説明

クッション性シート及びその製法

【課題】本発明は、クッション性シートのX−Y方向の熱変形を抑え、また使用後の被プレス物によるZ方向の変形を減少させることにより、繰り返し使用に耐え得るクッション性シートを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るクッション性シートは、空孔率40%以上90%以下の連続した空孔部を有する多孔質シートの空孔部にフッ素ゴムエラストマーを含浸複合した後の全体の空孔率が0%以上60%以下であることにより、Z方向の変形を減少させて繰り返して使用することができるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッション性シート及びその製法に関し、特に、ホットプレス成形に使用したり、又は、パッキンやガスケット材の弾性体として使用できるクッション性シート及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
クッション性シートは、ホットプレス成形の補助材料として使用されており、その性能としてホットプレス成形に繰り返して使用することができ、クッション性、面内均一性及び熱伝達性のいずれにおいても優れた特性を有することが必要とされている。クッション性シートについては、従来より、下記特許文献1に示されるように、繊維材料からなる紙と、紙に含浸されたゴムとの複合体であって、繊維材料とゴムとの体積比率が1/1.5〜1/7.5であり、複合体の空隙率が60〜90%としたホットプレス成形用のクッション性シートが知られている。また、ホットプレス成形用のクッション性シートの素材としてポリテトラフルオロエチレン(以下、単に「PTFE」という。)よりなる多孔質ペーパーが用いられることも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−23749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが従来のホットプレス成形用のクッション性シートは、そのプレス時に被プレス物の表面の凹凸形状により、シートの厚み方向すなわちZ方向に変形、すなわち凹凸状の押し型が形成され、プレス解放後においても、その変形がシート面に暫時残存する欠点がある。多孔質ペーパーがクッション性シートとして用いられる場合は、プレス時におけるX−Y方向の膨張が空孔部により吸収されて抑制されても、被プレス物が立体構造であるためにZ方向の変形が生じ易く、かつ、プレスの解放後に被プレス物に対してZ方向の立体的変形が残る。また、PTFEよりなるペーパーはホットプレスによりクリープが生じるため、繰り返し使用することができないという欠点がある。
【0005】
このようにPTFEよりなる多孔質ペーパーをホットプレス成形用のクッション性シートとして使用するためには、変形の残存とクリープを起こさせないことが重要課題であった。また、ホットプレス成形用のクッション性シートとして現在使用されている植物繊維質からなる紙は、プレス時に180℃近辺で使用されるためセルロースが劣化するので使い捨てとならざるを得ず、リサイクルできない欠点がある。
【0006】
本発明は、プレス時にX−Y方向の熱変形を抑え、また使用後の被プレス物によるZ方向の変形を減少させることにより、繰り返しの使用に耐え得るクッション性シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るクッション性シートは、空孔率40%以上90%以下の連続した空孔部を有する多孔質シートの空孔部にフッ素ゴムエラストマーを含浸複合した後の全体の空孔率が0%以上60%以下であることを特徴とするものである。
【0008】
また、前記多孔質シートが延伸によって加工されるPTFEよりなるシート(以下、単に「PTFEシート」という。)であってもよい。すなわち、PTFEを延伸あるいは膨張によって作成された空孔率40%以上90%以下の多孔質シートに、フッ素ゴムエラストマーを含浸複合した後の全体の空隙率が0%以上60%以下としてもよい。
【0009】
