説明

キラル化合物、これらのキラル化合物を含むコレステリック液晶組成物及び強誘電性液晶組成物、並びにこれらの液晶組成物を含む液晶ディスプレイ

一般式(1):
【化1】


(式中、R及びRの少なくとも1つがキラル置換基であり、Kは単結合又はK1〜5と同じであることができ、K1〜5は環が少なくとも部分的に不飽和であることができる六員環系を表し、次の環との又は置換基R及びRのうちの1つとの連結の一部分を形成する2つの原子の間のこれらの環又は環系における原子の数は、各々の場合において同じ原子から出発して時計回りの方向及び反時計回りの方向に計測した場合に2つ以上異ならず、X1〜20はアルキル基、又はアルコキシ基、又はフッ素化アルキル基、又はフッ素化アルコキシ基、又はH原子、又はハロゲン原子を表す)のキラル液晶化合物、このようなキラル液晶化合物を含む混合物、及び有効成分としてこのような混合物を含む液晶ディスプレイ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キラル化合物、強誘電性液晶組成物、及びこのような強誘電性液晶組成物を含む機械的にかつ衝撃に安定な強誘電性液晶ディスプレイ(LCD)、並びにコレステリック液晶組成物、及びこのようなコレステリック液晶組成物を含む、パッシブマトリクス(静的若しくは多重化)又はアクティブマトリクス(TFT)アドレス指定による高速スイッチング、低作動電圧及び単安定(monostable)又は双安定(bistable)のコレステリックLCDに関する。
【背景技術】
【0002】
強誘電性及び他のキラル液晶化合物は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14及び特許文献15に開示されている。
【0003】
しかしながら、従来技術の化合物は、上で言及されるような強誘電性及びコレステリック液晶ディスプレイにおける用途に関して、まだ十分に満足のいくものではなく、全ての要求を満たしている訳ではない。特に、衝撃に安定な強誘電性液晶ディスプレイ、及び同時に高速スイッチング、低作動電圧、単安定又は双安定のキラルネマティックLCDの製造を可能とする化合物が必要とされている。本発明との関連では、「コレステリック」及び「キラルネマティック」という記載は同意義とみなされると理解される。
【0004】
特許文献10において、ネマティック液晶混合物の成分として使用することができる数種類の非キラルなフッ素含有4,4−ビス−(シクロヘキシル)−ビフェニル誘導体が開示されている(実施例3〜実施例5)。R又はR2が分岐している(それ故にキラルの)場合があることが言及されているが、このようなキラル化合物、これらの特性、及びこれらに基づく液晶混合物の特性についての情報は存在しない。これらの化合物を、
−コレステリック相の広い温度範囲(−30℃から100℃まで)、良好な動的パラメータ(5ms又は10ms未満のレスポンス時間を含む)、低いしきい値電圧及び飽和電圧(20V未満)、電気光学曲線の良好なシャープネス、並びに双安定テクスチャの良好な機械的、熱的及び長期的安定性を有するコレステリック液晶混合物、並びに
−種々の値の光学異方性(Δn)及び自発分極、並びに強誘電性相の広い温度範囲を有する強誘電性液晶混合物、又は種々の値の螺旋ピッチ及び光学異方性(Δn)、正の若しくは負の誘電異方性(Δε)、所要の値の弾性定数(特にK22)、並びにコレステリック相の広い温度範囲を有するキラルネマティック混合物
の調製に使用することができないことは、特許文献10の記載から明らかである。
【0005】
特許文献10の化合物及び液晶混合物では、配向材料と組み合わせて、低作動電圧及び高コントラスト比を有する衝撃に安定な強誘電性液晶ディスプレイ(LCD)、又は高速スイッチング、低作動電圧、単安定若しくは双安定のキラルネマティックLCDを作り出すことは可能とならない。
【0006】
最後に、特許文献10のキラル化合物は、現実的には実際の用途に使用することができない。このような化合物に至るまでの合成経路は、本発明の化合物及び特許文献10の非キラル化合物と対照的に多段式であり、これらの化合物の最終的な収率は非常に低い。さらに、出発材料:キラルな4−アルキルシクロヘキサノン、グリニャール試薬等は調製するのが非常に困難であることに留意すべきである。
【0007】
特許文献11では、数種類のキラルなフッ素含有テルフェニル、及び非キラルなクアテルフェニルのみが開示されており、これらの化合物は強誘電性液晶混合物の成分として使用することができる(実施例12及び実施例13、並びに実施例14〜実施例24を参照されたい)。キラルなクアテルフェニル、これらの特性、及びこれらに基づく液晶混合物の特性についての情報は存在しない。
【0008】
特許文献12及び特許文献1では、乳酸誘導体及びキラルなシクロヘキシル誘導体が開示されており、これらは式(1)の化合物と異なっており、狭い温度範囲においてしか液晶相を形成せず、
−コレステリック相の広い有効な温度範囲(−30℃から100℃まで)、良好な動的パラメータ(5ms又は10ms未満のレスポンス時間を含む)、低いしきい値電圧及び飽和電圧(20V未満)、電気光学曲線の良好なシャープネス、並びに双安定テクスチャの良好な機械的、熱的及び長期的安定性を有するコレステリック液晶混合物、並びに
−種々の値の光学異方性(Δn)及び自発分極、並びに強誘電性相の広い温度範囲を有する強誘電性液晶混合物、又は種々の値の螺旋ピッチ及び光学異方性(Δn)、正の若しくは負の誘電異方性(Δε)、所要の値の弾性定数(特にK22)、並びにコレステリック相の広い温度範囲を有するキラルネマティック混合物
の調製のためにこれらを使用することを可能とする特性を有しない。
【0009】
特許文献12及び特許文献1の化合物及び液晶混合物では、配向材料と組み合わせて、低作動電圧及び高コントラスト比を有する衝撃に安定な本発明の強誘電性液晶ディスプレイ(LCD)、又は高速スイッチング、低作動電圧、単安定若しくは双安定のキラルネマティックLCDを作り出すことは可能とならない。
【0010】
同様に、特許文献7、特許文献8、特許文献3、特許文献5、特許文献4、特許文献13及び特許文献14では、キラルなテルフェニル、2,5−ジフェニル−ピリジン、及び他の化合物が開示されており、これらは一般式(1)に該当しない。
【0011】
先に記載された4−ペンチル−3’’−クロロ−4’’’−(2−メチルブチルオキシ)クアテルフェニルは、高温及び狭い温度範囲においてSm C相を形成し、低い自発分極を有し、このことにより、低作動電圧、高コントラスト比、及びSm C相の広い温度範囲を有する衝撃に安定な強誘電性液晶ディスプレイ(LCD)の調製のためにこの化合物を使用することが可能とならない。
【0012】
上述した理由のために、そこで記載された4−デシルオキシ−3’’−メチル−4’’’−クアテルフェニルカルボン酸のキラルエステルを、低作動電圧、高コントラスト比、及びSm C相の広い温度範囲を有する衝撃に安定な強誘電性液晶ディスプレイ(LCD)の調製のために使用することができない。これらの化合物はSm C相を形成しない。さらに、これらの化合物までの合成経路は、本発明の化合物をもたらす合成経路と対照的に多段式であり、中間体4−デシルオキシ−3’’−メチル−4’’’−クアテルフェニルカルボン酸及び最終生成物の調製及び精製は、実行するのが難しい。
【0013】
特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献7、特許文献13、特許文献14及び特許文献15のキラル化合物は、式(I)の化合物とは反対に、分子のこのような堅固なロッド形状の中心コアを有さず、10℃から154℃までの温度範囲全体においてスメクティックC相を形成する訳ではないことに留意すべきである。これらの化合物は、分子の断片の立体配座(conformation)変化、及びこれらの変化の温度、圧力等に対する強い依存性を特徴としており、このことにより、低作動電圧及び高コントラスト比を有する、衝撃に安定な強誘電性LCD、又は単安定若しくは双安定のキラルネマティックLCDの調製のためにこれらを使用することが可能とならない。
【0014】
低い電力消費、高速のレスポンス時間、及び画素の双安定性は、デバイスが電界の非存在下で2つ以上の安定状態を有する場合、LCDにとってさらに望ましい特質である。双安定のキラルネマティックデバイス、例えば特許文献16及び特許文献17に記載されるものは、ライン毎に駆動することができ、一度表示されると、スクリーンの残りを更新しながら情報が格納され、単純マトリクスアドレス指定が利用され得る。
【0015】
しかしながら、既知のキラル化合物では、コレステリック相の広い有効な温度範囲(−30℃から100℃まで)、良好な動的パラメータ(5ms又は10ms未満のレスポンス時間を含む)、低いしきい値電圧及び飽和電圧(20V未満)、電気光学曲線の良好なシャープネス、並びに双安定テクスチャの良好な機械的、熱的及び長期的安定性を有する液晶混合物を得ることは可能とならない。
【0016】
強誘電性液晶(FLC)も、将来のディスプレイデバイスにおける有効な材料に関して興味深い候補である。FLCは高速レスポンス、広い視野角、及び双安定の記憶機能を示し、光シャッター及びディスプレイの用途のために検討されている。強誘電性液晶ディスプレイ(FLCD)は、高速作動、面内(in-plane)スイッチング及び超高解像度を特徴とする。
【0017】
しかしながら、ジグザグ欠陥、機械的安定性及びDC電圧平衡に関する技術的な問題が、依然としてFLCDが広範に適用されることを妨げている。ジグザグ欠陥はデバイスの電気光学(EO)特性を損なう傾向があり、機械的にかつ衝撃に敏感なFLC配向及び残留電圧が、長期的安定性に関する懸念を引き起こす。ディスプレイの記憶機能及びコントラスト比を悪化させるジグザグ欠陥の出現のために、欠陥のないFLCDを作製することは困難である(非特許文献1)。
【0018】
高い駆動電圧(20Vから40Vまで)、低いセルギャップ(2μm未満)、グレースケールがないこと、安定な室温材料及び温度範囲が広い材料の不足、並びに最適化されていないFLC材料及び配向状態により熱的ストレス及び機械的ストレスから生じるディスプレイセルにおける構造的欠陥を含む、FLCDによる他の問題が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】国際公開第96/00710号
【特許文献2】欧州特許出願公開第0 339 414号
【特許文献3】欧州特許出願公開第0 360 042号
【特許文献4】欧州特許出願公開第0 306 195号
【特許文献5】英国特許出願公開第2 200 912号
【特許文献6】米国特許第7,022,259号
【特許文献7】米国特許第5,494,605号
【特許文献8】米国特許第5,382,380号
【特許文献9】米国特許第5,250,222号
【特許文献10】米国特許第4,419,264号
【特許文献11】国際公開第89/02425号
【特許文献12】欧州特許出願公開第0 329 153号
【特許文献13】米国特許第5,486,309号
【特許文献14】米国特許第5,358,663号
【特許文献15】米国特許第4,780,241号
【特許文献16】米国特許第6,928,271号
【特許文献17】国際公開第2004/104980号
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】S. T. Lagerwall, Ferroelectric and Antiferroelectric Liquid Crystals, Wiley-VCH, Weinheim and New York, 1999
【発明の概要】
【0021】
本発明は、結晶相からスメクティックB相若しくはC相若しくはA相又はコレステリック相までの低い温度での転移を示し、広い温度範囲にわたり液晶スメクティック相及びキラルネマティック(=コレステリック)相を示すキラル化合物を提供することにより、従来技術の問題を克服する。これらの化合物は分子の堅固なロッド形状の中心コアを有し、分子の断片の立体配座変化の温度、圧力等に対する依存性の弱さを特徴とし、このことにより、低作動電圧及び高コントラスト比を有する、衝撃に安定な強誘電性LCD、又は単安定若しくは双安定のキラルネマティックLCDの調製のためにこれらを使用することが可能となる。
【0022】
広い温度範囲にわたり及び低い温度でコレステリック相又はスメクティックC相を形成する、コレステリック及び強誘電性液晶混合物を提供することが本発明の別の目的である。
【0023】
本発明のさらなる目的は、広範な温度にわたり及び既に非常に低い温度で作動させることができる、高速スイッチング、低作動電圧、単安定又は双安定のコレステリック液晶ディスプレイ、及び衝撃に安定な強誘電性液晶ディスプレイを提供することである。
【0024】
これらの目的は、一般式(1):
【0025】
【化1】

