説明

キメラ拮抗物質ANTH1

本発明は、IFNガンマ(IFNγ)受容体のアルファ鎖の細胞外領域のN−末端に融合したヒトインターロイキン2(IL−2)のN−末端領域の60アミノ酸フラグメントからなる組換えキメラタンパク質に関するものである。インビトロにおいて該タンパク質はT細胞増殖刺激活性を示し、T細胞におけるIL−2増殖刺激活性を阻害し、IFNγによるHLA−DRの誘導を阻害し、そしてIFNγの抗増殖活性を阻害する。本発明は、自己免疫疾患、移植拒絶、慢性炎症、敗血症、虚血再潅流症候群及び動脈硬化のような種々の病気を治療するための医薬品に使用するのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学、バイオテクノロジー及び医学に関するものであり、特に体の種々の機能の調節に作用すると共に病的状態において増量を示す二つのサイトカイン、インターロイキン−2(IL−2)及びガンマインターフェロン(IFNγ)の生物活性を阻害することができる薬物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
Tヘルパーリンパ球(CD4+)及び細胞傷害性Tリンパ球(CD8+)によるサイトカインの生産は、Th1及びTh2として規定されるサイトカイン生産パターンを生じる。Th1パターンは、IL−2、腫瘍壊死因子α(TNFα)及びIFNγの生産を特徴とし、一方Th2パターンは、IL−4、IL−5、IL−6などの生産に対応する。この種の応答は、種々の免疫異常反応を促進するのみならず、身体保護に重要な役割を果たす。
【0003】
炎症の免疫反応や無制御の免疫反応は、炎症性疾患や自己免疫性疾患の発現、進展、そして永続化に至る一連の状態をもたらす。このような疾患の中にはIL−2及びIFNγの病理的な役割が実証された例がある。
【0004】
多発性硬化症は、変性性脱ミエリン自己免疫疾患である。IFNγの役割は、この自己免疫疾患については非常に明白である。即ち、IFNγを使用した臨床試験において、IFNγ処理が病気を悪化させることが示されている(Panitch HS.et al.インターフェロンガンマで治療した患者における多発性硬化症の悪化、Lancet 1,893−5,1987.)。また、この病気に罹患した患者において、IL−2及びIFNγに対応するタンパク質のみならず、対応するメッセンジャーRNAが高いレベルにあることも示されている(Lin J.et al.多発性硬化症患者の末梢血単核細胞におけるIL−2、IFN−ガンマ及びTNF−アルファmRNA発現、Chung Kuo I Hsueh Ko Hsueh Yuan Hsueh Page 19,24−8,1997)。患者の細胞によるこれ等二つのサイトカインの生産は、多発性硬化症の再発のマーカーとしてこれらを使用できることを示唆する(Philippe J.et al.多発性硬化症の再発のマーカーとしてのインビトロTNF−アルファ、IL−2及びIFN−ガンマ生産、Clin Neurol Neurosurg98,286−90,1996)。IL−2及びIFNγが中枢神経系の脱ミエリン化に至る非特異的をリンパ球の活性化に関与することも観察されている(Martino G.et al.親炎症性サイトカインは多発性硬化症患者において二つの異なるカルシウム−シグナリング経路による抗原非依存T細胞活性化を調節する、Ann Neurol 43,340−49,1998)。βIFN治療に反応しないこの疾患の患者において、ダクリズマブとして知られている抗IL−2抗体を使用した臨床試験が実施されている。
【0005】
全身性エリテマトーデスは、高レベルのIL−2及びIFNγの存在が病気の悪化と関連するもう一つの全身性自己免疫疾患である(Viallard JF.et al.全身性エリテマトーデス(SLE)患者の末梢血単核細胞(PBMC)によるTh1(IL−2、インターフェロン−ガンマ(IFN−ガンマ)及びTh2(IL−10,IL−4)サイトカインの生産、Clin Exp Immunol 115、189−95、1999)。他方では、ループス動物モデルにおいて、IFNγの受容体の欠失により自己抗体の生産が減少し(Haas C.et al.IFN−ガンマ受容体の除去は、ループス発症(NZBxNZW)F1マウスにおける自己抗体生産及び糸球体腎炎を阻止する、J Immunol 160,3713−18,1998)、IFNγの可溶性受容体が存在すると、この病気の発症が抑制される(Ozmen L.et al.全身性エリテマトーデスの実験的治療:マウス可溶性インターフェロン受容体によるNZB/Wマウスの治療は糸球体腎炎の発症を抑制する、Eur J Immunol.25,6−12,1995)。このことは最近、免疫グロブリンのFcフラクションに融合したIFNγの細胞外領域を含むキメラタンパク質と共にマウスループスモデルを使用して試験された(Lawson BR.et al.IFN−ガンマR/FcをコードするcDNAによるマウスループスの治療、J Clin Invest.106、207−15、2000)。しかし、全身性エリテマトーデスにおけるこの型の分子の有効性は、全身性エリテマトーデス患者のFc受容体の明らかな機能障害により制約された(Frank MM.et al.全身性エリテマトーデス患者における不完全な細網内皮系Fc−受容体機能、N Engl J Med 300,518−23,1979,Dijstelbloem HM.et al.全身性エリテマトーデスにおけるFcガンマ受容体多形:病気と免疫複合体のインビボクリアランスの関係、Arthritis Rheum43,2793−800,2000)。
【0006】
重症筋無力症は、抗アセチルコリン受容体自己抗体により仲介される器官特異的な自己免疫疾患と考えられ、T細胞に依存し、そして筋肉の衰弱及び疲労が特徴である。最近、IFNγがアセチルコリン受容体に対する自己抗体の生成を促進し、その一方、IFNγ受容体がない場合には動物モデルにおいてこの病気になりにくいことが示された(Zhang GX.et al.IFN−ガンマ受容体に欠陥のあるマウスは実験的自己免疫重症筋無力症になりにくい、J Immunol 162,3775−81,1999)。IL−2及びその他のサイトカインは、IFNγの共存の下に、この病気の進行に関与している(Zhang GX.et al.サイトカイン及び重症筋無力症の病因。Muscle Nerve.20,543−51,1997)。
【0007】
1型糖尿病(インスリン依存性)又は真性糖尿病において、膵臓のベータ細胞は自己免疫機構により破壊されている。IFNγは膵臓のベータ細胞に対して有害であるというインビトロでの証拠がある(Sternesjo J.et al.インターフェロンガンマ及び腫瘍壊死因子−アルファへのインビトロの長期暴露によるラット膵島の酸化窒素及びインスリン生産に対する影響。Autoimmunity20,185−90,1995,Dunger A.et al.腫瘍壊死因子−アルファ及びインターフェロン−ガンマはインスリン分泌を抑制し、そして未離乳ラット島におけるDNA損傷を生じる。酸化窒素関与の程度。Diabetes45,183−9,1996,Baldeon Me.et al.インターフェロン−ガンマはMHCクラスI抗原プロセッシング経路を活性化するが膵臓ベータ細胞系におけるグルコース応答性を減少する。Diabetes46,770−8,1997)。しかし、その他の研究は、膵臓中のインスリンを生産する細胞に対するIFNγの作用は間接的なものであることを示している(Sarventick N.et al,インターフェロン−ガンマのベータ細胞発現により誘導される膵島耐性の消失。Nature,346,844−7,1990)。
【0008】
最も可能性が高いのは、その作用はIL−1、TNFα及び酸化窒素の生産についてはマクロファージを介して活性化され、生成したこれ等の物質が直接ベータ細胞に作用しそしてベータ細胞におけるMHC Iの発現を促進し、その結果細胞傷害性リンパ球による破壊が促進される(Thomas HE.et al.膵臓ベータ細胞に対するIFN−ガンマの作用はクラスI MHCの上方調節を生じるが糖尿病は生じない。J Clin Invest,102,1249−57,1998,Thomas HE.et al.非肥満性糖尿病(NOD)における自己免疫糖尿病の進行におけるベータ細胞破壊。Diabetes Metab Res Rev16,251−61,2000)。IFNγが存在しない場合は糖尿病の発症は遅れるが、阻止はしないことも示されている(Hultgren B.et al.NODマウスにおいて遺伝子的にガンマ−インターフェロンを欠乏させると糖尿病を遅らせるが阻止はしない。Diabetes45,812−7,1996)。
