説明

キーボード装置における発光素子の設置構造

【課題】接続不良が起きる確率を低減させるとともに、従来よりコストを低下させることが可能なキーボード装置における発光素子の設置構造を提供すること。
【解決手段】キートップ21と、発光素子6と、メンブレンシート3と、を有し、キートップ21には、光を通過させる透過部21bを備え、メンブレンシート3は、配線7aパターン及び接点31が形成された一対の配線シート3a,3bと、一対の配線シート3a,3b間に配設されるスペーサシート3cと、を積層して構成されているキーボード装置101における発光素子6の設置構造1であって、発光素子6を発光素子設置用シート7上に設置し、メンブレンシート3の最上部のシート以外のシートであって少なくとも最下部のシートと、ベースプレート4と、を貫通する発光素子設置用孔8をキートップ21の透過部21bに対応する位置に設け、発光素子設置用孔8内に、発光素子6を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キーボード装置における発光素子の設置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ノートパソコン等に使用されるキーボード装置において、キートップにおいて発光表示を行うために、キートップの下側に発光素子を設けているものがある(例えば特許文献1)。キートップには、光を透過する透過部が形成されており、キートップの裏側において発せられた光が、キートップの表側に透過するようになっている。
【0003】
このキーボード装置は、金属製のベースプレート上にメンブレンシートを配設し、メンブレンシート上に、キースイッチを配設した構造となっている。ベースプレートは、メンブレンシート及びキースイッチを支持するものである。メンブレンシートは、配線パターン及び接点が印刷された一対の配線シートと、その間に配設されるスペーサシートとから構成されている。メンブレンシートは、キースイッチによって押圧された際に、接点が閉じられ、一対の配線シートの配線パターンのキースイッチに対応する部分が接続される。
【0004】
発光素子は、キートップの透過部に対応する位置に、メンブレンシートの上側2層を切り欠いて、一番下の配線シート上に設置されている。メンブレンシートは、熱に弱いため半田付けができない。従って、発光素子の端子は、配線シートの配線パターンに導電性の接着剤によって接続されている。また、この発光素子及びメンブレンシートの切り欠いた部分を覆うようにポッティング加工が施されている。ポッティングは、発光素子の固定、防水対策、静電気対策のために設けられている。
【0005】
メンブレンシートの切り欠いた部分においては、配線パターンが露出する。当然、発光素子及びその端子も露出した状態となる。従って、ポッティングが無いと静電気によって発光素子が破壊されてしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−170176号公報
【特許文献2】特開平5−101737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ポッティング加工に使用するポッティング材は、静電気対策に効果のあるものは、高価でありコストがかかるという問題があった。また、発光素子の端子とメンブレンシートの配線パターンの接続に導電性接着剤を使用しているため、接続不良が起こり易いという問題があった。
【0008】
そこで、本発明はこのような従来の問題に鑑み、接続不良が起きる確率を低減させるとともに、従来の構造のものよりコストを低下させることが可能なキーボード装置における発光素子の設置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、所期の目的を達成するための本発明にかかるキーボード装置における発光素子の設置構造は、キートップと、該キートップの下側に配設される発光素子と、前記キートップの下側においてベースプレート上に重ねられて配設されたメンブレンシートと、を有し、前記キートップには、前記発光素子から前記キートップの裏側に照射された光を前記キートップの表側に通過させる透過部を備え、前記メンブレンシートは、配線パターン及び接点が形成された一対の配線シートと、該一対の配線シート間に配設されるスペーサシートと、を積層して構成されているキーボード装置における発光素子の設置構造であって、前記発光素子を発光素子設置用シート上に設置し、前記メンブレンシートの最上部のシート以外のシートであって少なくとも最下部のシートと、前記ベースプレートと、を貫通する発光素子設置用孔を前記キートップの透過部に対応する位置に設け、該発光素子設置用孔内に、前記発光素子を配置したことを特徴とする。
