説明

キーレスエントリー装置の携帯機

【課題】3軸のアンテナ10−1〜10-3の故障を各アンテナが接続される受信回路を含めて正確に検出でき、誤った携帯位置情報が車両側装置へ通知されるのを防止すること。
【解決手段】時間差を設けて3軸のLFアンテナ10−1〜10−3の夫々で受信される信号のRSSIレベルを測定し、2軸のLFアンテナの夫々に対応する受信信号のRSSIレベルが変化し、残りの1軸のLFアンテナに対応する受信信号のRSSIレベルが変化しない場合に、その残りの1軸のLFアンテナ、或いはそのLFアンテナに対応するLF増幅回路が故障したと判断し、その故障を、車両ユニット2を介してユーザに報知するとともに、正常な2軸のLFアンテナを用いて携帯機1の位置計算を継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両側装置から送信される信号を3軸アンテナにて受信するキーレスエントリー装置の携帯機に関し、特に3軸アンテナそれぞれの受信強度を利用して携帯機位置を特定するキーレスエントリー装置の携帯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に設けられた車両側装置と使用者が携帯する携帯機との間で無線通信を行い、車両のドアを施錠・解錠するキーレスエントリー装置が知られている。また、携帯機が車両に近づくと、車両側装置と携帯機との間で自動的に通信が行われ、携帯機固有のIDを認証して、車両のドアの施錠・解錠動作を行うパッシブ・キーレスエントリー装置も知られている。
【0003】
上記パッシブ・キーレスエントリー装置では、携帯機が車両の外側にあるか内側にあるかを判別できることが要求される。このため、車両の各所に設けられた送信アンテナから信号(LF信号)を送信し、携帯機に設けられた3軸のアンテナ(3つのアンテナの夫々を他のアンテナと相互に直交させて配置)で受信し、各軸のアンテナで受信した受信信号の信号強度によって自機の位置を検出し、その検出結果を車両側装置へ送信する機能を有するものがある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に開示された携帯機は、3軸のアンテナそれぞれの受信強度によって位置検出するので高い精度を実現できる一方で、3軸のアンテナのうちいずれか1軸でも故障した場合又は3軸のアンテナの夫々に対応する受信回路のいずれか1つでも故障した場合は、誤った位置を検出してしまう。
【0005】
特許文献2には、アンテナの故障を検出可能にした通信装置が開示されている。特許文献2記載の通信装置は、複数アンテナのうち受信信号の信号強度が所定値に満たないものがあれば、アンテナ故障と判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−342758号公報
【特許文献2】特開2007−134983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2で開示されたアンテナ故障判定方法では、アンテナが故障していなくても受信強度が所定の設定値を満たさない場合に故障と誤判定する可能性がある。すなわち、特許文献2のアンテナ故障判定方法をキーレスエントリー装置における3軸のアンテナの故障判定方法に適用しようとした場合、携帯機は持ち運びされるので、その間にアンテナの向きが様々に変化する可能性があり、その状況によっては受信強度が所定の設定値以下になることがある。また、携帯機が車内の所定位置に載置された場合に、携帯機と車両側装置の送信アンテナとの間に遮蔽物が存在すれば、携帯機のアンテナの受信レベルが継続して低下するが、この状況でもアンテナ故障と誤判定する可能性がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、3軸のアンテナの夫々の故障を各アンテナが接続される受信回路を含めて正確に検出することができ、誤った携帯位置情報が車両側装置へ通知されることを防止できるキーレスエントリー装置の携帯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、3軸のアンテナを有するキーレスエントリー装置の携帯機において、3軸同時に測定された前記各アンテナの受信強度を取得し、時間をずらして取得された前記3軸のアンテナの前回の受信強度と今回の受信強度とを比較し、少なくとも1軸のアンテナに対応した受信強度の変化が認められ、他のアンテナに対応した受信強度の変化が認められない場合は、受信強度の変化が認められない他のアンテナ又は当該他のアンテナに接続される受信回路に故障があると判定する故障判定手段を有することを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、時間をずらして受信強度を取得し、少なくとも1軸のアンテナの受信強度が変化し、他のアンテナに対応する受信強度が変化しない場合に、他のアンテナ、或いはそのアンテナに対応する受信回路が故障したと判断する。