説明

キー照明スイッチモジュール

【課題】キーを背後から照明するためのバックライトとして高い光学性能を維持したままで、クリック感低下の原因である導光シートの弾性反発応力を緩和してクリック感を改善する。
【解決手段】カバーシート24の裏面には粘着層27が形成されている。ドーム状の接点バネ23は、粘着層27により頂点部分をカバーシート24の裏面に接着される。また、プリント配線基板22には、接点バネ23によって導通状態又は絶縁状態に切り替えられる固定接点26aと環状接点部26bが設けられている。さらに、カバーシート24の表面側には導光シート25が配置されている。この導光シート25の表面には、接点バネ23の頂点部分に対応する位置において、裏面側へ向けて貫通しない一定幅を有する円環状の環状溝28(凹部)が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキー照明スイッチモジュールに関する。具体的には、携帯電話やデジタルオーディオなどに組み込んで使用されるキー照明スイッチに用いられるキー照明スイッチモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などでは、指でキー(入力ボタン)を押さえてその裏面側の接点バネを弾性変形させ、接点バネを固定接点に導通させてスイッチをオンにする構造となったキースイッチが用いられている。このようなキースイッチの中には、導光シートを用いてキーの配列された面を裏面側から照明できるようにしたキー照明スイッチと呼ばれるものがある。
【0003】
図1は従来より公知のキー照明スイッチの構造を示す概略断面図であって、キー照明スイッチの一部を表している。このキー照明スイッチ11にあっては、ドーム状の接点バネ12が、固定接点13を覆うようにして基板14の上に配設され、接点バネ12の上にカバーシート15を重ねて接点バネ12を保持している。さらにその上に透明樹脂からなる導光シート16を重ね、その上にキー17を配置している。そして、光源からの光を導光シート16内に導き、導光シート16から漏れる光によってキー17の配列された面を裏面側から照明する。
【0004】
(クリック感の低下)
しかしながら、図1のキー照明スイッチ11のように、キー17と接点バネ12との間に柔軟な導光シート16を挟み込んでいると、指でキー17を押したときのクリック感(キーを押し込むときの操作感)が悪くなるという問題があった。キー17のクリック感は、ドーム状の接点バネ12を押さえたとき、ある押圧力を超えると接点バネ12が座屈して潰れることによって得られるものである。このようにして得られていたクリック感が低下するのは、キー17の下に導光シート16が存在していると、キー17を押さえたときにキー17が導光シート16を押す力G1によって導光シート16に弾性反発応力G2が発生し、その分だけ接点バネ12に効率よく力が伝わらず、キー17の操作に余分な力が必要になって操作感が悪くなるためである。
【0005】
実験によれば、キー17の下面に導光シート16が存在しない場合には、キー17を押さえたときのクリック率は33%であったのに対し、厚さ125μmのポリカーボネイト樹脂製の導光シート16を挿入した場合には、クリック率が25%に低下し、厚さ100μmのポリカーボネイト樹脂製の導光シート16を挿入した場合には、クリック率が27%に低下した。つぎの表1は、これをまとめたものである。
【表1】

【0006】
なお、クリック率は、つぎのようにして算出した。各サンプルにおいて接点バネの直上箇所においてキーに次第に大きな荷重を加え、そのときの接点バネの頂点の変位を測定する。図2は、あるサンプルにおける、このときの荷重と変位との関係を表したものであり、縦軸の上方へいくほど荷重が大きくなり、横軸の右方向へいくほど接点バネの頂点の下方への変位が大きくなる。荷重を次第に増加させると、ある荷重に達したときに接点バネが弾性変形してクリック動作するので、そのクリック動作開始時の荷重(動作荷重)F1を測定する。また、クリック動作が終了して接点バネが弾性変形している状態から次第に荷重を減少させると、ある荷重で接点バネが弾性復帰するので、その弾性復帰時の荷重(復帰荷重)F2を測定する。こうして測定された動作荷重F1と復帰荷重F2を用いて、クリック率は次式により計算した。
クリック率K[%]=100×(F1−F2)/F1
このクリック率Kの値が大きいほど、クリック時の感触が良好になる。
【0007】
(柔軟な導光シートの利用とその課題)
特許文献1に開示された発明では、クリック感の低下を改善するため、導光シートの素材としてシリコーン、ポリウレタンなどの柔軟性の高い材料を用いている。柔軟性の高い材料からなる導光シートを用いると、導光シートからキーへの弾性反発応力を減らすことができ、接点バネへ効率よく力を伝達させることができるので、クリック感を改善することができる。
【0008】
しかし、特許文献1の方法では、導光シートにシリコーン、ポリウレタンなどの柔軟な材料を用いる結果、(1)導光シートの、素材としての単価が上昇する、(2)導光シートの、光学部品としての性能(透過率、平面度など)が低下する、(3)柔軟であるために導光シートの加工性が悪く、光を制御するためのディンプルを精度よく作製することが困難となる、といった問題があった。その結果、特許文献1の方法では、導光シートのコストが高くつき、また、導光シートのキー照明スイッチ用バックライトとしての光学的な性能が大きく劣化していた。
【0009】
(導光シートの貫通孔とその課題)
クリック感の低下を改善する別な方法としては、図3(a)、(b)に示すように、接点バネ12に対向する領域で導光シート16に貫通孔19を設ける方法が考えられる。このキー照明スイッチ18のように導光シート16に貫通孔19を設けると、導光シート16の弾性反発応力を低減させることができるので、クリック感が改善される。
【0010】
貫通孔をあけることでクリック感の低下を改善したものとしては、特許文献2に開示されたものがある。ただし、特許文献2に開示されているものは、接点バネに対向する領域の近傍でELシートに円弧状の貫通孔を設けたものである。
【0011】
しかしながら、クリック感を改善するために導光シート16に貫通孔19をあけると、図4(a)に示すように、光源から貫通孔19に達した光L(矢印線で示す。)が貫通孔19を通過することによって進行方向を曲げられたり、貫通孔19の外周面で全反射されたり、あるいは図4(b)に示すように、貫通孔19から外部へ光Lが漏れたりする。そのため、光源からの光Lが貫通孔19で遮断され、貫通孔19の背後の方向へ光が届きにくくなったり、漏れた光によって輝点や輝線が生じたりし、その結果導光シート16の光学性能が大きく劣化し、キーの配列された面を均一光量で照射することが困難になるという問題があった。