【0026】
(式中、
=Y−(CH−(O)−(CH−(O)−(CH−、又は
Y−(CH−CH=CH−(CH−(O),−、又は
Y−(CH−CHY−(O)−(CH−(O)−CHY−(CH−Y、又は
Y−(CH−CHY−(O)−(CH−(O)−(CH−Y、又は
フッ素化アルキル基若しくはフッ素化アルコキシ基(該フッ素化アルキル基若しくは該フッ素化アルコキシ基は1個〜20個の炭素原子を有する)であり、
=Y−(CH−CHY−(O)−(CH−(O)−CHY−(CH−Y、又は
−(CH−(O)−(CH−(O)−CHY−(CH−Yであり、
Yは、各記載において(in each occurrence)及び互いに独立して、H原子、F原子及びCl原子のうちの1つ、又は−CN基、−S−CN基、−O−CF基、−CF基、−CO−CH基、−C2i+1基、−O−C2i+1基、−CO−O−C2i+1基若しくは−O−CO−C2i+1基のうちの1つを表し、
、Yは、各記載において及び互いに独立して、F原子及びCl原子のうちの1つ、又は−CN基、−CF基、−C2j+1基、−O−C2j+1基、−CO−O−C2j+1基、−O−CO−C2j+1基のうちの1つ、又は非同時にH原子、又はRがキラル置換基である場合同時にH原子を表し、
は、各記載において及び互いに独立して、単結合又は−O−原子のうちの1つを表し、
、Yは、各記載において及び互いに独立して、F原子、Cl原子のうちの1つ、又は−CN基、−CF基、−C2h+1基、−O−C2h+1基、−CO−O−C2h+1基、−O−CO−C2h+1基のうちの1つ、又は非同時にH原子、又はRがキラル置換基である場合同時にH原子を表し、
n、p、k、j、i、hは各々、n、p、k、j、i及びhの各々に関して独立して0〜7の値をとり、
m、lは独立して0又は1を表し、l=m=0である場合i+k+n+pは少なくとも6であり、
ただし、Y、Y、Y、Y、Y、Y、h、i、j、k、l、m、n及びpは、R及びRの少なくとも1つが少なくとも1つのキラル中心を有するキラル置換基であるように選択され、
Kは、単結合、又はシクロヘキサン、シクロヘキセン、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、テトラジン、1,3,2−ジオキサボリナン、ヘキサヒドロピリジン、ヘキサヒドロピリミジン、ヘキサヒドロピリダジン、ヘキサヒドロピラジン、ヘキサヒドロトリアジン、テトラヒドロオキサジン、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘプタン環及びシクロオクタン環の異性体からなる群から、並びにこれらの環化合物のいずれかから誘導される少なくとも部分的に不飽和の環化合物から選択される六員環系を表し、次の環との又は置換基Rとの化学結合の一部分を形成する2つの原子の間のこれらの環又は環系における原子の数は、各々の場合において同じ原子から出発して時計回りの方向に計測した場合及び反時計回りの方向に計測した場合に2つ以上異ならず、
A、Aは0又は1の値をとり、Kが単結合である場合A及びAのうちの1つだけが0であり、
1〜5は各々、互いに独立して、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、テトラジン、1,3,2−ジオキサボリナン、ヘキサヒドロピリジン、ヘキサヒドロピリミジン、ヘキサヒドロピリダジン、ヘキサヒドロピラジン、ヘキサヒドロトリアジン、テトラヒドロオキサジンの異性体から、及びこれらの環化合物のいずれかから誘導される少なくとも部分的に不飽和の環化合物からなる群から選択される六員環系を表し、
1〜20は、互いに独立して、アルキル基、又はアルコキシ基、又はフッ素化アルキル基、又はフッ素化アルコキシ基、又はH原子、又はハロゲン原子のうちの1つ、又は各々の場合において互いに独立して1個〜20個の炭素原子を有するアルキル基、アルコキシ基、フッ素化アルキル基及びフッ素化アルコキシ基のうちの1つを表し、
、K、K、K及びKからの環のうちの少なくとも3つの連続する環は、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン及びテトラジンからなる環の群から互いに独立して選択される芳香環又はヘテロ芳香環であり、連続する環とは、1つの環Kの成員である1つの原子が隣接する環Kq−1又はKq+1(qは2〜4の整数である)の成員である1つの原子と直接結合することにより互いと直接結合した環を意味する)
の堅固な中心コア多環(polyring)キラル液晶化合物を提供することにより達成された。
【発明を実施するための形態】
【0027】
式1から除かれる(except)化合物は、無衝撃(shock-free)特性に関して性能がより低い(除かれる分子を含むLCDセルのコントラスト比が、幾何学的偏差に対するコントラスト比の著しい減少を示す)ことが見出された。
【0028】
本発明の別の好ましい実施形態では、六員環K及びK1〜5の1つ又は複数が、シクロブタン、オキセタンからなる群から選択される四員環からなる群から、シクロペンタン、シクロペンテン、ピロリドン、イミダゾリジン、テトラヒドロフランからなる群から、ジシクロペンタンから、ペルヒドロアズレンから選択される五員環から、シクロヘプタン、シクロヘプテン、オキセパン、ジオキセパン、アゼパン、ジアゼパンからなる群から選択される七員環から、並びにシクロオクタン、シクロオクテンからなる群から選択される八員環、及び少なくとも1つの炭素原子が窒素原子又は酸素原子により置換された複素八員環から、並びに以上で言及されたこれらの環化合物のいずれかから誘導される少なくとも部分的に不飽和の環化合物から選択される環系により置き換えられていてもよく、次の環との又は置換基R及びRのうちの1つとの連結の一部分を形成する2つの原子の間のこれらの環又は環系における原子の数は、各々の場合において同じ原子から出発して時計回りの方向に及び反時計回りの方向に計測した場合に2つ以上異ならない。この好ましい実施形態では、置換基Xは、4個〜8個の環原子を有する各々の環における置換基の数が、少なくとも1つの置換基を保有することができ、隣接する環と直接又は連結基を介して結合していない上記環における原子の数に対して調整されるように選択される。
【0029】
環K及びK〜Kの少なくとも1つにおける少なくとも1つの環原子が置換基(水素原子以外の任意の原子又は原子の群)を保有することがさらに好ましい。
【0030】
好ましくは、六員環は1位、4位において連結しており、式(1)の化合物は以下に示される式1.1〜式1.7及び式1.14〜式1.17のうちの1つにより表される:
【0031】
【化2】