このPTFEシートとしては、PTFEのペースト押出成形シートを一軸あるいは二軸に延伸して作成されたシートが「e-PTFE」として知られている。この方法で製造されたPTFEシートとしては、ジャパンゴアテックス株式会社製の商品名「ゴアテックスハイパーシート」、住友電工ファインポリマー株式会社製の商品名「ポアフロンフロロポアメンブレン」がある。また、このPTFEシートとして、半焼成PTFEフィルムを延伸して作成したPTFEシートあるいは焼結したPTFEのチューブを径方向と長手方向に膨張させて切開することにより作成したPTFEシートを使用することができる。
【0010】
さらに、多孔質シートが短繊維からなる多孔質ペーパーよりなるものであってもよい。すなわち、短繊維からなる空孔率が40%以上90%以下の多孔質シートに、フッ素ゴムエラストマーを含浸複合した後の全体の空隙率が0%以上60%以下としてもよい。
【0011】
上記の短繊維の素材としては、PTFE、メタアラミド、パラアラミドが好適であり、特にPTFEが好適である。短繊維からなる多孔質ペーパーは、繊維間の交絡的な接触による構造物であるため加熱による膨張は短繊維の膨張のみであるために、多孔質ペーパー全体におけるX−Y方向の膨張が極めて少なく、クリープが発生しにくい。また、被プレス物の立体構造に対するZ方向の加圧による変形を防ぐために、低弾性の多孔質ペーパーの空孔部にフッ素ゴムエラストマーを含浸させる際に、多孔質ペーパーの一部に空孔部を残す。これにより、ホットプレス時のZ方向の変形及び膨張がこの空孔部で吸収されるので最小限に抑制され、かつ、Z方向の加圧により発生する凹凸状の変形がフッ素ゴムエラストマーのゴム弾性による復元回復力により瞬時に回復してシートの表面が平滑となるので、繰り返しの使用が可能となる。
【0012】
PTFE短繊維からなる多孔質ペーパー(以下、単に「PTFEペーパー」という。)の場合には、クッション性シートに求められるX−Yへの変形が抑制されやすい点と耐熱性及び離型性に優れる点で優位にある。
【0013】
さらに、PTFEペーパーの空孔率が40%以上80%以下のものを用いるのが好適である。PTFEペーパーとしてはダイキン工業株式会社製の商品名「ポリフロンペーパー」及び商品名「ポリフロンウエブ」が好ましく用いられる。ダイキン工業株式会社製の商品名「ポリフロンウエブ」は製造工程で繊維に延伸が施されているためにホットプレス時に加わる温度(通常200℃)により収縮が経時的に起こるのでPTFEの融点近くで熱処理を充分に施す必要がある。ダイキン工業株式会社製の商品名「ポリフロンペーパー」は200℃での収縮が非常に小さいのでより好適に選ばれる。多孔質PTFEペーパーの厚みは特に限定されないが通常0.1mm〜2mmである。多孔質PTFEペーパーはフッ素ゴム成分が含浸される前に200℃以上PTFEの転移点およそ340℃以下でホットプレスして表面を平滑化し、所望の空孔率に調整しておくことがさらに好ましい。
【0014】
さらにまた、フッ素ゴムエラストマーが、パーフルオロゴム、二元系フッ素ゴム、三元系フッ素ゴム、フロロシリコーンゴム又はフッ素化ポリエーテル骨格と末端シリコーン架橋反応基を有するゴムから選ばれるゴムを用いてもよい。この場合において、パーフルオロゴムとしてはダイキン工業株式会社製の商品名「ダイエルパーフロ」及び米国のイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー製の商品名「カルレッツ」がある。二元系フッ素ゴムとしてはビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレンのコーポリマーがある。三元系フッ素ゴムとしてはビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンのターポリマーの組成物であるダイキン工業株式会社製の商品名「ダイエル」及び米国のイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー製の商品名「バイトン」がある。フッ素化ポリエーテル骨格と末端シリコーン架橋反応基を有するゴムとしては接着・コーティング用途に利用できる信越化学工業株式会社製商品名「SIFEL:X−71−6030」及び液状射出成形(LIM)用の信越化学工業株式会社製商品名「SIFEL:3590−N」がある。これらのフッ素ゴムが選ばれる理由はホットプレス時のホットプレス温度、すなわちエポキシの硬化温度200℃に充分耐えられることによる。
