説明

キャリアテープ、キャリアテープ製造装置、キャリアテープの製造方法

【課題】本発明は、基材の長手方向に対する引っ張り強度や曲げ剛性を高め、基材の一方の面に凹部を狭ピッチで形成することができ、製造コストを低減することができるキャリアテープ、キャリアテープ製造装置、キャリアテープの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るキャリアテープ1は、帯状の基材2からなるキャリアテープ1であって、基材1の一方の面に形成された、電子部品30を収納するための複数の凹部3と、凹部3の開口部を封止する蓋部4と、基材2の長手方向に沿って基材2の他方の面に形成された、二以上の凹部3を跨ぐ長さの凸部5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアテープ、キャリアテープ製造装置、キャリアテープの製造方法に関し、特に、基材の一方の面に形成された、電子部品を収納するための複数の凹部を備えるキャリアテープ、キャリアテープ製造装置、キャリアテープの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を回路基板に実装する装置では、電子部品を容易に供給するために電子部品を収納したキャリアテープを用いている。特許文献1及び2には、従来のキャリアテープを製造する方法が開示されている。
【0003】
特許文献1では、電子部品を収納するための複数の凹部を形成するパンチを有する上型と、パンチと対応する位置にバンパーを有する下型とで帯状の基材を圧縮成形してキャリアテープを製造する方法が開示されている。図7は、従来のキャリアテープ製造装置の上型及び下型の断面図である。図7に示す上型101は、複数のパンチ102、該パンチ102を保持するパンチホルダ103、スプリング104を介してパンチホルダ103に接続されたストリッパプレート105を備えている。下型110は、ダイプレート111、パンチ102と対応する位置に設けた複数のバンパー112、該バンパー112を支えるスプリング113を備えている。
【0004】
上型101と下型110とで帯状の基材120を圧縮成形して、電子部品を収納するための複数の凹部を備えるキャリアテープを製造することができる。図8は、従来の上型101及び下型110で基材120を圧縮成形して製造したキャリアテープの断面図である。図8に示すキャリアテープ121は、基材120の一方の面(表面)に形成した電子部品を収納するための複数の凹部122と、基材120の他方の面(裏面)に形成した凸部123とを有している。凸部123は、パンチ102で凹部122を形成するときに、基材120の一部がバンパー112のそれぞれに埋め込まれることで形成される。そのため、キャリアテープ121は、基材120の表面に形成した凹部122のそれぞれに対応して、基材120の裏面に凸部123が形成されている。
【0005】
特許文献2では、電子部品を収納するための複数の凹部を形成するパンチを有する上型と、下型とで帯状の基材を圧縮成形してキャリアテープを製造する方法が開示されている。図9は、従来のキャリアテープ製造装置の上型及び下型の断面図である。図9に示す上型201は、パンチ202、該パンチ202を保持するパンチホルダ203、スプリング204を介してパンチホルダ203に接続されたストリッパプレート205を備えている。下型210は、基材220を載置する面が一つの平面で構成されているダイプレート211を備えている。なお、上型201は、図示していないが複数本のパンチ202を有し、複数本のパンチ202が並列にパンチホルダ203に保持されている。
【0006】
上型201と下型210とで基材220を圧縮成形して、電子部品を収納するための複数の凹部を備えるキャリアテープを製造することができる。図10は、従来の上型201及び下型210で基材220を圧縮成形して製造したキャリアテープの断面図である。図10に示すキャリアテープ221は、基材220の一方の面(表面)に形成した電子部品を収納するための複数の凹部222を有している。基材220の他方の面(裏面)は、一つの平面で構成されているダイプレート211で保持されているので、基材220の表面に凹部222が形成された後も平坦となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−029662号公報
