説明

キーシート及びキーシートの製造方法

【課題】キートップがベースシートに対してしっかりと固定したキーシートを得ること。また、実用性があり、デザイン性に優れた新規な形態のキーシートを得ること。
【解決手段】樹脂フィルムでなるベースシート32と、ベースシート32に配置するキートップ33とを接着層により固着するキーシート31について、キートップ33かベースシート32の少なくとも何れか一方の対向面に加熱により軟化又は溶融する原料を用い溶剤に溶解または分散させた溶剤希釈型インキ、または熱溶融させて液状としたインキを印刷してキートップ33の印刷接着層39を形成し、キートップ33の底面全面とベースシート32が該印刷接着層39で固着したキーシート31とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機、PDA、カーナビゲーション装置、カーオーディオ装置など各種機器の操作部に用いるキーシートとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図15で示す携帯電話機1には、入力操作を可能とする図16で示すキーシート11が用いられている。このキーシート11は、シリコーンゴムでなるベースシート12に、複数すなわち計21個の硬質樹脂でなるキートップ13をUV接着剤などを滴下して固着したものである。キートップ13を押圧すると、ベースシート12が撓み、キーシート11の底面に位置するプリント基板(図示せず)上の接点電極を押圧してスイッチ入力がなされ、押圧を解けばベースシート12の復元力でキートップ13が元の位置に戻ってスイッチ入力が解かれるものである。
【0003】
一方、最近では、図17で示すように、キートップ23の間に仕切桟1b(図15)がない操作開口2aを開け、そこからキートップ23相互間の間隔を狭く配置した図18で示すキーシート21を露出させる携帯電話機2も用いられている。このキーシート21では、携帯電話機2に仕切桟1b(図15)が無いため、キーシート21の周囲のみでその全体を支える必要がある。そのため、ベースシート22がゴム状弾性体22aのみからなるのではなく、図19で示すように、硬質樹脂や繊維補強材などの補強材22bをゴム状弾性体22aの間に設けた構造としている。このようなキーシートについては、例えば特開2005−63795号公報(特許文献1)に記載されている。
【特許文献1】特開2005−63795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、携帯機器に対するデザインの変化は著しく、さらに斬新なデザインを有するキーシートを検討した結果、上述のキーシート11,21に対する改良型として、本発明者らは、各キートップを仕切る仕切桟に相当するフレームを有するようにし、携帯電話機の仕切桟の無い操作開口から、複数のキートップとともにフレームをも露出させるキーシートを案出した。ところが、従来のキーシート11,12の構造を変形したり、その製造方法によっては、この改良型のキーシートを製造できないことがわかった。
【0005】
従来のキーシート11,21を製造するには、樹脂製のキートップ13,23の底面にUV硬化型接着剤などの液状接着剤を塗布し、ベースシート12,22にキートップ13,23を貼り付けていた。この方法では、キートップ13,23からの接着剤のはみ出しを防止するため、キートップ13,23の底面の中央部分にのみ接着剤を塗布している。そのため、キートップ13,23の底面全面に接着剤が行き渡らず、キートップ13,23とベースシート12,22との間には隙間が生じていた。そして、この隙間の存在がキートップの脱落という問題を発生させるのである。
【0006】
すなわちこの隙間に関し、従来のキーシート11では、キートップ13の周囲にフランジが形成されており、装着される携帯電話機1に仕切桟1bがあるため、キートップ13の脱落は特に問題にならない。しかしながら、キートップ23,23相互間が狭間に配置されたキーシート21では、機器の筐体に仕切桟が無く、フランジも形成されないため、キートップとこれを固着するベースシートとの間に押圧操作する爪が入る可能性があり、キートップ23がキーシート21から脱落するというおそれが生じる。
【0007】
そして、キートップ相互間の間隔が広くフレームが露出する改良型のキーシートでは、キートップ23が狭間配置したキーシート21に比べて、キートップとベースシートとの間に爪が入る可能性がさらに高まるため、キートップの脱落がより大きな問題になるのである。
【0008】
以上のような従来技術、キーシートの開発動向を背景になされたのが本発明である。すなわち、本発明の目的は、キートップなどの固定部材がベースシートに対してしっかりと固定したキーシートを得ることにある。また、本発明の別の目的は、実用性があり、デザイン性に優れた新規な形態のキーシートを得ることにある。
【0009】
本発明のさらなる目的は、ベースシートに固着するキートップなどの所定部位を精度良く確実に接着することができるキーシートの製造方法を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく本発明は、樹脂フィルムでなるベースシートと、ベースシートに配置するキートップと、キートップ又はベースシートの何れかに印刷層として形成され、キートップとベースシートに対し軟化又は溶融状態で接した硬化体でなるキートップの印刷接着層と、を備えるキーシートを提供する。
【0011】
樹脂フィルムでなるベースシートと、ベースシートに配置するキートップと、キートップ又はベースシートの何れかに印刷層として形成され、キートップとベースシートに対し軟化又は溶融状態で接した硬化体でなるキートップの印刷接着層と、を備えることとしたため、キートップとベースシートの固着位置、塗布厚を精度良く制御した印刷接着層を有することができる。すなわち、従来、例えばキートップの底面に接着剤を滴下して接着していた場合と比較して、接着層の位置、面積にばらつきがなく、しっかりと固着したキーシートとすることができる。
【0012】
従来の接着層は、例えばキートップ底面への滴下後、ベースシートへの押圧によって側方へ流れて広がった状態で、つまり付着面積が拡大した状態で硬化する。例えばキートップの底面全体に塗布する場合、ベースシートへの押圧により側方へ大きく流れて広がり、キートップの底面からはみ出して硬化する。また例えば、底面の一部に塗布する場合、ベースシートへの押圧により側方へ大きく流れて広がり、付着面積が拡大して硬化する。
【0013】
しかし、本発明の印刷接着層は「軟化又は溶融状態で」キートップやベースシートと接触する。具体的には、印刷後それが硬化する前の軟化又は溶融状態で接触する。または印刷し一旦硬化した後に加熱した軟化又は溶融状態で接触する。したがって本発明の印刷接着層は、従来技術のように側方へ大きく流れて広がってしまうのを抑えることができる。
【0014】
例えばキートップ底面の全面に印刷した場合、印刷接着層はキートップの底面からはみ出さず、実質的に底面の面積と等面積で硬化する。また例えば、底面の一部に印刷した場合、印刷接着層はその印刷面積からはみ出さずに実質的に等面積で硬化する。このため、本発明の印刷接着層は、キートップを押圧変位可能に浮動支持するベースシートの可撓部分を拘束しない。したがって、本発明の印刷接着層であればキートップの底面全面や特定面積を接着することと、キートップの押圧操作性とを両立することができる。