【0015】
また、フッ素ゴムエラストマーとしては、フッ素化ポリエーテル骨格と末端シリコーン架橋反応基を有するゴムであって、ゴム硬度(Shore A)55以下のものが最も好ましい。好ましい理由は、キュア前が液状であることにより容易に多孔質層に含浸すること、フッ素系溶剤によって容易に希釈して使用できること、及び、キュア後の硬度が非常に柔らかい弾性に富むことである。ホットプレス用クッション性シートの好ましい硬度は、ゴム硬度(Shore A)55以下、さらに好ましくはゴム硬度(Shore A)40以下であり、前記ゴムはこのゴム硬度を達成することが可能なフッ素ゴムエラストマーである。さらに、耐熱性と耐薬品性、ガスバリア性に優れることにある。なお、ゴム硬度(Shore A)はJIS K 6301に準じて測定される値である。
【0016】
上記構成のクッション性シートを使用して次のような複合クッション性シートを形成してもよい。すなわち、クッション性シートの片面又は両面にフッ素樹脂フィルムがラミネートされている構成としてもよい。この場合には、ホットプレス時に滲み出すエポキシなどの接着剤の付着を防ぎ、被プレス物との離型性を向上させる。フッ素樹脂フィルムとしてはPFA、FEP,ETFEが好適である。フッ素樹脂フィルムの厚みとしては10μm〜50μmが好適であり、厚すぎると複合クッション性シート全体のクッション性が損なわれ、薄すぎると複合クッション性シートが破損し易くなる。また、複合クッション性シートとして、フッ素樹脂フィルムの表裏に上記構成のクッション性シートを積層してなる構成としてもよい。この場合には、クッション性シートの強度が増すので、作業時のハンドリング性を向上させることができる。
【0017】
本発明に係るクッション性シートの製法は、フッ素化エラストマー組成物を溶剤で必要濃度に希釈し、希釈化されたフッ素化エラストマー組成物を、連続した空孔部を有する多孔質シート、望ましくは延伸によって加工されたPTFEシート又は短繊維からなる多孔質ペーパー、望ましくはPTFEペーパーに含浸させ、溶剤の気化除去の操作を一回以上繰り返した後にフッ素化エラストマー組成物を架橋させることにより、フッ素ゴムエラストマーを含浸複合させて形成することを特徴とする。
【0018】
エラストマー組成物は粘度が高いために、幾らかの希釈なしに多孔質ペーパーの空孔部分にエラストマー組成物を直接含浸させるには困難がある。したがって、溶剤で希釈率をコントロールすることによって、多孔質ペーパーの空孔部分にエラストマー組成物を含浸させ、かつ、最終空孔部を形成することができる。希釈濃度は限定されず、薄い濃度のときは繰り返して含浸と乾燥とを行う。濃い濃度のときは十分な含浸時間を掛けるか、又は、減圧あるいは加圧などの手段により多孔質ペーパーの空孔部分にエラストマー組成物を圧入させるなどの方法で行なう。溶剤としては架橋前エラストマーを溶解し、かつ、連続した空孔部を有する多孔質シート又は短繊維からなる多孔質ペーパーに濡れ易く、表面張力の小さい20mN/m以下のフッ素系溶剤が用いられる。例えば、パーフルオロアルカン、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン、メタキシレンフルオライド及びこれらの混合溶剤が好適である。フッ素ゴムエラストマーを含浸複合させることにより含浸後の空孔率を0%にする場合は溶剤で希釈する手段を採用しなくてもよい。なお、溶剤の希釈率を変えながら含浸乾燥を繰り返すことにより、厚み方向に空孔率の分布を変化させることができる。また、本発明のクッション性シートに導電性を付与するには、導電性のあるカーボン粒子をエラストマー成分が液状状態にあるときに必要量を分散させ、多孔質シートに含浸複合すればよい。
【発明の効果】
【0019】
上記の構成よりなる本発明に係るクッション性シートは、例えばホットプレス成形用のクッション性シートとして使用した場合に、X−Y方向の熱変形を抑え、また使用後の被プレス物によるZ方向の変形を減少させることできたものであり、繰り返し使用に耐え得る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1におけるペーパー(B−1)に対してエキスパンドメタルをホットプレスした状態を示す拡大写真である。