【特許文献2】特開平10−338208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されている製造方法では、基材120の表面に形成した凹部122のそれぞれに対応して、基材120の裏面に凸部123を形成するためには、パンチ102と対応する位置にバンパー112を設けた下型110が必要であり、基材120の表面に形成する複数の凹部122のピッチを狭めるためには、各バンパー112を隔てる壁の厚みを薄くする必要がある。しかし、下型110の強度を保つためには、各バンパー112を隔てる壁の厚みを薄くするにも限界があり、凹部122を狭ピッチで形成することが困難であるという問題があった。また、特許文献1に開示されている下型110は、バンパー112、スプリング113等を設ける必要があるためキャリアテープ製造装置のコストを含む製造コストが増大するという問題があった。
【0009】
さらに、特許文献1に開示されている製造方法では、基材120の表面に凹部122を形成する場合、基材120の一部がバンパー112に埋め込まれる。バンパー112に埋め込まれた基材120を搬送するには、バンパー112に埋め込まれた基材120を持ち上げる作業が必要となり、製造工程を短縮することができず製造コストが増大するという問題があった。また、基材120の裏面に凸部123が形成されるため、基材120を搬送する場合に凸部123が下型110のエッジと擦れて粉塵が発生するという問題があった。
【0010】
また、特許文献2に開示されているキャリアテープ221は、凹部222の直下に位置する基材220の厚みが、他の位置の基材220の厚みより薄くなるため、基材220の長手方向に対する引っ張り強度や曲げ剛性が低下するという問題があった。さらに、凹部222が形成された後も、基材220の裏面は平坦となるので、基材220の表面に形成した凹部222の深さは、基材220の厚み以上にすることができない。また、特許文献2に開示されている下型210は、基材220を載置する面が一つの平面で構成されているダイプレート211を備えているので、パンチ202で凹部222を形成する場合に、基材220が凹部222の底面で過圧縮され、パンチ202自体にかかる負荷が過負荷となり、パンチ202が破損する恐れがあるという問題があった。
【0011】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、基材の長手方向に対する引っ張り強度や曲げ剛性を高め、基材の一方の面に凹部を狭ピッチで形成することができ、製造コストを低減することができるキャリアテープ、キャリアテープ製造装置、キャリアテープの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために第1発明に係るキャリアテープは、帯状の基材からなるキャリアテープであって、前記基材の一方の面に形成された、電子部品を収納するための複数の凹部と、該凹部の開口部を封止する蓋部と、前記基材の長手方向に沿って前記基材の他方の面に形成された、二以上の前記凹部を跨ぐ長さの凸部とを備える。
【0013】
第1発明では、基材の一方の面に形成された、電子部品を収納するための複数の凹部と、凹部の開口部を封止する蓋部と、基材の長手方向に沿って基材の他方の面に形成された、二以上の凹部を跨ぐ長さの凸部とを備えるので、基材の他方の面にリブ構造を設けることができ、基材の長手方向に対する引っ張り強度や曲げ剛性を高めることができる。さらに、基材の一方の面に形成された凹部のそれぞれに対応して、基材の他方の面に凸部を形成する必要がなく、凹部を形成するパンチと対応する位置にバンパーを設けた金型を用いる必要がない。そのため、各バンパーを隔てる壁の厚みを考慮せずに複数の凹部を狭ピッチで形成することができる。
【0014】
また、第2発明に係るキャリアテープは、第1発明において、前記凸部は、前記基材の長手方向の全長にわたって形成されている。
【0015】
第2発明では、凸部は、基材の長手方向の全長にわたって形成されているので、基材を持ち上げることなく、基材の長手方向に基材を搬送することができるので、製造工程を短縮して製造コストを低減することができる。また、キャリアテープを製造する金型には、基材2の長手方向にエッジを設ける必要がないため、基材を搬送するときに、基材が金型のエッジと擦れて粉塵が発生しない。