【0012】
【特許文献1】特開2007−324100号公報
【特許文献2】特開2002−56737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、キーを背後から照明するためのバックライトとして高い光学性能を維持したままで、クリック感低下の原因である導光シートの弾性反発応力を緩和してクリック感を改善することのできるキー照明スイッチモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的を達成するために、本発明にかかるキー照明スイッチモジュールは、裏面に粘着層を有するカバーシートと、粘着層により前記カバーシートの裏面に接着されたドーム状の接点バネと、接点バネと導通状態又は絶縁状態に切り替えられる固定接点を有する基板と、前記カバーシートの表面側に配置された導光シートとを備え、前記導光シートの表面と裏面とのうち少なくとも一方の面の前記接点バネに対向する領域には、反対側の面に向けて貫通しない凹部が形成されている。
【0015】
本発明のキー照明スイッチモジュールは、接点バネに対向する領域で、反対側の面に向けて貫通しない凹部を導光シートに設けているので、接点バネに対向する領域の少なくとも一部を薄肉化することができ、それによって導光シートの弾性を小さくし、キーで導光シートを押さえたときの弾性反発応力を小さくすることができる。よって、指でキーを押す力が接点バネに効率よく伝わることになり、キーを押さえたときのクリック感が向上する。
【0016】
しかも、凹部は導光シートを貫通していないので、光は凹部の設けられている領域も薄肉部を通って通過することができ、凹部の背後などが暗くなりにくい。また、凹部の深さを導光シートの厚みの数分の1程度に浅くすることで、凹部から光が漏れにくくなり、凹部から漏れた光によって輝線や輝点が発生しにくい。
【0017】
この結果、本発明によれば、導光シートの光学性能を低下させることなく、キーを押さえたときのクリック感を改善することが可能になる。
【0018】
本発明にかかるキー照明スイッチモジュールのある実施態様における前記凹部は、前記導光シートの前記接点バネの中心に対応する点に関して点対称となるように配置されていることを特徴としている。
【0019】
本発明にかかるキー照明スイッチモジュールの別な実施態様における前記凹部は、前記導光シートの前記接点バネの中心に対応する点を通過する仮想の直線に関して線対称となるように配置されていることを特徴としている。
【0020】
凹部を点対称や線対称に配置した実施態様によれば、キーを押さえたときに導光シートに生じる弾性反発応力を均質化することができ、クリック感を良くすることができる。
【0021】
本発明にかかるキー照明スイッチモジュールのさらに別な実施態様における前記凹部は、一定の幅を有する円環状をした環状溝を含んでいることを特徴としている。かかる実施態様によれば、キーで押さえたときに弾性反発応力の大きな個所に沿って環状溝を形成することができる。
【0022】
本発明にかかるキー照明スイッチモジュールのさらに別な実施態様においては、前記環状溝の内径が、前記接点バネの直径の0.5倍以上0.6倍以下であることを特徴としている。導光シートに生じる弾性反発応力が極大値となる領域は、接点バネの直径の0.6倍程度の直径の領域であり、環状溝の幅は200μm以上とするのが望ましいので、環状溝の内径(直径)が接点バネの直径の0.5倍以上0.6倍以下となるようにすれば、弾性反発応力が極大値となる領域に合わせて環状溝を設けることができる。
【0023】
本発明にかかるキー照明スイッチモジュールのさらに別な実施態様においては、前記環状溝が、前記導光シートのスイッチが配置される側の面に形成されていることを特徴としている。シミュレーション結果によれば、環状溝の場合には、導光シートのスイッチが配置される側の面(すなわち、表面)に設ける方が、裏面に設けるよりもクリック率の改善効果が大きくなる。
【0024】
本発明にかかるキー照明スイッチモジュールのさらに別な実施態様における前記凹部は、一定の幅を有する直線状の凹溝を含んでいることを特徴としている。かかる実施態様によれば、凹溝の長手方向を光源側に傾けて配置すれば、光源の光が凹溝で遮られにくくなり、導光シートの光学性能を高くできる。
【0025】
本発明にかかるキー照明スイッチモジュールのさらに別な実施態様においては、前記凹溝が、前記導光シートの前記接点バネが存在している側の面に形成されていることを特徴としている。実測結果によれば、直線状の凹溝の場合には、導光シートの接点バネが存在している側の面(すなわち、裏面)に設ける方が、表面に設けるよりもクリック率の改善効果が大きくなる。
【0026】
本発明にかかるキー照明スイッチモジュールのさらに別な実施態様においては、前記凹溝が、前記接点バネの直径の0.5倍以上の長さを有していることを特徴としている。実測結果によれば、凹溝の長さを接点バネの直径の0.5倍以上にすることで、導光シートの弾性反発応力を小さくできることが分かった。
【0027】
本発明にかかるキー照明スイッチモジュールのさらに別な実施態様においては、前記凹部(すなわち、前記環状溝または前記凹溝)の溝幅が200μm以上であることを特徴としている。シミュレーション結果もしくは実測結果によれば、溝幅を200μm以上にすることによりクリック率を改善できることが分かった。
【0028】
本発明にかかるキー照明スイッチモジュールのさらに別な実施態様においては、前記凹部(すなわち、前記環状溝または前記凹溝)の溝断面形状が台形状または三角形状となっていることを特徴としている。凹部の溝断面形状を台形状または三角形状にしていれば、凹部の側面に入射した光を全反射させて側面から漏れにくくすることができ、輝線や輝点が生じにくくなる。
【0029】
本発明にかかるキー照明スイッチモジュールのさらに別な実施態様においては、前記凹部(すなわち、前記環状溝または前記凹溝)の溝断面形状においては、溝の幅が溝の深さよりも大きいことを特徴としている。溝の幅が溝の深さよりも大きい方が、クリック感の改善効果が高いからである。
【0030】
本発明にかかるキー照明スイッチモジュールのさらに別な実施態様においては、前記凹溝が、その長手方向が、当該凹溝の位置と光源の位置とを結ぶ線分に対して平行となるように配置されていることを特徴としている。かかる実施態様によれば、光源の光が凹溝で遮断されにくくなるので、導光シートの光学性能が向上する。また、凹溝の側面に光が入射しにくくなるので、側面から漏れた光によって輝線や輝点が生じにくくなる。
