説明

キャビティ内圧力計測装置

【課題】ダイカスト金型におけるキャビティ内圧力を計測するキャビティ内圧力計測装置において、鋳造圧力を再現性良く計測することができ、計測器の破損を防ぎ、装置の耐久性を向上させる。
【解決手段】キャビティ面3から金型A外側に抜ける貫通孔5を設け、先端をキャビティ面3に臨ませ、後端を金型A外側に設置した圧力計測手段(ロードセル7)に当接させる計測ピン6を貫通孔5に摺動可能に設け、キャビティ面3に臨む計測ピン6の先端側を低熱膨張材によって形成し、貫通孔5内に計測ピン6の後端を圧力計測手段(ロードセル7)に常時当接させる弾発手段13を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト金型におけるキャビティ内圧力(鋳造圧力)を計測するキャビティ内圧力計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
精密に成形された金型のキャビティ内に溶湯を圧入して、高精度で鋳肌の優れた鋳造製品を生産するダイカストでは、鋳造圧力がダイカスト製品の品質を管理する上で重要なパラメータになる。鋳造圧力を高くすれば鋳巣やピンホールの微細化、或いは密度・比重の向上等が期待でき、且つ管理項目を減らすことができるので条件管理を行い易くなるが、その反面、金型や鋳造機には負荷を与えることになるのでこれらの寿命が短くなる。
また、鋳造圧力を低くすれば金型や鋳造機の寿命は延びるが、品質のばらつきが懸念されるので管理項目を増やしたり管理幅を小さくしたり等、製品の作り込み(成形)が厳しくなる。
【0003】
より低圧で管理項目も少ない製品作りが望ましいが、そのためには製品品質に直結する管理が必要になる。金型キャビティの鋳造圧力は溶湯の充填完了から凝固に至る状態変化を把握することができるパラメータであると考えられるので、この鋳造圧力と品質との関係を確認し品質良否の判定ができれば、より品質に直結する管理が可能になり品質保証にも繋がることになる。
【0004】
そのためには、再現性良く鋳造圧力を計測することが求められる。鋳造圧力の計測としては、金型キャビティ内に圧力センサを設置して溶湯の直圧を計測することも不可能ではないが、圧力センサの耐熱性・耐久性の問題があるので、キャビティ内圧力を計測ピンによって金型外に取り出し、計測ピンの押圧力を金型外に設けた歪みゲージ等で計測することが行われている。
【0005】
下記特許文献1には、キャビティの内面の一部に撓み部を形成するブロックを設け、この撓み部の背面に撓み量伝達棒の一端を当接させてその他端を金型外の歪みゲージに当接させることが記載されている。
また、図6に示すように、金型に形成した貫通孔50に計測ピン60を摺動可能に設け、その先端を直接キャビティ40の内面30に臨ませ、後端を金型外に設けたロードセル70に当接せることも従来行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−75579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、計測ピンは、設計の段階で、加工公差や熱膨張代(金型との熱膨張係数の差)などを考慮して、計測器に鋳造圧力(溶湯の圧力)が加わる前に、予め負荷がかからないように、計測器との間にある程度の隙間を設けるように設計されている。
計測器との間に設けたこの隙間が、鋳造圧力が加わるときに、溶湯の射出時に計測ピンの端部が加速して計測器当接面に衝突するので、その衝撃の繰り返しにより、計測器が破損し易いという問題があった。
【0008】
また、計測ピンの端部を直接キャビティ内に臨ませる場合には、計測ピンとキャビティ型材との熱膨張の差によって貫通孔と計測ピンとの隙間が大きくなり、その隙間内にバリ指しが生じて計測ピンの摺動を阻害したり、また、キャビティ面に塗布される離型剤が隙間内に入り込んで過熱により変質し固着するなどによっても鋳造圧力を再現性良く計測することができない問題があった。
【0009】
