説明

キャリア粒子製造方法、キャリア粉体及び現像剤

【課題】粒径のバラツキの小さな小粒径キャリアを製造することができるキャリア粒子製造方法を提供する。
【解決手段】複数の吐出孔13aが形成された薄膜13と、振動発生部20と、これによって発せられた振動を増幅し、且つ振動付与面を薄膜13に対向させるように配設された増幅部25とを用い、同振動付与面の振動を、キャリア芯材組成液を介して可撓性の薄膜13に伝えることで薄膜13を膜厚方向に往復で繰り返し撓ませるように振動させながら、同振動付与面と薄膜13との間に介在するキャリア芯材組成液の液圧をその振動に伴って変化させることで、吐出孔13aから液滴を周期的に放出させる周期的液滴化工程と、その液滴を固化させてキャリア芯材粒子を形成する粒子化工程とを実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤の構成材料であるキャリア粒子を製造するキャリア粒子製造方法に関するものである。また、かかる粒子製造方法によって製造されたキャリア粒子の集合からなるキャリア粉体や、同キャリア粉体が用いられた現像剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式の画像形成装置の分野では、優れたドット再現性を実現する狙いから、トナーとして個々のトナー粒子の粒径をより小さくした小粒径トナーを使用することが多くなってきた。また、キャリア粒子の小径化も進められている。小粒径トナーとの摺擦効率を高めたり、現像剤の流動性を高めたりする狙いからである。小粒径キャリアには、現像時に感光体等の潜像担持体に転移してしまういわゆるキャリア付着を引き起こし易いという欠点があったが、特許文献1に記載のように、粒径のバラツキを小さくした小粒径キャリアを用いることでキャリア付着の発生を有効に抑え得ることがわかってきた。
【0003】
【特許文献1】特開2007−171499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、本発明者らが使用していたキャリア粒子製造装置では、このような粒径のバラツキを小さくしたキャリア粉体を製造することが困難であった。具体的には、このキャリア粒子製造装置は、キャリア粒子の原料となるキャリア芯材組成液を収容するタンクと、タンクからノズルに向けてキャリア芯材組成液を圧送するポンプと、ノズルを高周波で振動させる振動発生手段とを備えている。また、このノズルは、ポンプから圧送されてくるキャリア芯材組成液を収容する液収容部と、該液収容部に形成された複数の吐出孔とを具備している。そして、ノズルの液収容部内のキャリア芯材組成液に対して、ポンプ圧送による圧力をかけることで、複数の吐出孔からキャリア芯材組成液を吐出させる。このようにしてキャリア芯材組成液を吐出するノズルを振動発生手段によって振動させる。この振動により、キャリア芯材組成液における吐出孔からの吐出箇所にせん断力を加えることで、その吐出液部を切断して液滴を得る。そして、吐出孔から吐出される液滴に乾燥気体を吹き付けて液滴中の溶媒を蒸発させることで、固形のキャリア粒子を得る。かかる構成において、液滴の大きさは、ノズルに対するキャリア芯材組成液の圧送力や、ノズルの振動周波数などに加えて、キャリア芯材組成液の濃度などによっても左右される。そして、キャリア芯材組成液の圧送を続けていると、その圧力により、ノズル内のキャリア芯材組成液中で固形分が徐々に吐出孔の付近に偏在していき、吐出孔からのキャリア芯材組成液の吐出を徐々に妨げるようになっていく。これにより、安定した大きさの液滴を長時間に渡って形成することが困難になることが、キャリア粒子の粒径をばらつかせる原因になっていた。
【0005】
本発明は以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、粒径のバラツキの小さな小粒径キャリアを製造することができるキャリア粒子製造方法を提供することである。また、かかる粒子製造方法によって製造されたキャリア粒子の集合からなるキャリア粉体や、同キャリア粉体を用いた現像剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、キャリア粒子製造方法であって、複数の吐出孔が形成された薄膜と、振動を発生させる振動発生手段と、該振動発生手段によって発せられた振動を増幅し、且つ振動を付与対象物に付与するための振動付与面を該薄膜に対向させるように配設された振動増幅手段と、該振動付与面と該薄膜との間にキャリア芯材組成液を供給する液供給手段とを用い、該振動付与面の振動を、キャリア芯材組成液を介して可撓性の該薄膜に伝えることで該薄膜を膜厚方向に往復で繰り返し撓ませるように振動させながら、該振動付与面と該薄膜との間に介在するキャリア芯材組成液の液圧をその振動に伴って変化させることで、上記吐出孔から液滴を周期的に放出させる周期的液滴化工程と、該周期的液滴化工程で得られた液滴を固化させてキャリア芯材粒子を形成する粒子化工程とを実施することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1のキャリア粒子製造方法において、上記振動増幅手段として、ホーン型の振動子を用いることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2のキャリア粒子製造方法において、上記振動発生手段として、20[kHz]以上、2.0[MHz]未満の周波数の振動を発生させるもの、を用いることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかのキャリア粒子製造方法において、上記複数の吐出孔を、上記薄膜の全領域のうち、上記振動増幅手段から伝達される音圧の変位量が10[kPa]以上、500[kPa]以下になる領域に設けたことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れかのキャリア粒子製造方法において、上記複数の吐出孔を、上記薄膜の全領域のうち、振動による変位量が最大になる箇所から、該箇所に対する変位量の割合が50[%]以上になる箇所にかけての領域に設けたことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れかのキャリア粒子製造方法において、上記粒子化工程で得られたキャリア芯材粒子に対して、樹脂層を被覆する被覆処理を施す被覆処理工程を実施することを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、トナー粒子とキャリア粒子とを含有する現像剤に用いられるキャリア粒子の集合からなるキャリア粉体であって、請求項1乃至6の何れかのキャリア粒子製造方法によって製造されたキャリア粒子の集合からなることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項7のキャリア粉体であって、重量基準平均径(D4)と個数基準平均粒径(Dn)との比(D4/Dn)が1.00〜1.15の範囲であることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項7又は8のキャリア粉体であって、重量基準平均径(D4)が15〜35[μm]であることを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項7乃至9の何れかのキャリア粉体であって、嵩密度が、2.15〜2.70[g/cm]の範囲内であり、且つ1000エルステッドの磁界を印加したときにおけるキャリア粒子の磁化が40〜150[emu/g]の範囲内であることを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項7乃至10の何れかのキャリア粉体であって、キャリア粒子の母材としてMnフェライトが用いられていることを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、請求項7乃至10の何れかのキャリア粉体であって、キャリア粒子の母材としてMnMgSrフェライトが用いられていることを特徴とするものである。
また、請求項13の発明は、請求項7乃至10の何れかのキャリア粉体であって、キャリア粒子の母材としてマグネタイトが用いられていることを特徴とするものである。
また、請求項14の発明は、請求項7乃至13の何れかのキャリア粉体であって、キャリア粒子の表面がシリコーン樹脂で被覆されていることを特徴とするものである。
また、請求項15の発明は、請求項7乃至14の何れかのキャリア粉体であって、キャリア粒子の表面がアミノシランカップリング剤を含有する樹脂で被覆されていることを特徴とするものである。
また、請求項16の発明は、トナー粉体とキャリア粉体との混合によって得られる現像剤において、キャリア粉体として、請求項7乃至15の何れかのものを用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
これらの発明においては、複数の吐出孔が形成された薄膜を膜厚方向に往復で撓ませるように振動させる。そして、振動増幅手段の振動付与面と薄膜との間に介在しているキャリア芯材組成液の液圧を薄膜の振動によって変化させる。具体的には、振動付与面との距離を小さくする方向に薄膜を撓ませたときには、キャリア芯材組成液の液圧を高めて、キャリア芯材組成液を薄膜の吐出孔から吐出させる。また、前記距離を大きくする方向に薄膜を撓ませたときには、吐出孔から出ているキャリア芯材組成液を吐出孔から分離して液滴とする。前述したように、薄膜の撓みによってキャリア芯材組成液の圧を高めて吐出孔から吐出させるので、従来とは異なり、キャリア芯材組成液をノズルに向けて圧送する必要がなくなる。よって、キャリア芯材組成液をノズルに向けて圧送することによる、キャリア芯材組成液中における固形分の吐出孔付近への偏在化を回避することが可能である。更には、薄膜を往復振動させるのに伴い、振動付与面と薄膜との間に介在しているキャリア芯材組成液に対して吐出孔に向かう方向の力だけを付与するのではなく、吐出孔から遠ざかる方向に向かう力も付与することで、キャリア芯材組成液中で固形分の分散を促す。これらの結果、長時間に渡ってキャリア芯材組成液を吐出孔から安定した吐出量で吐出させながら安定した大きさの液滴を形成して、粒径のバラツキの小さな小粒径キャリアを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を適用したキャリア粒子製造方法の実施形態について説明する。図1は、実施形態に係る粒子製造装置を示す概略構成図である。この粒子製造装置1は、原料液タンク2、液滴噴射ノズル10、粒子形成部50、粒子捕集部60などを備えている。
【0009】
原料液タンク2は、キャリア芯材の原料を溶媒に分散あるいは溶解せしめるか、原料を溶融せしめるかしたキャリア芯材組成液を収容している。この原料液タンク2内は、液滴噴射ノズル10よりも高い位置に配設されており、原料液タンク2と液滴噴射ノズル10とは配管3によって接続されている。原料液タンク2内のキャリア芯材組成液は、自然流下によって液滴噴射ノズル10に送られる。この液滴噴射ノズル10は、筒状構造の粒子形成部50の上壁に固定されている。そして、後述する複数の吐出孔からキャリア芯材組成液を液滴として鉛直方向下方にある粒子液性部50の筒内に向けて噴射する。噴射された液滴は、粒子形成部50内でごく短時間のうちに固化して粒子になりながら落下する。粒子形成部50の下部には、テーパー構造の粒子捕集部60が接続されており、粒子形成部50内で粒子化しながら落下した粒子は、この粒子捕集部60内のテーパー上に落下して集められる。そして、図示しないキャリア芯材粒子貯留容器に送られる。なお、液滴噴射ノズル10を粒子形成部50の上端に固定した例を示したが、粒子形成部50の側面又は底部に固定してもよい。