【0032】
【化3】

【0033】
式中、置換基X〜X20は上記式1の説明において規定される通りである。
【0034】
本発明によるコレステリック(すなわちキラルネマティック)液晶混合物は少なくとも2つの液晶化合物を含有し、それらのうち少なくとも1つが上記一般式(1)の化合物であり、必要に応じて、それらのうちの1つ又はそれらのうちの2つ以上が非キラル又は非コレステリック液晶化合物である。
【0035】
上記で説明されたように、本発明の基礎となる実験において、式(1)により表されない分子は、無衝撃特性に関して、上記少なくとも1つの非キラル又は非コレステリック液晶化合物と組み合わせると、性能がより低いことが判明した。
【0036】
本発明による強誘電性液晶混合物は少なくとも2つの液晶化合物を含有し、それらのうちの少なくとも1つが上記一般式(1)の化合物であり、必要に応じて、それらのうちの1つ又はそれらのうちの2つ以上がキラル又は非キラルスメクティック液晶化合物である。
【0037】
式(1)であって、
=Y−(CH−(O)−(CH−(O)−(CH−であり、
nが3〜7の値をとり、
Kが単結合を表し、
A=1であり、
1〜5が、互いに独立して、ベンゼン環又はピリジン環又はピリミジン環を表し、
1〜20が、互いに独立して、−CH基、−C基、−O−CH基、−CF基及び−O−CF基のうちの1つ、又はH原子、F原子及びCl原子のうちの1つを表す、或いは
=Y−(CH−CHY−(O)−(CH−(O)−CHY−(CH−Yであり、
Kが単結合を表し、
A=1であり、Aが0又は1の値をとり、
1〜5が、互いに独立して、ベンゼン環又はピリジン環又はピリミジン環を表し、
1〜20が、−CH基若しくは−C基若しくは−O−CH基若しくは−CF基若しくは−O−CF基又はH原子若しくはF原子若しくはCl原子を表す、或いは
=Y−(CH−(O)−(CH−(O)−(CH−、又は
Y−(CH−CHY−(O)−(CH−(O)−CHY−(CH−Yであり、
Kが、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘプタン環及びシクロオクタン環のうちの1つを表し、
A=1、A=0であり、
1〜4が、ベンゼン環又はピリジン環又はピリミジン環を表し(K及びKがベンゼン環である場合を除く)、
1〜16が、互いに独立して、−CH基、−C基、−O−CH基、−CF基及び−O−CF基のうちの1つ、又はH原子、F原子及びCl原子のうちの1つを表す、或いは
=Y−(CH−(O)−(CH−(O)−(CH−であり、
nが3〜7の値をとり、
Kが単結合を表し、
A=1、A=0であり、
1〜5が、互いに独立して、ベンゼン環又はピリジン環又はピリミジン環を表し、
1〜16が、互いに独立して、H原子を表し、X1〜16の7つ以下がハロゲン原子又は−CH基又は−CF基である場合がある、或いは
式(1)における少なくとも3つの、より好ましくは少なくとも4つの連続する環が、隣接する環又は結合と1位及び4位において連結したフェニレン環である、或いは
がキラル置換基であり、Rが、6個〜25個の炭素原子、好ましくは7個〜24個の炭素原子、より好ましくは(preferred)8個〜23個の炭素原子、さらにより好ましくは9個〜22個の炭素原子、特に好ましくは10個〜21個の炭素原子を有する非キラルな直鎖又は分岐鎖のアルキル残基である、或いは
各々が1位及び4位において連結した4つ又は5つのフェニレン環が存在する、或いは
アルキル残基Rが、その炭素原子のうちの1つにより前記外側のフェニレン環とパラ位において直接連結した、或いは
連続する環の外側の環、すなわちそれぞれ置換基R−又はR−K−及びR−を保有する環が、2位、3位、5位及び6位に置換基を保有しない、或いは
g個の連続する環(該環をK、K、K、K、…、Kg−1と称する)において、任意の環K(fは0(この場合K=K)、1(この場合K=K)、2(この場合K=K)等からg−1(この場合K=Kg−1)までの値をとり得る)に関して、2つの環Kf1及びKf2(f2>f1)が2位、3位、5位又は6位において置換基を有する場合、2位、3位、5位又は6位において少なくとも1つの置換基も有しない環K(f2>f>f1)が存在しない、換言すれば、任意の2つの置換された環の間に非置換の環が存在しない、或いは
基における前記少なくとも1つのキラル中心が、1つのエーテル結合−O−、又は非キラルなアルキレン基−CY−、又は非キラルな式−O−CY−の基、又は式−CH−CY−の基、又は非キラルな式−CY−CH−の基、又は非キラルな式−O−CY−CH−の基により環K又は環Kから離れており、YがH、F、Cl、−CN、CF、−C2q+1、−O−C2q+1、−CO−O−C2q+1である場合があり、qが1〜11である場合がある、
式(1)の分子に関して、特に良好な結果が得られた。
【0038】
分子の選択においてこれらの好ましい条件の2つ以上を適用した場合に、特に改善された結果が得られた。
【0039】
本発明による液晶化合物は、合成スキーム1及び合成スキーム2により(accordingly to)、3,6−二置換シクロヘキサ−2−エノン若しくは2,5−二置換シクロヘキサノン(V.S.Bezborodov et al., Liquid Crystals, 23, 69-75 (1997); V.S.Bezborodov et al., Liquid Crystals, 28, 1755-1760 (2001))の五塩化リン、水素化ホウ素ナトリウム、(ジエチルアミノ)硫黄トリフルオリド(DAST)、他の化学的試薬との反応により、若しくはヨウ化メチルマグネシウムとのグリニャール反応及びその後の標準的な方法(V.S. Bezborodov et al., Mol. Cryst. Liq. Cryst., 299, 1 (1997))における調製した中間体の変換により、又は対応する置換ブロモ置換ビフェニル若しくはテルフェニル、若しくは置換ピリジン、若しくはピリミジンの対応するアリールボロン酸とのクロスカップリング(鈴木)反応(A. Suzuki, J. Organometallic Chem., 576, 147 (1999))により、合成された。
【0040】
【化4】