【0009】
いくつかの論文では、糖尿病を阻止するためにIFNγの生物活性の不活化をどのように利用することができるかを示している(Debray−Scahs M.et al.マウスIFNガンマに対する抗体で治療したNODマウスにおける糖尿病の予防。J Autoimmun4,237−48,1991,Moosmayer D.et al.ヒトインターフェロン−ガンマ受容体の2価免疫付着因子はIFN−ガンマ活性の有効な阻害物質である(J Interferon Cytokine Res15,1111−5,1995,Prud’homme GJ.et al.インターフェロン−ガンマ受容体/IgG1融合タンパク質をコードする非ウイルスベクターを使用する筋肉内遺伝子治療による自己免疫糖尿病の予防。Gene Ther6,771−7,1999)。Tリンパ球の活性物質として、IL−2がインスリン生産細胞を破壊する際の反応に寄与し得ることも示されている。最近診断された10歳から21歳の小児/青春期子供における1型糖尿病の治療について、抗IL−2抗体ダクリズマブを使用する臨床試験が最近開始された(Riley Hospital for Children.Project:Prevention of Diabetes Progression Trial(PDPT).www.rileyhospital.org.)。この研究は、最近診断された子供におけるベータ細胞の破壊の進行を阻止することが意図されている。
【0010】
移植拒絶反応は、細胞性免疫及び循環する抗体が重要な役割を果たす複雑な過程である。標準的な抗拒絶治療では、シクロスポリン、ラパマイシン、アザチオプリン、ステロイドなどの薬物を併用する。しかし、この治療をしても、腎臓の移植を受けた人の50%より多く10年の間に徐々に移植片の拒絶を生じる。移植片対宿主病は骨髄移植を受けた患者における死亡の主な原因である。移植を防げ移植を受けた患者の生命を危うくするこの反応において、IL−2及びIFNγがその進展に関与していることが示されている(Hu HZ.et al.急性移植片対宿主病の初期相におけるインターフェロン−ガンマ分泌の動態及びその調節因子。Immunology98,379−85,1999,Nakamura H.et al.同種骨髄移植後の急性移植片対宿主病患者における可溶性IL−2受容体、IL−12、IL−18、及びIFN−ガンマの血清レベル。J Allergy Clin Immunol.106,S45−50.2000)。
【0011】
慢性関節リュウマチ(RA)は病因が明らかにされていない慢性の全身性疾患であり、炎症、滑液過形成及び罹患関節の破壊を特徴とする。IL−2は、一般的に自己免疫関節炎のようなTh1型疾患の状態を悪化させる親−炎症性サイトカインと考えられている。最近の研究によると、動物モデルにおいて、コラーゲンにより誘発された関節炎の急性期にIL−2メッセンジャーRNAが増加することが示されている(Thornton S.et al.コラーゲン誘発関節炎に対するIL−2の不均一な影響。J Immunol165,1557−63,2000)。他方、動物モデルにおいてIFNγの増加に伴ってこの病気の悪化が認められている(Tellander AC.et al.コラーゲン誘発関節炎における抗−CD40による強力なアジュバント効果。病気の悪化はII型コラーゲン反応性IgG2a及びIFN−ガンマの生産増加を伴う。J Autoimmun14,295−302,2000)。IL−2及びIFNγの両者は、RA患者の滑液組織において著しく増加していた(Canete JD et al.慢性関節炎における異なるTh1/Th2サイトカインパターン:インターフェロンガンマは血清反応陰性の脊椎関節症に比較して慢性関節リュウマチの粘液膜において高度に発現する。Ann Rheum Dis59,263−8,2000)。
【0012】
腸の炎症性疾患には、二つの胃腸管疾患:クローン病及び潰瘍性結腸炎がある。これ等の病気は腸の慢性的炎症を特徴とする。クローン病は、腸壁の内層周辺に(around the internal line)拡大しそして最も深い層にまで侵入する炎症性の疾患である。この炎症は、消化器系のいずれの部分(食道、胃、小腸、大腸又は肛門)にも見出すことができる。Protein Design Labs社は、抗IFNγ抗体を使用して中等度から重症のクローン病患者における第I/II相臨床試験(SMART抗−ガンマインターフェロン抗体)を開始することを報じている(Fremont,CA.Protein Design Labsはクローン病におけるSMART抗−ガンマインターフェロン抗体のI/II相試験を報じている。Protein Design Labs,Inc.(Nasdaq).2001年1月10日)。潰瘍性結腸炎は、大腸(結腸及び直腸)の粘膜及び粘膜下に限定されている。最近、アメリカ消化器学会の年会において、血流中のIFNγレベルの減少が何如にして結腸炎の軽減マーカーになるかがマウスモデルで示された(Yaron I.Annual meeting of the American Gastroenterology Association.May20−23,2001.Georgia World Congress Center.Atlanta,Georgia)。
【0013】
敗血症ショックは、血流を介して強い感染性の微生物が広まった結果である。これは院内感染によるグラム陰性菌によって頻繁に引き起こされ、そして免疫能が低下している患者及び慢性疾患を持つ患者に生じやすい。患者の1/3ではグラム陽性微生物及びCandida albicansにより生じる。グラム陰性及びグラム陽性菌により生じる敗血症ショックのいずれでも、IFNγ及びIL−2は、それらが関与する免疫反応の致死性に関係している。IFNγは、敗血症ショックの動物モデルにおける致死性仲介物質である(Heremans H.et al.インターフェロンガンマ、マウスにおける致死的リポポリ多糖−誘発シュバルツマン様ショック反応の仲介物質。J Exp Med171,1853−69,1990,Wysocka M.et al.マウスのリポポリ多糖−誘発ショックにおけるインターフェロン−ガンマ生産及び致死性にインターロイキン−12は必要である。Eur J Immunol25,672−6,1995,Kuschnaroff LM et al.老齢マウスにおけるブドウ球菌エンテロトキシンB注射による死亡率増加及び障害クローン除去:サイトカイン及び酸化窒素生産の関係。Scand J Immunol469−78,1997)。このほかの病気の動物モデルの場合と同様に、その動物におけるIFNγ受容体の消失は、その動物をエンドトキシンショックに対し耐性とする(Car BD et al.インターフェロンガンマ受容体欠失マウスはエンドトキシンショックに抵抗性である。Exp Med179,1437−44,1994)。
【0014】
同様に、いくつかの報告は、敗血症ショックの発症と致死性におけるIL−2の関与を示している(Micusan VV,et al.トキシックショック症候群外毒素−1によるヒト及びマウスインターロキキン−2の生産。Immunology58,203−8,1986,Arad G.et al.スーパー抗原拮抗物質は致死性ショックを防ぎそしてT細胞活性化の新しいドメインを定義する。Nat Med.6,378−9,2000,Stevens DL.et al.壊死性筋膜炎を伴う連鎖球菌トキシンショック症候群。Annu Rev Med51,271−88,2000)。インビトロにおいてIL−2の存在下に増殖した単核細胞はIL−1、TNFαのような二次サイトカインを分泌し、そしてIFNγは敗血症ショックの病的生理に関係する。
【0015】
尋常性乾癬は、障害のあるT細胞によって生産される親−炎症性サイトカインにより仲介されている可能性がある複雑で多遺伝子性の皮膚病である。これ等のサイトカインの不適切な慢性的な発現により、細胞の免疫活性化及び組織傷害を生じる。この疾患は、皮膚細胞の過剰増殖と血管増生を特徴とし、おそらくこれらが、この病状の一部をなす潮紅と丘疹をもたらす。乾癬について、IFNγ及びIL−2の病理的役割は明らかにされている。尋常性乾癬の表皮細胞の大部分は、IL-2,IFNγ及びTNFαを生産し、これらは傷害性T細胞と定義される。乾癬患者では高レベルのIFNγ及びIL−2が検出されるがIL−4は検出されない。このことは、これ等の細胞の持続的又は慢性的な免疫活性化に関与するT細胞集団の不均衡に関係する可能性がある(Schaak JF et al.尋常性乾癬に関与するT細胞はTh1サブセットに属す。J Invest Dermatol 102,145−9,1994,Austin LM,et al.尋常性乾癬傷害部の表皮T細胞の大部分は1型サイトカイン、インターフェロン−ガンマ、インターロイキン−2、及び腫瘍壊死因子−アルファを生産することができ、Tc1(細胞傷害性Tリンパ球)及びTH1エフェクター集団であることを示す:1型分化の偏りは乾癬患者の循環血液T細胞にも認められる。J Invest Dermatol113,752−9,1999)。