【0010】
図2は、液滴噴射ノズル10を示す拡大構成図である。また、図3は、液滴噴射ノズル10の薄膜13を示す拡大平面図である。液滴噴射ノズル10は、液収容部11、振動発生部20等を有している。また、液収容部11は、図示しない原料液タンクから配管3を介して液滴噴射ノズル10に送られてくるキャリア芯材組成液を受け入れるための受入流路12aや、キャリア芯材組成液を収容するための筒状の収容空間12bを形成している本体部12と、この本体部12の筒状の収容空間12bにおける下壁として機能している薄膜13とを具備している。自然流下によって液滴噴射ノズル10内に送られたキャリア芯材組成液は、受入流路12aを通った後、筒状の収容空間12b内に進入して薄膜13に受け止められる。振動発生部20は、筒状の収容空間12b内に収容されているキャリア芯材組成液を介して薄膜13に対向するように、液収容部11の本体部12の側壁に固定されている。
【0011】
複数の吐出孔13aが形成された薄膜13は、周囲をハンダ又はキャリア芯材組成液に溶解しない樹脂結着材料によって本体部12に接合固定されている。この薄膜13の材質、吐出孔13aの形状に特に制限はなく、適宜選択した形状とすることができるが、例えば、薄膜13として、厚み5〜500[μm]の金属板で形成し、吐出孔13aの開口径を3〜35[μm]にしたものを例示することができる。開口径については、吐出孔13aからキャリア芯材組成液の液滴を噴射させるときに、極めて均一な粒子径を有する微小液滴を発生させることから、前述した範囲に設定することが好ましい。なお、吐出孔13aの開口径は、真円であれば直径を意味し、楕円であれば短径を意味する。また、複数の吐出孔13aの個数は、2〜3000個が好ましい。
【0012】
振動発生部20は、振動を発生させる起振部21と、起振部21で発せられた振動を増幅する増幅部25とを具備している。また、起振部21は、絶縁板22と、これの両面にそれぞれ固定された第1電極23及び第2電極24とを具備しており、これらの電極には、駆動パルス信号発生手段29から送られてくるパルス信号によって周期的な電位差が与えられる。これにより、起振部20に振動が励起される。励起された振動は、増幅部25で増幅される。
【0013】
増幅部25は、増幅後の振動を振動付与対象物に付与するための振動付与面25aを有している。そして、この振動付与面25aを、キャリア芯材組成液を介して薄膜13に対向させるように配設されている。増幅部25の振動付与面25aが大きく振動すると、その振動がキャリア芯材組成液を介して薄膜13に伝わる。これにより、薄膜13が振動する。
【0014】
起振部21としては、薄膜13に対して確実な縦振動(膜厚方向の振動)を一定の周波数で与えることができるものであれば特に制限はなく、適宜選択して使用することができる。薄膜13を振動させることから、起振部21として、バイモルフ型のたわみ振動を励起することが可能な圧電体を用いることが好ましい。圧電体は、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換する機能を有する。具体的には、電圧が印加されることによってたわみ振動を励起して薄膜13を励振することができる。
【0015】
起振部21を構成する圧電体としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスを挙げることができる。圧電セラミックスについては、一般に変位量が小さいので、積層して使用することが望ましい。この他にも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電高分子や、水晶、LiNbO、LiTaO、KNbO、等の単結晶、などが挙げることができる。
【0016】
起振部21の配置には、複数の吐出孔13aを具備する薄膜13に対して孔貫通方向(膜厚方向)の振動を与えるものであれば、どのようなものであってもよい。但し、増幅部25の振動付与面25aと薄膜13とを平行に配置することが重要である。
【0017】
起振部21と増幅部25とを具備する振動発生部20の市販品としては、ホーン型振動子を例示することができる。ホーン型振動子は、圧電素子などの起振部21の振幅をホーン型(ラッパ型)の増幅部25で増幅する。起振部21の起こす振動としては非常に小さなものでよく、機械的負荷が少ないので長寿命化を実現することができる。
【0018】
ホーン型振動子としては、公知の代表的なホーン形状のもの、例えば図4に示すようなステップ型のもの、図5に示すようなエクスポネンシャル型のもの、図6に示すようなコニカル型のもの、などを挙げることができる。これらのホーン型振動子では、ホーン型の増幅部25における大径側の面に圧電体からなる起振部21を固定してあり、この起振部21で発せられた縦振動をホーン型の増幅部25の小径側の面に向けて伝える過程で、縦振動を増幅していく。その増幅率を、振動付与面25aで最大にするように設計されている。
【0019】
また、振動発生部20として、特に高強度なボルト締めランジュバン型振動子を用いることもできる。このボルト締めランジュバン型振動子は圧電セラミックスが機械的に結合されており、高振幅励振時に破損することがない。
【0020】
先に示した図2において、筒状の収容空間12bには、原料液タンク2からのキャリア芯材組成液を導くための上述した受入流路12aの他、気泡抜き流路12cも繋がっている。そして、この気泡抜き流路12cには、液収容部11の外側から気泡排出チューブ4が接続されている。
【0021】
薄膜13は、増幅部25の振動付与面25aからキャリア芯材組成液に伝わる振動に対して薄膜面を直交させる姿勢で固定されている。振動発生部20の起振部21に対しては、表面が絶縁被服されたリード線などの信号伝達手段を介して、駆動パルス信号発生手段29からの駆動パルス信号が与えられる。
【0022】
起振手段21は、より小さな発振振動数に対応するものほど大きくなるのが一般的であり、必要な振動周波数に応じて、穴あけ加工を施してもよい。また、起振手段21によって液収容部11全体を効率的に振動させることも可能である。この場合、複数の吐出孔13aが設けられた薄膜13の貼り合わせ面を、増幅部25の振動付与面であると定義する。
【0023】
次に、液滴噴射ノズル10における液滴噴射のメカニズムについて説明する。上述したように、液滴噴射ノズル10は、液収容部11の収容空間12b内に収容されているキャリア芯材組成液を受けている薄膜13に対して、振動発生部20で発生した振動を伝播させて、薄膜13を周期的に膜厚方向(孔貫通方向)に振動させる。薄膜13には、比較的広い領域(φ1mm以上)に渡って複数の吐出孔13aが形成されており、それぞれの吐出孔13aから独立した液滴を吐出することができる。
【0024】
図7に示すように、薄膜13は、周縁の固定部Spを支点(節)にして膜厚方向に振動する。ことのきの、支点を境にした図中上方向への変位量(膜撓み量)と、図中下方向への変位量とのうち、何れか一方をグラフ化すると、図8に示すようになる。薄膜の中心部で最大変位量△Lmaxが得られる。そして、薄膜13の中心部から周縁の固定部Spに向かうにつれて、変位量△Lが徐々に小さくなっていく。複数の吐出孔13aについては、薄膜13における次のような領域に設けている。即ち、最大変位量△Lmaxが得られる膜中央部を中心にして、変位量△Lが最大変位量△Lmaxの50[%]以上になる領域である。この領域内では、変位量△Lの偏差が2.0以下になる。
【0025】
なお、周縁だけを支点とする振動ではなく、図9や図10に示すように、面方向に複数の支点を有し、それぞれの支点で変位方向を逆転させるような振動が生じてしまう場合もある。これらのような複数支点の振動は、好ましくない。この場合、図11に示すように、薄膜13の中心部を凸形状にすることで、液滴の進行方向を制御し、かつ振動振幅量を調整することが可能になる。
【0026】
薄膜13が振動すると、薄膜13に対面しているキャリア芯材組成液には、薄膜13の振動速度Vmに比例した音圧Pacが発生する。音圧Pacは、媒質(キャリア芯材組成液)の放射インピーダンスZrの反作用として生じることが知られており、次式によって求められる。
【0027】
【数1】

【0028】
薄膜13の振動速度Vmは、時間とともに周期的に変動しているため時間の関数であり、例えばサイン波形、矩形波形など、様々な周期変動を形成することが可能である。また、前述したように、薄膜13の各部位で振動方向の振動変位は異なっており、振動速度Vmは、薄膜13上の位置座標の関数でもある。好ましい薄膜の振動形態は、上述のとおり径方向に対称な変形形状であるので、実質的には半径座標の関数となる。
【0029】
分布を持った薄膜13の振動変位速度に対して、それに比例する音圧が発生し、音圧の周期的変化に対応してキャリア芯材組成液が、気相へ吐出される。そして、気相へ周期的に排出されたキャリア芯材組成液は、液相と気相との表面張力差によって球体を形成するため、液滴化が周期的に発生し、キャリア芯材組成液は複数の吐出孔13aから液滴化されて放出される。
【0030】
つまり、実施形態に係るキャリア粒子製造方法では、複数の吐出孔13aが形成された薄膜13と、振動を発生させる振動発生手段たる起振部21と、起振部21によって発せられた振動を増幅し、且つ振動を薄膜13に付与するための振動付与面25aを薄膜13に対向させるように配設された振動増幅手段たる増振部25と、振動付与面25aと薄膜13との間にキャリア芯材組成液を供給する液供給手段たる原料液タンク2及び液収容部11とを用いる。そして、振動付与面25aの振動を、キャリア芯材組成液を介して可撓性の薄膜13に伝えることで薄膜13を膜厚方向に往復で繰り返し撓ませるように振動させながら、振動付与面25aと薄膜13との間に介在するキャリア芯材組成液の液圧をその振動に伴って変化させる。これにより、吐出孔13aから液滴を周期的に放出させる周期的液滴化工程する。このようにしてキャリア芯材組成液を液滴として噴射する構成では、従来構成とは異なり、キャリア芯材組成液を吐出孔13aに向けて圧送することなく吐出孔13aから吐出させる。このため、キャリア芯材組成液を吐出孔13aに向けて圧送することによる液収容部11内のキャリア芯材組成液における吐出孔13a側への固形分の偏在化を回避することが可能である。更には、薄膜13を往復振動させるのに伴い、液収容部11内のキャリア芯材組成液に対して吐出孔13aに向かう方向の圧だけを付与するのではなく、吐出孔13aから遠ざかる方向に向かう圧も付与することで、キャリア芯材組成液中の固形分の分散を促す。これらの結果、長時間に渡って安定した大きさの液滴を形成して、粒径のバラツキの小さな小粒径キャリアを製造することができる。
【0031】
本発明者らは、実験により、薄膜13の全領域のうち、最大変位量△Lmaxが得られる膜中央部を中心にして、変位量△Lが最大変位量△Lmaxの50[%]以上になる領域に複数の吐出孔13aを設けることで(ΔLmax/△Lx=2.0以下)、良好な結果が得られることを見出した。液滴サイズの偏差を小さくして、高画質な画像を提供することのできるキャリア芯材粒子を製造し得るのである。変位量△Lについては、スキャン式レーザードップラー振動計(ポリテック社製、PSV300)を用いて測定した。