スキーム1
【0041】
【化5】

スキーム2
【0042】
本発明による多くの化合物が、従来技術において既知の化合物よりも、幾つかの用途に関してより良好なパラメータを示す。
【0043】
本発明による式(1)の液晶化合物により、種々の値の光学異方性(Δn)及び自発分極、並びに強誘電性相の広い温度範囲を有する新たな強誘電性LC混合物、又は種々の値の螺旋ピッチ及び光学異方性(Δn)、正の若しくは負の誘電異方性(Δε)、所要の値の弾性定数(特にK22)、並びにコレステリック相の広い温度範囲を有するキラルネマティック混合物を作り出すことが可能となる。これらの混合物により、配向材料と組み合わせて、低作動電圧及び高コントラスト比を有する衝撃に安定な新たな強誘電性液晶ディスプレイ(LCD)、又はパッシブマトリクス(静的若しくは多重化)若しくはアクティブマトリクス(TFT)アドレス指定による新たな様式(効果)の高速スイッチング、低作動電圧、単安定若しくは双安定のキラルネマティックLCDを作り出すことが可能となる。
【0044】
式1における少なくとも3つの、より好ましくは少なくとも4つの連続する環が、隣接する環又は結合と1位及び4位において連結したフェニレン環である場合に、特に良好な結果が得られた。1位及び4位において連結した厳密に4つのフェニレン環を有するこのような化合物(クアテルフェニル誘導体)が、特に好ましい。直接連続する、すなわち互いと隣接する4つのパラ−フェニレン環により、粘性と、スイッチング時間と、有用な温度範囲の幅との間に最良の折衷案(compromise)が得られることが見出された。残基のうちの1つRがキラル置換基であり、同時に他の残基Rが、6個〜25個の炭素原子、好ましくは8個〜23個の炭素原子、特に好ましくは9個〜22個の炭素原子を有する非キラルな直鎖又は分岐鎖(好ましくは直鎖)のアルキル置換基であることがさらに好ましい。特に、最良の結果を得るために、アルキル残基が、外側のフェニレン環とパラ位において直接連結していなければならない。この非対称的な置換は、LCDセルにおけるコントラスト比、及びまたスイッチング時間に及ぼす機械的圧力の影響の低さに関して非常に有望であることが判明した。
【実施例】
【0045】
本発明を、実施例1〜実施例48、及び表1〜表9に提示したデータにより、より詳細に説明する。
【0046】
しかしながら、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。これらの実施例において、「%」で測定される全ての量は、問題の物質の質量分率、すなわち混合物の質量に対するその物質の質量の比率である。「%」で記載される濃度は、溶液又は混合物中に存在する問題の溶質又は物質の質量(単位:g)と溶液又は混合物の100gの量との比率である。
【0047】
中間体1
6−(4−メトキシフェニル)−3−(trans−4−ヘプチル(hepty)シクロヘキシルフェニル)−シクロヘキサ−2−エン−1−オン
【0048】
【化6】

【0049】
1−(3−ジメチルアミノプロパノイル)−4−(trans−4−ヘプチルシクロヘキシルベンゼン)塩酸塩(0.167mol)、4−メトキシフェニルアセトン(0.17mol)、水酸化カリウム(0.51mol)及びジオキサン(250ml)の混合物を、撹拌しながら約5時間〜6時間還流し、室温まで冷却した後、硫酸の10%水溶液で処理した。生成物を酢酸エチルで2回抽出し、通常の手順の後で溶液をシリカゲルにより濾過し、溶媒を真空中で除去した。残留物をイソプロパノールから再結晶化した。
【0050】
中間体2
4−(trans−4−ヘプチルシクロヘキシル)−3’−クロロ−4’’−メトキシテルフェニル
【0051】
【化7】

【0052】
150mlのトルエン中における6−(4−メトキシフェニル)−3−(trans−4−ヘプチルシクロヘキシルフェニル)シクロヘキサ−2−エノン(中間体1、26.2mmol)の撹拌した溶液に、五塩化リン(39.3mmol)を添加した。反応混合物を撹拌しながら約5時間還流し、室温まで冷却した後、100mlの水を添加し、混合物をさらに1時間撹拌した。反応混合物を、水(約300ml)中に注ぎ、塩化メチレンで2回抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、シリカゲルにより濾過した。溶媒を除去した。得られた生成物を、さらなる精製を全く行わずに、さらなる変換のために使用した。
【0053】
中間体3
4−(trans−4−ヘプチルシクロヘキシル)−3’−クロロ−4’’−ヒドロキシテルフェニル
【0054】
【化8】

【0055】
4−(trans−4−ヘプチルシクロヘキシル)−3’−クロロ−4’’−メトキシテルフェニル(中間体2)を、100mlの酢酸及び5mlの59%ヨウ化水素酸水溶液と混合した。混合物を約12時間還流し、室温まで冷却し、水中に注いだ。生成物を塩化メチレンで2回抽出した。結合した有機層を、チオ硫酸ナトリウムの希釈溶液、水により洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を除去した後、生成物をトルエン−ヘプタン混合物から再結晶化した。
【0056】
中間体4
4−デシル−3’’−メチル−4’’’−メトキシクアテルフェニル
【0057】
【化9】

【0058】
80mlのTHF中における6−(4−メトキシフェニル)−3−(4−デシルビフェニル)シクロヘキサ−2−エノン(33mmol)の溶液を、撹拌しながら、1.6g(66mmol)のマグネシウムから調製したヨウ化メチルマグネシウムのエーテル溶液で処理した。反応混合物を、35℃で3時間撹拌し、その後終夜維持した。通常の酸処理の後、対応するジエンのエーテル溶液を得た。エーテルをその後蒸留により除去し、トルエンで置き換えた。対応する芳香族化合物への酸化のために、空気を還流下で5時間ジエン溶液に通過させた。室温まで冷却した後、溶液をシリカゲルにより濾過し、トルエンを真空中で蒸留により除去した。得られた生成物を、さらなる精製を全く行わずに、さらなる変換のために使用した。
【0059】
中間体5
4−デシル−3’’−メチル−4’’’−ヒドロキシクアテルフェニル
【0060】
【化10】

【0061】
4−デシル−3’’−メチル−4’’’−メトキシクアテルフェニル(中間体4)を、100mlの酢酸及び5mlの59%ヨウ化水素酸水溶液と混合した。混合物を12時間還流し、室温まで冷却し、水中に注いだ。生成物を塩化メチレンで2回抽出した。結合した有機層を、チオ硫酸ナトリウムの希釈溶液、水により洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を除去した後、生成物をトルエン−ヘプタン混合物から再結晶化した。
【0062】
実施例1. S−4−(trans−4−ヘプチルシクロヘキシル)−3’−クロロ−4’’−(1−メチルヘプチルオキシ)テルフェニル
【0063】
【化11】

【0064】
5℃〜10℃の温度で、20mlのTHF中における3’−クロロ−4’’−ヒドロキシ−4−(trans−4−ヘプチルシクロヘキシル)テルフェニル(中間体3)(3.26mmol)、R−2−オクタノール(3.76mmol)及びトリフェニルホスフィン(3.76mmol)の撹拌した混合物に、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(3.76mmol)を10分間〜15分間添加した。混合物を室温で終夜撹拌した。THFをその後真空中で蒸留により除去し、残留物をヘキサンで複数回洗浄して、所望の生成物を抽出した。生成物を酸化アルミニウムにおけるフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン−酢酸エチル、50:1)により精製し、その後2−プロパノールから結晶化した。収率は57%であった。
【0065】
実施例2. S−4−デシル−3’’−メチル−4’’’−(1−メチルペンチルオキシ)クアテルフェニル
【0066】
【化12】