【0016】
乾癬の治療にダクリズマブを使用して優れた結果が示されている(Krueger JM et al.乾癬患者に対するヒト化抗−Tac抗体の投与によるT細胞上のCD25(高親和性インターロイキン2受容体)のインビボ阻害の成功。J.Am.Acad.Dermatol.43,448−58,2000)。最近この薬物を使用して新しい試験が開始された(Fremont,CA.Protein Design Labsは国際乾癬シンポジウムにおいて乾癬に対する臨床開発を行っている3個のヒト化抗体を発表。2000年6月22日。Protein Design Labs,Inc.(PDL) Nasdaq)。
【0017】
このほかにIL−2及びIFNγに対する拮抗物質の使用がやはり有用であることが研究されている病気がある;その例はアテローム性動脈硬化及び虚血/再潅流である。アテローム性動脈硬化及び移植後アテローム性動脈硬化の特徴は、単核白血球の浸潤の結果としての動脈内膜の肥厚、血管平滑筋細胞の増殖及び細胞外マトリックスの蓄積並びにIFNγの存在である(Ross R.アテローム性動脈硬化−炎症性疾患。N.Engl.J.Med.340,115−26,1999,Hansson GK et al.アテローム性動脈硬化における免疫機構。Arteriosclerosis9,567−78,1989,y Libby P et al.移植関連冠状動脈硬化の発生に関係する血管壁細胞の機能。Transplant.Proc.21,3677−84,1989)。動物モデルにおいて外来性IFNγはアテローム性動脈硬化を促進することが示されている(Whitman SC et al.アポリポタンパク質E−/−マウスにおいて外来性インターフェロン−ガンマはアテローム性動脈硬化を促進する。Am J Pathol157,1819−24,2000)。
【0018】
他方、血清中のIFNγの中和並びにその遺伝子の除去により内膜肥厚の範囲が減少することが示されている(Gupta S et al.ApoEノックアウトマウスにおいてIFNγはアテローム性動脈硬化を増強する。J.Clin.Invest.99,2752−61,1997,Nagano H et al.インターフェロンγ欠乏は環状動脈硬化を予防するが移植マウス心臓における心筋拒絶は予防しない。J.Clin.Invest.100,550−57,1997,


A.et al.インターフェロンγノックアウトレシピエントに移植されたマウス同種移植心臓における移植動脈硬化の減少。Am.J.Pathol.152,359−65,1998)。さらに最近では、白血球の非存在下でIFNγがアテローム性動脈硬化作用を促進することが立証されている(Tellides G et al.白血球の非存在下にインターフェロンγは動脈硬化を引き起こす。Nature403,207−11,2000)。
【0019】
虚血及び再潅流は、ある領域における血流の中断を特徴とし、その結果酸素と栄養素の供給が止まり、そして虚血した組織に血流が再潅流し、完全に若しくは部分的に回復することであり、これは臨床的にはしばしば生じる。血液量減少性ショック、敗血症ショック、心筋梗塞、栓塞形成、コンパーチメント症候群、凍結、臓器移植、などで認めることができる。いずれにしても、組織の酸素欠乏は、よく知られている複雑な生化学的変更及び分子的変更が恒常的に誘導される細胞代謝の変化を生じる。再潅流による傷害は、結果的に、血液組織(blood tissue)の回復による細胞死及び内皮機能不全を生じる。IFNγ及びIL−2は、虚血及び再潅流により臓器に生じる傷害の仲介物質であることが報告されている(Serrick C et al.肺同種移植における虚血再潅流障害後のインターロイキン−2、腫瘍壊死因子−アルファ及びインターフェロン−ガンマの早期放出。Transplantation58,1158−62,1994,Marck ARC et al.虚血/再潅流−誘発IFN−ガンマ上方調節:IL−12及びIL−18の関与。The Journal of Immunology162,5506−10,1999)。
【0020】
数人の著者がIFNγに対する拮抗物質を記述している。組換え可溶性受容体によるヒトIFNγの抗ウイルス活性の阻害が欧州特許EP 0 393 502A1に記述されている。マウスIFNγの組換え可溶性受容体は、マウスにおける糸球体腎炎の発症を抑制することも記述されている(Ozmen L.et al.全身性エリテマトーデスの実験的治療:マウス可溶性インターフェロン−ガンマ受容体を使用する治療によりNZB/Wマウスの糸球体腎炎の発症を抑制する。Eur J Immunol.25,6−12,1995)。3個のマウスIFNγが構築された。これ等は、IFNγに対するマウス受容体の細胞外領域及び免疫グロブリン分子の定常ドメインにより形成されたキメラタンパク質からなる。これ等構造体は、マウスIFNγの抗ウイルス活性を中和し、そして血液中で長期の平均寿命を有している(Cornelia K et al.新規インターフェロンガンマ(IFNγ)阻害タンパク質の構築、精製、及び分析。J.Biol.Chemistry.267,9354−60,1992及び欧州特許EP 0 614 981A1)。人間におけるエリテマトーデスに使用される可溶性IFNγ受容体に融合した免疫グロブリンのフラグメント又はそのFc領域を使用する可能性は、この自己免疫疾患におけるFcに対する受容体の明らかな機能不全により制限されることがある(Frand MM et al.全身性エリテマトーデスにおける欠陥のある細網内皮系Fc−受容体機能。N Engl J Med.300,518−23,1979)。この種の阻害物質は単機能性であるため、作用の範囲は狭い。
【0021】
マウスにおいて、中和抗−IFNγ抗体の使用により移植片対宿主病の発生は減少する(Mowat A.et al.IFNガンマに対する抗体は免疫的に誘発されたマウス移植片対宿主反応による腸管障害を予防する。Immunology68,18−23,1989)。皮膚の同種移植研究において、抗IFNγ抗体は、移植片がMHCクラスII抗原に不適合である場合にのみ拒絶を抑制する。このことからIFNγはMHCクラスII抗原の誘導を介して同種移植の拒絶に関与していることが示唆される(Rosenberg A.et al.抗−IFNガンマモノクロナール抗体のインビボ投与による皮膚同種移植片と異なるMHCクラスIIの特異的延長。J.Immunol.144,4648−50,1990)。細菌で発現したヒトIFNγに対する可変領域(scFv)を持つ一本鎖抗体が得られ、マウスIFNγの生物活性を中和するのに有効であることが示されている(Froyen G.et al.ヒトインターフェロンγの生物活性を中和する一本鎖抗体フラグメント(scFv)のバクテリアにおける発現。Mol Immunol.30,805−12,1993)。
【0022】
ヒトの治療に抗体を使用する場合には、これ等の異種分子の免疫原性領域に対する宿主の応答という問題に直面し、キメラ及びヒト化抗体の場合には、親和性及び特異性の喪失(Merluzzi S et al.治療的使用のための薬物として可能性のあるヒト化抗体。Adv Clin Path.4,77−85,2000)並びに毒性発現(Clark M et al.IFNガンマに対する抗体は免疫的に誘発されたマウス移植片対宿主反応による腸管障害を予防する。Immunology68,18−23,2000)という問題に直面する。
【0023】
その他の同様な解決策も記述されている。サイトカインとその可溶性受容体の混合物が提案されたが、その目的はサイトカインの影響を増強することであった。この場合では、米国の特許WO94/21282に示されているように、サイトカインとその受容体は別々に作製され、後で一製剤中に混合される。シクロスポリンA、FK506及びラパマイシンは、免疫系、特にT細胞、の強力な抑制物質であり、移植片拒絶の予防に使用されている。最初の二つは、初期活性化遺伝子の転写を導くT細胞に対する抗原受容体によって開始されるシグナル伝達を抑制する。これは細胞周期の静止期G0からG1相へ移行させるために必要なIL−2をコードする遺伝子の転写を含んでいる。ラパマイシンは、T細胞によるサイトカインの初期合成に影響を及ぼさないが、細胞周期のG1相からSに移行するために必要なIL−2に対するこれ等の細胞の応答を抑制する(Waldmann T.A.et al.IL−2/IL−2受容体システム:合理的な免疫介入の標的。Immunology Today 14,264−70,1993)。