【0032】
薄膜13の振動周波数としては20[kHz]〜2.0[MHz]の領域が好ましく、50[kHz]〜500[kHz]の範囲がより好ましい。20[kHz]以上の振動周期であれば、液体の励振によって、キャリア芯材組成液中の微粒子の分散が促進される。20[kHz]とすることで、キャリア組成液に含まれる分散固形粒子を液体内で良好に振動させて、吐出孔13aの内壁に付着させずに安定して噴射することが可能になる。また、2.0[MHz]以下とすることで、薄膜の多数節振動の発生を回避することができる。まp。振動周波数については、加振手段の加振周波数を上記スキャン式レーザードップラー振動計によって測定した。
【0033】
また、音圧の変位量が、10[kPa]以上となることによって、上述の微粒子分散促進作用がより好適に発生する。この場合、形成される液滴の直径は、薄膜13の複数の吐出孔13aが形成された領域における振動変位が大きいほど大きくなる傾向にあり、振動変位が小さい場合、小滴が形成されるか、または液滴化しない。このような、複数の吐出孔13aが形成された領域における液滴サイズのばらつきを低減するためには、複数の吐出孔13aの配置を薄膜13の振動変位の最適な位置に規定することが必要である。
【0034】
キャリア芯材組成液の条件を変更して実験を行ったところ、粘度20[mPa・s]以下、表面張力20ないし75[mN/m]の領域においてサテライトの発生開始領域が同様であったことから、前記音圧の変位量が、10[kPa]以上、500[kPa]以下であることが好ましく、より好ましくは100[kPa]以下である。音圧の変位量をこの範囲にする、つまり、音圧の変位量がこの範囲になる薄膜13の領域内に複数の吐出孔13aを配置することでサテライトの発生を抑制できる。10[kPa]以上とすることで、微粒子分散促進作用を高めることができる。なお、音圧については、振動振幅との相関を用いた数値計算によって求めた。
【0035】
次に、このように構成したキャリア芯材粒子の粒子製造装置1によるキャリア芯材粒子の製造工程の概要について説明する。先に示した図1において、タンク2内のキャリア芯材組成液を液滴噴射ノズル10に送り込みんがら、液滴噴射ノズル10の振動発生部20に対して所要の周波数の駆動パルス信号(電圧)を印加することによって振動発生部20の振動付与面25aを振動させる。そして、この振動によって薄膜13を周期的に振動させて複数の吐出孔13aからキャリア芯材組成液を周期的な液滴として噴出する。この液滴を粒子形成部50内に放出する。このとき、液滴噴射ノズル10の複数の吐出孔13aからは液滴が短周期で放出される(周期的液滴化工程)。吐出孔13aの目詰まりがないことから、従来装置に比べて生産効率を飛躍的に向上させることが可能になった。また、安定した大きさの液滴を噴射することから、粒径のバラツキの少ないキャリアを製造することができる。
【0036】
粒子形成部50内に放出された液滴は、落下方向と同方向に送気される乾燥気体51によって溶媒が除去されて、キャリア芯材粒子となる。つまり、周期的液滴化工程で得られた液滴を固化させてキャリア芯材粒子を形成する粒子化工程を実施する。乾燥気体としては、大気圧下の露点温度が−10[℃]以下の状態の気体を用いる。液滴を乾燥可能な気体であればよく、例えば、空気、窒素ガスなどを例示することができる。
【0037】
この粒子形成部50で固化したキャリア芯材粒子は粒子捕集部60にて捕集された後、図示しないチューブを介してキャリア芯材粒子貯留容器に送られて貯留される。粒子捕集部60の断面形状については、開口径が入口部(液滴噴射ノズル10側)から出口部に向けて漸次縮小するテーパー面を有する形状とする。キャリア芯材粒子を粒子捕集部60の出口部から乾燥気体51の流れによってキャリア芯材貯蔵容器に移送する構成としている。但し、粒子捕集部60からキャリア芯材粒子をキャリア芯材粒子貯留容器に向けて圧送したり、キャリア芯材粒子貯留容器側からキャリア芯材粒子を吸い込んだりする構成を採用することも可能である。
【0038】
乾燥気体51の流れについては、遠心力を発生させて確実にキャリア芯材粒子を移送するという点から渦流であることが好ましい。液滴を一の冷却部で乾燥してキャリア芯材粒子を形成する構成を採用してもよい。
【0039】
図12は、液滴噴射ノズル10の第1変形例を示す拡大構成図である。この第1変形例に係る液滴噴射ノズル10の振動発生部20は、圧電体からなる起振部21と、ホーン型の増幅部25とを有するホーン型振動子方式のものである。そして、増幅部25の振動付与面として、薄膜13を固定してあり、ホーン型の増幅部25内にキャリア芯材組成液を収容する液収容部11を配設している。振動発生部20は、フランジ式の固定部55によって粒子形成部(50)の壁面に固定されている。振動の損失を防ぐ観点から、図示しない弾性体を用いて固定してもよい。
【0040】
図13は、液滴噴射ノズル10の第2変形例を示す拡大構成図である。第2変形例に係る液滴噴射ノズル10は、振動発生部20として、起振部の対や、振動部の対を具備するものを用いている。具体的には、圧電体からなる第1起振部21Bと、圧電体からなる第2起振部21Aとが積層されている。そして、第1起振部21Bには、ホーン型の第1増幅部25Bが固定されている。また、第2起振部21Bには、ホーン型の第2増幅部25Aが固定されている。このような振動発生部20は、ボルト締めランジュバン型振動子として市販されている。液収容部11は第2増幅部25A内に配設されており、第2増幅部25Aの振動付与面が薄膜13となっている。
【0041】
これまで、液滴噴射ノズル10を1個だけ設けた例について説明したが、1つの粒子形成部50に対して液滴噴射ノズル10を複数並べて固定してもよい。この場合、それぞれの液滴噴射ノズル10の液収容部11に対しては、共通の原料液タンク2からそれぞれ個別の配管を介してキャリア芯材組成液を供給する。キャリア芯材組成液を液滴化に伴って自給的に供給する構成とすることもできるし、また、装置稼働時等、補助的にポンプを用いて液供給を行う構成とすることもできる。
【0042】
次に、図14は、液滴噴射ノズル10の第3変形例を示す拡大構成図である。なお、同図では、便宜上、吐出孔13aを1つしか示していないが、実際には、複数の吐出孔13aが形成されている。この液滴噴射ノズル10は、ホーン型の増幅部25を具備する振動発生部20と、これの周囲を囲みながら原料液14を供給するための受入流路12aや収容空間12bを形成する液収容部11と、薄膜13とを有している。液収容部11は、覆い部材16によって覆われている。この覆い部材16は、液収容部11の外壁との間に気体流路を形成している。吐出孔13aから噴射される液滴は、この気体流路に流される乾燥気体51の気流にのって、覆い部材16の開口から噴射される。
【0043】
このような構成の液滴噴射ノズル10を、図15に示すように、複数、例えば制御性の観点からは100〜1,000個の並べて粒子液性部50に固定するとよい。これにより、生産性をより向上させることができる。このような構成の粒子製造装置で得たキャリア芯材粒子に対し、粒子表面に樹脂層を形成し、最終的なキャリア粒子とする。樹脂層の形成方法としては、スプレードライ法、浸漬法、あるいはパウダーコーティング法等、従来公知の方法をいずれも適用できる。
【0044】
以上の構成の粒子製造装置によって製造したキャリア粒子の集合からなるキャリアの具体的な構成について説明する。実施形態に係るキャリア粒子製造方法によって製造したキャリア粒子の集合からなるキャリアとしては、重量基準平均径(D4)を15〜45[μm]の範囲にしたものを製造することが可能である。15〜35[μm]の範囲ものが好適である。重量平均粒径(D4)が45[μm]よりも大きいと、キャリア付着が起こり難いが、高画像濃度を得る狙いからトナー濃度を比較的高くした場合に、地汚れを急速に増大させてしまう。また、潜像のドット径が小さい場合は、ドット径のバラツキが大きくなる。また、高解像度を得る狙いからキャリアを小粒径化するとキャリア付着の発生が著しくなる。この場合、キャリア付着を起こしている大部分のキャリア粒子は粒径が18[μm]以下であることが実験によって確かめられている。
【0045】
キャリア付着は、静電潜像の画像部又は地肌部にキャリア粒子を付着させる現象である。それぞれの電界が強いほどキャリア付着が起こり易くなる。画像部は現像によるトナー付着に伴って電界が弱められるため、地肌部に比べてキャリア付着が起こり難い。キャリア付着は感光体ドラムや定着ローラの傷の原因となる等の不都合を生じるので好ましくない。
【0046】
粒径分布を測定するための粒度分析計としては、マイクロトラック粒度分析計(モデルHRA9320−X100:Honewell社製)を用いた。その測定条件は以下の通りである。
(1)粒径範囲:8〜100[μm]
(2)チャネル長さ(チャネル幅):2[μm]
(3)チャネル数:46
(4)屈折率:2.42
【0047】
本発明者らは、実施形態に係るキャリア粒子製造方法により、重量平均粒径(D4)と、個数基準平均粒径(Dn)との比(D4/Dn)が1.00〜1.03の範囲であるキャリアを製造した。このキャリアの粒度を測定したところ、重量平均粒径が18[μm]以下であったキャリア粒子の割合は0[%]だった。このことから、製造したキャリアにおいては、重量基準平均粒径が20〜35[μm]と小粒径であるにもかかわらず、キャリア付着を引き起こすことなく、ドット再現性やハイライトの再現性に優れ、且つ高画像濃度部でも地汚れの少ない高品質の画像を形成することができる。
【0048】
キャリアとしては、抵抗率LogR[Ω・cm]が、10.0以上、より好ましくは11.0以上ものを製造することが望ましい。キャリアの抵抗率が10.0よりも低いと、例えば現像ギャップ(感光体と現像スリーブ間の最近接距離)が狭くなり、電界強度が大きくなると、キャリアに電荷が誘導されてキャリア付着が発生し易くなる。感光体の線速度、及び、現像スリーブの線速度が大きい場合、悪化の傾向が見られる。
【0049】
なお、キャリア粒子については、表面被覆層の厚みのバラツキの大きいものや、芯材の一部が表面被覆層に覆われずに露出しているものが、キャリア付着を引き起こし易いことが解っている。また、樹脂による表面被覆層を具備するキャリア粒子を長期間使用すると、被膜の削れや剥がれの進行に伴ってキャリア付着を引き起こし易くなっていくことも解っている。キャリア粒子に電荷が誘導され易くなるためだと考えられる。
【0050】
一方、キャリア芯材を樹脂製の層で被覆した後、その上に更に表面被覆層を形成し、前者の層の電気抵抗を後者の表面被覆層よりも大きくすると、表面被覆層の削れや剥がれが進行しても、キャリア付着を引き起こさないことがわかった。かかるキャリア粒子を製造する方法としては、キャリア粒子芯材の表面に高抵抗の層を設けた後、より抵抗の低い層をその上に設ける方法が挙げられる。また、より電気抵抗の低い材料に徐々に切り替えながら、それぞれの材料で粒子を順に被覆して複数の被覆層を形成する方法でもよい。樹脂被膜の抵抗を徐々に変化させるには、抵抗の異なる被膜を多層塗り重ねるか、または、塗布するコート液の抵抗を塗付時間に対して、徐々に下げて行く等の方法で達成可能である。
【0051】
