説明

クマリン誘導体、この化合物を含有する液晶組成物およびこの液晶組成物を含有する液晶表示素子

【課題】化合物に必要な一般的物性、適切な光学異方性、適切な誘電率異方性、および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する液晶性化合物を提供すること。
【解決手段】
一般式(1)




で表される化合物。
(式中、Raは水素または炭素数1〜15のアルキル、炭素数1〜15のアルコキシ等であり;A1およびA2は互いに独立して1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、フッ素化1,4−フェニレン等であり;XaおよびXbは互いに独立して、フッ素または水素であり;Gは−(C=O)−または−CF2−であり;Z1およびZ2は互いに独立して単結合、−(CH22−等であり;mおよびnは互いに独立して0または1であるが、mおよびnが同時に0ではなく;Gが、−C(=O)−であるとき、Xbはフッ素である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶性化合物、液晶組成物および液晶表示素子に関する。さらに詳しくはクマリン誘導体、これを含有し、そしてネマチック相を有する液晶組成物およびこの組成物を含有する液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子において、液晶の動作モードに基づいた分類は、PC(phase change)、TN(twisted nematic)、STN(super twisted nematic)、BTN(Bistable twisted nematic)、ECB(electrically controlled birefringence)、OCB(optically compensated bend)、IPS(in-plane switching)、VA(vertical alignment)などである。素子の駆動方式に基づいた分類は、PM(passive matrix)とAM(active matrix)である。PM(passive matrix)はスタティック(static)とマルチプレックス(multiplex)などに分類され、AMはTFT(thin film transistor)、MIM(metal insulator metal)などに分類される。
【0003】
これらの素子は、適切な物性を有する組成物を含有する。素子の特性を向上させるには、この組成物が適切な物性を有するのが好ましい。組成物の成分である化合物に必要な一般的物性は、次のとおりである。(1)化学的な安定性と物理的な安定性。(2)高い透明点。透明点は、液晶相−等方相の転移温度である。(3)液晶相の低い下限温度。液晶相は、ネマチック相、スメクチック相などを意味する。(4)小さな粘度。(5)適切な光学異方性。(6)適切な誘電率異方性。大きな誘電率異方性を有する化合物は、大きな粘度を有することが多い。(7)大きな比抵抗。
【0004】
組成物は多くの化合物を混合して調製される。したがって、化合物は他の化合物とよく混和するのが好ましい。素子を氷点下の温度で使うこともあるので、低い温度で良好な相溶性を有する化合物が好ましい。高い透明点または液晶相の低い下限温度を有する化合物は、組成物におけるネマチック相の広い温度範囲に寄与する。好ましい組成物は、小さな粘度と素子のモードに適した光学異方性を有する。化合物の大きな誘電率異方性は、組成物の低いしきい値電圧に寄与する。このような組成物によって、使用できる温度範囲が広い、応答時間が短い、コントラスト比が大きい、駆動電圧が小さい、消費電力が小さい、電圧保持率が大きいなどの特性を有する素子を得ることができる。
【0005】
従来、クマリン誘導体を液晶表示素子として応用した例はほとんど知られていない。これらの化合物の液晶としての特性、物性等については全く明らかでない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況の下、化合物に必要な一般的物性、適切な光学異方性、適切な誘電率異方性、および他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する液晶性化合物が求められている。この化合物を含有し、ネマチック相の広い温度範囲、適切な光学異方性、および低いしきい値電圧を有する液晶組成物が求められている。これらの液晶組成物を含有し、短い応答時間、小さな消費電力、大きなコントラスト、および高い電圧保持率を有する液晶表示素子が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような化合物、液晶組成物、および液晶組成物を含有する液晶表示素子等を提供する。また、以下に、式(1)で表わされる化合物における末端基、環および結合基等に関して好ましい例も述べる。
【0008】
[1] 一般式(1)
【化8】


で表される化合物。
(式中、Raは水素または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は、−O−、−CO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられてもよく;A1およびA2は互いに独立して1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,3,5−トリフルオロ−1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、3−フルオロピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイルまたはピリダジン−2,5−ジイルであり、任意の−CH2−は、−O−、または−CO−で置き換えられてもよく、任意の−(CH22−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、任意の−CH=は−N=で置き換えられてもよく、さらに、任意の水素はフッ素、塩素、−CN、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF3、−OCHF2、または−OCH2Fで置き換えられてもよく;Xaは水素、フッ素、塩素、または−CNであり;Xbは水素またはフッ素であり; Gは−(C=O)−または−CF2−であり;
1およびZ2は互いに独立して単結合、−(CH22−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−(CH24−、−O(CH22O−、−(CH22CF2O−、−(CH22OCF2−、−CF2O(CH22−、−OCF2(CH22−、−CH=CH−CH2O−、または−OCH2−CH=CH−であり;mおよびnは、互いに独立して0または1であるが、mおよびnが同時に0ではなく;Gが−(C=O)−であるとき、Xbはフッ素である。)
【0009】
[2] 一般式(1)
【化9】


で表される化合物。
(式中、Raは水素または炭素数1〜15のアルキル、炭素数1〜15のアルコキシ、炭素数2〜15のアルケニル、または炭素数2〜15のアルキニルであり;A1およびA2は互いに独立して1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、フッ素化1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
aおよびXbは互いに独立して、フッ素または水素であり;Gは−(C=O)−または−CF2−であり;Z1およびZ2は互いに独立して単結合、−(CH22−、または−CF2O−であり;mおよびnは互いに独立して0または1であるが、mおよびnが同時に0ではなく;Gが−(C=O)−であるとき、Xbはフッ素である。)
【0010】
[3] Gが−(C=O)−である、[2]に記載の化合物。
[4] Xaが水素である、[3]に記載の化合物。
[5] Xaがフッ素である、[3]に記載の化合物。
[6] Raが炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり;Z1およびZ2は互いに独立して単結合、または−CH2CH2−である;[3]〜[5]のいずれかに記載の化合物。
[7] A1およびA2は互いに独立して1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、またはフッ素化1,4−フェニレンである、[3]〜[6]のいずれかに記載の化合物。
[8] Gが−CF2−である、[2]に記載の化合物。
[9] Xaが水素である、[8]に記載の化合物。
[10] Xaがフッ素である、[8]に記載の化合物。
[11] Raが炭素数1〜10のアルキル、または炭素数2〜10のアルケニルであり;Z1およびZ2は互いに独立して単結合、または−CH2CH2−である;[8]〜[10]のいずれかに記載の化合物。
[12] A1およびA2は互いに独立して1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、またはフッ素化1,4−フェニレンである、[8]〜[11]のいずれかに記載の化合物。
【0011】
[13] 式(1−1)〜式(1−12)のいずれか1つで表される化合物。
【化10】