本発明は、このような課題に対処するために提案されたものであって、ダイカスト金型におけるキャビティ内圧力を計測するキャビティ内圧力計測装置において、計測器の破損を防ぎ、装置の耐久性を向上させることができること、鋳造圧力を再現性良く計測することができること、などを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明は、キャビティ面から金型外側に抜ける貫通孔を設け、先端を前記キャビティ面に臨ませ後端を前記金型外側に設置した圧力計測手段に当接させる計測ピンを、前記貫通孔に摺動可能に設け、かつ、前記計測ピンの後端を前記計測手段に常時当接させる弾発手段を前記貫通孔内に設けたことを特徴とする。
なお、前記キャビティ面に臨む前記計測ピンの先端側と前記貫通孔との間の隙間を4/100mm以下としていることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、キャビティ面から金型外側に抜ける貫通孔を設け、先端を前記キャビティ面から突出、かつ、該キャビティ面に臨ませる可動ブッシュ部材を、前記貫通孔に摺動可能に設け、先端を前記キャビティ面に臨ませ後端を前記金型外側に設置した圧力計測手段に当接させる計測ピンを、前記可動ブッシュ部材に摺動可能に設け、さらに、前記可動ブッシュ部材を前記突出方向に常時付勢する弾発手段を設けて、型締め時に前記可動ブッシュ部材の先端が相手金型に押されて前記キャビティ面に戻され、かつ、前記計測ピンの後端が前記圧力計測手段に当接されるように構成されていることを特徴とする。
ここで、前記可動ブッシュ部材は、内外の2部材からなり、内側ブッシュ部材に前記計測ピンを摺動可能に設けるとともに、外側ブッシュ部材を前記貫通孔に摺動可能に設けてなる。
【発明の効果】
【0012】
このような特徴によると、溶湯の射出時(鋳造圧力が加わるとき)に、計測ピンは圧力計測手段に隙間無く当接されていることで、圧力計測手段の破損を防ぎ、装置の耐久性を向上させることができる。
また、熱膨張の影響で鋳造圧力の再現性が損なわれることなく値を計測することができる。
さらに、離型剤、燃焼ガスの固着やバリ刺しなどの影響を受けることなく値を正確に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るキャビティ内圧力計測装置を説明する説明図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るキャビティ内圧力計測装置を説明する説明図である。
【図3】金属製で冷却水循環路を備えている計測ピン(実施品1)およびセラミックス材によって形成された計測ピン(実施品2)と、金属製の計測ピン(比較品)とによる鋳造圧力の計測試験結果を示したグラフである。
【図4】本発明の第3の実施形態に係るキャビティ内圧力計測装置を説明する説明図である。
【図5】本発明の第4の実施形態に係るキャビティ内圧力計測装置を説明する説明図であり、(a)は、型開き状態において、可動ブッシュ部材の先端がキャビティ面から突出され、かつ、計測ピンの後端がロードセルから離れた状態を示し、(b)は、型締め状態において、可動ブッシュ部材の先端がキャビティ面に戻され、かつ、計測ピンの後端がロードセルに隙間無く当接された状態を示す。
【図6】従来技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るキャビティ内圧力計測装置を説明する説明図である。
このキャビティ内圧力計測装置は、ダイカスト金型の固定型または可動型に対して装着されるものである。金型Aは、主型1と、キャビティ面3を有する嵌込み型(入子)2とで構成されており、固定型と可動型とが型締め(型合わせ)されることによって、両型のキャビティ面3の間にキャビティ4が形成されるようになっている。
【0015】
この金型Aは、キャビティ面3から主型1の外側に抜ける貫通孔5を備え、この貫通孔5に、先端をキャビティ面3に臨ませ、後端を金型Aの外側に臨ませた計測ピン6を摺動可能に設けている。
そして、計測ピン6の後端が臨む金型Aの外側には、計測ピン6の後端が当接された圧力計測手段であるロードセル7が設置されている。
このロードセル7は、金型Aの外側に形成されている凹みにネジ止めなどで取り付けられる留め板16によって設置される。
