説明

キースイッチ及びこれを有する電子機器

【課題】完全な誤操作防止機能を実現する押圧式のキースイッチを提供すること。
【解決手段】キートップ31と、キートップ31に対応する位置に接点スイッチ11を有するベース14と、接点スイッチ11を覆い被せるようにベース14上に載置されるとともにキートップ31からの押付によって弾性変形し、かつ、台状に形成された台状弾性体21と、を備え、台状弾性体21は、台21aの端部の一部に突出部(21b、21c、21d)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧式のキースイッチ及びこれを有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、PHS(パーソナルハンディフォンシステム)、PDA(携帯情報端末)などの携帯通信端末においては、狭い操作領域の中に複数のキースイッチが配置される潮流がある。そのような潮流において、誤って操作対象のキースイッチに隣接するキースイッチを作動させてしまう誤操作の防止が求められている。
【0003】
誤操作の防止の観点から、特許文献1に記載の押釦スイッチ(キースイッチ)では、接点スイッチとキートップとの間に、硬質シートと軟質シートとが互いに固着されずに配置されている。また、このキースイッチでは、軟質シートの上にキートップが接着剤によって固定され、押下時に硬質シートは軟質シートと独立して撓むため、硬質シートと軟質シートとの間に間隙が発生する構造となっている。このように、押下時に硬質シートが隣接するキースイッチと連動することなく撓むことで各キースイッチが独立に動作するので、操作対象のキースイッチに隣接するキースイッチの連動による誤入力を防止することができる構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−16187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のキースイッチの構造では、指が触れるなどで操作対象のキースイッチに隣接するキースイッチに押下力が加わる場合、隣接するキースイッチが作動してしまい、その誤操作防止機能が失われてしまう。そのため、キースイッチとしての誤操作防止機能は十分ではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の視点においては、キースイッチにおいて、キートップと、前記キートップに対応する位置に接点スイッチを有するベースと、前記接点スイッチを覆い被せるように前記ベース上に載置されるとともに前記キートップからの押付によって弾性変形し、かつ、台状に形成された台状弾性体と、を備え、前記台状弾性体は、台の端部の一部に突出部を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の前記キースイッチにおいて、前記突出部は、前記台が前記キートップからの押付を受けたときに押付方向に平行でない方向が広がるように構成されることが好ましい。
【0008】
本発明の前記キースイッチにおいて、前記台は、前記キートップからの押付を受ける天板部を備え、前記突出部は、前記天板部の側端面の所定の位置から延在するとともに前記キートップからの押付により弾性変形する側壁部と、前記側壁部から延在するとともに前記ベース上でスライド可能な足部と、前記足部から前記キートップ側に突出した突起部と、を備えることが好ましい。
【0009】
本発明の前記キースイッチにおいて、前記側壁部の一部又は全部は、前記台状弾性体における前記側壁部以外の部分の剛性よりも低くなるように構成されていることが好ましい。
【0010】
本発明の前記キースイッチにおいて、前記台状弾性体は、前記側壁部と前記足部との結合部分に切欠部を有することが好ましい。
【0011】
本発明の前記キースイッチにおいて、前記台状弾性体と前記キートップとの間に配置されたキーシートを備えることが好ましい。
【0012】
本発明の前記キースイッチにおいて、前記キートップは、前記キーシートと一体であることが好ましい。
【0013】
本発明の前記キースイッチにおいて、前記台上に配置されたスペーサを備えることが好ましい。
【0014】
本発明の前記キースイッチにおいて、前記側壁部が弾性変形して前記足部がスライド可能となるように前記台状弾性体を前記ベースに固定する固定シートを備え、前記ベースは、前記台状弾性体側の面において、前記接点スイッチが搭載されるスイッチ搭載部の周囲に、前記スイッチ搭載部よりも低い凹部を有し、前記足部は、前記凹部の底面上でスライド可能に配され、前記固定シートは、前記足部上を通るように配された梁部を有することが好ましい。