【0016】
また、第3発明に係るキャリアテープは、第1又は第2発明において、前記凸部は、前記凹部の直下に位置する前記基材の他方の面に形成されている。
【0017】
第3発明では、凸部は、凹部の直下に位置する基材の他方の面に形成されているので、パンチで圧縮された基材の一部を凸部の形成に利用して凹部の底面で基材が過圧縮されるのを緩和することができ、パンチ自体にかかる負荷を軽減して、パンチが破損する恐れを低減することができる。また、凹部の直下に位置する基材の厚みは、凸部の分だけ厚くなるので、基材の長手方向に対する引っ張り強度や曲げ剛性を高めることができる。
【0018】
また、第4発明に係るキャリアテープは、第1乃至第3発明のいずれか一つにおいて、前記基材の長手方向に直交する方向の前記凸部の幅は、前記基材の長手方向に直交する方向の前記凹部の幅より広い。
【0019】
第4発明では、基材の長手方向に直交する方向の凸部の幅は、基材の長手方向に直交する方向の凹部の幅より広いので、パンチで圧縮された基材の一部をより多く凸部の形成に利用して凹部の底面で基材が過圧縮されるのをより緩和することができ、パンチ自体にかかる負荷を軽減して、パンチが破損する恐れを低減することができる。
【0020】
また、第5発明に係るキャリアテープは、第4発明において、前記凹部の深さは、前記基材の他方の面に形成された前記凸部の位置まで至る深さである。
【0021】
第5発明では、凹部の深さは、基材の他方の面に形成された凸部の位置まで至る深さであるので、基材の一方の面に形成した凹部の深さを、基材の厚み以上にすることができる。
【0022】
また、第6発明に係るキャリアテープは、第1乃至第5発明のいずれか一つにおいて、前記基材の材質は、紙である。
【0023】
第6発明では、基材の材質が紙である場合、基材の他方の面に凸部を形成して凹部の底面で基材が過圧縮されるのを緩和することで、凹部の底面と凹部の底面以外の部分とで紙の密度差を比較的小さくすることができ、基材の吸湿等による経時変化を少なくすることができる。
【0024】
上記目的を達成するために第7発明に係るキャリアテープ製造装置は、帯状の基材の一方の面に、電子部品を収納するための複数の凹部を形成するパンチを有する第1型と、該第1型と嵌合し、前記基材の他方の面に、二以上の前記凹部を跨ぐ長さの凸部を前記基材の長手方向に沿って形成するための溝を有する第2型とを備え、前記第1型と前記第2型とで前記基材を圧縮成形する。
【0025】
第7発明では、基材の一方の面に、電子部品を収納するための凹部を形成するパンチを有する第1型と、基材の他方の面に、二以上の凹部を跨ぐ長さの凸部を基材の長手方向に沿って形成するための溝を有する第2型とを備えるので、基材の他方の面にリブ構造を設けることができ、基材の長手方向に対する引っ張り強度や曲げ剛性を高めたキャリアテープを製造することができる。さらに、基材の一方の面に形成された凹部のそれぞれに対応して、基材の他方の面に凸部を形成する必要がなく、凹部を形成するパンチと対応する位置にバンパーを設けた第2型を用いる必要がない。そのため、各バンパーを隔てる壁の厚みを考慮せずに複数の凹部を狭ピッチで形成したキャリアテープを製造することができる。第2型は、バンパーやスプリングを設ける必要がないためキャリアテープ製造装置のコストを低減することができる。
【0026】
上記目的を達成するために第8発明に係るキャリアテープの製造方法は、第1型と第2型とで帯状の基材を圧縮成形してキャリアテープを製造する方法であって、前記第1型が有するパンチで、前記基材の一方の面に、電子部品を収納するための複数の凹部を圧縮して形成し、前記パンチで圧縮された前記基材の一部を前記第2型が有する溝に埋め込み、前記基材の他方の面に、二以上の前記凹部を跨ぐ長さの凸部を前記基材の長手方向に沿って形成する。
【0027】