【0031】
本発明にかかるキー照明スイッチモジュールのさらに別な実施態様においては、前記凹溝に隣接する該凹溝よりも光源に近い位置に、該凹溝の先端に向けて進んでくる光の方向を変化させるための光路変換用の溝部を設けたことを特徴としている。かかる実施態様によれば、光路変換用の溝部により、凹溝の先端に向けて進んでくる光の方向を変化させることができるので、凹部の先端から漏れた光によって輝点や輝線が生じるのを防ぐことができる。
【0032】
なお、本発明における前記課題を解決するための手段は、以上説明した構成要素を適宜組み合せた特徴を有するものであり、本発明はかかる構成要素の組合せによる多くのバリエーションを可能とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。
【0034】
(第1の実施形態)
図5〜図7を参照して本発明の実施形態1によるキー照明スイッチもしくはキー照明スイッチモジュールの構造を説明する。図5は、実施形態1によるキー照明スイッチモジュール21の分解斜視図である。図6(a)は、キー照明スイッチモジュール21にキートップを付加したキー照明スイッチ41の概略断面図であって、一つの接点バネ23を含む領域(以下、一単位部分という。)を示す。図6(b)は、キー照明スイッチ41に用いられている導光シート25の平面図である。図7は、キー照明スイッチ41の作用説明のための概略図である。
【0035】
図5に示すように、キー照明スイッチモジュール21は、フレキシブルプリント基板などからなるプリント配線基板22(基板)、接点バネ23、カバーシート24及び導光シート25からなる。プリント配線基板22の表面には、導電性材料からなる円形をした固定接点26aが複数個配列されており、それぞれの固定接点26aの周りには固定接点26aを囲む環状接点部26bを有している。固定接点26aと環状接点部26bとの間には絶縁用のギャップが存在している。また、プリント配線基板22は、コーナー部に位置決め孔31を有している。
【0036】
接点バネ23は、導電性と弾性を有する金属薄板材料、特にステンレス材料によって凸型ドーム状に形成されており、裏面側は椀状に窪んでいる。接点バネ23の直径は、環状接点部26bの内径よりも大きく、環状接点部26bの外径よりも小さくなっている。
【0037】
カバーシート24は、接点バネ23を保持する働きと、導光シート25の反射シートとしての働きを有している。従って、カバーシート24は、薄くて柔軟な高反射率の樹脂製シート、特に白色樹脂シートによって構成されている。また、カバーシート24の裏面には粘着剤によって均一な厚みの粘着層27(図6参照)が設けられている。なお、図面においては、カバーシート24の裏面のほぼ全面に粘着層27を塗布しているが、接点バネ23の裾部に対向する領域には粘着層27を塗布せず、接点バネ23の頂点部分に対向する領域などにだけ塗布するようにしてもよい。
【0038】
導光シート25は、高屈折率の透明樹脂材料によってシート状に成形されたものであって、可撓性を有している。導光シート25の材質としては、光学的に高い性能をもつ、ポリカーボネイト樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などを用いる。導光シート25の一方端部には、円弧状に切り欠かれた光入射部29が設けられており、光入射部29と対向する位置にはLED等の光源30が配設される。また、導光シート25のコーナー部には位置決め孔31と対をなす位置決め孔32が設けられている。
【0039】
導光シート25のうち破線で囲んで示したパターンエリアには、バックライトとしての光学性能を満たすための設計を行っている。すなわち、導光シート25の表面(光出射面38)には、数十μm〜数百μmの微細な拡散パターン(図示せず)が形成されており、導光シート25の裏面(カバーシート24に対向する面)には、三角プリズム状、円錐状、半球状などの形状をした多数のごく微細な光偏向パターン33(ディンプル)(図7参照)が設けられている。
【0040】
導光シート25の表面のうち接点バネ23と対向する領域には、応力を緩和させるための円環状の環状溝28(凹部)を設けている。この環状溝28は、導光シート25の表面側で窪んでおり、導光シート25の裏面は光偏向パターン33を除けば平坦となっている。環状溝28は、一定の幅(すなわち、単なるスリットでなく、幅を有している。)と一定の深さを有し、導光シート25の他部の厚み(素材シートの総厚)の数分の1程度の浅い溝であり、環状溝28の底面は部分的に厚みが薄くなった薄肉部28a(図9参照)となっている。
【0041】
導光シート25に環状溝28を形成する方法としては、光偏向パターン33を形成するための技術(従来工法)を応用することができる。環状溝28の深さが、導光シート25の総厚の数分の1程度の場合には、光偏向パターン33の深さと大きく変わることがないので、環状溝28と光偏向パターン33とでは形状が異なるとは言え、成形に関する条件は大きく異ならない。よって、光偏向パターン33を形成するのと同一の工程で、しかも、ほぼ同じ条件で環状溝28を作製することが可能となる。従って、導光シート25に環状溝28を設けるようにしても、導光シート25の作製に関して難度が高くなることもなく、導光シート25の製造コストの上昇も最低限に抑えることが可能である。
【0042】
キー照明スイッチモジュール21にキートップ34を付加して組み立てた状態のキー照明スイッチ41(一単位部分)を図6に示す。接点バネ23の頂点部分を粘着層27に接着させることにより、各接点バネ23はカバーシート24裏面の所定位置に保持されている。カバーシート24は、粘着層27をプリント配線基板22の表面に接着させることによってプリント配線基板22の表面に固定されており、それにより接点バネ23は、固定接点26aを覆うようにして環状接点部26bの上に置かれて位置決め固定されている。導光シート25は、位置決め孔32をプリント配線基板22の位置決め孔31に一致させるようにしてカバーシート24の上に重ねられ、両面粘着テープや糊などによってカバーシート24に固定されている。こうして位置決めされた導光シート25では、各環状溝28の中心は接点バネ23の頂点(中央)の位置とほぼ一致している。また、プリント配線基板22には、導光シート25端面の光入射部29に対向するようにして光源30が実装される。
【0043】
キー照明スイッチモジュール21の上面には、キートップ34が設けられている。キートップ34は、一枚の柔軟なキーシート35の表面に複数個のキー36を配列し、各キー36の下面に対応させてキーシート35の裏面に押し子37を設けたものである。そして、押し子37を各接点バネ23の頂点に対向させて導光シート25の表面に当接させている。