【0015】
本発明の前記キースイッチにおいて、前記台状弾性体は、金属板よりなることが好ましい。
【0016】
本発明の前記キースイッチにおいて、前記キートップの厚みは、中央が厚く、かつ、端部が薄いことが好ましい。
【0017】
本発明の前記キースイッチにおいて、前記キートップと隣接して配された他のキートップと、前記ベース上の前記他のキートップと対応する位置に配された他の接点スイッチと、前記他の接点スイッチを覆い被せるように前記ベース上に載置されるとともに、前記他のキートップからの押付によって弾性変形し、かつ、前記台状弾性体と同様な構成部を有する他の台状弾性体と、を備え、前記台状弾性体及び前記他の台状弾性体は、それぞれ、前記側壁部を少なくとも2個以上有し、前記台状弾性体の前記側壁部は、前記他の台状弾性体の前記側壁部と対向して配置され、前記台状弾性体の前記足部は、前記他の台状弾性体の前記足部と抵触しないように配置されることが好ましい。
【0018】
本発明の前記キースイッチにおいて、前記台状弾性体の前記突起部は、前記台状弾性体が前記キートップからの押付を受けたときに、前記他の台状弾性体の前記天板部と前記ベースとの間に挿入されることが好ましい。
【0019】
本発明の第2の視点においては、電子機器において、前記キースイッチを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、キートップと接点スイッチとの間に配された台状弾性体の天板部の側端面の所定の位置から延在した部分にキートップ側に突出した突起部を設けることで、押付操作対象のキートップを操作した時に、当該突起部が隣接するキートップの天板部の下に挿入され、隣接するキートップに係る台状弾性体のベース層側への動きが規制されるので、隣接するキートップを誤って作動させてしまう誤操作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1に係るキースイッチの構成を模式的に示した断面図である。
【図2】本発明の実施例1に係るキースイッチにおける台状弾性体の構成を模式的に示した斜視図である。
【図3】本発明の実施例1に係るキースイッチにおける台状弾性体の側壁部の形状パターンを模式的に示した(A)テーパ形状型、(B)凸形状型、(C)凹形状型の概略断面図である。
【図4】本発明の実施例1に係るキースイッチにおける台状弾性体の変形例の構成を模式的に示した斜視図である。
【図5】本発明の実施例1に係るキースイッチの構成を模式的に示した分解斜視図である。
【図6】本発明の実施例1に係るキースイッチの押付操作を説明するための(A)押付操作前の断面図、(B)押付操作後の断面図である。
【図7】本発明の実施例2に係るキースイッチの構成を模式的に示した断面図である。
【図8】本発明の実施例2に係るキースイッチの構成を模式的に示した分解斜視図である。
【図9】本発明の実施例3に係るキースイッチの構成を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態に係るキースイッチでは、キートップ(図1の31)と、前記キートップに対応する位置に接点スイッチ(図1の11)を有するベース(図1の14)と、前記接点スイッチを覆い被せるように前記ベース上に載置されるとともに前記キートップからの押付によって弾性変形し、かつ、台状に形成された台状弾性体(図1の21)と、を備え、前記台状弾性体は、台(図1の21a)の端部の一部に突出部(図1の21b、21c、21d)を有する。
【実施例1】
【0023】
本発明の実施例1に係るキースイッチについて図面を用いて説明する。図1は、本発明の実施例1に係るキースイッチの構成を模式的に示した断面図である。図2は、本発明の実施例1に係るキースイッチにおける台状弾性体の構成を模式的に示した斜視図である。図3は、本発明の実施例1に係るキースイッチにおける台状弾性体の側壁部の形状パターンを模式的に示した(A)テーパ形状型、(B)凸形状型、(C)凹形状型の概略断面図である。図4は、本発明の実施例1に係るキースイッチにおける台状弾性体の変形例の構成を模式的に示した斜視図である。図5は、本発明の実施例1に係るキースイッチの構成を模式的に示した分解斜視図である。
【0024】
