるMCAF1染色について、陰性(−)、陽性(+)及び強い陽性(++)。スケールバー、200μm。
【図12】(補充表1)実施例において使用されるsiRNAの一覧表を示す。
【図13】(補充表2)実施例に記載される定量的RT−PCRにおいて使用されるプライマーの一覧表を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
MCAF1タンパク質のアミノ酸配列、及び、MCAF1タンパク質をコードする遺伝子のヌクレオチド配列は公知である。例えば、ヒトのMBD1関連クロマチン因子−1(MCAF1、これは以前には「MCAF」と呼ばれる)がNCBIデータベースにおいてAF425650の登録番号により登録されており、また、Mol. Cell. Biol., Vol. 23, pp. 2834-2843 (2003年)などにも記載される。従って、当業者は、MCAF1タンパク質、及び、MCAF1タンパク質をコードする遺伝子を容易に得る。本明細書中では、MCAF1タンパク質は時には、単に「MCAF1」として示される。
【0034】
Sp1タンパク質のアミノ酸配列、及び、Sp1タンパク質をコードする遺伝子のヌクレオチド配列は公知である。例えば、ヒトの特異性タンパク質1(Sp1)が、NCBIデータベースにおいて、NP_612482(タンパク質)、NM_138473(mRNA)又はNC_000012(遺伝子)の登録番号により登録されており、また、Cell, 51, 1079-1090, 1987などにも記載される。従って、当業者は、Sp1タンパク質、及び、Sp1タンパク質をコードする遺伝子を容易に得る。本明細書中では、Sp1タンパク質は時には、単に「Sp1」として示される。
【0035】
TERTタンパク質のアミノ酸配列、及び、TERTタンパク質をコードする遺伝子のヌクレオチド配列は公知である。例えば、ヒトのテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)が、NCBIデータベースにおいて、NP_937983、NP_937986(タンパク質)、NM_198253、NM_198255(mRNA)又はNC_000005(遺伝子)の登録番号により登録されており、また、Science, 276 (5312), 561-567 (1997)などにも記載される。従って、当業者は、TERTタンパク質、及び、TERTタンパク質をコードする遺伝子を容易に得る。本明細書中では、TERTタンパク質は時には、単に「TERT」として示される。
【0036】
TERCのヌクレオチド配列は公知である。例えば、ヒトのテロメラーゼRNA成分(TERC)が、NCBIデータベースにおいて、NR_001566(RNA)又はNC_000003(遺伝子)の登録番号により登録されており、また、Science, 269 (5228), 1236-1241 (1995)などにも記載される。従って、当業者はTERCを容易に得る。
【0037】
1.MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の発現の阻害
本発明は、MBD−1関連クロマチン因子1(MCAF1)遺伝子又は特異性タンパク質1(Sp1)遺伝子の発現を阻害する薬剤を含む、ガンを治療するための医薬組成物を提供する。
【0038】
本明細書中で使用される用語「薬剤("agent"又は"agents")」は、本発明の目的のためにインビトロ又はインビボで使用することができる、任意の形態での任意の1つ又はそれ以上の化学物質、化合物、医薬品又は他の物質を指す。
【0039】
本明細書中で使用される用語「MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の発現を阻害する薬剤」は、MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の発現を阻害又は抑制する任意の薬剤を示し、これには、典型的には、(i)MCAF1 mRNA又はSp1 mRNAへのMCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の転写をそれぞれ阻害又は抑制する薬剤、及び、(ii)MCAF1タンパク質又はSp1タンパク質へのMCAF1 mRNA又はSp1 mRNAの翻訳をそれぞれ阻害又は抑制する薬剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
MCAF1 mRNA又はSp1 mRNAへのMCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の転写をそれぞれ阻害又は抑制する薬剤の例には、
(i)MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子に対するアンチセンス核酸又はその一部分;
(ii)MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子に対するデコイ核酸又はその一部分;
(iii)MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子に対して優性ネガティブに作用する変化体遺伝子又はその一部分;
(iv)MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の転写を阻害又は抑制する任意の他の化合物;など
が含まれる。
【0041】
MCAF1タンパク質へのMCAF1 mRNAの翻訳を阻害又は抑制する薬剤の例には、
(i)MCAF1 mRNA又はSp1 mRNAに対するRNA干渉(RNAi)作用を有する核酸又はポリヌクレオチドあるいはその一部分(例えば、siRNA);
(ii)MCAF1 mRNA又はSp1 mRNAに対するアンチセンス核酸又はアンチセンスポリヌクレオチドあるいはその一部分;
(iii)MCAF1 mRNA又はSp1 mRNAに対するリボザイム活性を有する核酸又はポリヌクレオチドあるいはその一部分;
(iv)MCAF1タンパク質又はSp1タンパク質へのMCAF1 mRNA又はSp1 mRNAの翻訳をそれぞれ阻害又は抑制する任意の他の化合物;など
が含まれる。
【0042】
用語「核酸」又は用語「ポリヌクレオチド」は本明細書中では交換可能に使用され、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA(例えば、化学合成DNA)、及び、DNA(又はRNA)を含有する核酸アナログを含めて、RNA及びDNAの両方を指す。ポリヌクレオチドは任意の三次元構造を有することができる。核酸は二本鎖又は一本鎖(すなわち、センス鎖又はアンチセンス一本鎖)が可能である。ポリヌクレオチドの限定されない例には、遺伝子、遺伝子フラグメント、エキソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝型ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ及びプライマー、ならびに、核酸アナログが含まれる。
【0043】
アンチセンス技術は当分野では周知である。この技術において、内因性遺伝子に由来する核酸セグメントがクローン化され、RNAのアンチセンス鎖が転写されるようにプロモーターに機能的に連結される。その後、組換えベクターが標的細胞に形質転換され、RNAのアンチセンス鎖が産生される。核酸セグメントは、抑制されることになる内因性遺伝子の完全な配列である必要はなく、しかし、典型的には、抑制されることになる内因性遺伝子の少なくとも一部又は一部分に対して実質的に同一である。一般に、より高い相同性が、より短い配列の使用を補うために使用され得る。典型的には、少なくとも30ヌクレオチドの配列が使用される(例えば、少なくとも40ヌクレオチド、50ヌクレオチド、80ヌクレオチド、100ヌクレオチド、200ヌクレオチド、500ヌクレオチド又はそれ以上)。従って、例えば、本明細書中において使用される核酸は、MCAF1ポリペプチド又はSp1ポリペプチドをコードする上記核酸の1つに対するアンチセンス核酸であり得る。
【0044】
触媒作用RNA分子又はリボザイムもまた、発現を阻害又は抑制するために使用することができる。具体的には、様々なリボザイムを、事実上任意の標的RNAと特異的に対形成し、ホスホジエステル骨格を特定の場所で切断し、それにより、標的RNAを機能的に不活性化するために設計することができる。リボザイム配列をリボザイム内に含むことはRNA切断活性をリボザイムに与え、それにより、その抑制活性を増大させる。標的RNAに特異的なリボザイムを設計及び使用するための様々な方法が当業者には公知である。
【0045】
