説明

キトサンおよびジカルボン酸を含む、酒さ疾患を治療するための組成物

本発明は、クーペローゼ、酒さ疾患、および下肢毛細血管拡張症における、顔およびその他の患部の皮膚を保護するのに有用な、皮膚に塗布した後に被膜を形成するキトサン、キトサン誘導体、または生理学的に許容されるそれらの塩を含有する組成物、および短〜中鎖ジカルボン酸アミド、または生理学的に許容されるその塩を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酒さ疾患(Rosacea)、皮膚の慢性炎症状態、およびクーペローゼ(couperose)や下肢毛細血管拡張症のような毛細血管拡張症によって特徴付けられるその他の皮膚状態を保護するのに有用な、顔およびその他の患部の皮膚に塗布した後に被膜を形成する薬剤、または医療デバイス、または衛生用品、または化粧品を作製するための、キトサン、キトサン誘導体、または生理学的に許容されるそれらの塩と、短〜中鎖ジカルボン酸アミド、または生理学的に許容されるその塩とを含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
酒さ疾患は、世界中で1300万人以上が罹患していると推定される、一般的ではあるがしばしば誤解される状態である(非特許文献1参照)。酒さ疾患は、ケルトまたは北欧系の白色人種に影響を及ぼし、「ケルトの呪い(curse of the Celts)」と命名されている。アメリカ系およびアフリカ系の黒人のような浅黒い皮膚の人種では、非常にまれである。
【0003】
酒さ疾患は、顔の中心で、および頬、鼻、または額の全体にわたって紅斑(フラッシングおよび発赤、「クーペローゼ」とも呼ばれる)として始まるが、首および胸にはごくまれにしか影響を及ぼさない。酒さ疾患が進行するにつれて、半永久的紅斑、毛細血管拡張症(顔面の表在血管の拡張)、赤色ドーム丘疹(red domed papules)(小疱)および膿疱、眼の充血およびゴロゴロ感(red gritty eyes)、灼熱感および刺すような感覚などのその他の症状と、いくらか進行した症例では赤く分葉した鼻(red lobulated nose)(鼻瘤)が生ずる可能性がある。この疾患は、尋常性座そうおよび/または脂漏性皮膚炎と混同されまた共存する可能性がある。酒さ疾患は、男女両方に影響を及ぼすが、女性のほうがほぼ3倍も一般的であり、30代および40代で一般的になり、40歳から50歳の間でピークに達する。頭皮または耳に発疹が存在することは、酒さ疾患が主に顔面に関して診断されるので、これとは異なるかまたは共存する診断があることを示唆している。
【0004】
酒さ疾患の病因はわかっておらず、様々な要因がこの状態の一因となることが疑われている。様々な要因の中で、下記のものが、ある役割を演じていると主張されている:フラッシング、毛細血管拡張症、紅斑をもたらす小血管拡張を引き起こす、血管周囲/血管コラーゲンの変性変化;潜在的に炎症性の物質の、血管周囲漏出;サイトカインおよびその他のメディエーターに対する異常組織応答;局所薬物の使用(コルチコステロイド)。両極端の温度に曝されると、激しい運動、日光からの熱、深刻な日焼け、冷風、低温環境から高温環境への移動と同様に、顔面が紅潮する可能性がある。フラッシングを誘発する可能性があるいくつかの食物および飲料も存在し、それらには、アルコール、カフェイン(熱い紅茶およびコーヒー)、および香辛料入りの食物が含まれる。ニキビダニ(Demodex folliculorum)、ピロリ菌(Helicobacter pylori)、または座そう菌(Propionibacterium acnes)のような微生物も、酒さ疾患の発症の一因となり、または酒さ疾患を悪化させることが主張されている。
【0005】
酒さ疾患の治療は確定していない。全身または局所治療薬には、抗生剤、メトロニダゾール、および抗真菌剤、レチノイド、いくつかのβ遮断薬、スピロノラクトンが含まれる。簡略な治療はまだ提示されておらず、ごくわずかな症例でしか症状の永久的な寛解には至らないので、生涯にわたる対症療法がしばしば必要となる。酒さ疾患の長期治療は、薬物固有の毒性によって制限される。
【0006】
下肢毛細血管拡張症は、内径が0、1、および1mmの非常に細い静脈瘤性毛管にあり、これらは以下のように分類される:
1)静脈不全のその他の臨床的徴候を伴う、静脈不全に起因した毛細血管拡張症。この症状は、足の後方、果後部、下肢、および大腿内表面に局在化する。
2)大腿内表面および前外側大腿表面に局在化する、ホルモンの異常に起因した毛細血管拡張症。これらの症状は、初経、更年期、妊娠、または避妊治療の下で自然に起こる。