すなわち、携帯機自体が移動或いは向きが変わっているにも関わらず、受信強度が変化しないのは故障であると判断している。よって、確実に故障を判定できる。又アンテナの向き、或いは遮蔽物などによってアンテナの受信強度が所定の設定値以下になったとしても、それで故障とは判断しないので誤判定を確実に防止することができる。
【0011】
上記キーレスエントリー装置の携帯機において、前記3軸のアンテナの受信強度を用いて自機の位置を計算する携帯機位置計算手段を備え、前記携帯機位置計算手段は、前記3軸のアンテナのうち2軸のアンテナに対応した受信強度の変化が認められ、残りの1軸のアンテナに対応した受信強度の変化が認められない場合は、前記正常な2軸のアンテナの受信強度を用いて自機の位置特定を継続することを特徴とする。
【0012】
これにより、1軸のアンテナだけが故障の場合は、故障したアンテナを排除して正常な2つのアンテナの受信強度から位置計算できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、キーレスエントリー装置の携帯機において、3軸のアンテナの夫々の故障を各アンテナが接続される受信回路を含めて正確に検出することができ、誤った携帯位置情報が車両側装置へ通知されるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係るキーレスエントリー装置の携帯機の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1のキーレスエントリー装置の車両ユニット側から送信されるウェイクアップ信号とIDを含む信号と強度測定用信号を示す図である。
【図3】図1のキーレスエントリー装置の車両ユニットの概略構成を示すブロック図である。
【図4】図1のキーレスエントリー装置の携帯機の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るキーレスエントリー装置の携帯機の概略構成を示すブロック図である。同図において、携帯機1は、3軸(XYZ)に対応した3つのアンテナ(以下、LFアンテナという)10−1,10−2,10−3を備えている。各軸のLFアンテナ10−1,10−2,10−3の出力端にはそれぞれLF増幅器11−1,11−2,11−3が接続されている。各LF増幅器11−1,11−2,11−3の出力端は検波部12に接続されている。携帯機1は、アンテナの故障を判定する故障判定手段として機能するCPU13を備える。CPU13は、検波部12から受信信号の復調信号及び受信強度に関する情報が入力される。
【0016】
携帯機1は、送信系の構成要素として、UHF帯の搬送波信号を生成するUHF発振器14、UHF発振器14から出力される搬送波信号をCPU13から出力される変調信号で変調する混合器15、混合器15で変調されたRF信号を増幅するRF増幅器16、増幅されたRF信号を無線送信するRFアンテナ17を備える。
【0017】
LFアンテナ10−1,10−2,10−3は、夫々が他のLFアンテナと相互に直交させて配置されたものである。すなわち、LFアンテナ10−1,10−2,10−3は、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸の各軸方向に向けて配置されたものである。また、LFアンテナ10−1,10−2,10−3は、例えば125kHzの周波数の無線信号を効率良く受信できる電気長となっている。すなわち、後述する車両ユニット2(図3参照)から125kHzの周波数の無線信号が送信されるので、この無線信号を効率良く受信できる電気長となっている。
【0018】