【0015】
さらに、ベースシートが樹脂フィルムであるため、ゴム状弾性体からなるベースシートと比較して、薄く、かつ、撓みにくいキーシートとすることができる。そのため、機器に設けた一つの大きな操作開口から複数のキートップと、キートップ間のフレーム部分を露出させる斬新なキーシートであり、ベースシートの歪みの発生が生じにくい実用的なキーシートである。
【0016】
上記キーシートについては、キートップと並べてベースシートに配置するフレームシートを備えるものとして構成することができる。キートップと並べてベースシートに配置するフレームシートを備えるものとすれば、キートップとベースシートとの間に爪先が入り難くすることができ、さらにキートップが外れにくいキーシートとすることができる。また、キートップの極端な浮き上がりを防止してキートップの脱落が生じにくい構造とすることができる。さらに、ベースシートの強度を補強し、キーシート全体の成形性を保つことができ、デザイン的にも斬新なキーシートとすることができる。
【0017】
なお、フレームシートは、キートップの側面に形成される隙間を埋める部材であり、キートップ相互間ではその仕切桟となり、機器の筐体などの操作開口とキートップとの間ではフレームとなる。そのため、例えば、キートップ相互間で仕切桟としてのみ用いられたり、キートップと操作開口との間のフレームとしてのみ用いられたりするものもフレームシートに含まれるし、キートップ以外の部分でベースシート全体を覆うものも含まれる。
【0018】
また本発明は、フレームシートとベースシートとを固着する接着層を備えており、キートップの印刷接着層がキートップの底面全面に形成したものであり、フレームシートの接着層がキートップと隣接する外縁側を除くフレームシートの底面に形成したものであるキーシートとすることができる。キートップの印刷接着層をキートップの底面全面に形成したため、キートップとベースシートとの間に隙間が生じることがなく、キートップの脱落が起こりにくいキーシートを得ることができる。また、キートップの底面全面に接着層が設けられることから、接着層を有する箇所と有しない箇所のばらつきがなく、キートップへの押圧操作を、正確なスイッチ入力につなげることができ、操作性の良いキーシートである。さらに、いわゆる照光式のキートップとした場合に、キートップの底面全面に接着層が設けられることから照光ムラが無く、均一な照光が可能なキーシートとすることができる。
【0019】
そして、キートップと隣接する外縁側を除くフレームシートの底面に接着層を備えたため、フレームシートのキートップと隣接する外縁側には接着層のない間隙部が生じており、この部分が非拘束領域となっている。そして、この非拘束領域を設けたことで、キートップの確実な押込み操作を行うことができる。即ち、キートップの周囲に非拘束領域があるため、キートップを支持するベースシートにおいて、間隙部の部分だけ接着層により拘束されない領域が広がりベースシートが撓み易くなる。そのため、キートップの押込みストロークを長く取ることができ、正確なキー入力操作を行うことができるキーシートとなる。なお、フレームシートには間隙部が生じていても、フレームシートの広い部分でベースシートと固着することが可能で、フレームシートの脱落は殆ど問題とならない。
【0020】
フレームシートの接着層については、フレームシート又はベースシートの何れかに印刷層として形成され、フレームシートとベースシートに対し軟化又は溶融状態で接した硬化体でなる印刷接着層とすることができる。フレームシートの接着層が、フレームシート又はベースシートの何れかに印刷層として形成され、フレームシートとベースシートに対し軟化又は溶融状態で接した硬化体でなる印刷接着層としたため、フレームシートの底面の所定部位に正確に印刷接着層を形成することができる。そのため、フレームシートとベースシートの固着する部分、固着しない部分を高精度で制御することができる。
【0021】
本発明はまた、キートップと並べてベースシートに配置する隣接キートップと、隣接キートップとベースシートとを固着する接着層とを備えており、キートップの印刷接着層がキートップの底面全面に形成したものであり、隣接キートップの接着層がキートップと隣接する外縁側を除く隣接キートップの底面に形成したものであるキーシートとすることができる。
【0022】
キートップと並べてベースシートに配置する隣接キートップを備えており、キートップの印刷接着層をキートップの底面全面に形成したため、キートップとベースシートとの間に隙間が生じることがなく、キートップの脱落が起こりにくいキーシートを得ることができる。また、キートップの底面全面に接着層が設けられることから、接着層を有する箇所と有しない箇所のばらつきがなく、キートップへの押圧操作を、正確なスイッチ入力につなげることができ、操作性の良いキーシートである。さらに、いわゆる照光式のキートップとした場合に、キートップの底面全面に接着層が設けられることから照光ムラが無く、均一な照光が可能なキーシートとすることができる。
【0023】
そして、キートップと隣接する外縁側を除く隣接キートップの底面に接着層を備えることとしたため、隣接キートップのキートップと隣接する外縁側には接着層のない間隙部を生じさせることができ、この部分が非拘束領域となっている。そして、この非拘束領域を設けたことで、キートップの確実な押込み操作を行うことができる。即ち、キートップの周囲にベースシートが隣接キートップと固着しない領域が増えた分だけ、ベースシートが撓み易くなる。そのため、キートップの押込みストロークを長く取ることができ、正確なキー入力操作を行うことができる。
【0024】
キートップと隣接キートップとの関係としては、隣接キートップをキートップよりも大型のキートップとすることができる。このような例として例えば、少なくとも押込み操作を可能とする確定キートップと、該確定キートップを囲む環状キートップとの関係が挙げられる。隣接キートップである環状キートップに間隙部が生じていても、環状キートップは大型であるため、その広い部分でベースシートと固着することが可能で、環状キートップの脱落は殆ど問題とならない。
【0025】
隣接キートップの接着層については、隣接キートップ又はベースシートの何れかに印刷層として形成され、隣接キートップとベースシートに対し軟化又は溶融状態で接した硬化体でなる印刷接着層とすることができる。隣接キートップの接着層が、隣接キートップ又はベースシートの何れかに印刷層として形成され、隣接キートップとベースシートに対し軟化又は溶融状態で接した硬化体でなる印刷接着層としたため、隣接キートップの底面の所定部位に正確に印刷接着層を形成することができ、隣接キートップとベースシートの固着する部分、固着しない部分を高精度で制御することができる。
【0026】
さらに本発明は、樹脂フィルムでなるベースシートと、ベースシートに配置するキートップと、ベースシートとキートップとの間でキートップの側面と実質的に面一の側面を形成してベースシートとキートップとを固着するキートップの印刷接着層と、を備えるキーシートを提供する。
【0027】
