説明

ガードレールの調整エレメント。

【課題】分割エレメントAで構成したガードレールの途中を簡単に分離させることができるガードレールのエレメントを提供する。
【解決手段】分割エレメントAで構成したガードレールの分割エレメントA群の間に設置する調整エレメントBである。調整エレメントBは、受けエレメントB1と、スライドエレメントB2によって構成する。スライドエレメントB2が、受けエレメントB1の中空部に収納自在である形状、寸法によって構成してある、

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割エレメントを組み立てるガードレールにおける、調整エレメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路上の車両の流れを臨時に切り替えたり、区画して仕切る方法として、分割したガードレールを並べる方法が知られている。
その場合に、長いH型鋼やコンクリートブロックに支柱を取り付け、その支柱群の間を水平方向の板体で連結する構造のものが知られている。
そのタイプのものは、移動するためにクレーン車などの運搬装置が必要であり、取り扱いは簡単ではない。
そのような重量の大きなガードレールを改善したものとして、1エレメントが50kg程度で、作業員が簡単に運搬して組み立て、解体、移動ができるタイプの軽量型のガードレールも知られている。
そのような従来の分割型ガードレール例を図5によって説明する。
各エレメントは、2枚の曲面板を、断面「ハ」の字状に組み合わせた曲面脚aと、その曲面脚aの上に設置した水平筒bとによって構成してある。
なお、この明細書で「水平」とは、道路の表面に沿って平行しているという程度の意味であり、正確に水平であることを意味しているものではない。
また「筒」とは円筒に限らず、断面が矩形、三角形などの角筒も含む意味である。
この水平筒bの一端からは水平筒bの軸方向と平行に短柱cを突設してある。
また、水平筒bの他端は水平筒bの軸方向と平行に開口した受け溝dが開放してある。
このエレメントを組み立てるには、ひとつのエレメントの受け溝dに対して、次のエレメントの短柱cを挿入することで行い、順次連結して長い延長のガードレールを構築するものである。
このように、長いガードレールを分割した構成の各エレメントは、その構造が簡単で、接続作業、解体作業も簡単であり、さらに曲面脚が衝突車両の乗り上げをスムーズに誘導することから、道路の臨時の仕切りはもとより、半永久的な仕切り構造物としても採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】NETIS登録KT−980619
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の分割エレメントを組み立てるタイプのガードレールにあっては、次のような問題点がある。
<1> 隣接するエレメント間の連結は、ひとつのエレメントの前端から突設した短柱cを、隣接するエレメントの尾端の受け溝dに挿入して行うものである。
<2> そのため、多数のエレメントを連続してガードレールを構成することはできるが、途中のエレメントだけを取り除こうとすると、エレメント群の全長にわたって軸方向にその位置をずらさなければならなかった。
<3> したがって、長い延長のガードレールの途中に、後に開口部を設ける場合や分岐路を設ける場合には、簡単に行うことができない、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような課題を解決するために、本発明のガードレールの調整エレメントは、分割エレメント群の間に設置する調整エレメントであって、調整エレメントは、受けエレメントと、スライドエレメントによって構成し、スライドエレメントが、受けエレメントの中空部に収納自在である形状、寸法によって構成したことを特徴としたものである。
また本発明のガードレールの調整エレメントは、分割エレメント群の間に設置する調整エレメントであって、分割エレメントは、2枚の曲面板を、断面「ハ」字状に組み合わせた曲面脚と、その曲面脚の上に設置した水平筒とによって構成し、この水平筒の一端からは水平筒の軸方向に短柱を突設してあり、一方、水平筒の他端には、水平筒の軸方向に開口し、前記した短柱を容易に挿入できる形状の中空部である受け溝が形成してあり、調整エレメントは、受けエレメントと、スライドエレメントによって構成し、スライドエレメントが、受けエレメントの中空部に収納自在である形状、寸法によって構成したことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のガードレールの調整エレメントは以上説明したようになるから、調整エレメントを構成するスライドエレメントを、引き戸を開けるように受けエレメントの内部空間の中に引き込めば、前後の受けエレメントの間に空間を形成することができる。
そうすれば、スライドエレメントの前後のいずれかの受けエレメントをわずかに横移動するだけで、長い延長の一列のガードレールにおいて、簡単に開口部を作ったり、分岐路を作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の調整エレメントを、一般の分割エレメント群に組み込む状態の説明図。
【図2】受けエレメントの間にスライドエレメントを組み込んだ調整エレメントの説明図。
【図3】スライドエレメントをスライドさせた状態の断面図。
【図4】一般の分割エレメントを接続したガードレールの構造の実施例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図面を参照にしながら本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0009】
<1>ガードレールの全体。
本発明は一般の分割型ガードレールの一部に設置する、調整エレメントに関するものである。
一般の分割型ガードレールとは、分割エレメントを順次組み合わせて長い延長のガードレールを構成する構造であり、以下に説明する。
【0010】
<2>分割エレメント。