(式中、Raは炭素数1〜10のアルキル、または炭素数2〜10のアルケニルであり;
1およびA2は互いに独立して1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;
1およびZ2は互いに独立して単結合、または−CH2CH2−である。)
【0012】
[14] [1]〜[13]のいずれかに記載の化合物を少なくとも一つ含有し、少なくとも2つ以上の化合物を含む液晶組成物。
[15] 式(2)、式(3)および式(4)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1種の化合物をさらに含有する、[14]に記載の液晶組成物。
【化11】


(式中、R1は炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は−O−もしくは−CH=CH−で置き換えられてもよく、さらに、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;X1はフッ素、塩素、−OCF3、−OCHF2、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF2CHF2または−OCF2CHFCF3であり;環Bおよび環Dは互いに独立して1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイルまたは任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり、環Eは1,4−シクロヘキシレンまたは任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;Z4およびZ5は互いに独立して−(CH22−、−(CH24−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−または単結合であり;L1およびL2は互いに独立して水素またはフッ素である。)
[16] 式(5)および(6)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1種の化合物をさらに含有する、[14]または[15]に記載の液晶組成物。
【化12】


(式中、R2およびR3は互いに独立して炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、さらに、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;X2は−CNまたは−C≡C−CNであり;環Gは1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;環Jは1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイルまたは任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;環Kは1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり;Z6は−(CH22−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、または単結合であり;L3、L4およびL5は互いに独立して水素またはフッ素であり;b、cおよびdは互いに独立して0または1である。)
[17] 式(7)、式(8)、式(9)、式(10)および式(11)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する[14]〜[16]のいずれかに記載の液晶組成物。
【化13】


(式中、R4は炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、さらに、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;R5はフッ素または炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、さらに任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;環Mおよび環Pは互いに独立して1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレンまたはデカヒドロ−2,6−ナフチレンであり;Z7およびZ8は互いに独立して−(CH22−、−COO−または単結合であり;L6およびL7は互いに独立して水素またはフッ素であって、L6とL7の少なくとも1つはフッ素である。)
[18] 式(12)、式(13)および式(14)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する[15]〜[17]のいずれかに記載の液晶組成物。
【化14】


(式中、R6およびR7は互いに独立して炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、さらに、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;環Q、環Tおよび環Uは互いに独立して1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2、5−ジイル、または任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;Z9およびZ10は互いに独立して−C≡C−、−COO−、−(CH22−、−CH=CH−、または単結合である。)
【0013】
[19] 組成物の全重量に基づいて、[1]〜[13]のいずれかに記載の化合物が4〜15重量%含まれる、[14]〜[18]のいずれかに記載の液晶組成物。
[20] 少なくとも1つの光学活性化合物をさらに含有する、[14]〜[19]のいずれかに記載の液晶組成物。
[21] [14]〜[20]のいずれかに記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
【0014】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。液晶性化合物は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。液晶性化合物、液晶組成物、液晶表示素子をそれぞれ化合物、組成物、素子と略すことがある。液晶表示素子は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。ネマチック相の上限温度はネマチック相−等方相の相転移温度であり、そして単に上限温度と略すことがある。ネマチック相の下限温度を単に下限温度と略すことがある。式(1)で表わされる化合物を化合物(1)と略すことがある。この略記は式(2)などで表される化合物にも適用することがある。式(2)から式(14)において、六角形で囲んだB、D、Eなどの記号はそれぞれ環B、環D、環Eなどに対応する。百分率で表した化合物の量は組成物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。以下に本発明をさらに説明する。
【0015】
「任意の」は、位置だけでなく個数についても任意であることを示すが、個数が0である場合を含まない。任意のAがB、CまたはDで置き換えられてもよいという表現は、任意のAがBで置き換えられる場合、任意のAがCで置き換えられる場合および任意のAがDで置き換えられる場合に加えて、複数のAがB〜Dの少なくとも2つで置き換えられる場合をも含むことを意味する。例えば、任意の−CH2−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキルには、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルケニルオキシアルキルなどが含まれる。なお、本発明においては、連続する2つの−CH2−が−O−で置き換えられて、−O−O−のようになることは好ましくない。そして、アルキルにおける末端の−CH2−が−O−で置き換えられることも好ましくない。
【発明の効果】
【0016】
本発明の化合物は、例えば、化合物に必要な一般的物性、熱、光などに対する安定性、適切な光学異方性、適切な誘電率異方性、他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する。本発明の液晶組成物は、例えば、これらの化合物の少なくとも一つを含有し、そしてネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、適切な光学異方性、低いしきい値電圧を有する。また、本発明の液晶表示素子は、例えば、この組成物を含有し、そして使用できる広い温度範囲、短い応答時間、大きなコントラスト比、低い駆動電圧を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
1−1 本発明の化合物
本発明の第1の態様は、式(1)で表される化合物に関する。
【化15】

【0018】
式(1)においてRaは、水素または炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜15のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は、−O−、−CO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられてもよい。例えば、CH3(CH23−において任意の−CH2−を−O−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えた基の例は、CH3(CH22O−、CH3−O−(CH22−、CH3−O−CH2−O−、CH2=CH−(CH23−、CH3−CH=CH−(CH22−、CH3−CH=CH−CH2O−、CH3−C≡C−(CH22−などである。
【0019】
このようなRaの例は、水素、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、アシル、アシルアルキル、アシルオキシ、アシルオキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルケニル、アルケニルオキシ、アルケニルオキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルキニル、アルキニルオキシ等である。これらの基において分岐よりも直鎖の方が好ましい。Raが分岐の基であっても光学活性であるときは好ましい。アルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。−CH=CHCH3、−CH=CHC25、−CH=CHC37、−CH=CHC49、−C24CH=CHCH3、および−C24CH=CHC25のような奇数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはトランス配置が好ましい。−CH2CH=CHCH3、−CH2CH=CHC25、および−CH2CH=CHC37のような偶数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはシス配置が好ましい。
アルキルとしては、直鎖、分枝鎖または環状のいずれでもよく、アルキルの具体的な例は、−CH3、−C25、−C37、−C49、−C511、−C613、−C715、−C817、−C919および−C1021である。アルコキシの具体的な例は、−OCH3、−OC25、−OC37、−OC49、−OC511、−OC613および−OC715である。アルコキシアルキルとしては、直鎖でも分枝鎖でもよく、アルコキシアルキルの具体的な例は、−CH2OCH3、−CH2OC25、−CH2OC37、−(CH22OCH3、−(CH22OC25、−(CH22OC37、−(CH23OCH3、−(CH24OCH3、および−(CH25OCH3である。アルケニルとしては、直鎖でも分枝鎖でもよく、アルケニルの具体的な例は、−CH=CH2、−CH=CHCH3、−CH2CH=CH2、−CH=CHC25、−CH2CH=CHCH3、−(CH22CH=CH2、−CH=CHC37、−CH2CH=CHC25、−(CH22CH=CHCH3、および−(CH23CH=CH2である。アルケニルオキシとしては、直鎖でも分枝鎖でもよく、アルケニルオキシの具体的な例は、−OCH2CH=CH2、−OCH2CH=CHCH3、および−OCH2CH=CHC25である。アルキニルとしては、直鎖でも分枝鎖でもよく、アルキニルの具体的な例は、−C≡CCH3および−C≡CC37である。
【0020】
aは、炭素数1〜15のアルキル、炭素数1〜15のアルコキシ、炭素数2〜15のアルコキシアルキル、または炭素数2〜15のアルケニルが好ましく、−CH3、−C25、−C37、−C49、−C511、−C613、−OCH3、−OC25、−OC37、−CH2OCH3、−CH=CH2、−CH=CHCH3、−(CH22CH=CH2、および−(CH22CH=CHCH3であることがさらに好ましい。
【0021】
式(1)におけるA1およびA2は、互いに独立して1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,3,5−トリフルオロ−1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、3−フルオロピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイルまたはピリダジン−2,5−ジイルであり、任意の−CH2−は、−O−または−CO−で置き換えられてもよく、任意の−(CH22−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、任意の−CH=は−N=で置き換えられてもよく、さらに、任意の水素はフッ素、塩素、−CN、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF3、−OCHF2、または−OCH2Fで置き換えられてもよい。