LF増幅器11−1〜11−3は、各々対応するLFアンテナ10−1〜10−3に接続され、LFアンテナ10−1〜10−3が受信強度に応じた信号レベルで出力するLF信号をそれぞれ増幅する。なお、携帯機1が送信する無線信号は315MHzのUHF帯の信号であるので、このUHF帯の信号と区別するために、LFアンテナ10−1,10−2,10−3で受信される低周波数帯の信号を”LF(Low Frequency)”と呼ぶ。LF増幅器11−1,11−2,11−3は各LFアンテナ10−1〜10−3に対応した受信回路に相当する。
【0019】
図2は、車両ユニット2が送信するLF信号の波形図である。同図に示すように、車両ユニット2はウェイクアップ信号SG1と車両ID(Identification)を含む信号SG2と強度測定用信号SG3をLF信号として送信する。ウェイクアップ信号SG1の信号パターンが送られた後、IDを含む信号SG2が送られ、更にその後強度測定用信号SG3が送られる。
【0020】
検波部12は、LF増幅器11−1,11−2,11−3から入力する3軸のアンテナ毎に受信信号を検波する。3軸同時に検波するが、時間的に厳密に一致させる必要はない。検波部12における検波によって車両ユニット2が送信したウェイクアップ信号SG1が復調されると、復調されたウェイクアップ信号SG1が所定パターンの信号であるか確認し所定のパターンの場合には待機状態から起動状態に切り替える。検波部12は、所定パターンの信号と認識ができた場合、その後に車両ユニット2から送信されてくる車両IDを含む信号SG2,強度測定用信号SG3を受信信号から取得する。なお車両IDは車両毎に異なっている信号であり、ウェイクアップ信号SG1及び車両IDを含む信号SG2は全ての3軸アンテナから出力する必要は必ずしも無く、一番大きなレベルの信号のみを検波部12に出力するようにしても良い。強度測定用信号SG3からRSSI(Received signal Strength Indicator)レベルを3軸のLFアンテナ10−1〜10−3個別に測定する。そして、測定した各LFアンテナ10−1〜10−3に対応するRSSIレベルをCPU13へ出力する。
【0021】
また、検波部12は、LFアンテナ10−1〜10−3が受信して復調された復調信号をCPU13へ出力する。
【0022】
CPU13は、ID照合部131、故障判定部132、携帯機位置計算部133、メモリ134を備え、検波部12から出力された信号をデジタル信号に変換して取り込む。ID照合部131は、復調信号から得られる車両IDを含む信号とメモリ134に予め登録されている車両ID番号とを比較してID照合を行う。CPU13は車両IDの認証がされた場合に、後述のような位置計算、RF信号の返信を行う。故障判定部132は、デジタルデータに変換されたLFアンテナ10−1〜10−3のRSSIレベルに基づいてアンテナ個別に故障判定を行う。携帯機位置計算部133は、故障していないと判断された3つ又は2つのLFアンテナ(10−1〜10−3)のRSSIレベルに基づいて自機の位置を計算する。
【0023】
ここで、故障判定部132におけるアンテナの故障判定について具体的に説明する。故障判定部132は、X軸,Y軸,Z軸に対応したLFアンテナ10−1〜10−3のRSSIレベルを観察し、RSSIレベルの前回測定値と今回測定値を比較すると共に対象アンテナと他のアンテナとの相互比較も行うことでアンテナ故障の有無を検出する。
【0024】
携帯機1は持ち運びされて状況(位置)が時々刻々と変化すれば、アンテナとの距離や向きも変わるので各LFアンテナ10−1〜10−3のRSSIレベルもそれぞれ変化する。ところが、様々な状態におかれても1軸又は2軸のLFアンテナのRSSIレベルだけが、常にある一定値以上に上がらなければ、そのアンテナは故障している可能性が大きい。したがって、LFアンテナ10−1〜10−3について3軸同時にRSSIレベルを測定し、時間をずらして取得される前回測定値と今回測定値とを比較する。故障しているアンテナがあると、他のアンテナのRSSIレベルが前回測定値と今回測定値で一定値以上に上がったり又は一定値以下に下がったりしている場合に、対象アンテナのRSSIレベルだけが一定値以上に上がることがなければ、その対象アンテナは故障していると判定できる。
【0025】
