キレート剤としてのポリ(ペプチド):製造方法および用途
(a)原子価金属イオンと非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を含むポリペプチドおよび(2)2以上の連続した前記アミノ酸の少なくとも1つにキレートされた原子価金属イオンを含む造影用の新規な組成物が開示されている。これらの新規な組成物を用いた、被験者における腫瘍の造影方法のような造影方法もまた、開示されている。造影剤の合成方法および造影剤の調製のためのキットもまた開示されている。原子価金属イオンと非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を含むポリペプチドに候補物質を共役またはキレートされることを伴う、候補物質の造影剤としての有効性を決定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本願は、2005年4月1日に出願された、米国仮特許出願60/667,815の関連出願であり、その全体が参照により本明細書に引用される。
【0002】
1.発明の分野
本発明は、概説すれば、造影、放射療法、ラベル化、化学療法、および化学合成の分野に関する。より詳細には、本発明は、(a)原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を含むポリペプチド、並びに(b)2つの連続した前記アミノ酸の少なくとも1つに非共有結合的に結合した1以上の原子価金属イオンの組成物に関する。造影部位、治療用部位、または組織標的部位などの第2の部位が前記ポリペプチドに結合していてもよい。他の実施形態としては、(a)組織標的アミノ酸配列、診断用アミノ酸配列、および/または治療用アミノ酸配列を配列中に含むポリペプチド、並びに(b)前記ポリペプチドに非共有結合的に結合した1以上の原子価金属イオンが挙げられる。上述した造影剤を用いた造影方法、上述した造影剤の合成方法、これらの造影剤を調製するためのキット、および、候補物質を、原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を含むポリペプチドと共役またはキレートさせることを含む、候補物質の造影剤としての有効性を決定する方法もまた、開示される。上述した組成物を用いた、被験者における過剰増殖性疾患の治療方法もまた、開示される。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の説明
生物医学的造影には、被験者における疾患の診断を助けるだけでなく、身体の正常な構造や機能についての深い理解を得る目的でも医師や研究者により広く用いられている種々の様式がある。典型的な造影様式としては、PET、SPECT、ガンマカメラ造影、CT、MRI、超音波、および光学造影が挙げられる。
【0004】
多くの場合、被験者における特定部位の最適な造影には、被験者に対して特定の剤を投与する必要がある。テクネチウム(99mTc)、鉄、ガドリニウム、レニウム、マンガン、コバルト、インジウム、白金、銅、ガリウムまたはロジウムといった無機金属が、多くの造影剤の成分として有益であることが判明している。
【0005】
無機金属を用いたラベル化分子は、当該金属を特定の化合物の酸素、硫黄および窒素原子の結合にキレートさせることにより得られる。硫黄コロイド、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA、O4)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA、O4)、およびDOTA(N4)などのキレート剤がこの目的で用いられている。しかしながら、このようにキレートされた無機金属は、身体からの初期クリアランスが速いため、造影での有用性は限定的なものである。
【0006】
近年、いくつかのアミノ酸が、ガンマ放射線放出核種(I−123、I−131)、または陽電子放出核種(C−11、N−13、F−18)を用いてラベル化されている(Laverman et al., 2002; Vaalburg et al., 1992)。タンパク質の合成速度を測定するために用いられうるアミノ酸もあるが、剤の細胞中への取り込み速度を測定するだけの目的で用いられるものもある(Laverman et al., 2002; Vaalburg et al., 1992)。
【0007】
興奮性アミノ酸であるグルタミン酸(Glu)は、中枢神経系における強力な神経伝達物質であり、種々のグルタミン酸受容体(GluR)を介してその作用を発揮する(Chenu et al. 1998)。サイクロトロンで製造されたL−(N−13)グルタミン酸塩は、患者における頭蓋内悪性腫瘍を可視化する目的で用いられている(Reiman et al., 1982)。L−(N−13)グルタミン酸塩を投与すると、PET(N−13)グルタミン酸塩は大部分の脳腫瘍により速やかに取り込まれ、N−13の取り込みは血液脳関門の損傷と相関することが、コントラストCTまたは過テクネチウム酸(Tc−99m)を用いた研究により示されている(Reiman et al., 1982)。
【0008】
L−(N−13)グルタミン酸塩はまた、骨原性肉腫(Gelbard et al., 1979)や胎児性横紋筋肉腫(Sordillo et al., 1982)を造影する目的でも用いられている。これらの研究では、原発腫瘍により取り込まれたN−13の量を連続して定量的に測定したところ、化学療法の10週間後には40%の減少が見られた。N−13ラベルは肉腫の軟部組織部位に集積しているようであるのに対し、99mTcジホスホン酸塩の取り込みは石灰化が起こっている領域において最大であった(Gelbard et al., 1979; Sordillo et al., 1982)。
【0009】
[13N]アミノ酸の主要な制限の1つは、一般的な治療用途には半減期が短すぎると考えられているということである。さらに、[13N]アミノ酸についての代謝コンパートメントモデルは研究されていない。日常的に使用するには、信頼できる放射性医薬品の製造が不可欠であり、かような信頼できる製造方法は、[13N]アミノ酸については確立されていない。PETアミノ酸製剤について、製造時の主な問題としては、合成に複雑な多くの工程を要すること、放射化学的収率が低いこと、精製方法が複雑であることが挙げられる。よって、高コスト、入手可能性、および場合によっては放射線曝露の増加などの因子によって、[13N]アミノ酸の治療におけるアベイラビリティおよび有用性が制限されてしまう。
【0010】
好ましい半減期(6時間)を有し、製造が容易であり、広く入手可能であり、エネルギーが低く(140keV)、低コストであることから、造影剤用の好ましい放射性ラベルはテクネチウム(99mTc)である。しかしながら、99mTcを造影目的の薬剤に結合させることは、ときに困難である。99mTcのようなアイソトープの半減期がより長ければ、施設内のサイクロトロンや専用の放射化学実験室がなくとも、放射性ラベルされたアミノ酸を病院へ輸送することが容易となる。
【0011】
[13N]グルタミン酸塩を用いた腫瘍造影は成功していることから、[13N]グルタミン酸塩よりも効率的に、かつ安価に製造可能な造影剤および放射性治療剤が求められている。また、効率的かつ容易に製造でき、例えばキット形態のように治療用途により容易に利用可能とされた、[13N]グルタミン酸塩よりも安定な剤も求められている。さらには、造影剤または放射性治療剤の所望の部位への標的能力を延長させて造影の質を改善するように、身体から速やかには排泄されない造影剤もまた、求められている。
【0012】
188Reは、高いβエネルギーを有し(2.1MeV)、短い物理的半減期を有し(16.9時間)、線量測定や造影用途のための155keVのガンマ線を放出することから、造影や潜在的な治療用途について優れた特性を有する。188Reの物理的半減期は短いことから、より長寿命の放射性核種と比較してより高用量の使用が可能となる。さらに、半減期が短いため、放射性廃棄物の取扱いや貯蔵の問題が低減される。特に、188Reは、99mTc生成器に類似の施設内生成システムから入手可能である。188Reは、188W/188Re生成器から得ることが可能であり、治療用途には非常に便利である。99mTcおよび188Reはいずれもガンマ線を放出することから、99mTc造影に基づいて生成した線量測定は、現在の標準的なラジオアイソトープであるY−90を用いて製造されたものと比較してより正確であることが期待される。
【0013】
陽電子放出断層撮影法(PET)を用いた造影については、ラジオアイソトープは長期に亘る化学合成の間に減衰し、放射性合成の間に放射線に曝露する危険性が高くなることから、PETの放射性合成は迅速に行われなければならない。サイクロトロンベースのトレーサは、現場のサイクロトロンの入手可能性やコストが高いことにより制限を受ける。食品医薬品局(FDA)は、十分に管理された条件下で、中心となる商業施設内で放射性医薬品を製造し、当該医薬品が投与される各地のクリニックに当該医薬品を流通させることを認めている。同様に、十分に管理された施設内で製造されうる放射性核種の生成器システムは、現在のFDAの手続きでも容認されており、治療用途での長い成功の歴史を有している。生成器は親子の核種対を利用し、相対的に長寿命の親アイソトープは短寿命の子核種へと崩壊し、これが造影に用いられる。親アイソトープはサイクロトロン施設で製造され、医療施設へと輸送され、治療用途のために施設内で親アイソトープから子アイソトープが放出されてもよい。
【0014】
68Gaは陽電子放出量が多く(総崩壊の89%)、よってその主要な考慮事項は、その空間分解能であり、これは陽電子の範囲(エネルギー)、消滅する光子が共直線性を示さないこと、検出器の固有の特性、サイズ、および配置、並びに再構成アルゴリズムの選択に依存する。検出器の設計、物理的特性およびシステムの空間分解能へのその影響といった側面は、多くの著者によって広く取り組まれており、ハードウェアの連続的な最適化へと至っている。68Gaの最大陽電子エネルギー(最大=1.90MeV、平均=0.89MeV)は、18Fのエネルギー(最大=0.63MeV、平均=0.25MeV)よりも高いが、モンテカルロ分析を用いた空間分解能についての研究によれば、PET検出器の空間分解能を3mmと仮定すると、従来の18Fおよび68Gaの半値全幅(FWHM)は軟部組織において区別できない(3.01mm対3.09mm)ことが判明した。これにより、現在の医療用スキャナの5〜7mmの空間分解能では、68Gaベースのトレーサを用いた造影の質は、18Fベースの剤と同程度である可能性があることを示唆しており、他者を潜在的な68Gaベースの造影剤の研究へと駆り立てた。さらに、68Gaは施設内で68Ga生成器から製造されることができ(半減期は275日)、18Fまたは13NといったサイクロトロンベースのPETアイソトープに対する簡便な代替品として機能することから、68GaベースのPET剤は有意な商業的可能性を有している。
【発明の開示】
【0015】
発明の概要
本発明者らは、原子価金属イオンの担体およびキレート剤として機能するポリペプチドを含む特定の新規な造影剤および放射性治療剤を開発した。DTPA−薬剤共役体と比較して、これらの剤は被験者における所望の部位への標的能力が延長されている。特定の実施形態において、前記ポリペプチドは、5〜60個の酸部位を含むポリ(グルタミン酸塩)(GAP)またはポリ(アスパラギン酸塩)(AAP)ペプチドである。いくつかの実施形態において、前記ポリペプチドは、99mTcのキレート化に用いられる4つの酸部位を含む。本発明者らはまた、得られる剤が多様式の造影または放射化学療法にふさわしいように、前記ポリペプチドに、組織標的部位、治療用部位、または造影部位といった第2の部位を結合させることが可能であることを見出した。かような共役反応は、例えば、水性(湿式)または溶媒(乾燥)条件下で行われうる。ポリペプチドに金属イオンを複合化することで、剤の水溶性が改善され、当該剤をコントラスト促進標的造影に用いることが可能となる。
【0016】
本発明の特定の実施形態は、一般的に、原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を配列中に含むポリペプチドと、2つの連続した前記アミノ酸の少なくとも1つに非共有結合的に結合した1以上の原子価金属イオンとの組成物に関する。「原子価金属イオン」は、本明細書において以下で詳述するように、他の原子または分子との間で、非共有結合のような結合を形成しうる任意の金属イオンを含む。他の原子または分子は、ときに負に荷電している。
【0017】
天然または合成にかかわらず、原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する任意のアミノ酸が、本発明のポリペプチド中に含まれるものと解される。よって、原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有するアミノ酸は、電子供与体となることができなければならない。かようなアミノ酸については、本明細書において以下で詳述する。例えば、当該アミノ酸は、原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有するカルボキシル部位を含んでもよい。特定の実施形態において、原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸は、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩類似体、グルタミン酸塩類似体、システイン、リジン、アルギニン、グルタミン、アスパラギン、グリシン、オルニチン、および2以上のカルボキシル基を含む天然由来でないアミノ酸からなる群から選択される。
【0018】
特定の実施形態において、上述した2以上の連続したアミノ酸は、グルタミン酸塩残基である。さらなる実施形態において、上述した2以上の連続したアミノ酸は、アスパラギン酸塩残基である。他の実施形態において、当該ポリペプチドは、グルタミン酸塩残基およびアスパラギン酸塩残基の双方を任意の比率で含む。これらの実施形態において、ポリペプチドは任意の数の連続したグルタミン酸塩残基および/またはアスパラギン酸塩残基を含みうる。例えば、いくつかの実施形態では、ポリペプチドは少なくとも2個の連続したグルタミン酸塩残基および/またはアスパラギン酸塩残基を含む。さらなる実施形態において、ポリペプチドは少なくとも5個の連続したグルタミン酸塩残基および/またはアスパラギン酸塩残基を含む。さらに特定の実施形態において、ポリペプチドは少なくとも10個の連続したグルタミン酸塩残基および/またはアスパラギン酸塩残基を含む。さらにより特定の実施形態において、ポリペプチドは少なくとも20個の連続したグルタミン酸塩残基および/またはアスパラギン酸塩残基を含む。さらなる実施形態において、ポリペプチドは少なくとも50個の連続したグルタミン酸塩残基および/またはアスパラギン酸塩残基を含む。この連続したアミノ酸残基は同一(例えば、全てグルタミン酸塩)であってもよいし、異なるタイプのアミノ酸残基の組み合わせ(例えば、グルタミン酸塩残基とアスパラギン酸塩残基との混合物)であってもよい。
【0019】
前記ポリペプチドの分子量は任意である。例えば、いくつかの実施形態において、ポリペプチドは300〜30000ダルトンの分子量を有する。一般的には、本発明のより特定の実施形態では分子量はより小さく、例えば750〜9000ダルトンの分子量である。750〜9000ダルトンの分子量は、約5〜約60個の連続したアミノ酸残基を意図する。本明細書に記載の原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する連続したアミノ酸の配列は、薬理学的には不活性であることが必須であり、生物学的活性および/または薬理活性は最小限のものであると考えられる。
【0020】
本発明の特定の実施形態において、ポリペプチドは、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩類似体、またはアスパラギン酸塩類似体のカルボキシル部位への配位を介して3〜5個の原子価金属イオンをキレートすることができる。これらの実施形態において、ポリペプチドは任意の数の原子価金属イオンをキレートしうる。例えば、ポリペプチドは、1〜200以上の原子価金属イオンをキレートしうる。
【0021】
原子価金属イオンは、アミノ酸残基に非共有結合的に結合することが当業者に知られている任意の原子価金属イオンである。例えば、原子価金属イオンは、放射性核種である。放射性核種は、放射能を示す人工のまたは天然由来のアイソトープである。いくつかの実施形態において、原子価金属イオンは、Tc−99m、Cu−60、Cu−61、Cu−62、Cu−67、In−111、Tl−201、Ga−67、Ga−68、As−72、Re−186、Re−188、Ho−166、Y−90、Sm−153、Sr−89、Gd−157、Bi−212、Bi−213、Fe−56、Mn−55、Lu−177、原子価鉄イオン、原子価マンガンイオン、原子価コバルトイオン、原子価白金イオン、および原子価ロジウムイオンからなる群から選択されうる。特定の実施形態において、原子価金属イオンはTc−99m、Re−188、またはGa−68である。
【0022】
本発明の特定の実施形態において、ポリペプチドは、当該ポリペプチドに結合した第2の部位を含む。当該第2の部位は、当業者に公知の任意の様式でポリペプチドに結合しうる。例えば、いくつかの実施形態において、第2の部位は、アミド結合またはエステル結合によりポリペプチドのカルボキシル部位に結合しうる。
【0023】
当該第2の部位は、任意のタイプの部位でありうる。例えば、いくつかの実施形態において、第2の部位は、組織標的部位、診断用部位、または治療用部位である。これらの部位については、本明細書において以下で詳述する。いくつかの実施形態において、上述した組織標的部位は、標的リガンドである。例えば、当該標的リガンドは、疾患細胞周期標的化合物、代謝拮抗物質、生体還元剤、シグナル伝達性治療剤、細胞周期に特異的な剤、腫瘍血管新生標的リガンド、腫瘍アポトーシス標的リガンド、疾患受容体標的リガンド、薬剤ベースのリガンド、抗微生物剤、腫瘍低酸素症標的リガンド、グルコース模倣体、アミフォスチン、アンギオスタチン、EGF受容体リガンド、モノクローナル抗体C225、モノクローナル抗体CD31、モノクローナル抗体CD40、カペシタビン、COX−2阻害剤、デオキシシチジン、フラーレン、ハーセプチン、ヒト血清アルブミン、ラクトース、黄体形成ホルモン、ピリドキサール、キナゾリン、サリドマイド、トランスフェリン、またはトリメチルリジンでありうる。
【0024】
本発明の特定の実施形態において、ポリペプチドは、5〜60個の連続したグルタミン酸塩残基および標的リガンドを含み、この際、当該標的リガンドは、エストラジオール、ガラクトース、ラクトース、シクロデキストリン、コルヒチン、メトトレキサート、パクリタキセル、ドキソルビシン、セレブレックス、メトロニダゾール、アデノシン、ペンシクロビル、カルネチン、エストラジオール(3位)、エストラジオール(17位)、リノレン酸、グルコサミン、マンノース四酢酸、または葉酸塩であり、さらに原子価金属イオンは99mTcである。
【0025】
ポリペプチドが診断用部位を含む本発明の実施形態において、当該診断用部位は、造影部位でありうる。造影部位は、以下で詳述するが、特定の実施形態では造影剤であってもよい。例えば、当該造影剤は、CT造影剤、MRI造影剤、光学造影剤、および超音波造影剤でありうる。典型的なCT造影剤としては、イオタラム酸塩、イオヘキソール、ジアトリゾエート、イオパミドール、エチオドール、およびイオパノエートが挙げられる。典型的なMRI造影剤としては、ガドリニウムキレート(例えば、Gd−DOTA)、マンガンキレート(例えば、Mn−DPDP)、クロムキレート(例えば、Cr−DEHIDA)、および鉄粒子が挙げられる。典型的な光学造影剤としては、フルオレセイン、フルオレセイン誘導体、インドシアニングリーン、オレゴングリーン、オレゴングリーン誘導体の誘導体、ローダミングリーン、ローダミングリーン誘導体、エオジン、エリスロシン、テキサスレッド、テキサスレッド誘導体、マラカイトグリーン、ナノゴールドスルホコハク酸イミドエステル、カスケードブルー、クマリン誘導体、ナフタレン、ピリジルオキサゾール誘導体、カスケードイエロー染料、およびダポキシル染料が挙げられる。典型的な超音波造影剤としては、過フッ素化物または過フッ素化物類似体などの超音波過フッ素化造影剤が挙げられる。
【0026】
特定の実施形態において、第2の部位は治療用部位である。治療用部位については、本明細書において以下で詳細に説明する。本発明のいくつかの実施形態において、治療用部位は抗癌部位である。当業者に公知の任意の抗癌剤が、本発明における抗癌部位として用いられると解され、当該抗癌剤は、本明細書の他の箇所において詳細に説明したように、当業者に公知の任意の様式で本発明のポリペプチドに結合しうる。典型的な抗癌部位としては、治療用放射性金属物質(therapeutic radiometallic substance)をキレート可能なキレート剤、メトトレキサート、エピポドフィロトキシン、ビンクリスチン、ドセタキセル、パクリタキセル、ダウノマイシン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、トポテカン、ブレオマイシン、ゲムシタビン、フルダラビンおよび5−FUDRが挙げられる。特定の実施形態において、当該抗癌部位はメトトレキサートである。
【0027】
他の実施形態において、前記抗癌部位は、Re−188、Re−186、Ho−166、Y−90、Sr−89、Sm−153からなる群から選択される治療用放射性金属物質である。他の実施形態において、当該抗癌部位は、ヒ素、コバルト、銅、セレン、タリウムおよび白金からなる群から選択される治療用金属をキレート可能な物質である。
【0028】
ポリペプチドに非共有結合的に結合する原子価金属イオンは、当業者に公知の任意の方法により造影されうる。造影の典型的な方法については、本明細書において以下で詳細に説明するが、PETやSPECTが挙げられる。
【0029】
本発明はまた、概説すれば、組織標的アミノ酸配列、診断用アミノ酸配列、および/または治療用アミノ酸配列を配列中に含むポリペプチド、並びに、前記ポリペプチドの1以上のアミノ酸残基に非共有結合的に結合した1以上の原子価金属イオンを含む組成物に関する。これらの特定の実施形態において、ポリペプチドは2個以上の連続したグルタミン酸塩残基を含む。例えば、特定の実施形態において、ポリペプチドは5〜60個の連続したグルタミン酸塩残基を含む。他の実施形態において、ポリペプチドは2個以上の連続したアスパラギン酸塩残基を含む。例えば、いくつかの実施形態において、ポリペプチドは5〜60個の連続したアスパラギン酸塩残基を含む。
【0030】
組織標的アミノ酸配列は、疾患細胞周期標的化合物、代謝拮抗物質、生体還元剤、シグナル伝達性治療剤、細胞周期に特異的な剤、腫瘍血管新生標的リガンド、腫瘍アポトーシス標的リガンド、疾患受容体標的リガンド、薬剤ベースのリガンド、抗微生物剤、腫瘍低酸素症標的リガンド、グルコース模倣体、アミフォスチン、アンギオスタチン、EGF受容体リガンド、モノクローナル抗体C225、モノクローナル抗体CD31、モノクローナル抗体CD40、カペシタビン、COX−2阻害剤、デオキシシチジン、フラーレン、ハーセプチン、ヒト血清アルブミン、ラクトース、黄体形成ホルモン、ピリドキサール、キナゾリン、サリドマイド、トランスフェリン、またはトリメチルリジンなどの標的リガンドでありうる。診断用アミノ酸配列は、CT造影剤、MRI造影剤、および光学造影剤、または超音波造影剤などの造影アミノ酸配列でありうる。上述したように、治療用アミノ酸配列は、抗癌アミノ酸配列でありうる。特定の実施形態において、抗癌アミノ酸配列は、ヒ素、コバルト、銅、セレン、タリウム、または白金からなる群から選択される治療用金属をキレート可能である。
【0031】
本発明はまた、概説すれば、(1)原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を配列中に含むポリペプチドを得ること;および、(2)前記ポリペプチドを1以上の原子価金属イオンおよび還元剤と混合して、原子価金属イオンでラベル化されたポリペプチドを得ることを含み、この際、1以上の原子価金属イオンが、2つの連続したアミノ酸の少なくとも1つに非共有結合的に結合している、造影剤(imaging agent)の合成方法に関する。
【0032】
前記還元剤は、当業者に公知の任意の還元剤でありうる。例えば、特定の実施形態において、還元剤は、亜ジチオン酸イオン、第一スズイオン、または第一鉄イオンである。本明細書に記載の合成方法において、ポリペプチドは上述した任意のポリペプチドであってよく、その記載はこの欄にも引用される。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態において、造影剤の合成方法は、造影および化学療法のための剤の合成方法としてさらに規定される。本発明のさらなる実施形態において、造影剤の合成方法は、多重造影のための剤の合成方法としてさらに規定される。これらの方法において用いられる造影の様式は、当業者に公知の任意の造影様式でありうる。典型的な方法については、本明細書の他の欄で詳細に説明するが、PET、SPECT、MRI、CT、および光学造影が挙げられる。
【0034】
本発明のさらなる実施形態は、概説すれば、(1)組織標的アミノ酸配列、診断用アミノ酸配列、および/または治療用アミノ酸配列を配列中に含むポリペプチドを得ること;および、(2)前記ポリペプチドを1以上の原子価金属イオンおよび還元剤と混合して、原子価金属イオンでラベル化されたポリペプチドを得ることを含む、造影剤(imaging agent)の合成方法に関する。還元剤は、上述したように、亜ジチオン酸イオン、第一スズイオン、または第一鉄イオンなどの当業者に公知の任意の還元剤でありうる。特定の実施形態において、ポリペプチドは、少なくとも2個の連続したグルタミン酸塩残基またはアスパラギン酸塩残基を含む。より特定の実施形態において、ポリペプチドは、少なくとも2個の連続したグルタミン酸塩残基またはアスパラギン酸塩残基を含む。典型的な原子価金属イオンとしては、上述した任意のものが挙げられる。特定の実施形態において、原子価金属イオンはTc−99mである。組織標的アミノ酸配列は、上述した任意の組織標的リガンドなどの組織標的リガンドであってもよい。同様に、典型的な診断用アミノ酸配列、造影アミノ酸配列、および治療用アミノ酸配列としては、上述した任意の配列が挙げられる。
【0035】
本発明のさらなる実施形態は、概説すれば、被験者におけるある部位を造影する方法であって、(1)上述したポリペプチドおよび原子価金属イオンの新規な組成物の診断上有効な量を被験者に投与すること;並びに、(2)前記部位に局在する原子価金属イオン−ポリペプチドキレートからの信号を検出することを含む方法に関する。当業者に公知の任意の方法が、前記部位に局在する原子価金属イオン−ポリペプチドキレートからの信号を検出する目的で用いられうる。例えば、信号は、PET、CT、SPECT、MRI、光学造影、または超音波を用いて検出されうる。いくつかの実施形態において、当該方法は、多重造影および放射化学療法を行う方法としてさらに規定される。放射化学療法とは、上述した任意の物質などの放射性治療用金属物質を用いた治療法である。さらなる実施形態において、当該造影方法は、被験者におけるある部位の多重造影を行う方法としてさらに規定される。上述した任意の方法などの当業者に公知の任意の造影様式が、本発明では適用されうる。
【0036】
本発明のさらなる実施形態は、概説すれば、造影剤を調製するためのキットであって、原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を配列中に含む所定量のポリペプチド;および、原子価金属イオンを2つの連続した前記アミノ酸の少なくとも1つに非共有結合的に結合させるのに十分な量の還元剤、を含む密封容器を有するキットに関する。2以上の連続したアミノ酸を含む上述した任意のポリペプチドは、これらの実施形態に含まれるものと解される。
【0037】
本発明のさらなる実施形態は、造影剤を調製するためのキットであって、組織標的アミノ酸配列、診断用アミノ酸配列、および/または治療用アミノ酸配列を配列中に含む所定量のポリペプチド;および、1以上の原子価金属イオンを前記ポリペプチドに結合させるのに十分な量の還元剤、を含む密封容器を有するキットに関する。組織標的アミノ酸配列、診断用アミノ酸配列、および/または治療用アミノ酸配列を含む上述した任意のポリペプチドは、本発明に含まれるものと解される。ポリペプチドは、1以上のかような配列を含んでよく、かような配列を任意の組み合わせで含みうる。上述したように、ポリペプチドは、任意の数の連続したアミノ酸残基を含みうる。特定の実施形態において、ポリペプチドは、少なくとも2個の連続したグルタミン酸塩残基またはアスパラギン酸塩残基を含む。さらなる実施形態において、ポリペプチドは、少なくとも5個の、少なくとも10個の、少なくとも20個の、または少なくとも50個の連続したグルタミン酸塩残基またはアスパラギン酸塩残基を含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、5〜60個の連続したアスパラギン酸塩残基またはグルタミン酸塩残基を含む。
【0038】
本発明はまた、概説すれば、造影剤としての候補物質の有効性を決定する方法であって、(1)候補物質を得ること;(2)前記候補物質を、原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を配列中に含むポリペプチドと共役またはキレートさせること;(3)候補物質−ポリペプチド共役体を被験者に導入すること;および、(4)前記候補物質−ポリペプチド共役体からの信号を検出して、前記候補物質の造影剤としての有効性を決定すること、を含む方法に関する。当業者に公知の任意の方法が、候補物質を同定する目的で用いられうる。典型的な方法は、本明細書において以下で説明する。候補物質をポリペプチドと共役またはキレートさせる任意の方法が、本発明に含まれるものと解され、典型的な方法は、本明細書において以下で説明する。上述したように、候補物質−ポリペプチド共役体からの信号を検出する任意の方法が、本発明に含まれるものと解され、上記および本明細書の他の箇所で説明した信号を検出するための任意の方法が挙げられる。
【0039】
本明細書で用いられる場合、「a」または「an」は1以上を意味しうる。特許請求の範囲で用いられる場合、「含む」の語とともに用いられる際には、「a」または「an」の語は1または1より大きいことを意味しうる。本明細書で用いられる場合、「another」は少なくとも2つめのもの以上を意味しうる。
【0040】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。しかしながら、詳細な説明から当業者にとって本発明の思想および範囲内での種々の改変および修飾は明らかとなるであろうから、詳細な説明および具体的な実施例は、本発明の好ましい実施形態を表してはいるものの、例示のみの目的で提供されていると理解されるべきである。
【0041】
図面の簡単な説明
以下の図面は本明細書の一部を構成し、本発明の特定の形態をさらに示す目的で含まれる。これらの図面の1以上を、本明細書に記載の具体的な実施形態の詳細な説明と組み合わせて参照することで、本発明はよりよく理解されうる。
【0042】
図1.GAP−3−EDLの合成スキーム;
図2.GAP−EDLの1H−NMR;
図3.乳癌細胞における細胞取り込み(RBA CRL−1747、4μCi/500000細胞/ウェル);
図4.ヒト乳癌細胞における3時間での細胞取り込み(4μCi/200000/ウェル);
図5.ヒト卵巣癌細胞における3時間での細胞取り込み(4μCi/50000/ウェル);
図6.100000個のラット乳腺腫瘍細胞を、68Ga−GAP−EDLとともに30〜240分間インキュベートした。68Ga−GAPと比較して、68Ga−GAP−EDL群では高い取り込みを示した(*p<0.005、**p<0.0005);
図7.100000個のラット乳腺腫瘍細胞を、68Ga−GAP−EDL(0.1mg/ウェル)とともに、ラベル化されていないエストロンの存在下でインキュベートした。90分間インキュベート時に細胞を回収した。結果は、コントロール群を基準とした%取り込みを示す。コントロール群と比較して、*p<0.005。エストロン処理した細胞では取り込みが減少しており、この細胞取り込みはER媒介性プロセスであることが示唆される;
図8.乳癌腫瘍罹患ラットにおける99mTc−GAP−EDL計数密度比。99mTc−GAP−EDLのインビボ腫瘍(子宮)対組織の計数密度比;
図9A−9B.A.99mTc−GAP−EDLおよび99mTc−DTPA投与後の乳癌腫瘍罹患ラットの平面造影により、腫瘍は注射後0.5〜4時間で可視化されうることが示された。B.注射後55分での選択的造影;
図10.GAP−EDLの合成(17位);
図11A−11B.A.乳癌細胞における細胞取り込み(RBA CRL−1747、4μCi/ウェル)。B.300μCi/ラットを静注後の乳房腫瘍細胞系罹患ラットにおけるTc−99m−GAPおよびTc−99m−GAP−エストラジオール17の30、60、120および180分での平面シンチグラフィのカウントは500000であり、腫瘍対筋肉の可視化を比較した;
図12.GAP−COXiの合成スキーム;
図13.GAP−COXiのプロトンNMR;
図14.99mTc−GAP−COX−2(COX2阻害剤)の放射性映像。シスプラチン処理(4mg/kg、静注)の前後に、99mTc−GAP−COX−2(300μCi、静注)を用いて乳房腫瘍罹患ラットを造影した。99mTc−GAP−COX−2の選択的平面画像が、注射後0.5〜2時間で得られた;
図15.GAP−DOXの合成;
図16.99mTcGAP剤の細胞取り込み。乳癌細胞における細胞取り込み(RBA CRL−1747、4μCi/50000細胞/ウェル);
図17.GAP−DGの合成;
図18.GAP−GALの合成;
図19.乳癌細胞における細胞取り込み(RBA CRL−1747、4μCi/ウェル);
図20.乳房腫瘍罹患ラットにおける99mTc−GAP−DGACの取り込み(n=3、27.5μCi/ラット、静注);
図21.乳房腫瘍罹患ラットにおける99mTc−GAP−DGACの腫瘍対組織の計数密度比;
図22.乳房腫瘍罹患ラットにおける99mTc−GAP−DGACの腫瘍対血液および腫瘍対筋肉の計数密度比;
図23.ウサギにおける99mTc−GAP−DGACの造影。VX2−腫瘍罹患ウサギ(1mCi/ウサギ、静注)における99mTc−GAP−DGACの平面シンチグラフィにより、腫瘍が良好に可視化されうることが示された。腫瘍対非腫瘍比を示す。T=腫瘍;
図24.ウサギにおける99mTc−GAP−DGACXの造影。VX2−腫瘍罹患ウサギ(1mCi/ウサギ、静注)における99mTc−GAP−DGACの平面シンチグラフィにより、腫瘍が良好に可視化されうることが示された。腫瘍対非腫瘍比を示す。T=腫瘍;
図25.GAP−LASの合成スキーム;
図26.ヒト卵巣癌細胞における細胞取り込み(6μCi/60000/ウェル);
図27.乳癌細胞における細胞取り込み(RBA CRL−1747、3μCi/50000細胞/ウェル);
図28.ヒト卵巣癌細胞における2時間での細胞取り込み(3μCi/60000/ウェル);
図29.ヒトシスプラチン抵抗性卵巣癌細胞における細胞取り込み(2.4μCi/ウェル);
図30.乳房腫瘍罹患ラットにおける化合物の腫瘍/血液比(n=3/時間間隔、20μCi/ラット、静注);
図31.乳房腫瘍罹患ラットにおける腫瘍対筋肉比(n=3/時間間隔、20μCi/ラット、静注);
図32.GAP−FOLの合成;
図33.GAP−MNの合成;
図34.GAP−MTXの合成;
図35.腫瘍罹患ラットにおける99mTc−GAP−TMLの30、60、120、および180分での造影。300μCi/ラットを静注後の乳房腫瘍細胞系罹患ラットにおけるTc−99m−GAP−TLMの30、60、120分での平面シンチグラフィのカウントは500000であり、腫瘍対筋肉および心臓対筋肉の可視化を示した;
図36.乳腺腫瘍罹患ラットにおける、99mTc−GAP、99mTc−GAP−アデノシン、99mTc−GAP−EDL17、および99mTc−GAP−TML化合物の腫瘍対筋肉の計数密度比;
図37.GAP−ADNの合成。
【0043】
例示的な実施形態の説明
本発明者らは、担体および金属錯体へのキレート剤としてポリペプチドを含む特定の新規な造影剤および放射性治療剤を開発した。典型的なポリペプチドの担体としては、5〜60個のアミノ酸残基を含有するポリ(グルタミン酸塩)(GAP)またはポリ(アスパラギン酸塩)(AAP)が挙げられる。グルタミン酸塩(GAP)およびアスパラギン酸塩(AAP)は、グルタミン酸塩/アスパラギン酸塩受容体または葉酸受容体に結合する。本発明者らはまた、組織標的剤のような第2の部位が前記ポリペプチドに結合してもよいことも見出した。これらの造影剤は、[13N]グルタミン酸塩などの剤と比較してより効率的に、かつより安価に製造され、[13N]ほど速やかに身体から排泄されないことから、被験者の身体における所望の部位への当該剤の標的能力は延長され、造影の質が改善される。
【0044】
A.ポリペプチドおよびアミノ酸
特定の実施形態において、本発明は、(a)原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を配列中に含むポリペプチド;および(b)2つの連続した前記アミノ酸の少なくとも1つに非共有結合的に結合した1以上の原子価金属イオンを含む新規な組成物に関する。さらなる実施形態において、本発明は、(a)組織標的アミノ酸配列、診断用アミノ酸配列、および/または治療用アミノ酸配列を配列中に含むポリペプチド;並びに、(b)前記ポリペプチドに結合した1以上の原子価金属イオンに関する。
【0045】
本明細書で用いられる場合、「ポリペプチド」とは、連続した一連の2以上のアミノ酸を意味する。当該アミノ酸は、L型、D型、またはL型とD型とのラセミ混合物のいずれであってもよい。いくつかの実施形態において、例えば、本発明のポリペプチドは、連続した一連の少なくとも2個のアミノ酸を含む。さらなる実施形態において、ポリペプチドは連続した一連の少なくとも5個のアミノ酸を含む。さらなる実施形態において、ポリペプチドは連続した一連の少なくとも10個のアミノ酸を含む。さらなる実施形態において、ポリペプチドは、連続した一連の少なくとも20個のアミノ酸を含む。いくつかの特定の実施形態において、ポリペプチドは、連続した一連の2〜200個のアミノ酸を含む。より特定の実施形態において、ポリペプチドは、連続した一連の5〜60個のアミノ酸を含む。
【0046】
上述したように、本発明の特定の実施形態は、原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を配列中に含むポリペプチドを含む。典型的な原子価金属イオンとしては、Ga(+3)、Re(+5)、Tc−99m(+5)、およびGd(+3)が挙げられる。天然由来か否かにかかわらず、原子価金属イオンに結合しうる任意のアミノ酸が、本発明のポリペプチドに含まれるものと解される。原子価金属イオンに結合しうる典型的なアミノ酸としては、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩類似体、グルタミン酸塩類似体、システイン、リジン、アルギニン、グルタミン、アスパラギン、グリシン、オルニチン、および2以上のカルボキシル基を含む任意の合成のまたは天然由来でないアミノ酸が挙げられる。例えば、本発明のいくつかの実施形態において、ポリペプチドは、原子価金属イオンと結合しうる2〜約1000以上の連続したアミノ酸を含みうる。
【0047】
本明細書で用いられる場合、「グルタミン酸塩」との語は、グルタミン酸塩のみならず、グルタミン酸をも意味する。この定義には、グルタミン酸の塩(例えば、マグネシウム塩、カルシウム塩、カリウム塩、亜鉛塩、およびこれらの組み合わせなど)も含まれる。グルタミン酸塩残基は、D型またはL型のいずれであってもよい。
【0048】
本明細書で用いられる場合、「グルタミン酸塩の類似体」には、任意の位置で放射性ラベル化されたグルタミン酸塩残基が含まれる。例えば、アスパラギン酸塩は、陽電子放出核種(例えば、C−11、N−13、F−18)またはガンマ線放出核種(例えば、I−123、I−131)で放射性ラベル化されうる。放射性ラベル化されたグルタミン酸塩残基は、サイクロトロンを用いるといった当業者に公知の任意の方法により製造されうる(例えば、参照により本明細書に詳細に引用される、Reiman et al., 1982, pertaining to N−13−labeled L−glutamateを参照)。「グルタミン酸塩の類似体」の定義にはまた、水素原子がハロゲン原子により置換されたグルタミン酸塩分子(例えば、フッ素化グルタミン酸塩分子)も含まれる(例えば、参照により本明細書に詳細に引用される、PETを用いた腫瘍造影用のフッ素化アミノ酸に関する、Laverman et al., 2002を参照)。
【0049】
本明細書で用いられる場合、「アスパラギン酸塩」との語は、アスパラギン酸塩のみならず、アスパラギン酸をも意味する。アスパラギン酸塩残基は、D型またはL型のいずれであってもよい。この定義には、アスパラギン酸の塩(例えば、マグネシウム塩、カルシウム塩、カリウム塩、亜鉛塩、およびこれらの組み合わせなど)も含まれる。
【0050】
本明細書で用いられる場合、「アスパラギン酸塩の類似体」には、任意の位置で放射性ラベル化されたアスパラギン酸塩残基が含まれる。例えば、アスパラギン酸塩は、陽電子放出核種(例えば、C−11、N−13、F−18)またはガンマ線放出核種(例えば、I−123、I−131)で放射性ラベル化されうる。放射性ラベル化されたアスパラギン酸塩残基は、サイクロトロンを用いるといった当業者に公知の任意の方法により製造されうる。「アスパラギン酸塩の類似体」の定義にはまた、水素原子がハロゲン原子により置換されたアスパラギン酸塩分子(例えば、フッ素化アスパラギン酸塩分子)も含まれる(例えば、参照により本明細書に詳細に引用される、Laverman et al., 2002を参照)。
【0051】
ここで、2以上のカルボキシル基を含む天然由来でないアミノ酸は、以下の化学構造を有するアミノ酸として定義される:
【0052】
【化1】
【0053】
式中、Rは、1以上のカルボキシル基を含む任意の部位である。例えば、Rは、当該基が1以上のカルボキシル置換基を含む限り、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、アルキルアリール基、炭素環式アリール基、ヘテロ環式アリール基、アミド基、チオアミド基、エステル基、アミン基、チオエーテル基、スルホニル基、または当業者に公知の他の任意の基でありうる。1以上のカルボキシル基に加えて、R基は、1以上のヒドロキシル基、シアノ基、アルコキシ基、ハロゲン、=O、=S、NO2基、N(CH3)2基、アミノ基、またはSH基などの追加の置換基を含んでもよい。
【0054】
「アルキル」基とは、飽和脂肪族炭化水素を意味し、直鎖状アルキル基、分枝鎖状アルキル基、および環状アルキル基が挙げられる。好ましくは、当該アルキル基は1〜12個の炭素原子を有する。
【0055】
「アルケニル」基とは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有する不飽和炭化水素基を意味し、直鎖状の基、分枝鎖状の基、および環状の基が挙げられる。好ましくは、当該アルケニル基は1〜12個の炭素原子を有する。
【0056】
「アルキニル」基とは、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含有する不飽和炭化水素基を意味し、直鎖状の基、分枝鎖状の基、および環状の基が挙げられる。好ましくは、当該アルケニル基は1〜12個の炭素原子を有する。より好ましくは、当該アルキニル基は、1〜7個の炭素、より好ましくは1〜4個の炭素を有する低級アルキニル基である。
【0057】
「アルコキシ」基とは、「−O−アルキル」基を意味し、ここで「アルキル」は上記で定義した通りである。
【0058】
「アリール」基とは、共役パイ電子系を有する少なくとも1つの環を有する芳香族基を意味し、炭素環式アリール基、ヘテロ環式アリール基、およびビアリール基が挙げられ、これらの全ては置換されていてもよい。好ましくは、当該アリールは、置換されたまたは非置換のフェニルまたはピリジルである。好ましいアリール置換基は、ハロゲン、トリハロメチル基、ヒドロキシル基、SH基、OH基、NO2基、アミン基、エステル基(例えば、COOH)、チオエーテル基、シアノ基、アルコキシ基、アルキル基、およびアミノ基である。
【0059】
「アルキルアリール」基とは、アリール基(上述した通り)に共有結合したアルキル(上述した通り)を意味する。好ましくは、当該アルキルは低級アルキルである。
【0060】
「炭素環式アリール」基とは、芳香族環上の環原子が全て炭素原子である基である。当該炭素原子は、上記アリール基について上述した好ましい基で置換されていてもよい。
【0061】
「ヘテロ環式アリール」基とは、芳香族環上の環原子として1〜3個のヘテロ原子を有し、環原子の残りが炭素原子である基である。適当なヘテロ原子としては、酸素、硫黄、および窒素が挙げられ、全て置換されていてもよいフラニル基、チエニル基、ピリジル基、N−低級アルキルピロロ基、ピリミジル基、ピラジニル基、イミダゾイル基などが挙げられる。
【0062】
「アミド」とは、−C(O)−NH−R1(この際、R1は、アルキル、アリール、アルキルアリール、または水素のいずれかである)を意味する。
【0063】
「チオアミド」とは、−C(S)−NH−R1(この際、R1は、アルキル、アリール、アルキルアリール、または水素のいずれかである)を意味する。
【0064】
「エステル」とは、−C(O)−OR’(この際、R’は、アルキル、アリール、アルキルアリール、または水素のいずれかである)を意味する。
【0065】
「アミン」とは、−N(R”)R”’(この際、R”およびR”’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アリール、またはアルキルアリールであり、ただし、R”およびR”’が双方とも水素となることはない)を意味する。
【0066】
「チオエーテル」とは、−S−R2(R2は、アルキル、アリール、またはアルキルアリールのいずれかである)を意味する。
【0067】
「スルホニル」とは、−S(O)2−R3(この際、R3は、アリール、C(CN)=C−アリール、CH2−CN、アルキルアリール、NH−アルキル、NH−アルキルアリール、またはNH−アリールである)を意味する。
【0068】
さらに、本発明の組成物のポリペプチドは、原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有するアミノ酸以外のアミノ酸を任意の数含みうる。これらの追加のアミノ酸は、原子価金属イオンに結合する機能を有する2以上のアミノ酸の配列のC末端またはN末端のいずれに存在してもよい。あるいは、当該追加のアミノ酸は、原子価金属イオンに結合する機能を有する連続したアミノ酸の配列中に介在してもよい。さらに、いくつかの実施形態において、ポリペプチドは分岐していてもよい。よって、本発明の組成物のポリペプチドは、原子価金属イオンに結合する機能を有する少なくとも2個の連続したアミノ酸を含む限り、合計で2〜約1000以上の合計アミノ酸残基を含みうる。
