説明

キースイッチ

【課題】異物が可動接点と固定接点との間に挟まれて接点間の接触不良等の問題が引き起
こすことを防止して、安定したスイッチ機能を長期にわたって維持できるキースイッチを
提供すること。
【解決手段】基板11上の固定接点13と対向する位置に可動接点15を支持する接点支
持体17が、基板11との間に閉空間23を画成すると共に、基板11には、接点支持体
17の移動操作時における閉空間23の容積減少に相応して閉空間23内の空気を基板1
1の裏面側に出入りさせる貫通孔25が設けられ、貫通孔25に接近する位置には、貫通
孔25を出入りする空気中の異物を捕捉する異物捕捉手段31を備えて、接点間に異物が
挟まれることを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面に設けられた固定接点と、前記基板表面から離れて前記固定接点に
対向配置される可動接点と、前記可動接点を固定接点から離間した位置に弾性支持する接
点支持体とを備え、前記接点支持体を基板側に移動操作することで、可動接点が固定接点
に接触した状態を得るキースイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話や、モバイルパソコン、電子辞書、固定電話等の電子機器において、入力操作
部に使用するキースイッチ(押下式スイッチ)として、基板表面に設けられた固定接点と
、前記基板表面から離れて前記固定接点に対向配置される可動接点と、前記可動接点を固
定接点から離間した位置に弾性支持する接点支持体とを備え、前記接点支持体を基板側に
移動操作することで、可動接点が固定接点に接触した状態を得て、所定の信号出力を行う
スイッチが多数使用されている。
【0003】
このようなキースイッチは、組み立て作業時等に、可動接点と固定接点との間の空間に
微細な異物が混入してしまうと、スイッチ操作時に、可動接点と固定接点との間に異物が
挟まれることで、接点間の接触不良による機能障害を招いたり、あるいは、スイッチ操作
をしないのに、異物により接点が短絡して、機能障害を招く虞がある。
【0004】
そこで、通常、このようなキースイッチの組み立て作業は、異物の侵入が生じないよう
に清浄環境に整備されたクリーンルーム内で慎重に行うようにしている。
【0005】
また、前述した携帯電話やモバイルパソコンなどでは、比較的小型の多数のキースイッ
チを、固定接点を有した基板上に所定の整列状態に載置して、その上に、各キースイッチ
の頂部が突出する開口を多数形成したケースカバーを被せることで、各キースイッチを位
置決めするような組み立て方法が採用される場合がある。
【0006】
このような組み立て方法を実施する際、固定接点を有した基板上に並べた多数のキース
イッチの一部が、振動等で不用意に位置ずれを起こすと、位置ずれしたキースイッチはケ
ースカバーの開口に整合できず、組み立てができなくなってしまう。
【0007】
そこで、キースイッチ(押釦スイッチ)が載置される基板には、予め、各キースイッチ
が載置される位置に吸引用の貫通孔を設けて置き、基板の裏面側から各貫通孔に負圧吸引
力を作用させることで、基板上に載置されたスイッチを基板に仮固定するようにしたスイ
ッチの構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−307590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前述のようにクリーンルーム内でキースイッチの組み立て作業を実施するこ
とで、組み立て作業時に、可動接点と固定接点との間の空間に微細な異物が混入するとい
う不都合を防止でき、スイッチ性能の信頼性を向上させることができる。
【0009】
しかし、クリーンルーム内での組み立てを実施することで、当初は可動接点と固定接点
との間の空間に異物が存在しない状態に管理しても、従来のキースイッチは、使用中に発
生する摩耗粉等の異物の除去については配慮されていないため、スイッチ操作の繰り返し
により、可動接点と固定接点との間の空間に、スイッチ摺動部等における摩耗粉等が発生
し、この摩耗粉が可動接点と固定接点との間に挟まれることで、接点間の接触不良等の問
題が発生する虞があった。
【0010】
また、上記特許文献1に記載のように、キースイッチを載置する基板に負圧吸引用の貫
通孔を形成した構成の場合には、スイッチの押下後の可動接点の復帰動作によって、基板
裏面側の空気が前記貫通孔を介して可動接点と固定接点との間の空間に吸い込まれる。そ