具体的には、A1およびA2の好ましい例は、下記の式(15−1)〜式(15−18)で表される基である。さらに好ましい例は、式(15−1)〜式(15−5)および式(15−15)〜式(15−18)で表される基である。

【化16】

【0022】
上記の定義による範囲に含まれるA1およびA2において、任意の水素はフッ素、塩素、−CN、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF3、−OCHF2、または−OCH2Fで置き換えられてもよい。任意の水素がフッ素、塩素、−CN、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF3、−OCHF2、または−OCH2Fで置き換えられたA1およびA2の例は、下記の式(16−1)〜式(16−37)である。さらに好ましい例は、式(16−1)〜式(16−6)、式(16−10)〜式(16−20)、式(16−28)および式(16−29)で表される基である。
【化17】

【0023】
1およびA2の好ましい例は、1,4−シクロヘキシレン(15−1)、1,4−シクロヘキセニレン(15−10)、(15−11)、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル(15−4)、(15−5)、1,4−フェニレン(15−12)、2−フルオロ−1,4−フェニレン(16−1)(16−2)、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン(16−3)、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン(16−5)、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン(16−4)(16−6)、2,3,5−トリフルオロ−1,4−フェニレン(16−7)(16−8)、ピリジン−2,5−ジイル(15−13)(15−17)、3−フルオロピリジン−2,5−ジイル(16−36)(16−37)、ピリミジン−2,5−ジイル(15−14)(15−18)およびピリダジン−2,5−ジイル(15−16)である。1,4−シクロヘキシレンおよび1,3−ジオキサン−2,5−ジイルの立体配置はシスよりもトランスが好ましい。1,3−ジオキサン−2,5−ジイルは、4,6−ジオキサン−2,5−ジイルと構造的に同一であるので、後者は例示しなかった。この規則は、2−フルオロ−1,4−フェニレンと2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンの関係などにも適用される。
1およびA2の最も好ましい例は、1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、およびピリミジン−2,5−ジイルである。
【0024】
式(1)におけるZ1およびZ2は互いに独立して単結合、−CH2CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−(CH24−、−O(CH22O−、−(CH22CF2O−、−(CH22OCF2−、−CF2O(CH22−、−OCF2(CH22−、−CH=CH−CH2O−、または−OCH2−CH=CH−である。また、Z1およびZ2は、単結合、−CH2CH2−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−および−CH=CH−がさらに好ましい。
これらの結合において、−CH=CH−、−CF=CF−、−CH=CH−CH2O−、および−OCH2−CH=CH−のような結合基の二重結合に関する立体配置はシスよりもトランスが好ましい。
【0025】
式(1)におけるXaは水素、フッ素、塩素、または−CNであり、またXbは水素またはフッ素である。これらの中でも、水素またはフッ素が好ましい。
式(1)におけるGは−(C=O)−または−CF2−である。但し、Gが−(C=O)−のとき、Xbはフッ素である。また、mおよびnは互いに独立して0または1であるが、mおよびnが同時に0ではない。
【0026】
1−2 本発明の化合物の性質およびその調整方法
本発明の化合物(1)をさらに詳細に説明する。
なお、本明細書において、縮合環であるクマリン環は一環と数える。化合物(1)はクマリン環を有する二環または三環の化合物である。
この化合物は、素子が通常使用される条件下において物理的および化学的に極めて安定であり、そして他の液晶性化合物との相溶性がある。この化合物を含有する組成物は素子が通常使用される条件下で安定である。この組成物を低い温度で保管しても、この化合物が結晶(またはスメクチック相)として析出することがない。この化合物は、化合物に必要な一般的物性、適切な光学異方性、そして適切な誘電率異方性を有する。また、化合物(1)は、誘電率異方性が正に大きい。大きな誘電率異方性を有する化合物は、組成物のしきい値電圧を下げるための成分として有用である。
【0027】
化合物(1)のRa、A1、A2、Z1、およびZ2を適切に選択することによって、光学異方性、誘電率異方性などの物性を任意に調整することが可能である。Ra、A1、A2、Z1、およびZ2の種類が、化合物(1)の物性に与える影響を以下に説明する。
【0028】
式(1)におけるRaが直鎖であるときは、液晶相の温度範囲が比較的広くそして粘度が小さい。Raが分岐鎖であるときは他の液晶性化合物との相溶性がよい。Raが光学活性基である化合物は、キラルドーパントとして有用である。この化合物を組成物に添加することによって、素子に発生するリバース・ツイスト・ドメイン(Reverse twisted domain)を防止することができる。Rが光学活性基でない化合物は組成物の成分として有用である。Rがアルケニルであるとき、好ましい立体配置は二重結合の位置に依存する。好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、高い上限温度または液晶相の広い温度範囲を有する。Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 109およびMol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 327に詳細な説明がある。
【0029】
式(1)におけるA1またはA2が、任意の水素がハロゲンで置き換えられた1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイルまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであるときは誘電率異方性が比較的大きい。A1またはA2が、任意の水素がハロゲンで置き換えられてもよい1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、またはピリダジン−3,6−ジイルであるときは光学異方性が比較的大きい。A1またはA2が、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレンまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであるときは光学異方性が比較的小さい。
【0030】
二つのA1およびA2が、ともに1,4−シクロヘキシレンであるときは、上限温度が比較的高く、光学異方性が比較的小さく、そして粘度が比較的小さい。少なくとも一つのA1またはA2が1,4−フェニレンのときは、光学異方性が比較的大きく、そして配向秩序パラメーター(orientational order parameter)が比較的大きい。また二つのA1およびA2が、ともに1,4−フェニレンであるときは、光学異方性が比較的大きく、液晶相の温度範囲が比較的広く、そして上限温度が比較的高い。
【0031】
1またはZ2が単結合、−(CH22−、−CH2O−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−、−CF=CF−、または−(CH24−であるときは粘度が比較的小さい。Z1またはZ2が単結合、−(CH22−、−OCF2−、−CF2O−、または−CH=CH−であるときは粘度が比較的小さい。Z1、またはZ2が−CH=CH−であるときは液晶相の温度範囲が比較的広く、そして弾性定数比K33/K11(K33:ベンド弾性定数、K11:スプレイ弾性定数)が比較的大きい。Z1またはZ2が−C≡C−のときは光学異方性が比較的大きい。Z1またはZ2が単結合、−(CH22−、−CH2O−、−CF2O−、−OCF2−、−(CH24−であるときは化学的に比較的安定であって、比較的劣化をおこしにくい。
【0032】
化合物(1)がクマリン環を含めて二環を有するときは、比較的粘度が小さい。化合物(1)がクマリン環を含めて三環を有するときは、比較的上限温度が高い。
以上のように、Ra、A1、A2、Z1、およびZ2の種類、環の数を適当に選択することにより目的の物性を有する化合物を得ることができる。したがって、化合物(1)はPC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、VAなどの素子に用いられる組成物の成分として有用である。
【0033】
1−3 化合物(1)の具体例
化合物(1)の好ましい例は、上記式(1−1)〜(1−12)である。より具体的な例は、後述の実施例の中の実施例3に示した化合物(1−21)〜(1−194)である。
【化18】