【0069】
特定の実施形態において、ポリペプチドのアミノ酸残基は連続しており、アミノ分子残基の配列を妨害する非アミノ分子を含まない。他の実施形態において、ポリペプチドは1以上の非アミノ分子部位を含みうる。
【0070】
本明細書で用いられる場合、「アミノ酸」とは、当業者に公知であろう任意のアミノ酸、アミノ酸誘導体、またはアミノ酸模倣体を意味する。当該アミノ酸は、L型またはD型のいずれであってもよい。従って、「アミノ酸」との語は、天然で合成されるタンパク質中の20の一般的なアミノ酸の少なくとも1つ、上述したアスパラギン酸塩またはグルタミン酸塩の任意の類似体、上述した2以上のカルボキシル基を含む天然由来でない任意のアミノ酸、または、これに限定されないが下記の表1に示されるもののような他の任意の修飾アミノ酸もしくは通常でないアミノ酸を含むアミノ分子配列を包含する。
【0071】
【表1】
【0072】
特定の実施形態において、本発明のポリペプチド含有組成物は、生体適合性のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを含む。本明細書で用いられる場合、「生体適合性」との語は、本明細書に記載の方法および用量に従って所定の被験者に適用または投与された際に有意な不都合な効果を生じない物質を意味する。被験者としては、これらに限定されないが、実験動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ)およびヒトなどの哺乳動物が挙げられる。かような不都合なまたは望ましくない効果は、有意な毒性または免疫学的副作用といったものである。特定の実施形態において、ポリペプチド含有組成物は、毒素、病原体および有毒な免疫原を本質的に含まない合成ポリペプチドであってもよい。
【0073】
本発明の組成物に含まれるポリペプチドは、標準的な分子生物学的技術、天然源からの単離、または化学合成といった当業者に公知の任意の技術により製造されうる。
【0074】
特定の実施形態において、ポリペプチドは精製されうる。一般的に、「精製された」とは、種々の他のアミノ酸配列を除去するための分画に供された特定のポリペプチド組成物を意味し、当業者には公知であろうが、当該組成物は、例えばタンパク質アッセイにより評価されうるその活性を実質的に保持している。
【0075】
B.原子価金属イオン
上述したように、本発明の特定の実施形態は、原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を配列中に含むポリペプチドを含む組成物に関する。本明細書において「原子価金属イオン」は、他の原子または分子と非共有結合などの結合を形成しうる金属イオンを意味するものとして定義される。他の原子または分子は、負に荷電していてもよい。当業者に公知の任意の原子価金属イオンが、本発明の組成物に含まれるものと解される。当業者であれば、原子価金属イオンおよびその用途に精通しているであろう。本発明の組成物の特定の実施形態において、原子価金属イオンは放射性核種である。本発明の組成物において用いられる原子価金属イオンの例としては、Tc−99m、Cu−60、Cu−61、Cu−62、Cu−67、In−111、Tl−201、Ga−67、Ga−68、As−72、Re−186、Re−188、Ho−166、Y−90、Sm−153、Sr−89、Gd−157、Bi−212、Bi−213が挙げられる。
【0076】
より優れた造影特性および低価格によって、可能な場合には123I、131I、67Gaおよび111Inでラベル化された化合物を、対応する99mTcラベル化合物で置き換える試みがなされている。好ましい物理的特性および極めて低い価格(0.21ドル/mCi)によって、99mTcは放射性医薬品をラベル化するのに好ましいものとなっている。
【0077】
ヒトにおける最適な放射性造影には多くの因子を考慮しなければならない。検出の効率を最大化するには、100〜200keVの範囲のガンマエネルギーを放出する原子価金属イオンが好ましい。「ガンマ放出体」は、本明細書では任意の範囲のガンマエネルギーを放出する剤として定義される。当業者であれば、ガンマ放出体である種々の原子価金属イオンに精通しているであろう。患者への吸収放射線量を最小化するには、放射性核種の物理的半減期は、造影作業が許す限り短くすべきである。任意の日に、そしてその日の任意の時刻に検査が行われるようにするには、放射性核種の源を常に治療施設で入手可能としておくことが有利である。99mTcは、140keVのガンマ放射線を放出し、6時間の物理的半減期を有し、モリブデン−99/テクネチウム−99m生成器を用いて施設内で用意に入手可能であることから、好ましい放射性核種である。当業者であれば、ヒトにおける最適な放射性造影を決定する方法に精通しているであろう。
【0078】
本発明のポリペプチドは、ポリペプチドにキレートされた1以上の原子価金属イオンを含みうる。特定の実施形態において、このキレート化は、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩類似体、またはアスパラギン酸塩類似体のカルボキシル部位へのものである。いくつかの実施形態において、原子価金属イオンのキレート化は、第2の部位のカルボキシル基へのような、第2の部位へのものである。ある実施形態では、原子価金属イオンのキレート化は、ポリペプチドのグルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩類似体、またはアスパラギン酸塩類似体のカルボキシル基へのもの、および、第2の部位の1以上のカルボキシル基へのものである。さらなる実施形態において、原子価金属イオンは、ポリペプチドの3以上のグルタミン酸塩のカルボキシル部位にキレートされる。他の実施形態において、原子価金属イオンは、ポリペプチドの3以上のアスパラギン酸塩部位にキレートされる。これらの実施形態は、ポリ(グルタミン酸塩)またはポリ(アスパラギン酸塩)ポリペプチドにキレートされた複数の原子価金属イオンを含みうる。
【0079】
本発明の特定の実施形態において、原子価金属イオンは治療用原子価金属イオンである。例えば、いくつかの実施形態において、原子価金属イオンはβ放出体である治療用放射性核種である。本明細書で定義されるように、β放出体は任意の範囲のβエネルギーを放出する任意の剤である。β放出体の例としては、Re−188、Re−186、Ho−166、Y−90、Bi−212、Bi−213、およびSn−153が挙げられる。当該β放出体は、ガンマ放出体でもあってもよいし、なくてもよい。当業者であれば、癌のような 過剰増殖疾患の治療におけるβ放出体の使用に精通しているであろう。
【0080】
本発明の組成物のさらなる実施形態において、原子価金属イオンはβ放出体またはガンマ放出体以外の治療用原子価金属イオンである。例えば、治療用金属イオンは、白金、コバルト、銅、ヒ素、セレン、またはタリウムであってもよい。これらの治療用金属イオンを含む組成物は、癌治療のような過剰増殖疾患の治療を指向した方法において適用されうる。本発明の組成物を用いた多重化学療法および放射線療法を行う方法については、以下でより詳細に説明する。
【0081】
C.治療用部位
本発明の組成物の特定の実施形態においては、第2の部位がポリペプチドに結合している。本明細書において、「部位」とは、分子の一部として定義される。特定の実施形態において、第2の部位は治療用部位である。本明細書において、「治療用部位」とは、任意の治療剤を意味する。本明細書において、「治療剤」とは、疾患もしくは障害を治療し、疾患もしくは障害を予防し、または正常な生理的プロセスの変化もしくは崩壊を治療もしくは予防する目的で、被験者に投与され、または細胞もしくは組織と接触しうる任意の化合物または物質または薬剤を包含するものとして定義される。例えば、治療用部位は、化学療法剤のような抗癌部位でありうる。本発明の特定の実施形態において、治療用部位は、治療用アミノ酸配列に融合または化学的に共役した治療用アミノ酸配列である。かような化学共役体および融合タンパク質については、本明細書の他の欄においてさらに説明する。
【0082】
抗癌部位の例としては、当業者に公知の任意の化学療法剤が挙げられる。かような化学療法剤の例としては、これらに限定されないが、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イフォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソウレア、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合剤、タキソール、ゲムシタビン、ナベルビン、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランスプラチナ(transplatinum)、5−フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびメトトレキサート、またはこれらの任意の類似体もしくは誘導体が挙げられる。特定の実施形態においては、抗癌部位はメトトレキサートである。
【0083】
抗癌剤の追加の例としては、表2に列挙した癌の化学療法用の選択薬が挙げられる。
【0084】
表2
癌の化学療法用の選択薬
以下の表には、アメリカ合衆国およびカナダで癌の治療に用いられている薬剤、並びにその主要な副作用が列挙されている。メディカルレター(Medical Letter)のコンサルタントの意見に基づく選択薬のリストである。米国食品医薬品局により承認されていない適応症について列挙されている薬剤もある。抗癌剤およびそれらの副作用が続く。本発明の目的では、これらのリストは例示的なものであり、完全なものではない。
【0085】
【表2−1】
【0086】
【表2−2】
【0087】
【表2−3】
【0088】
【表2−4】
【0089】
【表2−5】
【0090】
【表2−6】
【0091】
【表2−7】
【0092】
D.診断用部位
本発明の組成物の特定の実施形態においては、診断用部位がポリペプチドに結合している。本明細書で定義される場合、「診断用部位」とは、疾患もしくは障害もしくは細胞の異常な生理機能に関連した症状の診断を促進する目的で、被験者に投与され、または組織と接触しうる化学物質または化合物である分子の一部である。当業者に公知の任意の診断剤が診断用部位として解釈される。特定の実施形態において、診断用部位は、原子価金属イオンに結合しうるポリペプチドに化学的に共役または融合した診断用アミノ酸配列である。
【0093】
診断用部位の一例は、造影部位であろう。本明細書で定義される場合、「造影部位」とは、画像診断技術を用いた被験者、組織または細胞の特定の性質や状態の可視化を促進する目的で、被験者に投与され、組織と接触し、または細胞にアプライされうる剤または化合物である分子の一部である。画像診断技術については、以下でより詳細に説明する。当業者に公知の任意の造影剤が本発明の造影部位として解釈される。よって例えば、本発明の組成物の特定の実施形態において、組成物は多様式の造影技術に適用されうる。二重造影および多様式造影については、本明細書において以下でより詳細に説明する。
【0094】
特定の実施形態において、造影部位は造影剤である。その例としては、CT造影剤、MRI造影剤、光学造影剤、超音波造影剤、または当業者に公知の他の任意の形態の画像診断技術に用いられる他の任意の造影剤が挙げられる。その例としては、ジアトリゾエート(CT造影剤)、ガドリニウムキレート(MRI造影剤)、およびフルオレセインナトリウム(光学造影剤)が挙げられる。造影剤のその他の例については、本明細書において以下でより詳細に説明する。当業者であれば、本発明のポリペプチドにおける造影部位として用いられうる広範なタイプの造影剤に精通しているであろう。
【0095】
E.組織標的部位
本発明の組成物のいくつかの実施形態においては、第2の部位がポリペプチドに結合しており、そして当該第2の部位が組織標的部位である。本明細書において、「組織標的部位」は、組織に結合または付着しうる分子の一部を意味するものとして定義される。この結合は当業者に公知の任意の結合機構によるものでありうる。例としては、代謝拮抗物質、アポトーシス剤、生体還元剤、シグナル伝達性治療剤、受容体反応性剤、または細胞周期に特異的な剤が挙げられる。組織は任意のタイプの組織(例えば、細胞)でありうる。例えば、細胞は、被験者の細胞(例えば、癌細胞)でありうる。特定の実施形態において、組織標的部位は、原子価金属イオンに結合しうるポリペプチドに化学的に共役または融合した組織標的アミノ酸配列である。
【0096】
いくつかの実施形態において、組織標的部位は「標的リガンド」である。本明細書において、「標的リガンド」は、他の分子に特異的に結合する分子または分子の一部として定義される。当業者であれば、本発明との関係で標的リガンドとして用いられうる多くの剤に精通しているであろう。
【0097】
標的リガンドの例としては、疾患細胞周期標的化合物、腫瘍血管新生標的リガンド、腫瘍アポトーシス標的リガンド、疾患受容体標的リガンド、薬剤ベースのリガンド、抗微生物剤、腫瘍低酸素症標的リガンド、グルコース模倣体、アミフォスチン、アンギオスタチン、EGF受容体リガンド、カペシタビン、COX−2阻害剤、デオキシシチジン、フラーレン、ハーセプチン、ヒト血清アルブミン、ラクトース、黄体形成ホルモン、ピリドキサール、キナゾリン、サリドマイド、トランスフェリン、およびトリメチルリジンが挙げられる。
【0098】
本発明のさらなる実施形態において、組織標的部位は抗体である。任意の抗体が、本発明との関係で組織標的部位として解釈される。例えば、抗体はモノクローナル抗体でありうる。当業者であれば、モノクローナル抗体、モノクローナル抗体の調製方法、およびモノクローナル抗体をリガンドとして使用する方法に精通しているであろう。本発明の特定の実施形態において、モノクローナル抗体は腫瘍マーカーに対する抗体である。いくつかの実施形態において、モノクローナル抗体はモノクローナル抗体C225、モノクローナル抗体CD31、またはモノクローナル抗体CD40である。
【0099】
単一の組織標的部位、または2以上のかような組織標的部位が、本発明のポリペプチドに結合しうる。これらの実施形態においては、任意の数の組織標的部位が、本明細書に記載のポリペプチドに結合しうる。よって、本発明のポリペプチドには1以上の組織標的部位が結合しうる。組織標的部位は任意の様式でポリペプチドに結合しうる。例えば、組織標的部位は、アミド結合またはエステル結合によりポリペプチドに結合してもよい。当業者であれば、これらの剤の化学や、これらの剤を本発明のポリペプチドの一部として導入する方法に精通しているであろう。本発明の化合物の合成方法については、以下で詳細に説明する。
【0100】
組織標的部位、および化合物との共役に関する情報は、それぞれが全体として参照により本明細書の本欄および他の全ての欄に引用される、米国特許第6,692,724号、米国特許出願第09/599,152号、米国特許出願第10/627,763号、米国特許出願第10/672,142号、米国特許出願第10/703,405号、米国特許出願第10/732,919号により提供されている。
【0101】
組織標的部位の代表的な例を以下に説明する。
【0102】
1.疾患細胞周期標的化合物
疾患細胞周期標的とは、増殖している細胞においてアップレギュレートされている剤の標的化を意味する。「疾患細胞周期標的化合物」は、増殖している細胞においてアップレギュレートまたはダウンレギュレートされている剤の測定に用いられる化合物である。例えば、細胞は癌細胞でありうる。この目的に用いられる化合物は、細胞における種々のパラメータ(例えば、腫瘍細胞のDNA量)を測定するのに用いられうる。
【0103】
これらの剤の多くはヌクレオシド類似体である。例えば、ピリミジンヌクレオシド(例えば、2’−フルオロ−2’−デオキシ−5−ヨード−1−β−D−アラビノフラノシルウラシル[FIAU]、2’−フルオロ−2’−デオキシ−5−ヨード−1−β−D−リボフラノシルウラシル[FIRU]、2’−フルオロ−2’−5−メチル−1−β−D−アラビノフラノシルウラシル[FMAU]、2’−フルオロ−2’−デオキシ−5−ヨードビニル−1−β−D−リボフラノシルウラシル[IVFRU])、並びにアシクログアノシン:9−[(2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)エトキシ)メチル]グアニン(GCV)および9−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)ブチル]グアニン(PCV)(Tjuvajev et al., 2002; Gambhir et al., 1998; Gambhir et al., 1999)および、8−フルオロ−9−[(2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)エトキシ)メチル]グアニン(FGCV)(Gambhir et al., 1999; Namavari et al., 2000)、8−フルオロ−9−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)ブチル]グアニン(FPCV)(Gambhir et al., 2000; Iyer et al., 2001)、9−[3−フルオロ−1−ヒドロキシ−2−プロポキシメチル]グアニン(FHPG)(Alauddin et al., 1996; Alauddin et al., 1999)、および9−[4−フルオロ−3−(ヒドロキシメチル)ブチル]グアニン(FHBG)(Alauddin and Conti, 1998; Yaghoubi et al., 2001)のような他の18Fラベルアシクログアノシン類似体が、野生型および変異体(Gambhir et al., 2001)におけるHSV1−tk発現を造影するためのレポーター物質として開発されている。本発明の組成物の特定の実施形態は、疾患細胞周期標的リガンドとしてアデノシンおよびペンシクロビル(グアニン)を含む。当業者であれば、疾患細胞周期標的化に用いられるこれらの剤およびその他の剤に精通しているであろう。
【0104】
2.血管新生標的リガンド
「血管新生標的リガンド」とは、新血管形成(例えば、腫瘍細胞の新血管形成)に結合しうる剤を意味する。この目的に用いられる剤は、種々の腫瘍測定(例えば、腫瘍の血管床のサイズの測定や、腫瘍容積の測定)を行うためのものとして当業者に公知である。これらの剤のなかには血管壁に結合するものもある。当業者であれば、この目的で当該用途に利用可能な剤に精通しているであろう。
【0105】
本願を通して、「腫瘍血管新生の標的化」とは、腫瘍の新血管形成および腫瘍細胞に結合する剤を用いることを意味する。この目的に用いられる剤は、種々の腫瘍測定(例えば、腫瘍の血管床のサイズの測定や、腫瘍容積の測定)を行うためのものとして当業者に公知である。これらの剤のなかには血管壁に結合するものもある。当業者であれば、この目的で当該用途に利用可能な剤に精通しているであろう。腫瘍血管新生標的リガンドは、上述した腫瘍血管新生の標的化の目的で用いられるリガンドである。その例としては、COX−2阻害剤、抗EGF受容体リガンド、ハーセプチン、アンギオテンシン、C225、およびサリドマイドが挙げられる。COX−2阻害剤としては、例えば、セレコキシブ、ロフェコキシブ、エトリコキシブ、およびこれらの剤の類似体が挙げられる。
【0106】
3.腫瘍アポトーシス標的リガンド
「腫瘍アポトーシスの標的化」とは、アポトーシスを受けている細胞、またはアポトーシスを受けるリスクのある細胞に結合する剤を用いることを意味する。これらの剤は、一般的には、細胞群(例えば、腫瘍)におけるアポトーシスまたはプログラム細胞死の程度またはリスクの指標を提供する目的で用いられる。当業者であれば、この目的で用いられる剤に精通しているであろう。「腫瘍アポトーシス標的リガンド」は、本段落で定義した「腫瘍アポトーシスの標的化」ができるリガンドである。本発明の標的リガンドは、TRAIL(TNF関連アポトーシス誘導リガンド)モノクローナル抗体を含みうる。TRAILは、多様な形質転換細胞系において速やかにアポトーシスを誘導する腫瘍壊死因子リガンドファミリーの1つである。本発明の標的リガンドはまた、カスパーゼ−3の基質(例えば、4つのアミノ酸配列:アスパラギン酸−グルタミン酸−バリン−アスパラギン酸を含むペプチドまたはポリペプチド)、カスパーゼ−3の基質(例えば、アミノ酸配列:アスパラギン酸−グルタミン酸−バリン−アスパラギン酸を含むペプチドまたはポリペプチド)、およびBclファミリーの任意のメンバーをも含みうる。Bclファミリーのメンバーの例としては、例えば、Bax、Bcl−xL、Bid、Bad、Bak、およびBcl−2が挙げられる。当業者であれば、Bclファミリーおよびそれらの対応する基質に精通しているであろう。
【0107】
腫瘍細胞の細胞保護機能を抑制し、アポトーシス感受性を回復させるとの考えに基づき、アポトーシス抑制剤は薬剤開発の標的とされている。
【0108】
4.疾患受容体標的リガンド
「疾患受容体の標的化」においては、疾患状態(例えば、癌)において過剰に発現している特定の細胞受容体に結合する能力を有することから特定の剤が用いられる。標的化されるかような受容体の例としては、エストロゲン受容体、アンドロゲン受容体、下垂体受容体、トランスフェリン受容体、およびプロゲステロン受容体が挙げられる。疾患受容体標的化に適用されうる剤の例としては、アンドロゲン、エストロゲン、ソマトスタチン、プロゲステロン、トランスフェリン、黄体形成ホルモン、および黄体形成ホルモン抗体が挙げられる。
【0109】
ペンテトレオチド、オクトレオチド、トランスフェリン、および下垂体ペプチドのような放射性ラベルされたリガンドは、細胞受容体(特定の細胞で過剰発現しているものもある)に結合する。これらのリガンドは免疫原性がなく、血清から速やかに排泄されるため、抗体造影と比較して受容体の造影がより確実になると思われる。
【0110】
本明細書においては、葉酸受容体が疾患受容体の他の例として挙げられる。葉酸受容体(FR)は、多くのタイプの新生細胞(例えば、肺、乳房、卵巣、頸部、結腸直腸、鼻咽頭、腎臓腺癌、悪性黒色腫、および上衣腫)で過剰に発現しているが、もともとはいくつかの正常分化組織(例えば、脈絡叢、胎盤、甲状腺、および腎臓)のみで発現している(Weitman et al., 1992a; Campbell et al., 1991; Weitman et al., 1992b; Holm et al., 1994; Ross et al., 1994; Franklin et al., 1994; Weitman et al., 1994)。FRは、葉酸受容体を過剰に発現している腫瘍細胞中に、葉酸共役タンパク質毒素、薬剤/アンチセンスオリゴヌクレオチド、およびリポソームを送達するのに用いられている(Ginobbi et al., 1997; Leamon and Low, 1991; Leamon and Low, 1992; Leamon et al., 1993; Lee and Low, 1994)。さらに、抗T細胞受容体抗体に連結された抗FR抗体を含有する二重特異性抗体が、T細胞をFR陽性腫瘍細胞に標的化するために用いられており、現在卵巣腫瘍に対して臨床試験中である(Canevari et al., 1993; Bolhuis et al., 1992; Patrick et al., 1997; Coney et al., 1994; Kranz et al., 1995)。
【0111】
葉酸受容体標的リガンドの例としては、葉酸および葉酸類似体が挙げられる。好ましい葉酸受容体標的リガンドとしては、葉酸塩、メトトレキサート、およびトムデックスが挙げられる。葉酸および、メトトレキサートのような葉酸拮抗物質は、古典的な還元葉酸輸送系に加えて、高親和性葉酸受容体(グリコシルホスファチジルイノシトールに連結された葉酸結合膜タンパク質)を介して細胞中に入る(Westerhof et al., 1991; Orr et al., 1995; Hsueh and Dolnick, 1993)。
【0112】
5.薬剤の評価
特定の薬剤ベースのリガンドは、薬剤に対する被験者の薬理学的応答を測定するのに適用されうる。薬剤の投与に対する被験者の応答を測定する際には、広範なパラメータが測定されうる。当業者であれば、測定されうる応答のタイプに精通しているであろう。これらの応答は、評価される特定の薬剤、被験者において治療される特定の疾患または症状、および被験者の特性などの種々の因子に一部依存する。薬剤ベースのリガンドの例としては、カルニチンおよびプロマイシンが挙げられる。
【0113】
6.抗微生物剤
任意の抗微生物剤が、標的リガンドとして含まれるものと解される。好ましい抗微生物剤としては、グラム陽性および陰性細菌に対するアンピシリン、アモキシシリン、ペニシリン、セファロスポリン、クリダマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ナタマイシン、ナフシリン、リファンピン、テトラサイクリン、バンコマイシン、ブレオマイシン、およびドキシサイクリン、並びに真菌に対するアムホテリシンB、アマンタジン、ナイスタチン、ケトコナゾール、ポリミキシン、アシクロビル、およびガンシクロビルなどが挙げられる。当業者であれば、抗微生物剤と考えられる種々の剤に精通しているであろう。
【0114】
7.グルコース模倣体
グルコースを模倣した剤もまた、標的リガンドとして含まれるものと解される。好ましいグルコースや糖の模倣体としては、ネオマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、パロマイシン、アミカシン、トブラマイシン、ネチルマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、マイクロマイシン、リビドマイシン、ジベカシン、イセパマイシン、アストロマイシン、アミノグリコシド類、グルコースまたはグルコサミンが挙げられる。
【0115】
8.腫瘍低酸素症標的リガンド
本発明のいくつかの実施形態において、標的リガンドは腫瘍低酸素症標的リガンドである。腫瘍細胞は、酸素の存在下では非存在下よりも従来の放射線に敏感であり、腫瘍内に少数の低酸素細胞が存在すると放射線に対する応答が制限されうる(Hall, 1988; Bush et al., 1978; Gray et al., 1958)。低酸素による放射線抵抗性は動物の多くの腫瘍において示されているが、ヒトではごく少数の腫瘍タイプにおいてのみである(Dische, 1991; Gatenby et al., 1988; Nordsmark et al., 1996)。多くの場合、ヒトの腫瘍における低酸素症発生の発生は、組織学的知見や動物の腫瘍での研究から推論されたものである。低酸素症をインビボで立証するには酸素電極を用いた組織の測定が必要であり、これらの技術は侵襲的であることから、医療用途は制限されている。
【0116】
腫瘍低酸素症標的リガンドの一例であるミソニダゾールは、低酸素細胞の増感剤であり、MISOを異なるラジオアイソトープ(例えば、18F、123I、99mTc)でラベル化すると、PETまたは平面シンチグラフィによって、低酸素だが代謝は活性な腫瘍を酸素が豊富な活性腫瘍と区別するのに有用であろう。[18F]フルオロミソニダゾール(FMISO)は、腫瘍低酸素症を評価するためにPETで用いられている。近年の研究によれば、PETでは[18F]FMISOを通じて細胞の酸素含量をモニターできることから、放射線に対する腫瘍の応答を予測するのに高い潜在性を秘めていることが示されている(Koh et al., 1992; Valk et al., 1992; Martin et al., 1989; Rasey et al., 1989; Rasey et al., 1990; Yang et al., 1995)。PETによれば、視準をしなくとも高解像度が得られるが、臨床条件ではPETアイソトープの使用コストにより制限を受ける。
【0117】
F.合成方法
1.本発明の組成物用の試薬の源
本発明の組成物を調製するための試薬は、任意の源から入手されうる。広範な源が問う業者に公知である。試薬は例えば、商業源から、化学合成から、または天然資源から入手されうる。試薬は当業者に公知の技術を用いて単離および精製されうる。例えば、特定の分子量のポリヌクレオチドは、特定の透析膜を用いて単離されうる。本発明の組成物において用いられる原子価金属イオンの例としては、生成器(例えば、Tc−99m、Cu−62、Cu−67、Ga−68、Re−188、Bi−212)、サイクロトロン(例えば、Cu−60、Cu−61、As−72、Re−186)、および商業源(例えば、In−111、Tl−201、Ga−67、Y−90、Sm−153、Sr−89、Gd−157、Ho−166)から得られる原子価金属イオンが挙げられる。未結合の遊離金属イオンは、イオン交換樹脂を用いて、またはトランスキレート剤(例えば、グルコヘプトン酸塩、グルコン酸塩、グルカ酸塩、アセチルアセトナート)を添加することにより精製されうる。当業者であれば、イオン交換樹脂やトランスキレート剤の使用などの精製方法に精通しているであろう。
【0118】
2.ポリペプチドへの原子価金属イオンの配位
ガドリニウム、ガリウム、レニウム、テクネチウムまたは白金のような原子価金属イオンは、キレート剤がなくともポリペプチドにキレートされる。この反応は、水性媒体中または非水性媒体中で行われうる。最も好ましくは、この共役は水性媒体中で行われる。
【0119】
いくつかの実施形態において、原子価金属イオンは、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩類似体、アスパラギン酸塩類似体、および2以上のカルボキシル基を含む天然由来でないアミノ酸からなる群から選択される2以上の連続したアミノ酸の酸基の1つにキレートされる。特定の実施形態において、原子価金属イオンは、一連の連続したグルタミン酸残基またはアスパラギン酸塩残基の4個または5個のカルボキシル基にキレートされる。
【0120】
本発明では、原子価金属イオンをポリペプチドに配位させる当業者に公知の任意の方法が適用されうる。例えば、本発明のいくつかの実施形態においては、ポリペプチドを水に溶解させ、次いで塩化スズ(II)溶液を添加する。そして原子価金属イオン(例えば、Na99mTcO4、またはNa186/188ReO4)が添加されうる。塩化スズ(II)溶液を必要としない金属もある(塩化ガリウム、塩化ガドリニウム、塩化銅、塩化コバルト、白金)。放射化学的純度を測定するには、当業者に公知の任意の方法が用いられうる。例えば、放射化学的純度は、メタノール:酢酸アンモニウム(1:4)で溶出される薄層クロマトグラフィ(TLC)を用いて測定されうる。
【0121】
原子価金属イオン−ポリペプチド共役体を溶液から単離するには、当業者に公知の任意の方法が用いられうる。例えば、いくつかの実施形態においては、反応溶液を透析により精製し、蒸発により乾燥させ、その後使用するために水中に再構成する。
【0122】
3.ポリペプチドへの第2の部位の共役
診断用部位、治療用部位、または組織標的部位をポリペプチドに共役させるには、当業者に公知の任意の方法が用いられうる。例えば、第2の部位はポリペプチドのグルタミン酸塩残基またはアスパラギン酸塩残基のカルボキシル基に共役されて、カルボン酸塩−金属イオン錯体を形成しうる。
【0123】
反応溶液においては任意の試薬の比率が採用されうる。例えば、いくつかの実施形態において、前記部位に対するポリペプチドの比は水中で1:1である。この比が異なれば、水溶液中での溶解度および粘度が変化しうる。本発明の方法のいくつかの実施形態においては、第2の部位をポリペプチドにカップリングさせるためにカップリング剤が用いられる。特定の実施形態において、水性条件下で用いられるカップリング剤は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド−HCl(EDC)である。非水性条件下で用いられるカップリング剤の他の例は、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)である。本発明の方法のいくつかの実施形態においては、第2の部位をまず水に溶解させてもよい。次いで、第2の部位を含むこの水溶液が、ポリペプチドを含む水溶液に添加されうる。次いで反応混合物を25時間室温にて撹拌する。次いで、当業者に公知の任意の方法により溶液から生成物を単離する。例えば、生成物は1000ダルトンでのカットオフを有する透析膜を用いて溶媒から透析されうる。次いで、生成物は速やかに用いられてもよいし、凍結乾燥・貯蔵されてもよい。
【0124】
第2の部位の共役は、ポリペプチドの任意の残基に対するものでありうる。特定の好ましい実施形態において、この共役はポリペプチドの酸基に対するものである。ポリペプチドは単一の第2の部位を含んでもよいし、複数の第2の部位を含んでもよい。本発明の特定の実施形態において、ポリペプチドの各カルボキシル基は第2の部位に共役しているか、または原子価金属イオンに配位している。2以上のタイプの第2の部位が特定のポリペプチドに共役してもよい。例えば、いくつかの実施形態においては、治療用部位および組織標的部位が単一のポリペプチドに共役する。メトトレキサートまたはドキソルビシンのような治療剤は、ポリペプチドのアミノ部位または酸部位に共役しうる。ジアトリゾ酸、イオタラム酸、およびイオパノ酸のような診断剤は、ポリペプチドのアミノ部位または酸部位に共役しうる。低酸素マーカー(メトロニダゾール、ミソニダゾール)、解糖マーカー(糖)、アミノ酸(例えば、チロシン、リジン)、細胞周期マーカー(例えば、アデノシン、グアノシン)、または受容体マーカー(例えば、エストロゲン、葉酸塩、アンドロゲン)などの組織標的部位は、ポリペプチドのアミノ部位または酸部位に共役しうる。特定の実施形態において、共役はポリペプチドの酸部位に対するものである。他の実施形態においては、2以上の異なる治療用部位または診断用部位が同一のポリペプチドに共役する。例えば、特定の実施形態においては、診断剤(例えば、X線造影剤または光学造影剤)および放射性金属物質が同一のポリペプチドに共役する。当該ポリペプチドは、PET/CT、SPECT/CT、または光学/CT用途に用いられうる。さらなる実施形態においては、放射性でない金属物質(例えば、ガドリニウム、鉄、またはマンガン)がポリペプチドに配位する。当該ポリペプチドは、PET/MRI、SPECT/MRI、または光学/MRI用途などの任意の造影形態で使用されうる。さらなる実施形態においては、治療剤および放射性治療用金属物質が同一のポリペプチドに共役する。かような剤は、放射化学療法に用いられうる。
【0125】
4.キメラポリペプチドの生成
本発明の特定の実施形態は、概説すれば、(a)組織標的アミノ酸配列、診断用アミノ酸配列、および/または治療用アミノ酸配列を配列中に含むポリペプチド;並びに、(b)前記ポリペプチドに非共有結合的に結合した1以上の原子価金属イオンを含む組成物に関する。本明細書において、「組織標的アミノ酸配列」は、組織に結合または付着しうるアミノ酸配列を意味するものと定義される。「診断用アミノ酸」は、疾患もしくは障害もしくは細胞の異常な生理機能に関連した症状の診断を促進する目的で、被験者に投与され、または組織と接触しうるアミノ酸配列である。本明細書において、「治療用アミノ酸配列」は、疾患もしくは障害を治療し、疾患もしくは障害を予防し、または正常な生理的プロセスの変化もしくは崩壊を治療もしくは予防する目的で、被験者に投与され、または細胞もしくは組織と接触しうるアミノ酸配列を意味するものと定義される。例えば、治療用アミノ酸配列は、化学療法剤などの抗癌アミノ酸配列でありうる。化学療法剤については、本明細書の他の欄で説明する。
【0126】
1以上の原子価金属イオンは、組織標的アミノ酸配列、診断用アミノ酸配列、および/または治療用アミノ酸配列に非共有結合的に付着してもよいし、あるいは1以上の原子価金属イオンは、別のアミノ酸配列でポリペプチドに非共有結合的に付着してもよい。
【0127】
例えば、いくつかの実施形態において、原子価金属イオンは、原子価金属イオンに結合する機能を有する1以上のアミノ酸を配列中に含む別のアミノ酸配列に付着する。例えば、この配列は、ポリ(グルタミン酸塩)アミノ酸配列またはポリ(アスパラギン酸)アミノ酸配列でありうる。当該アミノ酸配列は、組織標的アミノ酸配列、診断用アミノ酸配列、または治療用アミノ酸配列と融合または化学的に共役してキメラポリペプチドを生成する。
【0128】
本発明のキメラポリペプチドは、化学合成法または2つの部位の化学連結により製造されうる。特定の実施形態において、キメラポリペプチドは、原子価金属イオンに結合するアミノ酸配列のコード配列と、組織標的アミノ酸配列、診断用アミノ酸配列、または治療用アミノ酸配列のコード配列とを、適当な宿主細胞中での融合ポリヌクレオチドの発現を指示する調節配列の制御のもとで融合することにより、製造されうる。
【0129】
2つの全長コード配列の融合は、分子生物学の当業者に周知の方法により達成されうる。2つの異なるエンコード生成物の製造を避けるには、融合ポリヌクレオチドは、第1のコード配列の5’末端にAUG翻訳開始コドンを含み、第2のコード配列の開始コドンを含まないことが好ましい。加えて、発現した生成物を宿主細胞内の特定の場所またはコンパートメントに標的化し、遺伝子発現後の分泌またはその後の精製を容易にする目的で、リーダー配列をポリヌクレオチドの5’末端に配置してもよい。2つのコード配列は、リンカーを介さずに直接融合されてもよいし、1〜3回繰り返されるペンタマーGly−Gly−Gly−Gly−Ser(配列番号1)からなるもののような柔軟なポリリンカーを用いて融合されてもよい(参照により本明細書に詳細に引用される、Huston et al., 1988を参照)。用いられうる他のリンカーとしては、Glu−Gly−Lys−Ser−Ser−Gly−Ser−Gly−Ser−Glu−Ser−Lys−Val−Asp(配列番号2)(参照により本明細書に詳細に引用される、Chaudhary et al., 1990)およびLys−Glu−Ser−Gly−Ser−Val−Ser−Ser−Glu−Gln−Leu−Ala−Gln−Phe−Arg−Ser−Leu−Asp(配列番号3)(参照により本明細書に詳細に引用される、Bird et al., 1988)が挙げられる。
【0130】
G.造影様式および造影剤
本発明の特定の実施形態は、被験者におけるある部位を造影する方法であって、(a)本発明の原子価金属イオン−ポリペプチドキレートを含む組成物の診断上有効な量を被験者に投与すること;並びに、(b)前記部位に局在する原子価金属イオン−ポリペプチドキレートからの信号を検出することを含む方法に関する。さらには、上述したように、特定の実施形態において、診断用部位/造影部位である第2の部位がポリペプチド−原子価金属イオンキレートに共役してもよい。当業者に公知の任意の造影様式が、前記部位に局在する原子価金属イオン−ポリペプチドキレートまたは造影部位−ポリペプチド−原子価金属イオン錯体からの信号を検出するための手段として解釈される。造影様式の例については、以下に説明する。
【0131】
1.造影様式の例
a.ガンマカメラ造影
造影のための種々の核医学技術が当業者に公知である。本発明の造影方法との関係では、レポーターからの信号を測定する目的で、任意のこれらの技術が適用されうる。例えば、ガンマカメラ造影は、レポーター由来の信号を測定するのに用いられうる造影方法として解釈される。当業者であれば、ガンマカメラ造影を適用するための技術に精通しているであろう(例えば、参照により本明細書に詳細に引用される、Kundra et al., 2002を参照)。ある実施形態においては、信号の測定に111−In−オクトレオチド−SSRT2Aレポーターシステムのガンマカメラ造影を用いてもよい。
【0132】
b.PETおよびSPECT
放射性核種の造影様式(陽電子放出断層撮影法、{PET};単光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT))は、放射性核種でラベル化された放射性トレーサの位置および濃度をマッピングする、断層造影による診断技術である。CTおよびMRIでは腫瘍の位置および広がりについてかなりの解剖学的情報が得られるが、これらの造影様式では、浸潤性病変を浮腫、放射線壊死、グレーディング(grading)またはグリオーシスと十分に区別することができない。PETおよびSPECTは、代謝活性の測定によって腫瘍を突き止めて特性を明らかにする目的で用いられうる。
【0133】
PETおよびSPECTによれば、細胞の生存能力といった細胞レベルでの情報に関する情報が得られる。PETでは、陽電子を放出するわずかに放射性の物質を、患者が摂取するか患者に注射する。当該物質は、体内を動くにつれてモニターされうる。例えばある一般的な用途では、陽電子放出体が付着したグルコースを患者に与え、患者が種々の作業を行う際にその脳をモニターする。脳は機能する際にグルコースを利用するため、PET造影によれば脳のどこの活性が高いかがわかる。
【0134】
単光子放出コンピュータ断層撮影法(すなわち、SPECT)は、PETと密接な関係がある。これら2つの主な違いは、SPECTでは陽電子放出物質の代わりに高エネルギーの光子を放出する放射性トレーサを利用するということである。SPECTは冠動脈疾患の診断に有用であり、アメリカ合衆国では既に毎年250万のSPECTによる心臓の研究が行われている。
【0135】
PET造影用の放射性医薬品は通常、11C、13N、15O、18F、82Rb、62Cu、および68Gaのような陽電子放出体を用いてラベル化される。SPECT放射性医薬品は通常、99mTc、201Tl、および67Gaのような陽電子放出体を用いてラベル化される。脳の造影に関して、PETおよびSPECT放射性医薬品は、血液脳関門の透過性、脳灌流および代謝受容体の結合、並びに抗原抗体結合によって分類される(Saha et al., 1994)。99mTcO4−DTPA、201Tl、および[67Ga]クエン酸塩のような血液脳関門SPECT剤は、正常な脳細胞からは排除されるが、BBBの変化によって腫瘍細胞中には侵入する。[123I]IMP、[99mTc]HMPAO、[99mTc]ECDのようなSPECT灌流剤は親油性の剤であり、よって正常な脳内にも拡散する。重要な受容体結合SPECT放射性医薬品としては、[123I]QNE、[123I]IBZM、および[123I]イオマゼニルが挙げられる。これらのトレーサは特定の受容体に結合し、受容体関連疾患の評価に重要である。
【0136】
c.コンピュータ断層撮影(CT)
コンピュータ断層撮影(CT)は、本発明との関係で造影様式として解釈される。ときには1000を超える一連のX線を種々の角度から撮り、次いでコンピュータを用いてそれらを結合させることで、CTは身体の任意の部位の3次元像を構築することを可能とした。コンピュータは、任意の角度から任意の深さで2次元の断面を表示するようにプログラムされている。
【0137】
CTでは、初期のCTスキャンが診断用ではない場合に、放射線不透過性の造影剤を静脈注射することで軟部組織塊の同定および描写が支援されうる。同様に、造影剤は軟部組織または骨病変の血管の評価を助ける。例えば、造影剤を用いると、腫瘍と、隣接する血管構造との関係の描写の手助けとなる。
【0138】
CT造影剤としては、例えば、ヨウ素化造影剤が挙げられる。これらの剤の例としては、イオタラム酸塩、イオヘキソール、ジアトリゾエート、イオパミドール、エチオドール、およびイオパノ酸塩が挙げられる。ガドリニウム剤もまた、CT造影剤として有用であることが報告されている(例えば、Henson et al., 2004を参照)。例えば、ガドペンテト酸塩の剤がCT造影剤として用いられている(Strunk and Schild, 2004に記載)。
【0139】
d.磁気共鳴断層撮影(MRI)
磁気共鳴断層撮影(MRI)は、CTよりも新しく、高強度磁石および高周波信号を利用して画像を生成する造影様式である。生物組織において最も豊富な分子種は水である。造影実験において究極的に信号を発生させるのは、水のプロトン核の量子力学的スピンである。MRIでは、造影すべきサンプルを強い静磁場(1〜12テスラ)中に配置し、パルス状の高周波(RF)放射によってスピンを励起させて、サンプルでの正味の磁化を得る。次いで、種々の傾斜磁場および他のRFパルスがスピンに作用し、空間情報が記録された信号へとコード化される。これらの信号を集めて分析することで、CT画像と同様に通常は2次元の断面で表示される3次元の像を計算することが可能である。
【0140】
MR造影で用いられる造影剤は、他の造影技術で用いられるものとは異なる。当該造影剤の目的は、同一の信号特性を有する組織成分の区別を助け、緩和時間を短縮する(これにより、T1加重スピンエコーMR画像についてのより強い信号、およびT2加重画像についてのより弱い信号が生成する)ことである。MRI造影剤の例としては、ガドリニウムキレート、マンガンキレート、クロムキレート、および鉄粒子が挙げられる。
【0141】
CTおよびMRIはともに、組織の境界および血管構造を区別するのに役立つ解剖学的情報を提供する。CTと比較した場合のMRIの欠点としては、患者の耐容性が低いこと、ペースメーカーおよび他の特定の埋め込み金属機器に禁忌であること、および複数の原因(最大の原因は動作である)に関連したアーチファクトが挙げられる(Alberico et al., 2004)。これに対し、CTは迅速であり、耐容性もよく、容易に利用可能であるが、コントラスト分解能はMRIより低く、ヨウ素化造影剤および電離放射線を必要とする(Alberico et al., 2004)。CTおよびMRIの双方の欠点は、いずれの造影様式でも細胞レベルでの機能情報は得られないということである。例えば、いずれの様式でも細胞の生存能力に関する情報は得られない。
【0142】
e.光学造影
光学造影は、医学の特定の領域で広く受け容れられている他の造影様式である。その例としては、細胞の構成成分の光学的なラベル化並びに、フルオレセイン血管造影およびインドシアニングリーン血管造影のような血管造影が挙げられる。光学造影剤の例としては、例えば、フルオレセイン、フルオレセイン誘導体、インドシアニングリーン、オレゴングリーン、オレゴングリーン誘導体、ローダミングリーン、ローダミングリーン誘導体、エオジン、エリスロシン、テキサスレッド、テキサスレッド誘導体、マラカイトグリーン、ナノゴールドスルホスクシンイミジルエステル、カスケードブルー、クマリン誘導体、ナフタレン、ピリジルオキサゾール誘導体、カスケードイエロー染料、ダポキシル染料が挙げられる。
【0143】
f.超音波
広く受け容れられている他の生物医学的造影様式は、超音波である。超音波造影は、身体における軟部組織構造および血流の情報のリアルタイムの断面およびさらには3次元の像を、非侵襲的に得る目的で用いられている。高周波音波並びに、血管、組織、および器官の像を生成するためのコンピュータ。
【0144】
血流の超音波造影は、血管のサイズおよび深さなどの多くの因子によって制限されうる。比較的最近開発された超音波造影剤としては、過フッ素化物および過フッ素化物類似体が挙げられ、これらは、グレースケールの像およびドップラー信号の強化を助けることで、上述した制限を克服する目的で設計される。