【0067】
5℃〜10℃の温度で、25mlのTHF中における4−デシル−3’’−メチル−4’’’−ヒドロキシクアテルフェニル(中間体5)(4.41mmol)、R−2−ヘキサノール(5.01mmol)及びトリフェニルホスフィン(5.0mmol)の撹拌した混合物に、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(5.01mmol)を10分間〜15分間添加した。混合物を室温で終夜撹拌した。THFをその後真空中で蒸留により除去し、残留物をヘキサン−酢酸エチル(50:1)混合物で複数回洗浄して、所望の生成物を抽出した。生成物を酸化アルミニウムにおけるフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン−酢酸エチル50:1)により精製し、その後アセトンから結晶化した。収率は63%であった。
【0068】
実施例3. S−4−ノニル−3’−フルオロ−4’’’−(2−クロロプロピルオキシ)クアテルフェニル
【0069】
【化13】

【0070】
この化合物を、対応するヒドロキシクアテルフェニルのR−(−)−2−クロロプロパノールとの反応により合成した。収率は55%であった。
【0071】
同様の変換、並びにスキーム1及びスキーム2に提示される変換を使用して、以下の化合物を合成した。
【0072】
実施例4. ブチルS−2−[4−オクチル−2’−フルオロ−3’’−トリフルオロメチル−4’’’−クアテルフェニルオキシ]−プロピオネート
【0073】
【化14】

【0074】
実施例5. R−4−オクチル−3’’−クロロ−4’’’−(1−メチルヘキシルオキシ)クアテルフェニル
【0075】
【化15】

【0076】
実施例6.(比較(comparative)) R−4−(trans−4−ヘプチルシクロヘキシル)−3’−メトキシ−4’’−(1−トリフルオロメチルヘプチル−オキシカルボニル)テルフェニル
【0077】
【化16】

【0078】
実施例7.(比較) R−4−(4−ノニル−2−トリフルオロメチル)シクロヘキサ−1−エニル)−3’−クロロ−4’’−(1−メチルヘプチルオキシ)テルフェニル
【0079】
【化17】

【0080】
実施例8.(比較) S−2−[4−(2−フルオロヘキシルオキシ)ビフェニル−4’]−5−(trans−4−ヘキシルシクロヘキシル)−1−フルオロシクロヘキサ−1−エン
【0081】
【化18】

【0082】
実施例9. S−2−[2’−メチル−4’’−(1−メチルヘプチルオキシ)テルフェニル−4]−5−ヘプチルピリジン
【0083】
【化19】

【0084】
実施例10. S−2−[2−フルオロ−4’’−(1−メチルヘプチルオキシ)テルフェニル−4]−5−オクチルピリミジン
【0085】
【化20】

【0086】
これらの化合物並びに他のピリジン及びピリミジン誘導体を、置換ブロモ(ヨード)ピリジン又はピリミジンの対応するアリールボロン酸とのクロスカップリング反応により調製した。
【0087】
スキーム1及びスキーム2に提示される変換、並びにクロスカップリング反応を、以下の5つの環化合物の合成にも使用した。
【0088】
実施例11. S−4−ノニル−3’,2’’−ジフルオロ−3’’’−クロロ−4’’’’−(1−メチルヘプチルオキシ)ペンタフェニル
【0089】
【化21】

【0090】
実施例12.(比較) S−4−(trans−4−オクチルシクロヘキシル)−3,3’’−ジクロロ−4’’’−(1−メチルペンチルオキシ)−クアテルフェニル
【0091】
【化22】

【0092】
実施例13.(比較) S−2−[4−(1−メチルヘプチルオキシ)−3’−クロロテルフェニル−4’’]−5−(trans−4−ヘプチルシクロヘキシル)−1−トリフルオロメチルシクロヘキサ−1−エン
【0093】
【化23】

【0094】
実施例14. R−2−[2−フルオロ−4’’−(1−メチルヘプチルオキシ)テルフェニル−4]−5−オクチルピリミジン
【0095】
【化24】

【0096】
対応する3,6−二置換シクロヘキサ−2−エノンの同様の変換を使用して、化合物1.1〜化合物1.19、並びに表1及び表2に提示される化合物を、合成した。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
実施例15(比較)
以下の組成の強誘電性LC混合物A−1を調製した:
【0100】
【化25】

転移温度:Cr−6.3℃SmC52.4℃SmA68.1℃I
【0101】
実施例16(比較)
以下の組成の強誘電性LC混合物A−2を調製した:
【0102】
【化26】

転移温度:Cr7.3℃SmC67.7℃SmA74.2℃I
【0103】
実施例17(比較)
以下の組成の強誘電性LC混合物B−1を調製した:
【0104】
【化27】

転移温度:Cr5.6℃SmC54.2℃SmA71.1℃I
【0105】
実施例18(比較)
以下の組成の強誘電性LC混合物B−2を調製した:
【0106】
【化28】

転移温度Cr-7.3℃SmC85.0℃SmA109.3℃N114.0℃I
【0107】
実施例19(比較)
以下の組成の強誘電性LC混合物A−3を調製した:
【0108】
【化29】

転移温度:Cr9.5℃SmC50.4℃SmA61.3℃I
【0109】
実施例20(比較)
以下の組成の強誘電性LC混合物A−4を調製した:
【0110】
【化30】

転移温度:Cr11.2℃SmC61.4℃SmA79.1℃I
【0111】
実施例21(比較)
以下の組成の強誘電性LC混合物B−3を調製した:
【0112】
【化31】

転移温度:Cr8.3℃SmC56.1℃SmA71.1℃I
【0113】
実施例22(比較)
以下の組成の強誘電性LC混合物B−4を調製した:
【0114】
【化32】

転移温度:Cr15.5℃SmC63.1℃SmA94.7℃I
【0115】
実施例23
以下の組成の強誘電性LC混合物C−1を調製した:
【0116】
【化33】

転移温度:Cr-23.4℃SmC65.7℃SmA81.2℃
【0117】
実施例24
以下の組成の強誘電性LC混合物C−2を調製した:
【0118】
【化34】

転移温度:Cr-15.7℃SmC89.5℃SmA109.5℃113.0℃I
【0119】
実施例25
以下の組成の強誘電性LC混合物D−1を調製した:
【0120】
【化35】

転移温度:Cr-17.1℃SmC59.3℃SmA71.5℃I
【0121】
実施例26
以下の組成の強誘電性LC混合物D−2を調製した:
【0122】
【化36】

転移温度:Cr-9.7℃SmC79.4℃SmA89.0℃100.0℃I
【0123】
既知のキラル化合物を含有する強誘電性混合物(混合物A−1、A−2;B−1、B−2)、及び本発明によるキラル化合物を含有する強誘電性混合物(混合物C−1、C−2;D−1、D−2)の調査により、本発明によるキラル材料及びこれらを含む混合物、並びにこのような混合物を含むディスプレイセルが、SmC相の広い温度範囲、並びに非常に良好な熱的及び機械的安定性を有することが示された(表3を参照されたい)。得られた結果により、機械的衝撃(本発明者らの実験においては、機械的圧力下で、セルの厚みを3.5μmから1.3μmまで(その元の幅の最大60%)減少させた)が、既知のキラル化合物に基づくFLC混合物(混合物A−1、A−2;B−1、B−2)を含有するセルとの比較において、本発明によるFLCセルの不可逆的な配向破壊を引き起こさないことが示された。本発明者らは、多数の非常に厳しい試験の後にも、配向状態の変化を見出さなかった。全てのセルが同じ配向の質、コントラストを有しており、30cmの高さから平坦な表面上にセルを落下させた場合の機械的圧力及び機械的衝撃の後でも欠陥を有しなかった。
【0124】
表3.機械的圧力に対するFLCセルのコントラスト比の依存性
【表3】





混合物の電気光学パラメータの測定は、室温(22.5℃)で行った。
【0125】
実施例27
以下の組成の強誘電性LC混合物C−2.2を調製した:
【0126】
【化37】