【図2】実施例1におけるシート(D−1)に対してエキスパンドメタルをホットプレスした状態を示す拡大写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に本発明の実施例について詳述する。
【実施例1】
【0022】
実施例1に係るクッション性シートを次の要領にて作成した。すなわち、PTFEペーパー(ダイキン工業株式会社製の商品名「ポリフロンペーパーPF10L」)(A)を用い、その表面を平滑化するために、厚さ10mmの2枚のステンレス磨き板間に挟み、320℃で1時間のホットプレスを行い、プレス済ペーパー(B−1)を作成した。次にフッ素化ポリエーテル骨格と末端のシリコーン架橋反応前の液状成分であるコーティング用ゴム成分(信越化学工業株式会社製の商品名「SIFEL:X−71−6030」)をパーフルオロアルカン溶剤(幸成商事株式会社製の商品名「コーセゾール」)と当重量で希釈した溶液にプレス済ペーパー(B−1)を含浸し、表面液をティッシュペーパーで拭取り、その後、乾燥してパーフルオロアルカン溶剤を除去した。乾燥後、上記フッ素化ポリエーテル骨格と末端のシリコーン架橋反応前の液状成分であるコーティング用ゴム成分の架橋のために150℃の電気炉により30分間加熱してクッション性シート(C−1)を作成した。また、乾燥後に再度同上のフッ素化ポリエーテル骨格と末端のシリコーン架橋反応前の液状成分であるコーティング用ゴム成分希釈液に二度漬けして同様に乾燥処理と加熱処理とを行い、クッション性シート(D−1)を作成した。下記表1はPTFEペーパー(A)及びプレス済ペーパー(B−1)の、各試料の平滑処理前後の物性を示す。下記表2は、フッ素化ポリエーテル骨格と末端のシリコーン架橋反応前の液状成分であるコーティング用ゴム成分含浸/加熱処理後のクッション性シート(C―1)及び(D―1)の各試料の空孔率であり、フッ素化ポリエーテル骨格と末端のシリコーン架橋反応前の液状成分であるコーティング用ゴム成分の比重1.85として算出したもので
ある。なお、表2中の「SIFEL」は、フッ素化ポリエーテル骨格と末端のシリコーン架橋反応前の液状成分であるコーティング用ゴム成分(信越化学工業株式会社製の商品名「SIFEL:X−71−6030」)を表す。
【表1】

【表2】

【0023】
次に、ホットプレスクッション試験を次の要領で行った。すなわち、上記実施例1において作成したPTFEペーパー(B―1)とクッション性シート(D―1)の各試料に対し、各試料の上に凹凸のあるアルミ製エキスパンドメタル(関西鉄工株式会社製の商品名「メッシュKM−3006」)を1cm×2cmの大きさに裁断したものを載置し、その上から荷重3.2Kg、5.6Kgをそれぞれ加えて180℃の電気炉中に2時間放置し、加熱荷重によるクリープ・変形の発生度合いを観察した。上記の加熱荷重により、下記表3の結果となり、PTFEペーパー(B―1)においては、図1に示すように、クリープ・変形によるメッシュ跡が明確に残ったが、フッ素化ポリエーテル骨格と末端のシリコーン架橋反応前の液状成分であるコーティング用ゴム成分含浸後のクッション性シート(D―1)においては、図2に示すように、クリープ・変形によるメッシュ跡は残らなかった。
【表3】

【実施例2】
【0024】
実施例2として、強度を上げたクッション性シートを次の要領で作成した。すなわち、2枚のPTFEペーパー(ダイキン工業株式会社製の商品名「ポリフロンペーパーPF10L」)(A)の間にFEPフィルム25μを挟み、この積層体を厚さ10mmの2枚のステンレス磨き板間に挟み、320℃で1時間のホットプレスで複層シートを得た。この複層シート中のPTFEペーパーを、実施例1と同様に、フッ素化ポリエーテル骨格と末端のシリコーン架橋反応前の液状成分であるコーティング用ゴム成分(信越化学工業株式会社製の商品名「SIFEL:X−71−6030」)をパーフルオロアルカン溶剤(幸成商事株式会社製の商品名「コーセゾール」)と当重量で希釈した溶液に二度漬けして乾燥処理と加熱処理とを行い、フッ素化ポリエーテル骨格と末端のシリコーン架橋反応前の液状成分であるコーティング用ゴム成分含浸複合クッション性シート(E―2)を作成した。全体の空孔率は実施例1のクッション性シート(D―1)と同様であったが、表4の複合クッション性シート(E―2)の物性に示されるように、強度の向上が認められた。試験方法は、複合クッション性シート(E―2)の試験片サイズ幅5mm、評点間距離20mmの打ち抜き片に対して、引張速度100mm/分で行った。