第8発明では、第1型が有するパンチで、基材の一方の面に、電子部品を収納するための複数の凹部を圧縮して形成し、パンチで圧縮された基材の一部を第2型が有する溝に埋め込み、基材の他方の面に、二以上の凹部を跨ぐ長さの凸部を基材の長手方向に沿って形成するので、基材の他方の面にリブ構造を設けることができ、基材の長手方向に対する引っ張り強度や曲げ剛性を高めたキャリアテープを製造することができる。さらに、基材の一方の面に形成された凹部のそれぞれに対応して、基材の他方の面に凸部を形成する必要がなく、凹部を形成するパンチと対応する位置にバンパーを設けた第2型を用いる必要がない。そのため、各バンパーを隔てる壁の厚みを考慮せずに複数の凹部を狭ピッチで形成したキャリアテープを製造することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るキャリアテープは、基材の一方の面に形成された、電子部品を収納するための複数の凹部と、凹部の開口部を封止する蓋部と、基材の長手方向に沿って基材の他方の面に形成された、二以上の凹部を跨ぐ長さの凸部とを備えるので、基材の他方の面にリブ構造を設けることができ、基材の長手方向に対する引っ張り強度や曲げ剛性を高めることができる。さらに、基材の一方の面に形成された凹部のそれぞれに対応して、基材の他方の面に凸部を形成する必要がなく、凹部を形成するパンチと対応する位置にバンパーを設けた金型を用いる必要がない。そのため、各バンパーを隔てる壁の厚みを考慮せずに複数の凹部を狭ピッチで形成することができる。
【0029】
本発明に係るキャリアテープ製造装置は、基材の一方の面に、電子部品を収納するための凹部を形成するパンチを有する第1型と、基材の他方の面に、二以上の凹部を跨ぐ長さの凸部を基材の長手方向に沿って形成するための溝を有する第2型とを備えるので、基材の他方の面にリブ構造を設けることができ、基材の長手方向に対する引っ張り強度や曲げ剛性を高めたキャリアテープを製造することができる。さらに、基材の一方の面に形成された凹部のそれぞれに対応して、基材の他方の面に凸部を形成する必要がなく、凹部を形成するパンチと対応する位置にバンパーを設けた第2型を用いる必要がない。そのため、各バンパーを隔てる壁の厚みを考慮せずに複数の凹部を狭ピッチで形成したキャリアテープを製造することができる。第2型は、バンパーやスプリングを設ける必要がないためキャリアテープ製造装置のコストを低減することができる。
【0030】
本発明に係るキャリアテープの製造方法は、第1型が有するパンチで、基材の一方の面に、電子部品を収納するための複数の凹部を圧縮して形成し、パンチで圧縮された基材の一部を第2型が有する溝に埋め込み、基材の他方の面に、二以上の凹部を跨ぐ長さの凸部を基材の長手方向に沿って形成するので、基材の他方の面にリブ構造を設けることができ、基材の長手方向に対する引っ張り強度や曲げ剛性を高めたキャリアテープを製造することができる。さらに、基材の一方の面に形成された凹部のそれぞれに対応して、基材の他方の面に凸部を形成する必要がなく、凹部を形成するパンチと対応する位置にバンパーを設けた第2型を用いる必要がない。そのため、各バンパーを隔てる壁の厚みを考慮せずに複数の凹部を狭ピッチで形成したキャリアテープを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係るキャリアテープの平面図及び断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るキャリアテープの製造に用いるキャリアテープ製造装置の上型(第1型)及び下型(第2型)の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るキャリアテープの製造に用いるキャリアテープ製造装置の下型の平面図及び側面図である。
【図4】パンチで基材を圧縮した後のダイプレート及び基材の断面図である。
【図5】圧縮された基材の一部が溝に埋め込まれる様子を模式的に示した図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る別の構成のキャリアテープの平面図及び断面図である。
【図7】従来のキャリアテープ製造装置の上型及び下型の断面図である。
【図8】従来の上型及び下型で基材を圧縮成形して製造したキャリアテープの断面図である。
【図9】従来のキャリアテープ製造装置の上型及び下型の断面図である。
【図10】従来の上型及び下型で基材を圧縮成形して製造したキャリアテープの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0033】