【0010】
また、本発明のキーボード装置における発光素子の設置構造は、上記構成に加えて、前記メンブレンシートの配線パターンは、出力端子を有し、該出力端子に接続される接続部材と一体に発光素子設置用シートが形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ベースプレート及び配線シートを貫通する発光素子設置用孔を形成し、この発光素子設置用孔内に発光素子を配置しているので、設置構造自体の厚みを低下させることができる。また、メンブレンシートではなく、発光素子設置用シートに発光素子を設置しているので、メンブレンシート自体を変えることなく、半田付け可能のシートを使用することができる。従って、発光素子と発光素子設置用シートの配線との間の確実な導通性を期待することができる。更に、ポッティングが無くとも、最上部のシートによって、静電気による発光素子の破壊を防止することができるので、コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかるキーボード装置における発光素子の設置構造を示す断面図である。
【図2】図2は、同上の発光素子の設置構造を示す側断面図である。
【図3】図3は、同上の発光素子の設置構造を示す平面図である。
【図4】図4は、同上の発光素子の設置構造を有するキーボード装置を示す平面図である。
【図5】図5は、同上の発光素子の設置構造に使用されるフレキシブル基板を示す平面図である。
【図6】図6は、同上の発光素子の設置構造を有するキーボード装置を示す裏面図である。
【図7】図7は、同上のキーボード装置をノートパソコン本体に取り付ける際の配設構造を示す斜視図である。
【図8】図8は、同上のキーボード装置を取り付けたノートパソコンを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明にかかるキーボード装置における発光素子の設置構造の実施の形態を図1〜図8に基づいて詳細に説明する。図において、符号1は、本実施の形態のキーボード装置における発光素子の設置構造を示している。発光素子の設置構造1が適用されたキーボード装置101は、図1〜図2に示すように、キースイッチ2とメンブレンシート3とベースプレート4とを有している。
【0014】
ベースプレート4は、メンブレンシート3を支持するためのものである。ベースプレート4は、操作者のキータッチに耐え得る剛性を有する部材であり、例えば金属製で略板状に形成されている。ベースプレート4の裏面、即ち下側は、防水シート5によって覆れている。このベースプレート4上に、メンブレンシート3が配設されている。
【0015】
メンブレンシート3は、操作者によるキースイッチ2の操作を電気信号にするためのものである。メンブレンシート3は、配線パターン及び接点が印刷された一対の配線シート3a,3bを、一対の配線シート3a,3bの接点31同士が互いに対向するように、スペーサシート3cを介して重ねあわせたものである。配線シート3a,3b及びスペーサシート3cは絶縁性を有するものである。メンブレンシート3は、後述するキースイッチ2のキートップ21を押下することにより、一対の配線シート3a,3bのキートップ21に対応する接点31部分が接触し、一対の配線シート3a,3b同士のキートップ21に対応する配線パターンが電気的に接続される。
【0016】
キースイッチ2は、キートップ21と、図示せぬガイド機構と、弾性部材22とを有している。キートップ21は、その表面に、キースイッチ2を押下する際に操作者が押圧する操作面21aを有している。また、キートップ21には、透過部21bが形成されている。透過部21bは、キートップ21の裏面から表面にかけて形成され、後述する発光素子6の光を透過する。キートップ21の裏面側には、後述する弾性部材22に当接される突起部21cが形成されている。
【0017】
キースイッチ2のガイド機構は、押下操作に伴うキートップ21の上下移動をガイドするものである。換言すると、ガイド機構は、キートップ21の押下移動及び復帰移動をガイドするものである。本実施の形態においては、図2〜図3に示す、キートップ21と一体に形成されたガイド部21dが、キーボード装置101の筐体102に形成された図示せぬガイド部に上下動可能に嵌めこまれることにより、ガイド機構を構成している。
【0018】