電機抵抗の調整については、粒子芯材上の被覆樹脂の抵抗を調整したり、膜厚を調整したりすることで制御することが可能である。また、キャリア抵抗調整のために、導電性微粉末を被覆樹脂層に添加して使用することも可能である。その導電性微粉末としては、導電性ZnO、Al等の金属、又は金属酸化物粉、種々の方法で調製されたSnO又は種々の元素をドープしたSnO、TiB2、ZnB、MoB等のホウ化物、炭化ケイ素、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリ(パラ−フェニレンスルフィド)ポリピロール、ポリエチレン等の導電性高分子、ファーネスブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック等が挙げられる。
【0052】
これらの導電性微粉末は、コーティングに使用する溶媒、あるいは被覆用樹脂溶液に導電性微粉末を投入後、ボールミル、ビーズミル等のメディアを使用した分散機、あるいは高速回転する羽根を備えた攪拌機を使用することによって均一に分散することができる。
【0053】
キャリアの抵抗率については、次のようにして測定することが可能である。即ち、電極間距離2[mm]、表面積2×4[cm]の電極を収容したフッ素樹脂製容器からなるセルにキャリアを充填し、両極間に100[V]の直流電圧を印加する。そして、ハイレジスタンスメーター4329A(4329A+LJK 5HVLVWDQFH OHWHU:横川ヒューレットパッカード株式会社製)にて直流抵抗を測定し、電気抵抗率LogR[Ω・cm]を算出する。
【0054】
1[KOe]における磁気モーメントを76[emu/g]以上にすることで、キャリア付着を大幅に改善することができた。なお、キャリアの好ましい嵩密度は、2.15〜2.70[g/cm]であり、より好ましくは2.20[g/cm]以上である。嵩密度が2.15[g/cm]未満であると、多孔性、あるいは表面の凹凸が大きく、添加剤の効果が充分得られ難くなる。嵩密度が小さいと、1[KOe]の磁化[emu/g]が大きくても、一粒子当たりの実質的な磁化の値が小さくなるため、キャリア付着に対して不利となる。
【0055】
キャリアとしては、1000エルステッドの磁界を印加したときの芯材粒子の磁化が、40〜150[emu/g]であるものが好ましく、130[emu/g]程度とすることがより好ましい。走査型電子顕微鏡で観察してもキャリア表面への添加剤の固着が進む様子が見られないが、キャリアの磁化が大きくなると、添加剤の固着が進み、キャリアの流動性が変化する。
【0056】
本願発明者らは、磁気束縛力に関係する磁化の大きさを互いに変えた複数のキャリアサンプルを試作して、キャリアの好適な磁化について検討した。すると、1000エルステッド[Oe]の磁場を印加したときの磁気モーメントを、40[emu/g]以上、より好ましくは50[emu/g]以上にすることで、キャリア付着を改善し得ることがわかった。キャリア粒子の磁化が40[emu/g]未満となると、キャリア付着が急激に発生し易くなるので好ましくない。一方、粒子の磁化が150[emu/g]を超えると、磁気ブラシが硬くなり、微小領域の均一現像が損なわれるようになる。なお、磁化については、以下のようにして測定することができる。即ち、B−Hトレーサー(BHU−60/理研電子(株)製)を使用し、円筒のセルにキャリア芯材粒子1.0gを詰めて装置にセットする。磁場を徐々に大きくしていき、3000エルステッドまで変化させ、次に徐々に小さくして、0にした後、反対向きの磁場を徐々に大きくし3000エルステッドとする。さらに、徐々に磁場を小さくして、0にした後、最初と同じ方向に磁場をかける。このようにして、B−Hカーブを図示し、その図より1000エルステッドの磁化を算出することができる。
【0057】
キャリア粒子の芯材の材料としては、従来から公知になっている各種の磁性材料を適用することができる。1000エルステッドの磁場を印加したときに、40[emu/g]以上となる芯材粒子としては、例えば、鉄、コバルト等の強磁性体、マグネタイト、ヘマタイト、Li系フェライト、Mn−Zn系フェライト、Cu−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Ba系フェライト、Mn系フェライト等が挙げられる。なお、フェライトとは、一般に、(MO)(NO)(Feで表される焼結体である。但し、x+y+z=100[mol%]であって、M、Nはそれぞれ、Ni、Cu、Zn、Li、Mg、Mn、Sr、Ca等であり、2価の金属酸化物と3価の鉄酸化物との完全混合物から構成されているものとする。また、1000エルステッドの磁場を印加したときの磁化が40[mu/g]以上となる芯材粒子のより好ましい例としては、鉄系、Mn−Mg−Sr系フェライト、Mn系フェライト、マグネタイト系等が挙げられる。
【0058】
なお、実施形態に係るキャリア粒子製造方法で得た一次造粒物を、焼成、解砕した後に得られるキャリア芯材に、樹脂層を被覆形成してもよい。
【0059】
キャリア粒子の表面に被覆する樹脂としては、従来から公知の各種樹脂を用いることができるが、下記構造式A、B、Cで表される繰り返し単位を含むシリコーン樹脂が好適である。なお、構造式A及び構造式Bを適宜組み合わせた繰り返し単位でもよい。
【0060】
【化1】

【化2】

【化3】

【0061】
なお、構造式B、Cにおいて、R1は、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、メトキシ基、炭素数1〜4の低級アルキル基、あるいはアリール基(フェニル基、トリル基等)を示している。また、R2は、炭素数1〜4のアルキレン基、あるいはアリーレン基(フェニレン基等)を示している。アリール基の炭素数は6〜20、好ましくは6〜14である。このアリール基には、ベンゼン由来のアリール基(フェニル基)の他、ナフタレンやフェナンスレン、アントラセン等の縮合多環式芳香族炭化水素由来のアリール基及びビフェニルやターフェニル等の鎖状多環式芳香族炭化水素由来のアリール基等が包含されていてもよい。また、アリール基には、各種の置換基が結合していてもよい。
【0062】
上述したアリーレン基の炭素数は6〜20、好ましくは6〜14である。このアリーレン基には、ベンゼン由来のアリーレン基(フェニレン基)の他、ナフタレンやフェナンスレン、アトラセン等の縮合多環式芳香族炭化水素由来のアリーレン基及びビフェニルやターフェニル等の鎖状多環式芳香族炭化水素由来のアリーレン基等が包含される。なお、アリーレン基には、各種の置換基が結合していてもよい。
【0063】
キャリア粒子の被覆層に用いるシリコーン樹脂としては、ストレートシリコーン樹脂を例示することができる。具体的には、KR271、KR272、KR282、KR252、KR255、KR152(信越化学工業社製)、SR2400、SR2406(東レダウコーニングシリコーン社製)等である。
【0064】
また、キャリア粒子の被覆層に藻ら蟹に砂シリコーン樹脂として、変性シリコーン樹脂を例示することもできる。エポキシ変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、ウレタン変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーン、アルキッド変性シリコーン等である。変性シリコーン樹脂の具体例としては、エポキシ変性物:ES−1001N、アクリル変性シリコーン:KR−5208、ポリエステル変性物:KR−5203、アルキッド変性物:KR−206、ウレタン変性物:KR−305(以上、信越化学工業社製)、エポキシ変性物:SR2115、アルキッド変性物:SR2110(東レダウコーニングシリコーン社製)等が挙げられる。
【0065】
また、次に示す材料を単独、又は前述した各種シリコーン樹脂と混合して適用してもよい。即ち、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、フッ素系樹脂等である。
【0066】
キャリア粒子の表面に樹脂からなる層を形成するための方法としては、スプレードライ法、浸漬法、あるいはパウダーコーティング法等、従来公知の方法を適用することが可能である。特に、流動床型コーティング装置を用いる方法は、均一な塗付膜を形成するのに有効である。樹脂からなる層の厚さは、0.02〜1[μm]、より好ましくは0.03〜0.8[μm]が好適である。
【0067】
このようにして形成した樹脂からなる層の材料として、アミノシランカップリング剤を含有する材料を使用することで、耐久性の良好なキャリアを得ることができる。アミノシランカップリング剤としては、例えば次に列記するものを用いることが可能である。
・HN(CH)Si(OCH) (MW:179.3)
・HN(CH)Si(OC) (MW:221.4)
・HNCHCHCHSi(CH)(OC) (MW:161.3)
・HNCHCHCHSi(CH)(OC) (MW:191.3)
・HNCHCHNHCHSi(OCH) (MW:194.3)
・HNCHCHNHCHCHCHSi(CH)(OCH) (MW:206.4)
・HNCHCHNHCHCHCHSi(OCH) (MW:224.4)
・(CHNCHCHCHSi(CH)(OC) (MW:219.4)
・(CNCSi(OCH) (MW:291.6)
なお、アミノシランカップリング剤の含有量は、0.001〜30[重量%]が好ましい。
【0068】
キャリア粒子の電気抵抗率の調整については、粒子芯材上に被覆する樹脂として適度の電気抵抗のものを用いたり、その樹脂の膜厚を調整したりすることで実現することが可能である。キャリア粒子の電気抵抗率を調整する狙いで、導電性微粉末を樹脂層中に添加してもよい。この場合、導電性微粉末としては、ZnO、Al等の金属や金属酸化物粉、種々の方法で調製されたSnOや種々の元素をドープしたSnO、TiB、ZnB、MoB等のホウ化物、炭化ケイ素、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリ(パラ−フェニレンスルフィド)ポリピロール、ポリエチレン等の導電性高分子、ファーネスブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラックなどを用いることができる。
【0069】
これらの導電性微粉末については、次のようにして樹脂材料中に添加するとよい。即ち、コーティングに使用する溶媒、あるいは樹脂溶液に導電性微粉末を投入した後、ボールミル、ビーズミル等のメディアを使用した分散機、あるいは高速回転する羽根を備えた攪拌機によって均一に分散するのである。
【0070】
トナー粒子とキャリア粒子とを含有する現像剤においては、次のようにすることで、地汚れやキャリア付着を引き起こし難くすることが本発明者らの実験によって確認されている。即ち、トナー粒子をキャリア粒子表面に50[%]の被覆率で吸着させたときにおけるトナーの帯電量を15〜50[μc/g]とするように、諸条件を調整するのである。キャリア粒子の表面上におけるトナー被覆率については、「被覆率(%)=(Wt/Wc)×(ρc/ρt)×(Dc/Dt)×(1/4)×100」という式によって求めることができる。
・Dc:キャリアの重量平均粒径[μm]
・Dt:トナーの重量平均粒径[μm]
・Wt:トナーの重量[g]
・Wc:キャリアの重量[g]
・ρt:トナー真密度[g/cm
・ρc:キャリア真密度[g/cm
【0071】
トナーとしては、少なくとも結着樹脂及び着色剤を含み、樹脂微粒子、離型剤、帯電制御剤、更に必要に応じてその他の成分を含むものを使用している。その他の成分としては、離型剤などのその他の成分を含むものである。
【0072】