RNA干渉は、遺伝子の発現及びウイルスの複製を調節するための細胞機構である。この機構は、二本鎖の小さい干渉するRNA分子(siRNA)によって媒介される。細胞は、siRNAと同じ配列を含有するすべての内部mRNAを破壊することによって、細胞に導入された外来の二本鎖RNA(例えば、siRNA)に対して応答する。標的mRNAを標的とするためにsiRNAを設計及び調製するための様々な方法が当業者には公知である。例えば、干渉するRNAに転写される配列を含む構築物を調製することができる。そのようなRNAは、自身にアニーリングすることができるRNA(例えば、ステム・ループ構造を有する二本鎖RNA)であり得る。二本鎖RNAのステム部分の一方の鎖が、目的とするポリペプチドのセンスコード配列に対して類似又は同一で、長さが約10ヌクレオチドから約2,500ヌクレオチドである配列を含む。センスコード鎖に対して類似又は同一である配列の長さは、10ヌクレオチドから500ヌクレオチド、15ヌクレオチドから300ヌクレオチド、20ヌクレオチドから100ヌクレオチド、又は、25ヌクレオチドから100ヌクレオチドが可能である。二本鎖RNAのステム部分の反対鎖は、目的とするMCAF1ポリペプチド又はSp1ポリペプチドのアンチセンス配列を含み、センス配列の対応する長さよりも短い長さ、又は、センス配列の対応する長さと同じ長さ、又は、センス配列の対応する長さよりも長い長さを有することができる。二本鎖RNAのループ部分は10ヌクレオチドから5,000ヌクレオチドが可能であり、例えば、15ヌクレオチドから1,000ヌクレオチド、20ヌクレオチドから500ヌクレオチド、又は、25ヌクレオチドから200ヌクレオチドが可能である。RNAのループ部分はイントロンを含むことができる。
【0046】
その後、化学合成、インビトロ転写、siRNA発現ベクター及びPCR発現カセットを、設計されたsiRNAを調製するために使用することができる。
【0047】
さらには、核酸以外の任意の化合物を、MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の転写活性を阻害又は抑制するために使用することができる。そのような化合物は、MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の発現又は転写に関与する薬剤に作用することができる。そのような薬剤は、天然に存在する化合物、又は、合成化合物であり得る。そのような化合物は、本明細書中の他のところで記載される本発明のスクリーニング方法によって得ることができる。
【0048】
2.MCAF1タンパク質又はSp1タンパク質の活性の阻害
本発明はまた、MCAF1タンパク質又はSp1タンパク質の活性を阻害する薬剤を含む、ガンを治療するための医薬組成物を提供する。
【0049】
本明細書中で使用される用語「MCAF1」又は用語「MCAF1タンパク質」は、全長のMCAF1タンパク質だけでなく、MCAF1タンパク質の1つ又はそれ以上の機能的ドメインもまた指す。そのような機能的ドメインの例には、MCAF1の2つの進化的に保存されたドメイン、すなわち、ドメイン1及びドメイン2が含まれ、これらは、MCAF1タンパク質の562番目のアミノ酸から817番目のアミノ酸までの連続する残基、及び、1154番目のアミノ酸から1270番目のアミノ酸までの連続する残基からそれぞれなる(図1Aを参照のこと)。
【0050】
同様に、用語「MCAF1遺伝子」は、全長のMCAF1タンパク質をコードするポリヌクレオチドだけでなく、MCAF1タンパク質の機能的ドメインをコードするポリヌクレオチドもまた指す。
【0051】
本明細書中で使用される用語「Sp1」又は用語「Sp1タンパク質」は、全長のSp1タンパク質だけでなく、Sp1タンパク質の1つ又はそれ以上の機能的ドメインもまた指す。そのような機能的ドメインの例には、2つの転写活性化ドメイン、及び、3つのジンクフィンガーモチーフから主として構成される領域が含まれる。2つの活性化ドメインは、Sp1タンパク質の139番目のアミノ酸から250番目のアミノ酸までの連続する残基、及び、346番目のアミノ酸から492番目のアミノ酸までの連続する残基からそれぞれなる(図1Aを参照のこと)。3つのジンクフィンガーモチーフは、Sp1タンパク質の626番目のアミノ酸から708番目のアミノ酸までの連続する残基を含む(図1Aを参照のこと)。
【0052】
同様に、用語「Sp1遺伝子」は、全長のSp1タンパク質をコードするポリヌクレオチドだけでなく、Sp1タンパク質の機能的ドメインをコードするポリヌクレオチドもまた指す。
【0053】
本明細書中で使用される場合、「MCAF1タンパク質の活性」には、Sp1タンパク質、MBD1、SETDB1、ATF7、ZNF331、RPB3又はウイルスのオンコプロテインなどに結合する活性が含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
本明細書中で使用される場合、「Sp1タンパク質の活性」には、MCAF1タンパク質、p53、HDAC1、RELA、JUN、SMAD3、MYC、SPR−2、SMAD4、ERK1、ETS1又は基本転写因子などに結合する活性が含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
本明細書中で使用される用語「MCAF1タンパク質又はSp1タンパク質の活性を阻害する薬剤」は、MCAF1タンパク質又はSp1タンパク質の活性を阻害又は抑制する任意の薬剤を指し、これには、典型的には、(i)MCAF1タンパク質と、Sp1タンパク質との間での結合を阻害する薬剤、(ii)MCAF1タンパク質及びSp1タンパク質を分解又は修飾する薬剤、(iii)MCAF1遺伝子及びSp1遺伝子の発現を阻害する薬剤、及び(iv)MCAF1及びSp1の、それらの標的遺伝子に対する結合活性を阻害する薬剤などが含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
MCAF1タンパク質と、Sp1タンパク質との間での結合を阻害する薬剤には、例えば、(i)MCAF1タンパク質と、Sp1タンパク質との間での結合を阻害するように、MCAF1タンパク質又はSp1タンパク質に特異的に結合する抗体;及び(ii)本明細書中の他のところで記載される本発明のスクリーニング方法によって得ることができる薬剤などが含まれる。
【0057】
MCAF1又はSp1の特異的な抗体を、当分野では公知である技術に従って調製することができる。例えば、ポリクローナル血清を調製するために、MCAF1又はSp1の抗原性部分(これは、MCAF1又はSp1に由来するペプチドからなる)、例えば、保存されたドメイン、又は、タンパク質全体までもが、場合により、アジュバントの存在下で、又は、免疫刺激剤、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、にコンジュゲート化されて、哺乳動物(例えば、マウス又はウサギなど)に注射される。典型的には、1週間間隔での追加抗原刺激注射の後、動物は採血され、血清が単離される。この血清はそのまま使用することができ、あるいは、ポリクローナル抗体を得るために、プロテインA−セファロース、抗原セファロース又は抗マウスIgG−セファロースを用いるアフィニティークロマトグラフィーを含む様々な方法によって使用前に精製することができる。
【0058】
合成ペプチドが、抗体を調製するために使用されるとき、最も一般的な実施は、タンパク質抗原のカルボキシル末端配列又はアミノ末端配列に対応する10個から15個のアミノ酸残基のペプチドを選ぶこと、及び、そのようなペプチドをキャリア分子、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン又はBSA、に化学的に架橋することである。しかしながら、内部配列のペプチドが所望されるならば、ペプチドの選択は、可能性のある抗原性部位又は他の所望される特徴、例えば、Ser−35、Ser−37及びSer−238の1つ又はそれ以上を含むペプチド、を予測するアルゴリズムの使用に基づく。このアルゴリズムは、典型的には、疎水性の予測(Kyte and Doolittle, 1982, J. Mol. Biol., 157, 105-132;Hopp and Woods, 1983, Mol. Immunol., 20, 483-489)、又は、二次構造の予測(Chou and Fasman, 1978a, Annu. Rev. Biochem., 47, 251-276;Chou and Fasman, 1978b, Adv. Enzymol. Relat. Areas Mol. Biol., 47, 45-148)に基づく。その目的は、表面に露出するタンパク質の領域、例えば、親水性領域、又は、構造の残部部分に対して立体配座的に柔軟であるタンパク質の領域、例えば、ループ領域、あるいは、β−ターンを形成することが予測される領域を選ぶことである。選択プロセスはまた、ペプチドをキャリアタンパク質に結合するために使用されるカップリング手順の化学反応により課される制約によって制限される場合がある。
【0059】
モノクローナル抗体を、類似する確立された手順に従って調製することができる。モノクローナル抗体の短縮化体もまた、所望のモノクローナル抗体フラグメントを適する宿主において発現させるプラスミドが作製される組換え技術によって調製することができる。
【0060】