【0044】
なお、図5に示すキー照明スイッチモジュール21は、携帯電話機用の操作部であって、1点鎖線で示す領域S内の固定接点26aと環状接点部26bに対向する位置には1個の十字キー(図示せず)が設けられ、他の固定接点26a及び環状接点部26bに対向する位置には、それぞれ図6のようにキー36が設けられる。
【0045】
〔照明動作〕
このキー照明スイッチ41のキー照明動作を説明する。キー照明スイッチ41では、図7に示すように、導光シート25の光入射部29に対向させて光源30を設けているので、光源30を発光させると、光源30から出射した光Lは光入射部29から導光シート25内に入射する。このとき、導光シート25に入射する光Lは、円弧状の光入射部29によって面内で広げられる。導光シート25内に入射した光Lは、導光シート25の表面と裏面との間で反射を繰り返して導光する。導光シート25内を導光する光Lが光偏向パターン33に入射すると、光偏向パターン33で全反射した光Lが光出射面38から外部へ出射される。光出射面38には微細な拡散パターンが形成されているので、光出射面38から出射された光Lは拡散パターンで拡散され、導光シート25の表面の輝度分布が均一化される。よって、導光シート25の光出射面38に対向させてキートップ34が配列されていると、導光シート25から出た光によってキー36を背面側から均一に照明することができる。
【0046】
なお、光偏向パターン33は、光源30からの距離が大きくなるほど分布密度が大きくなっているので、光出射面38から出射される光量が光出射面38全体で均一化され、輝度分布が均一化される。
【0047】
導光シート25の背面に対向するカバーシート24は、高反射率であって反射シートの働きを有しているので、導光シート25の背面から漏れた光はカバーシート24で反射されて導光シート25内に再入射する。よって、導光シート25の背面から漏れる光によるロスを低減して光の利用効率を向上させることができる。
【0048】
〔スイッチ動作〕
つぎに、キー36を押さえたときの動作を説明する。キー36を押さえると、図8に示すように、導光シート25及びカバーシート24を介して押し子37が接点バネ23を押圧する。押圧された接点バネ23は弾性変形して中央部が潰れ、接点バネ23が固定接点26aに接触することで固定接点26aと環状接点部26bとが導通してスイッチがオンとなる。
【0049】
このとき、押し子37で押された導光シート25は弾性的に撓むので、導光シート25には弾性反発応力が発生するが、導光シート25には円環状の環状溝28が設けられているために、導光シート25の弾性反発応力が小さくなり、キー36を押したときのクリック感の低下が抑制される。すなわち、導光シート25の環状溝28が設けられた部分では導光シート25が部分的に薄肉部となっているため導光シート25が変形しやすくなっており、導光シート25の弾性反発応力が小さくなる(シートの弾性反発応力は、シート厚の3乗に反比例する(モールの定理))ので、キー36から接点バネ23に力が伝達しやすくなってクリック感が改善される。
【0050】
また、導光シート全体の厚みを薄くすることによっても、クリック感を改善することができるが(表1参照)、導光シート全体の厚みを薄くすると、光入射部及び導光シート自体の厚みが薄くなるため、導光シートのバックライトとしての発光量が落ちることになり、導光シートの光学性能が低下する。これに対し、本実施形態のキー照明スイッチ41では、環状溝28によって導光シート25の厚みを部分的に薄くしているだけであるので、従来より用いられている導光シートに較べてシート厚を薄くする必要がなく、導光シート25の光学性能とキー36の操作感とを両立させることができる。
【0051】
また、導光シートに貫通孔を設けることによっても、クリック感を改善することができるが、導光シートに貫通孔をあけた場合には、貫通孔によって光の導光が遮られる(図4参照)ので、貫通孔の背後で輝度が低下したり、輝点・輝線が生じるなど導光シートの光学性能が低下する。これに対し、本実施形態のキー照明スイッチ41では、環状溝28は導光シート25を貫通しておらず、環状溝28の下に薄肉部28aが確保されているので、図9(a)、(b)に示すように、環状溝28に達した光は環状溝28の下の薄肉部28aを導光して通過することができ、環状溝28の背後で輝度が低下しにくく、また輝点や輝線が発生しにくくなり、導光シート25の光学性能の低下を小さくできる。よって、導光シート25にバックライトとしての光学性能を満たすための最適な材料を選択したうえで、環状溝28の溝深さを導光シート25の総厚の数分の1程度の深さにし、後述のように環状溝28の溝断面形状や寸法、方向などを最適に設計すれば、環状溝28に達する光のロスを大きく抑制することが可能となる。それにより、導光シート25のバックライトとしての高い光学性能を維持させることができる。
【0052】
さらに、特許文献1のように柔軟性の高い導光シートを用いることによってクリック感を改善する方法では、導光シートの素材が制約されるが、本実施形態では導光シート25の材料が制約されにくいので、導光シート用に従来より用いられているポリカーボネイト樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの高い光学性能を有する材料を用いることができる。
【0053】
〔環状溝の好ましい形態〕
本実施形態においては、環状溝28を設けることによってキー照明スイッチ41のクリック感を改善することができるが、特に環状溝28の位置や溝幅を最適に設計することで弾性反発応力を緩和してより一層クリック感を改善できる。以下においては、この点について説明する。
【0054】
図10は、図8のようにキー36を押し込んだときの導光シートの変位をシミュレーションした結果を表す。このシミュレーションに用いたサンプルは、接点バネ23の直径が4mm(携帯電話用では直径4mmの接点バネが用いられる。)のものであり、導光シートは環状溝28の設けられていないシート厚125μmのものであり、押し子37の直径が1.5mmである。図10の横軸は、プリント配線基板22に垂直な方向から見て、接点バネ23の中心から測った距離を表している。図10の縦軸は、導光シートの変位量を表しており、正値は上方(表面側)への変位量、負値は下方(裏面側)への変位量を表している。よって、図10の曲線は、キー36を押し込んだときに変形した導光シートの断面形状を表している。導光シートの形状変化は、接点バネ23の形状変化に追従するものであり、接点バネ23の中心とそのピーク点を支点とした曲げにより発生する。