樹脂フィルムでなるベースシートと、ベースシートに配置するキートップと、ベースシートとキートップとの間でキートップの側面と実質的に面一の側面を形成してベースシートとキートップとを固着するキートップの印刷接着層と、を備えるキーシートとしたため、キートップとベースシートとの境界に隙間がなく、キートップがベースシートにしっかりと固着したキーシートである。したがって、キートップの底面に液状の接着剤を滴下してベースシートに接着していた従来のキーシートが、キートップの底面の一部にしか接着層を備えることができず、キートップとベースシートとの境界に隙間が生じていた場合に比べて、爪先のひっかかりなどが問題にならず、キートップの脱落が生じにくいキーシートである。なお、実質的に面一とは、本キーシートにあっては、キートップの側面に対して印刷接着層の側面が±0.5mm以下の凹凸状態にあるものをいうものとする。
【0028】
上記キーシートについては、キートップと並べてベースシートに配置するフレームシートを備えるものとして構成することができる。キートップと並べてベースシートに配置するフレームシートを備えるものとしたので、フレームシートが無い場合に比べればキートップとベースシートとの間に爪先が入り難く、また、キートップの極端な浮き上がりを防止することができるため、キートップの脱落が生じにくいキーシートである。また、デザイン的にも斬新であり、さらに、ベースシートの強度が補強されて、機器に装着された状態でキーシート全体の撓みが生じ難いキーシートとすることができる。
【0029】
上記キーシートについて、フレームシートとベースシートとを固着する接着層を備えており、キートップの印刷接着層がキートップの底面全面に形成したものであり、フレームシートの接着層がキートップと隣接する外縁側を除くフレームシートの底面に形成したものとすることができる。キートップの印刷接着層をキートップの底面全面に、キートップの側面と実質的に面一に形成したため、キートップとベースシートとの間に隙間が生じることがなく、キートップがベースシートに強固に固着される。そのため、キートップの脱落が起こりにくいキーシートである。また、キートップの底面全面に接着層が設けられることから、接着層を有する箇所と有しない箇所のばらつきがなく、キートップへの押圧操作を、正確なスイッチ入力につなげることができる。さらに、いわゆる照光式のキートップとした場合に、キートップの底面全面に接着層が設けられることから照光ムラが無く、均一な照光が可能なキーシートである。
【0030】
そして、フレームシートの接着層がキートップと隣接する外縁側を除くフレームシートの底面に形成したものであるため、フレームシートのキートップとの外縁側には接着層のない間隙部が生じており、この部分が非拘束領域となっている。そして、この非拘束領域を設けたことで、キートップの確実な押込み操作を行うことができる。即ち、キートップの周囲に非拘束領域があるため、キートップを支持するベースシートにおいて、間隙部の部分だけ接着層により拘束されない領域が広がりベースシートが撓み易くなる。そのため、キートップの押込みストロークを長く取ることができ、正確なキー入力操作を行うことができる。なお、フレームシートには間隙部が生じていても、フレームシートの広い部分でベースシートと固着することが可能で、フレームシートの脱落は殆ど問題とならない。
【0031】
また、フレームシートの接着層を印刷接着層とすることができる。フレームシートの接着層を印刷接着層としたため、フレームシートの底面の所定部位に正確に形成された印刷接着層を有することができ、フレームシートとベースシートの固着する部分、固着しない部分が高精度で制御されたキーシートとすることができる。
【0032】
さらに、本発明は、キートップと並べてベースシートに配置する隣接キートップと、隣接キートップとベースシートとを固着する接着層とを備えており、キートップの印刷接着層はキートップの底面全面に形成したものであり、隣接キートップの接着層はキートップと隣接する外縁側を除く隣接キートップの底面に形成したものとすることができる。
【0033】
キートップの印刷接着層はキートップの底面全面に形成したものであるため、キートップとベースシートとの間に隙間が生じることがなく、キートップの脱落が起こりにくいキーシートを得ることができる。また、キートップの底面全面に接着層が設けられることから、接着層を有する箇所と有しない箇所のばらつきがなく、キートップへの押圧操作を、正確なスイッチ入力につなげることができる。さらに、いわゆる照光式のキートップとした場合に、キートップの底面全面に接着層が設けられることから照光ムラが無く、均一な照光が可能なキーシートである。
【0034】
また、キートップと並べてベースシートに配置する隣接キートップと、隣接キートップとベースシートとを固着する接着層とを備えており、隣接キートップの接着層はキートップと隣接する外縁側を除く隣接キートップの底面に形成したため、隣接キートップのキートップとの外縁側には接着層のない間隙部を生じさせることができ、この部分が非拘束領域となっている。そして、この非拘束領域を設けたことで、キートップの確実な押込み操作を行うことができる。即ち、キートップの周囲に、ベースシートが隣接キートップと固着しない領域が増えた分だけ、ベースシートが撓み易くなる。そのため、キートップの押込みストロークを長く取ることができ、正確なキー入力操作を行うことができる。
【0035】
キートップと隣接キートップとの関係としては、隣接キートップをキートップよりも大型のキートップとすることができる。このような例として例えば、少なくとも押込み操作を可能とする確定キートップと、該確定キートップを囲む環状キートップとの関係が挙げられる。隣接キートップである環状キートップに間隙部が生じていても、環状キートップは大型であるため、その広い部分でベースシートと固着することが可能で、環状キートップの脱落は殆ど問題とならない。
【0036】
また、隣接キートップの接着層を印刷接着層とすることができる。隣接キートップの接着層を印刷接着層としたため、隣接キートップの底面の所定部位に正確に形成された印刷接着層を有することができ、隣接キートップとベースシートの固着する部分、固着しない部分が高精度で制御されたキーシートとすることができる。
【0037】
以上のキーシートについては、キートップとフレームシート又は隣接キートップとが実質的に連続する面一の操作面を形成するキーシートとすることができる。キートップとフレームシート又は隣接キートップとが実質的に連続する面一の操作面を形成するものとしたため、キートップやフレームシート、隣接キートップに対して側方から押圧されにくく、これらの部分の脱落が生じにくいキーシートである。
【0038】
上述のキーシートに関する発明の他、以下のキーシートの製造方法に関する発明を提供する。即ち、本発明は、ベースシートとベースシートに配置するキートップとを接着層により固着するキーシートの製造方法であって、キートップかベースシートの少なくとも何れか一方の対向面に印刷によりキートップの印刷接着層を形成し、軟化又は溶融状態で前記何れか他方と接触させるとともに硬化させ、キートップとベースシートを固着するキーシートの製造方法である。
【0039】