3軸のアンテナの夫々に対応するRSSIレベルは電界ベクトルの方向のスカラー量で決まるので角度と距離に依存する。携帯機1の移動において、一部(1軸又は2軸)のアンテナだけが角度と距離を加味したスカラー量が変わらず、また所定の閾値以下を維持するということは実際の使用においては殆ど考えられない。すなわち、全てのアンテナが故障していない場合において、2つの軸のアンテナのRSSI値が変化していれば携帯機は移動又は向きが変わっていると推測でき、その際には残りのアンテナの出力値も変わるはずである。したがって、少なくとも1軸のアンテナについてはRSSIレベルが所定値を超えて変化しているのに、他のアンテナのRSSIレベルだけが変わらない場合には、そのアンテナ或いはそのアンテナに接続されたLF増幅器が故障していると推測することができる。なお、アンテナ故障には、アンテナ自体が機器本体から脱落してしまっているとか、アンテナと増幅回路との間の配線の断線とか、増幅回路のそのものの故障とかがある。
【0026】
CPU13の携帯機位置計算部133は、故障しているアンテナがない場合、3軸のLFアンテナ10−1〜10−3の夫々に対応するRSSIレベルを使用して自機の位置を計算する。これに対し、1軸のみアンテナが故障している場合は、残りの2軸のアンテナに対応するRSSIレベルを使用して自機の位置を計算する。なお、アンテナが故障してなくても増幅器が故障している場合もあり、この場合もアンテナが故障しているものとして、上記同様に自機の位置を計算する。
【0027】
このように携帯機位置計算部133は、X軸,Y軸,Z軸の3軸のLFアンテナ10−1〜10−3のうち、1軸のアンテナにのみ故障が生じている場合、残りの2軸のアンテナを使用して自機の位置の計算を継続する。したがって、故障したアンテナのRSSIレベルが携帯機位置計算から排除されるので、正しい値のみで位置を計算することができる。
【0028】
ところで、位置を特定する方法としては検出したRSSIレベルから携帯機の絶対位置を決定する方法や、どの領域に位置するかを判断する方法がある。
【0029】
絶対位置を決定する際には検出したRSSIレベルからLFアンテナ10−1〜10−3と携帯機1の距離を明らかにし、3つの距離から携帯機の絶対位置を決定する。
【0030】
どの領域に位置するかを判断する際には、予め、それぞれの領域においてRSSIレベルのデータを取得しておいて、検出したRSSIレベルデータがどの領域のデータに類似するかをマハラノビス距離などの統計手法を使って判断する方法がある。
【0031】
上述の絶対位置の特定の場合には、仮に1つのLFアンテナから携帯機1までの距離が誤ったデータの場合は理論上ありえない位置となる事があり(3本のアンテナからそれぞれの距離を円で描き、交わった1点が携帯機の位置と特定できるが、誤った距離データがある場合3つの円が1点で交わらない可能性が高い)、エラーとなってしまう問題がある。或いは、測定誤差として値を許容する事も考えられるが、3つの値を使用する為、正しい位置と大きく離間した位置と算出してしまう可能性がある。
【0032】
また、上述の携帯機の位置する領域を判断する場合には、間違ったデータの影響によりマハラノビス距離が大きく変わる可能性があり、正しい位置と大きく離間した位置と判定してしまう可能性がある。
【0033】
本実施例においては、正確な値だけを使うので、いずれに適用したとしてもこれらの問題は無い。但し3軸のアンテナ10−1〜10−3での位置検知に比べると、アンテナの向きによってはかなりの精度低下の可能性がある為、後述するようにユーザーに報知して注意を喚起するようにしている。
【0034】
CPU13の故障判定部132は、アンテナの故障を検出した場合には、アンテナ故障の有無を報知するための故障報知情報を生成する。CPU13は、故障報知情報と携帯機位置計算部133で計算した携帯機位置情報とから変調信号を生成する。この変調信号には、さらに携帯機1の”ID(Identification)”と”コマンド(車両ドアの施錠・開錠等を行わせる指令)”も含まれる。
【0035】
UHF発振器14は、受信に使用されるLF信号より高域となるUHF帯(例えば315MHz)の搬送波信号を発生する。混合器15は、UHF発振器14で発振された搬送波信号をCPU13から出力される変調信号(データ信号)で変調し、RF信号として出力する。RF増幅器16は、混合器15から出力される変調後の搬送波信号を増幅する。RFアンテナ17は、送信用のアンテナであり、RF増幅器16で増幅されたRF信号を送信する。すなわち、RFアンテナ17から、”携帯機位置情報”、”携帯機ID”、及び”コマンド”を含むデータで変調されたRF信号(搬送波信号)が送信される。RFアンテナ17は、315MHzの周波数の無線信号を効率良く送信できる電気長となっている。
