説明

キャニスター穿孔機

本発明は、加圧定量吸入器のキャニスターのような、加圧コンテナーの内容物を分析する方法を提供する。この方法は、当該コンテナーを圧力容器の中に封入することおよび次いで、圧力容器を非反応性の流体で加圧すること:の工程を含んでいる。次いで、圧力容器内で加圧コンテナーに穴をあけ、そして内容物を除去して、分析する。本発明はまた、そのような方法を行うための装置から成る。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の概要
本発明は、通常な手段により実施されるときに、この活動に関連する乱流(turbulence)を起こすことなく、MDI(定用量吸入器)のキャニスターの内容物を除去することに関する。そうすることで、この装置は、キャニスターの内側および/もしくはバルブ部分に付着する薬物の量を別々に、さらにキャニスターの放出部分の薬物含量を、正確に測定することを可能とする。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
製剤と接触するキャニスターの側面におよびバルブ部分の上に多少の薬物が付着することは、定用量吸入器の分野で周知である。揮発性噴射剤の中で薬物および/もしくは添加物の懸濁剤の形で通常、製剤はある。製造装置の内部表面におよびpMDIの中に付着している薬物の量に関する情報は、製品の開発に不可欠である。
この問題を軽減する最も好まれる方式は、WO 01/51222およびEP 642992の中に記述されるもののような低エネルギー被膜剤で缶の内側を被膜することである。
【0003】
薬物の付着は、それが患者への薬物の有効性を低減することにおいて、重要な問題である。潜在的な薬物付着のパラメーターの測定は、異なる被膜剤が探求されることを許容して、正確に確認されるべき薬物の過剰量の計算を行う。製造の過剰量は、製造容器の中の薬物の濃度を用いて計算される。過剰量は、製造容器およびキャニスターの内部にそれが患者に渡る前に保管される時間に亘って付着するかもしれない量に相当する、製造の間に処方に加えられるべき過剰の薬物である。規制機関は一般的に、10%以下の過剰量を要求している。それ故に、製造の間におよびキャニスターの壁の上の薬物の損失の正確な測定が不可欠である。
【0004】
また、作動装置の内部で、逆さに、即ちバルブを下に、pMDIを保管する傾向が、製剤が相当な時間の間バルブと接触して、バルブ部品に製剤の付着の可能性を与えるので、問題を悪化させる。
【0005】
高度の缶過剰量の潜在的な危険性は、過剰の薬物が懸濁剤の中に戻り落ちて、患者に送達される薬物の必要よりもさらに高い用量をもたらす、可逆性の可能性から来ている。バッチ試験の間に行われる用量の均一性試験が、これを決定し得るが、品質事故をもたらすであろう。
【0006】
それ故に、薬物の付着量(もしあるならば)をMDI開発の初期段階で測定することが絶対必要である。缶を冷却して、それに穴をあけて、内容物を注ぎ出すことの通常の手順は、冷却そのものが析出(噴射剤の蒸発の結果として)かもしくは析出物の亀裂を引き起こして、(後者では、それが製剤の本体の中に落ちることを引き起こして)、それぞれがひいては誤って高いかまたは低い結果を与えるので、正確でない。
【0007】
缶に穴をあけて、内容物を圧力下に漏れさせることは、噴射剤が蒸発するにつれて薬物が析出され得るか、もしくは噴射剤の無制御の流出の間にかき乱されて、除去されるので、いずれも実行可能な選択肢ではない。それ故に、缶析出物の量を測定する現行の方法は再現性が無く、そして、少量、即ちマイクログラム、が回収されるべきときには、方法の中での少量の損失が許容され得なくなるので、低用量の製品には適していない。
【0008】
先行技術、例えば、米国特許第3828,976号、において数個の缶に穴をあける応用例がある。しかしながら、大部分は、噴射剤の捕獲もしくは缶材料のリサイクルのためのいずれかで、缶自体を空にするためであって、それにより缶および内容物を分析する手段であることを意図していない。
【0009】
米国特許のUS 6393,900は、分析のために、MDIの内容物を空にして、内容物を捕獲するための器具を詳しく述べている。これは本質的に、自動化された缶内容物の分析であって、合計の缶中濃度を与える。この発明は、加圧系を使用しないで、それは単に缶内容物の合計を考慮に入れるので、キャニスター内部の薬物付着を測定するようにデザインされていない。内容物は、キャニスターからそれ自身の圧力下に押し出される;ただそれを含有することを制御するための努力は何もない。
【0010】
本出願の中で詳しく述べられる本発明は、キャニスターの内側に残される薬物の比率を含んで、缶の内容物の示差分析を、ならびに、(空のキャニスターが洗浄される前に、バルブが外されるならば)、缶およびバルブの上の薬物の別々での測定を、許容する。