転移温度:Cr-15.3℃SmC69.2℃SmA90.1℃I
【0127】
本発明の化合物に基づくFLC混合物(C−2.2)、及び既知の化合物に基づくFLC混合物(A−2)の電気光学パラメータ及び動的パラメータの調査により、新たな強誘電性LCDが、より低い作動電圧、高速のレスポンス時間(ton+toff)、高コントラスト比(300:1を超える)を特徴とし、強誘電性LC相の広い温度範囲を有することが示された(表4)。
【0128】
表4.FLC混合物の物理学的パラメータ
【表4】

混合物の電気光学パラメータの測定は、室温(22.5℃)で行った。
【0129】
これらのディスプレイのタイプは、他のディスプレイ技術に対して多くの利点を有し、将来的に広く使用することができる。
【0130】
ITO電極(抵抗率150Ω/cmを有する)及びSiO絶縁層(170nm厚)を備えたガラスセルにおいて、電気光学的研究を行った。市販の配向層(ナイロン6又はAL−1254又はPL−3001)をスピンコートし(spinned)、平行に又は一方向にラビングした(rubbed)。セルの厚み(1.5μm〜30μm)を、各々の場合において干渉法により測定した。電気光学的測定中、セルの温度は±0.3℃の精度で制御され、試料を横切る勾配は1℃を超えなかった。透過率(transmission)が10%から90%まで対応して変化した時に、レスポンス時間(ton及びtoff)を測定した。
【0131】
式(1)の化合物を種々のネマティック液晶化合物と混合することにより、本発明による新たなコレステリック(すなわちキラルネマティック)混合物を調製した。
【0132】
新たなコレステリック材料は、−30℃から+100℃までのキラルネマティック相の温度範囲を有しており、螺旋ピッチは10nm〜300μmである。
【0133】
本発明による新たな様式(効果)の単安定又は双安定のキラルネマティックLCDを、セルの2つの配向層において平行、逆平行又はねじれラビング方向で作製した。市販のポリアミド、ナイロン、及び他のポリマー材料を配向層として使用した。種々のギャップ(1.5μm〜20μm)を有するセルに、本発明のキラルネマティック材料を充填した。対応する駆動波形を使用して、スイッチングを行い、単安定又は双安定の状態を得た。キラルネマティックセルの詳細なパラメータを、次の実施例及び表5〜表9に列挙する。
【0134】
実施例28(比較)
以下の組成のネマティック混合物M−1を調製した:
【0135】
【化38】

【0136】
実施例29(比較)
以下の組成のネマティック混合物M−3を調製した:
【0137】
【化39】

【0138】
実施例30(比較)
以下の組成のコレステリック混合物M−1.1を調製した:
【0139】
【化40】

【0140】
実施例31
以下の組成のコレステリック混合物M−1.2を調製した:
【0141】
【化41】

【0142】
実施例32(比較)
以下の組成のコレステリック混合物M−2.1を調製した:
【0143】
市販の「Merck」混合物MLC−6657−100 90%
【化42】

【0144】
実施例33
以下の組成のコレステリック混合物M−2.2を調製した:
【0145】
MLC−6657−100 90%
【化43】

【0146】
実施例34(比較)
以下の組成のコレステリック混合物M−3.1を調製した:
【0147】
【化44】

【0148】
実施例35
以下の組成のコレステリック混合物M−3.2を調製した:
【0149】
【化45】

【0150】
ネマティック混合物(混合物M−1、Merck社から入手した市販の混合物「MLC−6657−100」、M−3)、並びに既知のキラル化合物を含有するコレステリック混合物(混合物M−1.1、M−2.1、M−3.1)、及び本発明によるキラル化合物を含有するコレステリック混合物(混合物M−1.2、M−2.2、M−3.2)の調査により、本発明による組成物が、既知のキラル化合物に基づくコレステリック材料(混合物M−1.1、M−2.1、M−3.1)と比較して、1.0ms未満の非常に高速のレスポンス時間ton及びtoffを特徴とすることが示された(表5を参照されたい)。これらの材料の最も高速のレスポンス時間ton及びtoffは、約20msでしかない。
【0151】
表5.ネマティック混合物及びキラルネマティック混合物のレスポンス時間(ton及びtoff
【表5】

混合物の電気光学パラメータの測定は、室温(22.5℃)で行った。
【0152】
実施例36(比較)
以下の組成のコレステリック混合物M−1.3を調製した:
【0153】
【化46】

【0154】
実施例37
以下の組成のコレステリック混合物M−1.4を調製した:
【0155】
【化47】

【0156】
実施例38(比較)
以下の組成のコレステリック混合物M−2.3を調製した:
【0157】
【化48】

【0158】
実施例39
以下の組成のコレステリック混合物M−2.4を調製した:
【0159】
【化49】

【0160】
実施例40(比較)
以下の組成のコレステリック混合物M−3.3を調製した:
【0161】
【化50】

【0162】
実施例41
以下の組成のコレステリック混合物M−3.4を調製した:
【0163】
【化51】

【0164】
既知のキラル化合物を含有するコレステリック混合物(混合物M−1.3、M−2.3、M−3.3)、及び本発明によるキラル化合物を含有するコレステリック混合物(混合物M−1.4、M−2.4、M−3.4)の調査により、本発明による組成物が、既知のキラル化合物に基づくコレステリック材料(混合物M−1.1、M−2.1、M−3.1)、及び既知のSTNディスプレイ用のキラルネマティック材料と比較して、電気光学曲線の非常に良好なシャープネス、及び同時に高速のレスポンス時間(ton+toff)を特徴とすることが示された(表6を参照されたい)。
【0165】
これらの材料のタイプは、他の材料に対して利点を有し、例えばデューティ比が1:64の多重化駆動スキームを有するLCDの製造において広く使用することができる。
【0166】
表6.キラルネマティック混合物のシャープネス及びレスポンス時間(ton及びtoff
【表6】

混合物の電気光学パラメータの測定は、室温(22.5℃)で行った。
【0167】
実施例42(比較)
以下の組成のコレステリック混合物M−2.5を調製した:
【0168】
【化52】

【0169】
実施例43
以下の組成のコレステリック混合物M−2.6を調製した:
【0170】
【化53】

【0171】
実施例44(比較)
以下の組成のコレステリック混合物M−3.5を調製した:
【0172】
【化54】

【0173】
実施例45
以下の組成のキラルネマティック混合物M−3.6を調製した:
【0174】
【化55】

【0175】
ネマティック混合物(混合物MLC−6657−100、M−3)、並びに既知のキラル化合物を含有するキラルネマティック混合物(混合物M−2.5、M−3.5)、及び本発明によるキラル化合物を含有するキラルネマティック混合物(混合物M−2.6、M−3.6)の調査により、本発明の組成物が、既知のキラル化合物に基づくコレステリック材料(混合物M−2.5、M−3.5)と比較して優れた双安定性(長期間にわたり安定な画像記憶)、及び同時に非常に高速のレスポンス時間ton及びtoffを特徴とすることが示された(表7を参照されたい)。
【0176】
これらの材料のタイプは、他の材料に対して利点を有し、将来的に広く使用することができる。一度表示されると、情報は、そのアプリケーションの必要性に応じて数秒から数年の範囲で長時間記憶される。この固有の記憶は、双安定デバイスの主な利点である。それにより、特にアプリケーションが頻繁なアップデートを必要としない場合に、電力消費を低減することが可能となる。幾つかのモバイルアプリケーション、例えば電子書籍に関しては、そのエネルギー節約は、バッテリーの寿命を数オーダー増大させる決定的な改善であり得る。
【0177】
ネマティック混合物(混合物M−3)、及び本発明によるキラル化合物を含有するコレステリック混合物(混合物M−3.6)のさらなる調査により、本発明による組成物のレスポンス時間ton及びtoffが、ネマティック材料(混合物M−3)と比較してセルの厚みにそれほど強く依存しないことが示された(表8を参照されたい)。
【0178】
表7.ネマティック混合物及びコレステリック混合物の双安定性及びレスポンス時間(ton及びtoff
【表7】