3)主に下肢の遠位部分での、毛細血管系の体質的な虚弱性に起因した、非常に細い毛細血管拡張症。この症状は、UV放射線と、高温および低温によって誘発される。
4)マッティング(matting)型毛細血管拡張症
5)網状の静脈瘤性血管:この血管は、ほとんどの場合、毛細血管拡張症に関連ある領域に向けた栄養血管である。
【0007】
下肢毛細血管拡張症のための満足のいく治療は存在せず、唯一可能な治療は美容整形手術である。
【0008】
したがって、化学的および物理的傷害を著しく受け易い皮膚を保護するための、安全で有効な医療ツールに対する、満たされない要求がある。
【0009】
キトサンおよびその誘導体は、異なる製剤でのその使用が当技術分野で知られている、甲殻類の外骨格から抽出されたキチン由来のアミノ−多糖である。特許文献1には、タンパク質またはペプチドを分離するための担体として有用な小球体の成分として、キトサンを開示しており、特許文献2においては、有効成分としてパラフィン蝋を含む、皮膚マッサージ用のパック組成物の成分として、キトサンを報告しており、特許文献3には、ボツリヌス毒素のゲル様またはスポンジ状製剤の成分として、しわの治療薬を得るための、キトサンの使用について教示している。特許文献4においては、空洞充填創傷ドレッシングに有用なヒドロゲルの成分として、キトサン誘導体について報告している。特許文献5には、多孔質のスポンジ状の質感を有する担体シートの成分として、高い脱アセチル化度を有するキトサンの組成物について教示している。特許文献6には、ナノサイズ繊維の網状構造の形態でキトサンを含む組成物を開示する。特許文献7には、長期化にわたり薬物を保持する規則的なラメラ構造を有する、キトサンの多層化空隙シートを開示しており、特許文献8には、皮膚に塗布する薬物中の分散安定剤または乳化剤として使用することができる、両親媒性キトサン誘導体について教示している。最後に、特許文献9には、少なくとも1種の抗真菌剤およびヒドロキシアルキルまたはカルボキシアルキルキトサンを含有するマニキュア液組成物を開示しており、一方、特許文献10には、ヒドロキシプロピルキトサンと組み合わせたトクサ属(genus Equisetum)からの1種のハーブエキスをベースにした、爪再構成組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国特許公開第20020084672号
【特許文献2】韓国特許公開第20020048534号
【特許文献3】特開2005−306746号公報
【特許文献4】国際公開第2005/055924号
【特許文献5】特開2004−231604号公報
【特許文献6】国際公開第03/042251号
【特許文献7】国際公開第02/057983号
【特許文献8】特開平11−060605号公報
【特許文献9】欧州特許第1303249号明細書
【特許文献10】国際公開第2004/112814号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Plewig & Jansen: Fitzpatrick's Dermatology in General Medicine. Freedberg et al. Eds., 6thed., McGRAW-HILL pub., NY 2003, p.688
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、クーペローゼ、酒さ疾患、および下肢毛細血管拡張症における、顔およびその他の患部の皮膚を保護するのに有用な、皮膚に塗布した後に被膜を形成する組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、キトサンまたはその誘導体と、少なくとも短〜中鎖(6から12個の炭素原子)脂肪族ジカルボン酸のアミドとを含有する製剤は、塗布し乾燥した後に、化学的または物理的傷害から皮膚を保護するのに適した弾性被膜を皮膚表面に形成することができることを、ついに見出した。被膜の2成分、糖質性および脂質性の成分は、相乗的な方法で作用し、2成分のみの場合よりも優れた保護活性を有する。
【0014】
本発明による被膜形成組成物は、皮膚表面に容易に噴霧することができ、弾性被膜を素早く乾燥し容易に形成することによって、油っぽい皮膚の煩わしい感覚が回避される。本発明による被膜形成組成物は、穏やかにマッサージすることによって皮膚に塗布してもよい。乾燥後に形成された被膜は、高温および低温による傷害から皮膚を保護し、紫外線に起因した炎症を低減し、それをコーティングしその生体機能を阻害することによって微生物の成長を防止する。
【0015】
したがって本発明の目的は、
(A)少なくともキトサン、キトサン誘導体、および/または生理学的に許容されるそれらの塩、および