MCAF1タンパク質又はSp1タンパク質に対する抗体はまた、化合物を組織の特定のところに標的化するために、様々な化合物、例えば、放射性核種又は蛍光性化合物に、又は、診断的画像化及び治療のためのリポソームにカップリングするために使用することができる。このことは、正常な細胞及び組織には有害である抗ガン薬物による悪性組織の特異的な標的化のために特に有益である。
【0061】
3.MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の発現、あるいは、MCAF1タンパク質又はSp1タンパク質の活性を阻害する薬剤を含む医薬品の配合
MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の発現、あるいは、MCAF1タンパク質又はSp1タンパク質の活性を阻害する薬剤は、ガンを治療するための医薬品として有用である。そのようなガンには、乳ガン、脳ガン、頭頸部ガン、骨ガン、皮膚ガン、メラノーマ、口腔ガン、舌ガン、鼻咽頭ガン、咽頭ガン、食道ガン、甲状腺ガン、肺ガン、胃ガン、肝ガン、肝臓ガン、膵臓ガン、胆嚢ガン、胆管ガン、副腎ガン、膀胱ガン、腎臓ガン、前立腺ガン、精巣ガン、卵巣ガン、子宮ガン、子宮頸ガン、子宮内膜ガン、腸ガン、結腸ガン、直腸ガン、肛門ガン、リンパ腫、白血病、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、前リンパ性白血病、毛様細胞性白血病、大顆粒リンパ芽球性白血病、真性赤血球増加症、本態性血小板増加症、慢性好中球性白血病、骨髄線維症及び成人T細胞白血病/リンパ腫などが含まれるが、これらに限定されない。
【0062】
薬剤は、液体調製物として直接に、又は、適切な調製物形態での医薬組成物として、ヒト又は他の温血動物(例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に経口投与又は非経口投与により投与することができる。用量は、投与されるべき対象、標的疾患、状態、投与経路などに依存して変化し得る。例えば、薬剤が、成人のガン患者を治療するために使用されるときには、薬剤を、通常の場合には約0.01mg/kg体重から約20mg/kg体重の単回用量で、好ましくは約0.1mg/kg体重から約10mg/kg体重の単回用量で、より好ましくは約0.1mg/kg体重から約5mg/kg体重の単回用量で、1日あたりおよそ1回から5回、好ましくは1日あたりおよそ1回から3回、静脈内注射の形態で投与することが好都合である。他の非経口投与及び経口投与において、薬剤を、上記で示された用量に対応する用量で投与することができる。状態が特に重篤であるときには、用量を、状態に従って増大させることができる。
【0063】
本発明の薬剤は、そのまま直接に、又は、適切な医薬組成物として投与することができる。上記で記載される投与のために使用される医薬組成物は、上記化合物又はその塩、希釈剤又は賦形剤とともに、薬理学的に許容され得るキャリアを含有する。そのような組成物は、経口投与又は非経口投与のために適する調製物において提供される。
【0064】
すなわち、経口投与のための組成物の例には、固体又は液体の調製物、具体的には、錠剤(糖衣錠及びフィルム被覆錠剤を含む)、ピル、顆粒、粉末調製物、カプセル(ソフトカプセルを含む)、シロップ、エマルション、懸濁物などが含まれる。そのような組成物は公知の方法によって製造することができ、医薬調製物の分野で従来から使用されるビヒクル、希釈剤又は賦形剤を含有する。錠剤のためのビヒクル又は賦形剤の例が、ラクトース、デンプン、スクロース、ステアリン酸マグネシウムなどである。
【0065】
非経口投与のための組成物の例が、注射可能な調製物、坐薬などである。注射可能な調製物には、様々な投薬形態物、例えば、静脈内注射物、皮下注射物、皮内注射物及び筋肉内注射物、点滴注入剤などが含まれ得る。これらの注射可能な調製物は公知の方法によって調製することができる。注射可能な調製物は、例えば、上記で記載された薬剤又はその塩を、注射剤のために従来から使用される無菌の水性媒体又は油性媒体に溶解、懸濁又は乳化することによって調製することができる。注射剤のための水性媒体として、例えば、生理学的な生理的食塩水、グルコース及び他の補助剤を含有する等張性溶液などがあり、これらは、適切な可溶化剤、例えば、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルバート80、HCO−50(水素化ひまし油のポリオキシエチレン(50モル)付加物))、との組合せで使用することができる。油性媒体として、例えば、ゴマ油、ダイズ油などが用いられ、これらは、可溶化剤、例えば、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、との組合せで使用することができる。このように調製された注射剤は好ましくは、適切なアンプルに満たされる。直腸投与のために使用される坐薬は、上記薬剤又はその塩を坐薬のための従来の基剤と混合することによって調製することができる。
【0066】
好都合なことに、上記で記載される、経口使用又は非経口使用のための医薬組成物は、活性成分の用量に合わせるために適した単位服用量での医薬調製物に調製される。そのような単位服用量調製物には、例えば、錠剤、ピル、カプセル、注射剤(アンプル)、坐薬などが含まれる。含有される上記薬剤の量は一般に、投薬形態物あたり約5mgから500mgである;特に注射の形態では、上記薬剤が約5mgから100mgで含有されることが好ましく、それ以外の形態では約10mgから250mgで含有されることが好ましい。
【0067】
上記で記載されるそれぞれの組成物はさらに、配合が、上記で記載される薬剤との何らかの有害な相互作用を引き起こさない限り、他の活性な成分を含有することができる。
【0068】
4.MCAF1又はSp1の発現又は活性を阻害する薬剤についてのスクリーニング
本発明はさらに、MCAF1遺伝子及び/又はSp1遺伝子の発現、あるいは、MCAF1タンパク質及び/又はSp1タンパク質の活性を阻害する薬剤についてスクリーニングする方法を提供する。
【0069】
一実施形態において、本発明は、下記の工程を含む、MCAF1遺伝子及び/又はSp1遺伝子の発現を阻害する薬剤についてスクリーニングするための方法を提供する:
(i)MCAF1遺伝子及び/又はSp1遺伝子を発現する細胞を試験化合物の非存在下及び存在下で培養する工程;
(ii)MCAF1遺伝子及び/又はSp1遺伝子の発現のレベルを測定する工程;及び
(iii)試験化合物の非存在下で測定される発現のレベルと比較したとき、発現のレベルを低下させる試験化合物を、MCAF1遺伝子及び/又はSp1遺伝子の発現を阻害するための薬剤として選択する工程。
【0070】
別の実施形態において、本発明は、下記の工程を含む、MCAF1タンパク質及び/又はSp1タンパク質の活性を阻害する薬剤についてスクリーニングするための方法を提供する:
(i)MCAF1タンパク質及びSp1タンパク質を試験化合物の非存在下及び存在下で所望の溶液において混合する工程;
(ii)MCAF1タンパク質及び/又はSp1タンパク質の間での結合のレベルを試験化合物の非存在下及び存在下で測定する工程;及び
(iii)試験化合物の非存在下で測定される結合のレベルと比較したとき、結合のレベルを低下させる試験化合物を、MCAF1タンパク質及び/又はSp1タンパク質の活性を阻害するための薬剤として選択する工程。
【0071】
さらに別の実施形態において、本発明は、下記の工程を含む、MCAF1タンパク質及び/又はSp1タンパク質の活性を阻害する薬剤についてスクリーニングするための方法を提供する:
(i)MCAF1遺伝子、Sp1遺伝子、TERT遺伝子及びTERC遺伝子を発現する細胞を試験化合物の非存在下及び存在下で培養する工程;
(ii)TERT遺伝子及び/又はTERC遺伝子の発現のレベルを測定する工程;及び
(iii)試験化合物の非存在下で測定されるTERT遺伝子及び/又はTERC遺伝子の発現のレベルと比較したとき、TERT遺伝子及び/又はTERC遺伝子の発現のレベルを低下させる試験化合物を、MCAF1タンパク質及び/又はSp1タンパク質の活性を阻害するための薬剤として選択する工程。
【0072】
なおさらにさらなる実施形態において、本発明は、下記の工程を含む、MCAF1タンパク質及び/又はSp1タンパク質の活性を阻害する薬剤についてスクリーニングするための方法を提供する:
(i)MCAF1タンパク質、Sp1タンパク質及びテロメラーゼを試験化合物の非存在下及び存在下で所望の溶液において混合する工程;
(ii)テロメラーゼ活性のレベルを測定する工程;
(iii)試験化合物の非存在下で測定されるテロメラーゼ活性のレベルと比較したとき、テロメラーゼ活性のレベルを低下させる試験化合物を、MCAF1タンパク質及び/又はSp1タンパク質の活性を阻害するための薬剤として選択する工程。
【0073】
好ましい実施形態において、混合する工程は、MCAF1遺伝子、Sp1遺伝子、TERT遺伝子及びTERC遺伝子を発現することができる細胞を試験化合物の非存在下及び存在下で培養することを含む。
【0074】
