説明

キャブオーバ型車両

【課題】 本発明は、エンジンの上方にキャブを備えたキャブオーバ型車両に関し、熱交換器のコア部における走行風の流れが妨げられた部分を効果的に冷却することを目的とする。
【解決手段】 車両の前端に配置されるグリルの後方に、グリルに対向して横流れ型の熱交換器を配置してなり、熱交換器が、車両の左右方向に間隔を置いて配置される入口側タンクと出口側タンクとの間に、チューブとフィンとが交互に配置されるコア部を備え、グリルと熱交換器との間にグリルからコア部に向かう走行風の流れを妨げる走行風妨害部材が存在するキャブオーバ型車両において、コア部に向かう走行風の流れを妨げない位置に走行風導入ダクトを配置するとともに、走行風導入ダクトの流入口を走行風妨害部材により走行風の流れが妨げられない位置にグリル側に向けて開口し、流出口を走行風妨害部材により走行風の流れが妨げられたコア部に向けて開口してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの上方にキャブを備えたキャブオーバ型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、キャブオーバ型トラックでは、グリルの後方に、インタークーラおよびラジエータが配置されている。また、キャブを揺動可能に支持するキャブサスペンション装置が配置されている。
【特許文献1】特開2005−67516号公報
【特許文献2】特開2005−201093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のキャブオーバ型トラックでは、設計上、キャブサスペンション装置のサスペンションリンクが、インタークーラの前方を横方向に横断して配置される場合がある。そして、このような場合には、サスペンションリンクにより、グリルからインタークーラのコア部に向かう走行風の流れが妨げられ、妨げられた部分のコア部のチューブが他の部分のチューブより高温になる。そして、高温になったチューブの熱膨張が他の部分のチューブにより妨げられ、熱歪みによりチューブに亀裂等の損傷が生じるおそれがある。
【0004】
本発明は、かかる従来の問題を解決するためになされたもので、熱交換器のコア部における走行風の流れが妨げられた部分を効果的に冷却することができるキャブオーバ型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1のキャブオーバ型車両は、車両の前端に配置されるグリルの後方に、前記グリルに対向して横流れ型の熱交換器を配置してなり、前記熱交換器が、前記車両の左右方向に間隔を置いて配置される入口側タンクと出口側タンクとの間に、チューブとフィンとが交互に配置されるコア部を備え、前記グリルと前記熱交換器との間に前記グリルから前記コア部に向かう走行風の流れを妨げる走行風妨害部材が存在するキャブオーバ型車両において、前記コア部に向かう走行風の流れを妨げない位置に走行風導入ダクトを配置するとともに、前記走行風導入ダクトの流入口を前記走行風妨害部材により走行風の流れが妨げられない位置に前記グリル側に向けて開口し、流出口を前記走行風妨害部材により走行風の流れが妨げられた前記コア部に向けて開口してなることを特徴とする。
【0006】
請求項2のキャブオーバ型車両は、請求項1記載のキャブオーバ型車両において、前記走行風妨害部材は、前記コア部の前方を横方向に横断して配置されていることを特徴とする。
【0007】
請求項3のキャブオーバ型車両は、請求項2記載のキャブオーバ型車両において、前記走行風妨害部材は、キャブを支持するキャブサスペンション装置のサスペンションリンクであることを特徴とする。
【0008】
請求項4のキャブオーバ型車両は、請求項2または請求項3記載のキャブオーバ型車両において、前記走行風導入ダクトの前記流出口を、前記コア部の前記入口側タンクの近傍に向けて開口してなることを特徴とする。
【0009】
請求項5のキャブオーバ型車両は、請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載のキャブオーバ型車両において、前記走行風導入ダクトを、前記入口側タンクまたは出口側タンクに固定してなることを特徴とする。
【0010】
請求項6のキャブオーバ型車両は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載のキャブオーバ型車両において、前記熱交換器は、インタークーラであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1のキャブオーバ型車両では、グリルからコア部に向かう走行風が、走行風導入ダクトの流入口に流入した後、走行風導入ダクトに導かれ走行風導入ダクトの流出口から走行風妨害部材により走行風の流れが妨げられたコア部に向けて流出される。従って、熱交換器のコア部における走行風の流れが妨げられた部分を効果的に冷却することができる。