【0024】
ラパマイシンは、T細胞を特異的に活性化をすることができるが、IL−2受容体のベータ鎖(RβIL−2)によるシグナリングの妨害を介してクローン増殖を妨げる(Woerly G.et al.IL−2受容体(CD25)の発現に及ぼすラパマイシンの影響。Clin Exp Immunol 103,322−7,1996)。シクロスポリンAは、腎臓同種移植片の生存を顕著に増加するが、自己免疫疾患も減少させる。これ等の免疫抑制薬の使用は、消化器系の障害、歯肉肥大及び特に用量依存的腎毒性、及び高血圧を含む毒作用のために制限されている(Hortelano S.et al.腎臓の近位尿細管細胞におけるシクロスポリンA及びFK506誘発アポトーシスの酸化窒素による増強。J Am Soc Nephrol 11,2315−23,2000,Tsimaratos M.et al.シクロスポリンで治療した小児肺移植レシピエントにおける腎機能。Transplantation69,2055−9,2000)。
【0025】
IL−2とその受容体の相互作用を阻害するモノクロナール抗体が、移植片対宿主病及び同種移植の拒絶を抑制するために動物モデルにおいて使用されている。これ等の抗体は、自己免疫疾患を抑制するためにげっ歯類においても使用されている。臨床試験において、IL−2受容体のアルファ鎖(RαIL−2)に対する抗体は、ステロイド治療に対して抵抗性の移植片対宿主病を改善した。しかしこの取り組みはこれ等の抗体の抗原性のために制限される。欧州特許EP 0 621 338 A2に記述されているように、可変領域の一本鎖抗体がIL−2のIL−2受容体γサブユニットへの結合を阻害し、マウス細胞系CTLL−2において試験したIL−2の生物活性を妨害することが認められている。この種の治療を改善するヒト化抗体の作成はまだ前記のような欠点を有している。この種の治療においてトキシンと結合した或いは放射能標識したモノクロナール抗体も試験されている(Waldmann T.A.放射性核種を結合した遺伝子操作モノクロナール抗体。Year Immunol.7,205−12,1993)。
【0026】
抗IL−2抗体又はIL−2に融合したトキシンを使用することで、IL−2に対する受容体を発現して病的状態の進展に関与する細胞を除去することが米国の特許WO92/20701及び欧州特許EP 0 369 316 A2に記述されている。免疫毒の非特異的な毒性(FrankelA.E.et al.標的トキシンの臨床試験。Cancer Biology6,307−17,1995)並びにその免疫原性(Chen S−Y.et al.トキシン免疫原性を除去するための遺伝子免疫トキシンの設計。Gene Therapy2,116−23,1995)がこれ等の薬物の使用を勧めがたいものにしている。抗IL−2抗体がRAの治療のために開発されている(Simon LS.et al.リュウマチ関節炎の新しいそして将来の薬物治療。Rheumatology(Oxford) 39 Suppl 1:36−42,2000)。RαIL−2を標的とした抗体が腎臓移植の拒絶を回避するために使用されている(Olyaei AJ et al.腎臓移植におけるバシリキシマブ及びダクリズマブの使用。Prog Transplant 11,33−7,2001)。長期治療における抗体使用の限界はそれらに記述されている。
【0027】
TNFα(Beutler B.et al.カケクチン/腫瘍壊死因子に対する受動免疫はエンドトキシンの致死効果からマウスを保護する。Science 229,869−71,1989)又はIL−1(Natanson C.et al.提案された発病機構に基づく敗血症ショックの治療方針の選択。Ann.Intern.Med.120,771−83,1994)のような親−炎症性サイトカインの中和は、数種の動物モデルにおける敗血症による死亡を減少させる。しかし、臨床試験においては、IL−1に対する拮抗物質の使用(IL−1受容体の拮抗物質)(Fischer C.J.et al.敗血症症候群患者における組換えヒトインターロイキン−1受容体拮抗物質:無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験の結果。JAMA 271,1836−43,1994)及びTNFαに対する拮抗物質の使用(組換えキメラタンパク質:可溶性受容体 TNF/Fc)(Fischer C.J.et al.腫瘍壊死因子受容体による敗血症ショックの治療。Fc融合タンパク質。N.Engl J.Med.334,1697−1702,1996)は改善を生じないだけでなく、免疫系の不活性化のために死亡率を増加させた。
【0028】
FDAは、RAの治療において好ましい効果を示したTNFαに対する二個の拮抗物質(Lipsky PE.et al.慢性関節リュウマチの治療におけるインフリキシマブ及びメトトレキセート。N Engl J Med,343,1594−1602,2000)を承認した。このうちの一つは、TNFαの受容体のサブユニットに対する抗体(インフリキシマブ)である。あるレベルを超えてTNFαを中和することは、RAのラットモデルにおいて示されているように、免疫系の不活性化をもたらす可能性がある(Colagiovanni DB.et al.二量体TNFI型受容体分子によるTNF−アルファ阻害は選択的に適応免疫反応を抑制する。Immunopharmacol Immunotoxicol 22,627−51,2000)。インフリキシマブで治療した患者においてそれを使用しない対照群(プラセボ群)よりも高い頻度の感染(Schaible TF.インフリキシマブの長期安全性。Can J Gastroenterol 14 Suppl C:29C−32C,2000)、並びに自己抗体の出現及びループスの発生(Markham A.et al.インフリキシマブ:慢性関節リュウマチ管理における使用の総説。Drugs 59,1341−59,2000)が認められている。
【0029】
エタネルセプトは、TNFαの可溶性受容体及びIgG1のFc部分に結合するキメラタンパク質である(Moreland LW et al.慢性関節リュウマチのエタネルセプト治療。無作為化、コントロール試験。Ann Intern Med 130,478−86,1999)。治療の中止により病気は再発した;したがって、この薬物は病気を治癒しない。このことは、患者は長期間治療を受けなければならないことを意味する。短期間の試験であったので重篤な副作用は生じなかったが、長期治療ではこの分子に対する抗体の出現を生じるかもしれない(Russell E.et al.エタネルセプトを使用した患者ではモノクロナール抗体臨床検査を妨害する抗体を生成する可能性がある。Arthritis Rheum 43,944−47,2000)。エタネルセプトで治療した患者の数例に、致命的な再生不良性貧血並びに汎血球減少症及び脱ミエリン症候群が発生したことが報告されている(Klippel JH.慢性関節リュウマチの治療。N Engl J.Med.343,1640−1,2000)。
【0030】
これまで、IFNγに対する拮抗物質は臨床的に使用されたことはない。一時的又は慢性的な変化により身体に害を与える炎症及び免疫反応を防御し、減少させ又は除去するために、サイトカイン拮抗物質を使用することが多くのサイトカインについて探索されてきた。それらの多くは効果がなかった。ある場合には拮抗物質はサイトカイン分子に限定され、そしてその毒性のために用量を増加できないので、その作用と強度の範囲は制限されている。サイトカインを中和することができるものは、その影響が強すぎて、身体にとって重要な機能(免疫系)の不活性化を生じた。
【0031】