混合物の電気光学パラメータの測定は、室温(22.5℃)で行った。
**双安定性の評価:
・乏しい:1分間以下の画像記憶
・優れている:長期間(2週間を超える)にわたる安定な画像記憶
【0179】
表8.セルギャップに対するネマティック混合物及びキラルネマティック混合物のレスポンス時間(ton及びtoff)の依存性
【表8】

混合物の電気光学パラメータの測定は、室温(22.5℃)で行った。
【0180】
実施例46(比較)
以下の組成のコレステリック混合物M−1.5を調製した:
【0181】
【化56】

【0182】
実施例47(比較)
以下の組成のコレステリック混合物M−1.6を調製した:
【0183】
【化57】

【0184】
実施例48
以下の組成のコレステリック混合物M−1.7を調製した:
【0185】
【化58】

【0186】
コレステリック混合物(混合物M−1.5、M−1.6、M−1.7、表9を参照されたい)の調査により、本発明によるキラル組成物(混合物M−1.7)を含有する選択反射セルが、既知のキラル化合物に基づく材料(混合物M−1.5、M−1.6)を含有するセルと比較して、より低い作動電圧を有することが示された。
【0187】
表9.キラルネマティックセルのしきい値電圧
【表9】

混合物の電気光学パラメータの測定は、室温(22.5℃)で行った。
【0188】
本発明による式(1)の液晶化合物により、種々の値の螺旋ピッチ及び光学異方性(Δn)、正の又は負の誘電異方性(Δε)、所要の値の弾性定数(特にK22)、並びにキラルネマティック相の広い温度範囲を有するキラルネマティック混合物を作り出すことが可能となる。この混合物により、配向材料と組み合わせて、新たな様式(効果)の、パッシブマトリクス(静的若しくは多重化)又はアクティブマトリクス(TFT)アドレス指定による高速スイッチング、低作動電圧、単安定又は双安定のコレステリックLCDを作り出すことが可能となる。
【0189】
これらのディスプレイのタイプは、特に高速スイッチング、低作動電圧及び双安定性のために、他のディスプレイ技術に対して多くの利点を有し、将来的に広く使用することができる。この固有の記憶は、双安定デバイスの主な利点である。これにより、特にアプリケーションが頻繁なアップデートを必要としない場合に、電力消費を低減する(the low)ことが可能となる。幾つかのモバイルアプリケーションに関しては、このエネルギー節約は、バッテリーの寿命を数オーダー増大させる決定的な改善であり得る。
【0190】
特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14及び特許文献15に提示されるキラル化合物のさらなる調査により、これらの化合物が、式(I)の化合物とは対照的に、分子の堅固なロッド形状の中心コアを有さず、10℃から154℃までの温度範囲全体においてスメクティックC相を形成する訳ではないことが示されたことに留意すべきである。調査により、これらの化合物を、
−コレステリック相の広い温度範囲(−30℃から100℃まで)、良好な動的パラメータ(5ms又は10ms未満のレスポンス時間を含む)、低いしきい値電圧及び飽和電圧(20V未満)、電気光学曲線の良好なシャープネス、並びに双安定テクスチャの良好な機械的、熱的及び長期的安定性を有するコレステリック液晶混合物、並びに
−種々の値の光学異方性(Δn)及び自発分極、並びに強誘電性相の広い温度範囲を有する強誘電性液晶混合物、又は種々の値の螺旋ピッチ及び光学異方性(Δn)、正の若しくは負の誘電異方性(Δε)、所要の値の弾性定数(特にK22)、並びにコレステリック相の広い温度範囲を有するキラルネマティック混合物
の調製のために使用することができないことが示された。
【0191】
特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14及び特許文献15の化合物及び液晶混合物では、配向材料と組み合わせて、低作動電圧及び高コントラスト比を有する衝撃に安定な強誘電性液晶ディスプレイ(LCD)、又は高速スイッチング、低作動電圧、単安定若しくは双安定のキラルネマティックLCDを作り出すことは可能とならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】