(B)少なくともC6〜C12ジカルボン酸アミド、および/または生理学的に許容されるその塩を、
含有する医薬品および/または化粧品組成物によって表される。
【0016】
前記組成物は、皮膚表面に塗布し乾燥した後に被膜を形成するのに有用であり、酒さ疾患、並びに毛細血管拡張症によって特徴付けられるその他の皮膚状態の影響を受ける、顔面およびその他の領域の皮膚を保護する。
【0017】
キトサン誘導体の中でも、水溶性キトサンが好ましく、ヒドロキシプロピルキトサンなどのヒドロキシアルキルキトサンが、最も好ましい水溶性キトサン誘導体である。
【0018】
6〜C12ジカルボン酸の中で、C8〜C10ジカルボン酸が特に好ましく、C9ジカルボン酸が最も好ましく、追加の好ましい実施形態によれば、そのようなジカルボン酸は直鎖状および/またはアルキル酸である。
【0019】
本発明の目的で使用されるC6〜C12ジカルボン酸アミドは、好ましくは下式:
ROOC−(CH2n−COOR
によって表され、式中、
「n」は、4から10までの間を含み、好ましくは6から8までの間、より好ましくは、nは7であり、
Rは、−N(R’)(R”)基であり、但し
R’はHまたはC1〜C4アルキル基であり、
R”はH、C1〜C4アルキル基、またはC1〜C4カルボキシ基である。
【0020】
好ましい実施形態によれば、前記C1〜C4アルキル基がメチルまたはエチルであるのに対し、前記C1〜C4カルボキシ基はカルボキシメチルである。
【0021】
好ましいC6〜C12ジカルボン酸は、アゼライン酸である。したがって、C6〜C12ジカルボン酸の中では、アゼロイルジグリシンなどのアゼライン酸アミドが好ましく、これらは塩、好ましくは、カリウムアゼロイルジグリシネートなどのナトリウムまたはカリウムの塩の形態をとってもよい。
【0022】
本発明による組成物は、皮膚表面で穏やかなマッサージによって塗布してもよく、または、乾燥後に弾性被膜を形成させることによって、噴霧してもよい。本発明による組成物は、塗布後何時間にもわたる、皮膚の長続きする密接な接触と皮膚の連続保護とを可能にする。
【0023】
本発明による組成物は、その含量が成分Aにおいて0.1から10重量%(重量%は全製剤に対して与えられる)、好ましくは0.2から5重量%、より好ましくは0.25から2.0重量%であり、またその含量が成分Bにおいて0.1から30重量%(重量%は全製剤に対して与えられる)、好ましくは0.25から25重量%、より好ましくは0.5から20重量%である溶液、懸濁液、ローション、エマルジョン、コロイド、クリーム、ゲルを含む、液体、半液体、または半固体製剤の形態をとる。
【0024】
本発明による組成物は、均一で目に見えない被膜を残すことから、従来の製剤よりも優れている。さらに、本発明による組成物は、汚れず、ゲルおよびローションがそうであるように乾燥せず、その他の硬質被膜製剤がそうであるような塗布したときの煩わしい感覚が生じない。
【0025】
医薬品組成物は、適合性ある添加物、アジュバント、および/または医薬品としてもしくは化粧品として許容される担体を使用して、従来の技法によって調製され、相補的なまたはどんな場合でも有用な活性を有するその他の活性成分と組み合わせて含有していてもよい。
【0026】
本発明により調製されたこれらの組成物の例には、罹患した皮膚に塗布するための、溶液、エマルジョン、懸濁液、コロイド、クリーム、ゲルが含まれる。
【0027】
本発明による組成物は、溶媒、日焼け止め、スキンコンディショナー、皮膚軟化剤、保湿剤、乳化剤、増粘剤、UV−Aフィルタ、植物エキス、抗酸化剤から選択された1種または複数の追加の成分を含有してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の医薬品組成物および使用について、以下の実施例によってより十分に記述する。しかし、そのような実施例は、例として示されており、限定するものではないことに留意すべきである。
【実施例1】
【0029】
下記のw/w%組成を有する水中油クリームを調製した。
1.カリウムパルミトイル加水分解小麦タンパク質 1.00%
2.ステアリン酸グリセリル 2.00%
3.セテアリルアルコール 2.00%
4.ステアリン酸グリセリルSE 1.00%
5.ジカプリリルエーテル 4.00%
6.メトキシケイ皮酸エチルヘキシル 4.00%
7.ブチルメトキシジベンゾイルメタン 1.00%
8.レシチン 0.02%
9.トコフェロール 0.001%
10.パルミチン酸アスコルビル 0.001%
11.クエン酸 0.001%
12.酢酸トコフェリル 0.50%
13.精製水 81.00%
14.ヒドロキシプロピルキトサン 0.50%
15.キサンタンガム 0.50%