キースイッチは、押しボタン式のスイッチであり、携帯電話、PHS(パーソナルハンディフォンシステム)、PDA(携帯情報端末)などの携帯通信端末、パーソナルコンピュータやワークステーション等の設置型電算機、及び入力操作を必要とする電子機器全般に適用および搭載することができるものである。キースイッチは、ベース層10側からベース層10、台状弾性体層20、キートップ層30の順に積層した構成となっている(図1、図5参照)。
【0025】
ベース層10は、ベース14上にキースイッチ用回路(図示せず)が形成されており、キースイッチ用回路においてキートップ層30のキートップ31、32、33(又は台状弾性体21、22、23)と対応する位置に接点スイッチ11、12、13がアレイ状(ライン状でも可)に配置された層である(図1、図5参照)。
【0026】
ベース14は、キースイッチ用回路(図示せず)が形成された基材(基体)である。なお、ベース14は、回路配線が直接形成されたものでなく、回路配線が形成された基体と金属や樹脂などの剛性の高い基板とを固着して、一体としたものでもよい。固着方法の例として、接着剤による接着や粘着テープによる貼り付け、熱による溶着等が挙げられる。ベース14上には、台状弾性体21の足部21cが載置されている(台状弾性体22、23の足部についても同様)。
【0027】
接点スイッチ11、12、13は、押付操作の作用により当該キースイッチ用回路を作動させるスイッチである。接点スイッチ11、12、13には、例えば、ドーム状スイッチ、バネ状スイッチ、メンブレンスイッチ、静電容量型スイッチなどを用いることができる。接点スイッチ11、12、13は、ベース14上のキースイッチ用回路に対応する位置に配置され、接着剤、粘着シート、ハンダ付け、熱溶着などの接着手段によってベース14に固定されている。接点スイッチ11、12、13は、対応する台状弾性体21、22、23の天板部21a、22a、23aと対向している。
【0028】
台状弾性体層20は、複数の台状弾性体21、22、23がアレイ状(ライン状でも可)に組み合わさって配列された層である(図1、図5参照)。台状弾性体層20では、隣り合う台状弾性体21、22、23の足部21cが互いに抵触しないように配されている。なお、台状弾性体層20は、複数の接点スイッチ11、12、13を1個の台状弾性体が覆うような構成であってもよい。
【0029】
台状弾性体21、22、23は、台状に形成した弾性体である(図1、図2参照)。台状弾性体21、22、23は、対応する接点スイッチ11、12、13を覆い被せるようにベース14上に載置されている。つまり、台状弾性体21、22、23は、天板部21a、22a、23aが接点スイッチ11、12、13と対向するとともに、足部21cがベース14上に載置されるように配置されている。台状弾性体21、22、23は、キートップ層30側からベース層10側への押付によって変形し、かつ、押付を解除すれば押付前の状態に復元する復元力がある。そのため、台状弾性体21、22、23の材料には、SUS系材料などの金属、ポリエチレンテレフタレート系、ポリカーボネート系、塩化ビニル系などの樹脂などのように弾性強度の強いものを用いることが好ましい。台状弾性体21、22、23には、金属板を加工したものを用いることができる。台状弾性体21は、構成部分として、天板部21aと、側壁部21bと、足部21cと、突起部21dと、押し子21eとから構成されている(図2参照)。各構成部21a〜21eは、一体の成形物で構成されてもよい。台状弾性体22、23も、台状弾性体21と同様な構成部分から構成されている。なお、各台状弾性体21、22、23の構成部については、台状弾性体21の構成部に着目して、以下説明する。
【0030】
天板部21aは、台状弾性体21における台の上部(天板面)に配された部分である。天板部21aのキートップ層30側から見たときの形状は、側壁部21bが結合できる形状になっており、例えば、正方形状や長方形状、多角形状、円状、楕円状、又はそれらを組み合わせた形状などにすることができる。天板部21aの表面形状(キートップ層30側の面、ベース層10側の面の形状)は、図1では平面となっているが、キートップ層30側の面、及び、ベース層10側の面の一方又は両方が凸状曲面形状、凹状曲面形状、ベース14または足部21cと平行でない形状などにすることができる。天板部21aは、側端面において、隣接する各台状弾性体22、23に対応するように、側壁部21bと結合する少なくとも1個以上(図2では6個)の結合部21fを有するとともに、側壁部21bと結合しない少なくとも1個以上(図2では6個)の非結合部21gを端部に有する。天板部21aのキートップ層30側の面は、部分的又は全体的にキーシート34のベース層10側の面に固着されている。天板部21aのベース層10側の面は、ベース14のキートップ層30側の面と所定の間隔をおいて対向するように配されている。天板部21aのベース層10側の面には、接点スイッチ11、12、13の頂部と対応する位置に押し子21eが形成されている。