トナーの製造方法に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することが可能である。粉砕法、水系媒体中で油相を乳化、懸濁又は凝集させトナー母体粒子を形成させる、懸濁重合法、乳化重合法、ポリマー懸濁法等、何れの方法を採用してもよい。また、特定の結晶性高分子及び重合性単量体を含有する単量体組成物を水相中で直接的に重合する重合法(懸濁重合法、乳化重合法)を採用してもよい。また、特定の結晶性高分子及びイソシアネート基含有プレポリマーを含有する組成物を水相中においてアミン類で直接的に伸長/架橋する重付加反応法を採用してもよい。また、イソシアネート基含有プレポリマーを用いた重付加反応法、溶剤で溶解し脱溶剤して粉砕する方法や、溶融スプレー法などを採用してもよい。
【0073】
粉砕法は、例えば、トナー材料を溶融乃至混練し、粉砕、分級等することにより、トナーの母体粒子を得る方法である。この粉砕法では、トナーの平均円形度を高くする目的で、得られたトナーの母体粒子に対し、機械的衝撃力を与えて形状を制御してもよい。この場合、機械的衝撃力については、例えば、ハイブリタイザー、メカノフュージョンなどの装置を用いてトナーの母体粒子に付与することができる。トナー材料の混合物を溶融混練機に仕込んで溶融混練する。溶融混練機としては、例えば、一軸の連続混練機、二軸の連続混練機、ロールミルによるバッチ式混練機を用いることができる。例えば、神戸製鋼所製KTK型二軸押出機、東芝機械社製TEM型押出機、ケイシーケイ社製二軸押出機、株式会社池貝製PCM型二軸押出機、ブス社製コニーダー等が好適に用いられる。この溶融混練は、バインダー樹脂の分子鎖の切断を招来しないような適正な条件で行うことが好ましい。具体的には、溶融混練温度は、バインダー樹脂の軟化点を参考にして行われ、軟化点より高温過ぎると切断が激しく、低温すぎると分散が進まないことがある。混練で得られた混練物については、粒子状に粉砕する。この粉砕においては、まず混練物を粗粉砕し、次いで微粉砕することが好ましい。その際、ジェット気流中で衝突板に衝突させて粉砕したり、ジェット気流中で粒子同士を衝突させて粉砕したり、機械的に回転するローターとステーターの狭いギャップで粉砕する方式が好ましく用いられる。分級においては、粉砕で得られた粉砕物を分級して所定粒径の粒子に調整する。サイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことによって分級することが可能である。
【0074】
懸濁重合法では、油溶性重合開始剤、重合性単量体中に着色剤、離型剤等を分散し、界面活性剤、その他固体分散剤等が含まれる水系媒体中で、後述する乳化法によって乳化分散する。次いで、重合反応を行い粒子化した後、本発明におけるトナー粒子表面に無機微粒子を付着させる湿式処理を行えばよい。その際、余剰にある界面活性剤等を洗浄し、除去したトナー粒子に処理を施すことが好ましい。重合性単量体として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸又は無水マレイン酸などの酸類;アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド又はこれらのメチロール化合物;ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のアミノ基を有する(メタ)アクリレートなどを一部用いることによってトナー粒子表面に官能基を導入できる。また、使用する分散剤として酸基や塩基性基を有するものを選ぶことにより、粒子表面に分散剤を吸着残存させ、官能基を導入することができる。乳化重合法としては、水溶性重合開始剤、重合性単量体を水中で界面活性剤を用いて乳化し、通常の乳化重合の手法によりラテックスを合成する。別途着色剤、離型剤等を水系媒体中に分散した分散体を用意し、混合した後、トナーサイズまで凝集させ、加熱融着させることによりトナーを得る。その後、後述する無機微粒子の湿式処理を行えばよい。ラテックスとして懸濁重合法に使用される単量体と同様なものを用いれば、トナー粒子表面に官能基を導入できる。これらの中でも、樹脂の選択性が高く、低温定着性が高く、造粒性に優れ、粒径、粒度分布、形状の制御が容易である。活性水素基含有化合物と、これに対して反応可能な重合体とを含むトナー材料とを有機溶剤に溶解乃至分散させてトナー溶液を調製した後、トナー溶液を水系媒体中に乳化乃至分散させて分散液を調製する。そして、水系媒体中で、活性水素基含有化合物と、これに対して反応可能な重合体とを反応させて接着性基材を粒子状に生成させ、有機溶剤を除去してトナーを得る。
【0075】
トナーの結着樹脂の種類に特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することが可能である。例えば、ポリスチレン、ポリ−p−スチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン又はその置換体の重合体、スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸共重合体、スチレン−メタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプロピレン共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体、ポリチメルメタクリレート樹脂、ポリブチルメタクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ロジン樹脂、変性ロジン樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は芳香族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂などが挙げられる。これらを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0076】
トナーの着色剤の種類にも特に制限はなく、公知の染料及び顔料の中から目的に応じて適宜選択することが可能である。例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボンなどが挙げられる。これらを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。トナー粒子における着色剤の含有量については、1〜15重量[%]が好ましく、3〜10重量[%]がより好ましい。
【0077】
着色剤を、樹脂と複合化させたマスターバッチとして使用してもよい。このような樹脂の種類については特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、スチレン又はその置換体の重合体、スチレン系共重合体、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリブチルメタクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンなどが挙げられる。これらを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0078】
トナーの離型剤の種類にも特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、ワックス類等が好適に挙げられる。ワックス類としては、例えば、カルボニル基含有ワックス、ポリオレフィンワックス、長鎖炭化水素等が挙げられる。これらを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、カルボニル基含有ワックスが好ましい。また、前述したカルボニル基含有ワックスとしては、例えば、ポリアルカン酸エステル、ポリアルカノールエステル、ポリアルカン酸アミド、ポリアルキルアミド、ジアルキルケトン等が挙げられる。また、前述したポリアルカン酸エステルとしては、例えば、カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート等が挙げられる。また、前述したポリアルカノールエステルとしては、例えば、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等が挙げられる。また、前述したポリアルカン酸アミドとしては、例えば、ジベヘニルアミド等が挙げられる。また、前述したポリアルキルアミドとしては、例えば、トリメリット酸トリステアリルアミド等が挙げられる。また、前述したジアルキルケトンとしては、例えば、ジステアリルケトン等が挙げられる。これらの中でも、ポリアルカン酸エステルが特に好ましい。また、前述したポリオレフィンワッックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。また、前述した長鎖炭化水素としては、例えば、パラフィンワックス、サゾールワックス等が挙げられる。
【0079】
トナー粒子に含有せしめる離型剤の融点に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。但し、40〜160[℃]が好ましい。より望ましくは、50〜120[℃]である。更に望ましくは、60〜90[℃]である。融点が40[℃]未満であると、ワックスが耐熱保存性に悪影響を与えることがある。また、融点が160[℃]を超えると、低温での定着時にコールドオフセットを起こし易いことがある。
【0080】
離型剤の溶融粘度については、ワックスの融点より20[℃]高い温度条件下での測定値として、5〜1,000[cps]が好ましい。より望ましくは、10〜100[cps]である。溶融粘度が5[cps]未満であると、離型性が低下することがある。また、溶融粘度が1,000[cps]を超えると、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果が得られなくなることがある。
【0081】
トナーにおける離型剤の含有量に特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。但し、1〜40[重量%]が好ましい。より望ましくは、3〜30[重量%]である。含有量が40[重量%]を超えると、トナーの流動性が悪化することがある。
【0082】
トナーの帯電制御剤の種類に特に制限はなく、感光体に帯電される電荷の正負に応じて正又は負の荷電制御剤を適宜選択して用いることができる。負の帯電制御剤としては、例えば、電子供与性の官能基を持つ樹脂又は化合物、アゾ染料、有機酸の金属錯体などを例示することができる。具体的には、ボントロン(品番:S−31、S−32、S−34、S−36、S−37、S−39、S−40、S−44、E−81、E−82、E−84、E−86、E−88、A、1−A、2−A、3−A)(何れも、オリエント化学工業社製);カヤチャージ(品番:N−1、N−2)、カヤセットブラック(品番:T−2、004)(何れも、日本化薬社製);アイゼンスピロンブラック(T−37、T−77、T−95、TRH、TNS−2)(何れも保土谷化学工業社製);FCA−1001−N、FCA−1001−NB、FCA−1001−NZ、(何れも、藤倉化成社製)、などが挙げられる。また、正の帯電制御剤としては、例えば、ニグロシン染料等の塩基性化合物、4級アンモニウム塩等のカチオン性化合物、高級脂肪酸の金属塩等を例示することができる。具体的には、ボントロン(品番:N−01、N−02、N−03、N−04、N−05、N−07、N−09、N−10、N−11、N−13、P−51、P−52、AFP−B)(何れも、オリエント化学工業社製);TP−302、TP−415、TP−4040(何れも、保土谷化学工業社製);コピーブルーPR、コピーチャージ(品番:PX−VP−435、NX−VP−434)(何れも、ヘキスト社製);FCA(品番:201、201−B−1、201−B−2、201−B−3、201−PB、201−PZ、301)(何れも、藤倉化成社製);PLZ(品番:1001、2001、6001、7001)(何れも、四国化成工業社製)、などが挙げられる。これらを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0083】