16.変性エチルアルコール 1.00%
17.フェネチルアルコール 0.50%
18.カプリリルグリコール 0.50%
19.カリウムアゼロイルジグリシネート 0.50%
【0030】
調製
相A:ヒドロキシプロピルキトサンを、透明な溶液が得られるまで、水全体に対して約50重量%、分散させた。溶液を65℃±2℃で加熱し、キサンタンガムを添加し、均質な溶液が得られるまで撹拌した。
【0031】
相B:カリウムパルミトイル、ステアリン酸グリセリル、セテアリルアルコール、ステアリン酸グリセリルSE、ジカプリリルエーテル、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、レシチン、トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、クエン酸、および酢酸トコフェリルを一緒に混合し、65℃±2℃で加熱した。
【0032】
相Bを、撹拌(ターボ)しながら相Aに添加して乳化させた。得られたエマルジョンを、連続的に混合しながら35℃±2℃に冷却した。
【0033】
カプリリルグリコールをフェネチルアルコールに溶解したもの、カリウムアゼロイルジグリシネートを残りの精製水に溶解したもの(50重量%)、およびエチルアルコールを、調製の終わりにエマルジョンに混合した。生成物を、均質な水中油クリームが得られるまで、穏やかな撹拌状態に保った。
【実施例2】
【0034】
下記のw/w%組成を有する水中油クリームを調製した。
1.カリウムパルミトイル加水分解小麦タンパク質 3.00%
2.ステアリン酸グリセリル 5.00%
3.セテアリルアルコール 5.00%
4.ステアリン酸グリセリルSE 3.00%
5.ジカプリリルエーテル 6.00%
6.メトキシケイ皮酸エチルヘキシル 6.00%
7.ブチルメトキシジベンゾイルメタン 3.00%
8.レシチン 0.04%
9.トコフェロール 0.01%
10.パルミチン酸アスコルビル 0.01%
11.クエン酸 0.01%
12.酢酸トコフェリル 1.00%
13.精製水 59.93%
14.ヒドロキシプロピルキトサン 1.00%
15.キサンタンガム 1.00%
16.変性エチルアルコール 3.00%
17.フェネチルアルコール 1.00%
18.カプリリルグリコール 1.00%
19.カリウムアゼロイルジグリシネート 1.00%
【0035】
調製
製剤を、実施例1に関して述べたものと同じ方法を使用することにより、調製した。
【実施例3】
【0036】
下記のw/w%組成を有する水中油クリームを調製した。
1.カリウムパルミトイル加水分解小麦タンパク質 2.00%
2.セテアリルアルコール 5.00%
3.ステアリン酸グリセリルSE 3.00%
4.ジカプリリルエーテル 5.00%
5.メトキシケイ皮酸エチルヘキシル 4.00%
6.レシチン 0.04%
7.パルミチン酸アスコルビル 0.01%
8.クエン酸 0.01%
9.酢酸トコフェリル 1.00%
10.精製水 72.94%
11.ヒドロキシプロピルキトサン 1.00%
12.キサンタンガム 1.00%
13.変性エチルアルコール 3.00%
14.フェネチルアルコール 1.00%
15.カリウムアゼロイルジグリシネート 1.00%
【0037】
調製
相A:ヒドロキシプロピルキトサンを、透明な溶液が得られるまで、水全体に対して約50重量%、分散させた。溶液を65℃±2℃で加熱し、キサンタンガムを添加し、均質な溶液が得られるまで撹拌した。
【0038】
相B:カリウムパルミトイル、セテアリルアルコール、ステアリン酸グリセリルSE、ジカプリリルエーテル、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、レシチン、パルミチン酸アスコルビル、クエン酸、および酢酸トコフェリルを一緒に混合し、65℃±2℃で加熱した。
【0039】
相Bを、撹拌(ターボ)しながら相Aに添加して乳化させた。得られたエマルジョンを、連続的に混合しながら35℃±2℃に冷却した。
【0040】
フェネチルアルコール、カリウムアゼロイルジグリシネートを残りの精製水に溶解したもの(50重量%)、およびエチルアルコールを、調製の終わりにエマルジョンに混合した。生成物を、均質な水中油クリームが得られるまで穏やかな撹拌状態に保った。
【実施例4】
【0041】
下記のw/w%組成を有する水中油クリームを調製した。
1.カリウムパルミトイル加水分解小麦タンパク質 2.00%
2.ステアリン酸グリセリル 4.00%
3.セテアリルアルコール 4.00%
4.ステアリン酸グリセリルSE 2.00%
5.ジカプリリルエーテル 5.00%
6.メトキシケイ皮酸エチルヘキシル 8.00%