様々な供給源に由来する様々な薬剤を、本発明の方法を使用することによって、ガン性細胞のアポトーシスを促進させるために、及び/又は、ガン性細胞の増殖を阻害するために、MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の発現、あるいは、MCAF1タンパク質又はSp1タンパク質の活性を阻害することについてスクリーニングすることができる。スクリーニングされる薬剤は、天然に存在する分子、又は、合成分子であり得る。スクリーニングされる薬剤はまた、天然の供給源から得ることができ、例えば、海洋微生物、藻類、植物、菌類などから得ることができる。代替として、スクリーニングされる薬剤は、ペプチド又は小分子を含めて、薬剤のコンビナトリアルライブラリーに由来し得るか、あるいは、例えば、化学産業、医薬品産業、環境産業、農産業、水産業、化粧品産業、製薬産業及びバイオテクノロジー産業によって工業的に合成された化学化合物の既存のレパートリーに由来し得る。薬剤には、例えば、医薬品、治療剤、環境薬剤、農業薬剤又は工業薬剤、汚染物質、化粧品、薬物、有機化合物、脂質、グルココルチコイド、抗生物質、ペプチド、タンパク質、糖、炭水化物、キメラ分子などが含まれ得る。
【0075】
コンビナトリアルライブラリーを、段階的様式で合成することができる多くのタイプの化合物について作製することができる。そのような化合物には、ポリペプチド、タンパク質、核酸、β−ターン模倣物、多糖、リン脂質、ホルモン、プロスタグランジン類、ステロイド類、芳香族化合物、複素環式化合物、ベンゾジアゼピン系化合物、オリゴマー状のN−置換グリシン及びオリゴカルバマートが含まれる。化合物の大きなコンビナトリアルライブラリーを、国際特許出願公開WO95/12608、同WO93/06121、同WO94/08051、同WO95/35503及び同WO95/30642に記載されるコード化合成ライブラリー(ESL)法によって構築することができる(これらのそれぞれがすべての目的のためにその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。ペプチドライブラリーはまた、ファージディスプレー法によって作製することができる。
【0076】
様々な技術を、シグナルを生じさせるために、また、MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の発現、あるいは、MCAF1タンパク質又はSp1タンパク質の活性に対する薬剤の影響を検出及び評価するために、一緒に、又は、別々に使用することができる。シグナルは、例えば、インサイチュハイブリダイゼーション、特定のタンパク質の抗体染色によって生じさせることができる。
【0077】
テロメラーゼの酵素活性のレベルにおける変化を、当業者には周知である様々な手段によって検出することができ、これらには、TRAP(テロメア反復増幅プロトコル)、テロメア−FISH、テロメア結合タンパク質の免疫染色、及び、市販の検出キット(例えば、TRAP−eze(登録商標)Telomerase Detection Kit(Chemicon、Temecula、CA、米国))などが含まれるが、これらに限定されない。Kim et al., Science, Vol. 266, 1994, 2011-2015、及び、Kang et al., Oncogen (2008), 1-10もまた参照のこと(これらのそれぞれがすべての目的のためにその全体において参考として本明細書中に組み込まれる)。
【0078】
本発明のスクリーニング方法は典型的には、ガン性細胞又はインビトロ不死化細胞の増殖を阻害する薬剤についてスクリーニングすることにおいて、ガン性細胞のアポトーシスを促進させる薬剤についてスクリーニングするために、ガンを治療するための薬剤についてスクリーニングするためなどに有用である。
【0079】
5.MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の発現、あるいは、MCAF1タンパク質又はSp1タンパク質の活性を阻害する薬剤を含む組成物
本発明はまた、MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の発現を阻害する薬剤を含む組成物を提供する。
【0080】
好ましくは、薬剤は、
(i)MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の発現をRNA干渉(RNAi)によって阻害又は抑制する核酸;
(ii)MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の転写産物に対するアンチセンス核酸又はその一部分;及び
(iii)MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の転写産物を特異的に切断するためのリボザイム活性を有する核酸
からなる群より選択される。
【0081】
本発明はさらに、MCAF1タンパク質又はSp1タンパク質の活性を阻害する薬剤を含む組成物を提供する。
【0082】
好ましくは、薬剤は、(i)MCAF1タンパク質とSp1タンパク質との間の結合を阻害する薬剤、あるいは、(ii)MCAF1タンパク質又はSp1タンパク質に特異的に結合する抗体である。
【0083】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、ガン性細胞又は不死化細胞の増殖を阻害するために、あるいは、ガン性細胞又は不死化細胞のアポトーシスを高めるために使用することができる。本発明の組成物はインビトロ又はインビボで使用することができる。
【0084】
6.考察
テロメラーゼ活性を維持することに関わる機構は、細胞の不死化及びガンの発達を理解するために非常に重要である(3、33、34)。本発明者らの本研究では、(i)MCAF1及びSp1がTERT遺伝子及びTERC遺伝子の発現を維持し、その結果、正のテロメラーゼ活性がもたらされること;(ii)Sp1がMCAF1をTERTプロモーターに実質的につなぎ留めること;(iii)MCAF1−Sp1複合体がRNAポリメラーゼIIの活性型及びERCC3をTERTプロモーターに協同して動員すること;(iv)MCAF1の2つの進化的に保存されたドメインがSp1及び基本転写装置に直接に結合すること;及び(v)MCAF1が高レベルでほとんどのガン組織において高頻度に発現されることが明らかにされる。従って、過剰発現したMCAF1は、基本転写装置をテロメラーゼサブユニット遺伝子に負荷することによってテロメラーゼ活性のSp1依存的維持を媒介する(これは、増殖性ガン細胞における一般的な機構であり得る)。
【0085】
MCAF1はテロメラーゼサブユニット遺伝子のSp1依存的発現を媒介する。テロメラーゼ活性の増大はガンの特徴であり、腫瘍形成のために非常に重要であるテロメアの短縮化及び腫瘍細胞の老化を妨げる(3、34、35)。ガンにおけるテロメラーゼのアップレギュレーションについては少なくとも2つの機構が考えられる。1つが、ヒト染色体の5p15.33及び3q26.3にそれぞれ位置するTERT遺伝子及びTERC遺伝子の増大したコピー数である(36)。5p(13.2%)及び3q(16.4%)を伴う染色体の増加及び増幅が、比較ゲノムハイブリダイゼーションを使用して固形腫瘍において検出されている(37)。もう一方の機構が、テロメラーゼサブユニット遺伝子の増大した発現である。TERT及びTRの両方の外因性発現は、単独でのいずれかと比較した場合、テロメラーゼ活性を顕著に増大させた。この理由のために、Sp1が一般にはTERT遺伝子及びTERC遺伝子を活性化することは注目される(15、38)。TERTの発現はガン細胞における正のテロメラーゼ活性のために不可欠である(5、39)ので、本発明者らは、Sp1によるTERT遺伝子の転写調節を特徴づけることに焦点を当てた。TERTプロモーターはTATAボックス又はTATA様配列のいずれも有していないが、TATA非存在プロモーターが、それでもなお、これらの遺伝子の転写開始のためにTATA因子を利用することが明らかにされており(40)、また、Sp1が、TATA非存在プロモーターの転写開始を引き起こすTATA因子をつなぎ留めることが明らかにされている(41)。本研究において、本発明者らは、MCAF1及びSp1がRNAポリメラーゼII及び基本転写因子をTERTプロモーターに負荷するために要求されることを示した。MCAF1はSp1のDNA結合能に影響を及ぼさなかったが、Sp1によってTERTプロモーターに動員された。従って、MCAF1は、Sp1と相互作用することによるテロメラーゼサブユニット遺伝子の転写活性化(このことは、ガンにおけるテロメラーゼ活性の維持のために必要である)に相乗的に関係する。これらのデータは、MCAF1及びSp1のアップレギュレーションがガンにおけるテロメラーゼの維持での基本的な事象であり得ることを示唆している。
【0086】