ガードレールのほとんどを構成する分割エレメントAは、2枚の曲面脚1を、断面「ハ」字状に組み合わせた曲面脚1と、その曲面脚1の上に設置した水平筒2とによって構成する。
この水平筒2は、通常は円筒状であるが、角筒、小型の型鋼、板体、その他の形状の長手部材を採用することができる。
この水平筒2と曲面脚1が、道路を仕切る主体となる。
そして、この水平筒2の一端からは水平筒2の軸方向に短柱3を突設してある。
短柱3は、通常は円柱状であるが、角柱、型鋼、板体、その他の形状を採用することができ、本願発明の明細書などでは、それらの形状を含めて短柱3と称する。
一方、水平筒2の他端には、水平筒2の軸方向に開口した受け溝4が形成してある。
この受け溝4は、前記した短柱3を容易に挿入できる形状の中空部であり、短柱3とほぼ相似形をしている。
この分割エレメントAを順次接続して組み立てて、延長の長いガードレールを構成する。(図4)
組み立てにおいては、ひとつの分割エレメントAの受け溝4に対して、隣接する次のエレメントの短柱3を挿入することで行い、順次連結して長い延長のガードレールを構築するものである。
【0011】
<3>調整エレメント。(図2)
本願発明の調整エレメントBは、多数の分割エレメントAを組み合わせた延長の長いガードレールの中間に配置するエレメントである。
そして、受けエレメントB1とその間に配置するスライドエレメントB2とによって構成する。
【0012】
<3−1>受けエレメント。
受けエレメントB1は、2枚の曲面脚1を、断面「ハ」字状に組み合わせた曲面脚1と、その曲面脚1の上に設置した水平筒2とによって構成する。
ただし2枚の曲面脚1は、両者の間が接触せずに、一定の寸法だけ離れている。
この離れている内側の寸法は、後述するスライドエレメントB2の曲面脚1の外側の寸法よりも多少大きく形成してある。
また曲面脚1の上に設置した水平筒2の内面の形状、寸法は、後述するスライドエレメントB2の円柱部の外側の形状、寸法よりも多少大きい寸法で形成してある。
そして受けエレメントB1では、その曲面脚1の内側空間と、水平筒2の内側空間とが上下に連続した中空部を形成している。
受けエレメントB1はこのように内側に、上下に連続した中空部を形成してあるので、その中空部に、後述するスライドエレメントB2を平行移動させて収納することができることになる。
【0013】
<3−2>スライドエレメント。
スライドエレメントB2も、2枚の曲面脚1を、断面「ハ」字状に組み合わせた曲面脚1と、その曲面脚1の上に設置した水平筒2とによって構成する。
このスライドエレメントB2の外形は、前記した受けエレメントB1の中空部の形状よりもわずかに小さい相似型を呈する。
すなわち、スライドエレメントB2の2枚の曲面脚1の外側の寸法が、受けエレメントB1の曲面脚1の内側寸法よりも多少小さく形成してある。
またスライドエレメントB2の曲面脚1の上に設置した水平筒2の外型は、受けエレメントB1の水平筒2の内側の寸法よりも多少小さく形成してある。
したがって、スライドエレメントB2は、受けエレメントB1の中空部に平行移動して収納できる関係を有する。
【0014】
<3−3>二種類の受けエレメント。
受けエレメントB1を、分割エレメントA群の間に設置する必要がある。
そのために、受けエレメントB1は、二種類の構成のものを採用する。
すなわち一つの受けエレメントB1は、その一端に分割エレメントAと同様の位置に、同様の形状、寸法の短柱3を突設させる。
ただし、短柱3を突設させた受けエレメントB1は、一般の分割エレメントAのように他端に受け溝4は設けていない。
一方、他の受けエレメントB1は、その尾端に、分割エレメントAと同様の位置に、同様の形状、寸法の受け溝4を形成する。
ただし、受け溝4を形成した受けエレメントB1は、一般の分割エレメントAのように他端に短柱3を突設させてはいない。
【0015】
<4>組立。
上記の調整エレメントBを、分割エレメントAの途中に設置させる工程を説明する。
【0016】
<5>分割エレメントA群の組み立て。
まず多数の分割エレメントAを組み立てて長い延長のガードレールを形成する。
そのために、ひとつの分割エレメントAの尾端の受け溝4に、次の分割エレメントAの短柱3を挿入して一体化する。
これらの一体化作業は、分割エレメントAの構造が簡単で軽量であるから、特別の重機を必要とせず、作業員の人力で組み立てを行うことができる。
この工程を経て、多数の分割エレメントAを一列に延長して、長いガードレールを構成する。
【0017】
<6>調整エレメントBの設置。
分割エレメントA群で形成したガードレールの途中に、本願発明の調整エレメントBを介在させる。
その設置位置は、たとえば一定距離ごとにひと組を設置したり、あるいは将来ガードレールで仕切った通路を分岐させたり、出入り口を増設する予定の位置に設置するなどが考えられる。
調整エレメントBの設置に際しては、分割エレメントAの一端の受け溝4内に、短柱3を突設した受けエレメントB1の短柱3を挿入する。
その受けエレメントB1の中空部に、スライドエレメントB2の一部を挿入して一体化する。
そのスライドエレメントB2の端を、短柱3を突設していない、他の受けエレメントB1の中空部に挿入する。
こうしてスライドエレメントB2は、その両側の一部を、受けエレメントB1に挿入した状態で設置することになる。
受け溝4を形成した受けエレメントB1には、一般の分割エレメントAの短柱3を挿入して、その後は分割エレメントAの組み立てを続けてゆく。
【0018】
<7>ガードレールの切り離し。(図3)
何らかの事情でガードレールを切り離したい場合に、その付近の調整エレメントBを探す。
そして調整エレメントBのスライドエレメントB2を、いずれかの受けエレメントB1の中空内に、引き戸を開くように平行移動させる。
すると、前後の受けエレメントB1の間に間隔sが発生する。
そうすれば、その前後で分割エレメントAが絶縁され、受けエレメントB1を含めて分割エレメントAを横方向へ移動することができる。
その後は順次、分割エレメントAの短柱3を受け溝4から引き抜いて、簡単に解体することができるし、大きく横移動して大きな開口部を開設することもできる。