(式中、Raは炭素数1〜10のアルキル、または炭素数2〜10のアルケニルであり;
1およびA2は互いに独立して1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;
1およびZ2は互いに独立して単結合、または−CH2CH2−である。)
【0034】
1−4 化合物(1)の合成
次に、化合物(1)の合成について説明する。化合物(1)は有機合成化学における手法を適切に組み合わせることにより合成できる。出発物に目的の末端基、環および結合基を導入する方法は、オーガニックシンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などに記載されている。
【0035】
1−4−1 結合基Z1またはZ2を生成する方法
化合物(1)における結合基Z1またはZ2を生成する方法の一例は、下記のスキームの通りである。このスキームにおいて、MSG1またはMSG2は少なくとも一つの環を有する1価の有機基である。スキームで用いた複数のMSG1(またはMSG2)は、同一であってもよいし、または異なってもよい。化合物(1A)から(1K)は化合物(1)に相当する。

【化19】

【化20】

【化21】

【0036】
次に、化合物(1)におけるZ1またはZ2における、各種の結合の生成方法について、以下の(I)〜(XI)項で説明する。
【0037】
(I)単結合の生成
アリールホウ酸(21)と公知の方法で合成される化合物(22)とを、炭酸塩水溶液とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で反応させて化合物(1A)を合成する。この化合物(1A)は、公知の方法で合成される化合物(23)にn−ブチルリチウムを、次いで塩化亜鉛を反応させ、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で化合物(22)を反応させることによっても合成される。
【0038】
(II)−COO−と−OCO−の生成
化合物(23)にn−ブチルリチウムを、続いて二酸化炭素を反応させてカルボン酸(24)を得る。化合物(24)と、公知の方法で合成されるフェノール(25)とをDCC(1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド)とDMAP(4−ジメチルアミノピリジン)の存在下で脱水させて−COO−を有する化合物(1B)を合成する。この方法によって−OCO−を有する化合物も合成する。
【0039】
(III)−CF2O−と−OCF2−の生成
化合物(1B)をローソン試薬のような硫黄化剤で処理して化合物(26)を得る。化合物(26)をフッ化水素ピリジン錯体とNBS(N−ブロモスクシンイミド)でフッ素化し、−CF2O−を有する化合物(1C)を合成する。M. Kuroboshi et al., Chem. Lett., 1992,827.を参照。化合物(1C)は化合物(26)を(ジエチルアミノ)サルファートリフルオリド(DAST)でフッ素化しても合成される。W. H. Bunnelle et al., J. Org. Chem. 1990, 55, 768.を参照。この方法によって−OCF2−を有する化合物も合成する。Peer. Kirsch et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 1480.に記載の方法によってこれらの結合基を生成させることも可能である。
【0040】
(IV)−CH=CH−の生成
化合物(23)をn−ブチルリチウムで処理した後、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などのホルムアミドと反応させてアルデヒド(28)を得る。公知の方法で合成されるホスホニウム塩(27)をカリウムtert−ブトキシドのような塩基で処理して発生させたリンイリドを、アルデヒド(28)に反応させて化合物(1D)を合成する。反応条件によってはシス体が生成するので、必要に応じて公知の方法によりシス体をトランス体に異性化する。
【0041】
(V)−(CH22−の生成
化合物(1D)をパラジウム炭素のような触媒の存在下で水素化することにより、化合物(1E)を合成する。
【0042】
(VI)−(CH24−の生成
ホスホニウム塩(27)の代わりにホスホニウム塩(29)を用い、項(IV)の方法に従って−(CH22−CH=CH−を有する化合物を得る。これを接触水素化して化合物(1F)を合成する。
【0043】
(VII)−C≡C−の生成
ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下で、化合物(23)に2−メチル−3−ブチン−2−オールを反応させたのち、塩基性条件下で脱保護して化合物(30)を得る。ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下、化合物(30)を化合物(22)と反応させて、化合物(1G)を合成する。
【0044】
(VIII)−CF=CF−の生成
化合物(23)をn−ブチルリチウムで処理したあと、テトラフルオロエチレンを反応させて化合物(31)を得る。化合物(22)をn−ブチルリチウムで処理したあと化合物(31)と反応させて化合物(1H)を合成する。
【0045】
(IX)−CH2O−または−OCH2−の生成
化合物(28)を水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤で還元して化合物(32)を得る。これを臭化水素酸などでハロゲン化して化合物(33)を得る。炭酸カリウムなどの存在下で、化合物(33)を化合物(25)と反応させて化合物(1J)を合成する。
【0046】
(X)−(CH23O−または−O(CH23−の生成
化合物(32)の代わりに化合物(34)を用いて、項(IX)の方法に従って化合物(1K)を合成する。
【0047】
(XI)−(CF22−の生成
J. Am. Chem. Soc., 2001, 123, 5414.に記載された方法に従い、ジケトン(−COCO−)をフッ化水素触媒の存在下、四フッ化硫黄でフッ素化して−(CF22−を有する化合物を得る。
【0048】
1−4−2 A1またはA2を合成する方法
1,4−シクロヘキサノン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイルなどの環に関しては出発物が市販されているか、または合成法がよく知られている。そこで、下記の化合物(38)および化合物(42)の合成について説明する。
【0049】
(化合物(38)の合成)
【化22】