【0145】
2.二重造影の手法
本発明の特定の実施形態は、造影部位−ポリペプチド−原子価金属イオン錯体からの第1の信号および第2の信号の測定を伴う2つの造影様式を用いた、被験者におけるある部位の造影方法に関する。第1の信号は原子価金属イオン由来であり、第2の信号は造影部位由来である。上述したように、本発明の造影方法のこれらの実施形態では、当業者に公知の任意の造影様式が適用されうる。
【0146】
これらの造影様式は、本発明の組成物の診断上有効量を含む組成物の投与の間または投与の後の任意の時点で行われうる。例えば、造影試験は本発明の二重造影用組成物の投与中に行ってもよいし、その後の任意の時点で行ってもよい。いくつかの実施形態において、第1の造影様式は、二重造影剤の投与と同時に、または二重造影剤の投与の約1秒後、1時間後、1日後、もしくはより長い任意の時間後に、あるいは、明記したこれらの時間の間の任意の時点で行われる。
【0147】
第2の造影様式は、第1の造影様式と同時に、または第1の造影様式の後の任意の時点で行われうる。例えば、第2の造影様式は、第1の造影様式の完了の約1秒後、約1時間後、約1日後、もしくはより長い任意の時間後に、あるいは、明記したこれらの時間の間の任意の時点で行われうる。本発明の特定の実施形態において、第1および第2の造影様式は、投与後に同時に開始するように、同時に行われる。当業者であれば、本発明に包含される種々の造影様式の実施について精通しているであろう。
【0148】
本発明の二重造影の方法のいくつかの実施形態においては、第1の造影様式および第2の造影様式を実施するのに同一の造影装置が用いられる。他の実施形態では、第2の造影様式を実施するのに異なる造影装置が用いられる。当業者であれば、第1の造影様式および第2の造影様式の実施に利用可能な造影装置に精通しているであろうし、当業者は画像を生成するためにこれらの装置を用いることにも精通しているであろう。
【0149】
H.放射性ラベルされた剤
上述したように、本発明の組成物の特定の実施形態は、上述したポリペプチドにキレートされた原子価金属イオンを含み、当該原子価金属イオンは放射性核種である。本発明により提供される、放射性ラベルされた剤、化合物、および組成物は、適量の放射能を有するように提供される。例えば、99mTc放射性複合体を形成する際には、通常は約0.01ミリキュリー(mCi)〜約300mCi/mLの濃度で放射能を含む溶液中で放射性複合体を形成することが好ましい。
【0150】
本発明により提供される放射性ラベル化された造影剤は、哺乳動物の身体における部位を可視化する目的で用いられうる。本発明によれば、造影剤は当業者に公知の任意の方法により投与される。例えば、投与は注射可能な用量の単回でありうる。放射性ラベル化後に本発明の注射用化合物を調製する目的で、滅菌食塩水や血清などの当業者に公知の任意の担体が用いられうる。一般的に、投与される単回用量は、約0.01mCi〜約300mCi、好ましくは10mCi〜約200mCiの放射能を有する。単回で注射される溶液は、約0.01mL〜約10mLである。
【0151】
本発明の組成物の診断上有効量を静脈に投与した後、造影が行われうる。被験者における部位(例えば、器官または腫瘍)の造影は、所望により、放射性ラベルされた試薬を患者に導入後、数時間またはそれより長くに亘って行われうる。ほとんどの場合で、約0.1〜1時間以内に、投与された用量の十分な量が造影領域に蓄積するであろう。上述したように、造影は当業者に公知の任意の方法を用いて行われうる。その例としては、PET、SPECT、およびガンマシンチグラフィが挙げられる。ガンマシンチグラフィでは、放射性ラベルはガンマ線放出核種であり、この放射性トレーサはガンマ線検出カメラを用いて追跡される(このプロセスはときにガンマシンチグラフィと称される)。この放射性トレーサは、病変部位に局在するように選択される(陽性造影と称する)か、あるいは、この放射性トレーサはかような病変部位には特異的に局在しないように選択される(陰性造影と称する)ため、造影部位が検出可能である。
【0152】
I.キット
本発明の特定の実施形態は、概説すれば、造影剤を調製するためのキットに関し、当該キットは、原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を含む所定量のポリペプチド;および、原子価金属イオンを上述した2つの連続したアミノ酸の少なくとも1つにキレートするのに十分な量の還元剤を含む密封容器を含む。他の実施形態において、造影剤を調製するためのキットは、組織標的アミノ酸配列、診断用アミノ酸配列、および/または治療用アミノ酸配列を配列中に含む所定量のポリペプチド;および、1以上の原子価金属イオンを前記ポリペプチドに付着させるのに十分な量の還元剤を含む密封容器を含む。
【0153】
本発明のキットは、本発明のポリペプチドの所定量および当該化合物を原子価金属イオンでラベル化するのに十分な量の還元剤を含有する密封されたバイアルを含む。本発明のいくつかの実施形態において、当該キットは、放射性核種である原子価金属イオンを含む。さらに特定の実施形態において、当該放射性核種は99mTcである。本発明のさらなる実施形態において、ポリペプチドは、診断用部位、造影部位、または治療用部位である第2の部位でラベル化される。
【0154】
当該キットはまた、例えば浸透圧を調節するための製薬上許容される塩、緩衝剤、保存剤などの従来の医薬補助物質をも含みうる。
【0155】
特定の実施形態においては、キレート剤部位の酸化を防ぐ目的で、組成物中に抗酸化剤が含まれる。特定の実施形態において、抗酸化剤はビタミンC(アスコルビン酸)である。しかしながら、トコフェロール、ピリドキシン、チアミン、またはルチンなどの当業者に公知の他の任意の抗酸化剤もまた、用いられうると解される。キットの構成成分は、液体、凍結状態、または乾燥状態でありうる。好ましい実施形態において、キットの構成成分は凍結乾燥状態で提供される。
【0156】
冷却インスタントキットは市販の製品と考えられる。当該冷却インスタントキットは、過テクネチウム酸塩を添加することで放射性診断目的に用いられうる。この技術は「シェイクシュート(shake and shoot)」法として知られている。放射性医薬品の調製時間は、15分間未満であろう。同一のキットであっても異なる造影用途のためには異なる金属とキレートされてもよい。例えば、PET用の銅−61(半減期が3.3時間);MRI用のガドリニウム。冷却キット自体は、疾患を治療するためのプロドラッグである。例えば、当該キットは組織特異的な標的化造影および治療に適用されうる。
【0157】
J.造影剤としての候補物質の有効性を決定する方法
本発明はさらに、造影剤としての候補物質の有効性を決定する方法であって:(a)候補物質を得ること;(b)前記候補物質を、原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を配列中に含むポリペプチドと共役またはキレートさせること;(c)候補物質−ポリペプチド共役体を被験者に導入すること;および、(d)前記候補物質−ポリペプチド共役体からの信号を検出して、前記候補物質の造影剤としての有効性を決定することを含む方法に関する。
【0158】
これらの方法は、候補物質の巨大なライブラリのランダムスクリーニングを含んでもよいし、あるいは、アッセイを用いて、造影剤としてより機能しそうと考えられる構造特性を考慮して選択された特定のクラスの候補物質に焦点を当ててもよい。
【0159】
機能により、上述した候補物質−ポリペプチド共役体を被験者に投与した後の、候補物質由来の信号の測定され易さをアッセイしてもよい。
【0160】
候補物質の造影剤としての有効性を評価するには、通常、候補物質の存在下および非存在下でポリペプチドからの信号の測定され易さを決定すればよい。
【0161】
上述した造影様式のような当業者に公知の任意の造影様式が、候補物質−ポリペプチド共役体からの信号の測定に適用されうる。
【0162】
有効な造影剤が発見されないかもしれないという事実に関係なく、本発明のスクリーニング方法は全て、それ自体で有用であると解されることはもちろんである。本発明はかような候補物質のスクリーニング方法を提供するのであって、候補物質を発見する方法のみを提供するのではない。
【0163】
1.調節因子
本明細書で用いられる場合、「候補物質」とは、造影剤としての活性を潜在的に有しうる任意の分子を意味する。この候補物質は、タンパク質もしくはその断片であってもよいし、小分子であってもよいし、または核酸分子であってすらよい。結局、ほとんどの有用な薬理化合物は公知の造影剤に構造的に連関した化合物となるかもしれない。改良化合物の開発を助けるリード化合物を利用することは「合理的薬物設計」として知られており、公知の阻害剤や活性剤との比較だけでなく、標的分子の構造に連関した予測をも含む。
【0164】
合理的薬剤設計のゴールは、公知の造影剤の構造類似体を製造することである。かような類似体を作製することにより、天然分子よりもより活性なもしくは安定な、変化に対する感受性の異なる、または種々の他の分子の機能に影響を及ぼしうる薬剤の創出が可能となる。1つのアプローチでは、標的分子またはその断片の3次元構造を作成する。これはX線結晶構造解析、コンピュータモデリングまたは双方の組み合わせによって達成されるであろう。
【0165】
活性剤または阻害剤としての標的化合物の構造を確認する目的で抗体を用いることも可能である。原則として、このアプローチによればその後の薬剤設計のもとになるファーマコアが得られる。機能的、薬理学的に活性な抗体に対する抗イディオタイプ抗体を作製することにより、タンパク質の結晶解析を完全に省略することが可能である。鏡像の鏡像として、抗イディオタイプ抗体の結合部位は、もともとの抗原と類似していると考えられる。抗イディオタイプ抗体は次いで、化学的または生物学的に製造されたペプチドのバンクから、ペプチドを同定および単離する目的で用いられうる。選択されたペプチドは次いで、ファーマコアとして機能する。抗イディオタイプ抗体は、抗体を抗原として用い、抗体の製造について本明細書に記載した方法を用いて作製されうる。
【0166】
一方、有用な化合物の「強引な」同定を目的として、候補物質としての基本的な基準を満たすと考えられる小分子ライブラリを、単に種々の商業的供給源から得てもよい。コンビナトリアルアプローチもまた、活性な(そうでなければ望ましくない)化合物としてモデル化された第2、第3および第4世代の化合物を作製することにより、潜在的な造影剤の迅速な開発に寄与する。
【0167】
候補物質は、天然由来の化合物の断片や一部分を含んでもよいし、そうでなければ不活性な既知の化合物の活性な結合体とされてもよい。動物源、細菌源、真菌源、植物源(葉、樹皮、および海洋サンプル等)などの天然資源から単離された化合物を候補物質として、潜在的に有用な薬剤かどうかをアッセイしてもよい。スクリーニングされる薬剤はまた、化学的組成物または人工の化合物から得られ、または合成されうることは理解されるであろう。よって、本発明によって同定された候補物質は、ペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、小分子阻害剤、または既知の阻害薬または作動薬から出発した合理的薬剤設計により設計されうる他の任意の化合物でありうると解される。
【0168】
試験化合物を用いた動物などの被験者の治療は、動物へ適当な形態で化合物を投与することを伴う。投与は臨床または非臨床の目的で利用されうる任意の経路(例えば、静脈内、気道内注入、気管支内注入、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内または静脈注射)でありうる。特に予定されている経路は、全身の静脈注射、血液もしくはリンパの供給を介した局所投与、または罹患部位へ直接というものである。
【0169】
K.過剰増殖疾患
本発明の特定の形態は、治療用部位が本発明のポリペプチド−原子価金属イオンキレートに共役している組成物に関する。よって、本発明の組成物は、特定の実施形態においては、二重造影および治療に有用でありうる。特定の実施形態において、治療用部位は、被験者における過剰増殖疾患の治療もしくは予防に有効であると知られるまたは予想される剤である。被験者は、哺乳動物のような動物でありうる。特定の実施形態において、被験者はヒトである。
【0170】
本発明の他の実施形態において、原子価金属イオンは治療用原子価金属イオン(例えば、Re−188、Re−186、Ho−166、Y−90、Sr−89、およびSm−153)であり、ポリペプチド−原子価金属イオンキレートは、(造影剤というよりもむしろ)過剰増殖疾患の治療または予防に適用されうる治療剤である。
【0171】
本明細書において、過剰増殖疾患は、細胞の異常増殖または細胞の異常代謝回転に関連した任意の疾患として定義される。例えば、過剰増殖疾患は癌でありうる。本明細書で用いられる場合、「癌」という語は、組織における細胞の制御できない進行性の増殖として定義される。当業者であれば、新生物または悪性腫瘍または腫瘍といった他の同義語が存在することを認識している。任意のタイプの癌が本発明の方法により治療されると解される。例えば、癌は、乳癌、肺癌、卵巣癌、脳腫瘍、肝臓癌、子宮頸癌、結腸癌、腎臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、骨肉腫、食道癌、膀胱癌、子宮癌、胃癌、膵臓癌、精巣癌、リンパ腫、または白血病でありうる。本発明の他の実施形態において、癌は転移性癌である。
【0172】
L.化学療法および放射線の二重療法(「放射化学療法」)
本発明の特定の実施形態において、本発明の組成物は化学療法および放射線療法の二重療法(放射化学療法)に適している。例えば、本明細書で上述したポリペプチドは、治療用原子価金属イオンである原子価金属イオン、および治療用部位(抗癌部位など)である第2の部位とキレートされうる。
【0173】
例えば、原子価金属イオンはβ放出体でありうる。本明細書で定義されるように、β放出体は任意の範囲のβエネルギーを放出する任意の剤である。β放出体の例としては、Re−188、Re−186、Ho−166、Y−90、およびSn−153が挙げられる。当業者であれば、癌などの過剰増殖疾患の治療に用いられるこれらの剤に精通しているであろう。
【0174】
当業者であれば、本発明の化合物の投与に適用されうる化学療法プロトコールおよび放射線療法プロトコールの設計に精通しているであろう。後述するように、これらの剤は癌などの過剰増殖疾患の治療を指向する他の治療様式と組み合わせて用いられうる。さらに、当業者であれば、被験者への適切な投与量に精通しているであろう。このプロトコールは、単回投与でも複数回投与でもよい。患者は、当業者によく知られたプロトコールを用いて毒性や治療への応答をモニターされる。
【0175】
M.製剤の調製
本発明の薬剤組成物は、本発明の組成物の治療上または診断上有効量を含む。「製薬上または薬理学上許容される」または「製薬上有効な」または「診断上有効な」との句は、必要に応じて例えばヒトなどの動物に投与された場合に、有害な、アレルギー性の、または他の副作用を引き起こさない分子要素および組成物を意味する。治療上有効な、または診断上有効な組成物の調製は、参照により本明細書に引用される、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990に例示されるような現存する開示を踏まえれば当業者に理解されるであろう。さらに、動物(例えば、ヒト)への投与について、調製は、FDAの生物学的基準室により要求されるような、滅菌性、発熱性、一般的な安全性および純度の基準を満足しなければならない。
【0176】
本明細書で用いられる場合、「治療上有効量を含む組成物」または「診断上有効量を含む組成物」は、当業者に知られているように、任意の全ての溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば、抗微生物剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、保存剤、薬剤、薬剤安定化剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味料、香料、染料、同様の材料およびこれらの組み合わせを含む。従来の担体は、活性成分と非適合性である場合を除き、本発明の組成物に用いられる。
【0177】
本発明の組成物は、固体状、液体状、またはエアロゾル状で投与されるかどうか、投与経路が注射の場合ほど滅菌される必要があるか否かに応じて、異なるタイプの担体を含みうる。本発明の組成物は、当業者に知られているように、静脈内に、皮内に、動脈内に、腹腔内に、病変内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に、胸膜内に、気管内に、鼻内に、硝子体内に、膣内に、直腸内に、局所に、腫瘍内に、筋肉内に、腹腔内に、皮下に、結膜下に、小胞内に、粘膜に、心膜内に、臍帯内に、眼球内に、経口的に、局所に、局所的に、注射、注入、連続注入、標的細胞を直接浸す限局性灌流、カテーテルにより、洗浄により、脂質組成物(例えば、リポソーム)、または他の方法もしくはこれらの任意の組み合わせにより投与されうる。
【0178】
患者に投与される本発明の組成物の実際の必要量は、患者の体重、症状の重篤度、造影すべき組織、治療すべき疾患のタイプ、従来または現在の造影または治療、特発性疾患などの物理的・生理学的要因や、投与経路に応じて決定されうる。いずれにしても、個々の被験者に対する組成物中の活性成分の濃度や適切な量については、投与に責任を負う医師が決定する。
【0179】
特定の実施形態において、薬剤組成物は例えば、少なくとも約0.1%のポリペプチド−原子価金属イオンキレートを含みうる。他の実施形態において、活性化合物は、例えば、単位重量あたり約2%〜約75%の間、または約25%〜約60%の間で、ここから導かれる任意の範囲の間で含まれうる。他の非制限的な例において、用量はまた、約0.1mg/kg/体重〜約1000mg/kg/体重、またはこの範囲内の任意の量、あるいは1投与あたり1000mg/kg/体重を超える任意の量でありうる。
【0180】
いずれの場合においても、組成物は、1以上の構成成分の酸化を抑制するための種々の抗酸化剤を含みうる。また、これらに限定されないが、パラベン類(例えば、メチルパラベン類、プロピルパラベン類)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールまたはこれらの組み合わせなどの種々の抗菌剤や抗真菌剤といった保存剤によって、微生物の作用を抑制することが可能である。
【0181】
本発明の組成物は、遊離塩基状で、中性状で、または塩の形態で配合されうる。製薬上許容される塩としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムもしくは水酸化第二鉄などの無機塩基またはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジンもしくはプロカインなどの有機塩基由来の遊離カルボキシル基からなる塩が挙げられる。
【0182】
組成物が液体状である実施形態において、担体は、これらに限定されないが水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、脂質(例えば、トリグリセリド、植物油、リポソーム)およびこれらの組み合わせなどの溶媒または分散媒でありうる。例えば、レシチンなどのコーティングを用いることにより;例えばポリオールや脂質などの担体中で所望の粒子径を維持することにより;例えばヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤を用いることにより;あるいはこれらの方法の組み合わせにより、適当な流動性を維持することが可能である。多くの場合、例えば糖、塩化ナトリウムまたはこれらの組み合わせのような等張剤を含むことが好ましい。
【0183】
注射可能な滅菌溶液は、濾過滅菌などの技術を用いて調製されうる。通常、分散液は、ベース分散媒および/または他の成分を含有する滅菌媒体中に、滅菌された種々の活性成分を配合することにより調製されうる。注射可能な滅菌された溶液、懸濁液、またはエマルジョンの調製のための滅菌粉末の場合に好ましい調製方法は、事前に滅菌濾過した液状媒体から活性成分および任意の他の所望の成分の粉末が得られる真空乾燥技術または凍結乾燥技術である。必要であれば液状媒体は適当に緩衝化されるべきであり、注射の前に十分量の生理食塩水またはグルコースを用いて液体希釈剤をまず等張にする。直接注射用の高濃度組成物の調製もまた包含され、この際には、溶媒としてDMSOを用いることが想定され、これにより非常に速やかに浸入し、小さい領域に活性剤を高濃度で輸送することができる。
【0184】
製造および貯蔵の条件下において組成物は安定でなければならず、細菌や真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。エンドトキシンの汚染も、例えば0.5ng/mgタンパク質といった安全なレベルまで最小限に抑えるべきである。
【0185】
特定の実施形態においては、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチンまたはこれらの組み合わせなどの吸収を遅らせる剤の組成物を用いることで、注射可能な組成物の吸収を延長させることが可能である。
【0186】
N.併用療法
本発明の特定の実施形態は、治療用部位である第2の部位を含むポリペプチドを含む組成物に関する。他の実施形態において、ポリペプチドは、治療用アミノ酸配列であるアミノ酸配列を含む。
【0187】
これらの組成物は、他の剤または治療法(好ましくは他の癌の治療法)とともに、疾患(例えば、癌)の治療に適用されうる。本発明のこれらの組成物を用いた治療は、数分から数週間に亘る時間間隔をおいて、他の治療法よりも前または後に行われうる。他の剤が投与される実施形態においては、これらの剤が細胞に対して依然として有利な複合効果を発揮できるように、それぞれの輸送時間の間に長時間が経過しないようにするのが一般的である。例えば、2つの、3つの、4つの、またはそれより多くの用量の剤を本発明の組成物と一緒に実質的に同時に(すなわち、約1分間以内に)投与してもよいと解される。他の形態において、ある治療剤または治療法は、本発明の組成物の治療量の投与の約1分間〜約48時間またはそれより長い時間だけ前および/または後に施されるか、あるいは本明細書には記載のない任意の長さの時間だけ前および/または後に施されうる。特定の他の実施形態において、本発明の組成物は、外科的手術または遺伝子療法などの他の治療様式の施術の約1日〜約21日だけ前および/または後に投与されうる。場合によっては、治療時間を有意に延長することが望ましいが、この場合にはそれぞれの投与の間に数週間(例えば、約1〜8週間またはそれより長い)が経過する。
【0188】
種々の組み合わせが採用され、特許請求されている二重化学療法および放射線療法用の剤を「A」とし、任意の他の治療剤または治療方法でありうる第2の剤を「B」とすると:A/B/A、B/A/B、B/B/A、A/A/B、A/B/B、B/A/A、A/B/B/B、B/A/B/B、B/B/B/A、B/B/A/B、A/A/B/B、A/B/A/B、A/B/B/A、B/B/A/A、B/A/B/A、B/A/A/B、A/A/A/B、B/A/A/A、A/B/A/A、A/A/B/A。
【0189】
本発明の組成物の患者への投与は、これらの剤の毒性(もしあれば)を考慮して、化学療法剤の投与のための一般的なプロトコールに従う。必要に応じて治療サイクルが繰り返されることが予想される。また、種々の標準的な治療や外科的療法が、記載の剤と組み合わせて適用されてもよい。これらの治療法としては、これらに限定されないが、他の化学療法、他の放射線療法、免疫療法、遺伝子療法および手術が挙げられる。
【0190】
a.化学療法
癌治療にはまた、化学ベースの治療および放射線ベースの治療の双方を用いた療法の種々の組み合わせがある。化学療法の組み合わせとしては、例えば、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イフォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソウレア、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合剤、タキソール、ゲムシタビン、ナベルビン、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランスプラチナ、5−フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびメトトレキサート、またはこれらの任意の類似体もしくは誘導体が挙げられる。
【0191】
b.放射線療法
DNA損傷を引き起こし、広く用いられている他の因子としては、一般的にγ線、X線として知られているもの、および/またはラジオアイソトープの腫瘍細胞への直接輸送が挙げられる。マイクロ波およびUV放射線などのDNAを損傷させる因子の他の形態もまた包含される。これらの因子は全て、DNAに対して、DNAの前駆体に対して、DNAの複製および修復に対して、および染色体の会合および維持に対して広範な損傷を引き起こすことになりそうである。X線の線量の範囲は、長期間(3〜4週間)では日用量で50〜200レントゲンであり、単回投与では2000〜6000レントゲンである。ラジオアイソトープの用量範囲はアイソトープの半減期、放出される放射線の強度およびタイプ、腫瘍細胞による取り込みに応じて大きく変動する。本明細書では、細胞に対して用いられる場合、「接触した」および「曝露された」という語は、治療用構築物および化学療法または放射線療法の剤が標的細胞に輸送され、または標的細胞と直接並んで配置されるプロセスを意味する。細胞の殺傷や静止を達成する目的で、双方の剤が細胞を殺傷し、またはその分裂を抑制するのに有効な量で組み合わされて、細胞に輸送される。
【0192】
c.免疫療法
免疫療法では通常、癌細胞を標的化して破壊する免疫エフェクター細胞や免疫エフェクター分子を用いる。この免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面上のあるマーカーに特異的な抗体でありうる。抗体が単独で治療のエフェクターとして機能してもよいし、細胞の殺傷を実際に引き起こす他の細胞を抗体が集めてもよい。抗体はまた、薬剤または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)に共役して標的化剤としてだけ機能してもよい。あるいは、エフェクターは腫瘍細胞の標的と直接または間接に相互作用する表面分子を運ぶリンパ球であってもよい。種々のエフェクターとしては、細胞障害性T細胞やNK細胞が挙げられる。
【0193】
このように、免疫療法は遺伝子療法との併用療法の一部として用いられうる。併用療法についての一般的なアプローチを以下で説明する。通常、腫瘍細胞は標的化の影響を受け易い(すなわち、大多数の他の細胞には存在しない)特定のマーカーを有していなければならない。多くの腫瘍マーカーが存在し、これらはいずれも本発明との関連では標的化にふさわしい。共通の腫瘍マーカーとしては、癌胎児性抗原、前立腺特異抗原、泌尿器腫瘍関連抗原、胎児性抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG−72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、エストロゲン受容体、ラミニン受容体、erbBおよびp155が挙げられる。
【0194】
d.遺伝子
さらに他の実施形態において、第2の療法は、本発明の治療剤よりも前に、後に、または同時に治療用組成物を投与する遺伝子療法である。本発明の組成物の治療量を、遺伝子産物をコードするベクターとともに輸送すれば、標的組織に対する複合効果が得られる。
【0195】
e.手術
癌に罹患しているおよそ60%の人が、予防手術、診断もしくは病期分類手術、根治手術、および苦痛緩和手術などのタイプの手術を経験している。根治手術は、本発明の治療、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法、および/または代替療法などの他の療法とともに用いられうる癌の治療法である。根治手術は、癌性組織の全てまたは一部を物理的に除去し、摘出し、および/または破壊する切除術を含む。腫瘍の切除とは、腫瘍の少なくとも一部の物理的な除去を意味する。腫瘍の切除のほかに、手術による治療としては、レーザー治療、凍結外科手術、電気外科手術、および顕微鏡制御術(モース手術)が挙げられる。さらに、本発明は表在性腫瘍、前癌状態、または付随的な量の正常組織の除去と組み合わせても用いられうる。
【実施例】
【0196】
実施例1
エストロゲン受容体の陽性特徴づけのための99mTc−GAP−エストラジオール(EDL)
3−アミノエチルエストラジオールの合成
エストロン(1.47g、5.45mmol)をエタノール(50ml)に溶解した。NaOEt(742mg、10.9mmol)およびブロモアセトニトリル(0.5ml、1.722g/ml、6.65mmol)を添加した。この反応混合物を還流下で24時間過熱した。エタノールを蒸発させて乾燥し、酢酸エチルを添加した(100ml)。この混合物を、分液漏斗中で水(100ml)で洗浄した。硫酸マグネシウムで有機層を乾燥し、濾過した。減圧下で酢酸エチルを蒸発させ、濾紙上で固体生成物をエーテルで洗浄した。3−アセトニトリルエストラジオールの収率は75%であった。3−アセトニトリルエストラジオール(620mg、2mmol)をTHF(50ml)に溶解した。水素化アルミニウムリチウム(THF中に1M)を添加し、反応混合物を一晩撹拌した。溶媒を蒸発させ、固体を酢酸エチルに溶解させて、分液漏斗中で水(100ml)で洗浄した。硫酸マグネシウムで酢酸エチル層を乾燥し、濾過した。溶媒を蒸発させた。3−アミノエチルエストラジオールを回収し、収率は92%であった。99mTc−GAP−EDLの合成スキームを図1に示す。構造はNMRスペクトルで確認した。
【0197】
99mTc−グルタミン酸塩ペプチド−エストラジオール(GAP−EDL)の合成
2N HClを2ml添加することにより、グルタミン酸塩ペプチドのナトリウム塩(GAP、500mg、分子量1500〜3000)を酸型に変換し、1000のカットオフを有するスペクトラ/POR分子多孔膜(スペクトラム メディカル インダストリーズ インコーポレイテッド、ヒューストン、テキサス州)を用いて48時間透析した。凍結乾燥後、GAP酸(357.7mg、0.1589mmol)をDMF(10ml)に溶解した。3−アミノエチルエストラジオール(502.5mg、1.59mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(327.54mg、1.59mmol)および4−N,N−ジメチルアミノピリジン(194mg、1.59mmol)を添加した。この混合物を室温にて2日間撹拌した。高真空下でDMFを蒸発させた後、1N炭酸水素ナトリウム2mlを混合物に添加した。1000の分子量カットオフでこの混合物を48時間透析した。生成物を凍結乾燥させ、秤量したところ508mgであった。GAP−EDLの構造はNMRスペクトルで確認した(図2)。UV分光法により測定したところ、30%のエストラジオールがGAPに共役していた。
【0198】
0.6mlの水中にGAP−EDLの凍結乾燥残渣(5mg)および塩化スズ(II)(SnCl2、100μg、0.53μmol)を含有するバイアルに、99mTc過テクネチウム酸塩(3.5mCi)(シンコー(Syncor) ファーマシューティカル インコーポレイテッド、ヒューストン、テキサス州)を添加した。PD−10カラム(セファデックスG−25、10ml)(シグマ ケミカル カンパニー、セントルイス、ミズーリ州)を用いて生成物を精製し、PBS(5ml)で溶出した。溶離液を1mlずつ試験管に回収した。試験管3〜5に生成物を単離し、収量は3.0mCi(86%)であった。溶離液として1M酢酸アンモニウム:メタノール(4:1)を用い、ラジオ−TLCスキャナ(バイオスキャン、ワシントンDC)により放射化学的純度を評価した。
【0199】
インビトロでの細胞の結合親和性の研究
5つの異なる細胞系をアッセイに用いた。3つは乳癌細胞系(13762NF、MCF7およびT47D)であり、2つは卵巣癌細胞系(シスプラチン感受性および抵抗性)であった。簡単に言えば、20μlのエストロン(54μg/ウェル)またはDMSO(コントロール)および99mTc−GAP−EDL(6μg/ウェル、1μCi/ウェル)で細胞(50000/ウェル)を処理した。0.5〜4時間インキュベートした後、氷冷PBS(1ml)で細胞を2度洗浄し、トリプシンEDTA(0.1ml)を添加した。2分後、PBS(0.4ml)を添加し、細胞を含む全量を試験管に移して活性を測定した。それぞれのデータは、3回の測定の平均を表し、添加された99mTc−GAP−EDLの取り込みの百分率として算出されたものである。
【0200】
99mTc−GAP−EDL(コントロール)と比較すると、エストロンで処理された細胞では取り込みが10〜40%減少していた(図3)。99mTcラベル化GAP−エストラジオール共役体はエストロンまたはジエチルスチルベストロールで阻害されうる(図3および図4)。ER(−)卵巣細胞系を用いた場合には、シスプラチン感受性およびシスプラチン抵抗性の卵巣腫瘍細胞の間で99mTcラベル化エストラジオール取り込みの顕著な差は見られなかった(図5)。これらの知見から、99mTc−GAP−EDLの細胞取り込みはエストロゲン受容体媒介性のプロセスを介するものであることが示唆される。同様の知見は68Ga−GAP−EDLを用いても観察された(図6および図7)。
【0201】
組織分布の研究
12匹のメスのフィッシャー(Fischer)344ラット(150±25g)(ハーラン スプレーグ−ドーリー、インディアナポリス、インディアナ州)(n=3ラット/時点)に、RBA CRL−1747細胞系由来の乳腺腫瘍細胞を接種した(i.m.)。この細胞は、アールBSS(90%)および胎児ウシ血清(10%)を含むイーグルMEM中で培養した。腫瘍細胞(106細胞/ラット)は、後肢中に注射した(i.m.)。研究は、移植から14〜17日後に腫瘍の直径が約1cmの時点で行った。
【0202】
組織分布の研究では、それぞれの動物に99mTc−GAP−EDLまたは99mTc−GAPを注射した(i.v.、10μCi/ラット、10μg/ラット)。0.5〜4時間でラットを屠殺した。選んだ組織を摘出し、秤量し、ガンマカウンター(パッカード インストゥルメンツ、ダウナーズグローブ、イリノイ州)を用いて放射能を計数した。各サンプルでのトレーサの生体内分布を、組織湿重量1gあたりの注射量の百分率(%ID/g)として算出した。
【0203】
インビボ生体内分布の研究によれば、99mTc−GAP−EDLの群では時間の関数として腫瘍対組織および子宮対組織の計数密度比が増加することが示された(図8)。4時間の時点で、99mTc−GAP−EDLの群における腫瘍対組織および子宮対組織の計数密度比は、99mTc−GAPの群よりも有意に高かった(表3および表4)。線量測定を表5に示す。
【0204】
【表3】
【0205】
【表4】
【0206】
【表5】
【0207】
異なる分子量を有するGAP(G)対GAP−DGAC(G−DG)の0.5、2、5および24時間での生体内分布の比較
シンチグラフィ造影の研究
低エネルギー平行コリメータを備えたディジラッド(サンディエゴ、カリフォルニア州)からの2020tc撮像ガンマカメラを用い、シンチグラフィ画像を得た。このカメラの視野は、1.3cmのエッジで20cm×20cmである。固有空間解像度は3mmであり、マトリックスは64×64である。低エネルギーで高解像度のコリメータを設置することで、システムの平面感度が少なくとも125カウント/分(cpm)/μCiおよび7.6mmの空間解像度の平面感度に設計される。
【0208】
99mTc−GAP−EDLおよび99mTc−EDTAそれぞれの静脈注射の0.5〜4.0時間後に、シンチグラフィ画像を得た。腫瘍の99mTc−GAP−EDL取り込みがエストロゲン受容体に関係しているか否かを確認する目的で、阻害実験を行った。それぞれのラットをジエチルスチルベストロールで前処理し(n=3、10mg/kg、iv)、1時間後に99mTc−GAP−EDLを投与し(300μCi/ラット、iv)、0.5〜4.0時間の時点で造影した。コンピュータアウトライン関心領域(ROI)(ピクセルあたりのカウント)を用いて腫瘍対バックグラウンドのカウント密度比を測定した。
【0209】
0.5〜4時間で腫瘍は良好に可視化された(図9)。0.5〜4時間での画像のROI分析によれば、99mTc−GAP−EDLおよび99mTc−EDTAについての腫瘍対筋肉比はそれぞれ1.67〜2.95および1.26〜1.75であることがわかった。阻害実験では、99mTc−GAP−EDLおよび阻害群についての腫瘍対筋肉比はそれぞれ1.98〜2.39および1.21〜1.63であった。ジエチルスチルベストロールで前処理されたラットでは顕著な減少が見られた。この知見から、腫瘍による99mTc−GAP−EDLの取り込みはエストロゲン受容体媒介性のプロセスであることが示唆される。
【0210】
GAP−17−EDLの合成
3位GAP−EDLに加えて、17位のエストラジオールについてもGAPと共役させた。エストロンをNaCNと反応させて、17−EDL−NH2を調製した。次いで、このニトリル類似体をテトラヒドロフラン中でLiAlH4を用いて還元した。GAP(分子量1500〜3000)150mgを、5mlの無水DMFに溶解した。35.4mgのDCCおよび45mgの17−EDL−NH2を添加した。この混合物を室温にて一晩撹拌した。減圧下で溶媒を除去した後、水10mlを添加した。0.8μmメンブランで水層を濾過した。1000の分子量カットオフを有する膜を用いて濾液を透析した。凍結乾燥機で乾燥した後、165mgの白色粉末(GAP−17−EDL、収率85.8%)を得た。合成スキームを図10に示す。17EDL−NH2およびGAP−EDL(17位)のプロトンNMRスペクトルにより、それぞれの構造を確認した。この17位GAP−EDLの細胞取り込みは、3位GAP−EDLに類似している(図11A)。動物の画像を図11Bに示す。
【0211】
実施例2
シクロオキシゲナーゼ−2の特徴づけのための99mTc−GAP−セレブレックス(COXi)
COXi−OEtの合成
381.4mg(1.0mmol)のセレブレックス(BZF、4−[5−(4−メチルフェニル)−3−(トリフルオロメチル)−1−ピラゾール−1−イル]ベンゼンスルホンアミド)および152.4mg(1.0mmol)のDBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン)を、クロロホルム10mlに溶解した。次いで、クロロホルム5ml中の129.1mg(1.0mmol)のエチルイソシアナートアセテートを滴下により添加した。混合物を室温にて3時間撹拌した。減圧下で溶媒を蒸発させて、粗生成物をシリカゲル充填カラム(移動相:クロロホルムとメタノールとの勾配)に流した。次いで、生成物(418.6mg、白色固体)を82%の収率で単離した。GAP−Coxiの合成スキームを図12に示す。BZFおよびCOXi−OEtのプロトンNMRにより、それぞれの構造を確認した(図13)。
【0212】
COXi−NH2の合成
420.7mgのエチレンジアミン(7.0mmol)を、6mlのエタノール中のCOXi−OEt357.mg(0.7mmol)に添加した。この混合物を室温にて16時間撹拌した。次いで溶媒を蒸発させた。この混合物を10mlのクロロホルムに溶解し、7mlのブラインで2回洗浄した。無水硫酸マグネシウムでクロロホルム層を乾燥し、濾過し、蒸発させた。粗生成物の混合物381mg(粗収率103.8%)をシリカゲル充填カラムに流し、クロロホルムおよびメタノールで溶出した。304.7mgのCOXi−NH2(白色固体、収率83%)を得た。プロトンNMRおよび質量分析により、構造を確認した。
【0213】
GAP−COXiの合成
353mgのGAPを、15mlの無水DMFに溶解した。25.0mgのDCC(ジシクロヘキシルカルボイミド)および108mgのCOXi−NH2を添加し、室温にて一晩撹拌した。減圧下で溶媒を蒸発させ、粗生成物を15mlの水に添加した。次いで、0.5N炭酸水素ナトリウムを添加してpHを8に調節した。0.8μmメンブランフィルターでこの混合物を濾過し、透析した(分子量カットオフ<1000のメンブラン)。凍結乾燥機で乾燥したGAP−COXi(378mg、白色粉末、収率82.4%)を得た。GAP−COXiのプロトンNMRデータにより、構造を確認した。
【0214】
組織分布の研究
12匹のメスのフィッシャー344ラット(150±25g)(ハーラン スプレーグ−ドーリー、インディアナポリス、インディアナ州)(n=3ラット/時点)に、RBA CRL−1747細胞系由来の乳腺腫瘍細胞を接種した(i.m.)。この細胞は、アールBSS(90%)および胎児ウシ血清(10%)を含むイーグルMEM中で培養した。腫瘍細胞(106細胞/ラット)は、後肢中に注射した(i.m.)。研究は、移植から14〜17日後に腫瘍の直径が約1cmの時点で行った。
【0215】
組織分布の研究では、それぞれの動物に99mTc−GAP−COXiまたは99mTc−GAPを注射した(i.v.、10μCi/ラット、10μg/ラット)。0.5〜4時間でラットを屠殺した。選んだ組織を摘出し、秤量し、ガンマカウンター(パッカード インストゥルメンツ、ダウナーズグローブ、イリノイ州)を用いて放射能を計数した。各サンプルでのトレーサの生体内分布を、組織湿重量1gあたりの注射量の百分率(%ID/g)として算出した。
【0216】
インビボ生体内分布の研究によれば、99mTc−GAP−COXiの群では、時間の関数として、99mTc−GAPの群よりも高い値まで腫瘍対筋肉(血液)の計数密度比が増加することが示された(表3および表6)。
【0217】
【表6】
【0218】
シンチグラフィ造影およびオートラジオグラフィの研究
99mTc−GAP−COX2i(300μCi/ラット、iv)の静脈注射の0.5〜4.0時間後にシンチグラフィ画像を得て、乳腺腫瘍罹患ラット(RBA CRL−1747細胞系由来)において0.5〜4.0時間の時点で造影した。定量画像分析器(サイクロン ストレージ フォスファー システム、パッカード、メリディアン、コネチカット州)により、全身オートラジオグラムを得た。99mTc−GAP−COX2i(100μCi/ラット、iv)を静脈注射した後、右脚にヒト子宮肉腫をもつ無胸腺ヌードマウスを1時間の時点で屠殺し、カルボキシメチルセルロース(3%)中に体を固定した。凍結させた体を低温保持装置(LKB2250クライオミクロトーム)上に固定し、100μmの冠状切片に切断した。それぞれの切片を融解させ、スライド上に固定した。次いでスライドを多目的フォスファーストレージスクリーン(MP、7001480)と接触するように配置し、16時間曝露させた。腫瘍は0.5〜4時間の時点で良好に可視化された(図14)。同様の知見がオートラジオグラムにおいても観察された。
【0219】
実施例3
トポイソメラーゼの特徴づけのための99mTc−GAP−ドキソルビシン(DOX)
GAP−DOXの合成
112.5mgのGAP(分子量1500〜3000)を、10mlの無水DMFに溶解した。51.6mgのDCC(ジシクロヘキシルカルボイミド)および33.8mgのDOX(塩酸ドキソルビシン)を添加し、室温にて一晩撹拌した。減圧下で溶媒を除去した。次いで、5mlの水および0.7mlの1N水酸化ナトリウムを添加した。水層のpH値は7.0であった。0.8μmメンブランフィルターを用いてこの混合物を濾過し、分子量カットオフ<1000を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機で乾燥した139mgの赤色粉末(GAP−DOX、収率79.1%)を得た。
【0220】
種々のドキソルビシン濃度で485〜490nmでのUVオブザーバンス(observance)から検量線を作成した。GAP−DOXの組成は72%のGAPおよび28%のDOXであった。合成スキームおよびプロトンNMRを図15に示す。
【0221】
インビトロでの細胞結合親和性の研究
2つの異なる細胞系(乳癌細胞系(13762NF)および肺癌細胞系)をアッセイに用いた。簡単に言えば、20μlの99mTc−GAP−DOXまたはGAP(コントロール)(6μg/ウェル、1μCi/ウェル)で細胞(50000/ウェル)を処理した。0.5〜4時間インキュベートした後、氷冷PBS(1ml)で細胞を2度洗浄し、トリプシンEDTA(0.1ml)を添加した。2分後、PBS(0.4ml)を添加し、細胞を含む全量を試験管に移して活性を測定した。それぞれのデータは、3回の測定の平均を表し、添加された99mTc−GAP−DOXの取り込みの百分率として算出されたものである。99mTcでラベル化されたGAPとGAP−DOXとの間で細胞取り込みに顕著な差は見られなかった(図16)。
【0222】
実施例4
解糖の特徴づけのための99mTc−GAP−糖
GAP−DG(単糖)の合成
湿式法:225mgのGAP(塩型、分子量1500〜3000)を、2mlの水に溶解した。65.1mgのS−NHS(1−ヒドロキシ−2,5−ジオキソ−3−ピロリジンスルホン酸一ナトリウム塩水和物)および0.4mlの1N水酸化ナトリウム溶液を、撹拌しながら添加した。21.6mgのDG(塩酸グルコサミン)および57.5mgのEDAC(1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩)を添加し、室温にて一晩撹拌した。0.8μmメンブランフィルターを用いて反応混合物を濾過し、分子量カットオフ<1000を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機で乾燥した215mgの白色粉末(GAP−DG、収率89.2%)を得た。
【0223】
乾式法:225mgのGAP(分子量1500〜3000)を、15mlの無水DMFに溶解した。62mgのDCCおよび21.6mgのDGを添加し、室温にて一晩撹拌した。減圧下で溶媒を除去した後、5mlの水を添加した。0.8μmのメンブランフィルターを用いて水層を濾過し、分子量カットオフ<1000を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機で乾燥した195mgの白色粉末(GAP−DG、収率80.9%)を得た。GAP−DGの合成スキームおよびプロトンNMRデータを図17に示す。
【0224】
GAP−GAL(単糖)の合成
湿式法:225mgのGAP(塩型、分子量1500〜3000)を、2mlの水に溶解した。65.1mgのS−NHS(1−ヒドロキシ−2,5−ジオキソ−3−ピロリジンスルホン酸一ナトリウム塩水和物)および0.4mlの1N水酸化ナトリウム溶液を、撹拌しながら添加した。21.6mgのGAL(塩酸ガラクトサミン)および57.5mgのEDAC(1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩)を添加し、室温にて一晩撹拌した。0.8μmメンブランフィルターを用いて反応混合物を濾過し、分子量カットオフ<1000を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機で乾燥した165.7mgの白色粉末(GAP−GAL、収率68.7%)を得た。