して、吸い込まれる空気と一緒に、基板裏面側の塵埃等が可動接点と固定接点との間の空
間に侵入して、接点間の接触不良等の問題が発生する虞があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は上記課題を解消することに係り、使用中に摺動部の摩耗等によ
り発生した異物が可動接点と固定接点との間に挟まれて接点間の接触不良等の問題が引き
起こすことを防止でき、また、基板裏面側の異物が可動接点と固定接点との間の空間に吸
い込まれて接点間の接触不良等の問題が引き起こすこともなく、安定したスイッチ機能を
長期にわたって維持できるキースイッチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明に係るキースイッチは、基板表面に設けられた固定
接点と、前記基板表面から離れて前記固定接点に対向配置される可動接点と、前記可動接
点を固定接点から離間した位置に弾性支持する接点支持体とを備え、前記接点支持体を基
板側に移動操作することで、可動接点が固定接点に接触した状態を得るキースイッチにお
いて、前記接点支持体が、基板との間に閉空間を画成すると共に、基板には、前記接点支
持体の移動操作時における前記閉空間の容積減少に相応して前記閉空間内の空気を基板裏
面側に出入りさせる貫通孔が設けられ、前記貫通孔に接近する位置には、前記貫通孔を出
入りする空気中の異物を捕捉する異物捕捉手段を備えたことを特徴とする(請求項1)。
【0013】
上記構成によれば、可動接点を固定接点に接触させるために接点支持体を移動操作(ス
イッチ操作)した時には、接点支持体が基板との間に画成している閉空間の容積が減少し
、その容積の減少により圧迫される閉空間内の空気が、基板に形成した貫通孔から外部に
排出される。
【0014】
従って、スイッチ操作の繰り返しにより、摺動部の摩耗等により異物(摩耗粉)が発生
した場合に、その異物は、スイッチ操作時に貫通孔から閉空間の外部に排出される空気と
一緒に、貫通孔から閉空間の外部に排出され、その際に、貫通孔に接近して配置されてい
る異物捕捉手段に捕捉される。
【0015】
また、可動接点が固定接点から離れるスイッチの戻り動作時には、基板裏面側の空気が
貫通孔を通って閉空間に戻るが、先に閉空間から排出された異物は異物捕捉手段に捕捉さ
れているため、一度排出された異物が、再び、閉空間内に戻ることはなく、可動接点と可
動接点との間の空間が、異物の存在しないクリーンな空間に修復される。
【0016】
また、基板裏面側の空間に存在した異物が、スイッチの戻り動作時の空気の流動で貫通
孔側に移動すると、前記異物捕捉手段が捕捉するため、基板裏面側の空間に発生した異物
が貫通孔を通って、可動接点と固定接点との接点間の空間に入ることも防止できる。
【0017】
従って、使用中に摺動部の摩耗等により発生した異物が可動接点と固定接点との間に挟
まれて接点間の接触不良等の問題が引き起こすことを防止でき、更に、基板裏面側の異物
が可動接点と固定接点との間の空間に吸い込まれて接点間の接触不良等の問題が引き起こ
すこともなく、安定したスイッチ機能を長期にわたって維持することができる。
【0018】
また、前記異物捕捉手段が、前記貫通孔を通る空気の流通経路に配置された粘着シート
であることを特徴とする(請求項2)。
【0019】
このような構成にすると、異物捕捉手段としての粘着シートが安価であるため、異物捕
捉手段の装備によるコストアップを抑えることができる。
【0020】
また、前記異物捕捉手段が、前記貫通孔に接近する位置に装備された電極板で、スイッ
チ操作時に前記貫通孔から出入りする空気中の異物を静電気により吸着・捕捉することを
特徴とする(請求項3)。
【0021】
このような構成にすると、異物捕捉手段としての電極板に適宜電位を設定することで、
帯電した異物を、効率よく捕捉できる。異物捕捉手段としての電極板は、表面に固定接点
が装備される基板の裏面に印刷形成することで、高精度に形成することができ、独立した
電極部品を一つ一つ取り付ける場合と比較して、生産性を向上させることができる。
【0022】
また、前記異物捕捉手段が、前記貫通孔に接近する位置に配置された不織布シートであ
ることを特徴とする(請求項4)。
【0023】
このような構成にすると、異物捕捉手段としての不織布の目の粗さを適宜に選定してお
けば、異物捕捉手段は、通気性を有する一方で異物の捕捉性能を有したフィルタとして機
能するため、前記貫通孔を覆うように装備することもでき、異物捕捉手段の装備位置の選