【0055】
また、図11は同様にしてキー36を押し込んだときに、導光シート(25)の裏面に発生する弾性反発応力の大きさを表す。このシミュレーションに用いたサンプルも、接点バネ23の直径が4mmのものであり、導光シートは環状溝28の設けられていないシート厚125μmのものであり、押し子37の直径が1.5mmである。図11の横軸は、プリント配線基板22に垂直な方向から見て、接点バネ23の中心から測った距離を表している。図11の縦軸は、導光シート25の裏面における弾性反発応力を任意単位(a.u.)で表したものである。
【0056】
図10と図11とを比較すると、変形した導光シートの変曲点と接点バネ23の中心に対応する位置で弾性反発応力が極大になっていることが分かる。そして、弾性反発応力が極大になっている個所は、接点バネ23の中心に対応する点と、中心から約1.2mmの個所である。言い換えると、弾性反発応力が極大になっている個所は、接点バネ23の中心に対応する点と、接点バネ23の中心から接点バネ23の半径の約0.6倍(=1.2/2)の個所である。よって、これら弾性反発応力が極大となっている領域に環状溝28を設けて導光シート25を薄肉化すれば、導光シート25に生じる弾性反発応力を低減させることができ、それによってキー照明スイッチ41のクリック感を良好にすることができる。環状溝28は、内径(直径)が接点バネ23の直径の1/2以上で、外径が接点バネ23の直径以下であることが好ましい。また、後述のように環状溝28の幅は200μm以上とするのが好ましいので、特に外側の極大点に環状溝28を合わせるには、環状溝28の内径を接点バネ23の直径の0.5倍以上0.6倍以下とするのが望ましい。
【0057】
つぎに、環状溝28の溝幅とクリック感の改善度合いとの関係をシミュレーションにより検討した。それと同時に、環状溝28を導光シート25の表面に設けた場合と裏面に設けた場合とのクリック率の改善度合いも比較した。
【0058】
図12は、導光シート25の表面あるいは裏面に設けた環状溝28の溝幅とクリック率の改善ポイントとの関係を表した図である。図12の縦軸に表した改善ポイントΔKとは、環状溝28を設けたことによるクリック率の改善度合いをいい、導光シート25に環状溝28を設けていない場合のクリック率をK1[%]、ある環状溝28を導光シート25に設けた場合のクリック率をK2[%]としたとき、
ΔK=K2−K1[%]
で定義する。
【0059】
このシミュレーションに用いたサンプルは、シート厚100μmのポリカーボネイト製の導光シート25に、内径(直径)1.5μmで深さ40μmの断面矩形状をした環状溝28を設けたものである。接点バネ23は、直径4mmのものである。
【0060】
図12から分かるように、適切な範囲内では環状溝28の溝幅は広いほどクリック率の改善ポイントが高くなることが分かる。図12のシミュレーション範囲では、溝幅を1000μmとすることが好ましく、環状溝28の溝断面形状はかなり扁平なものとなる。また、環状溝28の場合には、導光シート25の裏面に設けるよりも表面に設ける方が、改善ポイントが高くなり、クリック率の改善に効果の高いことが分かる。
【0061】
(第1の実施形態の変形例)
図13(a)は、実施形態1の変形例によるキー照明スイッチ(一単位部分)を示す概略断面図、図13(b)は、その導光シート25を示す平面図である。この変形例では、複数の環状溝28を同心円状に設けている。環状溝28を複数本設けているので、導光シート25の弾性反発応力をより小さくすることができ、クリック率をさらに改善することができる。
【0062】
図14(a)は、実施形態1の別な変形例によるキー照明スイッチ(一単位部分)を示す概略断面図、図14(b)は、その導光シート25を示す平面図である。この変形例では、さらに環状溝28の中心に円形の凹部42を設けている。図11に示したように、接点バネ23の中心に対向する個所でも導光シート25の弾性反発応力が極大となっているので、この変形例のように接点バネ23の中心に対向する領域に凹部42を設ければ、中心部での弾性反発応力も低減させることができ、クリック率をさらに改善することができる。
【0063】
図15(a)は、実施形態1のさらに別な変形例によるキー照明スイッチを示す概略断面図、図15(b)は、その導光シート25を示す裏面図である。この変形例では、導光シート25の裏面のうち、接点バネ23に対向する領域のほぼ全体に円形皿状の凹部43を設けたものである。このような変形例によれば、接点バネ23に対応する領域全体で導光シート25を薄肉状として弾性反発応力を小さくすることができるので、クリック率を向上させることができる。なお、導光シート25の裏面に設ける凹部43は、浅い円筒状をしたものであってもよく、また図16(a)(b)に示すように、コーナー部を曲面で形成した矩形皿状のものでもよい。
【0064】
また、実施形態1の環状溝28の溝断面形状は、矩形状に限らず、半円形状、円弧状、U形状、V形状(三角形状)、台形状など任意の形状とすることができる。
【0065】
(第2の実施形態)
図17(a)は本発明の実施形態2によるキー照明スイッチ51(一単位部分)を示す概略断面図、図17(b)は当該キー照明スイッチ51に用いられている導光シート25の裏面図である。このキー照明スイッチ51では、導光シート25の裏面のうち、接点バネ23と対向する領域に直線状をした一定幅の凹溝52(凹部)を形成したものである。実施形態2のキー照明スイッチ51は、凹部の構造以外については、実施形態1のキー照明スイッチ41と同様な構造を有しているので、凹溝52以外の構造については説明を省略する。
【0066】
図17では、溝断面が矩形状をした4本の凹溝52を示しているが、凹溝52は1本〜3本であってもよく、5本以上であってもよい。また、凹溝52の溝断面形状は、矩形状に限らず、半円形状、円弧状、U形状、V形状(三角形状)、台形状など任意の形状とすることができる。なお、断面矩形状の凹溝52の場合には、内隅部にアール面や傾斜面(C面)を設けておいてもよい。
【0067】
凹溝52は、接点バネ23の中心と対応する点を通過する仮想の直線に関して線対称な配置、あるいは接点バネ23の中心と対応する点に関して点対称な配置となっている。また、プリント配線基板22に垂直な方向から見て、凹溝52が導光シート25の弾性復元応力が極大値となる領域に重なる面積ができるだけ大きくなるように、凹溝52を配置することが望ましい。
【0068】