キートップかベースシートの少なくとも何れか一方の対向面に印刷によりキートップの印刷接着層を形成したため、キートップとベースシートの大きさや材質、接着箇所などを考慮して、適宜、印刷面を決定することができる。また、印刷により形成するため、キートップとベースシートとの固着位置となる印刷箇所、塗布量を精度良く制御して印刷接着層を形成することができる。この印刷接着層は、印刷後固形状態としてから加熱、押圧により軟化又は溶融状態で接着することもできれば、印刷後インキの固化前の軟化又は溶融状態で接着することもできる。特に、印刷後接着前に固形状態にする場合は、インキのだれを抑えることができ接着位置の高度な制御が可能となる。また、キートップとベースシートとを接触させて位置合わせを行うことができ、位置合わせ作業が容易であるし、位置合わせ時や押圧時の接着層の流動を抑えることができる。さらに後工程の加熱、押圧時に、加熱、押圧箇所を選択することで接着位置を調整できるなどの利点がある。そして、軟化又は溶融状態で前記何れか他方と接触させて硬化させるため、印刷接着層の体積変化を抑えることができ、所望位置で精度良く接着することができる。
【0040】
したがって、従来、例えばキートップの底面に接着剤を滴下して接着していた方法に比較すると、接着剤を塗布する箇所、塗布量、設けられた接着層の形状を正確に制御することができる。すなわち、接着剤を滴下して液状のままキートップとベースシートとを固着したのでは、滴下位置にばらつきが多く、滴下後の固着部分の面積も変わり易いという欠点を解消することができる。
【0041】
さらに、ベースシートが樹脂フィルムであるため、印刷接着層を形成する場合に印刷が容易であるし、加熱、押圧して印刷接着層を固着させる場合には、加熱、押圧時の熱伝達、圧力伝達が的確に行われる。また、変形や変性が生じ難く、キーシートの製造が容易である。
【0042】
また、本発明は、ベースシートと、ベースシートに配置するキートップと、キートップと並べてベースシートに配置するフレームシートとを備えるキーシートの製造方法であって、キートップかベースシートの少なくとも何れか一方の対向面全面に印刷によりキートップの印刷接着層を形成し、軟化又は溶融状態で前記何れか他方と接触させて硬化させ、キートップをベースシートに固着するとともに、キートップと隣接する外縁側を除くフレームシートの底面をベースシートに固着するキーシートの製造方法を提供する。
【0043】
キートップかベースシートの少なくとも何れか一方の対向面全面に印刷によりキートップの印刷接着層を形成し、軟化又は溶融状態で前記何れか他方と接触させて硬化させ、キートップをベースシートに固着したため、キートップとベースシートとの間に隙間が生じることがなく、キートップの脱落が起こりにくいキーシートを得ることができる。そして、キートップと隣接する外縁側を除くフレームシートの底面をベースシートに固着したため、フレームシートのキートップとの外縁側には接着層のない所定の大きさ、形状の間隙部を生じさせることができる。そのため、キートップの押込み操作が可能なキーシートを得ることができる。
【0044】
さらにまた本発明は、ベースシートと、ベースシートに配置するキートップと、キートップと並べてベースシートに配置する隣接キートップとを備えるキーシートの製造方法であって、キートップかベースシートの少なくとも何れか一方の対向面全面に印刷によりキートップの印刷接着層を形成し、軟化又は溶融状態で前記何れか他方と接触させて硬化させ、キートップをベースシートに固着するとともに、キートップと隣接する外縁側を除き隣接キートップの底面をベースシートに固着するキーシートの製造方法を提供する。
【0045】
キートップかベースシートの少なくとも何れか一方の対向面全面に印刷によりキートップの印刷接着層を形成し、軟化又は溶融状態で前記何れか他方と接触させて硬化させ、キートップをベースシートに固着したため、キートップとベースシートとの間に隙間が生じることがなく、キートップの脱落が起こりにくいキーシートを得ることができる。そして、キートップと隣接する外縁側を除く隣接キートップの底面をベースシートに固着したため、隣接キートップのキートップとの外縁側には接着層のない所定の大きさ、形状の間隙部を生じさせることができる。そのため、キートップの押込み操作が可能なキーシートを得ることができる。
【0046】
印刷接着層を軟化又は溶融状態とするためには、キートップの印刷接着層の全面又は一部を加熱するものとすることができる。キートップの印刷接着層の全面又は一部を加熱することとしたため、被着体に接着しない固形状態にある印刷接着層では、被着体に接着しうる状態におくことができる。また、印刷接着層を設けた後でも、実際に固着させる箇所を調整することができる。例えば、フレームシートの底面全面に接着層を印刷にて形成しておき、フレームシートの一部を加熱することで、フレームシートの加熱しない部分をベースシートとフレームシートとが固着しない非拘束領域とすることができる。これにより、例えばベースシートの材質、厚さ等に応じて、ベースシートが撓み難い材質であるとすれば、非拘束領域を広くするなどの調整が可能となる。
【0047】
また、印刷接着層の有無にかかわらず、キートップやフレームシートなどとベースシートとの接着箇所を制御するため、予め、これらが接着しない非拘束領域とする箇所にマスキング層を設けておくことも可能である。マスキング層を設けることで、キートップやフレームシートなどとベースシートとの接着箇所を正確に制御することができる。
【0048】
印刷接着層を形成する印刷工程で溶剤希釈型インキを用いることができる。溶剤希釈型インキを用いたため、加熱により溶融または軟化するような樹脂を溶剤希釈型インキとして印刷塗工することができる。そのため、接着層を適正位置に適正量設けることが可能である。また、溶剤希釈型インキで溶剤が蒸発すれば固形状態で印刷層が形成される。そのため、液状の接着剤を用いる場合に比べて、接着層の広がり程度を制御することが容易である。そのため、所望位置に印刷接着層を設けることができる。
【発明の効果】
【0049】
本発明のキーシートによれば、樹脂フィルムでなるベースシート上にキートップとフレームシートとを有するキーシートとすることができる。そして、ベースシートの歪みの発生や、キートップの脱落などの不具合が生じにくいことに加えて、キートップの押込み操作を的確に行うことができ、携帯電話機のような機器の筐体に仕切桟のない操作開口から、キートップのみならずフレームシートをも露出させるデザインを具現化する薄型のキーシートとすることができる。
【0050】
また、本発明のキーシートの製造方法によれば、樹脂フィルムでなるキーシート上の所望位置で、キートップやフレームシート、隣接キートップをベースシートに接着することができ、キートップなどとの接着強度が高く、その脱落が生じにくいキーシートを得ることができる。また、キートップの押込み操作を的確に行うことができるキーシートを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、本発明について、その実施形態に基づき図面を参照しつつ説明する。キーシート31は、図1で示す携帯電話機3に、その大きな操作開口3aから露出するように用いられ、図2で示す平面形状をなすものである。即ち、樹脂フィルムでなるベースシート32上に複数のキートップ33、すなわち、5行3列に配置された中型キートップ34、中央上方に設けられた丸型の確定キートップ35、確定キートップ35を囲む環状キートップ36、環状キートップ36の端に設けられた4個の縦長キートップ37を有し、さらに、これらのキートップ33(34,35,36,37)を仕切るフレームシート38を備えるものであって、図3や図4でその断面を示すように、キートップ33やフレームシート38が、印刷接着層39を介して、ベースシート32に固着されたものである。