図1は、本発明の実施の形態に係るキャリアテープの平面図及び断面図である。図1(a)は、キャリアテープ1の平面図、図1(b)は、キャリアテープ1のA−A断面図、図1(c)は、キャリアテープ1のB−B断面図である。キャリアテープ1は、帯状の基材2からなるキャリアテープであって、基材2の表面(一方の面)に形成された、電子部品30を収納するための複数の凹部3と、凹部3の開口部を封止する蓋部4と、基材2の長手方向に沿って基材2の他方の面に形成された、二以上の凹部3を跨ぐ長さの凸部5とを備えている。なお、キャリアテープ1には、凹部3と平行して基材2にパイロット孔6が設けられており、電子部品を回路基板に実装する装置は、該パイロット孔6を用いて凹部3に収納してある電子部品30を順次供給している。
【0034】
次に、キャリアテープ1の寸法の一例を示す。基材2の寸法は、幅8mm、厚み0.6mm、凹部3の寸法は、長さ(基材2の長手方向の長さ)0.59mm、幅(基材2の長手方向に直交する方向の長さ)1.10mm、深さ0.57mm、複数の隣接する凹部3のピッチは、1.0mm、凸部5の寸法は、幅(基材2の長手方向に直交する方向の長さ)2.5mm、厚み0.14mmである。凹部3に収納される電子部品30の寸法は、長さ0.5mm、幅1.0mm、高さ0.5mmである。
【0035】
キャリアテープ1は、図1(a)において左右に連続するものであり、通常リール等に巻かれて保持されている。基材2は、板紙、樹脂、紙と樹脂の合成物のいずれの材質であっても良い。凹部3は、電子部品、精密部品等の小物部品を収納する部分であり、例えばチップコンデンサが収納されている。蓋部4は、ポリエステル層とポリエチレン層との2層からなるラミネートフィルムである。蓋部4は、ポリエチレン層を基材2に熱圧着することで、凹部3の開口部を封止する。
【0036】
凸部5は、基材2の長手方向の全長にわたって、基材2の裏面に形成されており、凹部3の直下に位置する基材2の厚みを凸部5の分だけ厚くすることができるとともに、基材2の裏面にリブ構造を設けることができる。そのため、キャリアテープ1は、凸部5を形成することで基材2の長手方向に対する引っ張り強度や曲げ剛性を高めることができる。なお、凹部3の直下に位置する基材2の厚みや凸部5の厚み(出っ張り量)は、凹部3の深さや凸部5の幅寸法により適宜に設計することができる。
【0037】
次に、キャリアテープ1の製造方法について説明する。図2は、本発明の実施の形態に係るキャリアテープ1の製造に用いるキャリアテープ製造装置の上型(第1型)及び下型(第2型)の断面図である。図2に示す上型10は、パンチ11、パンチ11を保持するパンチホルダ12及びパンチプレート13、スプリング14を介してパンチプレート13に接続されたストリッパプレート15を備えている。ストリッパプレート15は、パンチ11で基材2を圧縮した後、基材2からパンチ11を引き抜くときに基材2が移動しないように押さえる部材である。下型20は、基材2を載置するダイプレート21を備えている。なお、パンチ11及びダイプレート21の材質は、例えば超硬合金である。また、上型10は、図示していないが複数本のパンチ11を有し、複数本のパンチ11が並列にパンチホルダ12及びパンチプレート13に保持されている。
【0038】
図3は、本発明の実施の形態に係るキャリアテープ1の製造に用いるキャリアテープ製造装置の下型20の平面図及び側面図である。図3に示す下型20は、ダイプレート21の基材2を載置する面に溝22、及びパイロット孔抜き孔23を有している。溝22は、基材2の長手方向に対して平行であり、上型10のパンチ11が基材2を圧縮する位置に、基材2の長手方向の全長にわたってダイプレート21の一端から他端まで連続して設けられている。パイロット孔抜き孔23は、溝22と平行して、等間隔でダイプレート21に設けられている。なお、図2では図示していないが、上型10は、パイロット孔抜き孔23と対応する位置にパンチを有し、パンチがパンチホルダ12及びパンチプレート13に保持されている。下型20は、単純な構成で、バンパーやスプリングを設ける必要がないため、キャリアテープ製造装置のコストを低減することができる。
【0039】