7.ブチルメトキシジベンゾイルメタン 2.00%
8.ビス−エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 3.00%
9.レシチン 0.040%
10.トコフェロール 0.002%
11.パルミチン酸アスコルビル 0.002%
12.クエン酸 0.002%
13.酢酸トコフェリル 0.20%
14.ヒドロキシプロピルキトサン 1.00%
15.キサンタンガム 0.30%
16.変性エチルアルコール 2.00%
17.フェネチルアルコール 0.50%
18.カプリリルグリコール 0.50%
19.カリウムアゼロイルジグリシネート 0.50%
20.精製水 100.00%になるまでの適量
【0042】
調製
製剤を、実施例1の場合と同様に作製した。均質な水中油クリームが得られた。
【実施例5】
【0043】
ヒト3D人工皮膚上に放出されたVEGF(血管内皮成長因子)の阻害に関する比較評価を、実施例4による製剤によって試験をし、2種の異なる製剤、即ちそれぞれLPOL2899A(実施例4の場合と同じであるが、カリウムアゼロイルジグリシネートを含有しない)、LPOL2899B(実施例4の場合と同じであるが、ヒドロキシプロピルキトサンを含有しない)、およびLPOL2899C(実施例4の場合と同じであるが、カリウムアゼロイルジグリシネートまたはヒドロキシプロピルキトサンを含有しない)という名称の製剤と比較した。
【0044】
4種の製剤の作用を、3Dヒト表皮に対する炎症促進性刺激によって誘発された血管内皮成長因子(VEGF)生成の阻害に関して試験をした。VEGFは、血管透過性に著しい影響を及ぼす強力な血管新生タンパク質であり、ケラチノサイト、即ち皮膚の細胞で構成的に発現される。IL−1αのような可溶性の炎症性メディエーターへの曝露など、ストレスの多い条件下では、表皮ケラチノサイトによって、VEGFの合成および放出が増大する。表皮単位を、VEGFの合成が増大するように細胞培地中でIL−1αにより処理し、それと同時に、表皮角質層に未希釈の調査済みサンプルを塗布して処理した。24時間の処理後、表皮単位の下の細胞培地を収集し、ELISAアッセイによりVEGF含量に関して分析を行った。
【0045】
試験がなされたサンプルは、実施例4による製剤と、2種の比較製剤LPOL2899AおよびLPOL2899Bであった。IL−1αで処理された皮膚単位は、陽性対照として使用した。実験は、3回繰り返し行った。用いたin vitro試験系は、ヒト表皮の3次元人工系(Mattek、USA)からなり、即ち、正常なヒト表皮ケラチノサイトを含む、再構成された人口ヒト皮膚モデルであり、一体型3次元細胞培養モデルとして成長させ、ヒト皮膚をin vitroで完全に模倣したものである。このモデルは、通常の障壁機能を示す(分化した角質層の存在)。
【0046】
各未希釈サンプル約20mgを、表皮単位に3回同様に塗布し、生成物の塗布に30秒間曝した後、対照を除く表皮単位を、500pg/mlのIL−1α(Prospec)で、細胞培地中で2時間処理することにより、VEGF合成が改善された。
【0047】
2時間後、細胞培地を除去し、交換した。サンプルのインキュベーションを、5%CO2中、37℃で最長24時間実施した。
【0048】
陽性対照として、IL−1αでのみ処理した表皮単位を使用した。曝露時間の終わりに、生成物を除去し、組織をリン酸緩衝液(PBS)で穏やかに洗浄して、さらなるMTTおよび生死判別試験を行い、培地をVEGFアッセイ用に収集した。
【0049】
サンプルでの処理があるものおよびないものの、IL−1α処理、500pg/ml後のVEGF放出アッセイを、以下の表に報告する。
【0050】
【表1】

【0051】
ビヒクルを含有するが、2種の成分、即ちカリウムアゼロイルジグリシネートおよびヒドロキシプロピルキトサンを含有しない製剤は、IL−1α誘発性VEGF放出を、18%だけ阻害した。ヒドロキシプロピルキトサンを含有する製剤の効果は、阻害率が25.7%であり、カリウムアゼロイルジグリシネートを含有する製剤の阻害率は、33.9%であった。実施例4による製剤は、最強の阻害効果(阻害率46.4%)を発揮し、IL−1αの傷害に対する皮膚保護に関して、これら2成分の相乗活性が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくともキトサン、キトサン誘導体、および/または生理学的に許容されるそれらの塩、および
(B)少なくともC6〜C12ジカルボン酸アミド、および/または生理学的に許容されるその塩を、