択自由度が高まり、異物捕捉手段の装備が容易になる。
【0024】
また、前記異物捕捉手段が、前記貫通孔を出入りする空気との接触領域を変更するべく
、移動可能に取り付けられていることを特徴とする(請求項5)。
【0025】
このような構成にすると、異物捕捉手段の一部の領域で、捕捉した異物の堆積により捕
捉性能が低下した場合には、まだ十分な捕捉性能を有している領域が空気との接触領域と
なるように、異物捕捉手段の取付位置を移動調整することで、簡単に異物の捕捉性能を復
活させることができる。
【0026】
また、前記異物捕捉手段が、異物捕捉性能が低下した時に交換できるように、着脱可能
に取り付けられていることを特徴とする(請求項6)。
【0027】
このような構成にすると、異物捕捉手段の交換により、異物捕捉手段による異物捕捉性
能をより長期に亘って良好に維持することができる。
【0028】
また、前記異物捕捉手段が、前記貫通孔に接近して、前記基板裏面と該基板裏面から所
定の間隔を隔てて前記貫通孔に対向する位置との双方に装備されていることを特徴とする
(請求項7)。
【0029】
このような構成にすると、異物の捕捉が位置を変えて二重に行われることになるため、
異物の除去性能が更に向上する。
【0030】
また、前記異物捕捉手段が、前記貫通孔の周辺の前記基板裏面と、該基板裏面と対向する下部ケースの上面との間に配置された筒状の不織布シートであることを特徴とする(請求項8)。このような構成にすると、電子機器を水平置きで使用した場合でも、垂直置きで使用した場合でも、異物を捕捉する性能が維持される。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係るキースイッチでは、可動接点を固定接点に接触させるために接点支持体を
移動操作(スイッチ操作)した時には、接点支持体が基板との間に画成している閉空間の
容積が減少し、その容積の減少により圧迫される閉空間内の空気が、基板に形成した貫通
孔から外部に排出される。
【0032】
従って、スイッチ操作の繰り返しにより、摺動部の摩耗等により異物(摩耗粉)が発生
した場合に、その異物は、スイッチ操作時に貫通孔から閉空間の外部に排出される空気と
一緒に、貫通孔から閉空間の外部に排出され、その際に、貫通孔に接近して配置されてい
る異物捕捉手段に捕捉される。
【0033】
また、可動接点が固定接点から離れるスイッチの戻り動作時には、基板裏面側の空気が
貫通孔を通って閉空間に戻るが、先に閉空間から排出された異物は異物捕捉手段に捕捉さ
れているため、一度排出された異物が、再び、閉空間内に戻ることはなく、可動接点と可
動接点との間の空間が、異物の存在しないクリーンな空間に修復される。
【0034】
また、基板裏面側の空間に存在した異物が、スイッチの戻り動作時の空気の流動で貫通
孔側に移動すると、前記異物捕捉手段が捕捉するため、基板裏面側の空間に発生した異物
が貫通孔を通って、可動接点と固定接点との接点間の空間に入ることも防止できる。
【0035】
従って、使用中に摺動部の摩耗等により発生した異物が可動接点と固定接点との間に挟
まれて接点間の接触不良等の問題が引き起こすことを防止でき、更に、基板裏面側の異物
が可動接点と固定接点との間の空間に吸い込まれて接点間の接触不良等の問題が引き起こ
すこともなく、安定したスイッチ機能を長期にわたって維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明に係るキースイッチの好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に
説明する。
【0037】
図1は本発明に係るキースイッチの第1の実施の形態が適用された電子機器の要部の正
面図、図2は図1のA−A断面図、図3は図2のB−B矢視図である。
【0038】
図1は携帯電話機において電話番号や文字の入力、あるいは機能の選択等を行うために
4行3列に配列されたキースイッチK1〜K#を示している。
【0039】
各キースイッチK1〜K#は、同様のスイッチ構造を成しているので、ここでは図2に
断面を示したK1,K4を例に、その構成を説明する。
【0040】
ここに示した各キースイッチK1〜K#は、押下操作により接点相互を接触させる所謂
押下式スイッチで、図2に示すように、プリント回路基板11の表面11aに設けられた
固定接点13と、基板11の表面11aから離れて固定接点13に対向配置される可動接
点15と、可動接点15を固定接点13から離間した位置に弾性支持する接点支持体17