このような凹溝52の場合でも、凹溝52によって導光シート25の弾性反発応力を低減してクリック感を改善するなど、実施形態1の場合と同様な作用効果を奏することができる。しかも、凹溝52は直線状となっているので、実施形態1の円環状の環状溝28に比べて光源30側から見たときの面積を小さくすることができ、光源30からの光Lが凹溝52によって遮られにくくなる。よって、凹溝52の背後が暗くなりにくく、導光シート25の光学性能をより良好にすることができる。
【0069】
さらに、実施形態2のキー照明スイッチ51では、図18に示すように、各凹溝52の長手方向を、光源30の正面方向Nに平行な方向から、当該凹溝52の位置と光源30とを結ぶ方向へ向けて傾けるようにして凹溝52を配置している。図18では、凹溝52が正面方向Nから傾いている角度をαで示す。このように凹溝52を傾けて配置していると、図18において破線で表した凹溝52(長手方向が正面方向Nと平行になっている。)に比較して、光源30からの光Lが凹溝52によって遮られにくくなり、より一層凹溝52の背後が暗くなりにくく、導光シート25の光学性能がより向上する。
【0070】
特に好ましくは、図19に示すように、各凹溝52の長手方向が当該凹溝52の位置と光源30とを結ぶ方向とほぼ平行となるようにすれば、接点バネ23に対応する領域で導光シート25の弾性反発応力を小さくすると同時に、光源30からの光Lが凹溝52によって非常に遮られにくくなり、キー照明スイッチ51の光学性能が良好となる。また、光Lが凹溝52の側面で全反射されにくくなるので、側面で全反射された光が漏れて輝線が発生しにくくなる。
【0071】
また、凹溝52の側面で光が漏れるのを防止する方法としては、凹溝52の溝断面形状を三角形状や台形状などとして側面を傾斜させるのも有効である。
【0072】
なお、1つの接点バネ23に対向する領域に設けられている凹溝52どうしは、図18に示すように平行となっていてもよく、図19に示すように非平行となっていてもよい。また、各凹溝52は、図18に示すように同じ長さとなっていてもよく、図19に示すように互いに長さが異なっていてもよい。
【0073】
〔凹溝の好ましい形態〕
つぎに、この凹溝52の好ましい形態について述べる。導光シート25の弾性反発応力は、導光シート25のシート厚の3乗に反比例するので、凹溝52の長さ、幅、断面形状、本数などをパラメータとして、接点バネ23と対向する領域における導光シート25の実効的なシート厚を減らすことにより導光シート25の弾性反発応力を緩和することが可能になる。
【0074】
まず、図20は、導光シート25の表面もしくは裏面に設けた凹溝52の溝幅とクリック率の改善ポイントΔKとの関係を実測した結果を表す。実測に用いたサンプルは、シート厚125μmのポリカーボネイト製の導光シート25に、長さ3mmで深さ40μmの溝断面形状が矩形状をした1本の凹溝52を設けたものである。接点バネ23は、直径4mmのものである。
【0075】
図20から分かるように、適切な範囲内では環状溝28の溝幅は広いほどクリック率の改善ポイントΔKが高くなることが分かる。図20の実測範囲では、溝幅を800μmとすることが好ましく、凹溝52の溝断面形状はかなり扁平な浅いものとなる。また、凹溝52の場合には、導光シート25の表面に設けるよりも裏面に設ける方が改善ポイントΔKが高くなり、クリック率の改善に効果の高いことが分かる。
【0076】
つぎに、図21は、断面V形状の凹溝52を設けた導光シート25と、断面半円形状の凹溝52を設けた導光シート25における、凹溝52の長さと弾性反発力との関係を実測した結果を表す。実測に用いたサンプルは、シート厚125μmのポリカーボネイト製の導光シート25に、幅200μmで深さ40μmの1本の凹溝52を設けたものである。接点バネ23は、直径4mmのものである。
【0077】
図21から分かるように、凹溝52の断面形状に関係なく、凹溝52の長さが2mm(すなわち、接点バネ23の直径の1/2)のところで弾性反発力が急激に変化し、凹溝52の長さが2mm以上(すなわち、接点バネ23の直径の1/2以上)で弾性反発力を小さくできることが分かる。図21には示していないが、溝断面が矩形状の凹溝52でも同様な結果が得られた。よって、凹溝52の溝断面形状に関係なく、凹溝52の長さを接点バネ23の直径の1/2以上にすることで弾性反発力を小さくし、クリック率を良好にできることが分かる。
【0078】
図22は、導光シート25の表面もしくは裏面に設けた凹溝52の本数とクリック率の改善ポイントΔKとの関係を実測した結果を表す。実測に用いたサンプルは、シート厚125μmのポリカーボネイト製の導光シート25に、長さ3mmで幅500μm、深さ40μmの溝断面形状が矩形状をした凹溝52を設けたものである。接点バネ23は、直径4mmのものである。また、凹溝52は、接点バネ23の中心に対応する点を通る直線に関して対称となるようにして、4mm(接点バネ23の幅)の範囲内に等間隔に配置している。
【0079】
図22によれば、導光シート25の表裏に関係なく、凹溝52の本数が増加するほど改善ポイントΔKが大きくなり、クリック率が向上することが分かる。
【0080】
図23は、断面半円形状の凹溝52の幅とクリック率の改善ポイントΔKとの関係を実測した結果を表す。実測に用いたサンプルは、シート厚125μmのポリカーボネイト製の導光シート25に、長さ3mmで深さ40μmの断面半円形状の凹溝52を1本設けたものである。接点バネ23は、直径4mmのものである。
【0081】
図23によれば、凹溝52の幅を200μmよりも大きくすれば、クリック率が大きくなることが分かる。また、図24は断面矩形状の凹溝52と断面半円形状の凹溝52の改善ポイントΔKとを比較したものであり、凹溝52の幅が同じであれば、断面半円形状の凹溝52よりも断面矩形状の凹溝52のほうが改善ポイントΔKが大きい。他の断面形状と比べても、断面半円形状の凹溝52がもっとも改善ポイントΔKが悪かった。したがって、凹溝52の断面形状によらず、凹溝52の幅を200μmよりも大きくすることによりクリック率改善の効果が得られる。なお、この結果は、凹溝52だけでなく環状溝28にも当て嵌まり、環状溝28の溝幅も200μm以上にすることで、クリック率の改善効果を高めることができる。また、凹溝52の断面形状は矩形状もしくは矩形状に近いものが最も好ましい。
【0082】
(第2の実施形態の変形例)
図25は実施形態2の変形例を示す裏面図である。この変形例では、凹溝52の長手方向が、その位置と光源30を結ぶ方向に対してほぼ直交するように配置されている。このような方向で凹溝52が配置されていてもクリック率の改善効果は実施形態2と同じである。また、光源30からの光Lを凹溝52で遮る確率が大きくなるが、直線状の凹溝52であるので、光Lは凹溝52を通過して背後にも到達可能である。