IL−2はそのRαIL−2と相互作用する。このサブユニットはIL−2を細胞内に取り込むことができ、このことはT及びBリンパ球について示されている。このサブユニットはおそらく再び表面に戻ってくるが、その一方ではこの受容体のほかの鎖は、取り込まれた後に分解される(Hemar A.et al.ヒトTリンパ球におけるインターロイキン2受容体のエンドサイトーシス:受容体アルファ、ベータ、及びガンマ鎖の異なる分子内局在と動態。J Cell Biol 129,55−64,1995)。IFNγは細胞内に取り込まれ、その受容体が再利用されている間に、分解される(Celada A.et al.マウスマクロファージによる受容体結合インターフェロン−ガンマの細胞内取り込み及び分解。受容体リサイクリングの実証。J Immunol 139,147−53,1987)。IL−2RαによるIL−2の細胞内取り込み並びにIFNγのその受容体による細胞内取り込みの特徴は、少なくとも、キメラ拮抗物質AnTh1の部分を形成するIFNγに対する受容体の細胞外領域のリサイクリングの可能性を示している。このことは、血流中にこの分子が長期間存在し、そのために、その効果を長期間持続させる結果をもたらすであろう。
【0032】
二つの分子の連結又は結合は、新規分子の創造の結果として生じる立体構造の変化の発生又は空間的相互作用のために関係分子の生物活性の著しい減少又は消失を生じることが多い(Knusli C.et al.顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)のポリエチレングリコール(PEG)修飾は好中球プライミング活性を増強するがコロニー刺激活性は増強しない。Br J Haematol 82,654−63,1992)。例えば米国特許#5,073,627において、ある種の代替法が使用されており、それには、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)とIL−3を融合した連結ペプチドの記述がある。この種のペプチドの問題点はそれらが固定していて柔軟性がないことである。この結果として、生物活性を適切に発揮するために必要な正しい立体構造をとることができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
したがって、二つの分子を結合することができ、同時にそれぞれが適切な立体構造を取ることができるペプチドであって、生物活性分子を産生するものを設計し見い出すことが必要である。後者を考慮すると、より安全で、より有効性があり、より特異的な免疫抑制物質及び抗炎症薬が必要である。したがって、標的薬物の病的作用又は機能を全て阻害するが、同時に身体に重要な機能は働かせることができ、患者の生命を危険に曝すことなく長期に使用することができる多彩な能力を持つ分子を考えることが重要である。二つのサイトカインを同時に阻害することができ、そして免疫を無効にすることがない拮抗物質はこれまで設計されたことがない。
【課題を解決するための手段】
【0034】
発明の詳細な説明
本発明の本質は、AnTH1と呼ばれる組換えキメラタンパク質であり、これは4個のアミノ酸ペプチドを介して228アミノ酸を含むIFNγ受容体のαサブユニットのN−末端細胞外領域に融合したヒトIL−2のN−末端領域の60アミノ酸フラグメントにより形成されている。このタンパク質はT細胞の増殖刺激活性を有し、IL−2により誘発されるT細胞の増殖刺激活性を阻害し、IFNγによるHLA−IIの誘導を阻害し、そしてIFNγの抗増殖活性を阻害する。ヒトIL−2のN−末端の最初の60アミノ酸及び結合ペプチドに対応するDNA配列(配列番号5)及び結合ペプチドの配列及びRαIFNγの細胞外領域の228アミノ酸をコードするDNA(配列番号7)は、それぞれ、Jurkat及びRaji細胞からRNAポリAの逆転写および特異的プライマーを使用するPCRにより増幅して得た(実施例1、配列番号1及び配列番号2、配列番号3、配列番号4参照)。結合ペプチド(配列番号6)に対応するDNA配列は、その目的のために設計し、RαIFNγの可溶性受容体の領域を増幅するために使用したプライマーに加えた。
【0035】
本発明はまた、組換えタンパク質AnTH1のE.coliにおける生産のためのベクター、(pHu(AnTH1)と呼ぶ)、についても記述している。このベクターは、2002年5月6日に登録番号LMBP4535でBelgian Coordinated Collections of Microorganism(BCCM)に寄託された。このベクターは組換えDNA技術を使用して調製された(Sambrook et al.Molecular Cloning−A laboratory Manual,2nd ed.Cold Spring Harbor,New York,1989)。このベクターを修飾し、最終的には、選択したマーカー、トリプトファンプロモーター、並びにヒトIL−2の60アミノ酸結合ペプチド、及びRαIFNγの細胞外領域の228アミノ酸をコードする配列(配列番号8)を含んでいる。得られたベクターの最終的構築物をpHu(AnTH1)と呼ぶ(実施例2、図1参照)。
【0036】
本発明はpHuベクター(AnTH1)で形質転換したE.coli株も記述する。pHuベクター(AnTH1)をE.coli W3110P3株を形質転換するために使用した。pHuベクター(AnTH1)を含むE.coli W3110P3株を増殖し、組換えキメラタンパク質AnTH1の発現を誘導した。この株は高度のタンパク質発現を達成した(実施例4参照)。このタンパク質は他の宿主細胞(適当なベクターを使用して昆虫細胞、哺乳動物細胞、及び植物細胞)中に発現させることができる。本発明は、生物活性タンパク質の80−90%純度の調製品が得られる方法により、生物活性の評価において適当な純度を有する組換えキメラタンパク質の製造も記述している。導入後の株を培養して得た細胞ペレットを、組換えタンパク質を得るために処理する。溶出(変性)剤を使用してペレットを続けて洗うことにより、E.coliからのタンパク質の混入を最小限にしながら目的のタンパク質の抽出が行われる。このような方法を使用して適当な純度(80−90%)で得た後、AnTH1タンパク質を含む調製品を再生する。この操作は変性剤を徐々に除去することからなる。この操作は実施例5に示される。
【0037】
本発明は組換えタンパク質AnTH1の生物活性を記述している。このタンパク質はT細胞増殖刺激活性を有す(実施例7)。マウス細胞系CTLL−2においてヒトIL−2により生じるT細胞の増殖刺激を妨害することができる(実施例8)。細胞系Hep−2においてヒトIFNγの抗増殖活性を阻害することができる(実施例9)。そしてまたCOLO205細胞系においてHLA−II発現のIFNγによる刺激を阻害する(実施例10)。IFNγとは逆に、ヒトIL−2はマウス細胞に作用することができる。
【0038】
この組換えタンパク質は、IL−2及びIFNγが共に病理的役割をしている病気に対して有用な医薬組成物の調製に使用することができる。このような病気としては、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、インスリン依存性糖尿病、活動型慢性肝炎及び劇症肝炎のような自己免疫型;慢性関節リュウマチ及び乾癬、並びに臓器移植における移植片対宿主病及び敗血症ショック及びアテローム性動脈硬化のような炎症性疾患などの自己免疫/炎症型がある。
【0039】
本発明により、種々の病気において病理的機能を有する二つのサイトカインの作用を予防し、阻止し、そして/又は除去するための、新しい方法が創出される。したがって、標的はより特異的な形態において増加する。同じ病的状態に関与する二つのサイトカインシグナリングシステムを中和しそして阻止することができるキメラタンパク質を使用することにより、その阻害方法の範囲、したがってその有効性の範囲を拡大することができるであろう。ある程度のT細胞増殖刺激活性を有することにより、免疫系の好ましくない不活性化を回避するのでそれを必要とする患者に長期に使用することができる。したがって、この薬物はより安全であり、そしてより有効である。本発明の目的はヒトIL−2及びIFNγの機能を阻止することができるヘテロ−2価拮抗物質を創り出すことであり、分子の治療可能性を増大し、そして副作用を回避することである。
【0040】
微生物の寄託:
pHu(AnTH1)プラスミドを、微生物保護に関するブダペスト条約に従い2002年5月6日に登録番号LMBP4535でBelgian Coordinated Collections of Microorganism(BCCM)に寄託した。
【実施例1】
【0041】
ヒトIL−2の最初の60アミノ酸及びヒトIFNγの可溶性受容体のαサブユニット(RαIFNγ)の細胞外領域をコードする相補的DNA鎖の単離