帯電制御剤の添加量については、結着樹脂の種類、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定することが好ましい。一義的に限定されるものではないが、100重量部の結着樹脂に対し0.1〜10重量部の添加量が好ましい。より好ましくは、0.2〜5重量部である。添加量が10重量部を超えると、トナーの帯電性が大きすぎ、帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電気的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招くことがある。また、添加量が0.1重量部未満であると、帯電立ち上り性や帯電量が十分でなく、トナー画像に影響を及ぼし易いことがある。
【0084】
トナー粒子には、必要に応じて無機微粒子、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料、金属石鹸等を添加することができる。添加剤の混合は一般の粉体の混合機が用いられるが、温調ジャケット等を装備して、内部の温度を調節できることが好ましい。添加剤に与える負荷の履歴を変えるには、途中で又は漸次添加剤を加えていけばよい。この場合、混合機の回転数、転動速度、時間、温度などを変化させてもよい。また、始めに強い負荷を、次に、比較的弱い負荷を与えてもよいし、その逆でもよい。使用できる混合設備としては、例えば、V型混合機、ロッキングミキサー、レーディゲミキサー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサーなどが挙げられる。次いで、250メッシュ以上の篩を通過させて、粗大粒子、凝集粒子を除去すればトナーが得られる。
【0085】
トナーの流動性や保存性、現像性、転写性を高める目的で、トナー母体粒子に疎水性シリカ微粉末等の無機微粒子を添加混合してもよい。トナー粒子に添加する無機微粒子としては、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム等を例示することができる。シリコーンオイルやヘキサメチルジシラザンなどで疎水化処理されたシリカ微粒子や、特定の表面処理を施した酸化チタンを用いることが好ましい。
【0086】
トナー粒子に添加するシリカ微粒子としては、例えば、アエロジル(品番:130、200V、200CF、300、300CF、380、OX50、TT600、MOX80、MOX170、COK84、RX200、RY200、R972、R974、R976、R805、R811、R812、T805、R202、VT222、RX170、RXC、RA200、RA200H、RA200HS、RM50、RY200、REA200)(何れも、日本アエロジル社製);HDK(品番:H20、H2000、H3004、H2000/4、H2050EP、H2015EP、H3050EP、KHD50)、HVK2150(何れも、ワッカーケミカル社製);カボジル(品番:L−90、LM−130、LM−150、M−5、PTG、MS−55、H−5、HS−5、EH−5、LM−150D、M−7D、MS−75D、TS−720、TS−610、TS−530)(何れも、キャボット社製)等を例示することができる。
【0087】
無機微粒子の添加量としては、100重量部のトナー母体粒子に対し0.1〜5.0重量部が好ましい。より好ましくは0.8〜3.2重量部である。
【0088】
トナーの平均円形度については、0.900〜0.980に調整することが好ましい。より好ましくは0.950〜0.975である。平均円形度は、トナー粒子の投影像の周囲長を実在粒子の周囲長で除した値である。平均円形度が0.94未満であるトナー粒子については、15[重量%]以下の含有率にすることが好ましい。平均円形度が、0.900未満であるトナー粒子では、満足できる転写性やチリのない高画質画像が得られない。また、平均円形度が0.980を超えるトナー粒子では、ブレードクリーニングなどを採用している画像形成システムにて、感光体上及び転写ベルトなどのクリーニング不良を発生させる。また、写真画像等の画像面積率の高い画像を形成する際に、給紙不良等で未転写の画像を形成したトナーが感光体上に転写残トナーとなって蓄積した画像の地汚れを発生させてしまう。更には、感光体を接触帯電させる帯電ローラ等を汚染して、帯電能力を著しく低下させてしまうこともある。
【0089】
トナーの平均円形度については、フロー式粒子像分析装置(FPIA−2100:シスメックス社製)と、解析ソフト(FPIA−2100 Data Processing Program for FPIA version00−10)とを用いて解析することが可能である。具体的には、100ml容量のガラス製ビーカーに、界面活性剤(アルキルベンゼンスルフォン酸塩、ネオゲンSC−A:第一工業製薬社製)を0.1〜0.5[ml]添加した後、各トナー0.1〜0.5[g]を添加してミクロスパーテルでかき混ぜる。更に、イオン交換水を80[ml]添加した後、得られた分散液を超音波分散器(本多電子社製)で3分間分散処理する。この分散液について、前述した解析ソフトFPIA−2100を用いて、5,000〜15,000[個/μl]のトナー濃度が得られるまでトナーの形状及び分布を測定する。この測定にあたっては、平均円形度の測定再現性の点からトナー濃度を5,000〜15,000[個/μl]にすることが重要である。かかるトナー濃度を実現するために、添加する界面活性剤量、トナー量などの分散液の条件を適切に調整する必要がある。界面活性剤量の必要量は、トナー粒径の測定と同様にトナーの疎水性によって異なってくる。多く添加すると泡によるノイズが発生し、少ないとトナーを十分に濡らすことができずに分散が不十分となる。また、適切なトナー添加量は、粒径によって異なってくる。小粒径の場合は比較的少ないのに対し、大粒径の場合は比較的多い。トナー粒径が3〜10[μm]である場合には、トナーの添加量を概ね0.1〜0.5[g]にすることで、トナー濃度を5,000〜15,000[個/μl]にすることが可能である。
【0090】
トナーの体積平均粒径については、3〜10[μm]に調整することが好ましい。より好ましくは3〜8[μm]である。体積平均粒径が3[μm]未満であると、二成分現像剤では現像装置における長期の撹拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させることがある。また、体積平均粒径が10[μm]を超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合に、トナーの粒子径の変動が大きくなることがある。
【0091】
トナーにおける体積平均粒径と個数平均粒径との比(体積平均粒径/個数平均粒径)については、1.00〜1.25に調整することが好ましい。より好ましくは1.10〜1.25である。
【0092】
体積平均粒径、体積平均粒子径、及び両者の比(体積平均粒径/個数平均粒径)については、粒度測定器(マルチサイザーIII:ベックマンコールター社製)と、解析ソフト(Beckman Coulter Mutlisizer 3 Version 3.51)とを用いて、100[μm]のアパーチャー径の条件下で解析することが可能である。具体的には、100[ml]容量のガラス製ビーカーに10重量%界面活性剤(アルキルベンゼンスルフォン酸塩、ネオゲンSC−A:第一工業製薬社製)を0.5[ml]添加した後、トナーを0.5[g]を添加してミクロスパーテルでかき混ぜる。更に、イオン交換水を80[ml]添加した後、得られた分散液を超音波分散器(W−113MK−II:本多電子社製)で10分間分散処理する。この分散液を前述した粒度測定器マルチサイザーIIIにセットし、測定用溶液としてアイソトンIII(ベックマンコールター社製)を用いて測定を行った。測定にあたっては、装置によって示される濃度が8±2[%]になるように分散液を滴下した。粒径の測定再現性の点から装置によって示される濃度を8±2[%]にすることが重要である。この濃度範囲であれば粒径に誤差は生じないからである。
【0093】
トナーの着色剤の種類には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ブラックトナー、シアントナー、マゼンタトナー、イエロートナーから選択される少なくとも1種を例示することができる。各色のトナーは着色剤の種類を適宜選択することにより得ることができるが、カラートナーであることが好ましい。
【0094】
以下、トナーやキャリアの製造例について説明する。
【0095】
[トナーの第1製造例]
まず、ポリエステルを合成する。具体的には、冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応容器内に、34090重量部のビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物と、5800重量部のフマル酸と、15重量部のジブチルチンオキサイドとを入れる。そして、常圧下にて、230[℃]で5時間反応させる。次いで、10〜15[mmHg]の減圧下で6時間反応させて「ポリエステル1」を合成した。得られた「ポリエステル1」のガラス転移温度(Tg)は63[℃]であり、重量平均分子量(Mw)は12000であり、酸価は22[mgKOH/g]であった。
【0096】
次に、トナーを製造する。具体的には、先に合成しておいた100重量部の「ポリエステル1」と、2重量部の銅フタロシアニン顔料と、下記構造式(A)(ノニレンパーフルオロエーテル−p−トリメチルアミノプロピルアミドフェニルのヨウ素塩)で表される2重量部の帯電制御剤とを、熱ロールを用いて120[℃]の環境下で混練する。そして、混練物を冷却して固化した後、粉砕・分級して、トナー母体粒子を得た。得られたトナー母体粒子の集合は、体積平均粒径が7.1[μm]であり、個数平均粒径が5.8[μm]であり、平均円形度が0.953であった。
【化4】

【0097】
次に、得られたトナー母体粒子の100重量部に対し、シリカR972(日本アエロジル社製)を0.5重量部添加し、混合して、「トナー1」を得た。
【0098】
[トナーの第2製造例]
100重量部の「ポリエステル1」と、5重量部のカーボンブラック(Printex60、デグサ社製)と、下記構造式(B)で表される2重量部の含クロムアゾ染料とを、熱ロールを用いて120[℃]の条件下で混練する。そして、混練物を冷却して固化した後、粉砕・分級して、トナー母体粒子を得る。得られたトナー母体粒子の集合は、体積平均粒径が7.3[μm]であり、個数平均粒径が6.0[μm]であり、平均円形度が0.955であった。
【化5】

【0099】
次に、得られたトナー母体粒子の100重量部に対し、シリカR972(日本アエロジル社製)を0.5重量部添加し、混合して、「トナー2」を得た。
【0100】
[トナーの第3製造例]