【0052】
図3で示すように、中型キートップ34とベースシート32との間に存在する中型キートップ34の印刷接着層39aでは、中型キートップ34の底面34a全面に設けられ、中型キートップ34の側面34bに沿って面一に形成されている。一方、フレームシート38とベースシート32との間に設けられたフレームシート38の印刷接着層39bは、フレームシート38の中型キートップ34と隣接する外縁38a側までは設けられていない。そのため、フレームシート38の中型キートップ34と隣接する外縁38aには、印刷接着層39がなく、フレームシート38とベースシート32とが固着しない間隙部40が生じている。そして、この間隙部40においてベースシート32がフレームシート38に拘束されない非拘束領域となっている。縦長キートップ37とベースシート32との接着も中型キートップ34とベースシート32との接着と同様に、縦長キートップ37の底面全面に縦長キートップ37の印刷接着層39cが設けられベースシート32と固着されている。
【0053】
また、図4で示すように、確定キートップ35とベースシート32との間でも、確定キートップ35の印刷接着層39dが、確定キートップ35の底面35a全面に設けられ、確定キートップ35の側面35bと実質的に面一の側面を形成している。一方、確定キートップ35に対する隣接キートップとなる環状キートップ36については、環状キートップ36とベースシート32との間にも環状キートップ36の印刷接着層39eが設けられているが、確定キートップ36に隣接する環状キートップ36の外縁36aの部分までは印刷接着層39eが設けられていない。そのため、環状キートップ36に隣接する確定キートップ36の外縁36a側には、印刷接着層39eがなく、環状キートップ36とベースシート32が固着しない間隙部40が生じた非拘束領域となっている。
【0054】
中型キートップ34、確定キートップ35、環状キートップ36、縦長キートップ37の各キートップ33の何れにも、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などの硬質樹脂が用いられるが、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、PBT樹脂やこれらのアロイ系樹脂を用いることが好ましい。また、キートップ33には、文字や記号、図形などを表す表示部41が形成されていても良い。キートップ33の厚さは、薄型化の要請から0.2mm〜0.6mm程度が好ましく、一実施態様として0.4mm程度に形成することができる。
【0055】
フレームシート38は、ベースシート32とともにキーシート31の形状を保持し、キートップ33の極端な浮き上がりを防止し、キートップ33の成形痕を隠し、キートップ33とベースシート32との接着部分を保護するなどの理由から設けられるものである。フレームシート38には、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、フッ素フィルム、アイオノマーフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルムなどの樹脂フィルムを用いることができ、装飾的な観点から着色層を設けたり蒸着層を設けたりすることができる。また、携帯電話機2の内部に設けたLEDなどの光源から光を発して文字や記号などの表示部41を照光させるいわゆる照光式のキーシート31とする場合には、フレームシート38から光漏れを起こさぬように、遮光性の樹脂フィルムを用いたり、遮光層を設けたりすることができる。フレームシート38の厚さは、キートップ33の高さとの調和の観点から0.2mm〜0.5mm程度が好ましく、一実施態様として0.3〜0.35mm程度に形成することができる。
【0056】
ベースシート32は、フレームシート38とともにキーシート31の形状を保持し、キートップ33を載置する基部となり、さらに、キートップ33が押圧される場合には、わずかに歪んで基板(図示せず)に設けられた接点を押圧するものである。ベースシート32には、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、フッ素フィルム、アイオノマーフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルムなどの樹脂フィルムを用いることができる。照光式のキーシート31とする場合には、光透過性の樹脂フィルムを用いることができる。さらに、着色層や導光層を設けることができる。ベースシート32の厚さは、薄型化の要請から、150μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。一実施態様として50μm程度に形成することができる。ベースシート32のキートップ33を有する面と反対側面は、対向するプリント基板(図示せず)の形態に応じて、接点電極を押圧する部分に押し子のような膨らみを設けた構造とすることもできる。ベースシート32とフレームシート38とを比較すると、ともに樹脂フィルムで形成することができ、素材も同じとすることができるが、ベースシート32の厚さはフレームシート38よりも薄くすることが好ましい。
【0057】
印刷接着層39は、キートップ33やフレームシート38と、ベースシート32とを接着する接着剤層であり、印刷により形成されるものである。印刷接着層39用のインキには、加熱により、軟化又は溶融する原料を用いることが好ましく、例えば、加熱により軟化又は溶融するアクリル系、塩ビ系、ポリエステル系、ウレタン系などの樹脂、ワックス、ゴムなどを用いることができる。インキとしての形態は、塗工時には印刷できるだけの流動性を有し、その後、固形状態を保つ性質を有するものであり、溶剤に溶解または分散させた溶剤希釈型インキや、常温で固化状態の固形物を熱溶融させて液状としたタイプのインキを用いることができるが、キートップ33などの所定の底面に精度良く繊細に印刷するという印刷適正の観点や、直ぐに溶剤が蒸発し印刷直後に固形状態になり印刷された形状が保持されるという観点から溶剤希釈型インキを用いることが好ましい。中でも、加熱、押圧による接着工程での印刷接着層39のだれ、変形を抑制する観点からは、加熱により溶融するタイプよりは軟化するタイプの材質を用いることが好ましい。
【0058】
このキーシート31を製造するには次のように行う。まず、型成形によってキートップ33、ベースシート32、フレームシート38をそれぞれの材料から形成する。次に、必要に応じて着色層や蒸着層(図示せず)、表示部41を形成する。そして、印刷接着層39をスクリーン印刷、パッド印刷、凸版印刷、グラビア印刷などによりキートップ33やフレームシート38上に形成する。その後、ベースシート32と、キートップ33、フレームシート38を位置合わせして、熱圧着機などでベースシート32側から所定の領域を加熱、押圧し、ベースシート32とキートップ33、フレームシート38とを接着する。