【0031】
側壁部21bは、台状弾性体21における台の側壁部に配された部分である。側壁部21bは、天板部21aの側端面の所定の位置に結合されるとともに、天板部21aから外側の斜めのベース層10側に延在している。つまり、側壁部21bは、天板部21a及び足部21cに対して平行でなく、かつ、天板部21aとの結合部21fから天板部21aの外側に向かって延在している。側壁部21bの形状は、図3(A)に示すような平坦なテーパ形状、図3(B)に示すようなキートップ層30側に膨らんだ曲面形状、図3(C)に示すようなキートップ層30側から凹んだ曲面形状などにすることができる。側壁部21bの幅については、図2では一定の幅であるが、隣接する台状弾性体22、23の側壁部と抵触(干渉)しなければ一定(一様)である必要はない。そのため、側壁部21bは、例えば、テーパ形状や楕円形状などのような、幅が一定(一様)でない形状でもよい。側壁部21b、及び、側壁部21bと天板部21aとの結合部分(結合部21f)は、天板部21aより剛性が低いことが好ましい。例えば、側壁部21b、及び、側壁部21bと天板部21aとの結合部分の厚みを他の部分より薄くした構造や、側壁部21b、及び、側壁部21bと天板部21aとの結合部分の一部を切り欠いた構造にすることができる。また、側壁部21bと天板部21aとの結合部分を蛇腹状にして復元力を発生する構造としてもよい。
【0032】
足部21cは、側壁部21bの先端部分に結合されるとともに、側壁部21bから水平方向(天板部21aのキートップ層30側の面と同じ方向)の外側に延在した足状の部分である。足部21cのベース層10側の面は、ベース14のキートップ層30側の面に対してスライド可能なスライド面となる。足部21cのベース層10側の面は、押付操作中にベース14のキートップ層30側の面をスライドするので、摩擦係数を低減した状態が好ましい。そのため、足部21cのベース層10側の面は、低摩擦係数となるように、例えば、研磨仕上げされた状態、フッ素系の表面処理が施された状態、シリコン系やフッ素系などからなる低摩擦の塗装を設けた状態などにすることができる。足部21cと側壁部21bとの結合部分は、足部21cや突起部21dより剛性が低いことが好ましい。例えば、足部21cと側壁部21bとの結合部分の厚みを他の部分より薄くした構造や、図4に示すような足部21cと側壁部21bとの結合部分の一部を切り欠いた切欠部21hを有する構造とすることができる。
【0033】
突起部21dは、足部21cの先端部に結合されるとともに、足部21cから垂直方向(天板部21aのキートップ層30側の面に対する垂直方向)のキートップ層30側に突出した部分である。突起部21dは、台状弾性体21に係るキートップ31の押付操作中に、隣接する台状弾性体22、23に係るキートップ32、33の誤操作を防止するために、台状弾性体22、23の天板部がベース層10側に移動するのを係止するストッパとなる。突起部21dの高さは、押し子21eの厚みと押付操作完了時の接点スイッチ11の厚みとの和より大きく、かつ、ベース14のキートップ層30側の面から天板部21aのベース層10側の面までの距離(高さ)より小さい寸法である。したがって、突起部21dの形状は、直方体、立方体、半球、半楕円球、角錐状、円錐状などの突起形状であればよい。また、突起部21dは、足部21cと一体の成形物でも、接着剤による接着や融解物の凝固などで足部21c上に成形、構成されてもよい。突起部21dは、隣接する台状弾性体22、23に対して少なくとも1個以上あればよい。また、突起部21dは、接点スイッチ11、12、13上に配置されてもよい。
【0034】
押し子21eは、天板部21aのベース層10側の面において接点スイッチ11と対向する位置から突出した部分である(図1参照)。押し子21eは、押付操作によってキートップ31に加えられた荷重を接点スイッチ11に伝える際に、荷重の分散を防ぐ効果がある。そのため、押し子21eは、台状弾性体21と分離していてもよく、天板部21aに配置されずに天板部21aと接点スイッチ11との間に配置されていれば、同様の効果がある。
【0035】
