説明

キャブ

【課題】キャブの窓のガラス面にワイパー、ウオッシャ液などでは拭い取るのが困難な、例えば速乾性の吹付けセメントのような異物が付着するのを防止し、運転視界を向上させることができるようにする。
【解決手段】キャブが、ガラス窓の外面を覆う幅を有した帯状の透明のフィルムと、ロール状に巻いたこのフィルムを収容するガラス窓の一端側に設置された収容部と、収容部のフィルムを所定の長さ引き出してロール状に巻き取るガラス窓の他端側に設置された巻取部を備え、フィルムを収容部と巻取部の間でガラス窓の外面に沿って張り渡たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械などのキャブにおいて、ガラス窓のガラス面に付着する取れにくい汚れによって視界が悪化する問題を改善し、視界を向上させるキャブに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば油圧ショベルのような建設機械に備えられるキャブのガラス窓である前窓には、ガラス面にかかる雨滴を拭い取る装置であるワイパーが備えられている(例えば、特許文献1参照)。一方、建設機械のように塵埃などの多い現場で稼働する機械のキャブのガラス面には、雨天でない場合においても、泥水、埃などの汚れが付着しやすい。この付着する汚れは、ワイパーを作動させ、必要に応じてウオッシャ液を噴射して拭い取られる。ワイパーで拭いきれない汚れは、作業者が人力によって取っている。
【特許文献1】特開平8−268238号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したとおりの形態の従来のキャブには、ガラス面に付着する汚れに関連して、次のとおりの解決すべき課題がある。
【0004】
例えば、トンネル掘削工事のような現場においては、泥水、埃等の他に、速乾性の吹付けセメントのような異物が飛散し、これらがキャブのガラス面に付着する。特に速乾性のセメントのような異物は、一旦ガラス面に付着するとワイパー、ウオッシャ液、手拭き掃除などでは拭い取るのが難しい。汚れを取り運転視界を確保するためには、窓ガラスの交換が必要な場合がある。
【0005】
本発明は上記事実に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、キャブの窓のガラス面にワイパー、ウオッシャ液などでは拭い取るのが困難な異物が付着するのを防止し、運転視界を向上させることができる、キャブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば上記技術的課題を解決するキャブとして、キャブのガラス窓の外面を覆う幅を有した帯状の透明のフィルムと、ロール状に巻いたこのフィルムを収容するガラス窓の一端側に設置された収容部と、収容部のフィルムを所定の長さ引き出してロール状に巻き取るガラス窓の他端側に設置された巻取部とを備え、フィルムが、収容部と巻取部の間でガラス窓の外面に沿って張り渡たされる、ことを特徴とするキャブが提供される。
【0007】
好適には、巻取部は、オンオフ自在な巻取駆動手段を備え、収容部は、フィルムを引出し方向と逆の逆方向に弾性的に付勢する付勢手段を備えている。ガラス窓は、キャブの前面に形成された前窓であり、収容部はこの前窓の下端側に、巻取部は上端側に設置されている。キャブは前窓に隣接して天井部に形成された天窓を備え、巻取部は天窓の端部に設置され、フィルムは、前窓および天窓に沿って張り渡される。
【0008】
巻取駆動手段は、一定時間が経過すると自動的にフィルムを巻き取るタイマーを備えている。フィルムは、塩化ビニル樹脂製である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に従って構成されたキャブは、キャブのガラス窓の外面を覆う帯状の透明のフィルムと、ロール状に巻いたこのフィルムを収容するガラス窓の一端側の収容部と、収容部のフィルムを所定の長さ引き出してロール状に巻き取るガラス窓の他端側の巻取部を備え、フィルムが、収容部と巻取部の間でガラス窓の外面に沿って張り渡たされる。
【0010】
したがって、ガラス窓の外面に沿って透明のフィルムを張り渡すことにより、ガラス面にワイパー、ウオッシャ液、あるいは手拭きなどでは拭い取るのが困難な異物、例えば速乾性の吹付けセメントのような異物が付着しないようにし、フィルムが付着した異物によって視界を妨げるようになった場合には、汚れた部分を巻取って新しい部分を引出し運転視界が妨げられないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に従って構成されたキャブについて、建設機械の代表例の一つである油圧ショベルに備えられるキャブにおける好適実施形態を図示している添付図面を参照して、さらに詳細に説明する。