【0225】
乾式法:225mgのGAP(分子量1500〜3000)を、15mlの無水DMF中に入れた。68.9mgのDCCおよび60mgのGALを添加し、室温にて一晩撹拌した。減圧下で溶媒を除去した後、10mlの水を添加した。0.8μmのメンブランフィルターを用いて水層を濾過し、分子量カットオフ<1000を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機で乾燥した174.6mgの白色粉末(GAP−GAL、収率71.3%)を得た。GAP−GALの合成スキームおよびプロトンNMRデータを図18に示す。
【0226】
GAP−DGAc(単糖)の合成
乾式法:100mgのGAP(酸型、分子量750〜3000)を1.2mlの無水DMFおよび1mlのDMSO中に入れた。65.6mgのDCC、43.9mgのDMAPおよび101.2mgのテトラ−O−アセチル−β−D−マンノピラノース(0.29mmol)を添加し、室温にて一晩撹拌した。減圧下で溶媒を除去した後に5mlのNaHCO3(1N)を添加した。0.8μmのメンブランフィルターを用いてこの混合物を濾過し、分子量カットオフ<500を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機で乾燥した297.6mgの白色粉末(GAP−DGAc、塩型)を得た。分子量の異なるGAP−DGAxを用いた場合の構造、インビトロでの細胞取り込み、およびインビボでの生体内分布(表7〜12)および画像研究を図19〜24に示す。
【0227】
【表7】
【0228】
【表8】
【0229】
【表9】
【0230】
【表10】
【0231】
【表11】
【0232】
【表12】
【0233】
【表13】
【0234】
GAP−LAS(二糖)の合成
LAS−NH2の調製:ピアース ケミカル カンパニーから購入したLAS−NHS(スベリン酸モノ(ラクトシルアミノ)モノ(スクシンイミジル))100mgを、生理食塩水0.6ml中に溶解した。101.1mgのエチレンジアミンを添加し、室温にて一晩撹拌した。0.8μmのメンブランフィルターを用いてこの反応混合物を濾過し、分子量カットオフ<500を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機で乾燥した71.9mgの白色粉末(LAS−NH2、収率79.3%)を得た。
【0235】
GAP−LASの合成:23.1mgのDCCおよび50.3mgのLAS−NH2を、室温にて一晩撹拌しながら15mlの無水DMF中のGAP(分子量1500〜3000)の溶液に添加した。0.8μmのメンブランフィルターを用いて水層を濾過し、分子量カットオフ<1000を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機で乾燥した197.6mgの白色粉末(GAP−LAS、収率91.4%)を得た。LAS−NH2およびGAP−LASの合成スキームを図25に示す。プロトンNMRデータにより、構造を確認した。
【0236】
GAP−HCD(多糖)の合成
乾式法:203mgのGAP(酸型、分子量750〜3000)を、7mlのDMSO中に入れた。73.5mgのDCC、39.2mgのDMAPおよび419.8mgのヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(0.29mmol)を添加し、室温にて一晩撹拌した。減圧下で溶媒を除去した後、5mlのNaHCO3(1N)を添加した。0.8μmのメンブランフィルターを用いてこの混合物を濾過し、分子量カットオフ1000を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機で乾燥した197.1mgの白色粉末(GAP−HCD、塩型)を得た。
【0237】
インビトロでの細胞取り込みの研究
2つの異なる細胞系をアッセイに用いた。それらは乳癌細胞系(13762NF)および卵巣癌細胞系(シスプラチンに対して感受性または抵抗性)であった。簡単に言えば、20μlの99mTc−GAP−糖(GAL、LASもしくはHCD)またはGAP(コントロール)(100μg/ウェル、1〜2μCi/ウェル)で細胞(50000/ウェル)を処理した。0.5〜4時間インキュベートした後、氷冷PBS(1ml)で細胞を2度洗浄し、トリプシンEDTA(0.1ml)を添加した。2分後、PBS(0.4ml)を添加し、細胞を含む全量を試験管に移して活性を測定した。それぞれのデータは、3回の測定の平均を表し、添加された99mTc−GAPの取り込みの百分率として算出されたものである。99mTc−GAP−GALの群では高い取り込みが見られた(図26)が、99mTcでラベル化されたGAPとGAP−LASとの間では細胞取り込みの顕著な差が見られなかった(図27および図28)。GAP−HCDの取り込みはFDGよりも高かった(図29)。
【0238】
組織分布の研究
12匹のメスのフィッシャー344ラット(150±25g)(n=3ラット/時点)に、RBA CRL−1747細胞系由来の乳腺腫瘍細胞を接種した(i.m.)。この細胞は、アールBSS(90%)および胎児ウシ血清(10%)を含むイーグルMEM中で培養した。腫瘍細胞(106細胞/ラット)は、後肢中に注射した(i.m.)。研究は、移植から14〜17日後に腫瘍の直径が約1cmの時点で行った。
【0239】
組織分布の研究では、それぞれの動物に99mTc−GAP−LASまたは99mTc−GAPを注射した(i.v.、10μCi/ラット、10μg/ラット)。0.5〜4時間でラットを屠殺した。選んだ組織を摘出し、秤量し、ガンマカウンター(パッカード インストゥルメンツ、ダウナーズグローブ、イリノイ州)を用いて放射能を計数した。各サンプルでのトレーサの生体内分布を、組織湿重量1gあたりの注射量の百分率(%ID/g)として算出した。
【0240】
インビボ生体内分布の研究によれば、99mTc−GAP−LASの群における腫瘍対筋肉(血液)の計数密度比は99mTc−GAPの群と類似していることが示された(表3および表13、図30および図31)。この知見は、異なるタイプの糖についてのさらなる評価を提案している。
【0241】
【表14】
【0242】
シンチグラフィ造影およびオートラジオグラフィの研究
99mTc−GAP−LASまたはGAP−HCD(300μCi/ラット、iv)の静脈注射の0.5〜4.0時間後にシンチグラフィ画像を得て、乳腺腫瘍罹患ラット(RBA CRL−1747細胞系由来)において0.5〜4.0時間の時点で造影した。定量画像分析器(サイクロン ストレージ フォスファー システム、パッカード、メリディアン、コネチカット州)により、全身オートラジオグラムを得た。99mTc−GAP−LASまたはGAP−LAS(100μCi/ラット、iv)を静脈注射した後、右脚にヒト子宮肉腫をもつ無胸腺ヌードマウスを1時間の時点で屠殺し、カルボキシメチルセルロース(3%)中に体を固定した。凍結させた体を低温保持装置(LKB2250クライオミクロトーム)上に固定し、100μmの冠状切片に切断した。それぞれの切片を融解させ、スライド上に固定した。次いでスライドを多目的フォスファーストレージスクリーン(MP、7001480)と接触するように配置し、16時間曝露させた。99mTc−GAP−LASおよびGAP−HCDの双方の群において、腫瘍は0.5〜4時間の時点で良好に可視化された。オートラジオグラムにおいても、単糖および二糖の双方が類似の結果を示した。
【0243】
実施例5
葉酸受容体の特徴づけのための99mTc−GAP−葉酸(FOL)
GAP−FOLの合成
200mgのGAP(分子量1500〜3000)を、10mlの無水DMFに溶解した。128mgのDCCおよび60mgのFOL−NH2(Ilgan et al., 1998a)を添加し、室温にて一晩撹拌した。減圧下で溶媒を除去した後、15mlの水を添加した。0.8μmのメンブランフィルターを用いて水層を濾過し、分子量カットオフ<1000を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機で乾燥した207mgの黄色粉末(GAP−FOL)を得た。この合成スキームを図32に示す。プロトンNMRにより、構造を確認した。
【0244】
実施例6
低酸素症の特徴づけのための99mTc−GAP−メトロニダゾール(MN)
GAP−MNの合成
10mlの無水DMFおよび70.4mgのDCC中のGAP(分子量1500〜3000)150mgの溶液に、70.4mgのMN(1−(2−アミノエチル)−2−メチル−5−ニトロイミダゾール二塩酸塩一水和物)を添加し、1N水酸化ナトリウム溶液を室温にて撹拌しながら添加した。減圧下で溶媒を除去した後に0.8μmのメンブランフィルターを用いて水層を濾過し、分子量カットオフ<1000を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機を用いて乾燥された130.6mgの茶色粉末(GAP−MN、収率64.5%)を得た。合成スキームを図33に示す。プロトンNMRにより、構造を確認した。
【0245】
オートラジオグラフィの研究
定量画像分析器(サイクロン ストレージ フォスファー システム、パッカード、メリディアン、コネチカット州)により、全身オートラジオグラムを得た。99mTc−GAP−MNまたはGAP(100μCi/ラット、iv)を静脈注射した後、右脚にヒト子宮肉腫をもつ無胸腺ヌードマウスを1時間の時点で屠殺し、カルボキシメチルセルロース(3%)中に体を固定した。凍結させた体を低温保持装置(LKB2250クライオミクロトーム)上に固定し、100μmの冠状切片に切断した。それぞれの切片を融解させ、スライド上に固定した。次いでスライドを多目的フォスファーストレージスクリーン(MP、7001480)と接触するように配置し、16時間曝露させた。99mTc−GAP−MNの群について、腫瘍は0.5〜4時間の時点で良好に可視化された。
【0246】
実施例7
抗葉酸の特徴づけのための99mTc−GAP−メトトレキサート(MTX)
GAP−MTXの合成
10mlの無水DMFおよび93mgのDCC中のGAP(分子量1500〜3000)150mgの溶液に、45mgのMTXNH2(Ilgan et al., 1998b)を添加し、室温にて一晩撹拌した。減圧下で溶媒を除去した後に、水10mlおよび1N水酸化ナトリウム溶液1mlの溶液を添加した。0.8μmのメンブランフィルターを用いて水層を濾過し、分子量カットオフ<1000を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機を用いて乾燥された139.8mgの黄色粉末(GAP−MTX、収率72.3%)を得た。合成スキームを図34に示す。プロトンNMRにより、構造を確認した。
【0247】
インビトロでの細胞取り込みの研究
乳癌細胞系(13762NF)をアッセイに用いた。簡単に言えば、20μlの99mTc−GAP−MTXまたはGAP(コントロール)(100μg/ウェル、1〜2μCi/ウェル)で細胞(50000/ウェル)を処理した。0.5〜4時間インキュベートした後、氷冷PBS(1ml)で細胞を2度洗浄し、トリプシンEDTA(0.1ml)を添加した。2分後、PBS(0.4ml)を添加し、細胞を含む全量を試験管に移して活性を測定した。それぞれのデータは、3回の測定の平均を表し、添加された99mTc−GAPの取り込みの百分率として算出されたものである。99mTc−GAP−MTXの群では99mTc−GAPの群よりも高い取り込みが見られた(図16)。
【0248】
実施例8
脂質代謝造影のための99mTc−GAP−リノレン酸およびトリメチルリジン
リノレン酸−NH2の調製
10mlのクロロホルム中のリノレン酸1.2ml(4mmol)、DCC(1.65g、8mmol)、NHS(1.224g、8mmol)およびDMAP(0.325g、4mmol)中に、793.3mgのエチレンジアミン(13.2mmol)を添加した。この混合物を室温にて16時間撹拌した。次いで溶媒を蒸発させた。この混合物を10mlのクロロホルムに溶解し、7mlのブラインを用いて2回洗浄した。無水硫酸マグネシウムを用いてクロロホルム層を乾燥し、濾過し、蒸発させた。粗生成物を秤量したところ、2.57g(粗収率100%)であった。この生成物をさらに精製することなく共役に用いた。
【0249】
GAP−リノレン酸の合成
15mlの無水DMF中の300mgのGAP(分子量1500〜3000、0.133mmol)の溶液に、275mgのDCC(1.33mmol)および85mgのリノレン酸−NH2(0.133mmol)を添加した。この混合物を室温にて一晩撹拌した。溶媒を真空下で蒸発させた。得られた混合物にNaOH(0.5N)を添加し、pHを9〜10に調整した。0.8μmのメンブランフィルターを用いてこの溶液を濾過し、分子量カットオフ<1000を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機で乾燥された317.5mgの白色粉末(GAP−リノレン酸)を得た。
【0250】
GAP−トリメチルリジン(TML)の合成
5mlの無水DMF中の83mgのGAP(分子量2250、0.036mmol)の溶液に、32.6mgのDCC(0.158mmol)、19.03mgのDMAP(0.156mmol)および25mgのTML(0.132mmol)を添加した。この混合物を室温にて一晩撹拌した。溶媒を真空下で蒸発させた。得られた混合物にNaHCO3(0.5ml、1N)を添加し、pHを8に調整した。0.8μmのメンブランフィルターを用いてこの溶液を濾過し、分子量カットオフ<1000を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機で乾燥された89.8mgの白色粉末(GAP−TML、収率84%)を得た。ラットにおいて腫瘍は良好に可視化された(図35〜図36)。
【0251】
実施例9
増殖の特徴づけのための99mTc−GAP−アデノシン(ADN)
GAP−ADNの合成
15mlの無水DMFに、330.8mgのGAP(分子量1500〜3000)を溶解した。60.7mgのDCC(ジシクロヘキシルカルボイミド)および43.3mgの3’−アミノ−3’−デオキシ−N6,N6−ジメチルアデノシン(ADN)を添加し、混合物を室温にて一晩撹拌した。減圧下で溶媒を除去した後、10mlの水を添加した。0.8μmのメンブランフィルターを用いてこの混合物を濾過し、分子量カットオフ<1000を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機で乾燥された290mgの白色粉末(GAP−ADN、収率78.1%)を得た。合成スキームを図37に示す。プロトンNMRにより、構造を確認した。ラットにおいて腫瘍は良好に可視化された。
【0252】
本明細書において開示され、特許請求されている全ての組成物および方法は、現存する開示を踏まえれば過度の実験なしに実施されうる。本発明の組成物および方法については好ましい実施形態という観点から記載されているが、本発明の概念、思想および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の組成物および方法や、方法の複数の工程または一連の工程に改変がなされうることは当業者にとって自明であろう。より詳細には、化学的にも生理的にも関連した特定の剤によって本明細書に記載の剤が置き換えられ、これにより同一または類似の結果を達成してもよいことは自明であろう。当業者にとって自明のこれら全ての置換や修飾は、添付の特許請求の範囲によって規定されるように、本発明の思想、範囲および概念に含まれるものとする。
【0253】
参考文献
以下の参考文献は、本明細書の記載を補充するための例示的な手法または他の詳細を提供する限りにおいて、参照により本明細書に引用される。
【0254】
米国特許第6,692,724号
米国特許出願第09/599,152号
米国特許出願第10/627,763号
米国特許出願第10/672,142号
米国特許出願第10/703,405号
米国特許出願第10/732,919号
Alauddin and Conti, Nucl. Med. Biol., 25(3):175−180 1998.
Alauddin et al., Nucl. Med. Biol., 23:787−792, 1996.
Alauddin et al., Nucl. Med. Biol., 26:371−376, 1999.
Alberico et al., Surg. Oncol. Clin. N. Am., 13(1):13−35, 2004.
Bird et al., Science, 242:423−426, 1988.
Bolhuis et al., Int. J. Cancer Suppl., 7:78−81, 1992.
Bush et al., Br. J. Cancer Suppl., 37(3):302−306, 1978.
Campbell et al., Cancer Res., 51(19):5329−5338 1991.
Canevari et al., Hybridoma., 12(5):501−507, 1993.
Chasselle et al, Lancet, 34B:143, 1995.
Chaudhary et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87(3):1066−1070, 1990.
Chenu et al. Bone, 22(4):295−299, 1998.
Coney et al., Cancer Res., 54(9):2448−2455, 1994.
Dische, Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys., 20(1):147−152, 1991.
Franklin et al., Int. J. Cancer Suppl., 8:89−95, 1994.
Gambhir et al., J. Nucl. Med., 39(11):2003−2011, 1998.
Gambhir et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96(5):2333−2338, 1999.
Gambhir et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97:2785−2790, 2000.
Gatenby et al., Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys., 14(5):831−838, 1988.
Gelbard et al., J. Nucl. Med., 20(7):782−784, 1979.
Ginobbi et al., Anticancer Res., 17(1A):29−35, 1997.
Gray et al., Nature, 182(4640):952−953, 1958.
Hall et al., Radiat. Res., 114(3):415−424 1988.
Henson et al., AJNR Am. J. Neuroradiol., 25(6):969−972, 2004.
Holm, et al., APMIS, 102(11):828−836, 1994.
Hsueh and Dolnick, Biochem. Pharmacol., 45(12):2537−2545, 1993.
Huston et al., Biochemistry, 27(25):8945−8952, 1988.
Ilgan et al., Cancer Biother. Radiopharm., 13(3):177−184, 1998b.
Ilgan et al., Cancer Biother. Radiopharm., 13(6):427−435, 1998a.
Iyer et al., J. Nucl. Med., 42(1):96−105, 2001.
Koh et al., Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys., 22:199 212, 1992.
Kranz et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA, 92(20):9057−9061, 1995.
Laverman et al., Eur. J. Nucl. Med. Mol. Imaging, 29(5):681−690, 2002.
Leamon and Low, Biochem. J., 291 ( Pt 3):855−860, 1993.
Leamon and Low, J. Biol. Chem., 267(35):24966−24971, 1992.
Leamon and Low, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88(13):5572−5576 1991.
Lee and Low, J. Biol. Chem., 269(5):3198−3204, 1994.
Martin et al., J. Nucl. Med., 30:194 201, 1989.
Medical Letter Handbook of Adverse Drug Interactions, 199
Medical Letter, 34:78, 1992
Namavari et al., Nucl. Med. Biol., 27(2):157−162, 2000.
Nordsmark et al., Radiother. Oncol., 41(1):31−39, 1996.
Patrick et al., J. Neurooncol., 32(2):111−123, 1997.
Rasey et al., Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys., 17(5):985−991 1989.
Rasey et al., Radiother. Oncol., 17(2):167−173, 1990.
Reed, Cancer Cell, 3:17−22, 2003.
Reiman et al., J. Nucl. Med., 23(8):682−687, 1982.
Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1289−1329, 1990.
Ross et al., Cancer, 73(9):2432−2443, 1994.
Saha et al., Semin. Nucl. Med., 24(4):324−349 ,1994.
Senner et al., J. Natl. Cancer Inst., 88:140, 1994.
Sordillo et al., Am. J. Clin. Oncol., 5(3):285−289, 1982.
Strunk and Schild, Eur. Radiol., 14(6):1055−1062, 2004.
Tjuvajev et al., J. Nucl. Med., 43(8):1072−1083, 2002.
Vaalburg et al., Int. J. Rad. Appl. Instrum. B, 19(2):227−237, 1992.
Valk et al., J. Nucl. Med., 33(12):2133−2137, 1992.
Warrell, Jr et al, N. Engl. J. Med., 329(3):177−189, 1993.
Weitman et al., Cancer Res., 52(12):3396−3401 1992b.
Weitman et al., Cancer Res., 52(23):6708−6711, 1992a.
Weitman et al., J Neurooncol., 21(2):107−112, 1994.
Westerhof et al., Cancer Res., 51(20):5507−5513, 1991.
Yaghoubi et al., J. Nucl. Med., 42:1225−1234, 2001.
【図面の簡単な説明】
【0255】
【図1】GAP−3−EDLの合成スキーム。
【図2】GAP−EDLの1H−NMR。
【図3】乳癌細胞における細胞取り込み(RBA CRL−1747、4μCi/500000細胞/ウェル)。
【図4】ヒト乳癌細胞における3時間での細胞取り込み(4μCi/200000/ウェル)。
【図5】ヒト卵巣癌細胞における3時間での細胞取り込み(4μCi/50000/ウェル)。
【図6】100000個のラット乳腺腫瘍細胞を、68Ga−GAP−EDLとともに30〜240分間インキュベートした。68Ga−GAPと比較して、68Ga−GAP−EDL群では高い取り込みを示した(*p<0.005、**p<0.0005)。
【図7】100000個のラット乳腺腫瘍細胞を、68Ga−GAP−EDL(0.1mg/ウェル)とともに、ラベル化されていないエストロンの存在下でインキュベートした。90分間インキュベート時に細胞を回収した。結果は、コントロール群を基準とした%取り込みを示す。コントロール群と比較して、*p<0.005。エストロン処理した細胞では取り込みが減少しており、この細胞取り込みはER媒介性プロセスであることが示唆される。
【図8】乳癌腫瘍罹患ラットにおける99mTc−GAP−EDL計数密度比。99mTc−GAP−EDLのインビボ腫瘍(子宮)対組織の計数密度比。
【図9A】99mTc−GAP−EDLおよび99mTc−DTPA投与後の乳癌腫瘍罹患ラットの平面造影により、腫瘍は注射後0.5〜4時間で可視化されうることが示された。
【図9B】注射後55分での選択的造影。
【図10】GAP−EDLの合成(17位)。
【図11A】乳癌細胞における細胞取り込み(RBA CRL−1747、4μCi/ウェル)。
【図11B】300μCi/ラットを静注後の乳房腫瘍細胞系罹患ラットにおけるTc−99m−GAPおよびTc−99m−GAP−エストラジオール17の30、60、120および180分での平面シンチグラフィのカウントは500000であり、腫瘍対筋肉の可視化を比較した。
【図12】GAP−COXiの合成スキーム。
【図13】GAP−COXiのプロトンNMR。
【図14】99mTc−GAP−COX−2(COX2阻害剤)の放射性映像。シスプラチン処理(4mg/kg、静注)の前後に、99mTc−GAP−COX−2(300μCi、静注)を用いて乳房腫瘍罹患ラットを造影した。99mTc−GAP−COX−2の選択的平面画像が、注射後0.5〜2時間で得られた。
【図15】GAP−DOXの合成。
【図16】99mTcGAP剤の細胞取り込み。乳癌細胞における細胞取り込み(RBA CRL−1747、4μCi/50000細胞/ウェル)。
【図17】GAP−DGの合成。
【図18】GAP−GALの合成。
【図19】乳癌細胞における細胞取り込み(RBA CRL−1747、4μCi/ウェル)。
【図20】乳房腫瘍罹患ラットにおける99mTc−GAP−DGACの取り込み(n=3、27.5μCi/ラット、静注)。
【図21】乳房腫瘍罹患ラットにおける99mTc−GAP−DGACの腫瘍対組織の計数密度比。
【図22】乳房腫瘍罹患ラットにおける99mTc−GAP−DGACの腫瘍対血液および腫瘍対筋肉の計数密度比。
【図23】ウサギにおける99mTc−GAP−DGACの造影。VX2−腫瘍罹患ウサギ(1mCi/ウサギ、静注)における99mTc−GAP−DGACの平面シンチグラフィにより、腫瘍が良好に可視化されうることが示された。腫瘍対非腫瘍比を示す。T=腫瘍。
【図24】ウサギにおける99mTc−GAP−DGACXの造影。VX2−腫瘍罹患ウサギ(1mCi/ウサギ、静注)における99mTc−GAP−DGACの平面シンチグラフィにより、腫瘍が良好に可視化されうることが示された。腫瘍対非腫瘍比を示す。T=腫瘍。
【図25】GAP−LASの合成スキーム。
【図26】ヒト卵巣癌細胞における細胞取り込み(6μCi/60000/ウェル)。
【図27】乳癌細胞における細胞取り込み(RBA CRL−1747、3μCi/50000細胞/ウェル)。
【図28】ヒト卵巣癌細胞における2時間での細胞取り込み(3μCi/60000/ウェル)。
【図29】ヒトシスプラチン抵抗性卵巣癌細胞における細胞取り込み(2.4μCi/ウェル)。
【図30】乳房腫瘍罹患ラットにおける化合物の腫瘍/血液比(n=3/時間間隔、20μCi/ラット、静注)。
【図31】乳房腫瘍罹患ラットにおける腫瘍対筋肉比(n=3/時間間隔、20μCi/ラット、静注)。
【図32】GAP−FOLの合成。
【図33】GAP−MNの合成。
【図34】GAP−MTXの合成。
【図35】腫瘍罹患ラットにおける99mTc−GAP−TMLの30、60、120、および180分での造影。300μCi/ラットを静注後の乳房腫瘍細胞系罹患ラットにおけるTc−99m−GAP−TLMの30、60、120分での平面シンチグラフィのカウントは500000であり、腫瘍対筋肉および心臓対筋肉の可視化を示した。
【図36】乳腺腫瘍罹患ラットにおける、99mTc−GAP、99mTc−GAP−アデノシン、99mTc−GAP−EDL17、および99mTc−GAP−TML化合物の腫瘍対筋肉の計数密度比。
【図37】GAP−ADNの合成。
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本願は、2005年4月1日に出願された、米国仮特許出願60/667,815の関連出願であり、その全体が参照により本明細書に引用される。
【0002】
1.発明の分野
本発明は、概説すれば、造影、放射療法、ラベル化、化学療法、および化学合成の分野に関する。より詳細には、本発明は、(a)原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を含むポリペプチド、並びに(b)2つの連続した前記アミノ酸の少なくとも1つに非共有結合的に結合した1以上の原子価金属イオンの組成物に関する。造影部位、治療用部位、または組織標的部位などの第2の部位が前記ポリペプチドに結合していてもよい。他の実施形態としては、(a)組織標的アミノ酸配列、診断用アミノ酸配列、および/または治療用アミノ酸配列を配列中に含むポリペプチド、並びに(b)前記ポリペプチドに非共有結合的に結合した1以上の原子価金属イオンが挙げられる。上述した造影剤を用いた造影方法、上述した造影剤の合成方法、これらの造影剤を調製するためのキット、および、候補物質を、原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を含むポリペプチドと共役またはキレートさせることを含む、候補物質の造影剤としての有効性を決定する方法もまた、開示される。上述した組成物を用いた、被験者における過剰増殖性疾患の治療方法もまた、開示される。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の説明
生物医学的造影には、被験者における疾患の診断を助けるだけでなく、身体の正常な構造や機能についての深い理解を得る目的でも医師や研究者により広く用いられている種々の様式がある。典型的な造影様式としては、PET、SPECT、ガンマカメラ造影、CT、MRI、超音波、および光学造影が挙げられる。
【0004】
多くの場合、被験者における特定部位の最適な造影には、被験者に対して特定の剤を投与する必要がある。テクネチウム(99mTc)、鉄、ガドリニウム、レニウム、マンガン、コバルト、インジウム、白金、銅、ガリウムまたはロジウムといった無機金属が、多くの造影剤の成分として有益であることが判明している。
【0005】
無機金属を用いたラベル化分子は、当該金属を特定の化合物の酸素、硫黄および窒素原子の結合にキレートさせることにより得られる。硫黄コロイド、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA、O4)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA、O4)、およびDOTA(N4)などのキレート剤がこの目的で用いられている。しかしながら、このようにキレートされた無機金属は、身体からの初期クリアランスが速いため、造影での有用性は限定的なものである。
【0006】
近年、いくつかのアミノ酸が、ガンマ放射線放出核種(I−123、I−131)、または陽電子放出核種(C−11、N−13、F−18)を用いてラベル化されている(Laverman et al., 2002; Vaalburg et al., 1992)。タンパク質の合成速度を測定するために用いられうるアミノ酸もあるが、剤の細胞中への取り込み速度を測定するだけの目的で用いられるものもある(Laverman et al., 2002; Vaalburg et al., 1992)。
【0007】
興奮性アミノ酸であるグルタミン酸(Glu)は、中枢神経系における強力な神経伝達物質であり、種々のグルタミン酸受容体(GluR)を介してその作用を発揮する(Chenu et al. 1998)。サイクロトロンで製造されたL−(N−13)グルタミン酸塩は、患者における頭蓋内悪性腫瘍を可視化する目的で用いられている(Reiman et al., 1982)。L−(N−13)グルタミン酸塩を投与すると、PET(N−13)グルタミン酸塩は大部分の脳腫瘍により速やかに取り込まれ、N−13の取り込みは血液脳関門の損傷と相関することが、コントラストCTまたは過テクネチウム酸(Tc−99m)を用いた研究により示されている(Reiman et al., 1982)。
【0008】
L−(N−13)グルタミン酸塩はまた、骨原性肉腫(Gelbard et al., 1979)や胎児性横紋筋肉腫(Sordillo et al., 1982)を造影する目的でも用いられている。これらの研究では、原発腫瘍により取り込まれたN−13の量を連続して定量的に測定したところ、化学療法の10週間後には40%の減少が見られた。N−13ラベルは肉腫の軟部組織部位に集積しているようであるのに対し、99mTcジホスホン酸塩の取り込みは石灰化が起こっている領域において最大であった(Gelbard et al., 1979; Sordillo et al., 1982)。
【0009】
[13N]アミノ酸の主要な制限の1つは、一般的な治療用途には半減期が短すぎると考えられているということである。さらに、[13N]アミノ酸についての代謝コンパートメントモデルは研究されていない。日常的に使用するには、信頼できる放射性医薬品の製造が不可欠であり、かような信頼できる製造方法は、[13N]アミノ酸については確立されていない。PETアミノ酸製剤について、製造時の主な問題としては、合成に複雑な多くの工程を要すること、放射化学的収率が低いこと、精製方法が複雑であることが挙げられる。よって、高コスト、入手可能性、および場合によっては放射線曝露の増加などの因子によって、[13N]アミノ酸の治療におけるアベイラビリティおよび有用性が制限されてしまう。
【0010】
好ましい半減期(6時間)を有し、製造が容易であり、広く入手可能であり、エネルギーが低く(140keV)、低コストであることから、造影剤用の好ましい放射性ラベルはテクネチウム(99mTc)である。しかしながら、99mTcを造影目的の薬剤に結合させることは、ときに困難である。99mTcのようなアイソトープの半減期がより長ければ、施設内のサイクロトロンや専用の放射化学実験室がなくとも、放射性ラベルされたアミノ酸を病院へ輸送することが容易となる。
【0011】
[13N]グルタミン酸塩を用いた腫瘍造影は成功していることから、[13N]グルタミン酸塩よりも効率的に、かつ安価に製造可能な造影剤および放射性治療剤が求められている。また、効率的かつ容易に製造でき、例えばキット形態のように治療用途により容易に利用可能とされた、[13N]グルタミン酸塩よりも安定な剤も求められている。さらには、造影剤または放射性治療剤の所望の部位への標的能力を延長させて造影の質を改善するように、身体から速やかには排泄されない造影剤もまた、求められている。
【0012】
188Reは、高いβエネルギーを有し(2.1MeV)、短い物理的半減期を有し(16.9時間)、線量測定や造影用途のための155keVのガンマ線を放出することから、造影や潜在的な治療用途について優れた特性を有する。188Reの物理的半減期は短いことから、より長寿命の放射性核種と比較してより高用量の使用が可能となる。さらに、半減期が短いため、放射性廃棄物の取扱いや貯蔵の問題が低減される。特に、188Reは、99mTc生成器に類似の施設内生成システムから入手可能である。188Reは、188W/188Re生成器から得ることが可能であり、治療用途には非常に便利である。99mTcおよび188Reはいずれもガンマ線を放出することから、99mTc造影に基づいて生成した線量測定は、現在の標準的なラジオアイソトープであるY−90を用いて製造されたものと比較してより正確であることが期待される。
【0013】
陽電子放出断層撮影法(PET)を用いた造影については、ラジオアイソトープは長期に亘る化学合成の間に減衰し、放射性合成の間に放射線に曝露する危険性が高くなることから、PETの放射性合成は迅速に行われなければならない。サイクロトロンベースのトレーサは、現場のサイクロトロンの入手可能性やコストが高いことにより制限を受ける。食品医薬品局(FDA)は、十分に管理された条件下で、中心となる商業施設内で放射性医薬品を製造し、当該医薬品が投与される各地のクリニックに当該医薬品を流通させることを認めている。同様に、十分に管理された施設内で製造されうる放射性核種の生成器システムは、現在のFDAの手続きでも容認されており、治療用途での長い成功の歴史を有している。生成器は親子の核種対を利用し、相対的に長寿命の親アイソトープは短寿命の子核種へと崩壊し、これが造影に用いられる。親アイソトープはサイクロトロン施設で製造され、医療施設へと輸送され、治療用途のために施設内で親アイソトープから子アイソトープが放出されてもよい。
【0014】
68Gaは陽電子放出量が多く(総崩壊の89%)、よってその主要な考慮事項は、その空間分解能であり、これは陽電子の範囲(エネルギー)、消滅する光子が共直線性を示さないこと、検出器の固有の特性、サイズ、および配置、並びに再構成アルゴリズムの選択に依存する。検出器の設計、物理的特性およびシステムの空間分解能へのその影響といった側面は、多くの著者によって広く取り組まれており、ハードウェアの連続的な最適化へと至っている。68Gaの最大陽電子エネルギー(最大=1.90MeV、平均=0.89MeV)は、18Fのエネルギー(最大=0.63MeV、平均=0.25MeV)よりも高いが、モンテカルロ分析を用いた空間分解能についての研究によれば、PET検出器の空間分解能を3mmと仮定すると、従来の18Fおよび68Gaの半値全幅(FWHM)は軟部組織において区別できない(3.01mm対3.09mm)ことが判明した。これにより、現在の医療用スキャナの5〜7mmの空間分解能では、68Gaベースのトレーサを用いた造影の質は、18Fベースの剤と同程度である可能性があることを示唆しており、他者を潜在的な68Gaベースの造影剤の研究へと駆り立てた。さらに、68Gaは施設内で68Ga生成器から製造されることができ(半減期は275日)、18Fまたは13NといったサイクロトロンベースのPETアイソトープに対する簡便な代替品として機能することから、68GaベースのPET剤は有意な商業的可能性を有している。
【発明の開示】
【0015】
発明の概要
本発明者らは、原子価金属イオンの担体およびキレート剤として機能するポリペプチドを含む特定の新規な造影剤および放射性治療剤を開発した。DTPA−薬剤共役体と比較して、これらの剤は被験者における所望の部位への標的能力が延長されている。特定の実施形態において、前記ポリペプチドは、5〜60個の酸部位を含むポリ(グルタミン酸塩)(GAP)またはポリ(アスパラギン酸塩)(AAP)ペプチドである。いくつかの実施形態において、前記ポリペプチドは、99mTcのキレート化に用いられる4つの酸部位を含む。本発明者らはまた、得られる剤が多様式の造影または放射化学療法にふさわしいように、前記ポリペプチドに、組織標的部位、治療用部位、または造影部位といった第2の部位を結合させることが可能であることを見出した。かような共役反応は、例えば、水性(湿式)または溶媒(乾燥)条件下で行われうる。ポリペプチドに金属イオンを複合化することで、剤の水溶性が改善され、当該剤をコントラスト促進標的造影に用いることが可能となる。
【0016】
本発明の特定の実施形態は、一般的に、原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を配列中に含むポリペプチドと、2つの連続した前記アミノ酸の少なくとも1つに非共有結合的に結合した1以上の原子価金属イオンとの組成物に関する。「原子価金属イオン」は、本明細書において以下で詳述するように、他の原子または分子との間で、非共有結合のような結合を形成しうる任意の金属イオンを含む。他の原子または分子は、ときに負に荷電している。
【0017】
天然または合成にかかわらず、原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する任意のアミノ酸が、本発明のポリペプチド中に含まれるものと解される。よって、原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有するアミノ酸は、電子供与体となることができなければならない。かようなアミノ酸については、本明細書において以下で詳述する。例えば、当該アミノ酸は、原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有するカルボキシル部位を含んでもよい。特定の実施形態において、原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸は、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩類似体、グルタミン酸塩類似体、システイン、リジン、アルギニン、グルタミン、アスパラギン、グリシン、オルニチン、および2以上のカルボキシル基を含む天然由来でないアミノ酸からなる群から選択される。
【0018】
特定の実施形態において、上述した2以上の連続したアミノ酸は、グルタミン酸塩残基である。さらなる実施形態において、上述した2以上の連続したアミノ酸は、アスパラギン酸塩残基である。他の実施形態において、当該ポリペプチドは、グルタミン酸塩残基およびアスパラギン酸塩残基の双方を任意の比率で含む。これらの実施形態において、ポリペプチドは任意の数の連続したグルタミン酸塩残基および/またはアスパラギン酸塩残基を含みうる。例えば、いくつかの実施形態では、ポリペプチドは少なくとも2個の連続したグルタミン酸塩残基および/またはアスパラギン酸塩残基を含む。さらなる実施形態において、ポリペプチドは少なくとも5個の連続したグルタミン酸塩残基および/またはアスパラギン酸塩残基を含む。さらに特定の実施形態において、ポリペプチドは少なくとも10個の連続したグルタミン酸塩残基および/またはアスパラギン酸塩残基を含む。さらにより特定の実施形態において、ポリペプチドは少なくとも20個の連続したグルタミン酸塩残基および/またはアスパラギン酸塩残基を含む。さらなる実施形態において、ポリペプチドは少なくとも50個の連続したグルタミン酸塩残基および/またはアスパラギン酸塩残基を含む。この連続したアミノ酸残基は同一(例えば、全てグルタミン酸塩)であってもよいし、異なるタイプのアミノ酸残基の組み合わせ(例えば、グルタミン酸塩残基とアスパラギン酸塩残基との混合物)であってもよい。
【0019】
前記ポリペプチドの分子量は任意である。例えば、いくつかの実施形態において、ポリペプチドは300〜30000ダルトンの分子量を有する。一般的には、本発明のより特定の実施形態では分子量はより小さく、例えば750〜9000ダルトンの分子量である。750〜9000ダルトンの分子量は、約5〜約60個の連続したアミノ酸残基を意図する。本明細書に記載の原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する連続したアミノ酸の配列は、薬理学的には不活性であることが必須であり、生物学的活性および/または薬理活性は最小限のものであると考えられる。
【0020】
本発明の特定の実施形態において、ポリペプチドは、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩類似体、またはアスパラギン酸塩類似体のカルボキシル部位への配位を介して3〜5個の原子価金属イオンをキレートすることができる。これらの実施形態において、ポリペプチドは任意の数の原子価金属イオンをキレートしうる。例えば、ポリペプチドは、1〜200以上の原子価金属イオンをキレートしうる。
【0021】
原子価金属イオンは、アミノ酸残基に非共有結合的に結合することが当業者に知られている任意の原子価金属イオンである。例えば、原子価金属イオンは、放射性核種である。放射性核種は、放射能を示す人工のまたは天然由来のアイソトープである。いくつかの実施形態において、原子価金属イオンは、Tc−99m、Cu−60、Cu−61、Cu−62、Cu−67、In−111、Tl−201、Ga−67、Ga−68、As−72、Re−186、Re−188、Ho−166、Y−90、Sm−153、Sr−89、Gd−157、Bi−212、Bi−213、Fe−56、Mn−55、Lu−177、原子価鉄イオン、原子価マンガンイオン、原子価コバルトイオン、原子価白金イオン、および原子価ロジウムイオンからなる群から選択されうる。特定の実施形態において、原子価金属イオンはTc−99m、Re−188、またはGa−68である。
【0022】
本発明の特定の実施形態において、ポリペプチドは、当該ポリペプチドに結合した第2の部位を含む。当該第2の部位は、当業者に公知の任意の様式でポリペプチドに結合しうる。例えば、いくつかの実施形態において、第2の部位は、アミド結合またはエステル結合によりポリペプチドのカルボキシル部位に結合しうる。
【0023】
当該第2の部位は、任意のタイプの部位でありうる。例えば、いくつかの実施形態において、第2の部位は、組織標的部位、診断用部位、または治療用部位である。これらの部位については、本明細書において以下で詳述する。いくつかの実施形態において、上述した組織標的部位は、標的リガンドである。例えば、当該標的リガンドは、疾患細胞周期標的化合物、代謝拮抗物質、生体還元剤、シグナル伝達性治療剤、細胞周期に特異的な剤、腫瘍血管新生標的リガンド、腫瘍アポトーシス標的リガンド、疾患受容体標的リガンド、薬剤ベースのリガンド、抗微生物剤、腫瘍低酸素症標的リガンド、グルコース模倣体、アミフォスチン、アンギオスタチン、EGF受容体リガンド、モノクローナル抗体C225、モノクローナル抗体CD31、モノクローナル抗体CD40、カペシタビン、COX−2阻害剤、デオキシシチジン、フラーレン、ハーセプチン、ヒト血清アルブミン、ラクトース、黄体形成ホルモン、ピリドキサール、キナゾリン、サリドマイド、トランスフェリン、またはトリメチルリジンでありうる。
【0024】