まず、キャリアテープ製造装置は、基材2を上型10と下型20との間に供給して、下型20の所定の位置に基材2を載置する。次に、キャリアテープ製造装置は、図2に示すように上型10及び下型20を嵌合してパンチ11で基材2を圧縮する。パンチ11で基材2を圧縮することで、基材2の表面に凹部3が形成され、凹部3が形成されるときに基材2の一部がダイプレート21の溝22に埋め込まれ、基材2の裏面に凸部5が形成される。そのため、凹部3及び凸部5の形状は安定しており、寸法が均一なキャリアテープ1を製造することができる。
【0040】
図4は、パンチ11で基材2を圧縮した後のダイプレート21及び基材2の断面図である。図4に示すように、基材2の表面に凹部3、基材2の裏面に凸部5が形成されている。具体的には、パンチ11の底面の寸法は、長さ(基材2の長手方向の長さ)0.59mm、幅(基材2の長手方向に直交する方向の長さ)1.10mmであり、当該パンチ11で基材2を表面から裏面方向に0.57mm圧縮することで凹部3が形成される。一方、溝22の寸法は、幅(基材2の長手方向に直交する方向の長さ)が2.5mm、深さが0.14mmであり、当該溝22に基材2の一部が埋め込まれることで凸部5が形成される。
【0041】
上述したように、パンチ11で基材2を圧縮することで、圧縮された基材2の一部が溝22に埋め込まれる。図5は、圧縮された基材2の一部が溝22に埋め込まれる様子を模式的に示した図である。図5に示すように、パンチ11で圧縮された基材2の一部が、矢印で示すように溝22に埋め込まれるので、パンチ11で圧縮された基材2の逃げ場として溝22を利用できる。溝22を圧縮された基材2の逃げ場として利用することで、パンチ11で圧縮された基材2の一部で凸部5を形成して凹部3の底面で基材2が過圧縮されるのを緩和することができ、パンチ11自体にかかる負荷を軽減して、パンチ11が破損する恐れを低減することができる。また、溝22を設けることで、隣接するパンチ11が基材2を圧縮するときに生じる力も低減することができるので、パンチ11とパンチ11とのピッチを従来のパンチとパンチとのピッチ(例えば2mm)より狭くすることが可能となり、基材2の表面に凹部3を狭ピッチ(例えば1mm)で形成することができる。基材2の材質が紙である場合、基材2の裏面に凸部5を形成して凹部3の底面で基材2が過圧縮されるのを緩和することで、凹部3の底面と凹部3の底面以外の部分とで紙の密度差を比較的小さくすることができ、基材2の吸湿等による経時変化を少なくすることができる。
【0042】
また、特許文献2に開示されている製造方法では、基材220の裏面が平坦となるため、基材220の表面に形成した凹部222の深さを基材220の厚み以上にすることができなかった。しかし、本発明の実施の形態に係るキャリアテープ1の製造方法では、溝22の幅(例えば、2.5mm)を、パンチ11の底面の幅(例えば、1.10mm)より広くすることで、パンチ11は、溝22の位置まで基材2を圧縮することができる。そのため、凹部3の深さが、基材2の裏面に形成された凸部5の位置に至る深さであるキャリアテープ1を製造することができる。つまり、キャリアテープ1は、凹部3の深さを、基材2の厚み以上にすることができる。加工前に準備する基材2の厚みを極力薄くすることができる。
【0043】
さらに、溝22は、パンチ11が基材2を圧縮する位置に設けられているので、凸部5を、凹部3の直下に位置する基材2の裏面に形成することができる。凸部5を凹部3の直下に位置する基材2の裏面に形成することで、パンチ11で圧縮された基材2の一部を凸部5の形成に利用して凹部3の底面で基材2が過圧縮されるのを緩和することができ、パンチ11自体にかかる負荷を軽減して、パンチ11が破損する恐れを低減することができる。また、凹部3の直下に位置する基材2の厚みは、凸部5の分だけ厚くなるので、基材2の長手方向に対する引っ張り強度や曲げ剛性を高めることができる。
【0044】
また、溝22の幅を、パンチ11の底面の幅より広くすることで、凸部5の幅(基材2の長手方向に直交する方向の長さ)が、凹部3の幅(基材2の長手方向に直交する方向の長さ)より広いキャリアテープ1を製造することできる。凸部5の幅は、凹部3の幅より広いので、パンチ11で圧縮された基材2の一部をより多く凸部5の形成に利用して凹部3の底面で基材2が過圧縮されるのをより緩和することができ、パンチ11自体にかかる負荷を軽減して、パンチ11が破損する恐れを低減することができる。なお、溝22の寸法は、パンチ11で圧縮された基材2の一部が溝22に埋め込まれる体積を考慮して決定されるため、溝22の幅がパンチ11の底面の幅より狭くても良く、製造されたキャリアテープ1の凸部5の幅が、凹部3の幅より狭くても良い。