【0059】
印刷接着層39の印刷から固着に至る過程において、キートップ33の所望位置でベースシート32と固着させるには次のような種々の方法をとることができる。例えば、キートップ33の底面33aの一部をベースシート32と固着させるには、図5に示したように、キートップ33の底面33a全面に印刷接着層39を形成し、その後、所定の領域A1だけ加熱押圧具43にて加熱、押圧して、その領域だけキートップ33とベースシート32とを固着する方法や、図6に示したように、キートップ33の底面33aの予め接着させる領域A1だけに印刷接着層39を形成する方法、図7に示したように、キートップ33の底面33a全面に印刷接着層39を施した後、ベースシート32と固着させない領域B1にマスキング層42を印刷により形成し、キートップ33の底面33a全面、またはマスキング層42を設けていない領域A1のみを加熱、押圧して、領域A1の部分だけキートップ33とベースシート32とを固着する方法などがある。なお、マスキング層42も印刷により形成することが好ましく、ベースシート32に接着しにくい材質や軟化温度の高い材質から得られたインキを用いることが好ましい。
【0060】
また、これらの例ではキートップ33の底面33aにのみ印刷接着層39を形成したが、ベースシート32側に印刷接着層39を設ける方法を採ることもできる。図8〜図10の各図に示したのは、図5〜図7の各々の場合に加えて、さらにベースシート32に印刷接着層39を設けたものである。ベースシート32の種類によってはキートップ33に印刷接着層39を設けただけでは固着しにくい場合もあり、予め、ベースシート32に印刷接着層39を設けておくことで、キートップ33とベースシート32との接着力を高めることができる。さらに別の方法として、図11に示した例のように、ベースシート32の全面に印刷接着層39を設けるのではなく、ベースシート32の所定部位にのみ印刷接着層39を設けることもできる。また、図12で示すようにマスキング層42を設けても良い。また図示しないが、キートップ33側に印刷接着層39を設けずに、ベースシート32側に印刷接着層を設けることもできる。
【0061】
一方、キートップ33の底面33a全面をベースシート32と固着させるには、キートップ33の底面33a全面に印刷接着層39を設け、その全面を加熱、押圧することにより行うことができるし、ベースシート32の所定面に印刷接着層39を設けておき、キートップ33と対応する部分やベースシート32の全面を加熱、押圧することにより行うこともできる。
【0062】
加熱、押圧する条件については、印刷接着層39として用いる材料、印刷接着層39の層厚、ベースシート32の膜厚などにより変化するが、押圧部の表面温度が120℃〜220℃、より好ましくは140℃〜170℃であり、押圧時間が1秒〜20秒、より好ましくは5秒〜10秒、圧力が30kg〜500kg/20〜25cm、より好ましくは50kg〜300kg/20〜25cmである。
【0063】
以上、キートップ33とベースシート32との固着方法について説明したが、フレームシート38とベースシート32の固着も同様に行うことができる。また、加熱、押圧については、ベースシート32側から加熱することとしているが、キートップ33側から加熱することも可能である。
【0064】
次に、こうして得られたキーシート31の作用、効果について説明する。
【0065】
図3で示すように、中型キートップ34は、その底面34aの全面が印刷接着層39を介してベースシート32に固着されており、中型キートップ34とベースシート32との間に隙間が生じていない。そのため、爪の先が中型キートップ34の角にひっかかるようなことがなく、中型キートップ34がキーシート31から剥がれ落ちることがない。一方、これらの中型キートップ34に隣接するフレームシート38の外縁38aでは、フレームシート38とベースシート32が固着されずに間隙部40を生じている。そのため、図13(A)で示すように、間隙部40を有するキーシート31は、押込み操作時の下方へのストロークを長くとることができ、必要な押込操作が可能である。そのため、正確なスイッチ入力を行うことができる。一方、比較のため設けた図13(B)に示す間隙部を有しないキーシートでは、下方への押込みストロークを長くとることができない。なお、フレームシート38の間隙部40に爪などが入っても、フレームシート38はベースシート32と広い面積で固着されているため、剥がれ落ちることはない。
【0066】
また、図4で示すように、中型キートップ34と同様に、確定キートップ35は、その底面35aの全面が印刷接着層39を介してベースシート32に固着されており、確定キートップ35とベースシート32との間に隙間が生じていない。一方、この確定キートップ35に隣接する環状キートップ36の外縁36aでは、環状キートップ36とベースシート32が固着されずに間隙部40を生じている。そのため、確定キートップ35は、必要な押込操作が可能であり、正確なスイッチ入力を行うことができる。
【0067】
特に、ベースシート32とフレームシート38の厚みを比較して、ベースシート32がフレームシート38よりも薄いフィルムで形成されている場合は、ベースシート32がキートップ33の押込み操作によって撓み易く、軽い入力荷重で入力操作可能とする機能を担い、厚いフレームシート38は、ベースシート32を補強してキーシート31全体の成形性保持する機能を担わせることができる。また、キートップ33が薄く、ベースシート32も薄い樹脂フィルムで形成されているため、キーシート31全体の膜厚を0.5mm〜1mm程度と大変薄くすることができる。また、ゴム状弾性体を用いずに樹脂フィルムを用いているため、所定の剛性があり、携帯電話機3のように操作開口3aが大きく設けられていてもキーシート31が撓みにくい。そのため、キーシートが撓むとしたら生じる問題、例えば、キートップと接点スイッチとの位置ずれによる操作不良、キートップごとに押圧ストローク量が相違することによる操作性の悪化、機器のデザイン性への悪影響、キートップどうしの潜り込みなどが殆ど生じることがない。
【0068】
本実施形態では、キートップ33とベースシート32の接着も、フレームシート38とベースシート32の接着も、ともに加熱により軟化または溶融する材料でなる溶剤希釈型インキを印刷して設けた印刷接着層としたが、環状キートップ36とベースシート32の間に形成する接着層、またはフレームシート38とベースシート32の間に形成する接着層などを印刷以外の塗布方法により設けても良く、UV硬化型接着剤や、瞬間接着剤の塗布などにより形成した単なる接着層とすることもできる。
【0069】
上記実施形態の変更例として、キートップの形や大きさ、数、配置の仕方などは、要求されるデザインや機器の種類に応じて変更することができる。
【0070】
また、本実施形態では携帯電話機3に用いられるキーシート31としたが、携帯電話機3以外の機器、例えば、PDA、カーナビゲーション装置、カーオーディオ装置の操作部に用いるキーシートとすることもできる。
【実施例】
【0071】