とを備え、図2に矢印Cで示すように、接点支持体17を基板11側に押し下げる移動操
作をすることで、可動接点15が固定接点13に接触した状態を得る。
【0041】
プリント回路基板11は、板厚が0.6〜1mm程度のプリント回路基板で、固定接点1
3は、図3に示すように、基板11の表面11aに所定の離間間隔で印刷形成された一対
の導体部13a,13bである。
【0042】
可動接点15は、前記一対の導体部13a,13bに跨る円板状の導体で、固定接点1
3の上に重ねられた接触状態になると、一対の導体部13a,13bを導通させて、所定
の信号出力を可能にする。
【0043】
接点支持体17は、基板11の表面11aに対向する下面部に前記可動接点15が貼付
される本体17aと、この本体17aの外周から延出して先端が基板11の表面11aに
載置されるスカート部17bと、本体17aの上面から突出した操作部17cとを、所定
の弾性と絶縁性とを備えたゴム材料で一体形成したものである。
【0044】
操作部17cの上面は、押下操作が可能なように、携帯電話機の上部ケース21に形成
されたキー用窓部21aを挿通している。この操作部17cの上面には、図1に示すよう
に、担当する入力文字種などが印刷される。
【0045】
スカート部17bは、固定接点13と可動接点15との間の空間の周囲を囲って、基板
11との間に閉空間23を画成している。また、スカート部17bは、操作部17cの押
下操作に伴って弾性変形することで、本体17aの基板11側への変位を許容する支持部
としても機能する。
【0046】
基板11には、接点支持体17の移動操作(押下操作)時における前記閉空間23の容
積減少に相応して閉空間23内の空気を図2に矢印Dで示すように基板11の裏面側に出
入りさせる貫通孔25が設けられている。
【0047】
貫通孔25は、一対の導体部13a,13bの略中間位置に設けられた丸孔である。こ
の貫通孔25は、スイッチ操作等で発生する摩耗粉や、保守(分解整備)等の際に外部か
ら侵入する微細な塵埃等が引っかからずに出入りできる大きさに口径が設定される。例え
ば、接点の摩耗粉等は、100μm以下であるため、貫通孔25の内径は、100μm以
上に設定すると良い。
【0048】
本実施の形態の場合、基板11の裏面側は、基板11の裏面との間に部品収納空間を確
保するように、携帯電話機の下部ケース27で覆われている。
【0049】
下部ケース27と基板11の裏面との間の間隔はLである。そして、本実施の形態の場
合、基板11の裏面から所定の間隔Lを隔てたケース内壁面上で、前記貫通孔25に対向
する位置には、貫通孔25を出入りする空気中の異物29を捕捉する異物捕捉手段31が
設けられている。
【0050】
本実施の形態の場合、異物捕捉手段31には、粘着シートNが採用されている。
【0051】
また、この異物捕捉手段31としての粘着シートNは、異物捕捉性能が低下した時に交
換できるように、下部ケース27の内壁面上に装備された係止手段33により、着脱可能
に取り付けられている。
【0052】
以上に説明したキースイッチK1〜K#の構成によれば、可動接点15を固定接点13
に接触させるために接点支持体17を移動操作(押下操作)した時には、接点支持体17
が基板11との間に画成している閉空間23の容積が減少し、その容積の減少により圧迫
される閉空間23内の空気が、基板11に形成した貫通孔25から外部(下部ケース27
側)に排出される。
【0053】
従って、スイッチ操作の繰り返しにより、摺動部の摩耗等により異物(接点相互の接触
による摩耗粉等)29が発生した場合に、その異物29は、操作部17cの押下操作時に
貫通孔25から閉空間23の外部に排出される空気と一緒に、貫通孔25から閉空間23
の外部に排出され、その際に、貫通孔25に対向して配置されている異物捕捉手段31に
捕捉される。
【0054】
また、可動接点15が固定接点13から離れるスイッチの戻り動作時には、基板11の
裏面側の空気が貫通孔25を通って閉空間23に吸い戻されるが、先に閉空間23から排
出された異物29は異物捕捉手段31に捕捉されているため、一度排出された異物29が
、再び、閉空間23内に戻ることはなく、可動接点15と可動接点15との間の空間が、
異物の存在しないクリーンな空間に修復される。
【0055】
また、基板11の裏面側の空間に存在した他の異物が、スイッチの戻り動作時の空気の
流動で貫通孔25側に移動すると、前記異物捕捉手段31が捕捉するため、基板11の裏
面側の空間に発生した他の異物が貫通孔25を通って、可動接点15と固定接点13との