ヒトの相補的DNAを単離するために、Raji(Burkittリンパ腫、ATCC:CCL−86)及びJurkat(ヒト急性T細胞白血病、ATCC:TIB−152)細胞を、5Lフラスコに入れた10%ウシ胎児血清を添加したRPMI1640培地中で、5%CO雰囲気の下、37℃で穏やかに振とうしながら増殖した。Jurkat及びRajiからの全RNAの抽出はChomczyskiの方法により行った(Chomczyski P.et al.酸グアニジウム チオシアナート−フェノール−クロロホルム抽出によるRNA抽出の一段階法。Anal.Biochem.162,156−9,1987)。次いで、RNA−ポリAを市販のメッセンジャーRNA単離システム(Isolation System Life Technologies Messagemakerr cat.#10551−018)を使用して抽出した。ヒトIL−2の最初の60アミノ酸及びヒトRαIFNγの細胞外アミノ末端部分の288アミノ酸をコードする相補的DNAは、Jurkat及びRaji細胞からそれぞれ得たポリA RNAの逆転写により単離し、PCRで増幅した。ランダム6量体を使用して約1−2μgのポリA RNAを処理した。
【0042】
ヒトIL−2の最初の60アミノ酸のDNAの相補鎖を増幅するために使用したオリゴヌクレオチド(プライマー)の配列は、配列番号1(プライマー1)及び配列番号2(逆プライマー1)に記述されている。ヒトRαIFNγのアミノ末端の228アミノ酸の相補鎖DNAを増幅するために使用したプライマーの配列は、配列番号3(プライマー2)及び配列番号4(逆プライマー2)に記述されている。
【0043】
増幅されたヒトIL−2の最初の60アミノ酸及び結合ペプチドをコードするDNA(配列番号5)を制限酵素Nco Iで消化した(プライマー1、配列番号1、の配列に下線をつけた)。次いでフェノール−クロロホルム抽出を行い、酵素及び緩衝液を除去した。それを沈殿し、そして適当な緩衝液に再懸濁して、−70℃で保存した。結合ペプチドの配列(配列番号6)を参照。
【0044】
増幅された結合ペプチド及びRαIFNγの231アミノ酸をコードするDNA(配列番号7)を付着末端でクレノーポリメラーゼと結合して前記のように精製した。次いで制限酵素BamH Iで消化し(逆プライマー2の配列に下線をつけた)、そして上記のように精製した。結合ペプチドの配列(配列番号6)を参照。
【0045】
増幅されたバンド(配列番号5及び7)を計算した比率で適当な緩衝液中に混合して、結合ペプチドに対応する配列(配列番号6)によってヒトRαIFNγの細胞外領域の231アミノ酸に対応する配列に結合したヒトIL−2の最初の60アミノ酸に対応するDNA配列を含む新しいバンドを得た。この新しいバンドをPCRにより増幅した。
【0046】
増幅したDNA(配列番号8)を前記のように精製した。増幅したDNAを制限酵素Bam HIで消化し、記述したように酵素及び緩衝液を除去する操作を行った。その後、DNAを再度NcoI酵素で消化し、記述のように精製した。
【実施例2】
【0047】
組換えキメラタンパク質AnTH1を発現するための遺伝子構築物
発現ベクターは、強力なトリプトファンプロモーターを含んでいる。このベクターをBamH I酵素で消化した。次いでフェノール−クロロホルムで抽出を行い、酵素及び緩衝液を除去し、沈殿し、そして適当な緩衝液中に再度懸濁した。その後、Nco I酵素で消化した。ベクターは最終的に前記のようにゲルで分離した。したがってこのベクターはトリプトファンプロモーター、Nco Iフリー付着部位、BamH Iフリー付着部位、ターミネーターT4及びアンピシリン耐性遺伝子を有している。
【0048】
リガーゼT4酵素を使用して配列番号8に対応するDNAをベクターに連結した。E.coli細胞を遺伝子構築物で形質転換した。ヒトIL−2の最初のアミノ酸並びに結合ペプチド及びヒトRαIFNγの231アミノ酸に対応する相補的DNAフラグメントを含む形質転換体は、酵素Nco I及びEco RIを使用して行った制限分析により、トリプトファンプロモーターと同じディレクションにあることが確認された。得られたプラスミドをpHu(AnTH1)と呼ぶ(図1参照)。
【実施例3】
【0049】
配列分析
最終的遺伝子構築物を配列分析した。Sangerの方法に基づくプロトコールで配列分析を行った(Sanger F et al.チェーンターミネーティング阻害物質を使用するDNA配列分析。Proc.Natl.Acad.Sci.USA74,5463−67,1977)。構築物は、制御下にあるIL−2をコードする遺伝子の一部(アミノ末端から始まる60アミノ酸)と、その後にヒトRαIFNγのアミノ末端の228アミノ酸をコードする領域に結合している、連結ペプチドをコードするヌクレオチドの配列(配列番号6)を有することが確認された。配列番号8参照。
【実施例4】
【0050】
組換えキメラタンパク質AnTH1のE.coliにおける発現
宿主株はEscherichia coli W3110 P3(prototroph F−)であり、プラスミドはpHu(AnTH1)であった。発現のために、プラスミドをアンピシリン(50μg/mL)及びL−トリプトファン(100μg/mL)を加えた5mLのLB培地に接種し、振とうしながら6時間37℃でインキュベートした。この培養にLB培地の50mLを加えて100r.p.m.の振とう機中で6時間37℃に置いた。この培養を0.2%加水分解カゼイン、0.4%グルコース、50μg/mLアンピシリンを添加した500mLのM9培地(33mM NaHPO,2mM KHPO,8.5mM NaCl,18mM NHCl,0.1mM CaCl,1mM MgSO)に加え、培養の最初の光学密度(620nm)が0.3になるようにした。次いで上記と同じ条件下に8時間インキュベートし、最後に遠心分離により細胞沈殿を回収した(図2参照)。
【実施例5】
【0051】
組換えキメラタンパク質AnTH1の抽出、精製及び再生
TE緩衝液(10mM Tris HCl,1mM EDTA pH7.2)1mL当り湿ったバイオマス(damp biomass)0.1gの濃度で、ポリトロンを使用して細胞をホモジナイズした。この懸濁液にリゾチームによる酵素的破壊プロセスを行った。前段階で得られたペレットを、1Mから8Mまでの異なるモル濃度の尿素、50mM Tris pH7.2,1mM EDTAでセル洗浄した。ホモジナイズはポリトロンで行った。最初1分間ホモジナイズし、3分間静置し、ついでもう1分間ホモジナイズした。全操作は4℃で行った。尿素約150mLで可溶化したタンパク質を、予め3倍容積の50mM Tris HCl pH9,4M尿素で平衡したセファデックスG−100樹脂を入れたK9/60カラム(Pharmacia,スエーデン)に3mL/分の流速で適用した。溶出は同じ緩衝液で行った。タンパク質を含むフラクションを集め、0.1M Tris HCl pH9に対して透析を行った。その後、リン酸緩衝食塩液(PBS)pH7.4に対して透析を継続した。(図3及び4参照)
【実施例6】
【0052】
組換えキメラタンパク質AnTH1に対するガンマIFNの結合
再生後の組換えキメラタンパク質AnTH1の1μL(約1μgの全タンパク質)をニトロセルロースストリップに適用した。このストリップを10%脱脂乳と2時間室温(RT)でインキュベートした。膜をTris緩衝食塩液(TBS)で5分間2回洗った。洗った後、標識していない過剰のガンマIFNの存在下または非存在下に、ストリップを放射活性ヨード35μci/μgで標識したガンマIFN(125I−IFNガンマ)と1時間室温でインキュベートした。その後、ニトロセルロースストリップをTBSで5分間2回、次いでTBS+0.03%Tween20で5分間洗った。最後に、放射線感光フィルムをストリップで露光し、−70℃で72時間保存し、次いで現像した。(図5参照)。
【実施例7】
【0053】
組換えキメラタンパク質AnTH1のT細胞増殖刺激活性
組換えキメラタンパク質AnTH1の生物活性を、IL−2依存性マウスTリンパ球の細胞系を使用して試験した。この細胞を、1mMピルビン酸、2mM L−グルタミン酸、40mM HEPES、100U/mLペニシリン、50μg/mLストレプトマイシン、50μM2−メルカカプトエタノール及び10%ウシ胎児血清を含むRPMI−1640培地上で比活性1.2x10IU/mgのヒト組換えインターロイキン−2を8IU/mLを添加して増殖した。使用前に細胞を3回洗い、IL−2を除いた完全培地に懸濁して、湿CO雰囲気中1時間37℃でインキュベートした。次いで細胞を洗い、4x10細胞/mLの濃度に再懸濁し、rhIL−2の1:2連続希釈液又は検体(組換えキメラタンパク質AnTH1)の100μlを完全培地中に含む96ウエル(ウエル当り100μl)のプレートに接種した。この試験に使用した国際標準はIL−2010397であった。37℃で36時間インキュベーション後、5mg/mLのMTT(C1816SBr)の20μlを各ウエルに加え、同じ条件で4時間インキュベートした。最後に、50μl/ウエルの10%SDS、0.1N HCl、50%イソプロパノールを加え、プレートを1時間37℃で振とうし、プレートリーダーを使用して570nmの吸光度を測定した(図6参照)。