TERTプロモーター領域における後成的状態が、転写された遺伝子におけるトリメチル化ヒストンH3K4、ならびに、アセチル化されたH3及びH4を含めて、転写調節のために重要である(42)。しかしながら、テロメラーゼ陽性のガン細胞において、本発明者らは、これらの修飾されたヒストンは元来、低いレベルにあり、MCAF1又はSp1のノックダウンのもとで著しく変化しなかったことを見出した。それにもかかわらず、アセチル化H3だけは、おそらくは、Sp1媒介による遺伝子活性化に関与するヒストンアセチルトランスフェラーゼのために、Sp1枯渇細胞において減少する傾向があった(43)。いくつかの研究では、プロモーターのメチル化もまた、ガン細胞におけるTERT調節における重要な機構の1つであることが報告されている(32、44)。TERTプロモーター領域のCpGメチル化は、遺伝子の第1エキソンの中にある結合部位へのリプレッサーCTCFの接近を阻止することによって転写のために必要である。加えて、TERT遺伝子の転写開始部位のすぐ上流側の部分的にメチル化されてないCpG部位は転写を可能にする(31、32)。これらの研究と一致して、本発明者らの結果は、MCAF1又はSp1の枯渇が、CpGのメチル化状態における変化と一緒に、TERTの転写を低下させたことを示した。このことは、MCAF1−Sp1複合体がTERT遺伝子のDNAメチル化に影響を及ぼすことを示唆している。MCAF1又はSp1の枯渇がテロメラーゼ活性を低下させ、細胞増殖を阻害したという本発明者らの知見は、Sp1と協同することによる、テロメラーゼ活性及び増殖活性の両方におけるMCAF1の積極的な関与を示唆している。
【0087】
MCAF1は、Sp1と共役した転写メディエーター様機能を有する。本発明者らの以前の研究では、MBD1−MCAF1−SETDB1の複合体が、転写抑制的なクロマチン形成における重要な役割を果たすことが示されている(17、19)。対照的に、本発明者らは今回、MCAF1が、RNAポリメラーゼII及び基本転写因子と相互作用することを介してSp1による転写活性化を促進させたことを示した。MCAF1は、相互作用の相手に依存して、また、DNA含有量に依存して、正の調節因子及び負の調節因子として機能し得る。RNAポリメラーゼIIにより転写される遺伝子のプロモーター領域は多くの場合、Sp1により標的化されるいくつかのGCボックス配列を通常の場合には含有する離れたCpGアイランドを有する(27、45)。転写メディエーターは、遺伝子発現を、RNAポリメラーゼII、DNA結合能を有する活性化因子、及び、コアプロモーターに負荷された基本転写因子との直接的な相互作用を介して制御する(24、46)。本発明者らの結果は、MCAF1が、その2つの進化的に保存されたドメインを介して、Sp1、RNAポリメラーゼII及び基本点転写因子と相互作用したことを示していた。MCAF1−Sp1複合体は基本転写装置をTERT遺伝子に動員し、このことはテロメラーゼ活性のその後の産生をもたらす。従って、MCAF1は、TERT遺伝子に対する機能的に別個の転写調節分子に足場を設けることによって転写を促進させる。このことは、MCAF1が、Sp1を基本転写装置に安定に共役させるための転写メディエーター様機能を有することを示唆している。
【0088】
MBD1−MCAF1−SETDB1複合体が転写抑制のためにCpGのメチル化によって動員され(17、19)、これに対して、CpGアイランド関連プロモーターが基本転写装置と一緒にMCAF1−Sp1複合体によって活性化される。HeLa細胞では、CpGがメチル化されたp53BP2腫瘍抑制因子遺伝子がMBD1−MCAF1−SETDB1複合体の関与によって不活性化され(19)、一方で、テロメラーゼサブユニット遺伝子が、基本転写装置と共役したMCAF1−Sp1複合体によってトランス活性化される。これらの知見は、MCAF1の両方の役割がガン表現型に相乗的に寄与することを示唆している。さらには、MCAF1と、MBD1との間での会合が、MBD1のSUMO修飾によって高められる(47)。Sp1のいくつかの修飾、例えば、リン酸化、アセチル化、SUMO化は、MCAF1の動員を誘導することができ、MCAF1自身のある種の修飾は相互作用の相手を決定することができる。本研究の結果は、ガンに関連したテロメラーゼ活性をSp1依存的様式で維持することに寄与するMCAF1のメディエーター様機能に光を当てた。MCAF1の過剰発現は、天然に存在するヒトのガンにおける共通する特徴として、Sp1がテロメラーゼサブユニット遺伝子を強化することを可能にし得る。
【0089】
ヒトのガンにおけるMCAF1の過剰発現。本発明者らは、MCAF1が、非ガン性組織においてではなく、多くの異なる組織に由来するガンにおいて過剰発現することを確認した。このことは、腫瘍形成におけるMCAF1についての役割を示唆している。MCAF1は、細胞成長及び細胞周期進行に関与する多くの遺伝子(これらには、血管内皮細胞増殖因子、トランスフォーミング増殖因子−β及びその受容体(E2F1及びサイクリンD1)、ならびに、テロメラーゼ成分が含まれる)の発現を調節するSp1と相互作用する(16、48)。本発明者らのデータはさらに、MCAF1のアップレギュレーションがSp1によるテロメラーゼサブユニット遺伝子の転写活性化に関係することを明らかにした。加えて、ガンの進行では、アポトーシスに対する抵抗性、及び、血管形成の刺激が要求される(49)。多くの前アポトーシス遺伝子、抗アポトーシス遺伝子及び血管形成遺伝子のプロモーターはSp1結合部位を含有すること(50)が見出されているので、過剰発現したMCAF1はまた、これらの遺伝子に影響を及ぼしているかもしれず、従って、このことはガンの発達を加速させる。現在、腫瘍細胞におけるMCAF1過剰発現の機構は不明であるが、これは、増殖表現型を維持するために要求される、ヒトのガンにおける共通する事象の1つであるかもしれない。
【実施例】
【0090】
以下に、本発明が、実施例を参照して詳しく記載されるが、本発明の範囲は、実施例に限定されることはない。
【0091】
1.実験手順
細胞培養。HeLa細胞を、10%(v/v)の熱不活化ウシ胎児血清及びペニシリン/ストレプトマイシンが補充された、ダルベッコ改変イーグル最少必須培地及びハムF−12栄養培地(Sigma)の1:1混合物において培養した。
【0092】
抗体。抗MCAF1抗体は以前の記載の通りであった(17)。利用された抗体は、抗Sp1(Santa Cruz Biotechnology)、抗β−チューブリン(Amersham Bioscience)、抗GST(DAKO)、抗RNAポリメラーゼII CTD4H8(Upstate Biotechnology)、抗His(Qiagen)、抗ERCC3(Santa Cruz Biotechnology)、抗ERCC2(Santa Cruz Biotechnology)、抗TFIIEα(Santa Cruz Biotechnology)及び抗TFIIEβ(Santa Cruz Biotechnology)であった。ウエスタンブロット分析及び免疫蛍光分析を、他のところで記載されるように行った(17、19)。
【0093】
グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)プルダウンアッセイ。細菌発現のGST及びGST融合タンパク質(1μg)をグルタチオン−アガロースビーズに固定化し、0.1% Triton X−100、50mM HEPES(pH7.4)、100mM NaCl、5%グリセロール、2mMジチオスレイトール(DTT)及びプロテアーゼ阻害剤を含有する緩衝液において4℃で1時間、HeLa核抽出物(60μg)又はHisタグタンパク質(1μg)とインキュベーションした。インプットは反応混合物におけるタンパク質の10%を示した。
【0094】
免疫沈殿。HeLa核抽出物(Promega)を緩衝液(40mM Tris−HCl(pH7.8)、100mM KCl、0.2mM EDTA、0.5mM PMSF、0.5mM DTT及び25%グリセロール)により10倍希釈し、抗MCAF1抗体、抗Sp1抗体又はコントロールIgGと4℃で1時間混合し、その後、30μlのプロテインA/Gアガロースビーズ(Amersham Biosciences)を加えた後、1時間インキュベーションした。洗浄後、結合したタンパク質をウエスタンブロット分析によって検出した。
【0095】
Sp1、MCAF1及びTERTのsiRNA媒介ノックダウン。HeLa細胞をLipofectamine(商標)RNA iMAX(Invitrogen)とともにsiRNAによりトランスフェクションし、トランスフェクション後60時間で集めた。21ヌクレオチドのsiRNA二重鎖を、ヒトのSp1、MCAF1又はTERTをコードしたmRNAを標的化するために設計した。選択されたsiRNA標的の配列を、標的特異性を保証するためにヒトゲノムデータベース及びESTデータベースに提示した。これらの配列が補充表1に記載される(図12を参照のこと)。GL3についてのsiRNAは以前の通りであった(19)。
【0096】