台状弾性体層20において、台状弾性体21、22、23の配置関係は、互いに隣接する台状弾性体21、22、23の側壁部21bのある部分とない部分が互い違いに交錯するように配置される(図1、図5参照)。また、台状弾性体層20において、台状弾性体21の突起部21dの頂面と、隣接する台状弾性体22、23の天板部のベース層10側の面との最小距離は、押付操作時に側壁部21bが外側に広がるように潰れ、突起部21dがベース14の面方向に移動する距離より短い。また、全ての台状弾性体21、22、23の大きさは均一なくてもよく、台状弾性体21の突起部21dの頂面と、隣接する台状弾性体22、23の天板部16aのベース層10側の面との最小距離の条件を満たしていれば、台状弾性体21、22、23の大きさは互いに異なっていてもよい。
【0036】
キートップ層30は、キーシート34上に複数のキートップ31、32、33が配置された層である(図1、図5参照)。
【0037】
キートップ31、32、33は、押しボタンである。キートップ31、32、33は、キーシート34の表面にて、接点スイッチ11、12、13と対応する位置に固着されている。キートップ31、32、33は、表面が電子機器の外部に露出し、人の指などによる押付操作を受ける。キートップ31、32、33には、その表面やその反対面に、数字や文字、記号、模様などの模様が印刷、刻印、金属箔の転写などにより施されている。キートップ31、32、33の表面は、平坦でなくてもよい。各キートップ31、32、33の配置は、押付操作に対応する各接点スイッチ11、12、13のキートップ層30側にて台状弾性体21、22、23とキーシート34を介して配置される。また、1個のキートップ31、32、33が複数の接点スイッチ11、12、13にまたがるような配置でもよい。
【0038】
キーシート34は、片面または両面の一部に粘着部を備えた剛性の低いシートである。キーシート34には、ベース層10側の面にて台状弾性体21、22、23の天板部21aのキートップ層30側の面の一部又は全部が固着されるとともに、表面にてキートップ31、32、33の一部又は全部が固着される。キーシート34とキートップ31、32、33及び台状弾性体21、22、23との固着方法として、接着剤や粘着テープなどによる接着や熱などによる溶着などが挙げられる。また、キーシート34とキートップ31、32、33とは、UV硬化やモールド成形などによって成形された一体物であってもよい。キーシート34の材料は、シリコン系ゴムやエラストマーなどの低弾性材料を用いることが好ましい。また、キーシート34の厚みは、0.1mm程度かそれ以下の厚みであることが好ましい。これは、押付時に隣接するキースイッチの連動が抑制され、押付操作に必要な荷重が減少され、操作者の押付操作時の負担を軽減する効果がある。
【0039】
以上のような構成のキースイッチの電子機器への設置については、ベース14(接点スイッチ11、12、13付き)とキーシート34(台状弾性体21、22、23、キートップ31、32、33付き)とを電子機器に設置する。設置方法として、ネジ止め、カシメ、熱による溶着、接着剤や低融点固体による接着、粘着シートによる貼り付け、電子機器の筐体部品による挟持などが挙げられる。また、ベース14とキーシート34を別々に筐体に設置せず、両部材の一部を固着し、一体の部材とした後に、前記の設置方法で筐体に設置してもよい。
【0040】
次に、本発明の実施例1に係るキースイッチが押付操作を受けたときの挙動とその作用について説明する。図6は、本発明の実施例1に係るキースイッチの押付操作を説明するための(A)押付操作前の断面図、(B)押付操作後の断面図である。
【0041】
キースイッチが押付操作を受ける際、人の指腹部が、例えば、キートップ31の表面を押付けると、キートップ31がベース層10側に移動する。キートップ31の移動により、キーシート34を介して台状弾性体21の天板部21aにベース層10側への荷重が伝達する。台状弾性体21への荷重により、剛性の低い側壁部21bがベース層10側に潰れるように変形し、足部21cがベース14に沿って天板部21aから離れる方向にスライドする。その結果、足部21c上に配置された突起部21dも足部21cと連動して天板部21aから離れる方向に移動し、突起部21dが隣接する台状弾性体22、23の天板部22a、23aとベース14との間に挿入される。天板部22a、23aとベース14との間に突起部21dが挿入された状態では、誤操作でキートップ32、33を押付けても突起部21dによって天板部22a、23aのベース層10側への動きが規制され、接点スイッチ12、13が作動しなくなるとともに、台状弾性体22、23がそれ以上ベース層10側に潰れる変形が発生せず、台状弾性体22、23の突起部22d、23dが押付操作対象のキートップ31に係る台状弾性体21の天板部21aとベース14との間に挿入されないので、押付操作対象のキートップ31に係る接点スイッチ11の作動を阻害しない。