【0016】
より具体的には、貫通孔5は、嵌込み型2のキャビティ面3からその型背面に抜ける第1の孔部5aと、この第1の孔部5aが接する主型1の前面からその型背面に抜ける第2の孔部5bとによって同軸芯上に形成されている。
【0017】
計測ピン6は、第1のピン部材6aと第2のピン部材6bを連結して形成されており、第1のピン部材6aの後端側に形成されているフランジ部11が第2のピン部材6bの先端側に形成されている連結部14にカップリング9および連結ピン10を介して接続されている。
【0018】
第1の孔部5aは、嵌込み型2のキャビティ面3からその型背面に至る型厚内において取り付けられる抜け止めフランジ付きの固定ブッシュ部材(嵌込みブッシュ部材)8によって形成されている。この第1の孔部5aは、計測ピン6の第1のピン部材6aの外周面との間の隙間が4/100mm以下で第1のピン部材6aが摺動できる孔径に形成されている。
【0019】
第2の孔部5bは、第1の孔部5aの孔径よりも大きい孔径を有する前半部と、主型1の型厚方向の途中部位からその型背面に至る範囲において前半部よりさらに大きい孔径を有する後半部とから段付き孔形状に形成されている。この第2の孔部5bには計測ピン6の第2のピン部材6bが摺動可能に挿通されている。
【0020】
第1のピン部材6aと第2のピン部材6bは、SKD61などの金型材を用いてそれぞれ形成されている。また、固定ブッシュ部材8も第1のピン部材6aの熱膨張係数と同じSKD61などの金型材を用いて形成されている。
【0021】
そして、本実施形態では、貫通孔5内に、計測ピン6をロードセル7の方向に付勢する弾発手段13を設けている。具体的には、第2のピン部材6aを後方に付勢するバネ部材を、第2の孔部5bの孔段部12と第2のピン部材6bに設けられている外周段部との間に弾装している。
これにより、弾発手段13によって計測ピン6の後端が常時ロードセル7に当接しているので、溶湯の射出時に計測ピン6の後端がロードセル7の計測面に加速して当たることを回避することができ、ロードセル7の破損を防止することができる。
【0022】
また、本実施形態では、計測ピン6の第1のピン部材6aと貫通孔5の第1の孔部5aとの間の隙間に空気を送り込むための空気送込み手段(風路)17を設けている。
これにより、キャビティ面3に離型剤が吹き付け塗布されるときに、隙間からキャビティ面3の方向に向けて高圧空気を送り込むことで、離型剤が第1のピン部材6aと第1の孔部5aとの隙間に侵入することを防ぐ。
また、第1のピン部材6aと第1の孔部5aとの間の隙間が4/100mm以下になる領域を極力短くするように、第1のピン部材6aを形成する。つまり、計測ピン6は、前記隙間が4/100mm以下になる領域を極力短くする長さに形成されている第1のピン部材6aと、金型Aの外側に至る長さに形成されている第2のピン部材6bとを連結した段付ピン形状に形成することが好ましい。
このように形成することで、キャビティ面3に臨む計測ピン6の第1のピン部材6aと貫通孔5の第1の孔部5aとの間の隙間に離型剤が侵入し、溶湯熱によって離型剤の成分などが変質固体化して第1のピン部材6aと第1の孔部5aが固着するのを防ぎ、計測ピン6の摺動が阻害されることがなくなる。
【0023】
図2は、本発明の第2の実施形態に係るキャビティ内圧力計測装置を説明する説明図である。
この実施形態では、計測ピン6−1の第1のピン部材6a−1および固定ブッシュ部材8−1が低熱膨張材によって形成されている。その他の構成は前記した第1の実施形態と同様であり、同一符号を付して重複説明を省略する。
【0024】
すなわち、計測ピン6−1のキャビティ面3に臨む先端側の熱膨張係数が金型材の熱膨張係数の2/3以下の低熱膨張材によって形成されている。具体的には、第1のピン部材6a−1は、SKD61の熱膨張係数の1/4である低熱膨張材料、例えば、窒化ケイ素系のセラミックス材によって形成されている。
【0025】
このような実施形態によると、キャビティ面3に臨む計測ピン6−1の先端側を、SKD61の熱膨張係数の1/4である低熱膨張材料によって形成しているので、キャビティ4内に高温の溶湯が充填されたときに計測ピン6−1が熱膨張によって伸長するのを防止することができる。