本発明の特定の実施形態において、ポリペプチドは、5〜60個の連続したグルタミン酸塩残基および標的リガンドを含み、この際、当該標的リガンドは、エストラジオール、ガラクトース、ラクトース、シクロデキストリン、コルヒチン、メトトレキサート、パクリタキセル、ドキソルビシン、セレブレックス、メトロニダゾール、アデノシン、ペンシクロビル、カルネチン、エストラジオール(3位)、エストラジオール(17位)、リノレン酸、グルコサミン、マンノース四酢酸、または葉酸塩であり、さらに原子価金属イオンは99mTcである。
【0025】
ポリペプチドが診断用部位を含む本発明の実施形態において、当該診断用部位は、造影部位でありうる。造影部位は、以下で詳述するが、特定の実施形態では造影剤であってもよい。例えば、当該造影剤は、CT造影剤、MRI造影剤、光学造影剤、および超音波造影剤でありうる。典型的なCT造影剤としては、イオタラム酸塩、イオヘキソール、ジアトリゾエート、イオパミドール、エチオドール、およびイオパノエートが挙げられる。典型的なMRI造影剤としては、ガドリニウムキレート(例えば、Gd−DOTA)、マンガンキレート(例えば、Mn−DPDP)、クロムキレート(例えば、Cr−DEHIDA)、および鉄粒子が挙げられる。典型的な光学造影剤としては、フルオレセイン、フルオレセイン誘導体、インドシアニングリーン、オレゴングリーン、オレゴングリーン誘導体の誘導体、ローダミングリーン、ローダミングリーン誘導体、エオジン、エリスロシン、テキサスレッド、テキサスレッド誘導体、マラカイトグリーン、ナノゴールドスルホコハク酸イミドエステル、カスケードブルー、クマリン誘導体、ナフタレン、ピリジルオキサゾール誘導体、カスケードイエロー染料、およびダポキシル染料が挙げられる。典型的な超音波造影剤としては、過フッ素化物または過フッ素化物類似体などの超音波過フッ素化造影剤が挙げられる。
【0026】
特定の実施形態において、第2の部位は治療用部位である。治療用部位については、本明細書において以下で詳細に説明する。本発明のいくつかの実施形態において、治療用部位は抗癌部位である。当業者に公知の任意の抗癌剤が、本発明における抗癌部位として用いられると解され、当該抗癌剤は、本明細書の他の箇所において詳細に説明したように、当業者に公知の任意の様式で本発明のポリペプチドに結合しうる。典型的な抗癌部位としては、治療用放射性金属物質(therapeutic radiometallic substance)をキレート可能なキレート剤、メトトレキサート、エピポドフィロトキシン、ビンクリスチン、ドセタキセル、パクリタキセル、ダウノマイシン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、トポテカン、ブレオマイシン、ゲムシタビン、フルダラビンおよび5−FUDRが挙げられる。特定の実施形態において、当該抗癌部位はメトトレキサートである。
【0027】
他の実施形態において、前記抗癌部位は、Re−188、Re−186、Ho−166、Y−90、Sr−89、Sm−153からなる群から選択される治療用放射性金属物質である。他の実施形態において、当該抗癌部位は、ヒ素、コバルト、銅、セレン、タリウムおよび白金からなる群から選択される治療用金属をキレート可能な物質である。
【0028】
ポリペプチドに非共有結合的に結合する原子価金属イオンは、当業者に公知の任意の方法により造影されうる。造影の典型的な方法については、本明細書において以下で詳細に説明するが、PETやSPECTが挙げられる。
【0029】
本発明はまた、概説すれば、組織標的アミノ酸配列、診断用アミノ酸配列、および/または治療用アミノ酸配列を配列中に含むポリペプチド、並びに、前記ポリペプチドの1以上のアミノ酸残基に非共有結合的に結合した1以上の原子価金属イオンを含む組成物に関する。これらの特定の実施形態において、ポリペプチドは2個以上の連続したグルタミン酸塩残基を含む。例えば、特定の実施形態において、ポリペプチドは5〜60個の連続したグルタミン酸塩残基を含む。他の実施形態において、ポリペプチドは2個以上の連続したアスパラギン酸塩残基を含む。例えば、いくつかの実施形態において、ポリペプチドは5〜60個の連続したアスパラギン酸塩残基を含む。
【0030】
組織標的アミノ酸配列は、疾患細胞周期標的化合物、代謝拮抗物質、生体還元剤、シグナル伝達性治療剤、細胞周期に特異的な剤、腫瘍血管新生標的リガンド、腫瘍アポトーシス標的リガンド、疾患受容体標的リガンド、薬剤ベースのリガンド、抗微生物剤、腫瘍低酸素症標的リガンド、グルコース模倣体、アミフォスチン、アンギオスタチン、EGF受容体リガンド、モノクローナル抗体C225、モノクローナル抗体CD31、モノクローナル抗体CD40、カペシタビン、COX−2阻害剤、デオキシシチジン、フラーレン、ハーセプチン、ヒト血清アルブミン、ラクトース、黄体形成ホルモン、ピリドキサール、キナゾリン、サリドマイド、トランスフェリン、またはトリメチルリジンなどの標的リガンドでありうる。診断用アミノ酸配列は、CT造影剤、MRI造影剤、および光学造影剤、または超音波造影剤などの造影アミノ酸配列でありうる。上述したように、治療用アミノ酸配列は、抗癌アミノ酸配列でありうる。特定の実施形態において、抗癌アミノ酸配列は、ヒ素、コバルト、銅、セレン、タリウム、または白金からなる群から選択される治療用金属をキレート可能である。
【0031】
本発明はまた、概説すれば、(1)原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を配列中に含むポリペプチドを得ること;および、(2)前記ポリペプチドを1以上の原子価金属イオンおよび還元剤と混合して、原子価金属イオンでラベル化されたポリペプチドを得ることを含み、この際、1以上の原子価金属イオンが、2つの連続したアミノ酸の少なくとも1つに非共有結合的に結合している、造影剤(imaging agent)の合成方法に関する。
【0032】
前記還元剤は、当業者に公知の任意の還元剤でありうる。例えば、特定の実施形態において、還元剤は、亜ジチオン酸イオン、第一スズイオン、または第一鉄イオンである。本明細書に記載の合成方法において、ポリペプチドは上述した任意のポリペプチドであってよく、その記載はこの欄にも引用される。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態において、造影剤の合成方法は、造影および化学療法のための剤の合成方法としてさらに規定される。本発明のさらなる実施形態において、造影剤の合成方法は、多重造影のための剤の合成方法としてさらに規定される。これらの方法において用いられる造影の様式は、当業者に公知の任意の造影様式でありうる。典型的な方法については、本明細書の他の欄で詳細に説明するが、PET、SPECT、MRI、CT、および光学造影が挙げられる。
【0034】
本発明のさらなる実施形態は、概説すれば、(1)組織標的アミノ酸配列、診断用アミノ酸配列、および/または治療用アミノ酸配列を配列中に含むポリペプチドを得ること;および、(2)前記ポリペプチドを1以上の原子価金属イオンおよび還元剤と混合して、原子価金属イオンでラベル化されたポリペプチドを得ることを含む、造影剤(imaging agent)の合成方法に関する。還元剤は、上述したように、亜ジチオン酸イオン、第一スズイオン、または第一鉄イオンなどの当業者に公知の任意の還元剤でありうる。特定の実施形態において、ポリペプチドは、少なくとも2個の連続したグルタミン酸塩残基またはアスパラギン酸塩残基を含む。より特定の実施形態において、ポリペプチドは、少なくとも2個の連続したグルタミン酸塩残基またはアスパラギン酸塩残基を含む。典型的な原子価金属イオンとしては、上述した任意のものが挙げられる。特定の実施形態において、原子価金属イオンはTc−99mである。組織標的アミノ酸配列は、上述した任意の組織標的リガンドなどの組織標的リガンドであってもよい。同様に、典型的な診断用アミノ酸配列、造影アミノ酸配列、および治療用アミノ酸配列としては、上述した任意の配列が挙げられる。
【0035】
本発明のさらなる実施形態は、概説すれば、被験者におけるある部位を造影する方法であって、(1)上述したポリペプチドおよび原子価金属イオンの新規な組成物の診断上有効な量を被験者に投与すること;並びに、(2)前記部位に局在する原子価金属イオン−ポリペプチドキレートからの信号を検出することを含む方法に関する。当業者に公知の任意の方法が、前記部位に局在する原子価金属イオン−ポリペプチドキレートからの信号を検出する目的で用いられうる。例えば、信号は、PET、CT、SPECT、MRI、光学造影、または超音波を用いて検出されうる。いくつかの実施形態において、当該方法は、多重造影および放射化学療法を行う方法としてさらに規定される。放射化学療法とは、上述した任意の物質などの放射性治療用金属物質を用いた治療法である。さらなる実施形態において、当該造影方法は、被験者におけるある部位の多重造影を行う方法としてさらに規定される。上述した任意の方法などの当業者に公知の任意の造影様式が、本発明では適用されうる。
【0036】
本発明のさらなる実施形態は、概説すれば、造影剤を調製するためのキットであって、原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を配列中に含む所定量のポリペプチド;および、原子価金属イオンを2つの連続した前記アミノ酸の少なくとも1つに非共有結合的に結合させるのに十分な量の還元剤、を含む密封容器を有するキットに関する。2以上の連続したアミノ酸を含む上述した任意のポリペプチドは、これらの実施形態に含まれるものと解される。
【0037】
本発明のさらなる実施形態は、造影剤を調製するためのキットであって、組織標的アミノ酸配列、診断用アミノ酸配列、および/または治療用アミノ酸配列を配列中に含む所定量のポリペプチド;および、1以上の原子価金属イオンを前記ポリペプチドに結合させるのに十分な量の還元剤、を含む密封容器を有するキットに関する。組織標的アミノ酸配列、診断用アミノ酸配列、および/または治療用アミノ酸配列を含む上述した任意のポリペプチドは、本発明に含まれるものと解される。ポリペプチドは、1以上のかような配列を含んでよく、かような配列を任意の組み合わせで含みうる。上述したように、ポリペプチドは、任意の数の連続したアミノ酸残基を含みうる。特定の実施形態において、ポリペプチドは、少なくとも2個の連続したグルタミン酸塩残基またはアスパラギン酸塩残基を含む。さらなる実施形態において、ポリペプチドは、少なくとも5個の、少なくとも10個の、少なくとも20個の、または少なくとも50個の連続したグルタミン酸塩残基またはアスパラギン酸塩残基を含む。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、5〜60個の連続したアスパラギン酸塩残基またはグルタミン酸塩残基を含む。
【0038】
本発明はまた、概説すれば、造影剤としての候補物質の有効性を決定する方法であって、(1)候補物質を得ること;(2)前記候補物質を、原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を配列中に含むポリペプチドと共役またはキレートさせること;(3)候補物質−ポリペプチド共役体を被験者に導入すること;および、(4)前記候補物質−ポリペプチド共役体からの信号を検出して、前記候補物質の造影剤としての有効性を決定すること、を含む方法に関する。当業者に公知の任意の方法が、候補物質を同定する目的で用いられうる。典型的な方法は、本明細書において以下で説明する。候補物質をポリペプチドと共役またはキレートさせる任意の方法が、本発明に含まれるものと解され、典型的な方法は、本明細書において以下で説明する。上述したように、候補物質−ポリペプチド共役体からの信号を検出する任意の方法が、本発明に含まれるものと解され、上記および本明細書の他の箇所で説明した信号を検出するための任意の方法が挙げられる。
【0039】
本明細書で用いられる場合、「a」または「an」は1以上を意味しうる。特許請求の範囲で用いられる場合、「含む」の語とともに用いられる際には、「a」または「an」の語は1または1より大きいことを意味しうる。本明細書で用いられる場合、「another」は少なくとも2つめのもの以上を意味しうる。
【0040】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。しかしながら、詳細な説明から当業者にとって本発明の思想および範囲内での種々の改変および修飾は明らかとなるであろうから、詳細な説明および具体的な実施例は、本発明の好ましい実施形態を表してはいるものの、例示のみの目的で提供されていると理解されるべきである。
【0041】
図面の簡単な説明
以下の図面は本明細書の一部を構成し、本発明の特定の形態をさらに示す目的で含まれる。これらの図面の1以上を、本明細書に記載の具体的な実施形態の詳細な説明と組み合わせて参照することで、本発明はよりよく理解されうる。
【0042】
図1.GAP−3−EDLの合成スキーム;
図2.GAP−EDLの1H−NMR;
図3.乳癌細胞における細胞取り込み(RBA CRL−1747、4μCi/500000細胞/ウェル);
図4.ヒト乳癌細胞における3時間での細胞取り込み(4μCi/200000/ウェル);
図5.ヒト卵巣癌細胞における3時間での細胞取り込み(4μCi/50000/ウェル);
図6.100000個のラット乳腺腫瘍細胞を、68Ga−GAP−EDLとともに30〜240分間インキュベートした。68Ga−GAPと比較して、68Ga−GAP−EDL群では高い取り込みを示した(*p<0.005、**p<0.0005);
図7.100000個のラット乳腺腫瘍細胞を、68Ga−GAP−EDL(0.1mg/ウェル)とともに、ラベル化されていないエストロンの存在下でインキュベートした。90分間インキュベート時に細胞を回収した。結果は、コントロール群を基準とした%取り込みを示す。コントロール群と比較して、*p<0.005。エストロン処理した細胞では取り込みが減少しており、この細胞取り込みはER媒介性プロセスであることが示唆される;
図8.乳癌腫瘍罹患ラットにおける99mTc−GAP−EDL計数密度比。99mTc−GAP−EDLのインビボ腫瘍(子宮)対組織の計数密度比;
図9A−9B.A.99mTc−GAP−EDLおよび99mTc−DTPA投与後の乳癌腫瘍罹患ラットの平面造影により、腫瘍は注射後0.5〜4時間で可視化されうることが示された。B.注射後55分での選択的造影;
図10.GAP−EDLの合成(17位);
図11A−11B.A.乳癌細胞における細胞取り込み(RBA CRL−1747、4μCi/ウェル)。B.300μCi/ラットを静注後の乳房腫瘍細胞系罹患ラットにおけるTc−99m−GAPおよびTc−99m−GAP−エストラジオール17の30、60、120および180分での平面シンチグラフィのカウントは500000であり、腫瘍対筋肉の可視化を比較した;
図12.GAP−COXiの合成スキーム;
図13.GAP−COXiのプロトンNMR;
図14.99mTc−GAP−COX−2(COX2阻害剤)の放射性映像。シスプラチン処理(4mg/kg、静注)の前後に、99mTc−GAP−COX−2(300μCi、静注)を用いて乳房腫瘍罹患ラットを造影した。99mTc−GAP−COX−2の選択的平面画像が、注射後0.5〜2時間で得られた;
図15.GAP−DOXの合成;
図16.99mTcGAP剤の細胞取り込み。乳癌細胞における細胞取り込み(RBA CRL−1747、4μCi/50000細胞/ウェル);
図17.GAP−DGの合成;
図18.GAP−GALの合成;
図19.乳癌細胞における細胞取り込み(RBA CRL−1747、4μCi/ウェル);
図20.乳房腫瘍罹患ラットにおける99mTc−GAP−DGACの取り込み(n=3、27.5μCi/ラット、静注);
図21.乳房腫瘍罹患ラットにおける99mTc−GAP−DGACの腫瘍対組織の計数密度比;
図22.乳房腫瘍罹患ラットにおける99mTc−GAP−DGACの腫瘍対血液および腫瘍対筋肉の計数密度比;
図23.ウサギにおける99mTc−GAP−DGACの造影。VX2−腫瘍罹患ウサギ(1mCi/ウサギ、静注)における99mTc−GAP−DGACの平面シンチグラフィにより、腫瘍が良好に可視化されうることが示された。腫瘍対非腫瘍比を示す。T=腫瘍;
図24.ウサギにおける99mTc−GAP−DGACXの造影。VX2−腫瘍罹患ウサギ(1mCi/ウサギ、静注)における99mTc−GAP−DGACの平面シンチグラフィにより、腫瘍が良好に可視化されうることが示された。腫瘍対非腫瘍比を示す。T=腫瘍;
図25.GAP−LASの合成スキーム;
図26.ヒト卵巣癌細胞における細胞取り込み(6μCi/60000/ウェル);
図27.乳癌細胞における細胞取り込み(RBA CRL−1747、3μCi/50000細胞/ウェル);
図28.ヒト卵巣癌細胞における2時間での細胞取り込み(3μCi/60000/ウェル);
図29.ヒトシスプラチン抵抗性卵巣癌細胞における細胞取り込み(2.4μCi/ウェル);
図30.乳房腫瘍罹患ラットにおける化合物の腫瘍/血液比(n=3/時間間隔、20μCi/ラット、静注);
図31.乳房腫瘍罹患ラットにおける腫瘍対筋肉比(n=3/時間間隔、20μCi/ラット、静注);
図32.GAP−FOLの合成;
図33.GAP−MNの合成;
図34.GAP−MTXの合成;
図35.腫瘍罹患ラットにおける99mTc−GAP−TMLの30、60、120、および180分での造影。300μCi/ラットを静注後の乳房腫瘍細胞系罹患ラットにおけるTc−99m−GAP−TLMの30、60、120分での平面シンチグラフィのカウントは500000であり、腫瘍対筋肉および心臓対筋肉の可視化を示した;
図36.乳腺腫瘍罹患ラットにおける、99mTc−GAP、99mTc−GAP−アデノシン、99mTc−GAP−EDL17、および99mTc−GAP−TML化合物の腫瘍対筋肉の計数密度比;
図37.GAP−ADNの合成。
【0043】
例示的な実施形態の説明
本発明者らは、担体および金属錯体へのキレート剤としてポリペプチドを含む特定の新規な造影剤および放射性治療剤を開発した。典型的なポリペプチドの担体としては、5〜60個のアミノ酸残基を含有するポリ(グルタミン酸塩)(GAP)またはポリ(アスパラギン酸塩)(AAP)が挙げられる。グルタミン酸塩(GAP)およびアスパラギン酸塩(AAP)は、グルタミン酸塩/アスパラギン酸塩受容体または葉酸受容体に結合する。本発明者らはまた、組織標的剤のような第2の部位が前記ポリペプチドに結合してもよいことも見出した。これらの造影剤は、[13N]グルタミン酸塩などの剤と比較してより効率的に、かつより安価に製造され、[13N]ほど速やかに身体から排泄されないことから、被験者の身体における所望の部位への当該剤の標的能力は延長され、造影の質が改善される。
【0044】
A.ポリペプチドおよびアミノ酸
特定の実施形態において、本発明は、(a)原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を配列中に含むポリペプチド;および(b)2つの連続した前記アミノ酸の少なくとも1つに非共有結合的に結合した1以上の原子価金属イオンを含む新規な組成物に関する。さらなる実施形態において、本発明は、(a)組織標的アミノ酸配列、診断用アミノ酸配列、および/または治療用アミノ酸配列を配列中に含むポリペプチド;並びに、(b)前記ポリペプチドに結合した1以上の原子価金属イオンに関する。
【0045】
本明細書で用いられる場合、「ポリペプチド」とは、連続した一連の2以上のアミノ酸を意味する。当該アミノ酸は、L型、D型、またはL型とD型とのラセミ混合物のいずれであってもよい。いくつかの実施形態において、例えば、本発明のポリペプチドは、連続した一連の少なくとも2個のアミノ酸を含む。さらなる実施形態において、ポリペプチドは連続した一連の少なくとも5個のアミノ酸を含む。さらなる実施形態において、ポリペプチドは連続した一連の少なくとも10個のアミノ酸を含む。さらなる実施形態において、ポリペプチドは、連続した一連の少なくとも20個のアミノ酸を含む。いくつかの特定の実施形態において、ポリペプチドは、連続した一連の2〜200個のアミノ酸を含む。より特定の実施形態において、ポリペプチドは、連続した一連の5〜60個のアミノ酸を含む。
【0046】
上述したように、本発明の特定の実施形態は、原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を配列中に含むポリペプチドを含む。典型的な原子価金属イオンとしては、Ga(+3)、Re(+5)、Tc−99m(+5)、およびGd(+3)が挙げられる。天然由来か否かにかかわらず、原子価金属イオンに結合しうる任意のアミノ酸が、本発明のポリペプチドに含まれるものと解される。原子価金属イオンに結合しうる典型的なアミノ酸としては、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩類似体、グルタミン酸塩類似体、システイン、リジン、アルギニン、グルタミン、アスパラギン、グリシン、オルニチン、および2以上のカルボキシル基を含む任意の合成のまたは天然由来でないアミノ酸が挙げられる。例えば、本発明のいくつかの実施形態において、ポリペプチドは、原子価金属イオンと結合しうる2〜約1000以上の連続したアミノ酸を含みうる。
【0047】
本明細書で用いられる場合、「グルタミン酸塩」との語は、グルタミン酸塩のみならず、グルタミン酸をも意味する。この定義には、グルタミン酸の塩(例えば、マグネシウム塩、カルシウム塩、カリウム塩、亜鉛塩、およびこれらの組み合わせなど)も含まれる。グルタミン酸塩残基は、D型またはL型のいずれであってもよい。
【0048】
本明細書で用いられる場合、「グルタミン酸塩の類似体」には、任意の位置で放射性ラベル化されたグルタミン酸塩残基が含まれる。例えば、アスパラギン酸塩は、陽電子放出核種(例えば、C−11、N−13、F−18)またはガンマ線放出核種(例えば、I−123、I−131)で放射性ラベル化されうる。放射性ラベル化されたグルタミン酸塩残基は、サイクロトロンを用いるといった当業者に公知の任意の方法により製造されうる(例えば、参照により本明細書に詳細に引用される、Reiman et al., 1982, pertaining to N−13−labeled L−glutamateを参照)。「グルタミン酸塩の類似体」の定義にはまた、水素原子がハロゲン原子により置換されたグルタミン酸塩分子(例えば、フッ素化グルタミン酸塩分子)も含まれる(例えば、参照により本明細書に詳細に引用される、PETを用いた腫瘍造影用のフッ素化アミノ酸に関する、Laverman et al., 2002を参照)。
【0049】
本明細書で用いられる場合、「アスパラギン酸塩」との語は、アスパラギン酸塩のみならず、アスパラギン酸をも意味する。アスパラギン酸塩残基は、D型またはL型のいずれであってもよい。この定義には、アスパラギン酸の塩(例えば、マグネシウム塩、カルシウム塩、カリウム塩、亜鉛塩、およびこれらの組み合わせなど)も含まれる。
【0050】
本明細書で用いられる場合、「アスパラギン酸塩の類似体」には、任意の位置で放射性ラベル化されたアスパラギン酸塩残基が含まれる。例えば、アスパラギン酸塩は、陽電子放出核種(例えば、C−11、N−13、F−18)またはガンマ線放出核種(例えば、I−123、I−131)で放射性ラベル化されうる。放射性ラベル化されたアスパラギン酸塩残基は、サイクロトロンを用いるといった当業者に公知の任意の方法により製造されうる。「アスパラギン酸塩の類似体」の定義にはまた、水素原子がハロゲン原子により置換されたアスパラギン酸塩分子(例えば、フッ素化アスパラギン酸塩分子)も含まれる(例えば、参照により本明細書に詳細に引用される、Laverman et al., 2002を参照)。
【0051】
ここで、2以上のカルボキシル基を含む天然由来でないアミノ酸は、以下の化学構造を有するアミノ酸として定義される:
【0052】
【化1】
【0053】
式中、Rは、1以上のカルボキシル基を含む任意の部位である。例えば、Rは、当該基が1以上のカルボキシル置換基を含む限り、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、アルキルアリール基、炭素環式アリール基、ヘテロ環式アリール基、アミド基、チオアミド基、エステル基、アミン基、チオエーテル基、スルホニル基、または当業者に公知の他の任意の基でありうる。1以上のカルボキシル基に加えて、R基は、1以上のヒドロキシル基、シアノ基、アルコキシ基、ハロゲン、=O、=S、NO2基、N(CH3)2基、アミノ基、またはSH基などの追加の置換基を含んでもよい。
【0054】
「アルキル」基とは、飽和脂肪族炭化水素を意味し、直鎖状アルキル基、分枝鎖状アルキル基、および環状アルキル基が挙げられる。好ましくは、当該アルキル基は1〜12個の炭素原子を有する。
【0055】
「アルケニル」基とは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有する不飽和炭化水素基を意味し、直鎖状の基、分枝鎖状の基、および環状の基が挙げられる。好ましくは、当該アルケニル基は1〜12個の炭素原子を有する。
【0056】
「アルキニル」基とは、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含有する不飽和炭化水素基を意味し、直鎖状の基、分枝鎖状の基、および環状の基が挙げられる。好ましくは、当該アルケニル基は1〜12個の炭素原子を有する。より好ましくは、当該アルキニル基は、1〜7個の炭素、より好ましくは1〜4個の炭素を有する低級アルキニル基である。
【0057】
「アルコキシ」基とは、「−O−アルキル」基を意味し、ここで「アルキル」は上記で定義した通りである。
【0058】
「アリール」基とは、共役パイ電子系を有する少なくとも1つの環を有する芳香族基を意味し、炭素環式アリール基、ヘテロ環式アリール基、およびビアリール基が挙げられ、これらの全ては置換されていてもよい。好ましくは、当該アリールは、置換されたまたは非置換のフェニルまたはピリジルである。好ましいアリール置換基は、ハロゲン、トリハロメチル基、ヒドロキシル基、SH基、OH基、NO2基、アミン基、エステル基(例えば、COOH)、チオエーテル基、シアノ基、アルコキシ基、アルキル基、およびアミノ基である。
【0059】
「アルキルアリール」基とは、アリール基(上述した通り)に共有結合したアルキル(上述した通り)を意味する。好ましくは、当該アルキルは低級アルキルである。
【0060】
「炭素環式アリール」基とは、芳香族環上の環原子が全て炭素原子である基である。当該炭素原子は、上記アリール基について上述した好ましい基で置換されていてもよい。
【0061】
「ヘテロ環式アリール」基とは、芳香族環上の環原子として1〜3個のヘテロ原子を有し、環原子の残りが炭素原子である基である。適当なヘテロ原子としては、酸素、硫黄、および窒素が挙げられ、全て置換されていてもよいフラニル基、チエニル基、ピリジル基、N−低級アルキルピロロ基、ピリミジル基、ピラジニル基、イミダゾイル基などが挙げられる。
【0062】
「アミド」とは、−C(O)−NH−R1(この際、R1は、アルキル、アリール、アルキルアリール、または水素のいずれかである)を意味する。
【0063】
「チオアミド」とは、−C(S)−NH−R1(この際、R1は、アルキル、アリール、アルキルアリール、または水素のいずれかである)を意味する。
【0064】
「エステル」とは、−C(O)−OR’(この際、R’は、アルキル、アリール、アルキルアリール、または水素のいずれかである)を意味する。
【0065】
「アミン」とは、−N(R”)R”’(この際、R”およびR”’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アリール、またはアルキルアリールであり、ただし、R”およびR”’が双方とも水素となることはない)を意味する。
【0066】
「チオエーテル」とは、−S−R2(R2は、アルキル、アリール、またはアルキルアリールのいずれかである)を意味する。
【0067】
「スルホニル」とは、−S(O)2−R3(この際、R3は、アリール、C(CN)=C−アリール、CH2−CN、アルキルアリール、NH−アルキル、NH−アルキルアリール、またはNH−アリールである)を意味する。
【0068】
さらに、本発明の組成物のポリペプチドは、原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有するアミノ酸以外のアミノ酸を任意の数含みうる。これらの追加のアミノ酸は、原子価金属イオンに結合する機能を有する2以上のアミノ酸の配列のC末端またはN末端のいずれに存在してもよい。あるいは、当該追加のアミノ酸は、原子価金属イオンに結合する機能を有する連続したアミノ酸の配列中に介在してもよい。さらに、いくつかの実施形態において、ポリペプチドは分岐していてもよい。よって、本発明の組成物のポリペプチドは、原子価金属イオンに結合する機能を有する少なくとも2個の連続したアミノ酸を含む限り、合計で2〜約1000以上の合計アミノ酸残基を含みうる。
【0069】
特定の実施形態において、ポリペプチドのアミノ酸残基は連続しており、アミノ分子残基の配列を妨害する非アミノ分子を含まない。他の実施形態において、ポリペプチドは1以上の非アミノ分子部位を含みうる。
【0070】
本明細書で用いられる場合、「アミノ酸」とは、当業者に公知であろう任意のアミノ酸、アミノ酸誘導体、またはアミノ酸模倣体を意味する。当該アミノ酸は、L型またはD型のいずれであってもよい。従って、「アミノ酸」との語は、天然で合成されるタンパク質中の20の一般的なアミノ酸の少なくとも1つ、上述したアスパラギン酸塩またはグルタミン酸塩の任意の類似体、上述した2以上のカルボキシル基を含む天然由来でない任意のアミノ酸、または、これに限定されないが下記の表1に示されるもののような他の任意の修飾アミノ酸もしくは通常でないアミノ酸を含むアミノ分子配列を包含する。
【0071】
【表1】
【0072】
特定の実施形態において、本発明のポリペプチド含有組成物は、生体適合性のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを含む。本明細書で用いられる場合、「生体適合性」との語は、本明細書に記載の方法および用量に従って所定の被験者に適用または投与された際に有意な不都合な効果を生じない物質を意味する。被験者としては、これらに限定されないが、実験動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ)およびヒトなどの哺乳動物が挙げられる。かような不都合なまたは望ましくない効果は、有意な毒性または免疫学的副作用といったものである。特定の実施形態において、ポリペプチド含有組成物は、毒素、病原体および有毒な免疫原を本質的に含まない合成ポリペプチドであってもよい。
【0073】
本発明の組成物に含まれるポリペプチドは、標準的な分子生物学的技術、天然源からの単離、または化学合成といった当業者に公知の任意の技術により製造されうる。
【0074】
特定の実施形態において、ポリペプチドは精製されうる。一般的に、「精製された」とは、種々の他のアミノ酸配列を除去するための分画に供された特定のポリペプチド組成物を意味し、当業者には公知であろうが、当該組成物は、例えばタンパク質アッセイにより評価されうるその活性を実質的に保持している。
【0075】
B.原子価金属イオン
上述したように、本発明の特定の実施形態は、原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を配列中に含むポリペプチドを含む組成物に関する。本明細書において「原子価金属イオン」は、他の原子または分子と非共有結合などの結合を形成しうる金属イオンを意味するものとして定義される。他の原子または分子は、負に荷電していてもよい。当業者に公知の任意の原子価金属イオンが、本発明の組成物に含まれるものと解される。当業者であれば、原子価金属イオンおよびその用途に精通しているであろう。本発明の組成物の特定の実施形態において、原子価金属イオンは放射性核種である。本発明の組成物において用いられる原子価金属イオンの例としては、Tc−99m、Cu−60、Cu−61、Cu−62、Cu−67、In−111、Tl−201、Ga−67、Ga−68、As−72、Re−186、Re−188、Ho−166、Y−90、Sm−153、Sr−89、Gd−157、Bi−212、Bi−213が挙げられる。
【0076】
より優れた造影特性および低価格によって、可能な場合には123I、131I、67Gaおよび111Inでラベル化された化合物を、対応する99mTcラベル化合物で置き換える試みがなされている。好ましい物理的特性および極めて低い価格(0.21ドル/mCi)によって、99mTcは放射性医薬品をラベル化するのに好ましいものとなっている。
【0077】
ヒトにおける最適な放射性造影には多くの因子を考慮しなければならない。検出の効率を最大化するには、100〜200keVの範囲のガンマエネルギーを放出する原子価金属イオンが好ましい。「ガンマ放出体」は、本明細書では任意の範囲のガンマエネルギーを放出する剤として定義される。当業者であれば、ガンマ放出体である種々の原子価金属イオンに精通しているであろう。患者への吸収放射線量を最小化するには、放射性核種の物理的半減期は、造影作業が許す限り短くすべきである。任意の日に、そしてその日の任意の時刻に検査が行われるようにするには、放射性核種の源を常に治療施設で入手可能としておくことが有利である。99mTcは、140keVのガンマ放射線を放出し、6時間の物理的半減期を有し、モリブデン−99/テクネチウム−99m生成器を用いて施設内で用意に入手可能であることから、好ましい放射性核種である。当業者であれば、ヒトにおける最適な放射性造影を決定する方法に精通しているであろう。
【0078】
本発明のポリペプチドは、ポリペプチドにキレートされた1以上の原子価金属イオンを含みうる。特定の実施形態において、このキレート化は、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩類似体、またはアスパラギン酸塩類似体のカルボキシル部位へのものである。いくつかの実施形態において、原子価金属イオンのキレート化は、第2の部位のカルボキシル基へのような、第2の部位へのものである。ある実施形態では、原子価金属イオンのキレート化は、ポリペプチドのグルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩類似体、またはアスパラギン酸塩類似体のカルボキシル基へのもの、および、第2の部位の1以上のカルボキシル基へのものである。さらなる実施形態において、原子価金属イオンは、ポリペプチドの3以上のグルタミン酸塩のカルボキシル部位にキレートされる。他の実施形態において、原子価金属イオンは、ポリペプチドの3以上のアスパラギン酸塩部位にキレートされる。これらの実施形態は、ポリ(グルタミン酸塩)またはポリ(アスパラギン酸塩)ポリペプチドにキレートされた複数の原子価金属イオンを含みうる。
【0079】
本発明の特定の実施形態において、原子価金属イオンは治療用原子価金属イオンである。例えば、いくつかの実施形態において、原子価金属イオンはβ放出体である治療用放射性核種である。本明細書で定義されるように、β放出体は任意の範囲のβエネルギーを放出する任意の剤である。β放出体の例としては、Re−188、Re−186、Ho−166、Y−90、Bi−212、Bi−213、およびSn−153が挙げられる。当該β放出体は、ガンマ放出体でもあってもよいし、なくてもよい。当業者であれば、癌のような 過剰増殖疾患の治療におけるβ放出体の使用に精通しているであろう。
【0080】
本発明の組成物のさらなる実施形態において、原子価金属イオンはβ放出体またはガンマ放出体以外の治療用原子価金属イオンである。例えば、治療用金属イオンは、白金、コバルト、銅、ヒ素、セレン、またはタリウムであってもよい。これらの治療用金属イオンを含む組成物は、癌治療のような過剰増殖疾患の治療を指向した方法において適用されうる。本発明の組成物を用いた多重化学療法および放射線療法を行う方法については、以下でより詳細に説明する。
【0081】
C.治療用部位
本発明の組成物の特定の実施形態においては、第2の部位がポリペプチドに結合している。本明細書において、「部位」とは、分子の一部として定義される。特定の実施形態において、第2の部位は治療用部位である。本明細書において、「治療用部位」とは、任意の治療剤を意味する。本明細書において、「治療剤」とは、疾患もしくは障害を治療し、疾患もしくは障害を予防し、または正常な生理的プロセスの変化もしくは崩壊を治療もしくは予防する目的で、被験者に投与され、または細胞もしくは組織と接触しうる任意の化合物または物質または薬剤を包含するものとして定義される。例えば、治療用部位は、化学療法剤のような抗癌部位でありうる。本発明の特定の実施形態において、治療用部位は、治療用アミノ酸配列に融合または化学的に共役した治療用アミノ酸配列である。かような化学共役体および融合タンパク質については、本明細書の他の欄においてさらに説明する。
【0082】
抗癌部位の例としては、当業者に公知の任意の化学療法剤が挙げられる。かような化学療法剤の例としては、これらに限定されないが、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イフォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソウレア、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合剤、タキソール、ゲムシタビン、ナベルビン、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランスプラチナ(transplatinum)、5−フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびメトトレキサート、またはこれらの任意の類似体もしくは誘導体が挙げられる。特定の実施形態においては、抗癌部位はメトトレキサートである。
【0083】
抗癌剤の追加の例としては、表2に列挙した癌の化学療法用の選択薬が挙げられる。
【0084】
表2
癌の化学療法用の選択薬
以下の表には、アメリカ合衆国およびカナダで癌の治療に用いられている薬剤、並びにその主要な副作用が列挙されている。メディカルレター(Medical Letter)のコンサルタントの意見に基づく選択薬のリストである。米国食品医薬品局により承認されていない適応症について列挙されている薬剤もある。抗癌剤およびそれらの副作用が続く。本発明の目的では、これらのリストは例示的なものであり、完全なものではない。
【0085】
【表2−1】
【0086】
【表2−2】
【0087】
【表2−3】
【0088】
【表2−4】
【0089】
【表2−5】
【0090】
【表2−6】
【0091】
【表2−7】
【0092】
D.診断用部位
本発明の組成物の特定の実施形態においては、診断用部位がポリペプチドに結合している。本明細書で定義される場合、「診断用部位」とは、疾患もしくは障害もしくは細胞の異常な生理機能に関連した症状の診断を促進する目的で、被験者に投与され、または組織と接触しうる化学物質または化合物である分子の一部である。当業者に公知の任意の診断剤が診断用部位として解釈される。特定の実施形態において、診断用部位は、原子価金属イオンに結合しうるポリペプチドに化学的に共役または融合した診断用アミノ酸配列である。
【0093】
診断用部位の一例は、造影部位であろう。本明細書で定義される場合、「造影部位」とは、画像診断技術を用いた被験者、組織または細胞の特定の性質や状態の可視化を促進する目的で、被験者に投与され、組織と接触し、または細胞にアプライされうる剤または化合物である分子の一部である。画像診断技術については、以下でより詳細に説明する。当業者に公知の任意の造影剤が本発明の造影部位として解釈される。よって例えば、本発明の組成物の特定の実施形態において、組成物は多様式の造影技術に適用されうる。二重造影および多様式造影については、本明細書において以下でより詳細に説明する。
【0094】
特定の実施形態において、造影部位は造影剤である。その例としては、CT造影剤、MRI造影剤、光学造影剤、超音波造影剤、または当業者に公知の他の任意の形態の画像診断技術に用いられる他の任意の造影剤が挙げられる。その例としては、ジアトリゾエート(CT造影剤)、ガドリニウムキレート(MRI造影剤)、およびフルオレセインナトリウム(光学造影剤)が挙げられる。造影剤のその他の例については、本明細書において以下でより詳細に説明する。当業者であれば、本発明のポリペプチドにおける造影部位として用いられうる広範なタイプの造影剤に精通しているであろう。
【0095】
E.組織標的部位
本発明の組成物のいくつかの実施形態においては、第2の部位がポリペプチドに結合しており、そして当該第2の部位が組織標的部位である。本明細書において、「組織標的部位」は、組織に結合または付着しうる分子の一部を意味するものとして定義される。この結合は当業者に公知の任意の結合機構によるものでありうる。例としては、代謝拮抗物質、アポトーシス剤、生体還元剤、シグナル伝達性治療剤、受容体反応性剤、または細胞周期に特異的な剤が挙げられる。組織は任意のタイプの組織(例えば、細胞)でありうる。例えば、細胞は、被験者の細胞(例えば、癌細胞)でありうる。特定の実施形態において、組織標的部位は、原子価金属イオンに結合しうるポリペプチドに化学的に共役または融合した組織標的アミノ酸配列である。
【0096】
いくつかの実施形態において、組織標的部位は「標的リガンド」である。本明細書において、「標的リガンド」は、他の分子に特異的に結合する分子または分子の一部として定義される。当業者であれば、本発明との関係で標的リガンドとして用いられうる多くの剤に精通しているであろう。
【0097】
標的リガンドの例としては、疾患細胞周期標的化合物、腫瘍血管新生標的リガンド、腫瘍アポトーシス標的リガンド、疾患受容体標的リガンド、薬剤ベースのリガンド、抗微生物剤、腫瘍低酸素症標的リガンド、グルコース模倣体、アミフォスチン、アンギオスタチン、EGF受容体リガンド、カペシタビン、COX−2阻害剤、デオキシシチジン、フラーレン、ハーセプチン、ヒト血清アルブミン、ラクトース、黄体形成ホルモン、ピリドキサール、キナゾリン、サリドマイド、トランスフェリン、およびトリメチルリジンが挙げられる。
【0098】
本発明のさらなる実施形態において、組織標的部位は抗体である。任意の抗体が、本発明との関係で組織標的部位として解釈される。例えば、抗体はモノクローナル抗体でありうる。当業者であれば、モノクローナル抗体、モノクローナル抗体の調製方法、およびモノクローナル抗体をリガンドとして使用する方法に精通しているであろう。本発明の特定の実施形態において、モノクローナル抗体は腫瘍マーカーに対する抗体である。いくつかの実施形態において、モノクローナル抗体はモノクローナル抗体C225、モノクローナル抗体CD31、またはモノクローナル抗体CD40である。
【0099】
単一の組織標的部位、または2以上のかような組織標的部位が、本発明のポリペプチドに結合しうる。これらの実施形態においては、任意の数の組織標的部位が、本明細書に記載のポリペプチドに結合しうる。よって、本発明のポリペプチドには1以上の組織標的部位が結合しうる。組織標的部位は任意の様式でポリペプチドに結合しうる。例えば、組織標的部位は、アミド結合またはエステル結合によりポリペプチドに結合してもよい。当業者であれば、これらの剤の化学や、これらの剤を本発明のポリペプチドの一部として導入する方法に精通しているであろう。本発明の化合物の合成方法については、以下で詳細に説明する。
【0100】
組織標的部位、および化合物との共役に関する情報は、それぞれが全体として参照により本明細書の本欄および他の全ての欄に引用される、米国特許第6,692,724号、米国特許出願第09/599,152号、米国特許出願第10/627,763号、米国特許出願第10/672,142号、米国特許出願第10/703,405号、米国特許出願第10/732,919号により提供されている。
【0101】
組織標的部位の代表的な例を以下に説明する。
【0102】
1.疾患細胞周期標的化合物
疾患細胞周期標的とは、増殖している細胞においてアップレギュレートされている剤の標的化を意味する。「疾患細胞周期標的化合物」は、増殖している細胞においてアップレギュレートまたはダウンレギュレートされている剤の測定に用いられる化合物である。例えば、細胞は癌細胞でありうる。この目的に用いられる化合物は、細胞における種々のパラメータ(例えば、腫瘍細胞のDNA量)を測定するのに用いられうる。
【0103】
これらの剤の多くはヌクレオシド類似体である。例えば、ピリミジンヌクレオシド(例えば、2’−フルオロ−2’−デオキシ−5−ヨード−1−β−D−アラビノフラノシルウラシル[FIAU]、2’−フルオロ−2’−デオキシ−5−ヨード−1−β−D−リボフラノシルウラシル[FIRU]、2’−フルオロ−2’−5−メチル−1−β−D−アラビノフラノシルウラシル[FMAU]、2’−フルオロ−2’−デオキシ−5−ヨードビニル−1−β−D−リボフラノシルウラシル[IVFRU])、並びにアシクログアノシン:9−[(2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)エトキシ)メチル]グアニン(GCV)および9−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)ブチル]グアニン(PCV)(Tjuvajev et al., 2002; Gambhir et al., 1998; Gambhir et al., 1999)および、8−フルオロ−9−[(2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)エトキシ)メチル]グアニン(FGCV)(Gambhir et al., 1999; Namavari et al., 2000)、8−フルオロ−9−[4−ヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)ブチル]グアニン(FPCV)(Gambhir et al., 2000; Iyer et al., 2001)、9−[3−フルオロ−1−ヒドロキシ−2−プロポキシメチル]グアニン(FHPG)(Alauddin et al., 1996; Alauddin et al., 1999)、および9−[4−フルオロ−3−(ヒドロキシメチル)ブチル]グアニン(FHBG)(Alauddin and Conti, 1998; Yaghoubi et al., 2001)のような他の18Fラベルアシクログアノシン類似体が、野生型および変異体(Gambhir et al., 2001)におけるHSV1−tk発現を造影するためのレポーター物質として開発されている。本発明の組成物の特定の実施形態は、疾患細胞周期標的リガンドとしてアデノシンおよびペンシクロビル(グアニン)を含む。当業者であれば、疾患細胞周期標的化に用いられるこれらの剤およびその他の剤に精通しているであろう。
【0104】
2.血管新生標的リガンド
「血管新生標的リガンド」とは、新血管形成(例えば、腫瘍細胞の新血管形成)に結合しうる剤を意味する。この目的に用いられる剤は、種々の腫瘍測定(例えば、腫瘍の血管床のサイズの測定や、腫瘍容積の測定)を行うためのものとして当業者に公知である。これらの剤のなかには血管壁に結合するものもある。当業者であれば、この目的で当該用途に利用可能な剤に精通しているであろう。