【0012】
図1を参照して説明する。全体を番号2で示すキャブは、略直方体状に形成され、前面(図1の左手前側)の略全体にガラス窓である前窓4を備え、左側面(図1の右手前側)に乗降用のドア6を備え、天井部の前窓4側にガラス窓と実質的に同様に樹脂により形成された天窓8を備えている。
【0013】
前窓4の左右の外縁の一側(キャブ内から見て右側)に前窓4のガラス面を払拭するためのワイパー10を備えている。
【0014】
キャブ2は、前窓4の外面を覆う幅Wを有した帯状の透明のフィルム12と、ロール状に巻いたこのフィルム12を収容する前窓4の一端、下端側に設置した収容部14と、収容部14のフィルム12を所定の長さ引き出してロール状に巻き取る、前窓4の他端、上端側の天窓8を越え天窓8の端部に設置した巻取部16を備えている。
【0015】
キャブ4の外面の前窓4と天窓8の間には、収容部14と巻取部16の間でフィルム12を案内する案内板18を備えている。
【0016】
収容部14は、略台形断面の容器状に形成され、その前窓4側の一面に幅Wのフィルム12を引出すスリット14aを備えている。巻取部16も同様に、略台形断面の容器状に形成され、その天窓8側の一面に幅Wのフィルム12を巻き込むスリット16aを備えている。収容部14および巻取部16については、後にさらに詳述する。
【0017】
案内板18は、板材によって形成され、キャブ4の前面および天井部の間の外面に略沿った山形断面を有して、フィルム12の幅Wの両側に突出した長さを有している。
【0018】
かくしてフィルム12は、巻取部16によって収容部14から矢印Xで示す方向に引出され、収容部14と巻取部16との間において、前窓4、天窓8の外面に沿って張り渡たされる。
【0019】
フィルム12は塩化ビニル樹脂によって成形されている。フィルム12の幅Wは、前窓4を略覆う大きさを有している。
【0020】
図1とともに図2を参照して説明する。収容部14は、フィルム12を矢印Xで示す引出し方向と逆の方向に弾性的に付勢する、例えば板巻きばねによって形成することができる付勢手段14bを備えている。収容部14には、引出し張り渡たされ異物の付着したフィルム12に代えて、汚れのないフィルム12を複数回引き出すことができる長さのフィルム12を巻取り収容しておく。
【0021】
巻取部16は、キャブ2内に設置したスイッチ20によるオンオフが自在な電動モーターにより形成された巻取駆動手段16bを備えている。巻取駆動手段16bと電源21につながるスイッチ20との間には、タイマー22を備えている。
【0022】
タイマー22は、スイッチ20オン状態において、設定した一定時間が経過すると、スイッチ20と巻取駆動手段16bとを自動的に通電状態にし、巻取駆動手段16bを作動させ、張り渡した長さの分のフィルム12を自動的に巻き取る。タイマー22を、時間を設定しない状態にするとスイッチ20オン状態にしたときにのみ巻取駆動手段16bが作動する。
【0023】
キャブ2においては、張り渡した透明フィルム12の汚れの状況に応じて、例えば汚れが多く運転視界が悪化したときには、スイッチ20をオン操作して、汚れた部分を巻取り、汚れのない新しい部分を引出す。あるいは、フィルム12のこの更新を、所定の時間間隔で自動的に行うのが望ましい場合には、タイマー22によってその時間を設定しスイッチ20をオン状態にしておく。
【0024】
上述したとおりのキャブ2の作用効果について説明する。
【0025】
キャブ2は、ガラス窓である前窓4の外面を覆う幅Wを有した帯状のフィルム12と、ロール状に巻いたこのフィルム12を収容する前窓4の一端側に設置した収容部14と、収容部14のフィルム12を所定の長さ引き出してロール状に巻き取る前窓4の他端側、実施例においては天窓8の端側に設置した巻取部16を備え、フィルム12が、収容部14と巻取部16の間でガラス窓の外面に沿って張り渡たされる。
【0026】
したがって、ガラス窓である前窓4そして天窓8に沿ってフィルム12を張り渡すことにより、ガラス面にワイパー、ウオッシャ液、あるいは手拭きなどでは拭い取るのが困難な異物が付着しないようにし、フィルム12が付着した異物によって視界を妨げるようになった場合には、汚れた部分を巻取って新しい部分を引出すことにより運転視界が妨げられないようにできる。
【0027】