含有することを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記キトサン誘導体は、水溶性であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記キトサン誘導体は、ヒドロキシアルキルキトサンであり、好ましくはヒドロキシプロピルキトサンであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記キトサン、キトサン誘導体、および/またはC6〜C12ジカルボン酸アミドの生理学的に許容される塩は、ナトリウムおよび/またはカリウム塩であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記C6〜C12ジカルボン酸は、C8〜C10ジカルボン酸であり、好ましくはC9ジカルボン酸であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記C6〜C12ジカルボン酸は、直鎖状および/またはアルキル酸であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記ジカルボン酸は、アゼライン酸であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記C6〜C12ジカルボン酸アミドは、下式:
ROOC−(CH2n−COOR
を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物
(式中、
nは、4から10までの間を含み、好ましくは6から8までの間を含み、より好ましくは7であり、
Rは、−N(R’)(R”)基であり、但し
R’は、HまたはC1〜C4アルキル基であり、
R”は、H、C1〜C4アルキル基、またはC1〜C4カルボキシ基である)。
【請求項9】
前記C1〜C4アルキル基は、メチルおよび/またはエチルであり、前記C1〜C4カルボキシ基は、カルボキシメチルであることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記C6〜C12ジカルボン酸アミドは、アゼロイルジグリシンであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記C6〜C12ジカルボン酸アミド塩は、カリウムアゼロイルジグリシネートであることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
成分(A)は、組成物全体の重量に対して0.1から10%、好ましくは0.2から5%、より好ましくは0.25から2.0%の量で存在することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
成分(B)は、組成物の全体の重量に対して0.1から30%、好ましくは0.25から25%、より好ましくは0.5から20重量%の量で存在することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
溶液、懸濁液、ローション、エマルジョン、コロイド、クリーム、またはゲルを含めた、液体、半液体、または半個体の形態をとることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
医薬品としておよび/または化粧品として許容される、活性成分、添加物、アジュバント、および/または担体を含有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物は、酒さ疾患の治療および/または予防用であることを特徴とする前記請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物は、毛細血管拡張症、好ましくは下肢毛細血管拡張症の治療および/または予防用であることを特徴とする前記請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物は、クーペローゼの治療および/または予防用であることを特徴とする前記請求項1〜17のいずれか一項に記載の組成物。

【公表番号】特表2011−529936(P2011−529936A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521529(P2011−521529)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059749
【国際公開番号】WO2009/150257
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(503459992)ポリケム・エスエイ (16)
【Fターム(参考)】