【0011】
もう一つの特許、DE 20203999、は、キャニスターに穴をあけて、分析のために内容物を封入する器具を詳しく述べているが、キャニスターは予め加圧されていないで、主要な目的は、缶を容器の中に、最初にそれを冷却する必要がなくて、空にすること、およびイオン選択電極を用いて、内容物を受器の中に保持しながら、圧力下の必要とされるパラメーターを測定することである。キャニスターの内側に残される内容物を測定する試みは何もない。
【0012】
それ故に、缶の内側におよびバルブ機構の上に付着している薬物の層がかき乱されないで後に残って、それ故に正確に測定され得るような制御様式で当該キャニスターからキャニスターの内容物の流出を制御することが本発明の目的である。
【発明の開示】
【0013】
発明の説明
本発明の一つの形式は、当該コンテナーを圧力容器の中に封入すること;当該圧力容器を非反応性の流体で加圧すること;当該圧力容器内で当該加圧コンテナーに穴をあけること;および当該穿孔リングを通って引き出されるときに、当該加圧コンテナーの内容物を分析すること:の工程から成る加圧コンテナーの内容物を分析する方法に存すると広範に言われ得る。
【0014】
用語の流体は、流体が“自由に流れることが可能なガスもしくは液体としての物質”であるとの、Oxford英語辞典の中の定義に従って使用される。
【0015】
好ましくは、加圧コンテナーは、医薬品のキャニスターコンテナーである。好ましくは、当該キャニスターは、定用量吸入器のキャニスターである。好ましくは、当該非反応性流体は窒素である。窒素は好ましくは、ガス状の窒素である。
噴射剤を、例えば加圧ガスもしくは蒸気として、窒素の代わりに使用することができる。噴射剤は、例えば、HFA噴射剤であり得る。噴射剤を使用することの一つの利点は、更に効率的な混合が達成されることである。
装置は、MDIキャニスターに穴をあけるための装備であって、缶の表面に付着される如何なる物質もかき乱すこと無しにその内容物を抜いてそれを空にするためである。
【0016】
迅速に空にするならば、即ち、圧力が急激に下がることから、缶の析出物はかき乱されるであろう。この場合には、始めに窒素の圧力下にカニューレにより、側面に穴をあけることにより缶を予め加圧する。
【0017】
次いで、底に穴があけられるときに、缶の内容物をキャニスターの底から制御して流れ出しつつ、缶の内部の圧力は一定に保たれて、それにより側面の上にもしくはバルブの上に析出する如何なる物質もかき乱さない。
【0018】
本発明のデザインにおいて克服されるべき障害は以下であった:
・保持容器の中に缶の内容物の漏れもしくは損失無しに、外部制御を用いてそれに穴をあけるのに十分な程しっかりと加圧キャニスターを保持することができる容器をデザインすること。
・穿孔機を収集容器に連結する輸送ラインの中における損失を最少にすること。
・析出しかつ排出された薬物の完全な回収を保証するために、洗浄効率をバリデートすること。
・薬物の内容物を損失すること無しに、噴射剤から収集容器を排気する手段を工夫すること。
・キャニスターに穴をあけて、底で穴をあける前に缶の内側に加圧補給を提供すること。
・缶の内容物の残りから別々に缶壁の上に残される薬物を正確に測定出来ること。
【0019】
これらの障害を克服するために、以下の器具が工夫された:
図1に示されるように、装置は以下の部品を備えている:
a) 窒素供給1、制御ゲージおよび連結管を備える加圧器
b) 三つの区分:(i)主要本体および蓋(ii)上部に三方バルブ(iii)通気が必要とされるまで、圧力を含有しかつ維持するために底および蓋の間にニトリルシール、を備える収集容器。
c) pMDIキャニスターを収容するのに適当なサイズの空間を持って、三つのねじにより一緒に接合される二つの部分を含む本発明の主要部分を構成する二区画の装置。pMDIはきっちりとフィットして、三つのゴムのO−リングにより場所にシールされる。しっかりと締められるときに、3個のねじが装置をシールする。
上の区分は側面に取り付けた回転するバーを有する。回転されるときに、pMDIキャニスターに占められる空間に、穿孔機が入る。穴あけの作用は針と同様である。一旦缶に穴があけられると、窒素圧が連結管を介して加えられる。底面区分は、底においてそして第二の回転するバーの助けでもって穿孔機を有する;これはキャニスターの底に穴をあけて、次いで、引っ込められる。
底は底面の隅に開口部を有して、それは、窒素による圧力下で輸送ラインを介して製品を、収集容器の中に流すようにデザインされている。
【0020】
薬物付着を測定するための試料収集の方法
概要を述べると、収集の方法は以下のようである:
・缶および容器を秤量する
・缶を穿孔機の中にシールする
・缶の側面に穴をあけて、窒素を必要とされる圧力で入れる