【0083】
図26(a)、(b)は、実施形態2の別な変形例によるキー照明スイッチ(一単位部分)を示す概略断面図と導光シートの裏面図である。この変形例では、直線状の凹溝を直交させて十字状にした凹溝53を設けたものである。
【0084】
(第3の実施形態)
図27(a)、(b)は本発明の実施形態3によるキー照明スイッチにおける凹溝52の形状を示す斜視図及び正面図である。図27(c)、(d)、(e)は、図27(a)のX−X線断面図、Y−Y線断面図およびZ−Z線断面図である。実施形態3のキー照明スイッチの構造及び作用効果は、凹溝52の形状を除けば実施形態2のキー照明スイッチ51と同様であるので、実施形態3のキー照明スイッチについては、凹溝52以外の説明は省略する。
【0085】
実施形態3における凹溝52は、全体としては船底形なっており、図27(d)に示すように断面逆台形状をした第1溝部54と、図27(a)、(b)に示すように傾斜面で構成された第2溝部55(光路変換用の溝部)とが連続的に形成されたものである。第1溝部54はクリック率を改善するための凹部であり、第2溝部55は光路変換用の溝部である。第2溝部55は、図27(c)に示すように第1溝部54から離れるに従って次第に浅くなるように傾斜した傾斜底面56と、図27(e)に示すように、傾斜底面56の両側にそれぞれ設けられ、傾斜底面56から離れるに従って次第に浅くなるように傾斜した傾斜側部57とから構成されている。
【0086】
この凹溝52は、第2溝部55側が光源30に近く、第1溝部54側が光源30から遠くなるように配置される。よって、第1溝部54の端面にほぼ垂直な方向から飛来した光Lは、第2溝部55に入射することになる。第2溝部55の傾斜底面56や傾斜側部57に入射した光Lは、図27(c)、(e)に示すように、傾斜底面56や傾斜側部57で全反射されて光Lの方向が曲げられるので、第1溝部54の端面から導光シート25の外部へ光が漏れにくくなる。よって、凹溝52から光が漏れて輝点や輝線を生じるのを防ぐことができる。また、光源30からの光の利用効率を高めて導光シート25の光出射面38における輝度を高めることができる。
【0087】
(第3の実施形態の変形例)
図28(a)、(b)は、実施形態3の変形例における凹溝52の形状を示す。この変形例では、第1溝部54と第2溝部55が別々に形成されており、第1溝部54よりも光源30に近い側に傾斜側部57を有する第2溝部55を配置している。従って、第1溝部54の端面にほぼ垂直な方向から飛来した光Lを傾斜側部57で反射させることによって光Lの方向を曲げることができ、第1溝部54の端面から光が外部に漏れるのを防ぐことができる。また、図27に示したような凹溝52では、第1溝部54と第2溝部55が連続的に形成されているので、導光シート25に凹溝52を作製するのが難しい。これに対し、図28の凹溝52では、第1溝部54と第2溝部55とを分離させて別々な凹部としている。よって、第1溝部54と第2溝部55とを別々のパターンとして成形することができ、凹溝52の作製が容易になる。なお、図28では傾斜底面56は設けられていないが、図28の変形例でも傾斜底面56を設けてもよく、また図27の実施形態3でも傾斜底面56を省略しても差し支えない。
【0088】
図29(a)、(b)は、実施形態4の別な変形例における凹溝の形状を示す。この変形例でも、第1溝部54と第2溝部55とを分離させて別々な凹部とし、凹溝52の作製を容易にしている。第1溝部54は断面矩形状の溝となっており、第2溝部55は平面視でV形をした溝となっている。そして、光源30からの光Lを第2溝部55の両側面で全反射させることによって、光Lが凹溝52から導光シート25の外部へ漏れるのを防止している。
【0089】
(第4のの実施形態)
図30(a)、(b)、(c)は本発明の実施形態4によるキー照明スイッチに用いられる導光シート25を示した平面図、裏面図及び断面図である。この実施形態では、導光シート25の表裏に凹部を形成している。すなわち、図30(a)に示すように、導光シート25の表面には円環状の環状溝28を設け、図30(b)に示すように、環状溝28に対向させて導光シート25の裏面に複数本の凹溝52を設けている。
【0090】
図31(a)、(b)は本発明の実施形態4の変形例における導光シート25を示した平面図及び裏面図である。この実施形態では、図31(a)に示すように、導光シート25の表面には円環状の環状溝28を設け、図31(b)に示すように、環状溝28に対向させて導光シート25の裏面に十字状の凹溝53を設けている。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】図1は、従来より公知のキー照明スイッチの構造を示す概略断面図である。
【図2】図2は、クリック率Kの定義を説明するための図である。
【図3】図3(a)は、導光シートに円形の貫通孔をあけたキー照明スイッチの概略断面図、図3(b)は、円形の貫通孔をあけた導光シートの一部を示す平面図である。
【図4】図4(a)、(b)は、円形の貫通孔で光の進行方向が曲げられたり、光が漏れたりする様子を説明する概略図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態1にかかるキー照明スイッチモジュールの分解斜視図である。
【図6】図6(a)は、実施形態1のキー照明スイッチ(一単位部分)を示す概略断面図であり、図6(b)は、キー照明スイッチに用いられている導光シートの一部分を示す平面図である。
【図7】図7は、実施形態1のキー照明スイッチの作用説明図である。
【図8】図8は、キーを押し込んだときに接点バネや導光シートが変形する様子を示す概略断面図である。
【図9】図9(a)、(b)は、環状溝に達した光が環状溝の下の薄肉部を通過する様子を説明するための平面図及び概略断面図である。
【図10】図10は、キーを押し込んだときの導光シートの各点の変位量をシミュレーションした結果を表した図である。
【図11】図11は、キーを押し込んだときに、導光シートの裏面に発生する弾性反発応力の大きさをシミュレーションした結果を表した図である。
【図12】図12は、導光シートの表面もしくは裏面に設けた環状溝の溝幅とクリック率の改善ポイントとの関係を表した図である。
【図13】図13(a)は、実施形態1の変形例によるキー照明スイッチ(一単位部分)を示す概略断面図、図13(b)は、その導光シートの一部分を示す平面図である。
【図14】図14(a)は、実施形態1の別な変形例によるキー照明スイッチ(一単位部分)を示す概略断面図、図14(b)は、その導光シートの一部分を示す平面図である。