【実施例8】
【0054】
組換えキメラタンパク質AnTH1によるT細胞増殖を刺激するIL−2活性の阻害
IL−2に対する生物活性をIL−2依存性マウスTリンパ球の細胞系を使用して試験した。細胞を前の実験と同じ形で増殖した。使用前に細胞を3回洗い、IL−2を含まない完全培地に再懸濁し、1時間37℃で湿CO雰囲気中インキュベートした。次いで細胞を洗い、4x10細胞/mLの濃度に再懸濁し、rhIL−2の1:2連続希釈液又は検体(rhIL−2+組換えキメラタンパク質AnTH1又は組換えキメラタンパク質AnTH1のみ)の100μlを完全培地中に含む96ウエル(ウエル当り100μl)のプレートに接種した。この試験に使用した国際標準はIL−2010397であった。37℃で36時間インキュベーション後、5mg/mLのMTT(C1816SBr)の20μlを各ウエルに加え、同じ条件で4時間インキュベートした。最後に、50μl/ウエルの10%SDS、0.1N HCl、50%イソプロパノールを加えた。次いでプレートを1時間37℃で振とうし、プレートリーダーを使用して570nmの吸光度を測定した。結果はrhIL−2の標準希釈曲線及び検体の系統希釈のデータに基づいて、rhIL−2の単位として示した(図7参照)。
【実施例9】
【0055】
組換えキメラタンパク質AnTH1によるIFNγの抗増殖活性の阻害
10%ウシ胎児血清を添加したMEM CANE培地(非必須アミノ酸を加えた必須最小培地)中で2.5x10細胞/ウエルのHep−2の増殖を96ウエルプレートで行った。これを5%COのインキュベーター中24時間37℃でインキュベートした。この後培地を交換し、評価する検体並びにそれぞれの対照を連続希釈して加えた。72時間のインキュベーションの後、細胞を0.5%クリスタルバイオレットで2分間染色し、プレートリーダーでプレートを測定した(図8参照)。
【実施例10】
【0056】
IFNγによるHLA IIの誘導の組換えキメラタンパク質AnTH1による阻害
これはSeeling G.et al.ヒトγ−インターフェロンの受容体ペプチド拮抗物質の開発及びtransferred nuclear overhauser effect spectroscopyを使用するリガンド結合立体構造の解析。J.Biol.Chem.270,9241−53,1995によって記述された細胞に対するELISA試験である。細胞系Colo205を使用した。これを96ウエル培養プレート中で、10%ウシ胎児血清を添加したRPMI 1640の0.1mL中2.5x10細胞/ウエルで増殖した。細胞を5%CO雰囲気のインキュベーター中12時間37℃でインキュベートした。次いで、培地中で増殖した細胞を、組換えキメラタンパク質及びγIFNを含む0.1mL中に加え1時間37℃でインキュベートした。インキュベーション後、培地を除去し、培地で3回洗った。その後培地の1.2mLの分割液をウエルに加え、プレートを48時間37℃でインキュベートしてHLA−DR抗原を誘導させた。ウエルをPBSで洗い、2分間純エタノールを加えて細胞を固定した。洗浄を繰り返し、プレートをPBS0.5%ウシ血清アルブミンで希釈したマウスモノクロナール抗体 抗−HLA−DRとともに1時間室温でインキュベートした。ウエルをPBSで洗い、同じ条件で抗−IgGマウス−パーオキシダーゼコンジュゲートとインキュベートした。洗浄を3回繰り返し、100μL/ウエルの0.15%H+5mg/ml O−フェニレンジアミンを加えることにより現像した。反応の検出は50μL/ウエルの2M HSOにより行い、プレートリーダーで492nmの吸光度を測定した(図9)。
【実施例11】
【0057】
マススペクトル分析
精製タンパク質の分割液(0.5μg)を、SDS−PAGE及びZn−イミダゾールを用いる逆染色(Castellanos−Serra L y cols.イミダゾール及び亜鉛IIの塩による電気泳動ゲル中のバイオ分子の検出:研究の10年。Electrophoresis.2001,22,864−7)により分析した。バンドを切り取り、クエン酸溶液(1%)で完全に無色になるまで5分間インキュベートし、さらに10分間水中でインキュベートして過剰のキレート剤を除去した。透明なバンドをさらに約1mmの小さな角形に切り、TFAを含まない90%アセトニトリル水溶液で脱水し、高速真空で完全に乾燥した。このゲル片を、12.5ngの修飾トリプシンを含み、Promega(MA,USA)の配列分析純度を有する50mM NHHCO溶液の20−30μLで浸した。テルモミキサー(Eppendorf,USA)中37℃で終夜ゲル内消化を行った。20μLの50mM NHHCO溶液をさらに加え、45分間さらにインキュベートし、トリプシン消化ペプチドを、メーカーが推奨するように予め活性化し平衡したMillipore(USA)のZipTips C18を使用して抽出した。トリプシン消化ペプチドを抽出するために20回のローディングサイクルを行った。消化物を蟻酸で酸性とし、室温で45分間インキュベートし、さらに20回のローディングサイクルを行った。Ziptipを5%蟻酸溶液を使用してよく洗い、そしてタンパク分解ペプチドを2μLの1%蟻酸を含む60%アセトニトリルで溶出した。
【0058】
低エネルギーMS/MSスペクトルは、Z−sprayナノフローエレクトロスプレーイオン源を装着したMicromass(Manchester,英国)のhybrid quadrupole orthogonal acceleration tandem mass spectrometer QTOFを使用して測定した。マススペクトロメーターはイオン源を80℃とし乾燥ガス流を50L/hとして運転した。ペプチドを約5pmole/μLの濃度に溶解した。2マイクロリットルのトリプシン分解ペプチドをホウ珪酸塩ナノフローチップ上に載せ、ナノフローチップ及びエントランスコーンにそれぞれ900V及び35Vの電圧をかけた。MS/MSスペクトルをとるにはGonzalez,L.y cols.エレクトロスプレーイオン化及び低エネルギータンデムマススペクトルによるアルファ−及びベータ−アスパラギン酸の区別。Rapid.Commun.Mass Spectrom.2000,14,2092−210.により記述されている方法を使用した。最初の四重極を4−5Thの枠内の前駆イオンを選択するために使用した。3x10−2以上の圧のPa衝突ガス(アルゴン)を6極衝突室内で使用してフラグメントイオンを得た。適当な衝突エネルギーを使用して前駆体イオンの強度を元の強度の半分を超える強度に減少させた。データの取得及び操作はMicromassのMassLynx system(v3.5)を使用して行った。
【0059】
AnTh1タンパク質由来トリプシン分解ペプチドのESI−MS分析
【表1】


a.ペプチドの配列のナンバリングは図10に示したAnTh1タンパク質に従う。
b.個々のペプチドの荷電状態。
c.検出したペプチドの理論的質量と実験分子質量の絶対質量差を示す。
d.ESI−MS/MSにより配列決定されたペプチド。
e.トリプシンの非特異的切断によって生じたペプチド。
f.フリーシステインを含むペプチド。
【0060】
提案した解決策の利点
本発明は、一つの分子中に、免疫調節及び炎症の機構に影響を及ぼす二つのシグナル系に介入する能力を結合している。キメラタンパク質の設計は、4アミノ酸ペプチドを介するリガンド(IL−260)と細胞外受容体(RαIFNγ)の融合からなる。この組み合わせは、組換えキメラタンパク質とRαIL−2をその表面に持つ細胞との結合を可能とする。このサブユニットは主に、非活性T細胞、及び活性化T細胞の高親和性IL−2受容体(RαβγIL−2)に存在する(Smith,K.A.インターロイキン−2受容体。Annu.Rev.Cell.Biol.5,397−403,1989及びStrom,T.B.et al.インターロイキン−2受容を指向する治療:抗体又はサイトカインに基づく標的分子。Annu.Rev.Med.44,343−50,1993)。
【0061】