【0042】
また、押付操作終了後に押付荷重が開放された状態においては、台状弾性体21、及び隣接する台状弾性体22、23は、自身の弾性またはキーシート34の弾性により、それぞれ押付操作前の形状に復帰する。
【0043】
また、指腹部の中心が凸であるという人の指形状の特徴上、押付操作対象のキートップ31が隣接するキートップ32、33bより先に押下される。そのため、押付操作対象のキートップ31に係る台状弾性体21の突起部21dは、隣接するキートップ32、33に係る台状弾性体22、23の天板部22a、23aの下に挿入されるが、隣接するキートップ32、33に係る台状弾性体22、23の突起部22d、23dは、押付操作対象のキートップ31に係る台状弾性体21の天板部21aの下に挿入されない。そのため、押付操作対象のキートップ31に係るキースイッチのみが作動し、隣接するキートップ32、33に係るキースイッチは作動することがない。
【0044】
実施例1によれば、対応するキートップ31、32、33と接点スイッチ11、12、13との間に配された台状弾性体21、22、23の天板部21aの側端面の所定の位置から延在した部分にキートップ側に突出した突起部21dを設けることで、押付操作対象のキートップ21を操作した時に、当該突起部21dが隣接するキートップ22、23の天板部の下に挿入され、隣接するキートップ32、33に係る台状弾性体22、23のベース層10側への動きが規制されるので、隣接するキートップ32、32に係る接点スイッチ12、13を誤って作動させてしまう誤操作を防止することができる。
【実施例2】
【0045】
本発明の実施例2に係るキースイッチについて図面を用いて説明する。図7は、本発明の実施例2に係るキースイッチの構成を模式的に示した断面図である。図8は、本発明の実施例2に係るキースイッチの構成を模式的に示した分解斜視図である。
【0046】
実施例2に係るキースイッチでは、実施例1に係るキースイッチの構成に、網状(格子状)で剛性の高い板状の固定シート50を、台状弾性体層20とキートップ層30の間に配置するとともに、ベース44におけるスイッチ搭載部44a、44b、44c間の領域に凹部44dを設けたものである。その他の台状弾性体層20、キートップ層30、接点スイッチ41、42、43の構成は実施例1と同様である。
【0047】
ベース44は、実施例1のベース(図1の14)と同様に、キースイッチ用回路(図示せず)が形成された基材(基体)である。また、ベース44の表面において、接点スイッチ41、42、43が搭載されていない領域では、台状弾性体21、22、23の足部(図7では21cのみ指示)が載置される領域にスイッチ搭載部44a、44b、44cのキートップ層30側の面より低い凹部44dが形成されている。スイッチ搭載部44a、44b、44cのキートップ層30側の面と凹部44dの底面との高低差は、台状弾性体21、22、23の突起部21d、22d、23dが存在しない領域の足部の高さ(厚さ)より高い。凹部44dの表面上には、台状弾性体21、22、23の足部(図7では21cのみ指示)の底面がスライド可能に配置されている。凹部44dの水平方向幅は、台状弾性体21、22、23を押し潰して足部(図7では21cのみ指示)が広がった時に凹部44dの側壁面に係止されないように設定されている。
【0048】
固定シート50は、網状(格子状)で剛性の高い板状(シート状)の部材である。固定シート50は、台状弾性体21、22、23を押し潰し可能(側壁部が押し潰れて足部がスライド可能)にベース44に位置固定する。固定シート50は、ベース44の表面のうちスイッチ搭載部44a、44b、44及び凹部44dが存在しない領域の一部に固着される。固定シート50とベース44との固着方法は、接着剤を用いた接着や熱による溶着、ボスと孔を設けたカシメ、スポット溶接などにより実現される。固定シート50は、台状弾性体層20とキートップ層30との間に配置される。固定シート50は、隣接する台状弾性体21、22、23の足部(図7では21cのみ指示)上における突起部21d、22d、23d間のスペースを通るように配された梁部を有する。固定シート50の梁部で囲まれた空所には、各台状弾性体21、22、23の台状部分(天板部、側壁部を含む部分)が配置されている。なお、台状弾性体21の台状部分以外の部分(突起部21d、22d、23dを含む部分)は、隣接する台状弾性体22、23の台状部分を囲む固定シート50の空所に配置されることになる。