【0105】
本願を通して、「腫瘍血管新生の標的化」とは、腫瘍の新血管形成および腫瘍細胞に結合する剤を用いることを意味する。この目的に用いられる剤は、種々の腫瘍測定(例えば、腫瘍の血管床のサイズの測定や、腫瘍容積の測定)を行うためのものとして当業者に公知である。これらの剤のなかには血管壁に結合するものもある。当業者であれば、この目的で当該用途に利用可能な剤に精通しているであろう。腫瘍血管新生標的リガンドは、上述した腫瘍血管新生の標的化の目的で用いられるリガンドである。その例としては、COX−2阻害剤、抗EGF受容体リガンド、ハーセプチン、アンギオテンシン、C225、およびサリドマイドが挙げられる。COX−2阻害剤としては、例えば、セレコキシブ、ロフェコキシブ、エトリコキシブ、およびこれらの剤の類似体が挙げられる。
【0106】
3.腫瘍アポトーシス標的リガンド
「腫瘍アポトーシスの標的化」とは、アポトーシスを受けている細胞、またはアポトーシスを受けるリスクのある細胞に結合する剤を用いることを意味する。これらの剤は、一般的には、細胞群(例えば、腫瘍)におけるアポトーシスまたはプログラム細胞死の程度またはリスクの指標を提供する目的で用いられる。当業者であれば、この目的で用いられる剤に精通しているであろう。「腫瘍アポトーシス標的リガンド」は、本段落で定義した「腫瘍アポトーシスの標的化」ができるリガンドである。本発明の標的リガンドは、TRAIL(TNF関連アポトーシス誘導リガンド)モノクローナル抗体を含みうる。TRAILは、多様な形質転換細胞系において速やかにアポトーシスを誘導する腫瘍壊死因子リガンドファミリーの1つである。本発明の標的リガンドはまた、カスパーゼ−3の基質(例えば、4つのアミノ酸配列:アスパラギン酸−グルタミン酸−バリン−アスパラギン酸を含むペプチドまたはポリペプチド)、カスパーゼ−3の基質(例えば、アミノ酸配列:アスパラギン酸−グルタミン酸−バリン−アスパラギン酸を含むペプチドまたはポリペプチド)、およびBclファミリーの任意のメンバーをも含みうる。Bclファミリーのメンバーの例としては、例えば、Bax、Bcl−xL、Bid、Bad、Bak、およびBcl−2が挙げられる。当業者であれば、Bclファミリーおよびそれらの対応する基質に精通しているであろう。
【0107】
腫瘍細胞の細胞保護機能を抑制し、アポトーシス感受性を回復させるとの考えに基づき、アポトーシス抑制剤は薬剤開発の標的とされている。
【0108】
4.疾患受容体標的リガンド
「疾患受容体の標的化」においては、疾患状態(例えば、癌)において過剰に発現している特定の細胞受容体に結合する能力を有することから特定の剤が用いられる。標的化されるかような受容体の例としては、エストロゲン受容体、アンドロゲン受容体、下垂体受容体、トランスフェリン受容体、およびプロゲステロン受容体が挙げられる。疾患受容体標的化に適用されうる剤の例としては、アンドロゲン、エストロゲン、ソマトスタチン、プロゲステロン、トランスフェリン、黄体形成ホルモン、および黄体形成ホルモン抗体が挙げられる。
【0109】
ペンテトレオチド、オクトレオチド、トランスフェリン、および下垂体ペプチドのような放射性ラベルされたリガンドは、細胞受容体(特定の細胞で過剰発現しているものもある)に結合する。これらのリガンドは免疫原性がなく、血清から速やかに排泄されるため、抗体造影と比較して受容体の造影がより確実になると思われる。
【0110】
本明細書においては、葉酸受容体が疾患受容体の他の例として挙げられる。葉酸受容体(FR)は、多くのタイプの新生細胞(例えば、肺、乳房、卵巣、頸部、結腸直腸、鼻咽頭、腎臓腺癌、悪性黒色腫、および上衣腫)で過剰に発現しているが、もともとはいくつかの正常分化組織(例えば、脈絡叢、胎盤、甲状腺、および腎臓)のみで発現している(Weitman et al., 1992a; Campbell et al., 1991; Weitman et al., 1992b; Holm et al., 1994; Ross et al., 1994; Franklin et al., 1994; Weitman et al., 1994)。FRは、葉酸受容体を過剰に発現している腫瘍細胞中に、葉酸共役タンパク質毒素、薬剤/アンチセンスオリゴヌクレオチド、およびリポソームを送達するのに用いられている(Ginobbi et al., 1997; Leamon and Low, 1991; Leamon and Low, 1992; Leamon et al., 1993; Lee and Low, 1994)。さらに、抗T細胞受容体抗体に連結された抗FR抗体を含有する二重特異性抗体が、T細胞をFR陽性腫瘍細胞に標的化するために用いられており、現在卵巣腫瘍に対して臨床試験中である(Canevari et al., 1993; Bolhuis et al., 1992; Patrick et al., 1997; Coney et al., 1994; Kranz et al., 1995)。
【0111】
葉酸受容体標的リガンドの例としては、葉酸および葉酸類似体が挙げられる。好ましい葉酸受容体標的リガンドとしては、葉酸塩、メトトレキサート、およびトムデックスが挙げられる。葉酸および、メトトレキサートのような葉酸拮抗物質は、古典的な還元葉酸輸送系に加えて、高親和性葉酸受容体(グリコシルホスファチジルイノシトールに連結された葉酸結合膜タンパク質)を介して細胞中に入る(Westerhof et al., 1991; Orr et al., 1995; Hsueh and Dolnick, 1993)。
【0112】
5.薬剤の評価
特定の薬剤ベースのリガンドは、薬剤に対する被験者の薬理学的応答を測定するのに適用されうる。薬剤の投与に対する被験者の応答を測定する際には、広範なパラメータが測定されうる。当業者であれば、測定されうる応答のタイプに精通しているであろう。これらの応答は、評価される特定の薬剤、被験者において治療される特定の疾患または症状、および被験者の特性などの種々の因子に一部依存する。薬剤ベースのリガンドの例としては、カルニチンおよびプロマイシンが挙げられる。
【0113】
6.抗微生物剤
任意の抗微生物剤が、標的リガンドとして含まれるものと解される。好ましい抗微生物剤としては、グラム陽性および陰性細菌に対するアンピシリン、アモキシシリン、ペニシリン、セファロスポリン、クリダマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ナタマイシン、ナフシリン、リファンピン、テトラサイクリン、バンコマイシン、ブレオマイシン、およびドキシサイクリン、並びに真菌に対するアムホテリシンB、アマンタジン、ナイスタチン、ケトコナゾール、ポリミキシン、アシクロビル、およびガンシクロビルなどが挙げられる。当業者であれば、抗微生物剤と考えられる種々の剤に精通しているであろう。
【0114】
7.グルコース模倣体
グルコースを模倣した剤もまた、標的リガンドとして含まれるものと解される。好ましいグルコースや糖の模倣体としては、ネオマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、パロマイシン、アミカシン、トブラマイシン、ネチルマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、マイクロマイシン、リビドマイシン、ジベカシン、イセパマイシン、アストロマイシン、アミノグリコシド類、グルコースまたはグルコサミンが挙げられる。
【0115】
8.腫瘍低酸素症標的リガンド
本発明のいくつかの実施形態において、標的リガンドは腫瘍低酸素症標的リガンドである。腫瘍細胞は、酸素の存在下では非存在下よりも従来の放射線に敏感であり、腫瘍内に少数の低酸素細胞が存在すると放射線に対する応答が制限されうる(Hall, 1988; Bush et al., 1978; Gray et al., 1958)。低酸素による放射線抵抗性は動物の多くの腫瘍において示されているが、ヒトではごく少数の腫瘍タイプにおいてのみである(Dische, 1991; Gatenby et al., 1988; Nordsmark et al., 1996)。多くの場合、ヒトの腫瘍における低酸素症発生の発生は、組織学的知見や動物の腫瘍での研究から推論されたものである。低酸素症をインビボで立証するには酸素電極を用いた組織の測定が必要であり、これらの技術は侵襲的であることから、医療用途は制限されている。
【0116】
腫瘍低酸素症標的リガンドの一例であるミソニダゾールは、低酸素細胞の増感剤であり、MISOを異なるラジオアイソトープ(例えば、18F、123I、99mTc)でラベル化すると、PETまたは平面シンチグラフィによって、低酸素だが代謝は活性な腫瘍を酸素が豊富な活性腫瘍と区別するのに有用であろう。[18F]フルオロミソニダゾール(FMISO)は、腫瘍低酸素症を評価するためにPETで用いられている。近年の研究によれば、PETでは[18F]FMISOを通じて細胞の酸素含量をモニターできることから、放射線に対する腫瘍の応答を予測するのに高い潜在性を秘めていることが示されている(Koh et al., 1992; Valk et al., 1992; Martin et al., 1989; Rasey et al., 1989; Rasey et al., 1990; Yang et al., 1995)。PETによれば、視準をしなくとも高解像度が得られるが、臨床条件ではPETアイソトープの使用コストにより制限を受ける。
【0117】
F.合成方法
1.本発明の組成物用の試薬の源
本発明の組成物を調製するための試薬は、任意の源から入手されうる。広範な源が問う業者に公知である。試薬は例えば、商業源から、化学合成から、または天然資源から入手されうる。試薬は当業者に公知の技術を用いて単離および精製されうる。例えば、特定の分子量のポリヌクレオチドは、特定の透析膜を用いて単離されうる。本発明の組成物において用いられる原子価金属イオンの例としては、生成器(例えば、Tc−99m、Cu−62、Cu−67、Ga−68、Re−188、Bi−212)、サイクロトロン(例えば、Cu−60、Cu−61、As−72、Re−186)、および商業源(例えば、In−111、Tl−201、Ga−67、Y−90、Sm−153、Sr−89、Gd−157、Ho−166)から得られる原子価金属イオンが挙げられる。未結合の遊離金属イオンは、イオン交換樹脂を用いて、またはトランスキレート剤(例えば、グルコヘプトン酸塩、グルコン酸塩、グルカ酸塩、アセチルアセトナート)を添加することにより精製されうる。当業者であれば、イオン交換樹脂やトランスキレート剤の使用などの精製方法に精通しているであろう。
【0118】
2.ポリペプチドへの原子価金属イオンの配位
ガドリニウム、ガリウム、レニウム、テクネチウムまたは白金のような原子価金属イオンは、キレート剤がなくともポリペプチドにキレートされる。この反応は、水性媒体中または非水性媒体中で行われうる。最も好ましくは、この共役は水性媒体中で行われる。
【0119】
いくつかの実施形態において、原子価金属イオンは、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩類似体、アスパラギン酸塩類似体、および2以上のカルボキシル基を含む天然由来でないアミノ酸からなる群から選択される2以上の連続したアミノ酸の酸基の1つにキレートされる。特定の実施形態において、原子価金属イオンは、一連の連続したグルタミン酸残基またはアスパラギン酸塩残基の4個または5個のカルボキシル基にキレートされる。
【0120】
本発明では、原子価金属イオンをポリペプチドに配位させる当業者に公知の任意の方法が適用されうる。例えば、本発明のいくつかの実施形態においては、ポリペプチドを水に溶解させ、次いで塩化スズ(II)溶液を添加する。そして原子価金属イオン(例えば、Na99mTcO4、またはNa186/188ReO4)が添加されうる。塩化スズ(II)溶液を必要としない金属もある(塩化ガリウム、塩化ガドリニウム、塩化銅、塩化コバルト、白金)。放射化学的純度を測定するには、当業者に公知の任意の方法が用いられうる。例えば、放射化学的純度は、メタノール:酢酸アンモニウム(1:4)で溶出される薄層クロマトグラフィ(TLC)を用いて測定されうる。
【0121】
原子価金属イオン−ポリペプチド共役体を溶液から単離するには、当業者に公知の任意の方法が用いられうる。例えば、いくつかの実施形態においては、反応溶液を透析により精製し、蒸発により乾燥させ、その後使用するために水中に再構成する。
【0122】
3.ポリペプチドへの第2の部位の共役
診断用部位、治療用部位、または組織標的部位をポリペプチドに共役させるには、当業者に公知の任意の方法が用いられうる。例えば、第2の部位はポリペプチドのグルタミン酸塩残基またはアスパラギン酸塩残基のカルボキシル基に共役されて、カルボン酸塩−金属イオン錯体を形成しうる。
【0123】
反応溶液においては任意の試薬の比率が採用されうる。例えば、いくつかの実施形態において、前記部位に対するポリペプチドの比は水中で1:1である。この比が異なれば、水溶液中での溶解度および粘度が変化しうる。本発明の方法のいくつかの実施形態においては、第2の部位をポリペプチドにカップリングさせるためにカップリング剤が用いられる。特定の実施形態において、水性条件下で用いられるカップリング剤は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド−HCl(EDC)である。非水性条件下で用いられるカップリング剤の他の例は、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)である。本発明の方法のいくつかの実施形態においては、第2の部位をまず水に溶解させてもよい。次いで、第2の部位を含むこの水溶液が、ポリペプチドを含む水溶液に添加されうる。次いで反応混合物を25時間室温にて撹拌する。次いで、当業者に公知の任意の方法により溶液から生成物を単離する。例えば、生成物は1000ダルトンでのカットオフを有する透析膜を用いて溶媒から透析されうる。次いで、生成物は速やかに用いられてもよいし、凍結乾燥・貯蔵されてもよい。
【0124】
第2の部位の共役は、ポリペプチドの任意の残基に対するものでありうる。特定の好ましい実施形態において、この共役はポリペプチドの酸基に対するものである。ポリペプチドは単一の第2の部位を含んでもよいし、複数の第2の部位を含んでもよい。本発明の特定の実施形態において、ポリペプチドの各カルボキシル基は第2の部位に共役しているか、または原子価金属イオンに配位している。2以上のタイプの第2の部位が特定のポリペプチドに共役してもよい。例えば、いくつかの実施形態においては、治療用部位および組織標的部位が単一のポリペプチドに共役する。メトトレキサートまたはドキソルビシンのような治療剤は、ポリペプチドのアミノ部位または酸部位に共役しうる。ジアトリゾ酸、イオタラム酸、およびイオパノ酸のような診断剤は、ポリペプチドのアミノ部位または酸部位に共役しうる。低酸素マーカー(メトロニダゾール、ミソニダゾール)、解糖マーカー(糖)、アミノ酸(例えば、チロシン、リジン)、細胞周期マーカー(例えば、アデノシン、グアノシン)、または受容体マーカー(例えば、エストロゲン、葉酸塩、アンドロゲン)などの組織標的部位は、ポリペプチドのアミノ部位または酸部位に共役しうる。特定の実施形態において、共役はポリペプチドの酸部位に対するものである。他の実施形態においては、2以上の異なる治療用部位または診断用部位が同一のポリペプチドに共役する。例えば、特定の実施形態においては、診断剤(例えば、X線造影剤または光学造影剤)および放射性金属物質が同一のポリペプチドに共役する。当該ポリペプチドは、PET/CT、SPECT/CT、または光学/CT用途に用いられうる。さらなる実施形態においては、放射性でない金属物質(例えば、ガドリニウム、鉄、またはマンガン)がポリペプチドに配位する。当該ポリペプチドは、PET/MRI、SPECT/MRI、または光学/MRI用途などの任意の造影形態で使用されうる。さらなる実施形態においては、治療剤および放射性治療用金属物質が同一のポリペプチドに共役する。かような剤は、放射化学療法に用いられうる。
【0125】
4.キメラポリペプチドの生成
本発明の特定の実施形態は、概説すれば、(a)組織標的アミノ酸配列、診断用アミノ酸配列、および/または治療用アミノ酸配列を配列中に含むポリペプチド;並びに、(b)前記ポリペプチドに非共有結合的に結合した1以上の原子価金属イオンを含む組成物に関する。本明細書において、「組織標的アミノ酸配列」は、組織に結合または付着しうるアミノ酸配列を意味するものと定義される。「診断用アミノ酸」は、疾患もしくは障害もしくは細胞の異常な生理機能に関連した症状の診断を促進する目的で、被験者に投与され、または組織と接触しうるアミノ酸配列である。本明細書において、「治療用アミノ酸配列」は、疾患もしくは障害を治療し、疾患もしくは障害を予防し、または正常な生理的プロセスの変化もしくは崩壊を治療もしくは予防する目的で、被験者に投与され、または細胞もしくは組織と接触しうるアミノ酸配列を意味するものと定義される。例えば、治療用アミノ酸配列は、化学療法剤などの抗癌アミノ酸配列でありうる。化学療法剤については、本明細書の他の欄で説明する。
【0126】
1以上の原子価金属イオンは、組織標的アミノ酸配列、診断用アミノ酸配列、および/または治療用アミノ酸配列に非共有結合的に付着してもよいし、あるいは1以上の原子価金属イオンは、別のアミノ酸配列でポリペプチドに非共有結合的に付着してもよい。
【0127】
例えば、いくつかの実施形態において、原子価金属イオンは、原子価金属イオンに結合する機能を有する1以上のアミノ酸を配列中に含む別のアミノ酸配列に付着する。例えば、この配列は、ポリ(グルタミン酸塩)アミノ酸配列またはポリ(アスパラギン酸)アミノ酸配列でありうる。当該アミノ酸配列は、組織標的アミノ酸配列、診断用アミノ酸配列、または治療用アミノ酸配列と融合または化学的に共役してキメラポリペプチドを生成する。
【0128】
本発明のキメラポリペプチドは、化学合成法または2つの部位の化学連結により製造されうる。特定の実施形態において、キメラポリペプチドは、原子価金属イオンに結合するアミノ酸配列のコード配列と、組織標的アミノ酸配列、診断用アミノ酸配列、または治療用アミノ酸配列のコード配列とを、適当な宿主細胞中での融合ポリヌクレオチドの発現を指示する調節配列の制御のもとで融合することにより、製造されうる。
【0129】
2つの全長コード配列の融合は、分子生物学の当業者に周知の方法により達成されうる。2つの異なるエンコード生成物の製造を避けるには、融合ポリヌクレオチドは、第1のコード配列の5’末端にAUG翻訳開始コドンを含み、第2のコード配列の開始コドンを含まないことが好ましい。加えて、発現した生成物を宿主細胞内の特定の場所またはコンパートメントに標的化し、遺伝子発現後の分泌またはその後の精製を容易にする目的で、リーダー配列をポリヌクレオチドの5’末端に配置してもよい。2つのコード配列は、リンカーを介さずに直接融合されてもよいし、1〜3回繰り返されるペンタマーGly−Gly−Gly−Gly−Ser(配列番号1)からなるもののような柔軟なポリリンカーを用いて融合されてもよい(参照により本明細書に詳細に引用される、Huston et al., 1988を参照)。用いられうる他のリンカーとしては、Glu−Gly−Lys−Ser−Ser−Gly−Ser−Gly−Ser−Glu−Ser−Lys−Val−Asp(配列番号2)(参照により本明細書に詳細に引用される、Chaudhary et al., 1990)およびLys−Glu−Ser−Gly−Ser−Val−Ser−Ser−Glu−Gln−Leu−Ala−Gln−Phe−Arg−Ser−Leu−Asp(配列番号3)(参照により本明細書に詳細に引用される、Bird et al., 1988)が挙げられる。
【0130】
G.造影様式および造影剤
本発明の特定の実施形態は、被験者におけるある部位を造影する方法であって、(a)本発明の原子価金属イオン−ポリペプチドキレートを含む組成物の診断上有効な量を被験者に投与すること;並びに、(b)前記部位に局在する原子価金属イオン−ポリペプチドキレートからの信号を検出することを含む方法に関する。さらには、上述したように、特定の実施形態において、診断用部位/造影部位である第2の部位がポリペプチド−原子価金属イオンキレートに共役してもよい。当業者に公知の任意の造影様式が、前記部位に局在する原子価金属イオン−ポリペプチドキレートまたは造影部位−ポリペプチド−原子価金属イオン錯体からの信号を検出するための手段として解釈される。造影様式の例については、以下に説明する。
【0131】
1.造影様式の例
a.ガンマカメラ造影
造影のための種々の核医学技術が当業者に公知である。本発明の造影方法との関係では、レポーターからの信号を測定する目的で、任意のこれらの技術が適用されうる。例えば、ガンマカメラ造影は、レポーター由来の信号を測定するのに用いられうる造影方法として解釈される。当業者であれば、ガンマカメラ造影を適用するための技術に精通しているであろう(例えば、参照により本明細書に詳細に引用される、Kundra et al., 2002を参照)。ある実施形態においては、信号の測定に111−In−オクトレオチド−SSRT2Aレポーターシステムのガンマカメラ造影を用いてもよい。
【0132】
b.PETおよびSPECT
放射性核種の造影様式(陽電子放出断層撮影法、{PET};単光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT))は、放射性核種でラベル化された放射性トレーサの位置および濃度をマッピングする、断層造影による診断技術である。CTおよびMRIでは腫瘍の位置および広がりについてかなりの解剖学的情報が得られるが、これらの造影様式では、浸潤性病変を浮腫、放射線壊死、グレーディング(grading)またはグリオーシスと十分に区別することができない。PETおよびSPECTは、代謝活性の測定によって腫瘍を突き止めて特性を明らかにする目的で用いられうる。
【0133】
PETおよびSPECTによれば、細胞の生存能力といった細胞レベルでの情報に関する情報が得られる。PETでは、陽電子を放出するわずかに放射性の物質を、患者が摂取するか患者に注射する。当該物質は、体内を動くにつれてモニターされうる。例えばある一般的な用途では、陽電子放出体が付着したグルコースを患者に与え、患者が種々の作業を行う際にその脳をモニターする。脳は機能する際にグルコースを利用するため、PET造影によれば脳のどこの活性が高いかがわかる。
【0134】
単光子放出コンピュータ断層撮影法(すなわち、SPECT)は、PETと密接な関係がある。これら2つの主な違いは、SPECTでは陽電子放出物質の代わりに高エネルギーの光子を放出する放射性トレーサを利用するということである。SPECTは冠動脈疾患の診断に有用であり、アメリカ合衆国では既に毎年250万のSPECTによる心臓の研究が行われている。
【0135】
PET造影用の放射性医薬品は通常、11C、13N、15O、18F、82Rb、62Cu、および68Gaのような陽電子放出体を用いてラベル化される。SPECT放射性医薬品は通常、99mTc、201Tl、および67Gaのような陽電子放出体を用いてラベル化される。脳の造影に関して、PETおよびSPECT放射性医薬品は、血液脳関門の透過性、脳灌流および代謝受容体の結合、並びに抗原抗体結合によって分類される(Saha et al., 1994)。99mTcO4−DTPA、201Tl、および[67Ga]クエン酸塩のような血液脳関門SPECT剤は、正常な脳細胞からは排除されるが、BBBの変化によって腫瘍細胞中には侵入する。[123I]IMP、[99mTc]HMPAO、[99mTc]ECDのようなSPECT灌流剤は親油性の剤であり、よって正常な脳内にも拡散する。重要な受容体結合SPECT放射性医薬品としては、[123I]QNE、[123I]IBZM、および[123I]イオマゼニルが挙げられる。これらのトレーサは特定の受容体に結合し、受容体関連疾患の評価に重要である。
【0136】
c.コンピュータ断層撮影(CT)
コンピュータ断層撮影(CT)は、本発明との関係で造影様式として解釈される。ときには1000を超える一連のX線を種々の角度から撮り、次いでコンピュータを用いてそれらを結合させることで、CTは身体の任意の部位の3次元像を構築することを可能とした。コンピュータは、任意の角度から任意の深さで2次元の断面を表示するようにプログラムされている。
【0137】
CTでは、初期のCTスキャンが診断用ではない場合に、放射線不透過性の造影剤を静脈注射することで軟部組織塊の同定および描写が支援されうる。同様に、造影剤は軟部組織または骨病変の血管の評価を助ける。例えば、造影剤を用いると、腫瘍と、隣接する血管構造との関係の描写の手助けとなる。
【0138】
CT造影剤としては、例えば、ヨウ素化造影剤が挙げられる。これらの剤の例としては、イオタラム酸塩、イオヘキソール、ジアトリゾエート、イオパミドール、エチオドール、およびイオパノ酸塩が挙げられる。ガドリニウム剤もまた、CT造影剤として有用であることが報告されている(例えば、Henson et al., 2004を参照)。例えば、ガドペンテト酸塩の剤がCT造影剤として用いられている(Strunk and Schild, 2004に記載)。
【0139】
d.磁気共鳴断層撮影(MRI)
磁気共鳴断層撮影(MRI)は、CTよりも新しく、高強度磁石および高周波信号を利用して画像を生成する造影様式である。生物組織において最も豊富な分子種は水である。造影実験において究極的に信号を発生させるのは、水のプロトン核の量子力学的スピンである。MRIでは、造影すべきサンプルを強い静磁場(1〜12テスラ)中に配置し、パルス状の高周波(RF)放射によってスピンを励起させて、サンプルでの正味の磁化を得る。次いで、種々の傾斜磁場および他のRFパルスがスピンに作用し、空間情報が記録された信号へとコード化される。これらの信号を集めて分析することで、CT画像と同様に通常は2次元の断面で表示される3次元の像を計算することが可能である。
【0140】
MR造影で用いられる造影剤は、他の造影技術で用いられるものとは異なる。当該造影剤の目的は、同一の信号特性を有する組織成分の区別を助け、緩和時間を短縮する(これにより、T1加重スピンエコーMR画像についてのより強い信号、およびT2加重画像についてのより弱い信号が生成する)ことである。MRI造影剤の例としては、ガドリニウムキレート、マンガンキレート、クロムキレート、および鉄粒子が挙げられる。
【0141】
CTおよびMRIはともに、組織の境界および血管構造を区別するのに役立つ解剖学的情報を提供する。CTと比較した場合のMRIの欠点としては、患者の耐容性が低いこと、ペースメーカーおよび他の特定の埋め込み金属機器に禁忌であること、および複数の原因(最大の原因は動作である)に関連したアーチファクトが挙げられる(Alberico et al., 2004)。これに対し、CTは迅速であり、耐容性もよく、容易に利用可能であるが、コントラスト分解能はMRIより低く、ヨウ素化造影剤および電離放射線を必要とする(Alberico et al., 2004)。CTおよびMRIの双方の欠点は、いずれの造影様式でも細胞レベルでの機能情報は得られないということである。例えば、いずれの様式でも細胞の生存能力に関する情報は得られない。
【0142】
e.光学造影
光学造影は、医学の特定の領域で広く受け容れられている他の造影様式である。その例としては、細胞の構成成分の光学的なラベル化並びに、フルオレセイン血管造影およびインドシアニングリーン血管造影のような血管造影が挙げられる。光学造影剤の例としては、例えば、フルオレセイン、フルオレセイン誘導体、インドシアニングリーン、オレゴングリーン、オレゴングリーン誘導体、ローダミングリーン、ローダミングリーン誘導体、エオジン、エリスロシン、テキサスレッド、テキサスレッド誘導体、マラカイトグリーン、ナノゴールドスルホスクシンイミジルエステル、カスケードブルー、クマリン誘導体、ナフタレン、ピリジルオキサゾール誘導体、カスケードイエロー染料、ダポキシル染料が挙げられる。
【0143】
f.超音波
広く受け容れられている他の生物医学的造影様式は、超音波である。超音波造影は、身体における軟部組織構造および血流の情報のリアルタイムの断面およびさらには3次元の像を、非侵襲的に得る目的で用いられている。高周波音波並びに、血管、組織、および器官の像を生成するためのコンピュータ。
【0144】
血流の超音波造影は、血管のサイズおよび深さなどの多くの因子によって制限されうる。比較的最近開発された超音波造影剤としては、過フッ素化物および過フッ素化物類似体が挙げられ、これらは、グレースケールの像およびドップラー信号の強化を助けることで、上述した制限を克服する目的で設計される。
【0145】
2.二重造影の手法
本発明の特定の実施形態は、造影部位−ポリペプチド−原子価金属イオン錯体からの第1の信号および第2の信号の測定を伴う2つの造影様式を用いた、被験者におけるある部位の造影方法に関する。第1の信号は原子価金属イオン由来であり、第2の信号は造影部位由来である。上述したように、本発明の造影方法のこれらの実施形態では、当業者に公知の任意の造影様式が適用されうる。
【0146】
これらの造影様式は、本発明の組成物の診断上有効量を含む組成物の投与の間または投与の後の任意の時点で行われうる。例えば、造影試験は本発明の二重造影用組成物の投与中に行ってもよいし、その後の任意の時点で行ってもよい。いくつかの実施形態において、第1の造影様式は、二重造影剤の投与と同時に、または二重造影剤の投与の約1秒後、1時間後、1日後、もしくはより長い任意の時間後に、あるいは、明記したこれらの時間の間の任意の時点で行われる。
【0147】
第2の造影様式は、第1の造影様式と同時に、または第1の造影様式の後の任意の時点で行われうる。例えば、第2の造影様式は、第1の造影様式の完了の約1秒後、約1時間後、約1日後、もしくはより長い任意の時間後に、あるいは、明記したこれらの時間の間の任意の時点で行われうる。本発明の特定の実施形態において、第1および第2の造影様式は、投与後に同時に開始するように、同時に行われる。当業者であれば、本発明に包含される種々の造影様式の実施について精通しているであろう。
【0148】
本発明の二重造影の方法のいくつかの実施形態においては、第1の造影様式および第2の造影様式を実施するのに同一の造影装置が用いられる。他の実施形態では、第2の造影様式を実施するのに異なる造影装置が用いられる。当業者であれば、第1の造影様式および第2の造影様式の実施に利用可能な造影装置に精通しているであろうし、当業者は画像を生成するためにこれらの装置を用いることにも精通しているであろう。
【0149】
H.放射性ラベルされた剤
上述したように、本発明の組成物の特定の実施形態は、上述したポリペプチドにキレートされた原子価金属イオンを含み、当該原子価金属イオンは放射性核種である。本発明により提供される、放射性ラベルされた剤、化合物、および組成物は、適量の放射能を有するように提供される。例えば、99mTc放射性複合体を形成する際には、通常は約0.01ミリキュリー(mCi)〜約300mCi/mLの濃度で放射能を含む溶液中で放射性複合体を形成することが好ましい。
【0150】
本発明により提供される放射性ラベル化された造影剤は、哺乳動物の身体における部位を可視化する目的で用いられうる。本発明によれば、造影剤は当業者に公知の任意の方法により投与される。例えば、投与は注射可能な用量の単回でありうる。放射性ラベル化後に本発明の注射用化合物を調製する目的で、滅菌食塩水や血清などの当業者に公知の任意の担体が用いられうる。一般的に、投与される単回用量は、約0.01mCi〜約300mCi、好ましくは10mCi〜約200mCiの放射能を有する。単回で注射される溶液は、約0.01mL〜約10mLである。
【0151】
本発明の組成物の診断上有効量を静脈に投与した後、造影が行われうる。被験者における部位(例えば、器官または腫瘍)の造影は、所望により、放射性ラベルされた試薬を患者に導入後、数時間またはそれより長くに亘って行われうる。ほとんどの場合で、約0.1〜1時間以内に、投与された用量の十分な量が造影領域に蓄積するであろう。上述したように、造影は当業者に公知の任意の方法を用いて行われうる。その例としては、PET、SPECT、およびガンマシンチグラフィが挙げられる。ガンマシンチグラフィでは、放射性ラベルはガンマ線放出核種であり、この放射性トレーサはガンマ線検出カメラを用いて追跡される(このプロセスはときにガンマシンチグラフィと称される)。この放射性トレーサは、病変部位に局在するように選択される(陽性造影と称する)か、あるいは、この放射性トレーサはかような病変部位には特異的に局在しないように選択される(陰性造影と称する)ため、造影部位が検出可能である。
【0152】
I.キット
本発明の特定の実施形態は、概説すれば、造影剤を調製するためのキットに関し、当該キットは、原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を含む所定量のポリペプチド;および、原子価金属イオンを上述した2つの連続したアミノ酸の少なくとも1つにキレートするのに十分な量の還元剤を含む密封容器を含む。他の実施形態において、造影剤を調製するためのキットは、組織標的アミノ酸配列、診断用アミノ酸配列、および/または治療用アミノ酸配列を配列中に含む所定量のポリペプチド;および、1以上の原子価金属イオンを前記ポリペプチドに付着させるのに十分な量の還元剤を含む密封容器を含む。
【0153】
本発明のキットは、本発明のポリペプチドの所定量および当該化合物を原子価金属イオンでラベル化するのに十分な量の還元剤を含有する密封されたバイアルを含む。本発明のいくつかの実施形態において、当該キットは、放射性核種である原子価金属イオンを含む。さらに特定の実施形態において、当該放射性核種は99mTcである。本発明のさらなる実施形態において、ポリペプチドは、診断用部位、造影部位、または治療用部位である第2の部位でラベル化される。
【0154】
当該キットはまた、例えば浸透圧を調節するための製薬上許容される塩、緩衝剤、保存剤などの従来の医薬補助物質をも含みうる。
【0155】
特定の実施形態においては、キレート剤部位の酸化を防ぐ目的で、組成物中に抗酸化剤が含まれる。特定の実施形態において、抗酸化剤はビタミンC(アスコルビン酸)である。しかしながら、トコフェロール、ピリドキシン、チアミン、またはルチンなどの当業者に公知の他の任意の抗酸化剤もまた、用いられうると解される。キットの構成成分は、液体、凍結状態、または乾燥状態でありうる。好ましい実施形態において、キットの構成成分は凍結乾燥状態で提供される。
【0156】
冷却インスタントキットは市販の製品と考えられる。当該冷却インスタントキットは、過テクネチウム酸塩を添加することで放射性診断目的に用いられうる。この技術は「シェイクシュート(shake and shoot)」法として知られている。放射性医薬品の調製時間は、15分間未満であろう。同一のキットであっても異なる造影用途のためには異なる金属とキレートされてもよい。例えば、PET用の銅−61(半減期が3.3時間);MRI用のガドリニウム。冷却キット自体は、疾患を治療するためのプロドラッグである。例えば、当該キットは組織特異的な標的化造影および治療に適用されうる。
【0157】
J.造影剤としての候補物質の有効性を決定する方法
本発明はさらに、造影剤としての候補物質の有効性を決定する方法であって:(a)候補物質を得ること;(b)前記候補物質を、原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を配列中に含むポリペプチドと共役またはキレートさせること;(c)候補物質−ポリペプチド共役体を被験者に導入すること;および、(d)前記候補物質−ポリペプチド共役体からの信号を検出して、前記候補物質の造影剤としての有効性を決定することを含む方法に関する。
【0158】
これらの方法は、候補物質の巨大なライブラリのランダムスクリーニングを含んでもよいし、あるいは、アッセイを用いて、造影剤としてより機能しそうと考えられる構造特性を考慮して選択された特定のクラスの候補物質に焦点を当ててもよい。
【0159】
機能により、上述した候補物質−ポリペプチド共役体を被験者に投与した後の、候補物質由来の信号の測定され易さをアッセイしてもよい。
【0160】
候補物質の造影剤としての有効性を評価するには、通常、候補物質の存在下および非存在下でポリペプチドからの信号の測定され易さを決定すればよい。
【0161】
上述した造影様式のような当業者に公知の任意の造影様式が、候補物質−ポリペプチド共役体からの信号の測定に適用されうる。
【0162】
有効な造影剤が発見されないかもしれないという事実に関係なく、本発明のスクリーニング方法は全て、それ自体で有用であると解されることはもちろんである。本発明はかような候補物質のスクリーニング方法を提供するのであって、候補物質を発見する方法のみを提供するのではない。
【0163】
1.調節因子
本明細書で用いられる場合、「候補物質」とは、造影剤としての活性を潜在的に有しうる任意の分子を意味する。この候補物質は、タンパク質もしくはその断片であってもよいし、小分子であってもよいし、または核酸分子であってすらよい。結局、ほとんどの有用な薬理化合物は公知の造影剤に構造的に連関した化合物となるかもしれない。改良化合物の開発を助けるリード化合物を利用することは「合理的薬物設計」として知られており、公知の阻害剤や活性剤との比較だけでなく、標的分子の構造に連関した予測をも含む。
【0164】
合理的薬剤設計のゴールは、公知の造影剤の構造類似体を製造することである。かような類似体を作製することにより、天然分子よりもより活性なもしくは安定な、変化に対する感受性の異なる、または種々の他の分子の機能に影響を及ぼしうる薬剤の創出が可能となる。1つのアプローチでは、標的分子またはその断片の3次元構造を作成する。これはX線結晶構造解析、コンピュータモデリングまたは双方の組み合わせによって達成されるであろう。
【0165】
活性剤または阻害剤としての標的化合物の構造を確認する目的で抗体を用いることも可能である。原則として、このアプローチによればその後の薬剤設計のもとになるファーマコアが得られる。機能的、薬理学的に活性な抗体に対する抗イディオタイプ抗体を作製することにより、タンパク質の結晶解析を完全に省略することが可能である。鏡像の鏡像として、抗イディオタイプ抗体の結合部位は、もともとの抗原と類似していると考えられる。抗イディオタイプ抗体は次いで、化学的または生物学的に製造されたペプチドのバンクから、ペプチドを同定および単離する目的で用いられうる。選択されたペプチドは次いで、ファーマコアとして機能する。抗イディオタイプ抗体は、抗体を抗原として用い、抗体の製造について本明細書に記載した方法を用いて作製されうる。
【0166】
一方、有用な化合物の「強引な」同定を目的として、候補物質としての基本的な基準を満たすと考えられる小分子ライブラリを、単に種々の商業的供給源から得てもよい。コンビナトリアルアプローチもまた、活性な(そうでなければ望ましくない)化合物としてモデル化された第2、第3および第4世代の化合物を作製することにより、潜在的な造影剤の迅速な開発に寄与する。
【0167】
候補物質は、天然由来の化合物の断片や一部分を含んでもよいし、そうでなければ不活性な既知の化合物の活性な結合体とされてもよい。動物源、細菌源、真菌源、植物源(葉、樹皮、および海洋サンプル等)などの天然資源から単離された化合物を候補物質として、潜在的に有用な薬剤かどうかをアッセイしてもよい。スクリーニングされる薬剤はまた、化学的組成物または人工の化合物から得られ、または合成されうることは理解されるであろう。よって、本発明によって同定された候補物質は、ペプチド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、小分子阻害剤、または既知の阻害薬または作動薬から出発した合理的薬剤設計により設計されうる他の任意の化合物でありうると解される。
【0168】
試験化合物を用いた動物などの被験者の治療は、動物へ適当な形態で化合物を投与することを伴う。投与は臨床または非臨床の目的で利用されうる任意の経路(例えば、静脈内、気道内注入、気管支内注入、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内または静脈注射)でありうる。特に予定されている経路は、全身の静脈注射、血液もしくはリンパの供給を介した局所投与、または罹患部位へ直接というものである。
【0169】
K.過剰増殖疾患
本発明の特定の形態は、治療用部位が本発明のポリペプチド−原子価金属イオンキレートに共役している組成物に関する。よって、本発明の組成物は、特定の実施形態においては、二重造影および治療に有用でありうる。特定の実施形態において、治療用部位は、被験者における過剰増殖疾患の治療もしくは予防に有効であると知られるまたは予想される剤である。被験者は、哺乳動物のような動物でありうる。特定の実施形態において、被験者はヒトである。
【0170】
本発明の他の実施形態において、原子価金属イオンは治療用原子価金属イオン(例えば、Re−188、Re−186、Ho−166、Y−90、Sr−89、およびSm−153)であり、ポリペプチド−原子価金属イオンキレートは、(造影剤というよりもむしろ)過剰増殖疾患の治療または予防に適用されうる治療剤である。
【0171】
本明細書において、過剰増殖疾患は、細胞の異常増殖または細胞の異常代謝回転に関連した任意の疾患として定義される。例えば、過剰増殖疾患は癌でありうる。本明細書で用いられる場合、「癌」という語は、組織における細胞の制御できない進行性の増殖として定義される。当業者であれば、新生物または悪性腫瘍または腫瘍といった他の同義語が存在することを認識している。任意のタイプの癌が本発明の方法により治療されると解される。例えば、癌は、乳癌、肺癌、卵巣癌、脳腫瘍、肝臓癌、子宮頸癌、結腸癌、腎臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、骨肉腫、食道癌、膀胱癌、子宮癌、胃癌、膵臓癌、精巣癌、リンパ腫、または白血病でありうる。本発明の他の実施形態において、癌は転移性癌である。
【0172】
L.化学療法および放射線の二重療法(「放射化学療法」)
本発明の特定の実施形態において、本発明の組成物は化学療法および放射線療法の二重療法(放射化学療法)に適している。例えば、本明細書で上述したポリペプチドは、治療用原子価金属イオンである原子価金属イオン、および治療用部位(抗癌部位など)である第2の部位とキレートされうる。
【0173】
例えば、原子価金属イオンはβ放出体でありうる。本明細書で定義されるように、β放出体は任意の範囲のβエネルギーを放出する任意の剤である。β放出体の例としては、Re−188、Re−186、Ho−166、Y−90、およびSn−153が挙げられる。当業者であれば、癌などの過剰増殖疾患の治療に用いられるこれらの剤に精通しているであろう。
【0174】
当業者であれば、本発明の化合物の投与に適用されうる化学療法プロトコールおよび放射線療法プロトコールの設計に精通しているであろう。後述するように、これらの剤は癌などの過剰増殖疾患の治療を指向する他の治療様式と組み合わせて用いられうる。さらに、当業者であれば、被験者への適切な投与量に精通しているであろう。このプロトコールは、単回投与でも複数回投与でもよい。患者は、当業者によく知られたプロトコールを用いて毒性や治療への応答をモニターされる。
【0175】
M.製剤の調製
本発明の薬剤組成物は、本発明の組成物の治療上または診断上有効量を含む。「製薬上または薬理学上許容される」または「製薬上有効な」または「診断上有効な」との句は、必要に応じて例えばヒトなどの動物に投与された場合に、有害な、アレルギー性の、または他の副作用を引き起こさない分子要素および組成物を意味する。治療上有効な、または診断上有効な組成物の調製は、参照により本明細書に引用される、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990に例示されるような現存する開示を踏まえれば当業者に理解されるであろう。さらに、動物(例えば、ヒト)への投与について、調製は、FDAの生物学的基準室により要求されるような、滅菌性、発熱性、一般的な安全性および純度の基準を満足しなければならない。
【0176】
本明細書で用いられる場合、「治療上有効量を含む組成物」または「診断上有効量を含む組成物」は、当業者に知られているように、任意の全ての溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば、抗微生物剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、保存剤、薬剤、薬剤安定化剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味料、香料、染料、同様の材料およびこれらの組み合わせを含む。従来の担体は、活性成分と非適合性である場合を除き、本発明の組成物に用いられる。
【0177】
本発明の組成物は、固体状、液体状、またはエアロゾル状で投与されるかどうか、投与経路が注射の場合ほど滅菌される必要があるか否かに応じて、異なるタイプの担体を含みうる。本発明の組成物は、当業者に知られているように、静脈内に、皮内に、動脈内に、腹腔内に、病変内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に、胸膜内に、気管内に、鼻内に、硝子体内に、膣内に、直腸内に、局所に、腫瘍内に、筋肉内に、腹腔内に、皮下に、結膜下に、小胞内に、粘膜に、心膜内に、臍帯内に、眼球内に、経口的に、局所に、局所的に、注射、注入、連続注入、標的細胞を直接浸す限局性灌流、カテーテルにより、洗浄により、脂質組成物(例えば、リポソーム)、または他の方法もしくはこれらの任意の組み合わせにより投与されうる。
【0178】
患者に投与される本発明の組成物の実際の必要量は、患者の体重、症状の重篤度、造影すべき組織、治療すべき疾患のタイプ、従来または現在の造影または治療、特発性疾患などの物理的・生理学的要因や、投与経路に応じて決定されうる。いずれにしても、個々の被験者に対する組成物中の活性成分の濃度や適切な量については、投与に責任を負う医師が決定する。
【0179】
特定の実施形態において、薬剤組成物は例えば、少なくとも約0.1%のポリペプチド−原子価金属イオンキレートを含みうる。他の実施形態において、活性化合物は、例えば、単位重量あたり約2%〜約75%の間、または約25%〜約60%の間で、ここから導かれる任意の範囲の間で含まれうる。他の非制限的な例において、用量はまた、約0.1mg/kg/体重〜約1000mg/kg/体重、またはこの範囲内の任意の量、あるいは1投与あたり1000mg/kg/体重を超える任意の量でありうる。
【0180】
いずれの場合においても、組成物は、1以上の構成成分の酸化を抑制するための種々の抗酸化剤を含みうる。また、これらに限定されないが、パラベン類(例えば、メチルパラベン類、プロピルパラベン類)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールまたはこれらの組み合わせなどの種々の抗菌剤や抗真菌剤といった保存剤によって、微生物の作用を抑制することが可能である。
【0181】