AnTH1タンパク質が休止期の細胞のRαIL−2に結合した場合には、細胞がそのタンパク質を取り込むことができ、外部へとリサイクルする条件下でRαIFNγを細胞質に残し、細胞の活性化のために生産されるγIFNを妨害する。細胞質のγIFNと、γIFNの生物活性を発現する可能性のある膜受容体の細胞内領域の相互作用は記述されている(Szente B.E.et al.IFNの同定(JAK2に対する受容体結合部位及びIFNγ及びそのC−末端ペプチドIFNγ(95−133)による結合の増強。J.Immunol.155,5617−22,1995)。体によって生産されたIL−2の活性を減少させる必要があるような病気の際に、AnTH1タンパク質を与えた場合には、IL−260部分を介して免疫系の活性化した細胞の高親和性複合体(RαβγIL−2)のアルファサブユニットに結合し、免疫系の細胞により分泌された完全なIL−2(天然)との結合を阻害してその生物活性を阻害するであろう。他方、活性化T細胞から既に分泌されたγIFNはキメラタンパク質のRαIFNγ部分によって隔離され、膜受容体に結合できない。このようにして、自己免疫及び/又は炎症反応を、活性化及び反応の進行過程の、二つの異なる場面において調節することができる。
【0062】
本発明はIL−2及びγIFNの生物活性を阻害するヘテロ−2価キメラタンパク質を提供する。組換えキメラタンパク質AnTH1がT細胞増殖刺激活性も持つことを考慮すると、既に臨床的に実証されているサイトカイン拮抗物質による免疫系の重大な不活性化は少ないと期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】組換えキメラタンパク質AnTH1の発現用の遺伝子構築プラスミドpHu(AnTH1)。
【図2】組換えキメラタンパク質AnTH1のE.coliにおける発現。還元条件下における12.5%ポリアクリルアミドゲル上の電気泳動。a:分子量標準;b,c,d:陰性対照株、0,8及び18時間誘導;e,f,g:0,8及び18時間の誘導条件下のプラスミドpHu(AnTH1)を含む株。
【図3】精製過程の種々の段階における組換えキメラタンパク質AnTH1の存在。A:還元条件下の12.5%ポリアクリルアミドゲル上の電気泳動。レーンa:分子量標準、b:醗酵、c:尿素8M抽出、d:混合ゲル濾過クロマトグラフィーのフラクション、e:透析後のフラクションの混合物。B:1%PBS/脱脂乳で1:1000に希釈した抗−AnTH1抗血清を使用した「ウエスタンブロット」、抗−E.coli株W3110P3抗体から放出された。B:レーンb,c,d,eは図Aの電気泳動と同じ検体及び同じ順序(分子量標準は適用しなかった)。
【図4】「ウエスタンブロット」を使用したキメラタンパク質AnTH1の同定。抗−IL−2(A)及び抗−AnTH1(B)抗血清を同定のために使用した。両者の希釈係数は1:1000であった。透析後再生したAnTH1調製品を使用し(レーンa)、レーンbにはIL−2を適用した。
【図5】「ドットブロット」を使用するキメラタンパク質AnTH1に対するI125標識ヒトIFNγの結合検定。ゲル濾過クロマトグラフィーの溶出液約1μlをニトロセルロース膜に使用した。ストリップをI125標識ヒトIFNγ(35μCi/μg)と過剰のヒトIFNγ(100倍過剰)の非存在下(レーンa)及び存在下(レーンb)にインキュベートした。
【図6】組換えキメラタンパク質AnTH1によるT細胞の増殖刺激活性。バー1:2.8ng/mlのIL−2、バー2:1.5ng/mlのAnTH1、バー3:培地。
【図7】組換えキメラタンパク質AnTH1によるマウス細胞系CTLL−2におけるヒトIL−2の増殖刺激活性の阻害(結果はIL−2の国際単位で示した)。
【図8】組換えキメラタンパク質AnTH1によるヒトIFNγの抗増殖活性の阻害結果。バー1:4 IU/mlのγIFN(4ng/ml)、バー2:4 IU/mlのγIFN+50μg/ml AnTH1、バー3:50μg/ml AnTH1。
【図9】組換えキメラタンパク質AnTH1によるHLA II誘導IFNγの阻害。バー1:基準レベル(IFNγ=0 IU/ml)、バー2:IFNγ500 IU/ml(0.5μg/ml)、バー3:IFNγ500 IU/ml+1.5μg/ml AnTH1。
【図10】組換えキメラタンパク質AnTH1のアミノ酸配列。マス質量分析により決定したペプチドを示した。
【配列表】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
4を超えるアミノ酸を有するペプチドによりサイトカイン受容体の細胞外領域に共有結合しているサイトカイン又はサイトカインフラグメントからなる組換えキメラタンパク質。
【請求項2】
4を超えるアミノ酸を有するペプチドを介してヒトγインターフェロン受容体の細胞外領域に共有結合しているサイトカインインターロイキン−2又はそのフラグメントからなることを特徴とするAnTH1と呼ばれる組換えキメラタンパク質。
【請求項3】
配列表の配列番号5で規定されるヒトインターロイキン−2のN−末端領域の60アミノ酸をコードするサイトカインフラグメントと、配列表の配列番号7で規定されるヒトγインターフェロン受容体のアルファ鎖の細胞外N−末端部分をコードするサイトカイン受容体の細胞外領域とを含むことを特徴とする請求項1に記載の組換えキメラタンパク質。
【請求項4】
配列表の配列番号6で規定される配列によりコードされる結合ペプチドを形成していることを特徴とする請求項1及び2に記載の組換えキメラタンパク質。
【請求項5】
配列表の配列番号8で規定されるヌクレオチド配列によりコードされ、この配列の発現による産物であることを特徴とする請求項1,2及び3に記載の組換えキメラタンパク質。
【請求項6】
組換え微生物、植物細胞又は遺伝子修飾生物において生産されることを特徴とする請求項1,2,3及び4に記載の組換えキメラタンパク質。
【請求項7】
インターロイキン−2、γインターフェロン、又は両サイトカインの生物活性を阻害することを特徴とする請求項1,2,3,4及び5に記載の組換えキメラタンパク質。
【請求項8】
T細胞増殖刺激活性を有し、インターロイキン−2の増殖刺激活性を阻害し、γインターフェロンの抗−増殖活性を阻害し、そしてγインターフェロンによるHLA−IIの誘導を阻害することを特徴とする請求項1,2,3,4,5及び6に記載の組換えキメラタンパク質。
【請求項9】
インターロイキン−2、γインターフェロン、又は両サイトカインの作用により仲介される病気を治療するための医薬組成物の一部を形成することを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6及び7に記載の組換えキメラタンパク質。
【請求項10】
自己免疫疾患、炎症性疾患、移植片拒絶又は微生物感染を治療するための医薬組成物の一部を形成することを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7及び8に記載の組換えキメラタンパク質。
【請求項11】
多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、糖尿病、慢性関節リュウマチ、消化管炎症性疾患、敗血症、乾癬、動脈硬化又は虚血再潅流により生じる疾患を治療するための医薬組成物の一部を形成することを特徴とする前記請求項のいずれかに記載の組換えキメラタンパク質。
【請求項12】
配列表の配列番号8で規定される配列を有し、請求項1から10に記載の組換えキメラタンパク質をコードすることを特徴とする核酸鎖。
【請求項13】
請求項1から10に記載の組換えキメラタンパク質を発現するための担体分子又はベクターの一部を形成することを特徴とする請求項11に記載の核酸鎖。
【請求項14】
インターロイキン−2、γインターフェロン、又は両サイトカインの作用により生じる病気を治療のための医薬組成物の一部を形成することを特徴とする請求項11及び12に記載の核酸鎖。
【請求項15】
自己免疫疾患、炎症性疾患又は微生物感染を治療するための医薬組成物の一部を形成することを特徴とする請求項10,11及び12に記載の核酸鎖。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−506958(P2006−506958A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−503502(P2004−503502)
【出願日】平成15年5月8日(2003.5.8)
【国際出願番号】PCT/CU2003/000006
【国際公開番号】WO2003/095488
【国際公開日】平成15年11月20日(2003.11.20)
【出願人】(304012895)セントロ デ インジエニエリア ジエネテイカ イ バイオテクノロジア (46)
【Fターム(参考)】