【0049】
固定シート50は、導光材や照光材、配線材を用いて構成することができる。固定シート50を導光材や照光材とした場合、キースイッチへの照光を行うことができ、薄型化を実現するという効果がある。また、固定シート50を配線材としても、同様に薄型化を実現できるという効果がある。
【0050】
実施例2によれば、実施例1と同様な効果を奏するとともに、以下のような効果を奏する。つまり、実施例2に係るキースイッチでは、ベース44の凹部44dの底面と固定シート50のベース層10側の面との間に間隙が発生する。当該間隙中に台状弾性体21、22、23の足部(図7では21cのみ指示)が配置されることで、押付操作時に、例えば、台状弾性体21が変形する際の側壁部21bの変形を促す。つまり、当該間隙は、足部21c及び突起部21dが台状弾性体21の外側に広がる際のガイドとなる。その結果、突起部21dが隣接する台状弾性体22、23の天板部とベース44との間に挿入される機構が、狭い空間内で実現される。また、固定シート50がベース44に固着されるため、キースイッチの剛性を向上させることができる。
【実施例3】
【0051】
本発明の実施例3に係るキースイッチについて図面を用いて説明する。図9は、本発明の実施例3に係るキースイッチの構成を模式的に示した断面図である。
【0052】
実施例3に係るキースイッチでは、実施例1(図1参照)のようにキーシート34のベース層10側の面に台状弾性体21、22、23を直接固着せず、台状弾性体21、22、23ごとに分けられたスペーサ60を介してキーシート34と台状弾性体21、22、23を固定したものである。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0053】
スペーサ60は、一方の面(ベース層10側の面)を台状弾性体21、22、23の天板部21aのキートップ層30側の面の一部又は全部に固着され、他方の面(キートップ層30側の面)をキーシート34のベース層10側の面の所定の領域の一部又は全部に固着される。スペーサ60は、押付方向から見て、対応する台状弾性体21、22、23の天板部(図9では21aのみ指示)の領域に配される。スペーサ60の押付方向から見たときの形状として、例えば、多角形、円形、楕円形、またはそれらを組み合わせた形状などが挙げられる。スペーサ60には、圧縮方向の歪が小さい材料が用いることができる。
【0054】
実施例3によれば、実施例1と同様な効果を奏するとともに、スペーサ60を介してキーシート34と台状弾性体21、22、23とを固着することで、台状弾性体21、22、23及びキートップ31、32、33の剛性が向上し、押付操作の安定性を向上させることができる。また、台状弾性体21、22、23の天板部(図9では21aのみ指示)の剛性が側壁部(図9では21bのみ指示)と比較して向上するため、押下荷重が分散せずに台状弾性体21、22、23が潰れる変形が容易となり、足部(図9では21cのみ指示)と突起部(図9では21cのみ指示)の移動が滑らかになるという効果も有する。
【0055】
なお、本発明のスイッチ機構及び電子機器は、上記実施例に基づいて説明されているが、上記実施例に限定されることなく、本発明の範囲内において、かつ本発明の基本的技術思想に基づいて、上記実施例に対し種々の変形、変更及び改良を含むことができることはいうまでもない。また、本発明の請求の範囲の枠内において、種々の開示要素の多様な組み合わせ・置換ないし選択が可能である。
【0056】
また、上記実施例において、台状弾性体、キートップ、接点スイッチ等についてアレイ状に配置されることを前提に説明したが、これに限定されるものではなく、アレイ状に配置されない場合も本発明は有効である。
【符号の説明】
【0057】
10 ベース層
11、12、13 接点スイッチ
14 ベース
20 台状弾性体層
21、22、23 台状弾性体
21a、22a、23a 天板部(台)
21b、22b、23b 側壁部(突出部)
21c 足部(突出部)
21d、22d、23d 突起部(突出部)
21e、22e、23e 押し子
21f 結合部
21g 非結合部
21h 切欠部
30 キートップ層
31、32、33 キートップ
34 キーシート
40 ベースユニット
41、42、43 接点スイッチ
44 ベース
44a、44b、44c スイッチ搭載部
44d 凹部
50 固定シート