【0036】
次に、車両ユニット2について説明する。
図3は、本実施の形態に係るキーレスエントリー装置の車両ユニット2の概略構成を示すブロック図である。RFアンテナ20は、携帯機1から送信された315MHz帯のRF信号を効率よく受信する電気長に設定されている。RFフィルタ21は、希望波信号(315MHz帯)以外を除去してRF増幅器22へ出力する。RF増幅器22は受信信号を増幅して混合器23へ出力する。UHF局部発振器24は、315MHz帯の受信信号を10.7MHzの中間周波数にダウンコンバートするためのローカル信号を発振する。混合器23において、RF増幅器22から出力される受信信号とUHF局部発振器24で発振されたローカル信号とを混合してIF信号に周波数変換する。IFフィルタ25は、混合器24の出力から10.7MHzの中間周波を抽出する。IF増幅器26は、中間周波を復調可能なレベルまで増幅してIF検波器27へ出力する。IF検波器27は、IF増幅器26で増幅されたIF信号から受信データ(”携帯機位置情報”、”携帯機ID”、及び”コマンド”を含むデータ)を復調する。
【0037】
CPU28は、ID認識・携帯機位置情報部281と、スイッチ認識部282と、変調データ生成部283を有している。CPU28は、ID認識・携帯機位置情報部281で受信データに含まれたIDについて予め登録されている携帯機IDと一致するかの認証を行い、管理している携帯機1からの信号であるかを判断する。管理下の携帯機1からの受信データであることが確認できると、受信データから携帯機位置情報を取得する。また、アンテナ故障の有無を報知する故障報知情報が含まれていれば、報知器29を動作させてユーザにアンテナ故障を知らせる。報知器29による報知方式は特に限定されない。たとえば、故障している1軸のアンテナを不図示のディスプレイ上に表示させたり、アラームを鳴動させたり、振動を発生させたりする。そして車両ユニット2においては所定の携帯機1からの信号の受信を前提として、携帯機1の位置とコマンドに応じた所定の動作を行わせる。例えば、車外に携帯機1が位置し、コマンドがドアロック解除であればロック解除を行わせる。
【0038】
CPU28は、スイッチ認識部282でエントリースイッチ30の動作を認識する。エントリースイッチ30はユーザーが車のロックを解除する際に操作されるためのものである。CPU28は、エントリースイッチ30が操作されると所定のウェイクアップパターン、車両ID、を読み込む。そして、変調データ生成部283でウェイクアップパターンと車両ID、強度測定信号を含む変調データを生成する。
【0039】
LF発振器31は、携帯機1に送信するための125kHzの搬送波信号を発生する。混合器32は、LF発振器31で発振された搬送波信号をCPU28の変調データ生成部283で生成された変調データで変調し、LF信号として出力する。LF増幅器33は、混合器32から出力されるLF信号を増幅し、LFアンテナ34から無線送信する。LFアンテナ34は、125kHzの周波数の無線信号を効率良く送信できる電気長となっている。
【0040】
次に、携帯機1の動作について具体的に説明する。なお、携帯機1のCPU13におけるID照合は別に行われているものとして説明する。
【0041】
図4は、携帯機1の動作を説明するためのフローチャートである。携帯機1の検波部12は、ウェイクアップパターン待ち受け状態において、LFアンテナ10−1〜10−3の夫々が受信した受信信号を検波し、少なくとも1つの復調信号からウェイクアップ信号SG1が得られるまで待機する(ステップS1)。ウェイクアップ信号SG1が復調されると、その復調されたウェイクアップ信号SG1からウェイクアップパターンを認識し、所定のウェイクアップパターンと一致するか否かを判定する(ステップS2)。復調したウェイクアップパターンが所定のウェイクアップパターンと一致しない場合は、ウェイクアップパターン待ち受け状態に戻る。復調したウェイクアップパターンが所定のウェイクアップパターンと一致する場合、強度測定用信号の受信を行う(ステップS3)。
【0042】