本発明の組成物は、遊離塩基状で、中性状で、または塩の形態で配合されうる。製薬上許容される塩としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムもしくは水酸化第二鉄などの無機塩基またはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジンもしくはプロカインなどの有機塩基由来の遊離カルボキシル基からなる塩が挙げられる。
【0182】
組成物が液体状である実施形態において、担体は、これらに限定されないが水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、脂質(例えば、トリグリセリド、植物油、リポソーム)およびこれらの組み合わせなどの溶媒または分散媒でありうる。例えば、レシチンなどのコーティングを用いることにより;例えばポリオールや脂質などの担体中で所望の粒子径を維持することにより;例えばヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤を用いることにより;あるいはこれらの方法の組み合わせにより、適当な流動性を維持することが可能である。多くの場合、例えば糖、塩化ナトリウムまたはこれらの組み合わせのような等張剤を含むことが好ましい。
【0183】
注射可能な滅菌溶液は、濾過滅菌などの技術を用いて調製されうる。通常、分散液は、ベース分散媒および/または他の成分を含有する滅菌媒体中に、滅菌された種々の活性成分を配合することにより調製されうる。注射可能な滅菌された溶液、懸濁液、またはエマルジョンの調製のための滅菌粉末の場合に好ましい調製方法は、事前に滅菌濾過した液状媒体から活性成分および任意の他の所望の成分の粉末が得られる真空乾燥技術または凍結乾燥技術である。必要であれば液状媒体は適当に緩衝化されるべきであり、注射の前に十分量の生理食塩水またはグルコースを用いて液体希釈剤をまず等張にする。直接注射用の高濃度組成物の調製もまた包含され、この際には、溶媒としてDMSOを用いることが想定され、これにより非常に速やかに浸入し、小さい領域に活性剤を高濃度で輸送することができる。
【0184】
製造および貯蔵の条件下において組成物は安定でなければならず、細菌や真菌などの微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。エンドトキシンの汚染も、例えば0.5ng/mgタンパク質といった安全なレベルまで最小限に抑えるべきである。
【0185】
特定の実施形態においては、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチンまたはこれらの組み合わせなどの吸収を遅らせる剤の組成物を用いることで、注射可能な組成物の吸収を延長させることが可能である。
【0186】
N.併用療法
本発明の特定の実施形態は、治療用部位である第2の部位を含むポリペプチドを含む組成物に関する。他の実施形態において、ポリペプチドは、治療用アミノ酸配列であるアミノ酸配列を含む。
【0187】
これらの組成物は、他の剤または治療法(好ましくは他の癌の治療法)とともに、疾患(例えば、癌)の治療に適用されうる。本発明のこれらの組成物を用いた治療は、数分から数週間に亘る時間間隔をおいて、他の治療法よりも前または後に行われうる。他の剤が投与される実施形態においては、これらの剤が細胞に対して依然として有利な複合効果を発揮できるように、それぞれの輸送時間の間に長時間が経過しないようにするのが一般的である。例えば、2つの、3つの、4つの、またはそれより多くの用量の剤を本発明の組成物と一緒に実質的に同時に(すなわち、約1分間以内に)投与してもよいと解される。他の形態において、ある治療剤または治療法は、本発明の組成物の治療量の投与の約1分間〜約48時間またはそれより長い時間だけ前および/または後に施されるか、あるいは本明細書には記載のない任意の長さの時間だけ前および/または後に施されうる。特定の他の実施形態において、本発明の組成物は、外科的手術または遺伝子療法などの他の治療様式の施術の約1日〜約21日だけ前および/または後に投与されうる。場合によっては、治療時間を有意に延長することが望ましいが、この場合にはそれぞれの投与の間に数週間(例えば、約1〜8週間またはそれより長い)が経過する。
【0188】
種々の組み合わせが採用され、特許請求されている二重化学療法および放射線療法用の剤を「A」とし、任意の他の治療剤または治療方法でありうる第2の剤を「B」とすると:A/B/A、B/A/B、B/B/A、A/A/B、A/B/B、B/A/A、A/B/B/B、B/A/B/B、B/B/B/A、B/B/A/B、A/A/B/B、A/B/A/B、A/B/B/A、B/B/A/A、B/A/B/A、B/A/A/B、A/A/A/B、B/A/A/A、A/B/A/A、A/A/B/A。
【0189】
本発明の組成物の患者への投与は、これらの剤の毒性(もしあれば)を考慮して、化学療法剤の投与のための一般的なプロトコールに従う。必要に応じて治療サイクルが繰り返されることが予想される。また、種々の標準的な治療や外科的療法が、記載の剤と組み合わせて適用されてもよい。これらの治療法としては、これらに限定されないが、他の化学療法、他の放射線療法、免疫療法、遺伝子療法および手術が挙げられる。
【0190】
a.化学療法
癌治療にはまた、化学ベースの治療および放射線ベースの治療の双方を用いた療法の種々の組み合わせがある。化学療法の組み合わせとしては、例えば、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イフォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソウレア、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合剤、タキソール、ゲムシタビン、ナベルビン、ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランスプラチナ、5−フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびメトトレキサート、またはこれらの任意の類似体もしくは誘導体が挙げられる。
【0191】
b.放射線療法
DNA損傷を引き起こし、広く用いられている他の因子としては、一般的にγ線、X線として知られているもの、および/またはラジオアイソトープの腫瘍細胞への直接輸送が挙げられる。マイクロ波およびUV放射線などのDNAを損傷させる因子の他の形態もまた包含される。これらの因子は全て、DNAに対して、DNAの前駆体に対して、DNAの複製および修復に対して、および染色体の会合および維持に対して広範な損傷を引き起こすことになりそうである。X線の線量の範囲は、長期間(3〜4週間)では日用量で50〜200レントゲンであり、単回投与では2000〜6000レントゲンである。ラジオアイソトープの用量範囲はアイソトープの半減期、放出される放射線の強度およびタイプ、腫瘍細胞による取り込みに応じて大きく変動する。本明細書では、細胞に対して用いられる場合、「接触した」および「曝露された」という語は、治療用構築物および化学療法または放射線療法の剤が標的細胞に輸送され、または標的細胞と直接並んで配置されるプロセスを意味する。細胞の殺傷や静止を達成する目的で、双方の剤が細胞を殺傷し、またはその分裂を抑制するのに有効な量で組み合わされて、細胞に輸送される。
【0192】
c.免疫療法
免疫療法では通常、癌細胞を標的化して破壊する免疫エフェクター細胞や免疫エフェクター分子を用いる。この免疫エフェクターは、例えば、腫瘍細胞の表面上のあるマーカーに特異的な抗体でありうる。抗体が単独で治療のエフェクターとして機能してもよいし、細胞の殺傷を実際に引き起こす他の細胞を抗体が集めてもよい。抗体はまた、薬剤または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)に共役して標的化剤としてだけ機能してもよい。あるいは、エフェクターは腫瘍細胞の標的と直接または間接に相互作用する表面分子を運ぶリンパ球であってもよい。種々のエフェクターとしては、細胞障害性T細胞やNK細胞が挙げられる。
【0193】
このように、免疫療法は遺伝子療法との併用療法の一部として用いられうる。併用療法についての一般的なアプローチを以下で説明する。通常、腫瘍細胞は標的化の影響を受け易い(すなわち、大多数の他の細胞には存在しない)特定のマーカーを有していなければならない。多くの腫瘍マーカーが存在し、これらはいずれも本発明との関連では標的化にふさわしい。共通の腫瘍マーカーとしては、癌胎児性抗原、前立腺特異抗原、泌尿器腫瘍関連抗原、胎児性抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG−72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、エストロゲン受容体、ラミニン受容体、erbBおよびp155が挙げられる。
【0194】
d.遺伝子
さらに他の実施形態において、第2の療法は、本発明の治療剤よりも前に、後に、または同時に治療用組成物を投与する遺伝子療法である。本発明の組成物の治療量を、遺伝子産物をコードするベクターとともに輸送すれば、標的組織に対する複合効果が得られる。
【0195】
e.手術
癌に罹患しているおよそ60%の人が、予防手術、診断もしくは病期分類手術、根治手術、および苦痛緩和手術などのタイプの手術を経験している。根治手術は、本発明の治療、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法、および/または代替療法などの他の療法とともに用いられうる癌の治療法である。根治手術は、癌性組織の全てまたは一部を物理的に除去し、摘出し、および/または破壊する切除術を含む。腫瘍の切除とは、腫瘍の少なくとも一部の物理的な除去を意味する。腫瘍の切除のほかに、手術による治療としては、レーザー治療、凍結外科手術、電気外科手術、および顕微鏡制御術(モース手術)が挙げられる。さらに、本発明は表在性腫瘍、前癌状態、または付随的な量の正常組織の除去と組み合わせても用いられうる。
【実施例】
【0196】
実施例1
エストロゲン受容体の陽性特徴づけのための99mTc−GAP−エストラジオール(EDL)
3−アミノエチルエストラジオールの合成
エストロン(1.47g、5.45mmol)をエタノール(50ml)に溶解した。NaOEt(742mg、10.9mmol)およびブロモアセトニトリル(0.5ml、1.722g/ml、6.65mmol)を添加した。この反応混合物を還流下で24時間過熱した。エタノールを蒸発させて乾燥し、酢酸エチルを添加した(100ml)。この混合物を、分液漏斗中で水(100ml)で洗浄した。硫酸マグネシウムで有機層を乾燥し、濾過した。減圧下で酢酸エチルを蒸発させ、濾紙上で固体生成物をエーテルで洗浄した。3−アセトニトリルエストラジオールの収率は75%であった。3−アセトニトリルエストラジオール(620mg、2mmol)をTHF(50ml)に溶解した。水素化アルミニウムリチウム(THF中に1M)を添加し、反応混合物を一晩撹拌した。溶媒を蒸発させ、固体を酢酸エチルに溶解させて、分液漏斗中で水(100ml)で洗浄した。硫酸マグネシウムで酢酸エチル層を乾燥し、濾過した。溶媒を蒸発させた。3−アミノエチルエストラジオールを回収し、収率は92%であった。99mTc−GAP−EDLの合成スキームを図1に示す。構造はNMRスペクトルで確認した。
【0197】
99mTc−グルタミン酸塩ペプチド−エストラジオール(GAP−EDL)の合成
2N HClを2ml添加することにより、グルタミン酸塩ペプチドのナトリウム塩(GAP、500mg、分子量1500〜3000)を酸型に変換し、1000のカットオフを有するスペクトラ/POR分子多孔膜(スペクトラム メディカル インダストリーズ インコーポレイテッド、ヒューストン、テキサス州)を用いて48時間透析した。凍結乾燥後、GAP酸(357.7mg、0.1589mmol)をDMF(10ml)に溶解した。3−アミノエチルエストラジオール(502.5mg、1.59mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(327.54mg、1.59mmol)および4−N,N−ジメチルアミノピリジン(194mg、1.59mmol)を添加した。この混合物を室温にて2日間撹拌した。高真空下でDMFを蒸発させた後、1N炭酸水素ナトリウム2mlを混合物に添加した。1000の分子量カットオフでこの混合物を48時間透析した。生成物を凍結乾燥させ、秤量したところ508mgであった。GAP−EDLの構造はNMRスペクトルで確認した(図2)。UV分光法により測定したところ、30%のエストラジオールがGAPに共役していた。
【0198】
0.6mlの水中にGAP−EDLの凍結乾燥残渣(5mg)および塩化スズ(II)(SnCl2、100μg、0.53μmol)を含有するバイアルに、99mTc過テクネチウム酸塩(3.5mCi)(シンコー(Syncor) ファーマシューティカル インコーポレイテッド、ヒューストン、テキサス州)を添加した。PD−10カラム(セファデックスG−25、10ml)(シグマ ケミカル カンパニー、セントルイス、ミズーリ州)を用いて生成物を精製し、PBS(5ml)で溶出した。溶離液を1mlずつ試験管に回収した。試験管3〜5に生成物を単離し、収量は3.0mCi(86%)であった。溶離液として1M酢酸アンモニウム:メタノール(4:1)を用い、ラジオ−TLCスキャナ(バイオスキャン、ワシントンDC)により放射化学的純度を評価した。
【0199】
インビトロでの細胞の結合親和性の研究
5つの異なる細胞系をアッセイに用いた。3つは乳癌細胞系(13762NF、MCF7およびT47D)であり、2つは卵巣癌細胞系(シスプラチン感受性および抵抗性)であった。簡単に言えば、20μlのエストロン(54μg/ウェル)またはDMSO(コントロール)および99mTc−GAP−EDL(6μg/ウェル、1μCi/ウェル)で細胞(50000/ウェル)を処理した。0.5〜4時間インキュベートした後、氷冷PBS(1ml)で細胞を2度洗浄し、トリプシンEDTA(0.1ml)を添加した。2分後、PBS(0.4ml)を添加し、細胞を含む全量を試験管に移して活性を測定した。それぞれのデータは、3回の測定の平均を表し、添加された99mTc−GAP−EDLの取り込みの百分率として算出されたものである。
【0200】
99mTc−GAP−EDL(コントロール)と比較すると、エストロンで処理された細胞では取り込みが10〜40%減少していた(図3)。99mTcラベル化GAP−エストラジオール共役体はエストロンまたはジエチルスチルベストロールで阻害されうる(図3および図4)。ER(−)卵巣細胞系を用いた場合には、シスプラチン感受性およびシスプラチン抵抗性の卵巣腫瘍細胞の間で99mTcラベル化エストラジオール取り込みの顕著な差は見られなかった(図5)。これらの知見から、99mTc−GAP−EDLの細胞取り込みはエストロゲン受容体媒介性のプロセスを介するものであることが示唆される。同様の知見は68Ga−GAP−EDLを用いても観察された(図6および図7)。
【0201】
組織分布の研究
12匹のメスのフィッシャー(Fischer)344ラット(150±25g)(ハーラン スプレーグ−ドーリー、インディアナポリス、インディアナ州)(n=3ラット/時点)に、RBA CRL−1747細胞系由来の乳腺腫瘍細胞を接種した(i.m.)。この細胞は、アールBSS(90%)および胎児ウシ血清(10%)を含むイーグルMEM中で培養した。腫瘍細胞(106細胞/ラット)は、後肢中に注射した(i.m.)。研究は、移植から14〜17日後に腫瘍の直径が約1cmの時点で行った。
【0202】
組織分布の研究では、それぞれの動物に99mTc−GAP−EDLまたは99mTc−GAPを注射した(i.v.、10μCi/ラット、10μg/ラット)。0.5〜4時間でラットを屠殺した。選んだ組織を摘出し、秤量し、ガンマカウンター(パッカード インストゥルメンツ、ダウナーズグローブ、イリノイ州)を用いて放射能を計数した。各サンプルでのトレーサの生体内分布を、組織湿重量1gあたりの注射量の百分率(%ID/g)として算出した。
【0203】
インビボ生体内分布の研究によれば、99mTc−GAP−EDLの群では時間の関数として腫瘍対組織および子宮対組織の計数密度比が増加することが示された(図8)。4時間の時点で、99mTc−GAP−EDLの群における腫瘍対組織および子宮対組織の計数密度比は、99mTc−GAPの群よりも有意に高かった(表3および表4)。線量測定を表5に示す。
【0204】
【表3】
【0205】
【表4】
【0206】
【表5】
【0207】
異なる分子量を有するGAP(G)対GAP−DGAC(G−DG)の0.5、2、5および24時間での生体内分布の比較
シンチグラフィ造影の研究
低エネルギー平行コリメータを備えたディジラッド(サンディエゴ、カリフォルニア州)からの2020tc撮像ガンマカメラを用い、シンチグラフィ画像を得た。このカメラの視野は、1.3cmのエッジで20cm×20cmである。固有空間解像度は3mmであり、マトリックスは64×64である。低エネルギーで高解像度のコリメータを設置することで、システムの平面感度が少なくとも125カウント/分(cpm)/μCiおよび7.6mmの空間解像度の平面感度に設計される。
【0208】
99mTc−GAP−EDLおよび99mTc−EDTAそれぞれの静脈注射の0.5〜4.0時間後に、シンチグラフィ画像を得た。腫瘍の99mTc−GAP−EDL取り込みがエストロゲン受容体に関係しているか否かを確認する目的で、阻害実験を行った。それぞれのラットをジエチルスチルベストロールで前処理し(n=3、10mg/kg、iv)、1時間後に99mTc−GAP−EDLを投与し(300μCi/ラット、iv)、0.5〜4.0時間の時点で造影した。コンピュータアウトライン関心領域(ROI)(ピクセルあたりのカウント)を用いて腫瘍対バックグラウンドのカウント密度比を測定した。
【0209】
0.5〜4時間で腫瘍は良好に可視化された(図9)。0.5〜4時間での画像のROI分析によれば、99mTc−GAP−EDLおよび99mTc−EDTAについての腫瘍対筋肉比はそれぞれ1.67〜2.95および1.26〜1.75であることがわかった。阻害実験では、99mTc−GAP−EDLおよび阻害群についての腫瘍対筋肉比はそれぞれ1.98〜2.39および1.21〜1.63であった。ジエチルスチルベストロールで前処理されたラットでは顕著な減少が見られた。この知見から、腫瘍による99mTc−GAP−EDLの取り込みはエストロゲン受容体媒介性のプロセスであることが示唆される。
【0210】
GAP−17−EDLの合成
3位GAP−EDLに加えて、17位のエストラジオールについてもGAPと共役させた。エストロンをNaCNと反応させて、17−EDL−NH2を調製した。次いで、このニトリル類似体をテトラヒドロフラン中でLiAlH4を用いて還元した。GAP(分子量1500〜3000)150mgを、5mlの無水DMFに溶解した。35.4mgのDCCおよび45mgの17−EDL−NH2を添加した。この混合物を室温にて一晩撹拌した。減圧下で溶媒を除去した後、水10mlを添加した。0.8μmメンブランで水層を濾過した。1000の分子量カットオフを有する膜を用いて濾液を透析した。凍結乾燥機で乾燥した後、165mgの白色粉末(GAP−17−EDL、収率85.8%)を得た。合成スキームを図10に示す。17EDL−NH2およびGAP−EDL(17位)のプロトンNMRスペクトルにより、それぞれの構造を確認した。この17位GAP−EDLの細胞取り込みは、3位GAP−EDLに類似している(図11A)。動物の画像を図11Bに示す。
【0211】
実施例2
シクロオキシゲナーゼ−2の特徴づけのための99mTc−GAP−セレブレックス(COXi)
COXi−OEtの合成
381.4mg(1.0mmol)のセレブレックス(BZF、4−[5−(4−メチルフェニル)−3−(トリフルオロメチル)−1−ピラゾール−1−イル]ベンゼンスルホンアミド)および152.4mg(1.0mmol)のDBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン)を、クロロホルム10mlに溶解した。次いで、クロロホルム5ml中の129.1mg(1.0mmol)のエチルイソシアナートアセテートを滴下により添加した。混合物を室温にて3時間撹拌した。減圧下で溶媒を蒸発させて、粗生成物をシリカゲル充填カラム(移動相:クロロホルムとメタノールとの勾配)に流した。次いで、生成物(418.6mg、白色固体)を82%の収率で単離した。GAP−Coxiの合成スキームを図12に示す。BZFおよびCOXi−OEtのプロトンNMRにより、それぞれの構造を確認した(図13)。
【0212】
COXi−NH2の合成
420.7mgのエチレンジアミン(7.0mmol)を、6mlのエタノール中のCOXi−OEt357.mg(0.7mmol)に添加した。この混合物を室温にて16時間撹拌した。次いで溶媒を蒸発させた。この混合物を10mlのクロロホルムに溶解し、7mlのブラインで2回洗浄した。無水硫酸マグネシウムでクロロホルム層を乾燥し、濾過し、蒸発させた。粗生成物の混合物381mg(粗収率103.8%)をシリカゲル充填カラムに流し、クロロホルムおよびメタノールで溶出した。304.7mgのCOXi−NH2(白色固体、収率83%)を得た。プロトンNMRおよび質量分析により、構造を確認した。
【0213】
GAP−COXiの合成
353mgのGAPを、15mlの無水DMFに溶解した。25.0mgのDCC(ジシクロヘキシルカルボイミド)および108mgのCOXi−NH2を添加し、室温にて一晩撹拌した。減圧下で溶媒を蒸発させ、粗生成物を15mlの水に添加した。次いで、0.5N炭酸水素ナトリウムを添加してpHを8に調節した。0.8μmメンブランフィルターでこの混合物を濾過し、透析した(分子量カットオフ<1000のメンブラン)。凍結乾燥機で乾燥したGAP−COXi(378mg、白色粉末、収率82.4%)を得た。GAP−COXiのプロトンNMRデータにより、構造を確認した。
【0214】
組織分布の研究
12匹のメスのフィッシャー344ラット(150±25g)(ハーラン スプレーグ−ドーリー、インディアナポリス、インディアナ州)(n=3ラット/時点)に、RBA CRL−1747細胞系由来の乳腺腫瘍細胞を接種した(i.m.)。この細胞は、アールBSS(90%)および胎児ウシ血清(10%)を含むイーグルMEM中で培養した。腫瘍細胞(106細胞/ラット)は、後肢中に注射した(i.m.)。研究は、移植から14〜17日後に腫瘍の直径が約1cmの時点で行った。
【0215】
組織分布の研究では、それぞれの動物に99mTc−GAP−COXiまたは99mTc−GAPを注射した(i.v.、10μCi/ラット、10μg/ラット)。0.5〜4時間でラットを屠殺した。選んだ組織を摘出し、秤量し、ガンマカウンター(パッカード インストゥルメンツ、ダウナーズグローブ、イリノイ州)を用いて放射能を計数した。各サンプルでのトレーサの生体内分布を、組織湿重量1gあたりの注射量の百分率(%ID/g)として算出した。
【0216】
インビボ生体内分布の研究によれば、99mTc−GAP−COXiの群では、時間の関数として、99mTc−GAPの群よりも高い値まで腫瘍対筋肉(血液)の計数密度比が増加することが示された(表3および表6)。
【0217】
【表6】
【0218】
シンチグラフィ造影およびオートラジオグラフィの研究
99mTc−GAP−COX2i(300μCi/ラット、iv)の静脈注射の0.5〜4.0時間後にシンチグラフィ画像を得て、乳腺腫瘍罹患ラット(RBA CRL−1747細胞系由来)において0.5〜4.0時間の時点で造影した。定量画像分析器(サイクロン ストレージ フォスファー システム、パッカード、メリディアン、コネチカット州)により、全身オートラジオグラムを得た。99mTc−GAP−COX2i(100μCi/ラット、iv)を静脈注射した後、右脚にヒト子宮肉腫をもつ無胸腺ヌードマウスを1時間の時点で屠殺し、カルボキシメチルセルロース(3%)中に体を固定した。凍結させた体を低温保持装置(LKB2250クライオミクロトーム)上に固定し、100μmの冠状切片に切断した。それぞれの切片を融解させ、スライド上に固定した。次いでスライドを多目的フォスファーストレージスクリーン(MP、7001480)と接触するように配置し、16時間曝露させた。腫瘍は0.5〜4時間の時点で良好に可視化された(図14)。同様の知見がオートラジオグラムにおいても観察された。
【0219】
実施例3
トポイソメラーゼの特徴づけのための99mTc−GAP−ドキソルビシン(DOX)
GAP−DOXの合成
112.5mgのGAP(分子量1500〜3000)を、10mlの無水DMFに溶解した。51.6mgのDCC(ジシクロヘキシルカルボイミド)および33.8mgのDOX(塩酸ドキソルビシン)を添加し、室温にて一晩撹拌した。減圧下で溶媒を除去した。次いで、5mlの水および0.7mlの1N水酸化ナトリウムを添加した。水層のpH値は7.0であった。0.8μmメンブランフィルターを用いてこの混合物を濾過し、分子量カットオフ<1000を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機で乾燥した139mgの赤色粉末(GAP−DOX、収率79.1%)を得た。
【0220】
種々のドキソルビシン濃度で485〜490nmでのUVオブザーバンス(observance)から検量線を作成した。GAP−DOXの組成は72%のGAPおよび28%のDOXであった。合成スキームおよびプロトンNMRを図15に示す。
【0221】
インビトロでの細胞結合親和性の研究
2つの異なる細胞系(乳癌細胞系(13762NF)および肺癌細胞系)をアッセイに用いた。簡単に言えば、20μlの99mTc−GAP−DOXまたはGAP(コントロール)(6μg/ウェル、1μCi/ウェル)で細胞(50000/ウェル)を処理した。0.5〜4時間インキュベートした後、氷冷PBS(1ml)で細胞を2度洗浄し、トリプシンEDTA(0.1ml)を添加した。2分後、PBS(0.4ml)を添加し、細胞を含む全量を試験管に移して活性を測定した。それぞれのデータは、3回の測定の平均を表し、添加された99mTc−GAP−DOXの取り込みの百分率として算出されたものである。99mTcでラベル化されたGAPとGAP−DOXとの間で細胞取り込みに顕著な差は見られなかった(図16)。
【0222】
実施例4
解糖の特徴づけのための99mTc−GAP−糖
GAP−DG(単糖)の合成
湿式法:225mgのGAP(塩型、分子量1500〜3000)を、2mlの水に溶解した。65.1mgのS−NHS(1−ヒドロキシ−2,5−ジオキソ−3−ピロリジンスルホン酸一ナトリウム塩水和物)および0.4mlの1N水酸化ナトリウム溶液を、撹拌しながら添加した。21.6mgのDG(塩酸グルコサミン)および57.5mgのEDAC(1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩)を添加し、室温にて一晩撹拌した。0.8μmメンブランフィルターを用いて反応混合物を濾過し、分子量カットオフ<1000を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機で乾燥した215mgの白色粉末(GAP−DG、収率89.2%)を得た。
【0223】
乾式法:225mgのGAP(分子量1500〜3000)を、15mlの無水DMFに溶解した。62mgのDCCおよび21.6mgのDGを添加し、室温にて一晩撹拌した。減圧下で溶媒を除去した後、5mlの水を添加した。0.8μmのメンブランフィルターを用いて水層を濾過し、分子量カットオフ<1000を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機で乾燥した195mgの白色粉末(GAP−DG、収率80.9%)を得た。GAP−DGの合成スキームおよびプロトンNMRデータを図17に示す。
【0224】
GAP−GAL(単糖)の合成
湿式法:225mgのGAP(塩型、分子量1500〜3000)を、2mlの水に溶解した。65.1mgのS−NHS(1−ヒドロキシ−2,5−ジオキソ−3−ピロリジンスルホン酸一ナトリウム塩水和物)および0.4mlの1N水酸化ナトリウム溶液を、撹拌しながら添加した。21.6mgのGAL(塩酸ガラクトサミン)および57.5mgのEDAC(1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩)を添加し、室温にて一晩撹拌した。0.8μmメンブランフィルターを用いて反応混合物を濾過し、分子量カットオフ<1000を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機で乾燥した165.7mgの白色粉末(GAP−GAL、収率68.7%)を得た。
【0225】
乾式法:225mgのGAP(分子量1500〜3000)を、15mlの無水DMF中に入れた。68.9mgのDCCおよび60mgのGALを添加し、室温にて一晩撹拌した。減圧下で溶媒を除去した後、10mlの水を添加した。0.8μmのメンブランフィルターを用いて水層を濾過し、分子量カットオフ<1000を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機で乾燥した174.6mgの白色粉末(GAP−GAL、収率71.3%)を得た。GAP−GALの合成スキームおよびプロトンNMRデータを図18に示す。
【0226】
GAP−DGAc(単糖)の合成
乾式法:100mgのGAP(酸型、分子量750〜3000)を1.2mlの無水DMFおよび1mlのDMSO中に入れた。65.6mgのDCC、43.9mgのDMAPおよび101.2mgのテトラ−O−アセチル−β−D−マンノピラノース(0.29mmol)を添加し、室温にて一晩撹拌した。減圧下で溶媒を除去した後に5mlのNaHCO3(1N)を添加した。0.8μmのメンブランフィルターを用いてこの混合物を濾過し、分子量カットオフ<500を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機で乾燥した297.6mgの白色粉末(GAP−DGAc、塩型)を得た。分子量の異なるGAP−DGAxを用いた場合の構造、インビトロでの細胞取り込み、およびインビボでの生体内分布(表7〜12)および画像研究を図19〜24に示す。
【0227】
【表7】
【0228】
【表8】
【0229】
【表9】
【0230】
【表10】
【0231】
【表11】
【0232】
【表12】
【0233】
【表13】
【0234】
GAP−LAS(二糖)の合成
LAS−NH2の調製:ピアース ケミカル カンパニーから購入したLAS−NHS(スベリン酸モノ(ラクトシルアミノ)モノ(スクシンイミジル))100mgを、生理食塩水0.6ml中に溶解した。101.1mgのエチレンジアミンを添加し、室温にて一晩撹拌した。0.8μmのメンブランフィルターを用いてこの反応混合物を濾過し、分子量カットオフ<500を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機で乾燥した71.9mgの白色粉末(LAS−NH2、収率79.3%)を得た。
【0235】
GAP−LASの合成:23.1mgのDCCおよび50.3mgのLAS−NH2を、室温にて一晩撹拌しながら15mlの無水DMF中のGAP(分子量1500〜3000)の溶液に添加した。0.8μmのメンブランフィルターを用いて水層を濾過し、分子量カットオフ<1000を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機で乾燥した197.6mgの白色粉末(GAP−LAS、収率91.4%)を得た。LAS−NH2およびGAP−LASの合成スキームを図25に示す。プロトンNMRデータにより、構造を確認した。
【0236】
GAP−HCD(多糖)の合成
乾式法:203mgのGAP(酸型、分子量750〜3000)を、7mlのDMSO中に入れた。73.5mgのDCC、39.2mgのDMAPおよび419.8mgのヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(0.29mmol)を添加し、室温にて一晩撹拌した。減圧下で溶媒を除去した後、5mlのNaHCO3(1N)を添加した。0.8μmのメンブランフィルターを用いてこの混合物を濾過し、分子量カットオフ1000を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機で乾燥した197.1mgの白色粉末(GAP−HCD、塩型)を得た。
【0237】
インビトロでの細胞取り込みの研究
2つの異なる細胞系をアッセイに用いた。それらは乳癌細胞系(13762NF)および卵巣癌細胞系(シスプラチンに対して感受性または抵抗性)であった。簡単に言えば、20μlの99mTc−GAP−糖(GAL、LASもしくはHCD)またはGAP(コントロール)(100μg/ウェル、1〜2μCi/ウェル)で細胞(50000/ウェル)を処理した。0.5〜4時間インキュベートした後、氷冷PBS(1ml)で細胞を2度洗浄し、トリプシンEDTA(0.1ml)を添加した。2分後、PBS(0.4ml)を添加し、細胞を含む全量を試験管に移して活性を測定した。それぞれのデータは、3回の測定の平均を表し、添加された99mTc−GAPの取り込みの百分率として算出されたものである。99mTc−GAP−GALの群では高い取り込みが見られた(図26)が、99mTcでラベル化されたGAPとGAP−LASとの間では細胞取り込みの顕著な差が見られなかった(図27および図28)。GAP−HCDの取り込みはFDGよりも高かった(図29)。
【0238】
組織分布の研究
12匹のメスのフィッシャー344ラット(150±25g)(n=3ラット/時点)に、RBA CRL−1747細胞系由来の乳腺腫瘍細胞を接種した(i.m.)。この細胞は、アールBSS(90%)および胎児ウシ血清(10%)を含むイーグルMEM中で培養した。腫瘍細胞(106細胞/ラット)は、後肢中に注射した(i.m.)。研究は、移植から14〜17日後に腫瘍の直径が約1cmの時点で行った。
【0239】
組織分布の研究では、それぞれの動物に99mTc−GAP−LASまたは99mTc−GAPを注射した(i.v.、10μCi/ラット、10μg/ラット)。0.5〜4時間でラットを屠殺した。選んだ組織を摘出し、秤量し、ガンマカウンター(パッカード インストゥルメンツ、ダウナーズグローブ、イリノイ州)を用いて放射能を計数した。各サンプルでのトレーサの生体内分布を、組織湿重量1gあたりの注射量の百分率(%ID/g)として算出した。
【0240】
インビボ生体内分布の研究によれば、99mTc−GAP−LASの群における腫瘍対筋肉(血液)の計数密度比は99mTc−GAPの群と類似していることが示された(表3および表13、図30および図31)。この知見は、異なるタイプの糖についてのさらなる評価を提案している。
【0241】
【表14】
【0242】
シンチグラフィ造影およびオートラジオグラフィの研究
99mTc−GAP−LASまたはGAP−HCD(300μCi/ラット、iv)の静脈注射の0.5〜4.0時間後にシンチグラフィ画像を得て、乳腺腫瘍罹患ラット(RBA CRL−1747細胞系由来)において0.5〜4.0時間の時点で造影した。定量画像分析器(サイクロン ストレージ フォスファー システム、パッカード、メリディアン、コネチカット州)により、全身オートラジオグラムを得た。99mTc−GAP−LASまたはGAP−LAS(100μCi/ラット、iv)を静脈注射した後、右脚にヒト子宮肉腫をもつ無胸腺ヌードマウスを1時間の時点で屠殺し、カルボキシメチルセルロース(3%)中に体を固定した。凍結させた体を低温保持装置(LKB2250クライオミクロトーム)上に固定し、100μmの冠状切片に切断した。それぞれの切片を融解させ、スライド上に固定した。次いでスライドを多目的フォスファーストレージスクリーン(MP、7001480)と接触するように配置し、16時間曝露させた。99mTc−GAP−LASおよびGAP−HCDの双方の群において、腫瘍は0.5〜4時間の時点で良好に可視化された。オートラジオグラムにおいても、単糖および二糖の双方が類似の結果を示した。
【0243】
実施例5
葉酸受容体の特徴づけのための99mTc−GAP−葉酸(FOL)
GAP−FOLの合成
200mgのGAP(分子量1500〜3000)を、10mlの無水DMFに溶解した。128mgのDCCおよび60mgのFOL−NH2(Ilgan et al., 1998a)を添加し、室温にて一晩撹拌した。減圧下で溶媒を除去した後、15mlの水を添加した。0.8μmのメンブランフィルターを用いて水層を濾過し、分子量カットオフ<1000を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機で乾燥した207mgの黄色粉末(GAP−FOL)を得た。この合成スキームを図32に示す。プロトンNMRにより、構造を確認した。
【0244】
実施例6
低酸素症の特徴づけのための99mTc−GAP−メトロニダゾール(MN)
GAP−MNの合成
10mlの無水DMFおよび70.4mgのDCC中のGAP(分子量1500〜3000)150mgの溶液に、70.4mgのMN(1−(2−アミノエチル)−2−メチル−5−ニトロイミダゾール二塩酸塩一水和物)を添加し、1N水酸化ナトリウム溶液を室温にて撹拌しながら添加した。減圧下で溶媒を除去した後に0.8μmのメンブランフィルターを用いて水層を濾過し、分子量カットオフ<1000を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機を用いて乾燥された130.6mgの茶色粉末(GAP−MN、収率64.5%)を得た。合成スキームを図33に示す。プロトンNMRにより、構造を確認した。
【0245】
オートラジオグラフィの研究
定量画像分析器(サイクロン ストレージ フォスファー システム、パッカード、メリディアン、コネチカット州)により、全身オートラジオグラムを得た。99mTc−GAP−MNまたはGAP(100μCi/ラット、iv)を静脈注射した後、右脚にヒト子宮肉腫をもつ無胸腺ヌードマウスを1時間の時点で屠殺し、カルボキシメチルセルロース(3%)中に体を固定した。凍結させた体を低温保持装置(LKB2250クライオミクロトーム)上に固定し、100μmの冠状切片に切断した。それぞれの切片を融解させ、スライド上に固定した。次いでスライドを多目的フォスファーストレージスクリーン(MP、7001480)と接触するように配置し、16時間曝露させた。99mTc−GAP−MNの群について、腫瘍は0.5〜4時間の時点で良好に可視化された。
【0246】
実施例7
抗葉酸の特徴づけのための99mTc−GAP−メトトレキサート(MTX)
GAP−MTXの合成
10mlの無水DMFおよび93mgのDCC中のGAP(分子量1500〜3000)150mgの溶液に、45mgのMTXNH2(Ilgan et al., 1998b)を添加し、室温にて一晩撹拌した。減圧下で溶媒を除去した後に、水10mlおよび1N水酸化ナトリウム溶液1mlの溶液を添加した。0.8μmのメンブランフィルターを用いて水層を濾過し、分子量カットオフ<1000を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機を用いて乾燥された139.8mgの黄色粉末(GAP−MTX、収率72.3%)を得た。合成スキームを図34に示す。プロトンNMRにより、構造を確認した。
【0247】
インビトロでの細胞取り込みの研究
乳癌細胞系(13762NF)をアッセイに用いた。簡単に言えば、20μlの99mTc−GAP−MTXまたはGAP(コントロール)(100μg/ウェル、1〜2μCi/ウェル)で細胞(50000/ウェル)を処理した。0.5〜4時間インキュベートした後、氷冷PBS(1ml)で細胞を2度洗浄し、トリプシンEDTA(0.1ml)を添加した。2分後、PBS(0.4ml)を添加し、細胞を含む全量を試験管に移して活性を測定した。それぞれのデータは、3回の測定の平均を表し、添加された99mTc−GAPの取り込みの百分率として算出されたものである。99mTc−GAP−MTXの群では99mTc−GAPの群よりも高い取り込みが見られた(図16)。
【0248】
実施例8
脂質代謝造影のための99mTc−GAP−リノレン酸およびトリメチルリジン
リノレン酸−NH2の調製
10mlのクロロホルム中のリノレン酸1.2ml(4mmol)、DCC(1.65g、8mmol)、NHS(1.224g、8mmol)およびDMAP(0.325g、4mmol)中に、793.3mgのエチレンジアミン(13.2mmol)を添加した。この混合物を室温にて16時間撹拌した。次いで溶媒を蒸発させた。この混合物を10mlのクロロホルムに溶解し、7mlのブラインを用いて2回洗浄した。無水硫酸マグネシウムを用いてクロロホルム層を乾燥し、濾過し、蒸発させた。粗生成物を秤量したところ、2.57g(粗収率100%)であった。この生成物をさらに精製することなく共役に用いた。
【0249】
GAP−リノレン酸の合成
15mlの無水DMF中の300mgのGAP(分子量1500〜3000、0.133mmol)の溶液に、275mgのDCC(1.33mmol)および85mgのリノレン酸−NH2(0.133mmol)を添加した。この混合物を室温にて一晩撹拌した。溶媒を真空下で蒸発させた。得られた混合物にNaOH(0.5N)を添加し、pHを9〜10に調整した。0.8μmのメンブランフィルターを用いてこの溶液を濾過し、分子量カットオフ<1000を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機で乾燥された317.5mgの白色粉末(GAP−リノレン酸)を得た。
【0250】
GAP−トリメチルリジン(TML)の合成
5mlの無水DMF中の83mgのGAP(分子量2250、0.036mmol)の溶液に、32.6mgのDCC(0.158mmol)、19.03mgのDMAP(0.156mmol)および25mgのTML(0.132mmol)を添加した。この混合物を室温にて一晩撹拌した。溶媒を真空下で蒸発させた。得られた混合物にNaHCO3(0.5ml、1N)を添加し、pHを8に調整した。0.8μmのメンブランフィルターを用いてこの溶液を濾過し、分子量カットオフ<1000を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機で乾燥された89.8mgの白色粉末(GAP−TML、収率84%)を得た。ラットにおいて腫瘍は良好に可視化された(図35〜図36)。
【0251】
実施例9
増殖の特徴づけのための99mTc−GAP−アデノシン(ADN)
GAP−ADNの合成
15mlの無水DMFに、330.8mgのGAP(分子量1500〜3000)を溶解した。60.7mgのDCC(ジシクロヘキシルカルボイミド)および43.3mgの3’−アミノ−3’−デオキシ−N6,N6−ジメチルアデノシン(ADN)を添加し、混合物を室温にて一晩撹拌した。減圧下で溶媒を除去した後、10mlの水を添加した。0.8μmのメンブランフィルターを用いてこの混合物を濾過し、分子量カットオフ<1000を有するメンブランを用いて透析した。凍結乾燥機で乾燥された290mgの白色粉末(GAP−ADN、収率78.1%)を得た。合成スキームを図37に示す。プロトンNMRにより、構造を確認した。ラットにおいて腫瘍は良好に可視化された。
【0252】
本明細書において開示され、特許請求されている全ての組成物および方法は、現存する開示を踏まえれば過度の実験なしに実施されうる。本発明の組成物および方法については好ましい実施形態という観点から記載されているが、本発明の概念、思想および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の組成物および方法や、方法の複数の工程または一連の工程に改変がなされうることは当業者にとって自明であろう。より詳細には、化学的にも生理的にも関連した特定の剤によって本明細書に記載の剤が置き換えられ、これにより同一または類似の結果を達成してもよいことは自明であろう。当業者にとって自明のこれら全ての置換や修飾は、添付の特許請求の範囲によって規定されるように、本発明の思想、範囲および概念に含まれるものとする。
【0253】
参考文献
以下の参考文献は、本明細書の記載を補充するための例示的な手法または他の詳細を提供する限りにおいて、参照により本明細書に引用される。
【0254】
米国特許第6,692,724号
米国特許出願第09/599,152号
米国特許出願第10/627,763号
米国特許出願第10/672,142号
米国特許出願第10/703,405号
米国特許出願第10/732,919号
Alauddin and Conti, Nucl. Med. Biol., 25(3):175−180 1998.
Alauddin et al., Nucl. Med. Biol., 23:787−792, 1996.
Alauddin et al., Nucl. Med. Biol., 26:371−376, 1999.
Alberico et al., Surg. Oncol. Clin. N. Am., 13(1):13−35, 2004.
Bird et al., Science, 242:423−426, 1988.
Bolhuis et al., Int. J. Cancer Suppl., 7:78−81, 1992.
Bush et al., Br. J. Cancer Suppl., 37(3):302−306, 1978.
Campbell et al., Cancer Res., 51(19):5329−5338 1991.
Canevari et al., Hybridoma., 12(5):501−507, 1993.
Chasselle et al, Lancet, 34B:143, 1995.
Chaudhary et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87(3):1066−1070, 1990.
Chenu et al. Bone, 22(4):295−299, 1998.
Coney et al., Cancer Res., 54(9):2448−2455, 1994.
Dische, Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys., 20(1):147−152, 1991.
Franklin et al., Int. J. Cancer Suppl., 8:89−95, 1994.
Gambhir et al., J. Nucl. Med., 39(11):2003−2011, 1998.
Gambhir et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96(5):2333−2338, 1999.
Gambhir et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97:2785−2790, 2000.
Gatenby et al., Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys., 14(5):831−838, 1988.