【図15】図15(a)は、実施形態1のさらに別な変形例によるキー照明スイッチ(一単位部分)を示す概略断面図、図15(b)は、その導光シートの一部分を示す裏面図である。
【図16】図16(a)は、実施形態1のさらに別な変形例によるキー照明スイッチ(一単位部分)を示す概略断面図、図16(b)は、その導光シートの一部分を示す裏面図である。
【図17】図17(a)は、本発明の実施形態2によるキー照明スイッチ(一単位部分)を示す概略断面図、図17(b)は、当該キー照明スイッチに用いられている導光シートの一部分を示す裏面図である。
【図18】図18は、実施形態2における凹溝の配置の仕方を説明するための図である。
【図19】図19は、実施形態2における凹溝の特に好ましい配置を示す図である。
【図20】図20は、導光シートの表面もしくは裏面に設けた凹溝の溝幅とクリック率の改善ポイントとの関係を実測した結果を表した図である。
【図21】図21は、断面V形状の凹溝を設けた導光シートと、断面半円形状の凹溝を設けた導光シートにおける、凹溝の長さと弾性反発力との関係を実測した結果を表した図である。
【図22】図22は、導光シートの表面もしくは裏面に設けた凹溝の本数とクリック率の改善ポイントとの関係を実測した結果を表した図である。
【図23】図23は、断面半円形状の凹溝の幅とクリック率の改善ポイントとの関係を実測した結果を表した図である。
【図24】図24は、同じ溝幅を有する断面矩形状の凹溝と断面半円形の凹溝の改善ポイントを比較した図である。
【図25】図25は、実施形態2の変形例における凹溝の配置の仕方を説明するための図である。
【図26】図26(a)は、実施形態2の別な変形例におけるキー照明スイッチ(一単位部分)を示す概略断面図、図26(b)は、当該キー照明スイッチに用いられている導光シートの一部分を示す裏面図である。
【図27】図27(a)、(b)は、本発明の実施形態3によるキー照明スイッチにおける凹溝の形状を示す斜視図及び正面図である。図27(c)、(d)、(e)は、図27(a)のX−X線断面図、Y−Y線断面図およびZ−Z線断面図である。
【図28】図28(a)、(b)は、実施形態3の変形例における凹溝の形状を示す断面図および平面図である。
【図29】図29(a)、(b)は、実施形態4の別な変形例における凹溝の形状を示す平面図および斜視図である。
【図30】図30(a)、(b)、(c)は、本発明の実施形態4によるキー照明スイッチに用いられる導光シートを示す表面図、裏面図及び断面図である。
【図31】図31(a)、(b)は、本発明の実施形態4の変形例における導光シートを示す表面図及び裏面図である。
【符号の説明】
【0092】
21 キー照明スイッチモジュール
22 プリント配線基板
23 接点バネ
24 カバーシート
25 導光シート
26a 固定接点
26b 環状接点部
27 粘着層
28 環状溝
29 光入射部
30 光源
34 キートップ
35 キーシート
36 キー
37 押し子
41 キー照明スイッチ
42 凹部
43 凹部
51 キー照明スイッチ
52 凹溝
53 凹溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面に粘着層を有するカバーシートと、粘着層により前記カバーシートの裏面に接着されたドーム状の接点バネと、接点バネと導通状態又は絶縁状態に切り替えられる固定接点を有する基板と、前記カバーシートの表面側に配置された導光シートとを備え、
前記導光シートの表面と裏面とのうち少なくとも一方の面の前記接点バネに対向する領域には、反対側の面に向けて貫通しない凹部が1つ又は2つ以上形成されていることを特徴とするキー照明スイッチモジュール。
【請求項2】
前記凹部は、前記導光シートの前記接点バネの中心に対応する点に関して点対称となるように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のキー照明スイッチモジュール。
【請求項3】
前記凹部は、前記導光シートの前記接点バネの中心に対応する点を通過する仮想の直線に関して線対称となるように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のキー照明スイッチモジュール。
【請求項4】
前記凹部は、一定の幅を有する円環状をした環状溝を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載のキー照明スイッチモジュール。
【請求項5】
前記環状溝の内径は、前記接点バネの直径の0.5倍以上0.6倍以下であることを特徴とする、請求項4に記載のキー照明スイッチモジュール。
【請求項6】
前記環状溝は、前記導光シートのスイッチが配置される側の面に形成されていることを特徴とする、請求項4に記載のキー照明スイッチモジュール。
【請求項7】
前記凹部は、一定の幅を有する直線状の凹溝を含んでいることを特徴とする、請求項1に記載のキー照明スイッチモジュール。
【請求項8】
前記凹溝は、前記導光シートの前記接点バネが存在している側の面に形成されていることを特徴とする、請求項7に記載のキー照明スイッチモジュール。
【請求項9】
前記凹溝は、前記接点バネの直径の0.5倍以上の長さを有していることを特徴とする、請求項7に記載のキー照明スイッチモジュール。
【請求項10】
前記凹部の溝幅が200μm以上であることを特徴とする、請求項4または7に記載のキー照明スイッチモジュール。
【請求項11】
前記凹部の溝断面形状が台形状または三角形状となっていることを特徴とする、請求項4または7に記載のキー照明スイッチモジュール。
【請求項12】
前記凹部の溝断面形状においては、溝の幅が溝の深さよりも大きいことを特徴とする、請求項4または7に記載のキー照明スイッチモジュール。
【請求項13】
前記凹溝は、その長手方向が、当該凹溝の位置と光源の位置とを結ぶ線分に対して平行となるように配置されていることを特徴とする、請求項7に記載のキー照明スイッチモジュール。
【請求項14】
前記凹溝に隣接する該凹溝よりも光源に近い位置に、該凹溝の先端に向けて進んでくる光の方向を変化させるための光路変換用の溝部を設けたことを特徴とする、請求項7に記載のキー照明スイッチモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2010−49910(P2010−49910A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212546(P2008−212546)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】