次に以下の実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明する。縦×横=5mm×10mmの中型キートップ(34)を有し、中型キートップ(34)間のフレームの間隔が2mmである縦×横=70mm×45mmの図2に示した形態のキーシート(31)を種々の材料を用いて製造した。
【0072】
実施例1(試料1〜4): まず、ポリカーボネート樹脂にて中型キートップ(34)、確定キートップ(35)、環状キートップ(36)、縦長キートップ(37)をそれぞれ形成し、厚さ0.3mmのPETフィルムにてフレームシート(38)を形成し、そして、以下の表1で示した材料にてベースシート(32)を形成した。次に、表1で示した印刷接着層(39)用のインキを用い、各キートップ(33)の底面(33a)にスクリーン印刷にて印刷接着層(39)を形成した。ここで、中型キートップ(34)、確定キートップ(35)は、その底面(35a)全面に印刷接着層(39)を形成した。また、環状キートップ(36)は、確定キートップ(35)に隣接する側の外縁(36a)で、環状キートップ(36)の外周から0.5mmまでの部分を除く底面(36a)全面に印刷接着層(39)を形成した。さらに、フレームシート(38)は、中型キートップ(34)に隣接する側の外縁(38a)で、フレームシート(38)の外周から0.5mmまでの部分を除く底面(36b)全面に印刷接着層(39)を形成した。印刷接着層(39)を設けていない部分を図14において斜線で示した。その後、各種キートップ(33)とフレームシート(38)、及びベースシート(32)を位置あわせした後、ベースシート(32)側からベースシート(32)の底面全面に加熱押圧具(43)として熱圧着機(「UP−DOWNプレス」商品名;NAVITAS社製)を用いて加熱、押圧した。加熱条件は、機械設定温度を180℃〜220℃とし、ベースシート(32)に直接触れるゴム押板の表面温度を140℃〜170℃とした。加圧力は1シート当たり100kg〜200kg、加圧時間は5秒〜10秒とした。そして、印刷接着層(39)が設けられた部分のみが固着した試料1〜試料4で示すキーシート(31)を得た。
【0073】
【表1】

【0074】
表1において、ベースシートAは、厚さ12μmの東レ社製「S10」(商品名)に対し、ポリエステル樹脂(東洋紡績社製「バイロン300」(商品名))を3μm塗布したものであり、ベースシートBは、ダイセル化学工業社製の「ダイアミド4100」(商品名)、ベースシートCは、シーダム社製の「DUS202」(商品名)である。また、ベースシートDは、厚さ20μmの2軸延伸ポリプロピレン、東セロ社製「V−OP」(商品名)であり、その表面にはkコート表面処理(塩化ビニリデンコート処理)がなされたものである。なお、表中のベースシートAとベースシートDに付された※印は、これらのシートが上述のように表面処理されていることを示している。そして、各シートの物性は、ベースシートAは、JIS−K7127に基づく引伸強さが2200kg/cm、伸びが150%、引張弾性率430kg/mm、ベースシートBは、ASTMD882−64Tに基づく引伸強さが450kg/cm、伸びが350%、引張弾性率20kg/mm、ベースシートCは、JIS−K7311に基づく引伸強さが450kg/cm、伸びが550%、引張弾性率80kg/mm、ベースシートDは、JIS−K7127に基づく引伸強さが1900kg/cm、伸びが100%、引張弾性率200kg/mmであった。
【0075】
また、表1において、接着層Aは、セイコーアドバンス社製「CAV透明」(商品名)、接着層Bは、セイコーアドバンス社製「JT94」(商品名)、接着層Cは、セイコーアドバンス社製「SG740」(商品名)で主剤100に対し硬化剤5を混合したもの、接着層Dは、セイコーアドバンス社製「JT20」(商品名)をそれぞれ印刷インキとして用いた。また、厚さは印刷後の固形分、即ち、印刷接着層(39)の厚さを示すものである。
【0076】
実施例2(試料5〜8): 実施例1においては、環状キートップ(36)とフレームシート(38)の底面(38b)の一部に印刷接着層(39)を設けたが、これに代えて、環状キートップ(36)とフレームシート(38)の底面(38b)全面に印刷接着層(39)を印刷した。その後、実施例1において、印刷接着層(39)用インキを塗布しなかった部分、即ち、環状キートップ(36)とフレームシート(38)のそれぞれの所定の外周から0.5mmまでの部分に、表2で示すマスキング層(42)用インキを印刷してマスキング層(42)を形成した。それ以外の条件は実施例1と同様にして試料5〜試料8で示すキーシート(31)を得た。
【0077】
【表2】

【0078】
表2において、ベースシートA〜ベースシートD、接着層A〜接着層Dは、表1と同じものである。また、マスキング層Aは、十条化工社製「PP4900」(商品名)、マスキング層Bは、セイコーアドバンス社製「HAC」(商品名)、マスキング層Cは、十条化工社製「SP700」(商品名)、マスキング層Dは、十条化工社製「PP4900」(商品名)である。
【0079】
実施例3(試料9〜16): 実施例1、実施例2においては、ベースシート(32)側からベースシート(32)の底面全面を熱圧着機によって加熱、押圧したが、これに代えて、実施例1における印刷接着層(39)を設けた部分に対応する部分のみを加熱、押圧した。こうして、実施例1、実施例2における試料1〜試料8と同様の原材料、構成である試料9〜試料19で示すキーシート(31)を製造した。
【0080】
【表3】

【0081】
【表4】

【0082】
表3、表4において、ベースシートA〜ベースシートD、接着層A〜接着層D、マスキング層A〜マスキング層Dは、表1または表2で示したものと同じものである。
【0083】
実施例4(試料17〜20): 実施例1において、環状キートップ(36)とフレームシート(38)をベースシート(32)と固着するにも表1に記載の印刷接着層(39)を用いたが、これに代えて、環状キートップ(36)とフレームシート(38)のベースシート(32)への接着については、UV硬化型接着剤を用いた。即ち、環状キートップ(36)とフレームシート(38)を除き、実施例1と同様にしてそれ以外のキートップ(33)をベースシート(32)に固着した後、環状キートップ(36)とフレームシート(38)の適当箇所にUV硬化型接着剤を滴下して、これらの部材を、環状キートップ(36)以外のキートップ(33)が固着したベースシート(32)に接着し、UV硬化型接着剤を硬化させた。それ以外は、実施例1と同様にして、試料17〜試料20としたキーシート(31)を得た。
【0084】
試料1〜試料20とした何れのキーシート(31)も、適度な剛性があり、携帯電話機3に搭載して不具合なくスイッチ入力を行うことができた。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図2で示す第1実施形態におけるキーシートを搭載した携帯電話機の外観図。
【図2】一実施形態におけるキーシートの平面図。
【図3】図2のSA−SA線断面図。
【図4】図2のSB−SB線断面図。
【図5】キーシートの製造過程を示す説明図。
【図6】キーシートの製造過程を示す説明図。
【図7】キーシートの製造過程を示す説明図。
【図8】キーシートの製造過程を示す説明図。
【図9】キーシートの製造過程を示す説明図。