(式中、
=Y−(CH−(O)−(CH−(O)−(CH−、又は
Y−(CH−CH=CH−(CH−(O),−、又は
Y−(CH−CHY−(O)−(CH−(O)−CHY−(CH−Y、又は
Y−(CH−CHY−(O)−(CH−(O)−(CH−Y、又は
フッ素化アルキル基若しくはフッ素化アルコキシ基(該フッ素化アルキル基若しくは該フッ素化アルコキシ基は1個〜20個の炭素原子を有する)であり、
=Y−(CH−CHY−(O)−(CH−(O)−CHY−(CH−Y、又は
−(CH−(O)−(CH−(O)−CHY−(CH−Yであり、
はキラル置換基であり、Rは6個〜25個の炭素原子を有する非キラルな直鎖又は分岐鎖のアルキル残基であり、
Yは、各記載において及び互いに独立して、H原子、F原子及びCl原子のうちの1つ、又は−CN基、−S−CN基、−O−CF基、−CF基、−CO−CH基、−C2i+1基、−O−C2i+1基、−CO−O−C2i+1基若しくは−O−CO−C2i+1基のうちの1つを表し、
、Yは、各記載において及び互いに独立して、F原子及びCl原子のうちの1つ、又は−CN基、−CF基、−C2j+1基、−O−C2j+1基、−CO−O−C2j+1基、−O−CO−C2j+1基のうちの1つ、又は非同時にH原子、又は同時にH原子を表し、
は、各記載において及び互いに独立して、単結合又は−O−原子のうちの1つを表し、
、Yは、各記載において及び互いに独立して、F原子、Cl原子のうちの1つ、又は−CN基、−CF基、−C2h+1基、−O−C2h+1基、−CO−O−C2h+1基、−O−CO−C2h+1基のうちの1つ、又は非同時にH原子を表し、
n、p、k、j、i、hは各々、n、p、k、j、i及びhの各々に関して独立して0〜7の値をとり、
m、lは独立して0又は1を表し、l=m=0である場合i+k+n+pは少なくとも6であり、
ただし、Y、Y、Y、Y、Y、Y、h、i、j、k、l、m、n及びpは、Rが少なくとも1つのキラル中心を有するキラル置換基であるように選択され、
Kは、単結合、又はシクロヘキサン、シクロヘキセン、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、テトラジン、1,3,2−ジオキサボリナン、ヘキサヒドロピリジン、ヘキサヒドロピリミジン、ヘキサヒドロピリダジン、ヘキサヒドロピラジン、ヘキサヒドロトリアジン、テトラヒドロオキサジン、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘプタン環及びシクロオクタン環の異性体からなる群から、並びにこれらの環化合物のいずれかから誘導される少なくとも部分的に不飽和の環化合物から選択される六員環系を表し、次の環との又は置換基Rとの化学結合の一部分を形成する2つの原子の間のこれらの環又は環系における原子の数は、各々の場合において同じ原子から出発して時計回りの方向に計測した場合及び反時計回りの方向に計測した場合に2つ以上異ならず、
A、Aは0又は1の値をとり、Kが単結合である場合A及びAのうちの1つだけが0であり、
1〜5は各々、互いに独立して、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、テトラジン、1,3,2−ジオキサボリナン、ヘキサヒドロピリジン、ヘキサヒドロピリミジン、ヘキサヒドロピリダジン、ヘキサヒドロピラジン、ヘキサヒドロトリアジン、テトラヒドロオキサジンの異性体から、及びこれらの環化合物のいずれかから誘導される少なくとも部分的に不飽和の環化合物からなる群から選択される六員環系を表し、
1〜20は、互いに独立して、アルキル基、又はアルコキシ基、又はフッ素化アルキル基、又はフッ素化アルコキシ基、又はH原子、又はハロゲン原子のうちの1つ、又は各々の場合において互いに独立して1個〜20個の炭素原子を有するアルキル基、アルコキシ基、フッ素化アルキル基及びフッ素化アルコキシ基のうちの1つを表し、
連続する環の外側の環、すなわちそれぞれ置換基R及びRを保有する環は、2位、3位、5位及び6位に置換基を保有せず、
、K、K、K及びKからの環のうちの少なくとも3つの連続する環は、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン及びテトラジンからなる環の群から互いに独立して選択される芳香環又はヘテロ芳香環であり、連続する環とは、1つの環の成員である1つの原子が次の環の成員である1つの原子と直接結合することにより互いと直接結合した環を意味する)のキラル液晶化合物。
【請求項2】
=Y−(CH−(O)−(CH−(O)−(CH−であり、
nが3〜7の値をとり、
Kが単結合を表し、
A=1であり、
1〜5が、互いに独立して、ベンゼン環又はピリジン環又はピリミジン環を表し、
1〜20が、互いに独立して、−CH基、−C基、−O−CH基、−CF基及び−O−CF基のうちの1つ、又はH原子、F原子及びCl原子のうちの1つを表す請求項1に記載のキラル液晶化合物。
【請求項3】
=Y−(CH−CHY−(O)−(CH−(O)−CHY−(CH−Yであり、
Kが単結合を表し、
A=1であり、Aが0又は1の値をとり、
1〜5が、互いに独立して、ベンゼン環又はピリジン環又はピリミジン環を表し、
1〜20が、−CH基若しくは−C基若しくは−O−CH基若しくは−CF基若しくは−O−CF基又はH原子若しくはF原子若しくはCl原子を表す請求項1に記載のキラル液晶化合物。
【請求項4】
=Y−(CH−(O)−(CH−(O)−(CH−、又は
Y−(CH−CHY−(O)−(CH−(O)−CHY−(CH−Yであり、
Kが、ベンゼン環、ピリジン環、ピリミジン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘプタン環及びシクロオクタン環のうちの1つを表し、
A=1、A=0であり、
1〜4が、ベンゼン環又はピリジン環又はピリミジン環を表し(K及びKがベンゼン環である場合を除く)、
1〜16が、互いに独立して、−CH基、−C基、−O−CH基、−CF基及び−O−CF基のうちの1つ、又はH原子、F原子及びCl原子のうちの1つを表す請求項1に記載のキラル液晶化合物。
【請求項5】
=Y−(CH−(O)−(CH−(O)−(CH−であり、
nが3〜7の値をとり、
Kが単結合を表し、
A=1、A=0であり、
1〜5が、互いに独立して、ベンゼン環又はピリジン環又はピリミジン環を表し、
1〜16が、互いに独立して、H原子を表し、X1〜16の7つ以下がハロゲン原子又は−CH基又は−CF基であることができる請求項1に記載のキラル液晶化合物。
【請求項6】
式1における少なくとも3つの、より好ましくは少なくとも4つの連続する環が、隣接する環又は結合と1位及び4位において連結したフェニレン環である請求項1に記載のキラル液晶化合物。
【請求項7】
各々が1位及び4位において連結した4つ又は5つのフェニレン環を有する請求項6に記載のキラル液晶化合物。
【請求項8】
アルキル残基Rが、その炭素原子のうちの1つにより前記外側のフェニレン環とパラ位において直接連結した請求項6に記載のキラル液晶化合物。
【請求項9】
g個の連続する環(該環をK、K、K、K、…、Kg−1と称する)において、任意の環K(fは0(この場合K=K)、1(この場合K=K)、2(この場合K=K)等からg−1(この場合K=Kg−1)までの値をとり得る)に関して、2つの環Kf1及びKf2(f2>f1)が2位、3位、5位又は6位において置換基を有する場合、2位、3位、5位又は6位において少なくとも1つの置換基も有しない環K(f2>f>f1)が存在しない請求項6に記載のキラル液晶化合物。
【請求項10】
基における前記少なくとも1つのキラル中心が、1つのエーテル結合−O−、又は非キラルなアルキレン基−CY−、又は非キラルな式−O−CY−の基、又は式−CH−CY−の基、又は非キラルな式−CY−CH−の基、又は非キラルな式−O−CY−CH−の基により環K又は環Kから離れており、YがH、F、Cl、−CN、CF、−C2q+1、−O−C2q+1、−CO−O−C2q+1であることができ、qが1〜11であることができる請求項6に記載のキラル液晶化合物。
【請求項11】
少なくとも2つの化合物を含有する液晶混合物であって、0.5%〜99.5%の質量分率の少なくとも1種以上の誘電性有機化合物、及び99.5%〜0.5%の質量分率の請求項1〜10の一項以上に記載の化合物を含む液晶混合物。
【請求項12】
強誘電特性を有し、誘電性有機化合物として5%〜90%の質量分率の少なくとも1種の非キラル又はキラルスメクティック化合物、及び10%〜95%の質量分率の少なくとも1種の請求項1〜10の一項以上に記載の化合物を含む請求項11に記載の液晶混合物。
【請求項13】
前記少なくとも1種の非キラル又はキラルスメクティック化合物の質量分率が30%〜70%であり、前記少なくとも1種の請求項1〜10の一項以上に記載の化合物の質量分率が70%〜30%である請求項12に記載の強誘電性液晶混合物。
【請求項14】
キラルネマティック特性を有し、誘電性有機化合物として50%〜99.5%の質量分率の少なくとも1種のキラルでもなくキラルネマティックでもない化合物、及び0.5%〜50%の質量分率の少なくとも1種の請求項1〜10の一項以上に記載の化合物を含む請求項11に記載の液晶混合物。
【請求項15】
前記少なくとも1種のキラルでもなくキラルネマティックでもない化合物の質量分率が70%〜99.5%であり、前記少なくとも1種のキラルでもなくキラルネマティックでもない化合物が正の誘電異方性を有し、前記少なくとも1種の請求項1〜10の一項以上に記載の化合物の質量分率が30%〜0.5%である請求項14に記載のキラルネマティック液晶混合物。
【請求項16】
前記少なくとも1種のキラルでもなくキラルネマティックでもない化合物の質量分率が70%〜99.5%であり、前記少なくとも1種のキラルでもなくキラルネマティックでもない化合物が負の誘電異方性を有し、前記少なくとも1種の請求項1〜10の一項以上に記載の化合物の質量分率が30%〜0.5%である請求項15に記載のキラルネマティック液晶混合物。
【請求項17】
少なくとも3種の化合物を含有し、前記少なくとも1種の請求項1〜10の一項以上に記載の化合物の質量分率が0.5%〜50%であり、少なくとも2種の誘電性有機化合物が存在し、このような誘電性有機化合物の質量分率の合計が50%〜99.5%であり、このような誘電性有機化合物の少なくとも1つがキラルでもなくキラルネマティックでもなく、このような誘電性有機化合物の少なくとも1種がスメクティック化合物である請求項11に記載の液晶混合物。
【請求項18】
請求項11〜17の一項以上に記載の液晶混合物を含有するパッシブマトリクス(静的又は多重化)アドレス指定による液晶ディスプレイ。
【請求項19】
請求項11〜17の一項以上に記載の液晶混合物を含有するアクティブマトリクス(TFT)アドレス指定による液晶ディスプレイ。
【請求項20】
請求項12又は13に記載の液晶混合物を含有するパッシブマトリクス(静的又は多重化)アドレス指定による強誘電性液晶ディスプレイ。
【請求項21】
請求項12又は13に記載の液晶混合物を含有するアクティブマトリクス(TFT)アドレス指定による強誘電性液晶ディスプレイ。
【請求項22】
請求項12又は13に記載の液晶混合物を含有する双安定の強誘電性液晶ディスプレイ。
【請求項23】
請求項14〜16の一項以上に記載の液晶混合物を含有するパッシブマトリクス(静的又は多重化)アドレス指定によるコレステリック液晶ディスプレイ。
【請求項24】
請求項14〜16の一項以上に記載の液晶混合物を含有するアクティブマトリクス(TFT)アドレス指定によるコレステリック液晶ディスプレイ。
【請求項25】
請求項14〜16の一項以上に記載の液晶混合物を含有する双安定のコレステリック液晶ディスプレイ。
【請求項26】
請求項14に記載の液晶混合物を含有する選択反射コレステリック液晶ディスプレイ。

【公表番号】特表2012−502936(P2012−502936A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527212(P2011−527212)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/062397
【国際公開番号】WO2010/031431
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(511069895)テトラゴン エルシー ケミエ アーゲー (1)
【Fターム(参考)】