【0012】
請求項2のキャブオーバ型車両では、走行風妨害部材が、コア部の前方を横方向に横断して配置されるため、走行風妨害部材の後方のチューブの冷却が全長に亘って阻害されるが、走行風導入ダクトにより効果的に冷却することができる。
【0013】
請求項3のキャブオーバ型車両では、キャブを支持するキャブサスペンション装置のサスペンションリンクが走行風妨害部材となり、サスペンションリンクの後方のチューブの冷却が全長に亘って阻害されるが、走行風導入ダクトにより効果的に冷却することができる。
【0014】
請求項4のキャブオーバ型車両では、走行風導入ダクトの流出口を、コア部の入口側タンクの近傍に向けて開口したので、特に高温になるチューブの入口側タンクの近傍を効果的に冷却することができる。
【0015】
請求項5のキャブオーバ型車両では、走行風導入ダクトを、入口側タンクまたは出口側タンクに固定したので、走行風導入ダクトを容易,確実に支持することができる。
【0016】
請求項6のキャブオーバ型車両では、インタークーラのコア部を、走行風導入ダクトにより効果的に冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明のキャブオーバ型車両の一実施形態の要部を示している。この実施形態では、本発明がキャブオーバ型トラックに適用される。
【0019】
図1において符号11は、車両の長手方向に配置される縦フレームを示している。縦フレーム11は、車両の横方向に間隔を置いて一対配置されている。そして、図示しない横フレームにより連結されている。
【0020】
車両の前端には、グリル13およびバンパ15が配置されている。グリル13の後方には、グリル13に対向して横流れ型のインタークーラ17が配置されている。インタークーラ17の後方に隣接してラジエータ19が配置されている。
【0021】
インタークーラ17は、図2に示すように、車両の左右方向に間隔を置いて配置される入口側タンク21と出口側タンク23とを有している。入口側タンク21と出口側タンク23との間には、コア部25が配置されている。コア部25は、チューブ27とコルゲートフィン29とを交互に配置して形成されている。入口側タンク21、出口側タンク23には、入口パイプ31、出口パイプ33が一体形成されている。
【0022】
グリル13とインタークーラ17との間には、キャブ(不図示)を支持するキャブサスペンション装置(不図示)のサスペンションリンク(キャブバー)35が配置されている。キャブおよびキャブサスペンション装置は、周知のもので、キャブのチルトの略中心にサスペンションリンク35が位置している。サスペンションリンク35は、コア部25の前方を横方向に横断して配置されている。従って、サスペンションリンク35により、グリル13からコア部25に向かう走行風Wの流れが妨げられ、コア部25には、走行風Wが流入しない領域がコア部25を横断して形成される。
【0023】
入口側タンク21および出口側タンク23には、走行風導入ダクト37,39が固定されている。走行風導入ダクト37,39は、コア部25に向かう走行風Wの流れを妨げない位置に配置されている。走行風導入ダクト37,39は、流入口37a,39aおよび流出口37b,39bを有している。流入口37a,39aおよび流出口37b,39bは、上下方向に長い矩形状とされている。
【0024】
流入口37a,39aは、グリル13からの走行風Wが通過し、かつ走行風妨害部材であるサスペンションリンク35により走行風Wの流れが妨げられない位置に、グリル13側に向けて開口している。流出口37b,39bは、サスペンションリンク35により走行風Wの流れが妨げられたコア部25に向けて開口している。そして、コア部25の入口側タンク21、出口側タンク23の近傍に向けて開口している。
【0025】
上述したキャブオーバ型車両では、グリル13からコア部25に向かう走行風Wが、走行風導入ダクト37,39の流入口37a,39aに流入した後、走行風導入ダクト37,39に導かれ走行風導入ダクト37,39の流出口37b,39bからサスペンションリンク35により走行風Wの流れが妨げられたコア部25に向けて流出される。従って、インタークーラ17のコア部25における走行風Wの流れが妨げられた部分を効果的に冷却することができる。これにより走行風Wの流れが妨げられた部分のチューブ27が極端に高温になることがなくなり、熱歪みによりチューブ27に亀裂等の損傷が生じるおそれをなくすことができる。
【0026】