Gelbard et al., J. Nucl. Med., 20(7):782−784, 1979.
Ginobbi et al., Anticancer Res., 17(1A):29−35, 1997.
Gray et al., Nature, 182(4640):952−953, 1958.
Hall et al., Radiat. Res., 114(3):415−424 1988.
Henson et al., AJNR Am. J. Neuroradiol., 25(6):969−972, 2004.
Holm, et al., APMIS, 102(11):828−836, 1994.
Hsueh and Dolnick, Biochem. Pharmacol., 45(12):2537−2545, 1993.
Huston et al., Biochemistry, 27(25):8945−8952, 1988.
Ilgan et al., Cancer Biother. Radiopharm., 13(3):177−184, 1998b.
Ilgan et al., Cancer Biother. Radiopharm., 13(6):427−435, 1998a.
Iyer et al., J. Nucl. Med., 42(1):96−105, 2001.
Koh et al., Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys., 22:199 212, 1992.
Kranz et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA, 92(20):9057−9061, 1995.
Laverman et al., Eur. J. Nucl. Med. Mol. Imaging, 29(5):681−690, 2002.
Leamon and Low, Biochem. J., 291 ( Pt 3):855−860, 1993.
Leamon and Low, J. Biol. Chem., 267(35):24966−24971, 1992.
Leamon and Low, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88(13):5572−5576 1991.
Lee and Low, J. Biol. Chem., 269(5):3198−3204, 1994.
Martin et al., J. Nucl. Med., 30:194 201, 1989.
Medical Letter Handbook of Adverse Drug Interactions, 199
Medical Letter, 34:78, 1992
Namavari et al., Nucl. Med. Biol., 27(2):157−162, 2000.
Nordsmark et al., Radiother. Oncol., 41(1):31−39, 1996.
Patrick et al., J. Neurooncol., 32(2):111−123, 1997.
Rasey et al., Int. J. Radiat. Oncol. Biol. Phys., 17(5):985−991 1989.
Rasey et al., Radiother. Oncol., 17(2):167−173, 1990.
Reed, Cancer Cell, 3:17−22, 2003.
Reiman et al., J. Nucl. Med., 23(8):682−687, 1982.
Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1289−1329, 1990.
Ross et al., Cancer, 73(9):2432−2443, 1994.
Saha et al., Semin. Nucl. Med., 24(4):324−349 ,1994.
Senner et al., J. Natl. Cancer Inst., 88:140, 1994.
Sordillo et al., Am. J. Clin. Oncol., 5(3):285−289, 1982.
Strunk and Schild, Eur. Radiol., 14(6):1055−1062, 2004.
Tjuvajev et al., J. Nucl. Med., 43(8):1072−1083, 2002.
Vaalburg et al., Int. J. Rad. Appl. Instrum. B, 19(2):227−237, 1992.
Valk et al., J. Nucl. Med., 33(12):2133−2137, 1992.
Warrell, Jr et al, N. Engl. J. Med., 329(3):177−189, 1993.
Weitman et al., Cancer Res., 52(12):3396−3401 1992b.
Weitman et al., Cancer Res., 52(23):6708−6711, 1992a.
Weitman et al., J Neurooncol., 21(2):107−112, 1994.
Westerhof et al., Cancer Res., 51(20):5507−5513, 1991.
Yaghoubi et al., J. Nucl. Med., 42:1225−1234, 2001.
【図面の簡単な説明】
【0255】
【図1】GAP−3−EDLの合成スキーム。
【図2】GAP−EDLの1H−NMR。
【図3】乳癌細胞における細胞取り込み(RBA CRL−1747、4μCi/500000細胞/ウェル)。
【図4】ヒト乳癌細胞における3時間での細胞取り込み(4μCi/200000/ウェル)。
【図5】ヒト卵巣癌細胞における3時間での細胞取り込み(4μCi/50000/ウェル)。
【図6】100000個のラット乳腺腫瘍細胞を、68Ga−GAP−EDLとともに30〜240分間インキュベートした。68Ga−GAPと比較して、68Ga−GAP−EDL群では高い取り込みを示した(*p<0.005、**p<0.0005)。
【図7】100000個のラット乳腺腫瘍細胞を、68Ga−GAP−EDL(0.1mg/ウェル)とともに、ラベル化されていないエストロンの存在下でインキュベートした。90分間インキュベート時に細胞を回収した。結果は、コントロール群を基準とした%取り込みを示す。コントロール群と比較して、*p<0.005。エストロン処理した細胞では取り込みが減少しており、この細胞取り込みはER媒介性プロセスであることが示唆される。
【図8】乳癌腫瘍罹患ラットにおける99mTc−GAP−EDL計数密度比。99mTc−GAP−EDLのインビボ腫瘍(子宮)対組織の計数密度比。
【図9A】99mTc−GAP−EDLおよび99mTc−DTPA投与後の乳癌腫瘍罹患ラットの平面造影により、腫瘍は注射後0.5〜4時間で可視化されうることが示された。
【図9B】注射後55分での選択的造影。
【図10】GAP−EDLの合成(17位)。
【図11A】乳癌細胞における細胞取り込み(RBA CRL−1747、4μCi/ウェル)。
【図11B】300μCi/ラットを静注後の乳房腫瘍細胞系罹患ラットにおけるTc−99m−GAPおよびTc−99m−GAP−エストラジオール17の30、60、120および180分での平面シンチグラフィのカウントは500000であり、腫瘍対筋肉の可視化を比較した。
【図12】GAP−COXiの合成スキーム。
【図13】GAP−COXiのプロトンNMR。
【図14】99mTc−GAP−COX−2(COX2阻害剤)の放射性映像。シスプラチン処理(4mg/kg、静注)の前後に、99mTc−GAP−COX−2(300μCi、静注)を用いて乳房腫瘍罹患ラットを造影した。99mTc−GAP−COX−2の選択的平面画像が、注射後0.5〜2時間で得られた。
【図15】GAP−DOXの合成。
【図16】99mTcGAP剤の細胞取り込み。乳癌細胞における細胞取り込み(RBA CRL−1747、4μCi/50000細胞/ウェル)。
【図17】GAP−DGの合成。
【図18】GAP−GALの合成。
【図19】乳癌細胞における細胞取り込み(RBA CRL−1747、4μCi/ウェル)。
【図20】乳房腫瘍罹患ラットにおける99mTc−GAP−DGACの取り込み(n=3、27.5μCi/ラット、静注)。
【図21】乳房腫瘍罹患ラットにおける99mTc−GAP−DGACの腫瘍対組織の計数密度比。
【図22】乳房腫瘍罹患ラットにおける99mTc−GAP−DGACの腫瘍対血液および腫瘍対筋肉の計数密度比。
【図23】ウサギにおける99mTc−GAP−DGACの造影。VX2−腫瘍罹患ウサギ(1mCi/ウサギ、静注)における99mTc−GAP−DGACの平面シンチグラフィにより、腫瘍が良好に可視化されうることが示された。腫瘍対非腫瘍比を示す。T=腫瘍。
【図24】ウサギにおける99mTc−GAP−DGACXの造影。VX2−腫瘍罹患ウサギ(1mCi/ウサギ、静注)における99mTc−GAP−DGACの平面シンチグラフィにより、腫瘍が良好に可視化されうることが示された。腫瘍対非腫瘍比を示す。T=腫瘍。
【図25】GAP−LASの合成スキーム。
【図26】ヒト卵巣癌細胞における細胞取り込み(6μCi/60000/ウェル)。
【図27】乳癌細胞における細胞取り込み(RBA CRL−1747、3μCi/50000細胞/ウェル)。
【図28】ヒト卵巣癌細胞における2時間での細胞取り込み(3μCi/60000/ウェル)。
【図29】ヒトシスプラチン抵抗性卵巣癌細胞における細胞取り込み(2.4μCi/ウェル)。
【図30】乳房腫瘍罹患ラットにおける化合物の腫瘍/血液比(n=3/時間間隔、20μCi/ラット、静注)。
【図31】乳房腫瘍罹患ラットにおける腫瘍対筋肉比(n=3/時間間隔、20μCi/ラット、静注)。
【図32】GAP−FOLの合成。
【図33】GAP−MNの合成。
【図34】GAP−MTXの合成。
【図35】腫瘍罹患ラットにおける99mTc−GAP−TMLの30、60、120、および180分での造影。300μCi/ラットを静注後の乳房腫瘍細胞系罹患ラットにおけるTc−99m−GAP−TLMの30、60、120分での平面シンチグラフィのカウントは500000であり、腫瘍対筋肉および心臓対筋肉の可視化を示した。
【図36】乳腺腫瘍罹患ラットにおける、99mTc−GAP、99mTc−GAP−アデノシン、99mTc−GAP−EDL17、および99mTc−GAP−TML化合物の腫瘍対筋肉の計数密度比。
【図37】GAP−ADNの合成。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を配列中に含むポリペプチドと、
b)2つの連続した前記アミノ酸の少なくとも1つに非共有結合的に結合した1以上の原子価金属イオンと、
を含む組成物。
【請求項2】
2以上の連続した前記アミノ酸が、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩類似体、グルタミン酸塩類似体、システイン、リジン、アルギニン、グルタミン、アスパラギン、グリシン、オルニチン、および2以上のカルボキシル基を有する天然由来でないアミノ酸からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
2以上の連続した前記アミノ酸がグルタミン酸塩残基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
2以上の連続した前記アミノ酸がアスパラギン酸塩残基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリペプチドが、少なくとも2個の連続したグルタミン酸塩残基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリペプチドが、少なくとも5個の連続したグルタミン酸塩残基を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、少なくとも10個の連続したグルタミン酸塩残基を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリペプチドが、少なくとも20個の連続したグルタミン酸塩残基を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリペプチドが、少なくとも50個の連続したグルタミン酸塩残基を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリペプチドが、300〜30000の分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリペプチドが、750〜9000の分子量を有する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリペプチドが、少なくとも2個の連続したアスパラギン酸塩残基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリペプチドが、少なくとも5個の連続したアスパラギン酸塩残基を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリペプチドが、少なくとも10個の連続したアスパラギン酸塩残基を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記ポリペプチドが、少なくとも20個の連続したアスパラギン酸塩残基を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリペプチドが、少なくとも50個の連続したアスパラギン酸塩残基を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記ポリペプチドが、300〜30000の分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記ポリペプチドが、750〜9000の分子量を有する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記ポリペプチドが、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩類似体またはアスパラギン酸塩類似体のカルボキシル部位への配位によって3〜5個の原子価金属イオンをキレートすることができる、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記原子価金属イオンが放射性核種である、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記原子価金属イオンが、Tc−99m、Cu−60、Cu−61、Cu−62、Cu−67、In−111、Tl−201、Ga−67、Ga−68、As−72、Re−186、Re−188、Ho−166、Y−90、Sm−153、Sr−89、Gd−157、Bi−212、Bi−213、Fe−56、Mn−55、Lu−177、原子価鉄イオン、原子価マンガンイオン、原子価コバルトイオン、原子価白金イオン、および原子価ロジウムイオンからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記原子価金属イオンがTc−99mである、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記原子価金属イオンがRe−188である、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
前記原子価金属イオンがGa−68である、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
前記ポリペプチドに結合した第2の部位を含むものとしてさらに規定される、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
前記第2の部位が、アミド結合またはエステル結合により前記ポリペプチドのカルボキシル部位に結合している、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記第2の部位が、組織標的部位、診断用部位または治療用部位である、請求項25に記載の組成物。
【請求項28】
前記組織標的部位が標的リガンドである、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記標的リガンドが、疾患細胞周期標的化合物、代謝拮抗物質、生体還元剤、シグナル伝達性治療剤、細胞周期に特異的な剤、腫瘍血管新生標的リガンド、腫瘍アポトーシス標的リガンド、疾患受容体標的リガンド、薬剤ベースのリガンド、抗微生物剤、腫瘍低酸素症標的リガンド、グルコース模倣体、アミフォスチン、アンギオスタチン、EGF受容体リガンド、モノクローナル抗体C225、モノクローナル抗体CD31、モノクローナル抗体CD40、カペシタビン、COX−2阻害剤、デオキシシチジン、フラーレン、ハーセプチン、ヒト血清アルブミン、ラクトース、黄体形成ホルモン、ピリドキサール、キナゾリン、サリドマイド、トランスフェリン、またはトリメチルリジンである、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記ポリペプチドが5〜60個の連続するグルタミン酸塩残基を含み、前記標的リガンドがエストラジオール、ガラクトース、ラクトース、シクロデキストリン、コルヒチン、メトトレキサート、パクリタキセル、ドキソルビシン、セレブレックス、メトロニダゾール、アデノシン、ペンシクロビル、カルネチン、エストラジオール(3位)、エストラジオール(17位)、リノレン酸、グルコサミン、マンノース四酢酸、または葉酸塩であり、前記原子価金属イオンがTc−99mである、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記診断用部位が造影部位である、請求項27に記載の組成物。
【請求項32】
前記造影部位が造影剤である、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記造影剤が、CT造影剤、MRI造影剤、光学造影剤、および超音波造影剤からなる群から選択される、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記造影剤がCT造影剤である、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記CT造影剤が、イオタラム酸塩、イオヘキソール、ジアトリゾエート、イオパミドール、エチオドール、およびイオパノエートからなる群から選択される、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記造影剤がMRI造影剤である、請求項33に記載の組成物。
【請求項37】
前記MRI造影剤が、ガドリニウムキレート、マンガンキレート、クロムキレート、および鉄粒子からなる群から選択される、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記MRI造影剤が、Gd−DOTA、Mn−DPDP、またはCr−DEHIDAである、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記造影剤が光学造影剤である、請求項33に記載の組成物。
【請求項40】
前記光学造影剤が、フルオレセイン、フルオレセイン誘導体、インドシアニングリーン、オレゴングリーン、オレゴングリーン誘導体の誘導体、ローダミングリーン、ローダミングリーン誘導体、エオジン、エリスロシン、テキサスレッド、テキサスレッド誘導体、マラカイトグリーン、ナノゴールドスルホコハク酸イミドエステル、カスケードブルー、クマリン誘導体、ナフタレン、ピリジルオキサゾール誘導体、カスケードイエロー染料、およびダポキシル染料からなる群から選択される、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
前記造影剤が超音波造影剤が超音波過フッ素化造影剤である、請求項33に記載の組成物。
【請求項42】
前記超音波過フッ素化造影剤が、過フッ素化物または過フッ素化物類似体からなる群から選択される、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記第2の部位が治療用部位である、請求項27に記載の組成物。
【請求項44】
前記治療用部位が抗癌部位である、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
前記抗癌部位が、治療用放射性金属物質をキレート可能なキレート剤、メトトレキサート、エピポドフィロトキシン、ビンクリスチン、ドセタキセル、パクリタキセル、ダウノマイシン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、トポテカン、ブレオマイシン、ゲムシタビン、フルダラビンおよび5−FUDRからなる群から選択される、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
前記抗癌部位がメトトレキサートである、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
前記抗癌部位が、Re−188、Re−186、Ho−166、Y−90、Sr−89、Sm−153からなる群から選択される治療用放射性金属物質である、請求項44に記載の組成物。
【請求項48】
前記抗癌部位が、ヒ素、コバルト、銅、セレン、タリウムおよび白金からなる群から選択される治療用金属をキレート可能な物質である、請求項44に記載の組成物。
【請求項49】
前記ポリペプチドに非共有結合的に結合する前記原子価金属イオンが、PETまたはSPECTを用いて造影可能である、請求項1に記載の組成物。
【請求項50】
a)配列中に組織標的アミノ酸配列、診断用アミノ酸配列、および/または治療用アミノ酸配列を含むポリペプチドと、
b)前記ポリペプチドのアミノ酸残基に結合した原子価金属イオンと、
を含む組成物。
【請求項51】
前記ポリペプチドが、2以上の連続したグルタミン酸塩残基を含む、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
前記ポリペプチドが、2以上の連続したアスパラギン酸塩残基を含む、請求項50に記載の組成物。
【請求項53】
前記ポリペプチドが、5〜60個の連続したグルタミン酸塩残基を含む、請求項50に記載の組成物。
【請求項54】
前記ポリペプチドが、5〜60個の連続したアスパラギン酸塩残基を含む、請求項50に記載の組成物。
【請求項55】
前記原子価金属イオンが放射性核種である、請求項50に記載の組成物。
【請求項56】
前記原子価金属イオンが、Tc−99m、Cu−60、Cu−61、Cu−62、Cu−67、In−111、Tl−201、Ga−67、Ga−68、As−72、Re−186、Re−188、Ho−166、Y−90、Sm−153、Sr−89、Gd−157、Bi−212、Bi−213、原子価鉄イオン、原子価マンガンイオン、原子価コバルトイオン、原子価白金イオン、または原子価ロジウムイオンからなる群から選択される、請求項50に記載の組成物。
【請求項57】
前記原子価金属イオンがTc−99mである、請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
前記組織標的アミノ酸配列が標的リガンドである、請求項50に記載の組成物。
【請求項59】
前記標的リガンドが、疾患細胞周期標的化合物、代謝拮抗物質、生体還元剤、シグナル伝達性治療剤、細胞周期に特異的な剤、腫瘍血管新生標的リガンド、腫瘍アポトーシス標的リガンド、疾患受容体標的リガンド、薬剤ベースのリガンド、抗微生物剤、腫瘍低酸素症標的リガンド、グルコース模倣体、アミフォスチン、アンギオスタチン、EGF受容体リガンド、モノクローナル抗体C225、モノクローナル抗体CD31、モノクローナル抗体CD40、カペシタビン、COX−2阻害剤、デオキシシチジン、フラーレン、ハーセプチン、ヒト血清アルブミン、ラクトース、黄体形成ホルモン、ピリドキサール、キナゾリン、サリドマイド、トランスフェリン、またはトリメチルリジンである、請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
前記診断用アミノ酸配列が造影アミノ酸配列である、請求項50に記載の組成物。
【請求項61】
前記造影アミノ酸配列が、CT造影剤、MRI造影剤、および光学造影剤、および超音波造影剤からなる群から選択される造影剤である、請求項60に記載の組成物。
【請求項62】
前記治療用アミノ酸配列が抗癌アミノ酸配列である、請求項50に記載の組成物。
【請求項63】
前記抗癌アミノ酸配列が、ヒ素、コバルト、銅、セレン、タリウムおよび白金からなる群から選択される治療用金属をキレート可能である、請求項62に記載の組成物。
【請求項64】
a)原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を配列中に含むポリペプチドを得ること;および、
b)前記ポリペプチドを1以上の原子価金属イオンおよび還元剤と混合して、原子価金属イオンでラベル化されたポリペプチドを得ること、を含み、
この際、1以上の原子価金属イオンが、2つの連続したアミノ酸の少なくとも1つに非共有結合的に結合している、造影剤の合成方法。
【請求項65】
前記還元剤が亜ジチオン酸イオン、第一スズイオン、または第一鉄イオンである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記ポリペプチドが、5〜60個の連続したグルタミン酸塩残基を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記ポリペプチドが、5〜60個の連続したアスパラギン酸塩残基を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項68】
前記ポリペプチドが、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、またはこれらの類似体のカルボキシル部位への配位によって3〜5個の原子価金属イオンをキレートすることができる、請求項64に記載の方法。
【請求項69】
前記原子価金属イオンが、Tc−99m、Cu−60、Cu−61、Cu−62、Cu−67、In−111、Tl−201、Ga−67、Ga−68、As−72、Re−186、Re−188、Ho−166、Y−90、Sm−153、Sr−89、Gd−157、Bi−212、Bi−213、原子価鉄イオン、原子価マンガンイオン、原子価コバルトイオン、原子価白金イオン、または原子価ロジウムイオンからなる群から選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項70】
前記金属イオンがTc−99mである、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記ポリペプチドが、当該ポリペプチドに結合した第2の部位を含むものとしてさらに規定される、請求項64に記載の方法。
【請求項72】
前記第2の部位が、アミド結合またはエステル結合で前記ポリペプチドのカルボキシル部位に結合している、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記第2の部位が、組織標的部位、診断用部位、または治療用部位である、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記組織標的部位が標的リガンドである、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記標的リガンドが、疾患細胞周期標的化合物、代謝拮抗物質、生体還元剤、シグナル伝達性治療剤、細胞周期に特異的な剤、腫瘍血管新生標的リガンド、腫瘍アポトーシス標的リガンド、疾患受容体標的リガンド、薬剤ベースのリガンド、抗微生物剤、腫瘍低酸素症標的リガンド、グルコース模倣体、アミフォスチン、アンギオスタチン、EGF受容体リガンド、モノクローナル抗体C225、モノクローナル抗体CD31、モノクローナル抗体CD40、カペシタビン、COX−2阻害剤、デオキシシチジン、フラーレン、ハーセプチン、ヒト血清アルブミン、ラクトース、黄体形成ホルモン、ピリドキサール、キナゾリン、サリドマイド、トランスフェリン、またはトリメチルリジンである、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
造影および化学療法のための剤の合成方法としてさらに規定される、請求項64に記載の方法。
【請求項77】
二重造影のための剤の合成方法としてさらに規定される、請求項64に記載の方法。
【請求項78】
前記造影がPET、SPECT、MRI、CT、または光学造影である、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
a)組織標的アミノ酸配列、診断用アミノ酸配列、および/または治療用アミノ酸配列を配列中に含むポリペプチドを得ること;および、
b)前記ポリペプチドを1以上の原子価金属イオンおよび還元剤と混合して、原子価金属イオンでラベル化されたポリペプチドを得ること、を含む、造影剤(imaging agent)の合成方法。
【請求項80】
前記還元剤が、亜ジチオン酸イオン、第一スズイオン、または第一鉄イオンである、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記ポリペプチドが、5〜60個の連続したグルタミン酸塩残基を含む、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
前記ポリペプチドが、5〜60個の連続したアスパラギン酸塩残基を含む、請求項79に記載の方法。
【請求項83】
前記原子価金属イオンが、Tc−99m、Cu−60、Cu−61、Cu−62、Cu−67、In−111、Tl−201、Ga−67、Ga−68、As−72、Re−186、Re−188、Ho−166、Y−90、Sm−153、Sr−89、Gd−157、Bi−212、Bi−213、原子価鉄イオン、原子価マンガンイオン、原子価コバルトイオン、原子価白金イオン、または原子価ロジウムイオンからなる群から選択される、請求項79に記載の方法。
【請求項84】
前記金属イオンがTc−99mである、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記組織標的アミノ酸配列が標的リガンドである、請求項79に記載の方法。
【請求項86】
前記標的リガンドが、疾患細胞周期標的化合物、代謝拮抗物質、生体還元剤、シグナル伝達性治療剤、細胞周期に特異的な剤、腫瘍血管新生標的リガンド、腫瘍アポトーシス標的リガンド、疾患受容体標的リガンド、薬剤ベースのリガンド、抗微生物剤、腫瘍低酸素症標的リガンド、グルコース模倣体、アミフォスチン、アンギオスタチン、EGF受容体リガンド、モノクローナル抗体C225、モノクローナル抗体CD31、モノクローナル抗体CD40、カペシタビン、COX−2阻害剤、デオキシシチジン、フラーレン、ハーセプチン、ヒト血清アルブミン、ラクトース、黄体形成ホルモン、ピリドキサール、キナゾリン、サリドマイド、トランスフェリン、またはトリメチルリジンである、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記診断用アミノ酸配列が造影アミノ酸配列である、請求項79に記載の方法。
【請求項88】
前記造影アミノ酸配列が、CT造影剤、MRI造影剤、および光学造影剤、および超音波造影剤からなる群から選択される造影剤である、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記治療用アミノ酸配列が抗癌アミノ酸配列である、請求項79に記載の方法。
【請求項90】
前記抗癌アミノ酸配列が、ヒ素、コバルト、銅、セレン、タリウムおよび白金からなる群から選択される治療用金属をキレート可能である、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
被験者におけるある部位を造影する方法であって、
a)原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を配列中に含むポリペプチド(この際、1以上の原子価金属イオンが2つの連続した前記アミノ酸の少なくとも1つに非共有結合的に結合している)を含む組成物の診断上有効な量を被験者に投与すること;および、
b)前記部位に局在する原子価金属イオン−ポリペプチドキレートからの信号を検出すること、を含む方法。
【請求項92】
前記信号が、PET、CT、SPECT、MRI、光学造影、または超音波造影を用いて検出される、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
二重造影および放射化学療法を行う方法としてさらに規定される、請求項91に記載の方法。
【請求項94】
被験者におけるある部位の二重造影を行う方法としてさらに規定される、請求項91に記載の方法。
【請求項95】
信号の検出が、PET、SPECT、MRI、CT、光学造影、または超音波造影を用いて行われる、請求項91に記載の方法。
【請求項96】
造影剤を調製するためのキットであって、
原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を配列中に含む所定量のポリペプチド;および、原子価金属イオンを2つの連続した前記アミノ酸の少なくとも1つに非共有結合的に結合させるのに十分な量の還元剤、を含む密封容器を有する、キット。
【請求項97】
造影剤を調製するためのキットであって、
組織標的アミノ酸配列、診断用アミノ酸配列、および/または治療用アミノ酸配列を配列中に含む所定量のポリペプチド;および、1以上の原子価金属イオンを前記ポリペプチドに結合させるのに十分な量の還元剤、を含む密封容器を有する、キット。
【請求項98】
前記ポリペプチドが、少なくとも2個の連続したグルタミン酸塩残基またはアスパラギン酸塩残基を含む、請求項96または97に記載のキット。
【請求項99】
前記ポリペプチドが、少なくとも5個の連続したグルタミン酸塩残基またはアスパラギン酸塩残基を含む、請求項98に記載のキット。
【請求項100】
造影剤としての候補物質の有効性を決定する方法であって、
a)候補物質を得ること;
b)前記候補物質を、原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を配列中に含むポリペプチドと共役またはキレートさせること;
c)候補物質−ポリペプチド共役体を被験者に導入すること;および、
d)前記候補物質−ポリペプチド共役体からの信号を検出して、前記候補物質の造影剤としての有効性を決定すること、を含む方法。
【請求項1】
a)原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を配列中に含むポリペプチドと、
b)2つの連続した前記アミノ酸の少なくとも1つに非共有結合的に結合した1以上の原子価金属イオンと、
を含む組成物。
【請求項2】
2以上の連続した前記アミノ酸が、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩類似体、グルタミン酸塩類似体、システイン、リジン、アルギニン、グルタミン、アスパラギン、グリシン、オルニチン、および2以上のカルボキシル基を有する天然由来でないアミノ酸からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
2以上の連続した前記アミノ酸がグルタミン酸塩残基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
2以上の連続した前記アミノ酸がアスパラギン酸塩残基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリペプチドが、少なくとも2個の連続したグルタミン酸塩残基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリペプチドが、少なくとも5個の連続したグルタミン酸塩残基を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、少なくとも10個の連続したグルタミン酸塩残基を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリペプチドが、少なくとも20個の連続したグルタミン酸塩残基を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリペプチドが、少なくとも50個の連続したグルタミン酸塩残基を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリペプチドが、300〜30000の分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記ポリペプチドが、750〜9000の分子量を有する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリペプチドが、少なくとも2個の連続したアスパラギン酸塩残基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記ポリペプチドが、少なくとも5個の連続したアスパラギン酸塩残基を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリペプチドが、少なくとも10個の連続したアスパラギン酸塩残基を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記ポリペプチドが、少なくとも20個の連続したアスパラギン酸塩残基を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリペプチドが、少なくとも50個の連続したアスパラギン酸塩残基を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記ポリペプチドが、300〜30000の分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記ポリペプチドが、750〜9000の分子量を有する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記ポリペプチドが、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩類似体またはアスパラギン酸塩類似体のカルボキシル部位への配位によって3〜5個の原子価金属イオンをキレートすることができる、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
前記原子価金属イオンが放射性核種である、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記原子価金属イオンが、Tc−99m、Cu−60、Cu−61、Cu−62、Cu−67、In−111、Tl−201、Ga−67、Ga−68、As−72、Re−186、Re−188、Ho−166、Y−90、Sm−153、Sr−89、Gd−157、Bi−212、Bi−213、Fe−56、Mn−55、Lu−177、原子価鉄イオン、原子価マンガンイオン、原子価コバルトイオン、原子価白金イオン、および原子価ロジウムイオンからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記原子価金属イオンがTc−99mである、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記原子価金属イオンがRe−188である、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
前記原子価金属イオンがGa−68である、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
前記ポリペプチドに結合した第2の部位を含むものとしてさらに規定される、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
前記第2の部位が、アミド結合またはエステル結合により前記ポリペプチドのカルボキシル部位に結合している、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記第2の部位が、組織標的部位、診断用部位または治療用部位である、請求項25に記載の組成物。
【請求項28】
前記組織標的部位が標的リガンドである、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記標的リガンドが、疾患細胞周期標的化合物、代謝拮抗物質、生体還元剤、シグナル伝達性治療剤、細胞周期に特異的な剤、腫瘍血管新生標的リガンド、腫瘍アポトーシス標的リガンド、疾患受容体標的リガンド、薬剤ベースのリガンド、抗微生物剤、腫瘍低酸素症標的リガンド、グルコース模倣体、アミフォスチン、アンギオスタチン、EGF受容体リガンド、モノクローナル抗体C225、モノクローナル抗体CD31、モノクローナル抗体CD40、カペシタビン、COX−2阻害剤、デオキシシチジン、フラーレン、ハーセプチン、ヒト血清アルブミン、ラクトース、黄体形成ホルモン、ピリドキサール、キナゾリン、サリドマイド、トランスフェリン、またはトリメチルリジンである、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
前記ポリペプチドが5〜60個の連続するグルタミン酸塩残基を含み、前記標的リガンドがエストラジオール、ガラクトース、ラクトース、シクロデキストリン、コルヒチン、メトトレキサート、パクリタキセル、ドキソルビシン、セレブレックス、メトロニダゾール、アデノシン、ペンシクロビル、カルネチン、エストラジオール(3位)、エストラジオール(17位)、リノレン酸、グルコサミン、マンノース四酢酸、または葉酸塩であり、前記原子価金属イオンがTc−99mである、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記診断用部位が造影部位である、請求項27に記載の組成物。
【請求項32】
前記造影部位が造影剤である、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記造影剤が、CT造影剤、MRI造影剤、光学造影剤、および超音波造影剤からなる群から選択される、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記造影剤がCT造影剤である、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記CT造影剤が、イオタラム酸塩、イオヘキソール、ジアトリゾエート、イオパミドール、エチオドール、およびイオパノエートからなる群から選択される、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記造影剤がMRI造影剤である、請求項33に記載の組成物。
【請求項37】
前記MRI造影剤が、ガドリニウムキレート、マンガンキレート、クロムキレート、および鉄粒子からなる群から選択される、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記MRI造影剤が、Gd−DOTA、Mn−DPDP、またはCr−DEHIDAである、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記造影剤が光学造影剤である、請求項33に記載の組成物。
【請求項40】
前記光学造影剤が、フルオレセイン、フルオレセイン誘導体、インドシアニングリーン、オレゴングリーン、オレゴングリーン誘導体の誘導体、ローダミングリーン、ローダミングリーン誘導体、エオジン、エリスロシン、テキサスレッド、テキサスレッド誘導体、マラカイトグリーン、ナノゴールドスルホコハク酸イミドエステル、カスケードブルー、クマリン誘導体、ナフタレン、ピリジルオキサゾール誘導体、カスケードイエロー染料、およびダポキシル染料からなる群から選択される、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
前記造影剤が超音波造影剤が超音波過フッ素化造影剤である、請求項33に記載の組成物。
【請求項42】
前記超音波過フッ素化造影剤が、過フッ素化物または過フッ素化物類似体からなる群から選択される、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記第2の部位が治療用部位である、請求項27に記載の組成物。
【請求項44】
前記治療用部位が抗癌部位である、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
前記抗癌部位が、治療用放射性金属物質をキレート可能なキレート剤、メトトレキサート、エピポドフィロトキシン、ビンクリスチン、ドセタキセル、パクリタキセル、ダウノマイシン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、トポテカン、ブレオマイシン、ゲムシタビン、フルダラビンおよび5−FUDRからなる群から選択される、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
前記抗癌部位がメトトレキサートである、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
前記抗癌部位が、Re−188、Re−186、Ho−166、Y−90、Sr−89、Sm−153からなる群から選択される治療用放射性金属物質である、請求項44に記載の組成物。
【請求項48】
前記抗癌部位が、ヒ素、コバルト、銅、セレン、タリウムおよび白金からなる群から選択される治療用金属をキレート可能な物質である、請求項44に記載の組成物。
【請求項49】
前記ポリペプチドに非共有結合的に結合する前記原子価金属イオンが、PETまたはSPECTを用いて造影可能である、請求項1に記載の組成物。
【請求項50】
a)配列中に組織標的アミノ酸配列、診断用アミノ酸配列、および/または治療用アミノ酸配列を含むポリペプチドと、
b)前記ポリペプチドのアミノ酸残基に結合した原子価金属イオンと、
を含む組成物。
【請求項51】
前記ポリペプチドが、2以上の連続したグルタミン酸塩残基を含む、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
前記ポリペプチドが、2以上の連続したアスパラギン酸塩残基を含む、請求項50に記載の組成物。
【請求項53】
前記ポリペプチドが、5〜60個の連続したグルタミン酸塩残基を含む、請求項50に記載の組成物。
【請求項54】
前記ポリペプチドが、5〜60個の連続したアスパラギン酸塩残基を含む、請求項50に記載の組成物。
【請求項55】
前記原子価金属イオンが放射性核種である、請求項50に記載の組成物。
【請求項56】
前記原子価金属イオンが、Tc−99m、Cu−60、Cu−61、Cu−62、Cu−67、In−111、Tl−201、Ga−67、Ga−68、As−72、Re−186、Re−188、Ho−166、Y−90、Sm−153、Sr−89、Gd−157、Bi−212、Bi−213、原子価鉄イオン、原子価マンガンイオン、原子価コバルトイオン、原子価白金イオン、または原子価ロジウムイオンからなる群から選択される、請求項50に記載の組成物。
【請求項57】
前記原子価金属イオンがTc−99mである、請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
前記組織標的アミノ酸配列が標的リガンドである、請求項50に記載の組成物。
【請求項59】
前記標的リガンドが、疾患細胞周期標的化合物、代謝拮抗物質、生体還元剤、シグナル伝達性治療剤、細胞周期に特異的な剤、腫瘍血管新生標的リガンド、腫瘍アポトーシス標的リガンド、疾患受容体標的リガンド、薬剤ベースのリガンド、抗微生物剤、腫瘍低酸素症標的リガンド、グルコース模倣体、アミフォスチン、アンギオスタチン、EGF受容体リガンド、モノクローナル抗体C225、モノクローナル抗体CD31、モノクローナル抗体CD40、カペシタビン、COX−2阻害剤、デオキシシチジン、フラーレン、ハーセプチン、ヒト血清アルブミン、ラクトース、黄体形成ホルモン、ピリドキサール、キナゾリン、サリドマイド、トランスフェリン、またはトリメチルリジンである、請求項58に記載の組成物。
【請求項60】
前記診断用アミノ酸配列が造影アミノ酸配列である、請求項50に記載の組成物。
【請求項61】
前記造影アミノ酸配列が、CT造影剤、MRI造影剤、および光学造影剤、および超音波造影剤からなる群から選択される造影剤である、請求項60に記載の組成物。
【請求項62】
前記治療用アミノ酸配列が抗癌アミノ酸配列である、請求項50に記載の組成物。
【請求項63】
前記抗癌アミノ酸配列が、ヒ素、コバルト、銅、セレン、タリウムおよび白金からなる群から選択される治療用金属をキレート可能である、請求項62に記載の組成物。
【請求項64】
a)原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を配列中に含むポリペプチドを得ること;および、
b)前記ポリペプチドを1以上の原子価金属イオンおよび還元剤と混合して、原子価金属イオンでラベル化されたポリペプチドを得ること、を含み、
この際、1以上の原子価金属イオンが、2つの連続したアミノ酸の少なくとも1つに非共有結合的に結合している、造影剤の合成方法。
【請求項65】
前記還元剤が亜ジチオン酸イオン、第一スズイオン、または第一鉄イオンである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記ポリペプチドが、5〜60個の連続したグルタミン酸塩残基を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記ポリペプチドが、5〜60個の連続したアスパラギン酸塩残基を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項68】
前記ポリペプチドが、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、またはこれらの類似体のカルボキシル部位への配位によって3〜5個の原子価金属イオンをキレートすることができる、請求項64に記載の方法。
【請求項69】
前記原子価金属イオンが、Tc−99m、Cu−60、Cu−61、Cu−62、Cu−67、In−111、Tl−201、Ga−67、Ga−68、As−72、Re−186、Re−188、Ho−166、Y−90、Sm−153、Sr−89、Gd−157、Bi−212、Bi−213、原子価鉄イオン、原子価マンガンイオン、原子価コバルトイオン、原子価白金イオン、または原子価ロジウムイオンからなる群から選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項70】
前記金属イオンがTc−99mである、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記ポリペプチドが、当該ポリペプチドに結合した第2の部位を含むものとしてさらに規定される、請求項64に記載の方法。
【請求項72】
前記第2の部位が、アミド結合またはエステル結合で前記ポリペプチドのカルボキシル部位に結合している、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記第2の部位が、組織標的部位、診断用部位、または治療用部位である、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記組織標的部位が標的リガンドである、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記標的リガンドが、疾患細胞周期標的化合物、代謝拮抗物質、生体還元剤、シグナル伝達性治療剤、細胞周期に特異的な剤、腫瘍血管新生標的リガンド、腫瘍アポトーシス標的リガンド、疾患受容体標的リガンド、薬剤ベースのリガンド、抗微生物剤、腫瘍低酸素症標的リガンド、グルコース模倣体、アミフォスチン、アンギオスタチン、EGF受容体リガンド、モノクローナル抗体C225、モノクローナル抗体CD31、モノクローナル抗体CD40、カペシタビン、COX−2阻害剤、デオキシシチジン、フラーレン、ハーセプチン、ヒト血清アルブミン、ラクトース、黄体形成ホルモン、ピリドキサール、キナゾリン、サリドマイド、トランスフェリン、またはトリメチルリジンである、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
造影および化学療法のための剤の合成方法としてさらに規定される、請求項64に記載の方法。
【請求項77】
二重造影のための剤の合成方法としてさらに規定される、請求項64に記載の方法。
【請求項78】
前記造影がPET、SPECT、MRI、CT、または光学造影である、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
a)組織標的アミノ酸配列、診断用アミノ酸配列、および/または治療用アミノ酸配列を配列中に含むポリペプチドを得ること;および、
b)前記ポリペプチドを1以上の原子価金属イオンおよび還元剤と混合して、原子価金属イオンでラベル化されたポリペプチドを得ること、を含む、造影剤(imaging agent)の合成方法。
【請求項80】
前記還元剤が、亜ジチオン酸イオン、第一スズイオン、または第一鉄イオンである、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記ポリペプチドが、5〜60個の連続したグルタミン酸塩残基を含む、請求項79に記載の方法。
【請求項82】
前記ポリペプチドが、5〜60個の連続したアスパラギン酸塩残基を含む、請求項79に記載の方法。
【請求項83】
前記原子価金属イオンが、Tc−99m、Cu−60、Cu−61、Cu−62、Cu−67、In−111、Tl−201、Ga−67、Ga−68、As−72、Re−186、Re−188、Ho−166、Y−90、Sm−153、Sr−89、Gd−157、Bi−212、Bi−213、原子価鉄イオン、原子価マンガンイオン、原子価コバルトイオン、原子価白金イオン、または原子価ロジウムイオンからなる群から選択される、請求項79に記載の方法。
【請求項84】
前記金属イオンがTc−99mである、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記組織標的アミノ酸配列が標的リガンドである、請求項79に記載の方法。
【請求項86】
前記標的リガンドが、疾患細胞周期標的化合物、代謝拮抗物質、生体還元剤、シグナル伝達性治療剤、細胞周期に特異的な剤、腫瘍血管新生標的リガンド、腫瘍アポトーシス標的リガンド、疾患受容体標的リガンド、薬剤ベースのリガンド、抗微生物剤、腫瘍低酸素症標的リガンド、グルコース模倣体、アミフォスチン、アンギオスタチン、EGF受容体リガンド、モノクローナル抗体C225、モノクローナル抗体CD31、モノクローナル抗体CD40、カペシタビン、COX−2阻害剤、デオキシシチジン、フラーレン、ハーセプチン、ヒト血清アルブミン、ラクトース、黄体形成ホルモン、ピリドキサール、キナゾリン、サリドマイド、トランスフェリン、またはトリメチルリジンである、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記診断用アミノ酸配列が造影アミノ酸配列である、請求項79に記載の方法。
【請求項88】
前記造影アミノ酸配列が、CT造影剤、MRI造影剤、および光学造影剤、および超音波造影剤からなる群から選択される造影剤である、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記治療用アミノ酸配列が抗癌アミノ酸配列である、請求項79に記載の方法。
【請求項90】
前記抗癌アミノ酸配列が、ヒ素、コバルト、銅、セレン、タリウムおよび白金からなる群から選択される治療用金属をキレート可能である、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
被験者におけるある部位を造影する方法であって、
a)原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を配列中に含むポリペプチド(この際、1以上の原子価金属イオンが2つの連続した前記アミノ酸の少なくとも1つに非共有結合的に結合している)を含む組成物の診断上有効な量を被験者に投与すること;および、
b)前記部位に局在する原子価金属イオン−ポリペプチドキレートからの信号を検出すること、を含む方法。
【請求項92】
前記信号が、PET、CT、SPECT、MRI、光学造影、または超音波造影を用いて検出される、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
二重造影および放射化学療法を行う方法としてさらに規定される、請求項91に記載の方法。
【請求項94】
被験者におけるある部位の二重造影を行う方法としてさらに規定される、請求項91に記載の方法。
【請求項95】
信号の検出が、PET、SPECT、MRI、CT、光学造影、または超音波造影を用いて行われる、請求項91に記載の方法。
【請求項96】
造影剤を調製するためのキットであって、
原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を配列中に含む所定量のポリペプチド;および、原子価金属イオンを2つの連続した前記アミノ酸の少なくとも1つに非共有結合的に結合させるのに十分な量の還元剤、を含む密封容器を有する、キット。
【請求項97】
造影剤を調製するためのキットであって、
組織標的アミノ酸配列、診断用アミノ酸配列、および/または治療用アミノ酸配列を配列中に含む所定量のポリペプチド;および、1以上の原子価金属イオンを前記ポリペプチドに結合させるのに十分な量の還元剤、を含む密封容器を有する、キット。
【請求項98】
前記ポリペプチドが、少なくとも2個の連続したグルタミン酸塩残基またはアスパラギン酸塩残基を含む、請求項96または97に記載のキット。
【請求項99】
前記ポリペプチドが、少なくとも5個の連続したグルタミン酸塩残基またはアスパラギン酸塩残基を含む、請求項98に記載のキット。
【請求項100】
造影剤としての候補物質の有効性を決定する方法であって、
a)候補物質を得ること;
b)前記候補物質を、原子価金属イオンに非共有結合的に結合する機能を有する2以上の連続したアミノ酸を配列中に含むポリペプチドと共役またはキレートさせること;
c)候補物質−ポリペプチド共役体を被験者に導入すること;および、
d)前記候補物質−ポリペプチド共役体からの信号を検出して、前記候補物質の造影剤としての有効性を決定すること、を含む方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【公表番号】特表2008−534617(P2008−534617A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504460(P2008−504460)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/012132
【国際公開番号】WO2006/107794
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(505073093)ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ テキサス システム (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/012132
【国際公開番号】WO2006/107794
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(505073093)ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ テキサス システム (5)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]