2,3−ビストリフルオロメチルフェニレンの構造単位は、Org. Lett., 2000, 2(21), 3345の文献に記載された方法で合成する。フラン(36)と1,1,1,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブチンとを高温でディールズ・アルダー型の反応をさせることによってアニリン(37)を合成する。この化合物は、Org. Synth. Coll., Vol. 2, 1943, 355に記載された方法に従ってサンド・マイヤー型反応によってヨウ素化物(38)を得る。この化合物は、有機合成化学の一般的な手法によって化合物(1)に変換される。
【0050】
(化合物(42)の合成)
【化23】



2−ジフルオロメチル−3−フルオロフェニレンの構造単位は、次のような方法で合成する。化合物(39)の水酸基を適切な保護基で保護して化合物(40)を得る。Pは保護基を意味する。化合物(40)に、sec−ブチルリチウムを作用させ、続いてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を反応させてアルデヒド(41)を得る。この化合物をジメチルアミノサルファートリフルオリド(DAST)でフッ素化し、続いて脱保護してフェノール(42)を得る。この化合物は、有機合成化学の一般的な手法によって化合物(1)に変換される。なお、上記におけるQ2は次の式で表される基である。
【化24】

【0051】
1−4−3 式(1)で表される化合物を合成する方法
化合物(1)を合成する方法は複数あるが、ここにその一例を示す。
1−4−3−1 出発原料である化合物(52)を合成する方法
出発原料である化合物(52)を合成する方法について説明する。
下記式52で示される出発原料となる化合物(52)は、上述の合成方法、有機合成化学における一般的な手法を用いることにより、合成することができる。
以下に、化合物(52)を合成するための一般的な合成例(A)〜(C)を示す。
【0052】
(A) A2がシクロヘキシレンであり、かつZ2が単結合である場合、またはZ2がアルキレンである場合の化合物(52)の合成法
【化25】

(これらの式において、Pは保護基を表し、Meはメチル、TIPSはトリイソプロピルシリル、TBDMSはt−ブチルジメチルシリル、Bnはベンジルを表し、iは0〜3である。)
なお、本明細書におけるQ1は次の式で表される基である。
【化26】

【0053】
上記スキーム1に示すように、最初に有機合成化学の方法に従ってシクロヘキサノン誘導体(50a)、またはカルボニル誘導体(50b)を準備し、適切なグリニャール試薬(51)を用いたグリニャール反応、酸による脱水反応、およびPd触媒を用いた水素還元を順次行い、その後は必要により塩化アルミニウムを用いた異性化反応を行うことにより、化合物(52)を合成することができる。
【0054】
(B) A2がフェニレン、ピリミジンなどであり、かつZ2が単結合である場合、またはZ2がアルキレン、アルケニレン、アルキニレンまたは−CH2−である場合の化合物(52)の合成法
【化27】

(これらの式において、X4は臭素、ヨウ素またはトリフラート(OTf)を表す。)
【0055】
上記スキーム2に示すように、最初に有機合成化学の方法に従って化合物(53a)または化合物(53b)を準備し、例えばボロン酸誘導体(54)などとカップリング反応を行う方法、またはフェノール誘導体(55)とWilliamsonエーテル化を行う方法などを用いることによって、容易に化合物(52)に誘導することができる。
【0056】
(C) Z2が−CF2O−である場合の化合物(52)の合成法
【化28】

【0057】
上記、スキーム3に示すように、最初に有機合成化学の方法に従って化合物(53b)を準備し、フェノール誘導体(55)などとエステル化反応させ、その後に上記に記載した合成スキーム(III)を用いることによって
、容易に化合物(52)に誘導することができる。
【0058】
1−4−3−2 化合物(52)から化合物(1)を合成する方法
(A) Gが−(C=O)−である場合の化合物(60)の合成法
まず、化合物(52)から化合物(57)に誘導するスキーム4を示す。
【化29】

【0059】
化合物(52)をブチルリチウムで処理した後にN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などと作用させてアルデヒド体(56)を得る。その後、ジエチルホスホノ酢酸エチルを水素化ナトリウムのような塩基で処理して発生させたリンイリドを、化合物(56)と反応させた後、二重結合部位をパラジウム炭素に代表される触媒の存在下で水素化して化合物(57)を得る。
【0060】
次に化合物(57)から化合物(60)に誘導するスキーム5を示す。
【化30】

【0061】
化合物(57)をProtective Groups in Organic Synthesis (Greene, John Willy & Sons, Inc)などに記載されている一般的な脱保護の条件により、フェノールの保護基を取り除き、その後にp−トルエンスルホン酸などを用いて脱水環化反応を行うことにより、化合物(59)が得られる。この化合物(59)に、フッ素化剤としてN−フルオロベンゼンスルホンイミドを作用させ、Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1996, 35, No.9 に記載されている方法に従うことによって、化合物(60)に誘導できる。
【0062】
(B) Gが−CF2−、Xbが水素である場合の化合物(65)の合成法
まず、化合物(56)から化合物(62)に誘導するスキーム6を示す。
【化31】

【0063】
ハロメチルメチルエーテルから調整されるホスホニウム塩にt−ブトキシカリウムのような塩基で処理して得られたリンイリドを、化合物(56)と反応させて、その後、希塩酸などを用いて酸性条件下で攪拌することにより、化合物(61)を得る。次いで、ジブロモジフルオロメタンとトリス(ジエチルアミノ)ホスフィンを用いて調整したリンイリドを準備し、化合物(61)と反応させることにより、化合物(62)を得ることができる。
【0064】
次に、化合物(62)から化合物(65)に誘導するスキーム7を示す。
【化32】

【0065】
化合物(62)に臭素を反応させると、化合物(63)の中間体を経由して化合物(64)が得られる。化合物(62)の保護基の種類によっては、化合物(63)で反応が終結する場合があるが、その場合にはProtective Groups in Organic Synthesis (Greene, John Willy & Sons, Inc)などに記載されている一般的な条件で脱保護を行うことにより、化合物(64)に誘導できる。次いで、化合物(64)を炭酸カリウムのような塩基で処理し、酸性条件にならないように注意深く精製すると、化合物(65)を得ることができる。
【0066】
(C) Gが−CF2−、Xbがフッ素である場合の化合物(68)の合成法
化合物(64)から化合物(68)に誘導するスキーム8を示す。
【化33】



化合物(64)をベンジルアルコールとWilliamsonエーテル化を行った後、パラジウム炭素などの触媒存在下で水素化を行うことにより化合物(66)に変換できる。得られた化合物(65)を、Jones酸化などの酸化反応によって化合物(67)に変換し、次いでDASTなどのフッ素化剤を用いることにより、化合物(68)を得ることができる。
【0067】
(D) 化合物(60)から化合物(68)を合成する方法
下記のスキーム9によって、化合物(60)から化合物(68)に誘導することもできる。
【化34】