・缶の底に穴をあけて、引っ込める
・3方バルブを開けて、製品を収集容器の中に流入する
・数分間窒素を流したままにする
・3方バルブを用いて、容器および缶穿孔機をシールする
・缶および容器を再度秤量する
・用量ユニットの中に排気する(バリデーション時のみ)
・容器を溶媒で洗浄して、薬物および添加物を溶解する
・缶の中におよびバルブの上に残存する薬物を収集して、分析する。
【0021】
洗浄方法は、製品により決定されて、システムから薬物の回収のバリデーションの通常部分として決定されるであろう、そして分析化学に十分な知識のある人の知識内である。薬物含量のアッセイはまた、通常の製品開発のプロセスの部分として通常な手法を構成して、熟練者の範囲内にあるであろう。それ故に、示される実施例を超えて他の製剤にこの方法を適用することは完全に考えられることでありそして、製剤に用いられる物質のタイプ、キャニスターもしくは被膜剤に方法が依存しないので、この方法を用いることを行うべき熟練者の範囲内にある。
【実施例】
【0022】
実験の詳細
試験下の製剤は、フマル酸ホルモテロール二水和物(FFD)の低濃度懸濁液製剤であった。薬物を噴射剤のHFA 134AおよびHFA 227の混合物の中に懸濁した。製剤の説明は、特許出願のWO 03/63843に含有されている。
【0023】
実験的バリデーションの主要な懸案事項は、a)漏れ、b)回収効率であった。回収に影響を及ぼすパラメーターは、缶に穴をあけるユニットを回収容器に連結する輸送ラインに沿っての輸送の効率、容器を洗浄する手順、用量の収集容器の中への排気、そして続いてその容器の洗浄時に、収集チャンバーを排気する上での潜在的損失、ならびに排気されるキャニスター内部の薬物の析出物の回収、であった。
【0024】
一つの缶から次の缶へのFFDのキャリー・オーバーをチェックするために、プラセボ缶を使用した。これらを、缶の間のキャリー・オーバーをチェックするために、活性製剤を含有する缶の間で分析した。無視できる量のFFDがプラセボ缶を使用して見出されて、薬物のキャリー・オーバーは懸案事項ではなかったこと、および洗浄方法は効率的であった事が示された。
【0025】
薬物の引き続く損失を伴う容器をシールしたO−リングの漏れに因り、初期の試行は低い回収率に終わった。O−リングを正確に配置して、容器をシールするように、注意をしなければならない。如何なる損傷O−リングも直ちに交換すべきである。
【0026】
また、初期の試行は、カニューレの周りの漏れの結果として缶穿孔機の中の薬物を検出した。穿孔機の中に薬物が存在したため、穴をあける前の窒素圧を低くする事を決定し、それによりFFDが穿孔機の中に強制的に入れられる傾向を低減するかもしくはなくした。これに加えて、目的は、缶および装置の間に加圧平衡を成すことであった。また、更に低い圧力なら、O−リングの漏れの機会を低減したであろう。
【0027】
このために、圧力を7barから4barに低下させ、缶に穴をあける前に穿孔装置の中に1分間窒素を流したままにした。その効果で穿孔機の中に析出されるFFDを低減させた。
【0028】
装置の実験的バリデーションの概要
1.一つの缶からもう一つの缶への薬物のキャリー・オーバーをチェックするために使用されたプラセボ缶は、輸送ラインの中に析出した薬物は無視できることを示した。
2.排気プロセスの間の薬物の損失を試験するために排気時に用量送達ユニットの中に、加圧容器を排気したときに、そこで得られる洗浄液は薬物の痕跡を何も示さなかった。
3.収集容器のための洗浄手順は三つの洗浄液を使用した。無視できる量の薬物が第二および第三の洗浄液の中に見出されて、単回洗浄を使用することができたことを意味した。(これは、勿論、薬物ごとに変動し得る)
4.缶穿孔機をFFD析出物について分析した。初期には、相当量の薬物を含有することが見出された。しかしながら、穴をあける前に穿孔装置を1分間加圧すること、ならびに圧力を低下させること(それにより缶および装置の間の圧力差を低減させること)が、この問題を除去した。FFDの完全な回収を確実にするために、これを同様に洗浄した。
【0029】
方法のバリデーションおよび最適化は、缶析出の定量化を確実に決定できたように、FFDの許容され得る回収率をもたらした。ここで得られた方法により分析された缶の結果を表1に見ることができて、方法を以下に概略する:
・缶および容器を秤量する
・以前に記載されるように、缶を穿孔機の中にシールする
・必要とされる圧力で窒素を1分間流したままにする
・缶の側面に穴をあけて、必要とされる圧力で窒素を入れる
・缶の底に穴をあけて、引っ込める
・3方バルブを開けて、製品を収集容器の中に流入させる
・窒素を数分間流したままにする
・3方バルブを用いて、容器および缶穿孔機をシールする
・缶および容器を再度秤量する
