説明

キャビテーション気泡浄化装置

【課題】 有機塗料の溶剤型塗料を使用する際に発生する揮発性有機化合物と塗装ミストの分解除去
【解決手段】 揮発性有機化合物などを含んだ気流中に、サブミクロン気泡を含んだ微細な水滴群を散布し、気流旋回中に揮発性有機化合物を水滴群にて吸着し、気泡消滅時の開放エネルギーにより水酸基ラジカルなどを生成し、揮発性有機化合物を分解する。マイクロバブルを発生するキャビテーション気泡ノズルからの噴流をバリアに衝突させ、微細な水滴群へと飛散することで、噴流内のマイクロバブルをサブミクロン気泡へと分裂させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗装時に発生する揮発性有機化合物やその他の大気汚染物質の無害化に資するマイクロバブル噴流浄化装置に関し、マイクロバブルよりもサブミクロン気泡を多く含む水滴群を気流中に散布する。
【背景技術】
【0002】
マイクロバブルの働き。
第5図はマイクロバブル5に超音波4を照射してフリーラジカルを形成する(米国特許7,718,073号公報)。同公報4欄55行目ないし5欄23行目には、「本発明によると、マイクロ有機組織はラジカルH.OH、HOO.により除去できる。これらのラジカルはマイクロ有機組織には有害である。high−frequency ultrasound(超音波)により酸素雰囲気下で下式の反応を起こす。
O→H.+.OH
H.+O→HOO.
HOO.+HOO.→H+O
.OH+.OH→H
これらラジカル等(toxic species)製造に要するエネルギーは、マイクロバブルの併用により低下する。超音波により形成されるキャビテーション・バブル(cavitation bubbles)に、マイクロバブルが重ね合わさることで、蛍光現象(sonoluminescence)の増加をもたらすためである。この蛍光現象によりラジカル種は増加する。つまり、超音波4中を通過する際に、マイクロバブル5は破砕(fragmentation)され、蛍光現象は活発になる。特に、複数の超音波発信源をマイクロバブル通路中に配置すると破砕は一層活発になる。
【0003】
キャビテーションバブル。
キャビテーション・バブルの生成と成長に関しては、米国特許6783662号公報2欄7行乃至27行、The invention relate to a liquid atomizing process in which a fluid comp−rising a solution of the liquid to be atomized and a lower boiling cavitation liquid,is contacted under pressure and while flowing,whth a pressure reducing means to reduce the fluid pressure and thereby produce nucleation of bubbles comprising the cavitation liquid vapor in the fluid........ ..Growth of the cavitation bubbles is produced by one or more pressure reducing means....「本発明は霧化処理に関するもので、低沸点液を含む流体を減圧することで、該沸点液を気化させ、気泡核を形成し、・・・・更なる減圧下で、このキャビテーション気泡を成長させる。」。つまり、キャビテション・バブルは、核が先ず生成し、(オリフィス通過の)減圧下で成長する。本発明は、気泡を細断してマイクロバブルを発生するのではなく、気泡核(ナノバブル)を先ず発生させこれをマイクロバブルへと成長させる。
【0004】
過酸化水素(hydrogen peroxide)。
第6図は米国特許7,025,868号公報の一重項酸素を製造する前工程の処理であり、電解槽204に気体酸素が拡散するカソード308を採用し、この陰極にて酸素を還元し、水酸化イオン(hydroxide ions)と過酸化イオン(peroxide ions)を作成する。