検波部12は、LFアンテナ10−1〜10−3が受信した強度測定用信号からRSSIレベルをそれぞれ測定する(ステップS4)。そして、測定した各LFアンテナ10−1〜10−3に対応するRSSIレベルをCPU13へ出力する。CPU13は、検波部12から出力されたLFアンテナ10−1〜10−3の夫々に対応するRSSIレベルをデジタルデータに変換した後、LFアンテナ10−1〜10−3の夫々に対応するRSSIレベルを自身のメモリ134に保存する(ステップS5)。この場合、X軸のLFアンテナ10−1に対応するRSSIレベルをメモリ134のX0に保存し、Y軸のLFアンテナ10−2に対応するRSSIレベルをメモリ134のY0に保存し、Z軸のLFアンテナ10−3に対応するRSSIレベルをメモリ134のZ0に保存する。
【0043】
CPU13は、LFアンテナ10−1〜10−3の夫々に対応するRSSIレベルを保存した後、自己のメモリ134にRSSIレベルの前回値を保存しているかどうか判定する(ステップS6)。RSSIレベルの前回値を保存している場合、LFアンテナ10−1〜10−3の夫々に対応するRSSIレベルのうち、現在値及び前回値が所定の閾値以下であるかどうか判定する(ステップS7)。この判定において、1本のLFアンテナに対応するRSSIレベルの現在値及び前回値が所定の閾値以下であれば故障している可能性があるとみなして、そのLFアンテナがX軸,Y軸,Z軸のうちのどの軸のアンテナかを判定する(ステップS8)。
【0044】
ステップS8において、対象アンテナ(故障判定対象軸)がX軸のアンテナであれば、X軸以外のY軸及びZ軸のアンテナ10−2、10−3の夫々に対応するRSSIレベル値の変化の有無を確認する(ステップS9)。すなわち、Y0,Z0が
Y1×0.9<Y0<Y1×1.1
Z1×0.9<Z0<Z1×1.1
であるか否かを確認する。但し、Y1及びZ1は前回の測定値、Y0及びZ0は今回の測定値である。
【0045】
Y軸アンテナの今回の測定値Y0が前回の測定値の90%から110%の間にあり、かつZ軸アンテナの今回の測定値Z0が前回の測定値の90%から110%の間にあれば変動(移動又は向きの変更)していないと判断し、そうでなければ変動していると判断する。変動していないと判断した場合、すなわち、Y軸アンテナの今回の測定値Y0が前回の測定値の90%から110%の間にあり、かつZ軸アンテナの今回の測定値Z0が前回の測定値の90%から110%の間にある場合は、後述するステップS13の処理に移行する。一方、変動していると判断した場合、すなわち、Y軸アンテナの今回の測定値Y0が前回の測定値の90%から110%の間を超え、かつZ軸アンテナの今回の測定値Z0が前回の測定値の90%から110%の間を超える場合は、X軸のLFアンテナ10−1が故障していると判定し、車両ユニット2に通知する故障報知情報を生成する際に、携帯機位置情報にX軸のLFアンテナ10−1の故障報知情報を含める(ステップS10)。アンテナの故障判定を行った後、今回の測定値を前回の測定値として保存する。すなわち、データの書き換え(X0→X1,Y0→Y1,Z0→Z1)を行う(ステップS11)。
【0046】
CPU13は、ステップS11で今回値を前回値として移動した後、携帯機位置計算部133で携帯機1の位置を計算する(ステップS12)。この場合、X軸のLFアンテナ10−1が故障しているので、CPU13は、故障判定されていない残りの2軸アンテナ、すなわちY軸のLFアンテナ10−2におけるRSSIレベル値とZ軸のLFアンテナ10−3におけるRSSIレベル値に基づいて携帯機1の位置を計算する。Y軸とZ軸の2軸のアンテナLF10−2,10−3から得られる受信信号のRSSIレベル値に基づいて携帯機1の位置を計算した後、”携帯機ID”、”コマンド”、及び”携帯機位置情報”を含むデータを生成し送信する(ステップS15)。この処理を終えた後、ステップS1に戻る。
【0047】
一方、上記ステップS8の判定において、対象アンテナ(故障判定対象軸)がY軸であれば、Y軸以外のX軸及びZ軸のLFアンテナ10−1,10−3の夫々に対応するRSSIレベル値の変化の有無を確認する(ステップS16)。すなわち、
X1×0.9<X0<X1×1.1
Z1×0.9<Z0<Z1×1.1
であるか否かを確認する。但し、X1及びZ1は前回の測定値、X0及びZ0は今回の測定値である。
【0048】