これにより、熱膨張によって計測ピン6−1がロードセル7を押圧することによる計測誤差を排除することができ、鋳造圧力に対応したキャビティ4内の圧力をロードセル7の出力によって正確に計測することが可能になる。
【0026】
計測ピン6−1を先端側の第1のピン部材6a−1と後端側の第2のピン部材6bで形成した場合には、座屈強度の低いコストの高いセラミックス材の長さを短くすることができ、比較的安価で耐久性の高い装置を得ることができる。この場合には、第2のピン部材6bの内部に冷却水循環路15を形成して熱膨張を防ぐことが好ましい。
【0027】
固定ブッシュ部材8−1は、計測ピン6−1の先端側外周に設けられ、計測ピン6−1の先端側と同等の熱膨張係数を有する。例えば、計測ピン6−1の先端側を前記のように、SKD61の熱膨張係数の1/4である低熱膨張材料としての窒化ケイ素系のセラミックス材によって形成した場合には、固定ブッシュ部材8−1を同じ熱膨張係数を有するセラミックス材で形成するのが好ましい。
すなわち、固定ブッシュ部材8−1と計測ピン6−1の先端側の熱膨張係数が異なる場合には、熱膨張係数の違いによって固定ブッシュ部材8−1の孔径(第1の孔部5aの孔径)と計測ピン6−1の先端外径との間に間隙が生じ、その間隙にバリ刺しが生じたり、離型剤が浸入して、計測ピン6−1の摺動が阻害されることになる。
この実施形態では、熱膨張係数の違いによる間隙が生じないので、常に計測ピン6−1を抵抗無く摺動させることができ、これによっても、キャビティ内4の圧力を再現性良く計測することができる。
【0028】
図3は、冷却水循環路15を備えている金属製の計測ピン(実施品1)および冷却水循環路15を備えているセラミック製の計測ピン(実施品2)と、冷却水循環路15を備えていない金属製の計測ピン(比較品)とによる鋳造圧力の計測試験結果を示したグラフである。
実施品1として、図1に示すSKD61材によってそれぞれ形成した第1のピン部材6aと第2のピン部材6bとを連結し、第2のピン部材6bに冷却水循環路15を備えた計測ピン6を準備し、実施品2として、図2に示すセラミックス材によって形成した第1のピン部材6aとSKD61材によって形成した第2のピン部材6bとを連結し、第2のピン部材6bに冷却水循環路15を備えた計測ピン6−1を準備し、そして比較品として、図6に示すSKD61材によって形成した冷却無しの計測ピン60を準備して、ともに同じ条件下で試験を行い、その結果を図3に示した。ここでは、実施品1,2と比較品の計測試験結果を比較するための基準値として、キャビティ内に圧力センサを配備して溶湯の直圧を計測した値を示した。
【0029】
図3から明らかなように、比較例では、基準値となる溶湯直圧計測による鋳造圧力がゼロまで下がった状態、つまり、キャビティ4内に加圧充填された溶湯の凝固が完了した後でもかなり高い値の圧力値が出力されている。これは、比較品では熱膨張の影響によって計測ピン60の摺動が阻害されることによって計測誤差が生じていることを示している。
【0030】
これに対して、実施品1では、キャビティ4内に加圧充填された溶湯の凝固が完了した後でも圧力値が出力されているが、この圧力値はかなり低い値であり、キャビティ内圧力計測の許容範囲内とすることができる。実施品2では、キャビティ4内に加圧充填された溶湯の凝固が完了した後は略基準値と同じ状態を示してゼロまで下がっており、熱膨張やバリ刺しの影響を受けずに、鋳造圧力を再現性良く計測できることを示している。
【0031】
図4は、本発明の第3の実施形態に係るキャビティ内圧力計測装置を説明する説明図である。
この実施形態では、計測ピン6−2全体が低熱膨張材によって形成されている。その他の構成は前述した第1および第2の実施形態と同様であり、同一符号を付して重複説明を省略する。
【0032】
すなわち、計測ピン6−2は、キャビティ面3に略面一に臨ませる先端から主型1の型背面に至る後端までの軸方向全体を低熱膨張材であるセラミックス材によって段付き軸形状に形成している。