60 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キートップと、
前記キートップに対応する位置に接点スイッチを有するベースと、
前記接点スイッチを覆い被せるように前記ベース上に載置されるとともに前記キートップからの押付によって弾性変形し、かつ、台状に形成された台状弾性体と、
を備え、
前記台状弾性体は、台の端部の一部に突出部を有することを特徴とするキースイッチ。
【請求項2】
前記突出部は、前記台が前記キートップからの押付を受けたときに押付方向に平行でない方向が広がるように構成されることを特徴とする請求項1記載のキースイッチ。
【請求項3】
前記台は、前記キートップからの押付を受ける天板部を備え、
前記突出部は、前記天板部の側端面の所定の位置から延在するとともに前記キートップからの押付により弾性変形する側壁部と、前記側壁部から延在するとともに前記ベース上でスライド可能な足部と、前記足部から前記キートップ側に突出した突起部と、を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のキースイッチ。
【請求項4】
前記側壁部の一部又は全部は、前記台状弾性体における前記側壁部以外の部分の剛性よりも低くなるように構成されていることを特徴とする請求項3記載のキースイッチ。
【請求項5】
前記台状弾性体は、前記側壁部と前記足部との結合部分に切欠部を有することを特徴とする請求項3又は4記載のキースイッチ。
【請求項6】
前記台状弾性体と前記キートップとの間に配置されたキーシートを備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載のキースイッチ。
【請求項7】
前記キートップは、前記キーシートと一体であることを特徴とする請求項6記載のキースイッチ。
【請求項8】
前記台上に配置されたスペーサを備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一に記載のキースイッチ。
【請求項9】
前記側壁部が弾性変形して前記足部がスライド可能となるように前記台状弾性体を前記ベースに固定する固定シートを備え、
前記ベースは、前記台状弾性体側の面において、前記接点スイッチが搭載されるスイッチ搭載部の周囲に、前記スイッチ搭載部よりも低い凹部を有し、
前記足部は、前記凹部の底面上でスライド可能に配され、
前記固定シートは、前記足部上を通るように配された梁部を有することを特徴とする請求項3乃至8のいずれか一に記載のキースイッチ。
【請求項10】
前記台状弾性体は、金属板よりなることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一に記載のキースイッチ。
【請求項11】
前記キートップの厚みは、中央が厚く、かつ、端部が薄いことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一に記載のキースイッチ。
【請求項12】
前記キートップと隣接して配された他のキートップと、
前記ベース上の前記他のキートップと対応する位置に配された他の接点スイッチと、
前記他の接点スイッチを覆い被せるように前記ベース上に載置されるとともに、前記他のキートップからの押付によって弾性変形し、かつ、前記台状弾性体と同様な構成部を有する他の台状弾性体と、
を備え、
前記台状弾性体及び前記他の台状弾性体は、それぞれ、前記側壁部を少なくとも2個以上有し、
前記台状弾性体の前記側壁部は、前記他の台状弾性体の前記側壁部と対向して配置され、
前記台状弾性体の前記足部は、前記他の台状弾性体の前記足部と抵触しないように配置されることを特徴とする請求項3乃至11のいずれか一に記載のキースイッチ。
【請求項13】
前記台状弾性体の前記突起部は、前記台状弾性体が前記キートップからの押付を受けたときに、前記他の台状弾性体の前記天板部と前記ベースとの間に挿入されることを特徴とする請求項12記載のキースイッチ。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一に記載のキースイッチを有することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−187269(P2011−187269A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50201(P2010−50201)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】