接点間の空間に入ることも防止できる。
【0056】
従って、使用中にスイッチの摺動部の摩耗等により発生した異物29が可動接点15と
固定接点13との間に挟まれて接点間の接触不良等の問題が引き起こすことを防止でき、
更に、基板11の裏面側の異物が可動接点15と固定接点13との間の空間に吸い込まれ
て接点間の接触不良等の問題が引き起こすこともなく、安定したスイッチ機能を長期にわ
たって維持することができる。
【0057】
更に、上記実施の形態のキースイッチK1〜K#では、異物捕捉手段31として粘着シ
ートNを採用しており、異物捕捉手段31としての粘着シートNが安価であるため、異物
捕捉手段31の装備によるコストアップを抑えることができる。
【0058】
更に、上記実施の形態のキースイッチK1〜K#では、異物捕捉手段31が、異物捕捉
性能が低下した時に交換できるように、着脱可能に取り付けられているため、異物捕捉手
段31の交換により、異物捕捉手段31による異物捕捉性能をより長期に亘って良好に維
持することができる。
【0059】
なお、異物29を排出するためにプリント回路基板11に形成する貫通孔25は、孔径
が一定のストレート孔に限らない。
【0060】
図4は、本発明に係るキースイッチの第2の実施の形態の縦断面図である。
【0061】
この第2の実施の形態のキースイッチは、第1の実施の形態の一部を改良したもので、
改良した点は、プリント回路基板11に形成する貫通孔25を、基板の裏面側に向かって
徐々に孔径が小さくなるテーパ孔(漏斗状の孔)にした点である。
【0062】
貫通孔25を、このようなテーパ形状にすると、操作部17cを押下した時に貫通孔2
5から排出される空気流は、孔径が徐々に絞られることで流速が加速され、貫通孔25に
対向した配置される粘着シートN(異物捕捉手段31)への衝突力が増すため、その空気
流に含まれる異物29が粘着シートNに付着し易くなり、異物29の捕捉効率を高めるこ
とができる。
【0063】
また、異物29を排出するためにプリント回路基板11に形成する貫通孔25は、上記
実施の形態に示したように、導体部13a,13bの中間に位置する単一の孔に限らない

【0064】
例えば、図5に示すように、複数個の貫通孔25で構成するようにしても良い。その場
合も、各貫通孔25の最小の孔径は、閉空間23内に発生する異物29の最大粒径よりも
大きくなるように、100μm以上に設定しておくことが望ましい。
【0065】
なお、本発明において、異物捕捉手段31を装備する位置は、上記実施の形態に示した
位置(即ち、基板11の裏面から所定の間隔Lを隔て貫通孔25に対向する位置)に限ら
ない。異物捕捉手段31の装備位置は、異物の捕捉が可能な位置であれば良く、そのため
には、貫通孔25に接近した位置であれば良い。更に具体的には、貫通孔25を通る空気
の流通経路に沿って延在する位置や、貫通孔25を通る空気の流通経路が突き当たる位置
を選択することができる。
【0066】
また、異物捕捉手段も、上記実施の形態に示した粘着シートに限らない。
【0067】
以下、図6〜図8に、異物捕捉手段31の装備位置を変更した実施の形態や、異物捕捉
手段31の材質を変更した実施の形態を示す。
【0068】
図6は本発明に係るキースイッチの第3の実施の形態の縦断面図を示している。
【0069】
この第3の実施の形態のキースイッチは、第1の実施の形態の一部を改良したもので、
改良した点は、異物捕捉手段31の材質を変更した点と、異物捕捉手段31の取り付け位
置を変更した点で、それ以外の構成は第1の実施の形態と同様であり、同様の構成につい
ては、同番号を付して、説明を省略する。
【0070】
この第3の実施の形態の場合は、異物捕捉手段31として、不織布シートFを採用して
いる。また、不織布シートFは、通気性を持つことから、プリント回路基板11の裏面に
、貫通孔25を塞ぐように取り付けられている。また、不織布シートFのプリント回路基
板11への取り付けは、係止手段33により着脱可能になっている。
【0071】
この第3の実施の形態の構成では、異物捕捉手段31としての不織布の目の粗さを適宜
に選定しておけば、異物捕捉手段31は、通気性を有する一方で異物の捕捉性能を有した
フィルタとして機能するため、図示のように、貫通孔25を覆うように装備することもで
き、異物捕捉手段31の装備位置の選択自由度が高まり、異物捕捉手段31の装備が容易
になる。
【0072】
図7は、本発明に係るキースイッチの第4の実施の形態の縦断面図である。
【0073】