化合物(60)をローソン試薬を使用してチオエステル化合物(69)に誘導した後、フッ化水素ピリジンを作用させると化合物(68)を得ることができる。
【0068】
(E) 化合物(70)から化合物(60)を合成する方法
化合物(70)から化合物(60)に誘導するスキーム10を示す。
【化35】

【0069】
化合物(70)は、Aldrich社などから市販されており、容易に入手できる。この化合物(70)に、フッ素化剤としてN−フルオロベンゼンスルホンイミドを作用させ、Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1996, 35, No.9 に記載されている方法に従うことによって化合物(71)に誘導できる。この化合物を臭素化し、その後、この臭素化物とボロン酸誘導体などとのカップリング反応を行うことによって、化合物(60)を得ることもできる。
【0070】
2 本発明の組成物
本発明の第2の態様は、式(1)で表される化合物を含む組成物であり、好ましくは、液晶材料に用いることのできる液晶組成物である。この組成物の成分は化合物(1)から選ばれた複数の化合物のみであってもよいが、化合物(1)から選択された少なくとも一つの化合物を1〜99重量%の割合で含有することが好ましい。この組成物は化合物(1)以外に、さらに化合物(2)〜(14)の群から選択された成分を含有することが好ましい。本発明の組成物を調製するときには、化合物(1)の誘電率異方性を考慮して成分を選択することが好ましい。
【0071】
誘電率異方性が正で比較的大きい化合物(1)を含有する好ましい組成物は化合物(2)、(3)および(4)の群から選択された少なくとも一つの化合物を含有する。別の好ましい組成物は、化合物(5)および(6)の群から選択された少なくとも一つの化合物を含有する。別の好ましい組成物は、このような二つの群のそれぞれから選択された少なくとも二つの化合物を含有する。これらの組成物は、液晶相の温度範囲、粘度、光学異方性、誘電率異方性、しきい値電圧などを調整する目的で、化合物(12)、(13)および(14)の群から選択された少なくとも一つの化合物をさらに含有してもよい。これらの組成物は、さらに物性を調整する目的で、化合物(7)〜(11)の群から選択された少なくとも一つの化合物をさらに含有してもよい。また、これらの組成物は、AM−TN素子、STN素子などに適合させる目的で、その他の液晶性化合物、添加物などの化合物をさらに含有してもよい。
【0072】
誘電率異方性が比較的小さい化合物(1)を含有する好ましい組成物は化合物(2)、(3)および(4)の群から選択された少なくとも一つの化合物を含有する。別の好ましい組成物は、化合物(5)および(6)の群から選択された少なくとも一つの化合物を含有する。別の好ましい組成物は、このような二つの群のそれぞれから選択された少なくとも二つの化合物を含有する。これらの組成物は、液晶相の温度範囲、粘度、光学異方性、誘電率異方性、しきい値電圧などを調整する目的で、化合物(12)、(13)および(14)の群から選択された少なくとも一つの化合物をさらに含有してもよい。この組成物は、さらに物性を調整する目的で、化合物(7)〜(11)の群から選択された少なくとも一つの化合物をさらに含有してもよい。また、この組成物は、AM−TN素子、STN素子などに適合させる目的で、その他の液晶性化合物、添加物などの化合物をさらに含有してもよい。
別の好ましい組成物は、化合物(7)〜(11)の群から選択された少なくとも一つの化合物を含有する。この組成物は、化合物(12)、(13)および(14)の群から選択された少なくとも一つの化合物をさらに含有してもよい。この組成物は、物性をさらに調整する目的で、化合物(2)〜(6)の群から選択された少なくとも一つの化合物をさらに含有してもよい。この組成物は、VA素子などに適合させる目的で、その他の液晶性化合物、添加物などの化合物をさらに含有してもよい。
【0073】
化合物(2)、(3)および(4)は、誘電率異方性が正で比較的大きいので、主としてAM−TN素子用の組成物に用いられる。この組成物において、化合物(2)、(3)および(4)の量の合計が1〜99重量%であることが好ましく、10〜97重量%であることがさらに好ましい。また、当該範囲が40〜95重量%であることが特に好ましい。この組成物に化合物(12)、(13)または(14)をさらに添加する場合、これらの化合物(12)、(13)または(14)の好ましい添加量は60重量%以下であり、40重量%以下がさらに好ましい。
【0074】
化合物(5)および(6)は、誘電率異方性が正で非常に大きいので、主としてSTN素子用の組成物に用いられる。この組成物において、化合物(5)および(6)の量の合計が1〜99重量%であることが好ましく、10〜97重量%であることがさらに好ましい。また、当該範囲が40〜95%であることが特に好ましい。この組成物に化合物(12)、(13)または(14)をさらに添加する場合、この化合物の好ましい添加量は60重量%以下であり、40%以下がさらに好ましい。
【0075】
化合物(7)、(8)、(9)、(10)、および(11)は、誘電率異方性が負であるので、主としてVA素子用の組成物に用いられる。これらの化合物(7)、(8)、(9)、(10)、および(11)の合計が80重量%以下であることが好ましく、40〜80%重量であることがさらに好ましい。この組成物に化合物(12)、(13)または(14)をさらに添加する場合、これらの化合物(12)、(13)または(14)の好ましい添加量は60重量%以下であり、40重量%以下がさらに好ましい。
【0076】
化合物(12)、(13)および(14)の誘電率異方性は比較的小さい。また、化合物(12)は粘度または光学異方性を調整する目的で主に使用される。化合物(13)および(14)は上限温度を上げて液晶相の温度範囲を広げる、または光学異方性を調整する目的で主に使用される。
化合物(12)、(13)および(14)の量を増加させると組成物のしきい値電圧が高くなり、粘度が小さくなる。したがって、組成物のしきい値電圧の要求値を満たすかぎり多量に使用してもよい。
【0077】
化合物(2)〜(14)における好ましい化合物の具体例は、それぞれ化合物(2−1)〜(2−9)、化合物(3−1)〜(3−97)、化合物(4−1)〜(4−33)、化合物(5−1)〜(5−56)、化合物(6−1)〜(6−3)、化合物(7−1)〜(7−4)、化合物(8−1)〜(8−6)、化合物(9−1)〜(9−4)、化合物(10−1)、化合物(11−1)、化合物(12−1)〜(12−11)、化合物(13−1)〜(13−21)、および化合物(14−1)〜(14−6)である。これらの化合物において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、X1、およびX2の記号の意味は、上述した各化合物(2)〜(14)におけるこれらの記号の意味と同一である。
【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【化42】