【0045】
次に、上型10及び下型20を嵌合してパンチ11で基材2を圧縮して凹部3、凸部5を形成し、パイロット孔6が設けられた基材2をリールに巻き取る。基材2をリールに巻き取るとき、下型20に載置した基材2を搬送する必要がある。溝22は、図3に示すように、基材2の長手方向の全長にわたってダイプレート21の一端から他端まで連続して設けられているので、基材2の長手方向に基材2を搬送する場合に、何ら障害となる部分がない。そのため、基材2をリールに巻き取るとき、溝22に埋め込まれた基材2を持ち上げることなく、基材2の長手方向にスムーズに搬送することができるので、製造工程を短縮して製造コストを低減することができる。また、下型20には、基材2の長手方向にエッジを設ける必要がないため、基材2を搬送するときに、基材2が下型20のエッジと擦れて粉塵が発生しない。
【0046】
次に、リールに巻き取られた基材2に形成された各凹部3に電子部品30を収納する。さらに、電子部品30を収納した凹部3の開口部を蓋部4で封止する。凹部3の開口部を蓋部4で封止した基材2が、別のリールに巻き取られ、キャリアテープ1が製造される。
【0047】
以上のように、本発明の実施の形態に係るキャリアテープ1は、基材2の表面に形成された、電子部品30を収納するための複数の凹部3と、凹部3の開口部を封止する蓋部4と、基材2の長手方向に沿って基材2の裏面に形成された、二以上の凹部3を跨ぐ長さの凸部5とを備えるので、基材2の裏面にリブ構造を設けることができ、基材2の長手方向に対する引っ張り強度や曲げ剛性を高めることができる。さらに、基材2の表面に形成した凹部3のそれぞれに対応して、基材2の裏面に凸部5を形成する必要がなく、凹部3を形成するパンチ11と対応する位置にバンパーを設けた下型を用いる必要がない。そのため、各バンパーを隔てる壁の厚みを考慮せずに凹部3を狭ピッチで形成することができる。
【0048】
また、本発明の実施の形態に係るキャリアテープ1は、基材2の裏面に、凸部5が基材2の長手方向の全長にわたって形成されているので、図8で示した従来のキャリアテープ121のように、基材2の裏面には、基材2の長手方向に凹凸が存在しない。そのため、電子部品30を回路基板に実装する装置が、基材2の裏面を板バネ等でガイドしながらキャリアテープ1を搬送する構成であっても、キャリアテープ1が振動することはないので、電子部品30をピックアップできない等のエラーの発生を低減することができる。
【0049】
さらに、本発明の実施の形態に係るキャリアテープ1は、凸部5が基材2の長手方向の全長にわたって形成されているが、基材2の裏面にリブ構造を設けることができ、基材2の長手方向に対する引っ張り強度や曲げ剛性を高めることができれば、二以上の凹部3を跨ぐ長さの凸部5を基材2の裏面に形成しても良い。図6は、本発明の実施の形態に係る別の構成のキャリアテープの平面図及び断面図である。図6(a)は、キャリアテープ1aの平面図、図6(b)は、キャリアテープ1aのC−C断面図、図6(c)は、キャリアテープ1aのD−D断面図である。図6(b)に示すように、キャリアテープ1aでは、二つの凹部3を跨ぐ長さの凸部5が基材2の裏面に形成されている。
【0050】
また、図1で示したキャリアテープ1は、凸部5が凹部3の直下に位置する基材2の裏面に形成されているが、基材2の裏面にリブ構造を設けることができ、基材2の長手方向に対する引っ張り強度や曲げ剛性を高めることができれば、凸部5が凹部3の直下に位置する基材2の裏面に形成されていなくても良い。図6(c)に示すように、キャリアテープ1aでは、凸部5が凹部3の直下以外に位置する基材2の裏面に形成されている。
【0051】
さらに、本発明の実施の形態に係るキャリアテープ製造装置は、基材2の表面に、電子部品30を収納するための複数の凹部3を形成するパンチ11を有する上型10と、基材2の裏面に、基材2の長手方向の全長にわたって凸部5を形成するための溝22を有する下型20とを備えるので、凹部3の直下に位置する基材2の厚みが、凸部5の分だけ厚くすることができるとともに、基材2の裏面にリブ構造を設けることができ、基材2の長手方向に対する引っ張り強度や曲げ剛性を高めたキャリアテープ1を製造することができる。