・収集容器を排気する
・容器および缶穿孔機を溶媒で洗浄して、薬物ならびに添加物を溶解する
・缶の中およびバルブの上に残存する薬物を収集して、分析する。
【0030】
表1および2で使用される計算
A=缶の中に残存する薬物(%w/w)
B=容器の洗浄液(%w/w)
C=缶穿孔機の洗浄液(%w/w)
D=A+B+C=缶および穿孔機の部品から回収される合計のFFD(%w/w)
E=合計の回収率=D/F×100(%)
式中、Fは期待される合計の缶含量(品質保証のバッチ試験データから)である。134Aを用いる非被膜缶については、期待される合計の缶含量は0.0216%w/wであって、被膜缶の中の混合物製剤については、それは0.0167%w/wであった。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
二つのバッチの中で最も顕著な相違は非被膜のおよび被膜の缶の間である:非被膜缶の中の析出は、平均して0.0100w/w%の析出物を有して、そして被膜缶の上の平均は0.0028w/w%であったが、これは被膜缶を使用するときの顕著な効果を表している。即ち、製剤の中の合計のホルモテロール含量を比較した場合に、134A/非被膜缶における缶析出物は、平均して45%であり、それに比べて、混合物/被膜缶においては17%である。
【0034】
装置および方法は、それ故に、同一の被膜剤を用いる異なる製剤の析出物であるかもしくは異なる被膜剤に露出される同一の製剤であるかを判別するであろうことが全く可能である。本発明は、ここで記述される製剤もしくはキャニスターに限定しないで、缶を保持する容器の寸法を変更することにより異なっているサイズの他の缶に容易に適用される可能性がある。
【0035】
表1および2における結果から引き出すことができる結論は、以下のことである:
・装置が、キャニスターの壁の上の如何なる薬物析出物もかき乱されないままであるように、制御可能に缶の内容物を空にして、別々に分析されるのに適している。
・方法は、正確でかつ再現性があって、非被膜および被膜表面のような異なる環境にある薬物の析出物の間の、または製剤の間の相違を確認するために使用することができる。
・缶およびバルブの分離が、それぞれの部品の中の析出の評価を許容する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
(原文に記載なし)
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧コンテナーの内容物を分析する方法であって、
当該コンテナーを圧力容器の中に封入すること;
当該圧力容器を非反応性の流体で加圧すること;
当該圧力容器内で当該加圧コンテナーに穴をあけること;および
当該穿孔により引き出されるときに当該加圧コンテナーの内容物を分析すること;
の工程から成る、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の加圧コンテナーの内容物を分析する方法であって、当該穿孔が以下の工程:
第一の穿孔(これによりコンテナーが予め加圧される)、および
第二の穿孔、
で実施されて、コンテナーの内容物が当該第二の穿孔により引き出されときにコンテナー内部の圧力が当該第一の穿孔により一定に保たれる、方法。
【請求項3】
請求項1もしくは2に記載の加圧コンテナーの内容物を分析する方法であって、内容物が引き出された後でコンテナー部品の上に残存する内容物を分析する工程をさらに含む、方法。
【請求項4】
当該コンテナーが定用量吸入器のキャニスターである、請求項1、2もしくは3に記載の加圧コンテナーの内容物を分析する方法。
【請求項5】
当該非反応性の流体が噴射剤である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の加圧コンテナーの内容物を分析する方法。
【請求項6】
当該非反応性の流体が窒素である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の加圧コンテナーの内容物を分析する方法。
【請求項7】
当該窒素がガス状である、請求項5に記載の加圧コンテナーの内容物を分析する方法。

【公表番号】特表2007−516433(P2007−516433A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539435(P2006−539435)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【国際出願番号】PCT/SE2004/001642
【国際公開番号】WO2005/047890
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】