クロマチン免疫沈殿(ChIP)及び定量的PCR。HeLa細胞(1×10個)を37℃で10分間、1%ホルムアルデヒドにより架橋した。粗細胞溶解物を超音波処理して、200bpから1000bpのフラグメントを作製した。ChIPを、製造者のプロトコル(Upstate Biotechnology)に従って抗Sp1抗体又は抗MCAF1抗体又はコントロールIgGを用いて行った。TERT遺伝子プロモーターのPCR増幅を、98℃で20秒、65℃で30秒及び72℃で30秒の条件で20サイクル(第1のPCR)及び26サイクル(第2のPCR)にわたって行った。TERC遺伝子プロモーターの増幅を、98℃で20秒、58℃で30秒及び72℃で30秒の条件で35サイクルにわたって行った。TERT遺伝子の上流側約8kb(〜8kb upstream of the TERT gene)の増幅を、95℃で30秒、60℃で30秒及び72℃で30秒の条件で30サイクルにわたって行った。定量的PCRを、Power SYBR Green PCR Master Mix及びABI 7300 Real Time PCR System(Applied Biosystems)を使用するSYBR Green法によってChIPの生成物に対して三連で行った。標準曲線を、インプットDNAの連続希釈物を使用して作製した(10.0%、2.0%、0.4%及び0.08%)。それぞれの反応のCを標準曲線に対して定量した。プライマー組が補充表2に列挙される(図13を参照のこと)。
【0097】
定量的RT−PCR。総RNAを、Isogen(Nippon Gene)を使用して単離した。cDNA合成のために、3μgの総RNAを、オリゴ−dTプライマーを使用してSuperscript III(Invitrogen)により逆転写した。標的cDNAの定量的PCRを、Power SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems)を使用するSYBR Green法によって行った。それぞれの実験を少なくとも3回行った。β−アクチン(β-actin)のレベルによる正規化と合わせて、相対的な富化倍数を定量化した。プライマー組が補充表2に列挙される。
【0098】
テロメラーゼ活性の測定。テロメラーゼ活性を、定量的テロメア反復増幅プロトコル(Q−TRAP)アッセイ(25)を使用して測定した。簡単に記載すると、細胞ペレットを溶解緩衝液(10mM Tris−HCl(pH7.5)、1mM MgCl、1mM EGTA、0.1mMベンズアミジン、5mM β−メルカプトエタノール、0.5% CHAPS及び10%グリセロール)に再懸濁し、氷上で30分間インキュベーションした。遠心分離を12,000gにおいて4℃で20分間行った後、上清のアリコートを急速冷凍し、−80℃で保存した。溶解物のタンパク質濃度をGeneQuant Pro(Bio−Rad)により求めた。コントロール溶解物を調製するために、テロメラーゼを85℃での10分間のインキュベーションによって不活化した。SYBRグリーンQ−TRAPアッセイを、SYBR Green PCR Master Mix(Applied Biosystems)を伴う25μlにおいて、細胞溶解物(1.0μg、0.5μg、0.2μg及び0.1μg)、0.1μgのテロメラーゼプライマーTS、及び、0.1μgの固定されたリターンプライマーACXを用いて行った。プライマー配列が補充表2に列挙される。ABI PRISM 7300サーマルサイクラー(Applied Biosystems)を使用して、サンプルを25℃で20分間インキュベーションし、95℃で30秒及び60℃で90秒の35サイクルで増幅した。サンプル、不活化サンプル及び溶解緩衝液をすべてのPCRプレートにおいて使用した。それぞれのサンプルを少なくとも二連で分析した。テロメラーゼ活性が、コントロール細胞における活性に対して相対的に示される。
【0099】
重亜硫酸塩によるゲノムDNAの配列決定。ゲノムDNAを精製し、BisulFast DNA Modification Kit(Toyobo)(26)を使用して重亜硫酸ナトリウムで処理し、その後、PCR増幅を、LA Taqポリメラーゼ(Takara)を使用して、CpG配列を含有しない特異的なプライマーのそれぞれを用いて行った。増幅された領域は、修飾されていないヒトTERT遺伝子配列(GenBank AF097365)のヌクレオチド3791からヌクレオチド4105に対応した。PCRを、98℃で30秒、56℃で30秒及び72℃で60秒の条件で32サイクルにわたって行った。PCR生成物をpGEM−Tイージーベクター(Promega)にサブクローン化し、配列決定した(少なくとも15個の個々のクローン)。使用されたプライマーが補充表2に示される。
【0100】
免疫組織化学。免疫組織化学を、胃、乳房及び肺の腫瘍、ならびに、様々な正常な組織を含むヒトのTumor Tissue Array(BioChain Institute,Inc.及びISU Abxis Co.,Ltd.)を用いて行った。アレイスライドを脱パラフィン化し、その後、0.3%の過酸化水素を含むメタノールにおいて30分間インキュベーションして、内因性のペルオキシダーゼ活性を阻止した。その後、組織切片をPBSにおける1.0% BlockAce(Dainippon Sumitomo Pharma Co.,Ltd.)に30分間浸け、抗MCAF1抗体により覆い、室温で1時間インキュベーションした。免疫反応の可視化を、Histofine Simple Stain MAX−PO(Nichirei Bioscience)及び3,3−ジアミノベンジジンテトラヒドロクロリド(Dako)を使用して行った。スライドをヘマトキシリンで対比染色し、Malinol(Muto Pure Chemicals)により固定した。
【0101】
統計学的分析。群間の違いを、スチューデントt検定を使用して分析した。P<0.05を、統計学的に有意であると見なした。
【0102】
2.結果
進化的に保存されたドメインを介するSp1とのMCAF1複合体。MCAF/AMファミリーのタンパク質は、ショウジョウバエからヒトまで進化的に保存される2つの機能的なドメイン(ドメイン1及びドメイン2)によって特徴づけられる(図1A)(17、19)。DNA結合モチーフがMCAF1には見出されない。他方で、Sp1は、2つの転写活性化ドメインと、3つのジンクフィンガーモチーフから主に構成される領域とを有する(27)。以前の観測結果では、MCAF1及びSp1が機能的に関連づけられることが示唆されている(17、19、21、22)。MCAF1と、Sp1との間での直接的な相互作用をドメインレベルで調べるために、本発明者らは、GSTに融合されたか、又はHisタグ化された、MCAF1及びSp1の細菌発現の欠失変異体を調製した。代表例には、MCAF1(Δ10、Δ18及びΔ8)(17)及びSp1(Δ5、Δ6及びΔ7)が含まれた。GST及びMCAF1のGST融合部分をグルタチオン−アガロースビーズに固定化し、HeLa核抽出物とインキュベーションした(図1B、左側)。Sp1はMCAF1のドメイン1(Δ18)及びドメイン2(Δ8)の両方と結合し、しかし、アミノ末端領域(Δ10)とは結合しなかった。MCAF1と相互作用することに関わるSp1の領域をさらに明らかにするために、本発明者らは、Sp1のGST融合部分と、HisタグMCAF1とを使用した(図1B、右側)。グルタチオン−アガロースビーズ上のGST及びSp1のGST融合部分をHisタグMCAF1(Δ18又はΔ8)と混合した。MCAF1のドメイン1(Δ18)がSp1のΔ5及びΔ6と結合し、一方で、ドメイン2(Δ8)がSp1のΔ6及びΔ7と結合した。活性化ドメインを含有するSp1のアミノ末端領域はMCAF1と結合しなかった(データは示されず)。MCAF1がSp1との複合体を形成したかどうかを確認するために、抗MCAF1抗体及び抗Sp1抗体を使用する免疫沈殿分析をHeLa細胞において行った(図1C)。MCAF1が、Sp1との免疫沈殿物に見出された。逆に、Sp1がMCAF1免疫沈殿物に存在した。これらの結データは、MCAF1の保存されたドメインがSp1のジンクフィンガー領域と直接に結合し、これにより、MCAF1−Sp1複合体の形成をもたらすことを示唆している。
【0103】
テロメラーゼサブユニット遺伝子プロモーターにおけるMCAF1−Sp1複合体の形成。内因性遺伝子の調節におけるMCAF1−Sp1複合体の関与を調べるために、ChIP分析をHeLa細胞に対して行った。テロメラーゼに関連するTERT遺伝子及びTERC遺伝子は、コアプロモーター領域内の5つの結合部位及び4つの結合部位を介してそれぞれSp1によってトランス活性化されることが報告される(図2A)(28、29)。タンパク質及びDNAの、ホルムアルデヒドに基づく架橋の後、超音波処理によりフラグメント化されたクロマチンを抗MCAF1抗体又は抗Sp1抗体により免疫沈殿し、その後、PCR増幅を、プロモーター配列について特異的なプライマーを使用して行った(図2B)。MCAF1及びSp1がTERTプロモーター領域及びTERCプロモーター領域において見出された。加えて、TERT遺伝子の上流側約8kbの部位には、これらのタンパク質が結合しなかった。種が一致するIgGをコントロールとして免疫沈殿のために使用した。加えて、両方のタンパク質がまた、異なったSp1依存性BRCA1遺伝子のプロモーターにおいて見出された(補充図1(図7))。これらのデータは、MCAF1及びSp1がTERT遺伝子プロモーター及びTERC遺伝子プロモーターに同時に存在することを示し、このことは、Sp1依存的なテロメラーゼ発現におけるMCAF1についての役割を示唆している。