キースイッチ2の弾性部材22は、キートップ21が押下された際に、キートップ21を元の場所に復帰させる方向に付勢するものである。弾性部材22は、ドーム状に形成され、内側天井部分に突起22aが形成されている。弾性部材22は、その突起22aがメンブレンシート3の接点31の位置に対応するように、メンブレンシート3上に配設されている。また、弾性部材22は、その頂部がキートップ21の下面(突起部21c)に当接しており、キートップ21を支持している。また、キートップ21の裏側には、発光素子6が配設されている。
【0019】
発光素子6は、キートップ21の裏側からキートップ21の透過部21bに光を照射するものである。本実施の形態において、発光素子6は、LED(Light Emitting Diode)である。発光素子6は、下部に一対の端子部6aを備え、この端子部6aが発光素子設置用シート7に接続されている。発光素子設置用シート7には、金属製の配線7aが形成され、配線7aと発光素子6の端子部6aとが半田付けによって接続されている。この半田付けによって、発光素子6が発光素子設置用シート7に固定されているとともに、電気的に接続されている。発光素子設置用シート7は、ノートパソコン本体105の制御部と接続される。発光素子設置用シート7上に設置された発光素子6は、発光素子設置用孔8内に挿入された状態に配置されている。
【0020】
発光素子設置用孔8は、防水シート5及びベースプレート4を貫通する孔であり、更にメンブレンシート3の一対の配線シート3a,3bの内、下側の配線シート3bと、スペーサシート3cとを貫通する孔である。換言すると、発光素子設置用孔8は、最上部のシートを残して貫通する孔である。発光素子設置用孔8は、キートップ21の透過部21bに対応する位置に形成されている。配線シート3aの発光素子設置用孔8を覆う部分は、光透過性を有している。
【0021】
また、本実施の形態においては、発光素子設置用シート7は、図5及び図6に示すように、キーボード装置101とノートパソコンAの制御部とを接続する接続部材であるフレキシブルプリント配線基板11(以下、フレキシブル基板と記す)と一体に形成されている。フレキシブル基板11は、本実施の形態においては、マザーボート等のメイン基板の接続端子51とメンブレンシート3の接続部32(接続端子)とを接続する。
【0022】
フレキシブル基板11は、絶縁体からなるシート状のベースフィルムの一方の表面にのみ銅箔等の導体によって配線パターンを形成した、所謂片面印刷のものである。フレキシブル基板11は、図5に示すように、シート状に形成され、その一端部にメンブレン接続部12が構成されている一方、このメンブレン接続部12から他端部に向けて二股状に分かれるように分岐し、第1延在部13及び第2延在部14が構成されている。第1延在部13の先端にはメイン基板接続部13aが形成され、第2延在部14の先端にはスティック基板接続部14aが形成されている。
【0023】
メンブレン接続部12は、スリットを介して分断された第1片部12aと第2片部12bとを有している。メンブレン接続部12は、第1片部12aを第2片部12bに重なるように折り返すことによって、メンブレンシート3と接続する状態となる。
【0024】
第1片部12aの第2片部12bとは反対側の端部には、第3延在部が形成されている。この第3延在部が発光素子設置用シート7を構成している。第3延在部の先端部には、発光素子6を接続するための一対の端子である配線7aが配設されており、ここに発光素子6が設置される。第3延在部の基部には、折り返し部15が設けられており、図6に示すように、この折り返し部15bにおいて折り返すことにより、発光素子設置用孔8に、発光素子6を挿入した状態に配置することができる。
【0025】
図7に示すように、フレキシブル基板11のメイン基板接続部13aが、メイン基板の接続端子51と接続される。一方、フレキシブル基板11のメンブレン接続部12が、メンブレンシート3の接続部32が接続される。
【0026】
キーボード装置101は、図7〜図8に示すように、接続部材(フレキシブル基板11)を介して、ノートパソコンAにおけるノートパソコン本体105の制御部と接続した状態で使用される入力装置である。このキーボード装置101は、キートップに透過部を有しないその他のキースイッチ103を複数備えている。このキーボード装置における発光素子の設置構造1においては、キートップ21を押圧すると、キートップ21の突起22a部21cが弾性部材22を押圧し、弾性部材22が弾性変形する。弾性部材22が弾性変形すると、その内側に備えられた突起22aがメンブレンシート3を押圧することとなる。その結果、メンブレンシート3のキートップ21に対応した接点31が閉じられ、キートップ21に対応した入力信号が出力されるとともに、発光素子6が発光する。発光素子6から発せられた光は、メンブレンシート3の最上部の配線シートを透過し、更にキートップ21の透過部21bを通って、キートップ21の表面から出射する。