【化43】

【化44】

【化45】

【化46】

【化47】

【化48】

【化49】

【化50】

【化51】

【0078】
化合物(1)を含有する本発明の組成物は公知の方法によって調製される。例えば、所定の成分である化合物を混合し、加熱することによって互いに溶解させて調整できる。また、組成物に適当な添加物を加えて組成物の物性を調整してもよい。このような添加物は当業者によく知られている。メロシアニン、スチリル、アゾ、アゾメチン、アゾキシ、キノフタロン、アントラキノン、テトラジンなどの化合物である二色性色素を添加してGH素子用の組成物を調製してもよい。一方、液晶のらせん構造を誘起して必要なねじれ角を与える目的でキラルドーパントが添加される。キラルドーパントの例は下記の光学活性化合物(Op−1)〜(Op−13)である。
【化52】

【0079】
本発明の組成物にキラルドーパントを添加してねじれのピッチを調整することができる。TN素子およびTN−TFT素子用の好ましいピッチは40〜200μmの範囲である。STN素子用の好ましいピッチは6〜20μmの範囲である。BTN素子用の好ましいピッチは1.5〜4μmの範囲である。これらの各種の素子の好ましいピッチ範囲に適用できるように、キラルドーパントを添加できる。一般的には、PC素子の用途では本発明の組成物にはキラルドーパントを比較的多量に添加する。また、ピッチの温度依存性を調整する目的で少なくとも二つのキラルドーパントを添加してもよい。
【0080】
3.本発明の液晶表示素子
本発明の第3の態様は、本発明の組成物を用いた液晶表示素子に関する。
液晶表示素子を構成するスペーサーの形状は、真上から見た場合、正方形、長方形、円形、楕円形であることが好ましく、長方形、楕円形の場合、長軸方向が、ラビング方向と水平もしくは直交しているのが好ましい。また、樹脂塗膜中に従来から用いられてきたビーズを分散させ、固定させて使用することもできる。また、感光性 樹脂組成物をガラス基板上に塗布し、同様にパターニングを行い基板の周辺部のみ該組成物を残し、その上に別の基板を対向するように液晶セルを組み立て、圧着し、焼成することにより該組成物をシール材として液晶素子に組み込むことができる。さらに、該樹脂塗膜上に配向処理を行う膜を形成させても良い。
【0081】
本発明の液晶表示素子は、たとえば、上記のようにして形成された上下の素子基板の位置を合わせて圧着後、熱処理して組み合わせて後、本発明の組成物を注入し、注入口を封止することによって製作される。また、液晶素子基板上に本発明の組成物を散布した後、基板を重ね合わせ、当該組成物が漏れないように密封して液晶表示素子を製作してもよい。このようにして、本発明の組成物を用いた液晶表示素子中に存在させることができる。
【0082】
本発明の組成物は、具体的には、PC、TN、STN、BTN,ECB、OCB、IPS、VAなどの液晶表示素子に使用できる。これらの液晶表示素子は駆動方式がPMであってもよいし、またはAMであってもよい。本発明の組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)素子や、組成物中に三次元の網目状高分子を形成させたPD(polymer dispersed)素子、例えばPN(polymer network)素子にも使用できる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例によって制限されない。No.1などの化合物番号は、後の表で示した化合物のそれと対応する。また、得られた化合物は核磁気共鳴スペクトル、質量スペクトルなどで構造を同定した。

[実施例1]化合物(1−111)の合成
化合物(1)の1つの実施例である下記式1−111に示される化合物を合成した。
【化53】

【0084】
下記のスキーム11に従って、化合物(1−111)(3−フルオロ−6−(トランス−4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)シクロヘキシル)クマリン)を合成した。
【化54】

【0085】
(第1段)
窒素雰囲気下で、化合物(1−111a)(24.5g)のTHF(100mL)溶液を−65℃まで冷却し、sec−ブチルリチウム/シクロヘキサン溶液(1.0mol/L)(84mL)を滴下した。そのままの温度で1時間攪拌した後に、N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)(6.20g)のTHF(10mL)溶液を滴下し、さらに1時間攪拌した。反応物を1N−HCl水溶液にあけてトルエン(200mL)で2回抽出し、常法により水で洗浄、次いで濃縮を行った後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して化合物(1−111b)(21.9g)を単離した。
次に、窒素雰囲気下で、ジエチルホスホノ酢酸エチル(17.2g)のTHF(150mL)溶液を−40℃に冷却し、t−ブトキシカリウム(8.62g)をゆっくりと加えた。そのままの温度で1時間攪拌した後に、化合物(1−111b)(21.9g)のTHF(50mL)溶液を滴下し、さらに1時間攪拌した。反応物を水にあけてトルエン(200mL)で2回抽出し、常法により水で洗浄、次いで濃縮を行った後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して化合物(1−111c)(21.0g)を単離した。化合物(1−111c)(21.0g)のトルエン(40mL)/イソプロピルアルコール(40mL)の混合溶液に触媒としてPd/C(2.0g)を加え、反応器内に1.0kPaの水素圧をかけて常温にて1日間攪拌した。反応液をろ過した後、常法にて濃縮し、化合物(1−111d)(21.0g)を得た。
【0086】
(第2段)
窒素雰囲気下で、化合物(1−111d)(13.2g)のジクロロメタン(100mL)溶液を−20℃まで冷却し、三臭化ホウ素(10.8g)を滴下して室温に戻した後、5時間攪拌した。反応液を氷水にあけてジクロロメタン(100mL)を追加し、常温にて水、重曹水、水にて順次洗浄、次いで濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して化合物(1−111e)(8.50g)を得た。
次に、窒素雰囲気下で、ブロモマンガン(6.05g)、N−フルオロベンゼンスルホンイミド(8.90g)およびTHF(50mL)の混合溶液を−65℃まで冷却し、化合物(1−111e)(2.50g)のTHF(10mL)溶液を滴下し、その後さらにN,N−ビス(トリメチルシリル)アミドのトルエン溶液(0.7mol/L)(5.0mL)を滴下した。そのままの温度で2時間攪拌した後、徐々に室温にもどした、反応液を水にあけてトルエンで抽出し、常法により水、重曹水、水にて順次洗浄し、次いで濃縮を行った後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー、さらに再結晶ろ過にて精製して、標題化合物(1−111)(1.08g)を得た。
【0087】
得られた化合物(1−111)の物理化学性状を以下に示す。
1H−NMR(d−acetone、ppm): δ0.862(3H, t, J=7.0Hz),
0.967-1.45(23H, m), 2.55-2.58(1H, m), 7.30(1H, d, J=8.5Hz), 7.47-7.49(1H, m),
7.53(1H, d, J=2.0Hz), 7.76(1H, d, J=9.5Hz).
19F(CDCl3、ppm): δ-130.8(1F, d).
MS: 370(M+
【0088】
[実施例2]化合物(1−143)の合成
化合物(1)の1つの実施例である下記式1−143に示される化合物を合成した。
【化55】