巻取部16は、オンオフ自在な巻取駆動手段16bを備え、収容部14は、フィルム12を引出し方向Xと逆の方向に弾性的に付勢する付勢手段14bを備えているので、必要に応じてフィルム12を駆動手段で巻き取ることができ、またフィルム12を付勢手段で緊張状態に張り渡すことができる。
【0028】
ガラス窓はキャブ2の前面に形成された前窓4であり、収容部14はこの前窓4の下端側に、そして巻取部16は上端側に設置されているので、収容部14および巻取部16によってキャブ2からの視界、特に左右の視界が邪魔されない。
【0029】
前窓4に隣接して天井部に天窓8を備えるキャブ2において、巻取部16を天窓8の端部に設置しフィルム12を前窓4および天窓8に沿って張り渡たすことにより、前窓4とともに天窓8の視界を十分に良好に確保することができる。
【0030】
巻取駆動手段16bは、一定時間が経過すると自動的に巻き取るタイマー22を備えているので、同じ作業場所で同じ作業を長時間繰り返すような建設機械のキャブ、例えばトンネル掘削現場で稼働する油圧ショベルのキャブなどにおいては、フィルム12の巻取間隔をタイマー22で設定することにより、オペレータはフィルム12の巻取りに気を使うことなく視界の確保されたキャブ内で作業に専念することができる。
【0031】
フィルム12は、塩化ビニル樹脂により成形されている。したがって、比較的安価に、容易に入手することができる。
【0032】
以上、本発明を実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、例えば下記のように、本発明の範囲内においてさまざまな変形あるいは修正ができるものである。
【0033】
本発明の実施例においては、巻取部16は巻取駆動手段16bを備えているが、巻取りの頻度が少ない場合には手動ハンドルなどによる手動による巻取式であってもよい。
【0034】
本発明の実施例においては、収容部14は窓の下端側に、巻取部16は上端側に設置されているが、キャブの形態、キャブを備える建設機械の形態などによって、これらをキャブの左右の側に設置してもよい。
【0035】
本発明の実施例においては、キャブ2は前窓4および天窓8の二つの窓を備え、フィルム12は前窓4および天窓8に沿って張り渡されているが、例えば前窓4のみに沿って張り渡たしてもよい。
【0036】
本発明の実施例においては、フィルム12は塩化ビニル樹脂製であるが、付着する異物の種類などに応じて、例えばより高い強度が要求される場合には、ポリカーボネート樹脂製あるいはポリエステル樹脂製などを用いればよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に従って構成されたキャブを斜め左前のやや上方から見た斜視図。
【図2】図1のキャブの、フィルム、収容部および巻取部などの部分の構成説明図。
【符号の説明】
【0038】
2:キャブ
4:前窓(ガラス窓)
8:天窓
12:フィルム
14:収容部
14b:付勢手段
16:巻取部
16b:巻取駆動手段
22:タイマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブのガラス窓の外面を覆う幅を有した帯状の透明のフィルムと、
ロール状に巻いたこのフィルムを収容するガラス窓の一端側に設置された収容部と、
収容部のフィルムを所定の長さ引き出してロール状に巻き取るガラス窓の他端側に設置された巻取部とを備え、
フィルムが、収容部と巻取部の間でガラス窓の外面に沿って張り渡たされる、
ことを特徴とするキャブ。
【請求項2】
巻取部が、オンオフ自在な巻取駆動手段を備え、
収容部が、フィルムを引出し方向と逆の方向に弾性的に付勢する付勢手段を備えている、
ことを特徴とする請求項1記載のキャブ。
【請求項3】
ガラス窓が、キャブの前面に形成された前窓であり、
収容部がこの前窓の下端側に、巻取部が上端側に設置されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載のキャブ。
【請求項4】
キャブが前窓に隣接して天井部に形成された天窓を備え、
巻取部が天窓の端部に設置され、
フィルムが、前窓および天窓に沿って張り渡される、
ことを特徴とする請求項3記載のキャブ。
【請求項5】
巻取駆動手段が、一定時間が経過すると自動的にフィルムを巻き取るタイマーを備えている、
ことを特徴とする請求項2記載のキャブ。
【請求項6】
フィルムが、塩化ビニル樹脂製である、
請求項1から5までのいずれかに記載のキャブ。

【図1】
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【図2】
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