これにより、計測ピン6−2を単一部材で形成することができるので、金型Aの貫通孔5に組み込むときなどにおける組み立てを簡単に行うことができる。
【0033】
なお、図示を省略しているが、計測ピン6−2をSKD61などの鋼材を用いて形成することができる。この場合、前記した第1および第2の実施例詳述のように、計測ピン6−2の内部に冷却水循環路などを形成して熱膨張を防ぐようにすることが好ましい。
【0034】
図5は、本発明の第4の実施形態に係るキャビティ内圧力計測装置を説明する説明図である。
この実施形態では、キャビティ面3から金型Aの外側に抜ける貫通孔18に可動ブッシュ部材19を摺動可能に設けるとともに、この可動ブッシュ部材19に計測ピン20を摺動可能に設けて、型開き時に可動ブッシュ部材19の先端がキャビティ面3から突出され、型締め時に可動ブッシュ部材19の先端が相手金型(可動型または固定型)Bの型合わせ面bに押されて(当接されて)可動ブッシュ部材19の先端がキャビティ面3に略面一に戻されるように構成されている。
そして、計測ピン20の後端が臨む金型Aの外側には、計測ピン20の後端が接離自在に当接される圧力計測手段であるロードセル21が設置されている。
このロードセル21は、貫通孔18と同軸芯上に連通されて金型Aの背面側に開口される設置穴部22にねじ込み、圧入やその他の固着手段によって取り付けられて型背面より外側に突出するブロック部材23に内設保持されて設置される。
なお、この実施形態のキャビティ内圧力計測装置が設置される金型Aは、前記した各実施例形態と同様であり、関連する構成を含めて同一符合を付して重複説明を省略する。
【0035】
より具体的には、貫通孔18は、嵌込み型2のキャビティ面3からその型背面に抜け、かつ、主型1の型厚方向の略途中部位に至る範囲にて、当該途中部位から主型1の型背面に向けて形成される設置穴部22に同軸芯上に連通するように形成されている。すなわち、貫通孔18は、設置穴部22を介してキャビティ面3から金型1の外側に抜けるように形成されている。
そして、この貫通孔18は、嵌込み型2の型厚内における前半側は、キャビティ面3から嵌込み型2の型背面に至る型厚内において取り付けられる前記実施例詳述の固定ブッシュ部材8によって形成されている。
【0036】
可動ブッシュ部材19は、内側ブッシュ部材19aと外側ブッシュ部材19bとの内外2部材から形成されている。
【0037】
計測ピン20は、内側ブッシュ部材19aの孔径と同等の軸径を有する1本の軸部材を用いて、キャビティ面3から主型1の型背面に至る程度の長さに形成されているとともに、後端に頭部24を備えている。この頭部24がロードセル21に当接するようになっている。
【0038】
内側ブッシュ部材19aは、計測ピン20の軸径と同等の孔径(内径)を有する管材を用いて、キャビティ面3から設置穴部22に至る長さに形成されているとともに、その後端には連繋鍔部25を備えている。
【0039】
外側ブッシュ部材19bは、内側ブッシュ部材19aの外径と同等の孔径(内径)で、貫通孔18の孔径と同等の外径を有する管材を用いて、内側ブッシュ部材19aの先端から後端の連繋鍔部25に根元に至る長さに形成されているとともに、その後端には連繋鍔部25に当接連繋させる連繋鍔部26を備えている。
【0040】
このように形成されている内側ブッシュ部材19aと外側ブッシュ部材19bは、ブロック部材23を構成する本体部23a内に摺動可能に内設される可動部27によって連繋されて、型開き時および型締め時において貫通孔18の軸方向に移動するようになっている。
具体的には、内側ブッシュ部材19aの連繋鍔部25は、ピン摺動孔28を有し、略円盤形状に形成されている可動部27の前面側に面一状に嵌め合せ連結されている。一方、外側ブッシュ部材19bの連繋鍔部26は、可動部27の前面に対して常時当接されるように弾発手段29によって付勢されている。
【0041】
ブロック部材23は、主型1の設置穴部22の孔径にて形成されている本体部23aと、この本体部23aの一端側に取り付けられる閉鎖部23bと、本体部23aの他端側に重ね合わされて取り付けられる保持板23cおよび留め板23dとを備えて構成されている。
【0042】