この第4の実施の形態のキースイッチは、第1の実施の形態の一部を改良したもので、
具体的は、第1の実施の形態の構成に、第3の実施の形態に示した不織布シートFによる
異物捕捉手段31を追加装備したものである。
【0074】
即ち、この第4の実施の形態のキースイッチでは、異物捕捉手段31は、基板11の裏
面と、基板11の裏面から所定の間隔を隔てて貫通孔25に対向する位置との双方に装備
されている。
【0075】
そして、基板11の裏面に装備した異物捕捉手段31は、図6の第3の実施の形態に示
した不織布シートFによるものであり、基板の裏面から所定の間隔Lを隔てて貫通孔25
に対向する位置に装備した異物捕捉手段31は、図2の第1の実施の形態に示した粘着シ
ートNによるものである。
【0076】
このように、基板11の裏面と、基板11の裏面から所定の間隔Lを隔てて貫通孔25
に対向する位置との双方に異物捕捉手段31を装備すると、異物の捕捉が位置を変えて二
重に行われることになるため、異物の除去性能が更に向上する。
【0077】
図8は、本発明に係るキースイッチの第5の実施の形態の縦断面図である。
【0078】
この第5の実施の形態は、図6に示した第3の実施の形態の一部を改良したもので、改
良点は、基板11の裏面に装備する異物捕捉手段31として、不織布シートFの代わりに
、電極板Eを採用した点である。
【0079】
電極板Eは、プリント回路基板11の裏面に印刷形成されており、プリント回路基板1
1の制御回路等によって該電極板Eの電位を適宜値にコントロールすることにより、スイ
ッチ操作時に前記貫通孔25から出入りする空気中の異物を静電気により吸着・捕捉する

【0080】
図10は、本発明に係る第6の実施の形態の断面図である。基板の裏面側11aと下部ケース27の内面27aとの間に筒状の不織布シート41を配置したものである。このように配置すると、電子機器の本体を水平置きにした場合でも、垂直置き(壁面に設置)にした場合でも、異物を捕捉することが可能となる。何故ならば、何れの場合にもキースイッチを押下すると、貫通孔25を通過した空気の流れは一旦、下部ケースの内面に当り、その後筒状の不織布シート41へ当り、空気は通過し、異物29は不織布シートに捕捉されるからである。
【0081】
図9は、プリント回路基板11の表面(a)、プリント回路基板11の裏面に印刷形成
された電極板Eの導体配線パターンの(b)、プリント回路基板11のG−G断面(c)
である。
【0082】
電極板Eの導体配線パターンとしては、図9(b)に示すようなパターンがその一例と
して挙げられる。プリント回路基板11は、誘電体部11b、11dが接着剤11cによ
り接着された構造となっている。そして、図9(c)に示すように、貫通孔25の断面構
造は、貫通孔25の壁面下部(誘電体部11dの壁面)は導体で覆われ、電極板Eと導電
位となるように電気的に接続されている。ところが、貫通孔25の壁面上部(誘電体部1
1bの壁面)は、導体が無いので、図9(a)に示すように、プリント回路基板11の表
面11aの導体部分とは、電気的に接続しないようになっている。
【0083】
このような構成にすると、異物捕捉手段31としての電極板Eに適宜電位を設定するこ
とで、帯電した異物を、効率よく捕捉できる。また、異物捕捉手段31としての電極板E
は、表面に固定接点13が装備される基板11の裏面に印刷形成することで、高精度に形
成することができ、独立した電極部品を一つ一つ取り付ける場合と比較して、生産性を向
上させることができる。
【0084】
なお、第1乃至第5の実施の形態では、異物捕捉手段31は交換が容易なように着脱可
能な取り付け構造にしたが、代わりに、貫通孔25を出入りする空気との接触領域を変更
するべく、移動可能に取り付けるようにしても良い。
【0085】
このような構成にすると、異物捕捉手段31の一部の領域で、捕捉した異物の堆積によ
り捕捉性能が低下した場合には、まだ十分な捕捉性能を有している領域が空気との接触領
域となるように、異物捕捉手段31の取付位置を移動調整することで、簡単に異物の捕捉
性能を復活させることができる。
【0086】
また、本発明のキースイッチが採用される機器は、上記実施の形態に示した携帯電話機
に限らない。携帯用の電子機器等に限らず、入力操作用にキースイッチが装備される各種
の機器に採用することができる。
【0087】
更に、本発明のキースイッチにおいて、接点支持体の具体的な構造は、上記の各実施の
形態に示した構造に限らない。
【0088】
例えば、接点支持体は、ドーム状の隆起構造で、ドーム状の部分が押下操作される押釦