【0052】
また、本発明の実施の形態に係るキャリアテープ1の製造方法は、上型10が有するパンチ11で、帯状の基材2の表面に、電子部品30を収納するための複数の凹部3を圧縮して形成し、パンチ11で圧縮された基材2の一部を下型20が有する溝22に埋め込み、基材2の裏面に、基材2の長手方向の全長にわたって凸部5を形成するので、凹部3の直下に位置する基材2の厚みが、凸部5の分だけ厚くすることができるとともに、基材2の裏面にリブ構造を設けることができ、基材2の長手方向に対する引っ張り強度や曲げ剛性を高めたキャリアテープ1を製造することができる。
【0053】
上型10が有するパンチ11で凹部3を形成するとき、パンチ11で圧縮された基材2の一部を下型20が有する溝22に埋め込むので、凹部3の底面となる基材2の材質を均一に分散することができる。そのため、凹部3に収納した電子部品30を凹部3の底面(基材2の裏面)側から透過型センサ等で検査する場合、基材2に阻害されることなく、誤検出の発生を低減することができる。
【符号の説明】
【0054】
1、1a キャリアテープ
2 基材
3 凹部
4 蓋部
5 凸部
6 パイロット孔
10 上型
11 パンチ
12 パンチホルダ
13 パンチプレート
14 スプリング
15 ストリッパプレート
20 下型
21 ダイプレート
22 溝
23 パイロット孔抜き孔
30 電子部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の基材からなるキャリアテープであって、
前記基材の一方の面に形成された、電子部品を収納するための複数の凹部と、
該凹部の開口部を封止する蓋部と、
前記基材の長手方向に沿って前記基材の他方の面に形成された、二以上の前記凹部を跨ぐ長さの凸部と
を備えることを特徴とするキャリアテープ。
【請求項2】
前記凸部は、前記基材の長手方向の全長にわたって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のキャリアテープ。
【請求項3】
前記凸部は、前記凹部の直下に位置する前記基材の他方の面に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のキャリアテープ。
【請求項4】
前記基材の長手方向に直交する方向の前記凸部の幅は、前記基材の長手方向に直交する方向の前記凹部の幅より広いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のキャリアテープ。
【請求項5】
前記凹部の深さは、前記基材の他方の面に形成された前記凸部の位置まで至る深さであることを特徴とする請求項4に記載のキャリアテープ。
【請求項6】
前記基材の材質は、紙であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のキャリアテープ。
【請求項7】
帯状の基材の一方の面に、電子部品を収納するための複数の凹部を形成するパンチを有する第1型と、
該第1型と嵌合し、前記基材の他方の面に、二以上の前記凹部を跨ぐ長さの凸部を前記基材の長手方向に沿って形成するための溝を有する第2型と
を備え、
前記第1型と前記第2型とで前記基材を圧縮成形することを特徴とするキャリアテープ製造装置。
【請求項8】
第1型と第2型とで帯状の基材を圧縮成形してキャリアテープを製造する方法であって、
前記第1型が有するパンチで、前記基材の一方の面に、電子部品を収納するための複数の凹部を圧縮して形成し、前記パンチで圧縮された前記基材の一部を前記第2型が有する溝に埋め込み、前記基材の他方の面に、二以上の前記凹部を跨ぐ長さの凸部を前記基材の長手方向に沿って形成することを特徴とするキャリアテープの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−35899(P2012−35899A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180139(P2010−180139)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】