まず、有機微粒子エマルジョンを合成する。具体的は、撹拌棒、及び温度計をセットした反応容器内に、683重量部の水と、11重量部のメタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業社製)と、83重量部のスチレンと、83重量部のメタクリル酸と、110重量部のアクリル酸ブチルと、1重量部の過硫酸アンモニウムとを入れる。そして、400[回転/分]で15分間撹拌して、白色の乳濁液を得る。この乳濁液を加熱して、系内温度75[℃]まで昇温した後、5時間反応させる。次いで、30重量部の1重量%過硫酸アンモニウム水溶液を加え、75[℃]で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液を得る。これを「微粒子分散液1」とする。得られた「微粒子分散液1」に含まれる微粒子の体積平均粒径を、レーザー散乱法を用いた粒径分布測定装置(「LA−920」、堀場製作所製)によって測定したところ、105[nm]であった。また、「微粒子分散液1」の一部を乾燥して樹脂分のみを単離した。この樹脂分のガラス転移温度(Tg)は59[℃]であり、重量平均分子量(Mw)は15万であった。
【0101】
この「微粒子分散液1」を基にして水相を調整する。具体的には、990重量部の水と、83重量部の「微粒子分散液1」と、37重量部のドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5重量%水溶液(エレミノールMON−7、三洋化成工業社製)と、90重量部の酢酸エチルとを混合撹拌して乳白色の液体を得る。この液体を「水相1」とする。
【0102】
このようにして「水相1」を得たら、次に、低分子ポリエステルを合成する。具体的には、冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応容器内に、229重量部のビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物と、529重量部のビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物と、208重量部のテレフタル酸と、46重量部のアジピン酸と、2重量部のジブチルチンオキサイドとを入れる。そして、常圧、230[℃]の条件下で8時間反応させた。次いで、10〜15[mmHg]の減圧下で5時間反応させた後、反応容器内に44重量部の無水トリメリット酸を入れて、常圧、180[℃]の条件下で2時間反応させて「低分子ポリエステル1」を合成した。得られた「低分子ポリエステル1」のガラス転移温度(Tg)は45[℃]であり、重量平均分子量(Mw)は5800であり、数平均分子量は2600であり、酸価は24[mgKOH/g]であった。
【0103】
次に、ポリエステルプレポリマーを合成する。具体的には、冷却管、撹拌機、及び窒素導入管の付いた反応容器内に、682重量部のビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物と、81重量部のビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物と、283重量部のテレフタル酸と、22重量部の無水トリメリット酸と、2重量部のジブチルチンオキサイドとを入れる。そして、常圧、230[℃]の条件下で8時間反応させた後、10〜15[mmHg]の減圧下で5時間反応させて、「中間体ポリエステル1」を合成した。得られた「中間体ポリエステル1」は、数平均分子量が2100であり、重量平均分子量が9500であり、ガラス転移温度(Tg)が55[℃]であり、酸価が0.5[mgKOH/g]であり、且つ水酸基価が51[mgKOH/g]であった。
【0104】
この「中間体ポリエステル1」を基にして、「プレポリマー1」を得る。具体的には、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器内に、410重量部の「中間体ポリエステル1」と、89重量部のイソホロンジイソシアネートと、500重量部の酢酸エチルとを入れ、100[℃]の環境下で5時間反応させて「プレポリマー1」を得た。得られた「プレポリマー1」の遊離イソシアネート率は、1.74[重量%]であった。
【0105】
次に、ケチミンを合成する。具体的には、撹拌棒及び温度計の付いた反応容器内に、170重量部のイソホロンジアミンと、75重量部のメチルエチルケトンとを入れて、50[℃]で5時間反応を行って「ケチミン化合物1」を合成した。得られた「ケチミン化合物1」のアミン価は418であった。
【0106】
次に、マスターバッチ(MB)を調製する。具体的には、1200重量部の水と、540重量部のカーボンブラック(PBk−7:Printex60、デグサ社製、DBP吸油量=114ml/100mg、pH=10)と、1200重量部のポリエステル樹脂(三洋化成工業社製、RS801)とを、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合する。得られた混合物を、2本ロールを用いて150[℃]の環境下で30分間混練後、圧延冷却し、パルペライザーで粉砕してマスターバッチを得た。これを「マスターバッチ1」とする。
【0107】
次いで、油相を調製する。具体的には、撹拌棒及び温度計の付いた反応容器内に、300重量部の「低分子ポリエステル1」と、90重量部のカルナウバワックスと、10重量部のライスワックスと、1000重量部の酢酸エチルとを入れる。そして、撹拌しながら79[℃]で溶解させた後、一気に4[℃]まで急冷する。更に、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1[kg/hr]、ディスク周速度6[m/秒]の条件で、0.5[mm]のジルコニアビーズを80体積%の割合で充填し、3パスの条件で分散を行い、体積平均粒径0.6[μm]のワックス分散液を得る。このワックス分散液に、500重量部の「マスターバッチ1」と、640重量部の「低分子ポリエステル1」の70重量%酢酸エチル溶液とを加え、10時間混合した後に、先と同じビーズミルで5パスし、酢酸エチルを加えて固形分濃度50重量%に調整して「油相1」を得る。
【0108】
この「油相1」を用いて、重合トナーを作製する。具体的には、73.2重量部の「油相1」と、6.8重量部の「プレポリマー1」と、0.48重量部の「ケチミン化合物1」とを容器内に入れる。そして、充分に混合して得た「乳化油相1」に120重量部の「水相1」を加え、ホモミキサーで1分間混合した後、パドルで1時間ゆっくり攪拌しながら収斂させて、「乳化スラリー1」を得る。得られた「乳化スラリー1」を、30[℃]で1時間脱溶剤し、更に60[℃]で5時間熟成して水洗浄、濾過、乾燥を行う。その後、目開き75[μm]メッシュで篩いにかけて、体積平均粒径6.1[μm]、個数平均粒径5.4[μm]、平均円形度0.972のトナー母体粒子を作製する。次に、100重量部のトナー母体粒子に、0.7重量部の疎水性シリカ(シリカR972、日本アエロジル社製)と、0.3重量部の疎水化酸化チタン(MT−150A、テイカ社製)とをヘンシェルミキサーで混合して、「トナー3」を作製する。
【0109】
[キャリアの第1製造例]
シリコーン樹脂(SR2411 東レ・ダウコーニング社製)にカーボン(樹脂固形分に対して10%)を分散させ、さらに固形分換算で5[%]に希釈してシリコーン樹脂溶液を得た。キャリア芯材粒子は、実施形態に係るキャリア粒子製造方法により、Mnフェライト、バインダー及び分散液、消泡剤を入れてスラリーとし、このスラリー液を液滴化し単分散な一次造粒物を得た。粒子化は連続8時間実施したが、ノズル閉塞に起因する中断などは全く見られず、安定した粒子化が可能であった。このときの粒子形状は真球であり、重量基準平均粒径が22.7[μm]、D4/Dn=1.03であった。この一次造粒物をロータリーキルンによりバインダー等の添加物を700[℃]で分解除去した。さらに、電気炉を用いて、酸素濃度0.05[%]以下、焼成温度1300[℃]で5時間焼成してキャリア芯材粒子を得た。このキャリア芯材粒子の重量基準平均粒径は19.7[μm]であった。また、D4/Dn=1.03、嵩比重=2.50[g/cm]、1000[Oe]の磁化=60[emu/g]であった。
【0110】
次に、流動床型コーティング装置を用いて、キャリア芯材粒子の表面に、シリコーン樹脂溶液を、90[℃]の雰囲気下で30[g/min]の割合で塗布した。その後、230[℃]で2時間加熱してコートキャリアを形成し、電気抵抗LogR=11.9[Ωcm]、コートキャリアの膜厚0.20[μm]、真比重5.1[g/cm]のキャリアAを得た。膜厚はコート液量により調整した。
【0111】
[キャリアの第2製造例]
キャリア芯材粒子の重量基準平均粒径を24.7[μm]にした点の他は、第1製造例と同様にして、キャリアBを得た。この場合も、ノズル閉塞現象は全く見られず、連続8時間安定して造粒することが可能であった。
【0112】
[キャリアの第3製造例]
キャリア芯材粒子の重量基準平均粒径を32.7[μm]にした点の他は、第1製造例と同様にして、キャリアCを得た。この場合も、ノズル閉塞現象は全く見られず、連続8時間安定して造粒することが可能であった。
【0113】
[キャリアの第4製造例]
キャリアの芯材組成をMnMgSrにした点の他は、第1製造例と同様にしてキャリアDを得た。この場合も、ノズル閉塞現象は全く見られず、連続8時間安定して造粒することが可能であった。
【0114】
[キャリアの第5製造例]
キャリアの芯材組成をCuZnフェライトにした点の他は、第1製造例と同様にしてキャリアEを得た。この場合も、ノズル閉塞現象は全く見られず、連続8時間安定して造粒することが可能であった。
【0115】
[キャリアの第6製造例]
キャリアの芯材組成をマグネタイトにした点の他は、第1製造例と同様にsいてキャリアFを得た。この場合も、ノズル閉塞現象は全く見られず、連続8時間安定して造粒することが可能であった。
【0116】
[キャリアの第7製造例]
コートキャリアにアミノシランを含有させた点の他は、第1製造例と同様にしてキャリアGを得た。この場合も、ノズル閉塞現象は全く見られず、連続8時間安定して造粒することが可能であった。
【0117】
[キャリアの比較製造例]
キャリア芯剤粒子として、Mnフェライト、バインダー及び分散液、消泡剤を入れてスラリーとし、このスラリー液を液滴化したものを、上述した従来の粒子製造装置にセットして一次造粒物を得た。造粒物を得ることは可能ではあるものの、長くてもせいぜい1時間程度でノズル開口部に磁性粒子が凝集することとなり、ノズル閉塞の度に一度装置を止め、ノズル部を分解洗浄しなければ継続して造粒物を得ることが出来なかった。結局6時間の造粒を行うために、計11回の分解洗浄を必要とすることとなったため、作業開始から終了までに13時間かかった。ノズル部の分解洗浄を繰り返し実施してキャリアHを得た。得られた粒子形状は真球であり、重量基準平均粒径が19.9[μm]、D4/Dnは分級処理を実施した後で1.03であった。
【0118】
キャリアA〜Hのキャリア芯材特性及びコートキャリアの特性を次の表1に示す。
【表1】

【0119】
本発明者らは、トナーの第1製造例〜第3製造例で作製したトナー1〜3と、キャリアの第1製造例〜第7製造例で作製したキャリアA〜Gとを用いて、複数種類の現像剤を作製した。そして、それぞれの現像剤を用いて画像形成を行い、画像品質の確認、及び信頼性の試験を行った。なお、画像はイマジオカラー4000(リコー製デジタルカラー複写機・プリンター複合機)を使用した。