そして、陽極304側からのカリウムイオンと水素イオンと結合して、KOHとH(過酸化水素)を作成する。この現象から、大気中を浮遊するマイクロバブル含有水滴が、そのバブルを崩壊すると、開放されたエネルギーにより水滴表面に付着した酸素分子を活性化(ラジカル化)すると思われる。この開放エネルギーにより水酸基フリーラジカルが生成され、有害物質を酸化する、との説がマイクロバブル利用の基底にあるが、本発明では、気流中をマイクロバブル含有水滴が浮遊することで、併せて、酸素分子の活性化する。
【0005】
気泡の裁断。
第7図は、硫化水素ガス脱硫装置での触媒(第一鉄イオン:ferrous ions)を再生するために、酸素ガスなどの酸化剤を触媒液内に分散するせん断器に関する(米国特許7,749,481号)。せん断ギャップ225,235、245のは幅は、2.5ミリから0.5ミリである。ローター222,223,224は10以上の歯を有し、ステーター227,228,229も10以上の歯を供える。出口210での気泡粒径は、1μmから100nmの範囲内で選択できる。気液接触面積を大きくすることでせん断器200内での触媒再生能力を高める。マイクロバブルをせん断により工業的に作成するには、かような機材と駆動エネルギーが必要となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者はマイクロバブルをキャビテーションにより作成するエコ方式として、既に、特開2011−581号、実用新案登録第3,158,129号を提供する。この思想は、第7図のように大きな気泡をせん断によりマイクロ化することなく、キャビテーション現象により、先ず、気泡核(nucleation of bubbles)を渦エネルギーにより作成し、次いで成長させ、ノズル先端に配置したデフレクタで気泡を含んだ水流を扇状に飛散させている。この飛散水流内の気泡径分布は、10cm下流で、10ないし20μm(ミクロン)にピーク特性を有する。ここで、4ミクロン(μm)以下で数十ナノミクロン(nm)にまで範囲内の気泡径を、以下、サブミクロン気泡と称する。気泡破裂の開放エネルギーは、気泡径に反比例する。つまり、マイクロバブルよりも小さなサブミクロン気泡は、その開放エネルギーが大きい。しかし、サブミクロン気泡をマイクロバブル細断により量産するのはコスト面での制約がある。キャビテーション気泡ノズルの散布水流に衝撃を与えれば、マイクロバブルはこの飛散により細かい水滴群へと分散される際に、サブミクロン気泡へと分裂するのでないか、との推論に到った(気泡核からマイクロバブルへと成長したのであれば、逆もありえると)。
【課題を解決するための手段】
【0007】
経路断面が急拡大する乱流領域を有するキャビテーション気泡ノズルを採用し、乱流領域で発生した気泡核をサブミクロン気泡として成長・増加させ、マイクロバブルとして吐出噴流する。大気に触れて減圧する噴流内でマイクロバブルへと成長する。このマイクロバブルは、10ないし20ミクロン内にピーク密度分布を呈するが、2ミクロンにもピークを有する。キャビテーション気泡ノズルからの噴流域内に、この噴流を細かい水滴群として飛散させるバリアを配置する。固定したバリアでも良いが、飛散エネルギーを付与すべく旋回(あるいは回転)させるのが好ましい。本実施例では、バリアとして旋回するロッド群を採用する。
【発明の効果】
【0008】
サブミクロン気泡からマイクロバブルへと成長した気泡群を含む噴流は、バリア衝突により四方へ分散する。飛散した水滴群内のマイクロバブルの多くはサブミクロン気泡へと細断される。旋回するロッド群をバリアとして採用した場合には、旋回エネルギーが噴流へと付与され、更に細かい水滴群として飛散し且つサブミクロン気泡への細断割合も増加する。揮発性有機化合物を含んだ気流は、ロッド群の旋回領域内では旋回流として長く滞留する。細かい水滴群に触れる機会は増す。細かい水滴内のサブミクロン気泡は消滅時に表面歪みエネルギーを開放して揮発性有機化合物を分解する。水酸基ラジカルの生成が分解理由として理解されているが、水滴表面に捕捉された気流内の酸素分子をラジカル原子へと活性化する推論もそのオゾン臭から可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】 旋回するロッド群を採用した実施例の説明図である。