【0027】
この状態からキートップ21の押圧を解除すると、弾性部材22の弾性復元力により、キートップ21がもとの位置に復帰するとともに、弾性部材22の突起22aがメンブレンシート3から離反することで、メンブレンシート3の接点31が再び開状態に復帰する。この時、発光素子6は、点灯状態を維持している。再度、同様の操作を繰り返すと、発光素子6が消灯される。
【0028】
上述のように構成されるキーボード装置101における発光素子6の設置構造1は、発光素子6が配置されている発光素子設置用孔8が絶縁性を有する配線シートによって覆われているので、静電気によって発光素子6が故障することを防止することができる。また、この配線シートは防水効果もある。また、発光素子6をメンブレンシート3ではなく、発光素子設置用シート7に半田付けによって接続固定しているので、導電性接着剤を使用した場合よりも導通性及び接着性を高めることができる。また、ポッティング加工が必要ないので、コストを削減することができる。更にポッティング加工が必要ないので、ポッティング材を盛るために必要な場所を省くことができ、例えば、弾性部材22と発光素子6との間の距離を従来よりも短くすることが出来る。
【0029】
また、従来のメンブレンシート3の上側に発光素子6を設置している場合と比較して、発光素子6の設置高さを抑えることができる。即ち、キースイッチ2のキートップ21をより低い位置に設置することができる。従って、キーボード装置101を薄くすることができる。
【0030】
本実施の形態においては、キーボード装置101とノートパソコン本体105の制御部とを接続する接続部材と一体に、発光素子設置用シート7を形成している。従って、一枚のフィルムから、接続部材及び発光素子設置用シート7を同時に切り出すことができるので、低コストで製造することができる。
【0031】
尚、本実施の形態においては、配線シート2aを一枚残して、発光素子設置用孔8を形成しているが、発光素子設置用孔8を覆うシートは、最上部のシートであれば、配線シート以外のシートであってもよい。また、本実施の形態においては、キーボード装置101に発光素子の設置構造1は、1つしか設けられていないが、複数設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 発光素子の設置構造
2 キースイッチ
3 メンブレンシート
3a 配線シート
3b 配線シート
3c スペーサシート
4 ベースプレート
6 発光素子
7 発光素子設置用シート
8 発光素子設置用孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キートップと、
該キートップの下側に配設される発光素子と、
前記キートップの下側においてベースプレート上に重ねられて配設されたメンブレンシートと、を有し、
前記キートップには、前記発光素子から前記キートップの裏側に照射された光を前記キートップの表側に通過させる透過部を備え、
前記メンブレンシートは、配線パターン及び接点が形成された一対の配線シートと、該一対の配線シート間に配設されるスペーサシートと、を積層して構成されているキーボード装置における発光素子の設置構造であって、
前記発光素子を発光素子設置用シート上に設置し、
前記メンブレンシートの最上部のシート以外のシートであって少なくとも最下部のシートと、前記ベースプレートと、を貫通する発光素子設置用孔を前記キートップの透過部に対応する位置に設け、該発光素子設置用孔内に、前記発光素子を配置したことを特徴とするキーボード装置における発光素子の設置構造。
【請求項2】
前記メンブレンシートの配線パターンは、出力端子を有し、
該出力端子に接続される接続部材と一体に発光素子設置用シートが形成されていることを特徴とする前記請求項1に記載のキーボード装置における発光素子の設置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−124157(P2011−124157A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282127(P2009−282127)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(505205731)レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド (292)
【復代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
【Fターム(参考)】