また、上述したキャブオーバ型車両では、サスペンションリンク35が、コア部25の前方を横方向に横断して配置されるため、サスペンションリンク35の後方のチューブ27の冷却が全長に亘って阻害されるが、入口側タンク21、出口側タンク23の走行風導入ダクト37,39により効果的に冷却することができる。
【0027】
さらに、上述したキャブオーバ型車両では、入口側タンク21の走行風導入ダクト37の流出口37bを、コア部25の入口側タンク21の近傍に向けて開口したので、特に高温になるチューブ27の入口側タンク21の近傍を効果的に冷却することができる。
【0028】
そして、走行風導入ダクト37,39を、入口側タンク21および出口側タンク23に固定したので、走行風導入ダクト37,39を容易,確実に支持することができる。
(実施形態の補足事項)
以上、本発明を上述した実施形態によって説明してきたが、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下のような形態でも良い。
【0029】
(1)上述した実施形態では、走行風妨害部材がサスペンションリンク35である場合について説明したが、例えば、走行風妨害部材が縦フレーム11に直角に配置される横フレーム等である場合にも同様に適用できる。
【0030】
(2)上述した実施形態では、入口側タンク21および出口側タンク23に走行風導入ダクト37,39を配置した例について説明したが、例えば、出口側タンク23に走行風導入ダクト39を配置することなく、入口側タンク21にのみ走行風導入ダクト37を配置しても良い。
【0031】
(3)上述した実施形態では、入口側タンク21および出口側タンク23に走行風導入ダクト37,39を固定した例について説明したが、例えば、インタークーラ17の近傍のタンク21,23以外の部分に走行風導入ダクト37,39を固定しても良い。
【0032】
(4)上述した実施形態では、インタークーラ17に本発明を適用した例について説明したが、例えば、ラジエータ等の熱交換器にも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のキャブオーバ型車両の一実施形態の要部を示す説明図である。
【図2】図1のインタークーラを前方から見て示す説明図である。
【符号の説明】
【0034】
13 グリル
17 インタークーラ
21 入口側タンク
23 出口側タンク
25 コア部
27 チューブ
29 コルゲートフィン
35 サスペンションリンク
37,39 走行風導入ダクト
37a,39a 流入口
37b,39b 流出口
W 走行風


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前端に配置されるグリルの後方に、前記グリルに対向して横流れ型の熱交換器を配置してなり、前記熱交換器が、前記車両の左右方向に間隔を置いて配置される入口側タンクと出口側タンクとの間に、チューブとフィンとが交互に配置されるコア部を備え、前記グリルと前記熱交換器との間に前記グリルから前記コア部に向かう走行風の流れを妨げる走行風妨害部材が存在するキャブオーバ型車両において、
前記コア部に向かう走行風の流れを妨げない位置に走行風導入ダクトを配置するとともに、前記走行風導入ダクトの流入口を前記走行風妨害部材により走行風の流れが妨げられない位置に前記グリル側に向けて開口し、流出口を前記走行風妨害部材により走行風の流れが妨げられた前記コア部に向けて開口してなることを特徴とするキャブオーバ型車両。
【請求項2】
請求項1記載のキャブオーバ型車両において、
前記走行風妨害部材は、前記コア部の前方を横方向に横断して配置されていることを特徴とするキャブオーバ型車両。
【請求項3】
請求項2記載のキャブオーバ型車両において、
前記走行風妨害部材は、キャブを支持するキャブサスペンション装置のサスペンションリンクであることを特徴とするキャブオーバ型車両。
【請求項4】
請求項2または請求項3記載のキャブオーバ型車両において、
前記走行風導入ダクトの前記流出口を、前記コア部の前記入口側タンクの近傍に向けて開口してなることを特徴とするキャブオーバ型車両。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載のキャブオーバ型車両において、
前記走行風導入ダクトを、前記入口側タンクまたは出口側タンクに固定してなることを特徴とするキャブオーバ型車両。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項記載のキャブオーバ型車両において、
前記熱交換器は、インタークーラであることを特徴とするキャブオーバ型車両。


【図1】
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【図2】
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