【図2】 キャビテーション気泡ノズルとその吐出噴流域に配置したバリアの断面図である。
【図3】 キャビテーション気泡ノズルからの吐出噴流が旋回するロッド群に衝突して飛散される説明図である。
【図4】 キャビテーション気泡ノズルの吐出噴流がバリアにて飛散された時の気泡径分布特性図である。
【図5】 米国特許7,718,073号の実施例図である。
【図6】 米国特許7,025,868号の実施例図である。
【図7】 米国特許7,749,481号の実施例図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ノズル内径が急拡大する領域では、乱流の渦エネルギーによりキャビテーション気泡が発生する。最初は極めて小さな気泡核であるが次第に成長する。第2図はキャビテーション気泡ノズル4の断面図であり、層流域10とノズル径が拡大する乱流域11そして成長域12とで形成される。水道水や加圧循環水は層流域10から乱流域11へと流れる。乱流域11で発生した気泡核はサブミクロン気泡へと成長し、成長域12から吐出噴流されマイクロバブルへと成長する。10ないし20ミクロンの範囲内に気泡粒径ピーク分布を有する。この気泡径ピーク分布噴流を10cmほど離れた下流域のバリア5に衝突させ、その飛散流内の気泡径分布特性を測定すると、第4図のように、10ないし20ミクロンの範囲内の分布は半減し、その代わりに、2ミクロンの気泡径に著しいピーク特性があらわれた。
このピーク特性変化を発明者は以下の如く解釈する。「10ないし20ミクロンの範囲内の気泡群はより小さなサブミクロン気泡へと分裂したのではないのか、と。」。「第7図のように、気泡をより小さくするにはせん断エネルギーを付与する必要がある。ノズルからの噴流がバリア5に衝突して飛散する際に、バリア5から受ける衝撃エネルギーにより、気泡はサブミクロン気泡へと分裂するのでないか、と。」。敷衍すれば「飛散する水滴群は、噴流よりも小さな水分子の集合になりその表面エネルギーは増加し、サブミクロン気泡が単に集まってできたマイクロバブルを再びサブミクロン気泡へ離散させる。」。なお、第4図データの計測方法ではミクロン以下の気泡径を検出できないので、サブミクロン気泡の発生分布特性は不明であが、オゾン臭の発生からある程度の数量と推測される。
【実施例】
【0011】
噴流飛散室1内にキャビテーション気泡ノズル4と、このノズルからの吐出噴流を飛散するバリア5群を旋回自在に配置し、この飛散室内を通過する揮発性有機化合物を含んだ気流内に、サブミクロン気泡含有の微細水滴群を混ぜ合わせ、この旋回浮遊する微細水滴群に揮発性有機化合物を付着させる(図1)。モータ7に接続する回転支軸15に、ロッド状のバリア5群を植設し、キャビテーション気泡ノズル4から扇状に散布されるマイクロバブル含有の噴流を、旋回するバリア5により微細水滴群として飛散させる(図3)。キャビテーション気泡ノズル4は、ポンプ6からの循環水が供給される層流域10と、ノズル径が急拡大する乱流域11そして発生した気泡核を成長させる成長域12を具える。サブミクロン気泡とマイクロバブルを含有する噴流がこのノズル4から吐出される。ノズル先端にデフレクタを取り付ければ、扇状の散布流が得られる。
【0012】
図3のように、多数のバリア5が高速旋回するので、ノズル4からの噴流は微細な水滴群としておもに旋回方向へ飛散し、噴流飛散室1内に旋回流を発生させる。上方から流入する揮発性有機化合物を含んだ気流も、この旋回流に巻き込まれ、水滴群とともにゆっくりと旋回しつつ降下する。この旋回浮遊落下する微細水滴群に多くの揮発性有機化合物は吸着(あるいは付着)される。
旋回エネルギーを与えられた水滴に揮発性有機化合物が付着すると、サブミクロン気泡はその気泡エネルギーを開放し(気泡消滅)、水酸基ラジカルを生成し、付着した揮発性有機化合物を分解する。付着した酸素分子の活性化によりラジカル生成は増幅される。