本体部23aは、一端側から内部に向けて段付形状に形成されている穴部30を備え、この穴部30の前側に可動部27を摺動可能に内設し、この可動部27の後側には可動ブッシュ部材19の先端をキャビティ面3から突出させる方向に付勢する弾発手段29を内設している。
具体的には、内側ブッシュ部材19aと外側ブッシュ部材19bとの先端をキャビティ面3から突出させる方向に付勢するバネ部材を、可動部27と穴部30の穴底との間に弾装している。
これにより、内側ブッシュ部材19aと外側ブッシュ部材19bとは同調した動作でその先端をキャビティ面3から突出させる方向に移動するように可動部27を介して弾発手段29によって常時付勢される。
【0043】
また、本体部23aは、穴部30の穴底から他端側に抜けるピン摺動孔31を備えているとともに、このピン摺動孔31の同軸芯上に連通させた頭部受け凹部32を備えている。これにより、計測ピン18のキャビティ面3側への移動(摺動)が規制されて先端がキャビティ面3に略面一に臨むようにしている。
【0044】
この本体部23aの他端側にネジ止めなどで取り付けられる保持板23cは、本体部23aの頭部受け凹部32に対向する前側面に凹み33を備え、この凹み33を頭部受け凹部32に同軸芯上に連通させた状態で本体部23aに取り付けられる。
これにより、計測ピン20は、型開き時や型締め時における可動ブッシュ部材19の移動に同調し、可動ブッシュ部材19の内側ブッシュ部材19bとの摺動抵抗でキャビティ面3側、そしてロードセル21側に凹み33の範囲内で移動するようになっている。
【0045】
また、保持板23cには冷却水循環路34が設けられており、ロードセル21を熱から保護するようにしている。
そして、この保持板23cにネジ止めなどで取り付けられる留め板23dによってロードセル21は、保持板23cとの間で計測面を凹み33に臨ませて設置される。
【0046】
なお、図示は省略しているが、前記した第1および第2の実施例詳述のように、計測ピン20の内部に冷却水循環路などを形成して熱膨張を防ぐようにすることが好ましい。
【0047】
つぎに、以上のように構成されている第4の実施形態に係るキャビティ内圧力計測装置について簡単に説明する。
溶湯がキャビティ4に射出充填されて製品が冷却凝固される鋳造後において、図5の(a)に示す型開きされると、可動ブッシュ部材19は弾発手段29によって、図5の(b)に示す状態から移動されて先端がキャビティ面3から突出される。このとき、ブロック部材23の本体部23a内に内設されている可動部27が閉鎖部23bに当接されることで、可動ブッシュ部材19のキャビティ面3からの突出量が規制される。
【0048】
このように、可動ブッシュ部材19は、図5の(a)に示すように、型開き時において計測ピン20の先端をキャビティ面3と略面一の状態に残した状態で先端をキャビティ面3から突出させることで、鋳造時に計測ピン20の先端に発生する離型剤、燃焼ガス、バリなどによる固着を防ぐことができる。
すなわち、鋳造時の鋳造圧力で計測ピン20がロードセル21側に押され、そして、溶湯熱によって型厚方向に熱膨張される金型Aの変化との関係などからキャビティ面3(可動ブッシュ部材の先端面)と計測ピン20の先端面との間に生じるわずかな段差部(凹み部)や可動ブッシュ部材19と計測ピン20との間に離型剤、燃焼ガス、バリなどによる固着が発生しても、型開きと略同時に行われる可動ブッシュ部材19先端のキャビティ面3から突出動作によって固着物が剥ぎ除かれる。
これにより、計測ピン20と可動ブッシュ部材19が固着するのを防ぎ、計測ピン20の摺動が阻害されることがなくなるために、計測ピン20の摺動阻害による計測誤差を排除することができ、鋳造圧力に対応したキャビティ4内の圧力をロードセル21の出力によって正確に計測することが可能になる。
【0049】
また、可動ブッシュ部材の先端がキャビティ面3から突出するときの可動ブッシュ部材19の突出方向への動きに同調した動きで計測ピン20が内側ブッシュ部材19aとの摺動抵抗で、図5の(a)に示すように、キャビティ面3側に凹み33の範囲内で移動し、計測ピン20の頭部24はロードセル21に対する当接状態から離れる。