【表4】

【実施例3】
【0025】
実施例3として、多孔質シートに含浸させるフッ素化ポリエーテル骨格と末端のシリコーン架橋反応前の液状成分であるコーティング用ゴム成分をLIM成型用に変更したクッション性シートを次の要領で作成した。PTFEペーパー(ダイキン工業株式会社製の商品名「ポリフロンペーパーPF10L」)(A)を用い、その表面を平滑化するために、厚さ10mmの2枚のステンレス磨き板間に挟み、320℃で1時間のホットプレスを行い、厚み0.7mmのPTFEペーパー(B−3)を作成した。次にフッ素化ポリエーテル骨格と末端のシリコーン架橋反応前の液状成分(信越化学工業株式会社製の商品名「SIFEL:3590−N」)20重量部とパーフルオロアルカン溶剤(幸成商事株式会社製の商品名「コーセゾール」)80重量部とを混合した溶液を調整し、PTFEペーパー(B−3)に対して、全体が均一に含浸するように塗布した。その後、実施例1と同様に乾燥してパーフルオロアルカン溶剤を除去し、150℃で熱処理を行うことにより、厚み0.70mm、密度1.1g/cm、空孔率50%のクッション性シート(C−3)を得た。
【実施例4】
【0026】
実施例3におけるフッ素化ポリエーテル骨格と末端のシリコーン架橋反応前の液状成分(信越化学工業株式会社製の商品名「SIFEL:3590−N」)とパーフルオロアルカン溶剤(幸成商事株式会社製の商品名「コーセゾール」)との配合比率20重量部:80重量部を、70重量部:30重量部に変更した以外は、実施例3と同様の方法にて、厚み0.72mm、密度1.6g/cm、空孔率20%のクッション性シート(C−4)を得た。
【実施例5】
【0027】
実施例3におけるフッ素化ポリエーテル骨格と末端のシリコーン架橋反応前の液状成分(信越化学工業株式会社製の商品名「SIFEL:3590−N」)とパーフルオロアルカン溶剤(幸成商事株式会社製の商品名「コーセゾール」)との配合比率20重量部:80重量部を、90重量部:10重量部に変更した以外は、実施例3と同様の方法にて、厚み0.73mm、密度1.9g/cm、空孔率5%のクッション性シート(C−5)を得た。
【実施例6】
【0028】
実施例3において使用したPTFEペーパー(B−3)の代わりに、延伸PTFE積層シート(ジャパンゴアテックス株式会社製の商品名「ゴアテックスハイパーシート」)をプレスせずに、そのままの状態で使用した以外は実施例3と同様の方法にて、厚み0.9mm、密度1.9g/cm、空孔率35%のクッション性シート(C−6)を得た。
【実施例7】
【0029】
実施例3において使用したPTFEペーパー(B−3)の代わりに、延伸PTFEシート(住友電工ファインポリマー株式会社製の商品名「ポアフロンメンブレン:FP−100−100」)をホットプレスせずに、そのままの状態で使用し、フッ素化ポリエーテル骨格と末端のシリコーン架橋反応前の液状成分であるコーティング用ゴム成分(信越化学工業株式会社製の商品名「SIFEL:3590−N」)をパーフルオロアルカン溶剤(幸成商事株式会社製の商品名「コーセゾール」)で希釈せずに、そのまま使用した以外は実施例3と同様の方法にて、厚み1.0mm、密度1.9g/cm3、空孔率0%のクッション性シート(C−7)を得た。
【実施例8】
【0030】
実施例7において使用した延伸PTFEシート(住友電工ファインポリマー株式会社製の商品名「ポアフロンメンブレン:FP−100−100」)の代わりに、径方向に3.5倍、長手方向に1.5倍に膨張させたPTFEチューブをシート状にカットし、収縮しないようにアニーリングしたシートを使用した以外は実施例7と同様の方法にて、厚み0.14mm、密度1.9g/cm、空孔率0%のクッション性シート(C−8)を得た。