【0104】
MCAF1及びSp1の機能的関係性を検討するために、本発明者らは、それぞれのタンパク質について特異的な3つ以上のsiRNAを使用することによってMCAF1又はSp1をノックダウンした。HeLa細胞をこれらのsiRNAによりトランスフェクションし、その後、60時間増殖させた。ウエスタンブロット分析及び定量的RT−PCRでは、MCAF1及びSp1がタンパク質レベル及びmRNAレベルの両方で枯渇したことが示された(図2C及び図2D)。コントロールsiRNAの著しい影響は何らなかった。それぞれのsiRNAの影響が基本的には類似していたので、本発明者らはその後に、MCAF1−2及びSp1−2のsiRNAによるデータを提示した。ノックダウン条件のもとで、本発明者らは、TERTプロモーターにおけるMCAF1及びSp1の量を、定量的ChIP分析を使用して調べた(図2E)。MCAF1のノックダウンは、遺伝子プロモーターに結合したSp1ではなく、遺伝子プロモーターに結合した自身のタンパク質を低下させた(灰色棒、P<0.01)。対照的に、Sp1の喪失は、コントロールと比較して、TERTプロモーターにおいて、Sp1と同様に、MCAF1を著しく低下させた(白棒、P<0.01)。このことは、MCAF1が、これらのタンパク質の複合体形成を介して、Sp1依存的な様式でTERT遺伝子プロモーターに局在化することを示唆している。
【0105】
MCAF1及びSp1が、テロメラーゼ活性を維持するために要求される。テロメラーゼ成分の転写制御におけるMCAF1及びSp1の役割を明確にするために、本発明者らは、TERT及びTERCのmRNAについての定量的RT−PCRを行った(図3A)。TERT遺伝子及びTERC遺伝子の転写物がHeLa細胞においてMCAF1又はSp1のノックダウンによって著しくダウンレギュレーションされた(P<0.01又はP<0.05)。類似する結果がHCT116細胞において得られた(補充図2(図8))。これらのデータは、MCAF1がSp1と協同して、TERT遺伝子及びTERC遺伝子からの転写を活性化することを示唆している。本発明者らは、TERTタンパク質を検出することが困難であった。これは、おそらくは、抗TERT抗体の認識が不十分であったためである。従って、本発明者らは、Q−TRAPアッセイ(25)を使用して、内因性のテロメラーゼ活性に対するMCAF1及びSp1の影響を評価した。細胞溶解物を、MCAF1又はSp1のノックダウンのもとでのHeLa細胞から調製し、TRAPアッセイのために連続希釈し、その後、定量的PCRを、テロメア反復についての特異的なプライマーを使用して行った(図3B)。コントロールと比較した場合、テロメラーゼ活性がMCAF1又はSp1のノックダウン細胞では著しく低下した(P<0.01又はP<0.05)。これらの結果は、MCAF1−Sp1複合体が、TERT及びTERCの発現を誘導することによってテロメラーゼ活性を維持することを示唆している。
【0106】
細胞増殖に対するMCAF1−Sp1複合体の影響をさらに評価するために、本発明者らは、MCAF1又はSp1のノックダウンのもとでの細胞数を計数した(図3C)。MCAF1枯渇細胞又はSp1枯渇細胞は、コントロールとの比較で、より低い増殖活性を示した。これらのデータは、2つの特異的なsiRNAを使用することによるTERTのノックダウンと非常に類似していた(図3D)。予想されるように、TERTのノックダウンは自身のmRNA及び生じるテロメラーゼ活性を減少させた(補充図3(図9))。まとめると、これらのデータは、MCAF1−Sp1複合体が、ガン細胞におけるテロメラーゼ活性及び増殖を維持するために要求されることを示唆している。
【0107】
MCAF1−Sp1複合体はTERTプロモーターへのRNAポリメラーゼII及び基本転写因子の動員を媒介する。MCAF1−Sp1複合体による転写制御を調べるために、本発明者らは、TERTプロモーターにおける修飾されたヒストンの状態を、特異的な抗体を使用する定量的ChIP分析によって分析した(補充図4(図10))。試験された転写活性な特徴の中で、H3のアセチル化だけがSp1ノックダウン細胞において減少し、一方で、MCAF1又はSp1の枯渇は、H3K4のメチル化及びH4のアセチル化における著しい変化を何らもたらさなかった。これらの結果は、TERTプロモーターにおける元々低いレベルのこれらの修飾されたヒストンによって引き起こされていたかもしれない。不活性な特徴、例えば、H3K9及びH3K27のメチル化もまた、低いレベルで検出された(データは示されず)。MCAF1及びSp1はRNAポリメラーゼII及び基本転写因子と会合する(18、23)ので、本発明者らは、その後、転写活性型のRNAポリメラーゼII[Pol II(Ser 5P)]の存在、及び、欠陥を相補する除去修復について、TERTプロモーターにおけるチャイニーズハムスター3/色素性乾皮症B(ERCC3/XPB)において試験した(図4A及び図4B)。MCAF1又はSp1のノックダウンは遺伝子プロモーターにおけるPol II(Ser 5P)及びERCC3の両方の著しい低下をもたらした(P<0.01又はP<0.05)。従って、MCAF1−Sp1複合体はRNAポリメラーゼII及びERCC3をTERTコアプロモーターに協同して動員する。このことは、MCAF1のSp1共役した転写機能を示唆している。
【0108】
MCAF1の基本的な役割を確認するために、本発明者らは、基本転写装置と結合するタンパク質の能力の特徴づけを行った。HeLa核抽出物におけるMCAF1を抗MCAF1抗体により免疫沈殿させた。細胞ERCC3及びPol IIがMCAF1免疫沈殿物に見出された(図4C、左側)。MCAF1免疫沈殿物はまた、TFIIEα、TFIIEβ及びERCC2/XPDを含有した(データは示されず)。本発明者らは次に、ERCC3、Pol II、TFIIE−α及びTFIIE−βを、適切な抗体を用いた核抽出物から免疫沈殿させ、MCAF1の存在がこれらの免疫沈殿物において検出された(図4C、右側)。基本転写因子と相互作用したMCAF1の領域をさらに明らかにするために、GST−MCAF1欠失体を、核抽出物を用いたプルダウンアッセイのために使用した(図4D)。ERCC3及びERCC2の両方がMCAF1のドメイン2(Δ8)と会合した。対照的に、TFIIE−α及びTFIIE−βはこのタンパク質のドメイン1(Δ18)及びドメイン2(Δ8)の両方と結合した。MCAF1と、基本転写因子との間での直接的な相互作用を調べるために、プルダウン分析を、精製されたタンパク質を使用して行った(図4E)。グルタチオン−アガロースビーズ上のGST融合ERCC3及びGST融合ERCC2をHisタグMCAF1(Δ10及びΔ8)とインキュベーションした。ERCC3及びERCC2の両方が、MCAF1のΔ10ではなく、MCAF1のΔ8と直接に結合した。このことは、図4Dにおける結果と一致していた。逆に、固定化されたGST−MCAF1(Δ10、Δ18及びΔ8)をHisタグTFIIE−α及びHisタグTFIIE−βと混合した。TFIIE−αは、Δ18だけと結合することが見出され、一方で、TFIIE−βはMCAF1のΔ18及びΔ8の両方と結合した。まとめると、これらのデータは、MCAF1の2つの保存されたドメインが、転写メディエーターのように、Sp1及び基本転写装置と直接に結合することを示唆している。
【0109】
MCAF1−Sp1複合体はTERTプロモーター領域におけるCpGのメチル化状態に影響を及ぼす。最近の研究では、ヒトのTERTプロモーター領域がテロメラーゼ陽性の細胞株では独特にメチル化されることが報告されており(3、30)、また、転写開始部位のすぐ上流側のメチル化されていない領域が腫瘍細胞においてTERT遺伝子の低い転写活性を可能にし得ることが報告されている(31、32)。加えて、リプレッサータンパク質のCCCTC結合因子(CTCF)が第1エキソン内のメチル化されていないモチーフと結合して、TERTの転写を阻害し、一方で、結合部位におけるCpGのメチル化はCTCFの結合を阻害し、これにより、ガン細胞におけるTERT遺伝子の転写を引き起こすことが示されている(32)。MCAF1−Sp1複合体の後成的な役割を調べるために、本発明者らは、重亜硫酸ゲノム配列決定を使用して、TERT遺伝子のプロモーター及び第1エキソンにおける38個のCpGジヌクレオチドでのメチル化状態を調べた(図5)。コントロール細胞と比較した場合、Sp1結合モチーフ間のCpG部位5からCpG部位9が、TERTの発現が低下したMCAF1又はSp1のノックダウンHeLa細胞では選択的にメチル化される傾向を有していた。加えて、第1エキソン領域は、CTCF結合部位を含有しており、コントロールでは密にメチル化され、一方で、MCAF1又はSp1の枯渇のもとでは、いくつかのCpG部位において部分的にメチル化されない傾向を有していた。従って、MCAF1−Sp1複合体の喪失はTERT遺伝子におけるDNAメチル化状態に影響を及ぼし得る。