【0013】
揮発性有機化合物などを吸着分解した微細水滴は、貯水槽3内で凝集する。この凝集水でもサブミクロン気泡の消滅により溶存湯していた揮発性有機化合物は分解されるが、本来、揮発性有機化合物は表面エネルギーの大きな微細水滴に吸着されやすく、その吸着時の気泡消滅により分解される。凝集水はポンプ6によりノズル4へと循環利用される。
次に、銀貯水槽3内を通過した気流を排出するファン8を、スクラバー室2の上部に取り付ける。キャビテーション気泡ノズル4とバリア5からなる噴流飛散室1を通過し、貯水槽3、そしてスクラバー室2を通過した気流はファン8より排出されることになる。
充填されるスクラバーとは、気液接触用充填材として開発され、大きな気液接触面を可能にしつつ小さい流路抵抗を有する。市販の東洋ゴム株式会社で提供するトーヨーハイレックスシリーズ(プラスチック製)を採用する。材質は、ポリプロピレンやポリエチレンの熱硬化性樹脂である。特開2006−272109号や特開2010−247091号において気液接触用充填材として採用されている。貯水槽3を通過する気流中の揮発性有機化合物とサブミクロン気泡含有の水滴群は、スクラバー室2の通過時に、スクラバーにより気液接触が促進され、サブミクロン気泡崩壊による揮発性有機化合物の分解が行われる。塗装ミストの多くは貯水槽2を通過する際に水滴群に吸着されて貯水槽2に溜まるが、このスクラバーでの気液接触によりほぼ捕捉され、揮発性有機化合物と同じように貯水槽2内に滴下する。
以上、揮発性有機化合物などを含んだ気流処理について説明してきたが、ばい煙処理や汚染水の処理などにも採用しえる。
【産業上の利用可能性】
【0014】
大気汚染物質の分解除去、水質浄化、脱硫装置など。
【符号の説明】
【0015】
1 噴流飛散室
2 スクラバー室
3 貯水槽
4 キャビテーション気泡ノズル
5 バリア
11 乱流域
12 成長域
15 回転支軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロバブルを発生するキャビテーション気泡ノズルと、このキャビテーション気泡ノズルの吐出噴流域に配置されて処理気流中に噴出流を水滴群として飛散させるバリアと、からなるキャビテーション気泡浄化装置。
【請求項2】
気泡核を発生しサブミクロン気泡へと成長させる乱流域11と、このサブミクロン気泡をマイクロバブルへと成長させる成長域12とを具えるキャビテーション気泡ノズル4を採用する、請求項1記載のキャビテーション気泡浄化装置。
【請求項3】
バリアとして旋回自在なロッド群を採用し、キャビテーション気泡ノズルからの噴流を微細な水滴群へと飛散する、請求項1記載のキャビテーション気泡浄化装置。
【請求項4】
噴流飛散室内に、循環水を散布するキャビテーション気泡ノズルと、このノズルからの噴出流を微細な水滴群として飛散させるバリアを配置し、バリアに衝突し飛散する水滴群内にサブミクロン気泡を発生させ、水滴に含まれるあるいは吸着された物質をこのサブミクロン気泡消滅時の発生するエネルギーにより分解する、キャビテーション気泡浄化装置。
【請求項5】
浄化すべき気流内に、旋回自在なバリア群と、このバリア群にマイクロバブル噴流を吹き付けるキャビテーション気泡ノズルとを配置し、旋回するバリア群によりマイクロバブル噴流を微細な水滴群として旋回浮遊させ、この旋回流にそって流れる気流内の揮発性有機化合物などをこの微細な水滴群にて吸着する、キャビテーション気泡浄化装置。
【請求項6】
気液接触面積は大きいが流路抵抗の小さいスクラバー群を、旋回流の下流域に配置する、請求項5記載のキャビテーション気泡浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−27855(P2013−27855A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176381(P2011−176381)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000144681)株式会社山口工業 (4)
【Fターム(参考)】