型のスイッチ構造にしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明に係るキースイッチの第1の実施の形態が適用された電子機器の要部の正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図2のB−B矢視図である。
【図4】本発明に係るキースイッチの第2の実施の形態の縦断面図である。
【図5】本発明に係るキースイッチで使用する基板の他の実施の形態の説明図である。
【図6】本発明に係るキースイッチの第3の実施の形態の縦断面図である。
【図7】本発明に係るキースイッチの第4の実施の形態の縦断面図である。
【図8】本発明に係るキースイッチの第5の実施の形態の縦断面図である。
【図9】プリント回路基板11の表面(a)、プリント回路基板11の裏面に印刷形成された電極板Eの導体配線パターンの(b)、プリント回路基板11のG−G断面(c)である。
【図10】本発明に係るキースイッチの第6の実施の形態の縦断面図である。
【符号の説明】
【0090】
11 プリント回路基板(基板)
11a 表面(基板の裏面)
13 固定接点
13a,13b 導体部
15 可動接点
17 接点支持体
17a 本体
17b スカート部
17c 操作部
21 上部ケース
21a キー用窓部
23 閉空間(第1の閉空間)
25 貫通孔
27 下部ケース
27a 下部ケースの内面
29 異物
31 異物捕捉手段
33 係止手段
E 電極板(異物捕捉手段)
F 不織布シート(異物捕捉手段)
K1〜K# キースイッチ
N 粘着シート(異物捕捉手段)
41 筒状の不織布シート(異物捕捉手段)
43 係止手段
44 準平空間(第2の閉空間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面に設けられた固定接点と、前記基板表面から離れて前記固定接点に対向配置さ
れる可動接点と、前記可動接点を固定接点から離間した位置に弾性支持する接点支持体と
を備え、前記接点支持体を基板側に移動操作することで、可動接点が固定接点に接触した
状態を得るキースイッチにおいて、
前記接点支持体が、基板との間に閉空間を画成すると共に、
基板には、前記接点支持体の移動操作時における前記閉空間の容積減少に相応して前記
閉空間内の空気を基板裏面側に出入りさせる貫通孔が設けられ、
前記貫通孔に接近する位置には、前記貫通孔を出入りする空気中の異物を捕捉する異物
捕捉手段を備えたことを特徴とするキースイッチ。
【請求項2】
前記異物捕捉手段が、前記貫通孔を通る空気の流通経路に配置された粘着シートである
ことを特徴とする請求項1に記載のキースイッチ。
【請求項3】
前記異物捕捉手段が、前記貫通孔に接近する位置に装備された電極板で、スイッチ操作
時に前記貫通孔から出入りする空気中の異物を静電気により吸着・捕捉することを特徴と
する請求項1に記載のキースイッチ。
【請求項4】
前記異物捕捉手段が、前記貫通孔に接近する位置に配置された不織布シートであること
を特徴とする請求項1に記載のキースイッチ。
【請求項5】
前記異物捕捉手段が、前記貫通孔を出入りする空気との接触領域を変更するべく、移動
可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のキースイッ
チ。
【請求項6】
前記異物捕捉手段が、異物捕捉性能が低下した時に交換できるように、着脱可能に取り
付けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のキースイッチ。
【請求項7】
前記異物捕捉手段が、前記貫通孔に接近して、前記基板裏面と該基板裏面から所定の間
隔を隔てて前記貫通孔に対向する位置との双方に装備されていることを特徴とする請求項
1〜6のいずれかに記載のキースイッチ。
【請求項8】
前記異物捕捉手段が、前記貫通孔の周辺の前記基板裏面と、該基板裏面と対向する下部ケースの内面との間に配置された筒状の不織布シートであることを特徴とする請求項1に記載のキースイッチ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−159563(P2008−159563A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114300(P2007−114300)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】