【図10】キーシートの製造過程を示す説明図。
【図11】キーシートの製造過程を示す説明図。
【図12】キーシートの製造過程を示す説明図。
【図13】間隙部の有無によるベースシートの撓み状態の相違を示すキーシートの断面模式図であり、図13(A)は間隙部を有するキーシート、図13(B)は間隙部を有しないキーシート。
【図14】接着層の有無を示すキーシートの平面図。
【図15】図16で示す従来のキーシートを搭載した携帯電話機の外観図。
【図16】従来のキーシートの平面図。
【図17】図18で示す従来の別のキーシートを搭載した携帯電話機の外観図。
【図18】従来の別のキーシートの平面図。
【図19】図18で示すキーシートのSC−SC線断面図。
【符号の説明】
【0086】
1,2,3 携帯電話機(機器)
1a,2a,3a 操作開口
1b 仕切桟
11,21 キーシート(従来例)
12,22 ベースシート
22a ゴム状弾性体
22b 補強材
13,23 キートップ
31 キーシート(実施形態)
32 ベースシート
33 キートップ
33a 底面
34 中型キートップ
34a 底面
34b 側面
35 確定キートップ
35a 底面
35b 側面
36 環状キートップ
36a 外縁
36b 底面
37 縦長キートップ
38 フレームシート
38a 外縁
38b 底面
39 印刷接着層
39a 中型キートップの印刷接着層
39b フレームシートの印刷接着層
39c 縦長キートップの印刷接着層
39d 確定キートップの印刷接着層
39e 環状キートップの印刷接着層
40 間隙部(非拘束領域)
41 表示部
42 マスキング層
43 加熱押圧具(熱圧着機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キートップと、該キートップを載置する樹脂フィルムでなるベースシートとを接着層により固着するキーシートの製造方法であって、
キートップかベースシートの少なくとも何れか一方の対向面に、加熱により軟化又は溶融する原料を用い溶剤に溶解または分散させた溶剤希釈型インキ、または熱溶融させて液状としたインキを印刷して印刷接着層を形成して固化し、
次に、この印刷接着層を他方の対向面と接触させ、キートップの底面全面をベースシート側から加熱、押圧して印刷接着層を軟化又は溶融させた後硬化させ、キートップとベースシートとの間でキートップの側面と実質的に面一の側面を形成して、キートップとベースシートを固着するキーシートの製造方法。
【請求項2】
キートップと、該キートップを載置する樹脂フィルムでなるベースシートとを接着層により固着し、かつ、該キートップと並べてベースシートに配置する隣接キートップと該ベースシートとを接着層により固着するキーシートの製造方法であって、
キートップかベースシートの少なくとも何れか一方の対向面に、及び隣接キートップかベースシートの少なくとも何れか一方の対向面に、加熱により軟化又は溶融する原料を用い溶剤に溶解または分散させた溶剤希釈型インキ、または熱溶融させて液状としたインキを印刷して印刷接着層を形成して固化し、
次に、この印刷接着層を他方の対向面と接触させ、キートップの底面全面と隣接キートップのキートップ側の外縁を除く底面をベースシート側から加熱、押圧して印刷接着層を軟化又は溶融させた後硬化させ、
キートップとベースシートとの間でキートップの側面と実質的に面一の側面を形成してキートップをベースシートに固着するとともに、キートップと隣接する外縁側を除き隣接キートップの底面をベースシートに固着するキーシートの製造方法。
【請求項3】
キートップと、該キートップを載置する樹脂フィルムでなるベースシートとを接着層により固着するキーシートであって、
接着層が、加熱により軟化又は溶融する原料を用い溶剤に溶解または分散させた溶剤希釈型インキ、または熱溶融させて液状としたインキを印刷したものであり、キートップとベースシートの少なくとも何れかに印刷層として形成され、この印刷層を介してキートップとベースシートが接触して加熱、押圧されてキートップの底面全面とベースシートとが接着している印刷接着層であり、
印刷接着層が、キートップとベースシートとの間でキートップの側面と実質的に面一の側面を形成してキートップとベースシートとを固着しているキーシート。
【請求項4】
キートップと、該キートップを載置する樹脂フィルムでなるベースシートと、該キートップと並べてベースシートに配置する隣接キートップと、キートップとベースシート及び隣接キートップとベースシートとを固着する接着層とを備え、
接着層が、加熱により軟化又は溶融する原料を用い溶剤に溶解または分散させた溶剤希釈型インキ、または熱溶融させて液状としたインキを印刷したものであり、キートップとベースシートの少なくとも何れか、及び隣接キートップとベースシートの少なくとも何れかに印刷層として形成され、この印刷層を介してキートップとベースシート及び隣接キートップとベースシートが接触して加熱、押圧されて、キートップの底面全面とベースシート及びキートップと隣接する外縁側を除く隣接キートップの底面とベースシートとが接着している印刷接着層であり、
印刷接着層が、キートップとベースシートとの間でキートップの側面と実質的に面一の側面を形成してキートップとベースシートとを固着し、隣接キートップとベースシートとの間でキートップと隣接する外縁側を除く隣接キートップの底面でキートップとベースシートとを固着しているキーシート。
【請求項5】
キートップと、該キートップを載置するベースシートと、該キートップと並べてベースシートに配置する隣接キートップと、キートップとベースシート及び隣接キートップとベースシートとを固着する接着層と、を備え、
キートップとベースシートとを固着する接着層が、キートップの底面全面に形成してありキートップとベースシートとの間でキートップの側面と実質的に面一の側面を形成した印刷接着層であり、
隣接キートップとベースシートとを固着する接着層が、キートップと隣接する外縁側を除く隣接キートップの底面に形成した接着層であるキーシート。
【請求項6】
隣接キートップの接着層が印刷接着層である請求項5記載のキーシート。
【請求項7】
キートップと隣接キートップとが実質的に連続する面一の操作面を形成する請求項4〜請求項6何れか1項記載のキーシート。
【請求項8】
ベースシートの厚みが12μm〜150μmである請求項3〜請求項7何れか1項記載のキーシート。
【請求項9】
ベースシートのキートップを載置する側の表面が、キートップの載置面とそれ以外の面とで平坦な水平面を形成する請求項3〜請求項8何れか1項記載のキーシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−105053(P2009−105053A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306762(P2008−306762)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【分割の表示】特願2005−254216(P2005−254216)の分割
【原出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(000237020)ポリマテック株式会社 (234)
【Fターム(参考)】