今回の測定値であるX0が前回の測定値の90%から110%の間にあり、かつ今回の測定値であるZ0が前回の測定値の90%から110%の間にあれば変動していないと判断し、そうでなければ変動していると判断する。変動していないと判断した場合、すなわち、今回の測定値であるX0が前回の測定値の90%から110%の間にあり、かつ今回の測定値であるZ0が前回の測定値の90%から110%の間にある場合は、後述するステップS13の処理に移行する。一方、変動していると判断した場合、すなわち、今回の測定値であるX0が前回の測定値の90%から110%の間を超え、かつ今回の測定値であるZ0が前回の測定値の90%から110%の間を超える場合は、Y軸のLFアンテナ10−2が故障していると判定し、車両ユニット2へ送信するデータの生成の際に、携帯機位置情報にY軸のLFアンテナ10−2の故障を示す情報を含める(ステップS10)。アンテナの故障判定を行った後、今回の測定値を前回の測定値として保存する。すなわち、データの書き換え(X0→X1,Y0→Y1,Z0→Z1)を行う(ステップS11)。
【0049】
CPU13は、ステップS11で今回値を前回値として移動した後、携帯機位置計算部133で携帯機1の位置を計算する(ステップS12)。この場合、Y軸のLFアンテナ10−2が故障しているので、CPU13は、X軸のLFアンテナ10−1に対応するRSSIレベル値とZ軸のLFアンテナ10−3に対応するRSSIレベル値との2軸のアンテナLF10−1,10−3に対応するRSSIレベル値に基づいて携帯機1の位置を計算する。X軸とZ軸の2軸のアンテナLF10−2,10−3に対応するRSSIレベル値に基づいて携帯機1の位置を計算した後、”携帯機ID”、”コマンド”、及び”携帯機位置情報”を含むデータを生成し送信する(ステップS15)。この処理を終えた後、ステップS1に戻る。
【0050】
また、上記ステップS8の判定において、対象アンテナ(故障判定対象軸)がZ軸であれば、Z軸以外のX軸及びY軸のLFアンテナ10−1,10−3の夫々に対応するRSSIレベル値の変化の有無を確認する(ステップS17)。すなわち、
Y1×0.9<Y0<Y1×1.1
X1×0.9<X0<X1×1.1
であるか否かを確認する。但し、Y1及びX1は前回の測定値、Y0及びX0は今回の測定値である。
【0051】
今回の測定値であるY0が前回の測定値の90%から110%の間にあり、かつ今回の測定値であるX0が前回の測定値の90%から110%の間にあれば変動していないと判断し、そうでなければ変動していると判断する。変動していないと判断した場合、すなわち、今回の測定値であるY0が前回の測定値の90%から110%の間にあり、かつ今回の測定値であるX0が前回の測定値の90%から110%の間にある場合は、後述するステップS13の処理に移行する。一方、変動していると判断した場合、すなわち、今回の測定値であるY0が前回の測定値の90%から110%の間を超え、かつ今回の測定値であるX0が前回の測定値の90%から110%の間を超える場合は、Z軸のLFアンテナ10−3が故障していると判定し、車両ユニット2へ送信するデータの生成の際に、携帯機位置情報にZ軸のLFアンテナ10−3の故障を示す情報を含める(ステップS10)。アンテナの故障判定した後、今回の測定値を前回の測定値として保存する。すなわち、データの書き換え(X0→X1,Y0→Y1,Z0→Z1)を行う(ステップS11)。
【0052】
CPU13は、ステップS11で今回値を前回値として移動した後、携帯機位置計算部133で携帯機1の位置を計算する(ステップS12)。この場合、Z軸のLFアンテナ10−3が故障しているので、CPU13は、X軸のLFアンテナ10−1に対応するRSSIレベル値とY軸のLFアンテナ10−2に対応するRSSIレベル値との2軸のアンテナLF10−1,10−2に対応するRSSIレベル値に基づいて携帯機1の位置を計算する。X軸とY軸の2軸のアンテナLF10−2,10−2に対応するRSSIレベル値に基づいて携帯機1の位置を計算した後、”携帯機ID”、”コマンド”、及び”携帯機位置情報”を含むデータを生成し送信する(ステップS15)。この処理を終えた後、ステップS1に戻る。
【0053】
また、CPU13は、上記ステップS7の判定において、0本又は2本以上のアンテナに対応するRSSIレベルの現在値及び前回値が所定の閾値以下であれば、ステップS13に移行し、今回の測定値を前回の測定値として保存する。すなわち、X1,Y1,Z1の前回の測定値に異常が無いか、或いは2本以上のアンテナに異常があると判断するとデータを書き換える(X0→X1,Y0→Y1,Z0→Z1)。異常が無い場合には、X1,Y1,Z1の各値すなわち3軸のアンテナLF10−1〜10−3に対応するRSSIレベル値に基づいて携帯機1の位置を計算する(ステップS14)。携帯機1の位置計算を行った後、”携帯機ID”、”コマンド”、及び”携帯機位置情報”を含むデータを生成し送信する(ステップS15)。この処理を終えた後、ステップS1に戻る。