これにより、型開きされた時点においても計測ピン21による押圧力がロードセル21に継続して掛かることを回避することができ、ロードセル7の破損を防止することができる。
【0050】
そして、鋳造された製品が取り出され、型締めが開始すると、可動ブッシュ部材19の外側ブッシュ部材19bの先端が、図5の(a)に二点鎖線で示すように、相手金型Bの型合わせ面bに押されて(当接されて)相手金型Bとの型締めが成された時点で、内側ブッシュ部材19aの先端とともにキャビティ面3へと略面一に戻される。
このように、型締め時に可動ブッシュ部材19の先端がキャビティ面3に戻されるときに、外側ブッシュ部材19bが相手金型Bの型合わせ面bに押されるようにしていることで、計測ピン20が摺動可能に挿通さている内側ブッシュ部材19aの先端が相手金型Bとの当接などによって内側に潰れるなどの変形を引き起こすことを防ぐことができる。これにより、計測ピン20の摺動が阻害されることがなくなり、鋳造圧力を正確に計測することが可能になる。
【0051】
また、型締め時に、可動ブッシュ部材19の先端がキャビティ面3に戻されるときの可動ブッシュ部材19の動きに同調した動きで計測ピン20が内側ブッシュ部材19aとの摺動抵抗で、ロードセル21側に凹み33の範囲内で移動し、図5の(b)に示すように、計測ピン20の頭部24はロードセル21に隙間無く当接して次の鋳造ショット時の圧力計測に備える。
すなわち、溶湯の射出時に計測ピン20の頭部24(後端)がロードセル21に隙間無く当接するように戻されていることで、溶湯の射出時に計測ピン6の頭部24がロードセル21の計測面に加速して当たることを回避することができ、ロードセル7の破損を防止することができる。
【0052】
以上説明したように、本発明の各実施形態によると、ダイカスト金型におけるキャビティ内4の圧力を計測するキャビティ内圧力計測装置において、鋳造圧力に対応する正確なキャビティ内4の圧力を再現性良く計測することができ、しかも、ロードセル7の破損を防ぎ、装置の耐久性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0053】
A 金型
B 相手金型
b 型合わせ面
1 主型
2 嵌込み型
3 キャビティ面
4 キャビティ
5,18 貫通孔
6,6−1,6−2,20 計測ピン
7,21 ロードセル(圧力計測手段)
13,29 弾発手段
17 空気送込み手段
19 可動ブッシュ部材
19a 内側ブッシュ部材
19b 外側ブッシュ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティ面から金型の外側に抜ける貫通孔を設け、先端を前記キャビティ面に臨ませ後端を前記金型の外側に設置した圧力計測手段に当接させる計測ピンを、前記貫通孔に摺動可能に設け、かつ、前記計測ピンの後端を前記圧力計測手段に常時当接させる弾発手段を前記貫通孔内に設けたことを特徴とするキャビティ内圧力計測装置。
【請求項2】
キャビティ面から金型の外側に抜ける貫通孔を設け、先端を前記キャビティ面から突出、かつ、該キャビティ面に臨ませる可動ブッシュ部材を、前記貫通孔に摺動可能に設け、先端を前記キャビティ面に臨ませ後端を前記金型の外側に設置した圧力計測手段に当接させる計測ピンを、前記可動ブッシュ部材に摺動可能に設け、さらに、前記可動ブッシュ部材を前記突出方向に常時付勢する弾発手段を設けて、型締め時に前記可動ブッシュ部材の先端が相手金型に押されて前記キャビティ面に戻され、かつ、前記計測ピンの後端が前記圧力計測手段に当接されるように構成されていることを特徴とするキャビティ内圧力計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−42446(P2010−42446A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167162(P2009−167162)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000005256)株式会社アーレスティ (44)
【Fターム(参考)】