【0110】
MCAF1がヒトのガン組織において過剰発現する。ガンの発達におけるMCAF1の関与を明確にするために、本発明者らは最後に、免疫組織化学的分析を使用して、ヒトのガン組織におけるMCAF1の発現を調べた(図6)。使用されたウサギ(rabbit)抗MCAF1抗体の特異性は以前に明らかにされた(17、19)。MCAF1の染色が、胃、乳房及び肺の非ガン性組織では検出不能であったか、又は、低いレベルであった(図6;b、f及びj)。同じ実験条件を使用した場合、対照的に、MCAF1が、対応するガン性組織において非常に高いレベルで検出された。このデータは、胃ガン(d)、乳ガン(h)、ならびに、腺ガン(l)及び扁平上皮細胞ガン(n)を含む肺ガンを表しており、この場合、MCAF1がガン細胞の核において濃く染色された。本発明者らの研究は、148の原発性ヒトガン(胃(stomach)の53の腺ガン、乳房(breast)の52の浸潤性線管ガン、ならびに、肺(lung)の14の腺ガン(Adenocarcinoma)及び29の扁平上皮細胞ガン(Squamous cell carcinoma))の中で、MCAF1が、70%を越える試験されたガン組織において陽性で検出されたことを明らかにした(補充図5(図11)に要約される)。これらのデータは、MCAF1の高まった発現が様々な組織起原におけるガンの発達と少なくとも相関することを示唆している。
【0111】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
MBD1関連クロマチン因子1(MCAF1)遺伝子又は特異性タンパク質1(Sp1)遺伝子の発現を阻害する薬剤を含む、ガンを処置するための医薬組成物。
【請求項2】
前記薬剤が、
(i)MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の発現をRNA干渉(RNAi)によって阻害又は抑制する核酸;
(ii)MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の転写産物に対するアンチセンス核酸又はその一部分;及び
(iii)MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の転写産物を特異的に切断するためのリボザイム活性を有する核酸
からなる群より選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
MCAF1タンパク質又はSp1タンパク質の活性を阻害する薬剤を含む、ガンを治療するための医薬組成物。
【請求項4】
前記薬剤が、MCAF1タンパク質又はSp1タンパク質に特異的に結合する抗体である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記薬剤が、MCAF1タンパク質とSp1タンパク質との間の結合を阻害する薬剤である、請求項3又は4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記ガンが、胃ガン、乳ガン又は肺ガンである、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
(i)MCAF1遺伝子及び/又はSp1遺伝子を発現する細胞を試験化合物の非存在下及び存在下で培養する工程;
(ii)MCAF1遺伝子及び/又はSp1遺伝子の発現のレベルを測定する工程;及び
(iii)試験化合物の非存在下で測定される発現のレベルと比較したとき、発現のレベルを低下させる試験化合物を、MCAF1遺伝子及び/又はSp1遺伝子の発現を阻害するための薬剤として選択する工程
を含む、MCAF1遺伝子及び/又はSp1遺伝子の発現を阻害する薬剤についてスクリーニングするための方法。
【請求項8】
(i)MCAF1タンパク質及びSp1タンパク質を試験化合物の非存在下及び存在下で所望の溶液において混合する工程;
(ii)MCAF1タンパク質及び/又はSp1タンパク質の間での結合のレベルを試験化合物の非存在下及び存在下で測定する工程;及び
(iii)試験化合物の非存在下で測定される結合のレベルと比較したとき、結合のレベルを低下させる試験化合物を、MCAF1タンパク質及び/又はSp1タンパク質の活性を阻害するための薬剤として選択する工程
を含む、MCAF1タンパク質及び/又はSp1タンパク質の活性を阻害する薬剤についてスクリーニングするための方法。
【請求項9】
(i)MCAF1遺伝子、Sp1遺伝子、TERT遺伝子及びTERC遺伝子を発現する細胞を試験化合物の非存在下及び存在下で培養する工程;
(ii)TERT遺伝子及び/又はTERC遺伝子の発現のレベルを測定する工程;及び
(iii)試験化合物の非存在下で測定されるTERT遺伝子及び/又はTERC遺伝子の発現のレベルと比較したとき、TERT遺伝子及び/又はTERC遺伝子の発現のレベルを低下させる試験化合物を、MCAF1タンパク質及び/又はSp1タンパク質の活性を阻害するための薬剤として選択する工程
を含む、MCAF1タンパク質及び/又はSp1タンパク質の活性を阻害する薬剤についてスクリーニングするための方法。
【請求項10】
(i)MCAF1タンパク質、Sp1タンパク質及びテロメラーゼを試験化合物の非存在下及び存在下で所望の溶液において混合する工程;
(ii)テロメラーゼ活性のレベルを測定する工程;
(iii)試験化合物の非存在下で測定されるテロメラーゼ活性のレベルと比較したとき、テロメラーゼ活性のレベルを低下させる試験化合物を、MCAF1タンパク質及び/又はSp1タンパク質の活性を阻害するための薬剤として選択する工程
を含む、MCAF1タンパク質及び/又はSp1タンパク質の活性を阻害する薬剤についてスクリーニングするための方法。
【請求項11】
前記混合する工程が、MCAF1遺伝子、Sp1遺伝子、TERT遺伝子及びTERC遺伝子を発現することができる細胞を試験化合物の非存在下及び存在下で培養することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ガン性細胞又はインビトロ不死化細胞の増殖を阻害する薬剤についてスクリーニングするために使用される、請求項7から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ガン性細胞のアポトーシスを促進させる薬剤についてスクリーニングするために使用される、請求項7から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ガンを治療するための薬剤についてスクリーニングするために使用される、請求項7から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ガンが、胃ガン、乳ガン又は肺ガンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の発現を阻害する薬剤を含む組成物。
【請求項17】
前記薬剤が、
(i)MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の発現をRNA干渉(RNAi)によって阻害又は抑制する核酸;
(ii)MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の転写産物に対するアンチセンス核酸又はその一部分;及び
(iii)MCAF1遺伝子又はSp1遺伝子の転写産物を特異的に切断するためのリボザイム活性を有する核酸
からなる群より選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
MCAF1タンパク質又はSp1タンパク質の活性を阻害する薬剤を含む組成物。
【請求項19】
前記薬剤が、MCAF1タンパク質とSp1タンパク質との間の結合を阻害する薬剤である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記薬剤が、MCAF1タンパク質又はSp1タンパク質に特異的に結合する抗体である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
ガン性細胞又は不死化細胞の増殖を阻害するために使用される、請求項16から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
ガン性細胞又は不死化細胞のアポトーシスを高めるために使用される、請求項16から20のいずれか一項に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−231016(P2011−231016A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−311403(P2008−311403)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(504159235)国立大学法人 熊本大学 (314)
【出願人】(502019933)リンク・ジェノミクス株式会社 (11)
【Fターム(参考)】