【0054】
また、CPU13は、上記ステップS6の判定において、自己のメモリ134にRSSIレベルの前回値を保存していない場合は、1回目の測定であるとして、そのままステップS13に移行し、データを書き換え(X0→X1,Y0→Y1,Z0→Z1)を行う。そして、X1,Y1,Z1の各値すなわち3軸のアンテナLF10−1〜10−3に対応するRSSIレベル値に基づいて携帯機1の位置を計算し(ステップS14)、得られた”携帯機位置”と”携帯機ID”及び”コマンド”を含むデータを生成して送信する(ステップS15)。この処理を終えた後、ステップS1に戻る。
【0055】
このように本実施の形態のキーレスエントリー装置の携帯機1では、時間をずらしてRSSIレベルを取得し、2軸のLFアンテナの夫々に対応する受信信号のRSSIレベルが変化し、残りの1軸のLFアンテナに対応する受信信号のRSSIレベルが変化しない場合に、その残りの1軸のLFアンテナ、或いはそのLFアンテナに対応するLF増幅回路が故障したと判断し、その故障を、車両ユニット2を介してユーザに報知するとともに、正常な2軸のLFアンテナを用いて携帯機1の位置を計算を継続するので、3軸のLFアンテナ10−1〜10−3の夫々の故障を、LFアンテナ10−1〜10−3が接続されるLF増幅器11−1〜11−3を含めて正確に検出することができ、さらに、故障していない2軸のLFアンテナ及びそれらのLFアンテナに接続される2つのLF増幅器を用いて継続して位置検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、パッシブ型のキーレスエントリー装置の携帯機として適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 携帯機 2 車両ユニット
10−1〜10−3 LFアンテナ 11−1〜11−3 LF増幅器
12 検波部 13 CPU
14 UHF発振器 15 混合器
16 RF増幅器 17 RFアンテナ
20 RFアンテナ 21 RFフィルタ
22 RF増幅器 24 UHF局部発振器
23 混合器 25 IFフィルタ
26 IF増幅器 27 IF検波器
28 CPU 29 報知器
30 エントリースイッチ 31 LF発振器
32 混合器 33 LF増幅器
34 LFアンテナ 131 ID照合部
132 故障判定部 133 携帯機位置計算部
134 メモリ 281 ID認証・携帯機位置情報部
282 スイッチ認識部 283 変調データ生成部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
3軸のアンテナを有するキーレスエントリー装置の携帯機において、
3軸同時に測定される前記各アンテナの受信強度を取得し、時間をずらして取得された前記3軸のアンテナの前回の受信強度と今回の受信強度とを比較し、少なくとも1軸のアンテナに対応した受信強度の変化が認められ、他のアンテナに対応した受信強度の変化が認められない場合は、受信強度の変化が認められない他のアンテナ又は当該他のアンテナに接続される受信回路に故障があると判定する故障判定手段を有することを特徴とするキーレスエントリー装置の携帯機。
【請求項2】
前記3軸のアンテナの受信強度を用いて自機の位置を計算する携帯機位置計算手段を備え、前記携帯機位置計算手段は、前記3軸のアンテナのうち2軸のアンテナに対応した受信強度の変化が認められ、残りの1軸のアンテナに対応した受信強度の変化が認められない場合は、前記正常な2軸のアンテナの受信強度を用いて自機の位置特定を継続することを特徴とする請求項1記載のキーレスエントリー装置の携帯機。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−179214(P2011−179214A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44017(P2010−44017)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】