【符号の説明】
【0019】
A:分割エレメント
B:調整エレメント
B1:受けエレメント
B2:スライドエレメント
1:曲面脚
2:水平筒
3:短柱
4:受け溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割エレメント群の間に設置する調整エレメントであって、
調整エレメントは、
受けエレメントと、スライドエレメントによって構成し、
スライドエレメントが、受けエレメントの中空部に収納自在である形状、寸法によって構成してある、
ガードレールの調整エレメント。

【請求項2】
分割エレメント群の間に設置する調整エレメントであって、
分割エレメントは、
2枚の曲面板を、断面「ハ」字状に組み合わせた曲面脚と、その曲面脚の上に設置した水平筒とによって構成し、
この水平筒の一端からは水平筒の軸方向に短柱を突設してあり、
一方、水平筒の他端には、水平筒の軸方向に開口し、前記した短柱を容易に挿入できる形状の中空部である受け溝が形成してあり、
調整エレメントは、
受けエレメントと、スライドエレメントによって構成し、
スライドエレメントが、受けエレメントの中空部に収納自在である形状、寸法によって構成してある、
ガードレールの調整エレメント。

【請求項3】
調整エレメントは受けエレメントとスライドエレメントで構成し、
受けエレメントは、
2枚の曲面板を、断面「ハ」字状に組み合わせた曲面脚と、その曲面脚の上に設置した水平筒とによって構成し、
かつ2枚の曲面脚は、両者の間が接触せずに、一定の寸法だけ離れた状態で構成し、
この離れている内側の寸法は、スライドエレメントの曲面脚の外側の寸法よりも多少大きく形成してあり、
また曲面脚の上に設置した水平筒の内面の形状、寸法は、スライドエレメントの円柱部の外側の形状、寸法よりも多少大きい寸法で形成してあり、
受けエレメントでは、その曲面脚の内側空間と、水平筒の内側空間とが連続した中空部を形成してあり、
受けエレメントの中空部に、スライドエレメントを平行移動させて収納することができるように構成した、
請求項1記載のガードレールの調整エレメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−21420(P2011−21420A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168800(P2009−168800)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(593139374)株式会社エムオーテック (10)
【Fターム(参考)】