【0031】
上記実施例1により作成したクッション性シート(C−1)及び(D−1)、実施例2により作成した複合クッション性シート(E−2)、実施例3〜8により作成したクッション性シート(C−3)〜(C−8)は、いずれも本発明の効果を奏するものであった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係るクッション性シートは、ホットプレス成形に使用することができる。例えば、フレキシブルプリント基板、液晶ガラス基板、ICチップ埋設基板、LED埋設基板等の基板をエポキシ系の接着剤で積層し、その外縁を封止する工程において、前記基板の積層体をプレス成形や熱圧着する際に、該積層体を上下から挟み込むシートとして使用される。また、本発明に係るクッション性シートは、弾性体としてパッキン、ガスケット材としても活用できる。例えば、ガラス器具容器、薬品栓などの軟質ガスケット材としてブチルゴム、シリコーンゴムなどが使用されているが、これらの弾性体は耐薬品性、耐ガスバリア性、不純物の溶出など高純度を要求される分野で使用しがたいという課題がある。一方フッ素ゴムは架橋後の柔らかい弾性に劣る問題があり低過重でのガスケットシール性に難点がある。フッ素ゴムエラストマーがフッ素化ポリエーテル骨格と末端シリコーン架橋反応基を有するゴムの場合は、ショア硬度40以下の柔らかい弾性体が容易に得られる。また、耐薬品性、耐ガスバリア性、耐熱性、不純物の低溶出物(例えばシロキサン)の点で優れているので好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空孔率40%以上90%以下の連続した空孔部を有する多孔質シートの空孔部にフッ素ゴムエラストマーを含浸複合した後の全体の空孔率が0%以上60%以下であることを特徴とするクッション性シート。
【請求項2】
多孔質シートが延伸によって加工されるポリテトラフルオロエチレンシートであることを特徴とする請求項1に記載のクッション性シート。
【請求項3】
多孔質シートが短繊維からなる多孔質ペーパーよりなることを特徴とする請求項1に記載のクッション性シート。
【請求項4】
短繊維からなる多孔質ペーパーの空孔率が40%以上80%以下であることを特徴とする請求項3に記載のクッション性シート。
【請求項5】
短繊維がポリテトラフルオロエチレンであることを特徴とする請求項3又は4に記載のクッション性シート。
【請求項6】
フッ素ゴムエラストマーが、パーフルオロゴム、二元系フッ素ゴム、三元系フッ素ゴム、フロロシリコーンゴム又はフッ素化ポリエーテル骨格と末端シリコーン架橋反応基を有するゴムから選ばれるフッ素ゴムであることを特徴とする請求項1に記載のクッション性シート。
【請求項7】
フッ素化ポリエーテル骨格と末端シリコーン架橋反応基を有するゴムのゴム硬度(Shore A)55以下であることを特徴とする請求項6に記載のクッション性シート。
【請求項8】
請求項1〜7に記載のクッション性シートの片面又は両面にフッ素樹脂フィルムがラミネートされていることを特徴とする複合クッション性シート。
【請求項9】
請求項1〜7に記載のクッション性シートを、フッ素樹脂フィルムを介して複数枚積層してなることを特徴とする複合クッション性シート。
【請求項10】
フッ素化エラストマー組成物を溶剤で必要濃度に希釈し、希釈化されたフッ素化エラストマー組成物を、連続した空孔部を有する多孔質シート又は短繊維からなる多孔質ペーパーに含浸させ、溶剤の気化除去の操作を一回以上繰り返した後にフッ素化エラストマー組成物を架橋させることにより、フッ素ゴムエラストマーを含浸複合させて形成することを特徴とするクッション性シートの製法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−23504(P2010−23504A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144371(P2009−144371)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(506020492)有限会社ヤマカツラボ (9)
【Fターム(参考)】