【0120】
プリント条件は次の通りである。
・現像ギャップ(感光体−現像スリーブ):0.35[mm]
・ドクターギャップ(現像スリーブ−ドクター):0.65[mm]
・感光体線速度:200[mm/sec]
・現像スリーブ線速度/感光体線速度:1.80
・書き込み密度:600dpi
・感光体の一様帯電電位(Vd):−600[V]
・画像部(べた原稿)にあたる部分の露光後の電位(Vl):−150[V]
・現像バイアス:DC−500[V]/交流バイアス成分:2[kHz]、−100〜−900[V]、50[%duty]
【0121】
画像品質の評価は、転写紙上で実施した。但し、キャリア付着は現像後転写前の状態を感光体上から粘着テープに転写して観察した。画像評価試験法を下記に示す。
(1)画像濃度
上記現像条件における、30mm×30mmのベタ部の中心を、X−Rite938分光測色濃度計で、5個所測定し、平均値を出した。
【0122】
(2)画像の均一性(粒状性)
「粒状度=exp(aL_b)∫(WS(f))1/2VTF(f)df」という式で定義された粒状度(明度範囲:50〜80)を測定し、その数値を下記のようにランクに置き換え、表示した(ランク10が最良)。
この式中の記号の意味は次の通りである。
・L:平均明度
・f:空間周波数(cycle/mm)
・WS(f):明度変動のパワースペクトラム
・VTF(f):視覚の空間周波数特性
・a、b:係数
また、ランク分けは次の通りである。
・ランク10:−0.10〜0
・ランク9:0〜0.05
・ランク8:0.05〜0.10
・ランク7:0.10〜0.15
・ランク6:0.15〜0.20
・ランク5:0.20〜0.25
・ランク4:0.25〜0.30
・ランク3:0.30〜0.40
・ランク2:0.40〜0.50
・ランク1:0.50以上
【0123】
(3)地汚れ
上述したプリント条件で得たプリント紙における地肌部の汚れを10段階で評価した。ランクが高いほど地汚れが少なく、ランク10が最良であるものとする。
(評価方法)
転写紙上の地肌部(非画像部)に付着しているトナーの個数を数え、1[cm]当たりの付着個数に換算して、地汚れランクとした。各ランクとトナー付着数(個/1cm)は次のとおりである。
・ランク10 :0〜36
・ランク9 :37〜72
・ランク8 :73〜108
・ランク7 :109〜144
・ランク6 :145〜180
・ランク5 :181〜216
・ランク4 :217〜252
・ランク3 :253〜288
・ランク2 :289〜324
・ランク1 :325以上
【0124】
(4)キャリア付着
キャリア付着が発生すると、感光体ドラムや定着ローラの傷の原因となり、画像品質の低下を招く。キャリア付着しても一部のキャリアしか紙に転写してこないため、感光体ドラム上から粘着テープで転写して評価した。
(評価方法)
副走査方向に2ドットライン(100lpi/inch)の画像パターンを作製し、直流バイアス400[V]を印加して現像し、2ドットラインのライン間に付着したキャリアの個数(面積100cm)を、以下のようにランクで置き換えて表示した。ランク10が最良であるものとする。
・ランク10 :0
・ランク9 :10個未満
・ランク8 :11〜20個
・ランク7 :21〜30個
・ランク6 :31〜50個
・ランク5 :51〜100個
・ランク4 :101〜300個
・ランク3 :301〜600個
・ランク2 :601〜1000個
・ランク1 :1000個以上
【0125】
(5)クリーニング不良
A4サイズの全面黒ベタ画像を10枚連続で出力し、11枚目に全面白の画像をとった時の転写紙上でのクリーニング不良の有無を確認する。
(6)現像剤汲み上げ量
現像スリーブ上での1[cm]当りの現像剤汲み上げ量を測定した。
【0126】
〔第1実験例〕
キャリアA(100部)に対して、トナー3(6.55部)を加えて、ボールミルで20分攪拌して、6.54[wt%]の現像剤を作製した。キャリアに対するトナーの被覆率は50[%]であり、トナー帯電量は、−32[μc/g]であった。次に、前記現像条件のリコー製イマジオカラー4000を使用し、上述した測定評価方法により、画像品質の確認を行ったところ、画像濃度は1.64、粒状性のランクは8、地汚れはランク9、キャリア付着はランク10であり、実用上優れた特性評価が得られた。続いて、上述したクリーニング試験を実施すると、クリーニング不良がわずかに見られたが許容範囲であった。さらに、画像面積率6[%]の文字画像チャートで10万枚のランニング評価を行った。10万枚ランニング後に、地汚れを確認したところ、地汚れはランク9と良好なレベルであり、粒状性もランク8と初期と同じ値であり、高画質が維持されていた。
【0127】
〔第2実験例〕〜〔第9実験例〕
トナーとキャリアの組み合わせを変えて、被覆率50[%]の現像剤を作製し、第1実験例と全く同様にして測定及び評価を行った。
【0128】
第1実験例〜第9実験例の測定結果及び評価結果を次の表2に示す。
【表2】

【0129】
この表2に示すように、第1実験例〜第9実験例においては、実用上十分な画像品質が得られ、クリーニング試験による結果も実用上良好であった。また、10万枚ランニング後も長時間高画質が維持されることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】実施形態に係るキャリア粒子製造方法に用いる粒子製造装置示す概略構成図。
【図2】同粒子製造装置の液滴噴射ノズルを示す拡大構成図。
【図3】同液滴噴射ノズルの薄膜を示す拡大平面図。
【図4】ステップ型の振動発生部を示す拡大構成図。
【図5】エクスポネンシャル型の振動発生部を示す拡大構成図。
【図6】コニカル型の振動発生部を示す拡大構成図。
【図7】振動している薄膜を示す模式図。
【図8】振動する薄膜の変位量と薄膜の位置との関係を示すグラフ。
【図9】複数支点で振動する薄膜の薄膜の変位量と薄膜の位置との関係の第1例を示すグラフ。
【図10】同関係の第2例を示すグラフ。
【図11】中心に凸部を設けた薄膜を示す模式図。
【図12】液滴噴射ノズルの第1変形例を示す拡大構成図。
【図13】液滴噴射ノズルの第2変形例を示す拡大構成図。
【図14】液滴噴射ノズルの第3変形例を示す拡大構成図。
【図15】同第3変形例の噴射ユニット列を示す拡大構成図。
【符号の説明】
【0131】
2:原料液タンク(液供給手段の一部)
11:液収容部(液供給手段の一部)
13:薄膜
13a:吐出孔
20:振動発生部
21:起振部(振動発生手段)
25:増振部(振動増幅手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吐出孔が形成された薄膜と、振動を発生させる振動発生手段と、該振動発生手段によって発せられた振動を増幅し、且つ振動を付与対象物に付与するための振動付与面を該薄膜に対向させるように配設された振動増幅手段と、該振動付与面と該薄膜との間にキャリア芯材組成液を供給する液供給手段とを用い、該振動付与面の振動を、キャリア芯材組成液を介して可撓性の該薄膜に伝えることで該薄膜を膜厚方向に往復で繰り返し撓ませるように振動させながら、該振動付与面と該薄膜との間に介在するキャリア芯材組成液の液圧をその振動に伴って変化させることで、上記吐出孔から液滴を周期的に放出させる周期的液滴化工程と、該周期的液滴化工程で得られた液滴を固化させてキャリア芯材粒子を形成する粒子化工程とを実施することを特徴とするキャリア粒子製造方法。
【請求項2】
請求項1のキャリア粒子製造方法において、
上記振動増幅手段として、ホーン型の振動子を用いることを特徴とするキャリア粒子製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2のキャリア粒子製造方法において、
上記振動発生手段として、20[kHz]以上、2.0[MHz]未満の周波数の振動を発生させるもの、を用いることを特徴とするキャリア粒子製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかのキャリア粒子製造方法において、
上記複数の吐出孔を、上記薄膜の全領域のうち、上記振動増幅手段から伝達される音圧の変位量が10[kPa]以上、500[kPa]以下になる領域に設けたことを特徴とするキャリア粒子製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかのキャリア粒子製造方法において、
上記複数の吐出孔を、上記薄膜の全領域のうち、振動による変位量が最大になる箇所から、該箇所に対する変位量の割合が50[%]以上になる箇所にかけての領域に設けたことを特徴とするキャリア粒子製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかのキャリア粒子製造方法において、
上記粒子化工程で得られたキャリア芯材粒子に対して、樹脂層を被覆する被覆処理を施す被覆処理工程を実施することを特徴とするキャリア粒子製造方法。
【請求項7】
トナー粒子とキャリア粒子とを含有する現像剤に用いられるキャリア粒子の集合からなるキャリア粉体であって、
請求項1乃至6の何れかのキャリア粒子製造方法によって製造されたキャリア粒子の集合からなることを特徴とするキャリア粉体。
【請求項8】
請求項7のキャリア粉体であって、
重量基準平均径(D4)と個数基準平均粒径(Dn)との比(D4/Dn)が1.00〜1.15の範囲であることを特徴とするキャリア粉体。
【請求項9】
請求項7又は8のキャリア粉体であって、
重量基準平均径(D4)が15〜35[μm]であることを特徴とするキャリア粉体。
【請求項10】
請求項7乃至9の何れかのキャリア粉体であって、
嵩密度が、2.15〜2.70[g/cm]の範囲内であり、且つ1000エルステッドの磁界を印加したときにおけるキャリア粒子の磁化が40〜150[emu/g]の範囲内であることを特徴とするキャリア粉体。
【請求項11】
請求項7乃至10の何れかのキャリア粉体であって、
キャリア粒子の母材としてMnフェライトが用いられていることを特徴とするキャリア粉体。
【請求項12】
請求項7乃至10の何れかのキャリア粉体であって、
キャリア粒子の母材としてMnMgSrフェライトが用いられていることを特徴とするキャリア粉体。
【請求項13】
請求項7乃至10の何れかのキャリア粉体であって、
キャリア粒子の母材としてマグネタイトが用いられていることを特徴とするキャリア粉体。
【請求項14】
請求項7乃至13の何れかのキャリア粉体であって、
キャリア粒子の表面がシリコーン樹脂で被覆されていることを特徴とするキャリア粉体。
【請求項15】
請求項7乃至14の何れかのキャリア粉体であって、
キャリア粒子の表面がアミノシランカップリング剤を含有する樹脂で被覆されていることを特徴とするキャリア粉体。
【請求項16】
トナー粉体とキャリア粉体との混合によって得られる現像剤において、
キャリア粉体として、請求項7乃至15の何れかのものを用いたことを特徴とする現像剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2010−54719(P2010−54719A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218515(P2008−218515)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】