【0089】
下記のスキーム12に従って化合物(1−143)(2,2−ジフルオロ−6−(2,6−ジフルオロ−4−(4−プロピルフェニル)フェニル)−2H−クロメン)を合成した。
【化56】

【0090】
(第1段)
実施例1の第1段に記載した方法と同様の方法を用いることによって、化合物(1−143a)(10.0g)から化合物(1−143b)(6.50g)を合成した。
次に、窒素雰囲気下で、メトキシメチルホスホニムクロライド(7.31g)のTHF(30mL)溶液を−30℃まで冷却し、t−ブトキシカリウム(1.99g)をゆっくりと加えた。そのままの温度で1時間攪拌した後に、化合物(1−143b)(6.50g)のTHF(20mL)溶液を滴下した。徐々に室温に戻して1時間攪拌した後、反応液を水にあけてトルエン(100mL)にて2回抽出し、常法により水で洗浄、次いで濃縮を行った後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して目的物を単離した。その後、この単離した化合物(6.30g)、3N−HCl水溶液(20mL)、およびアセトン(50mL)の混合溶液を、60℃で2時間攪拌した。反応液を水にあけてトルエン(100mL)にて抽出し、常法により水で洗浄、次いで濃縮を行い、化合物(1−143c)(4.70g)を得た。
【0091】
(第2段)
窒素雰囲気下で、ジブロモジフルオロメタン(3.90g)のTHF(12mL)溶液を0℃まで冷却し、トリス(ジエチルアミノ)ホスフィン(9.47g)のTHF(20mL)溶液をゆっくりと滴下した。常温にて1時間攪拌した後、さらに化合物(1−143c)(4.70g)のTHF(10mL)溶液をゆっくりと滴下し、40℃で4時間攪拌した。反応液を水にあけてトルエン(100mL)にて2回抽出し、常法にて水、3N−HCl水溶液、重曹水、水にて順次洗浄、次いで濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して化合物(1−143d)(4.10g)を得た。
次に、窒素雰囲気下で、この化合物(1−143d)(2.70g)のジクロロメタン(30mL)溶液を−10℃まで冷却し、臭素(1.15g)を滴下した。そのままの温度で30分間攪拌した後、反応液を水にあけてジクロロメタン(50mL)を追加し、常法にて水、チオ硫酸ナトリウム水溶液、水にて順次洗浄、次いで濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製して、化合物(1−143e)(3.00g)を得た。
【0092】
(第3段)
窒素雰囲気下で、化合物(1−143e)(2.00g)、炭酸カリウム(1.80g)、N,N−ジメチルホルムアミド(20mL)の混合溶液を120℃で2時間加熱攪拌した。反応液を水にあけて、トルエン(100mL)にて抽出し、常法にて水、重曹水、水にて順次洗浄、次いで濃縮し、残渣を中性のシリカゲルカラムクロマトグラフィー、さらに再結晶ろ過にて精製して、標題化合物(1−143)(1.05g)を得た。
【0093】
得られた化合物(1−143)の物理化学性状を以下に示す。
1H−NMR(CDCl3、ppm): δ0.981(3H, t, J=7.5Hz), 1.65-1.73(2H, m),
2.65(2H, t, J=7.5Hz), 6.06(1H, d, J=9.5Hz), 7.06(1H, d, J=10Hz), 7.22-7.25(2H, m),
7.26(2H, d, J=19Hz), 7.46(1H, s), 7.51-7.55(3H, m).
19F(CDCl3、ppm): δ-40.6(2F, d), -115.0(2F, d).
MS: 398(M+
【0094】
[実施例3]
実施例1、実施例2、および前記の合成法に基づいて、本発明の化合物(1)の実施例である化合物(1−21)〜化合物(1−194)を合成する。上限温度、光学異方性および誘電率異方性の測定手順は後述の組成物例で説明する。
【化57】

【化58】

【化59】

【化60】

【化61】

【化62】

【0095】
次に、本発明の化合物(1)を含む本発明の代表的な組成物例を以下に示す。物性値の測定方法は後述する方法に従った。
(組成物例1)
4つの化合物を混合して、ネマチック相を有する組成物A(母液晶)を調製した。4つの化合物は、
4−(4−プロピルシクロヘキシル)ベンゾニトリル(24重量%)、
4−(4−ペンチルシクロヘキシル)ベンゾニトリル(36重量%)、
4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)ベンゾニトリル(25重量%)、および
4−(4−ペンチルシクロヘキシル)−4’−シアノビフェニル(15重量%)であった。
組成物Aの物性値は次のとおりであった。上限温度(NI)=71.7℃;光学異方性(Δn)=0.137;誘電率異方性(Δε)=11.0。
この組成物Aに、実施例1に記載の化合物(1−111)を添加して組成物例1を合成した。具体的には、化合物(1−111)は、組成物例1に対して10重量%となるように添加して本発明の組成物例1を合成された。組成物例1の物性値を測定した結果、上限温度(NI)=148.7℃;光学異方性(Δn)=0.157;誘電率異方性(Δε)=22.6であった。
【0096】
(組成物例2〜14)
さらに、化合物(1)を含む本発明の代表的な組成物例2〜14について、組成物の成分である化合物とその量(重量%)、および物性値を示した。
各組成物例に含まれる化合物は表1の取り決めに従い、左末端基、結合基、環構造、および右末端基の記号によって表示した。1,4−シクロヘキシレンおよび1,3−ジオキサン−2,5−ジイルの立体配置はトランスである。末端基の記号がない場合は、末端基が水素であることを意味する。

【表1】

【0097】
また、各組成物例の物性値を測定して示した。具体的には、ネマチック相の上限温度(NI;℃)、ネマチック相の下限温度(TC;℃)、化合物の相溶性、光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定)、誘電率異方性(Δε;25℃で測定)およびしきい値電圧(Vth;25℃で測定;V)を測定して示した。物性値の測定は、日本電子機械工業規格(Standard of Electronic Industries Association of Japan)、EIAJ・ED−2521Aに記載された方法、またはこれを修飾した方法に従い、具体的には以下のように測定した。
【0098】
ネマチック相の上限温度(NI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0099】
ネマチック相の下限温度(TC;℃):ネマチック相を有する試料を0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶(またはスメクチック相)に変化したとき、TCを≦−20℃と記載する。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0100】
化合物の相溶性:類似の構造を有する幾つかの化合物を混合してネマチック相を有する母液晶を調製した。測定する化合物とこの母液晶とを混合した組成物を得た。混合する割合の一例は、15%の化合物と85%の母液晶である。この組成物を−20℃、−30℃のような低い温度で30日間保管した。この組成物の一部が結晶(またはスメクチック相)に変化したか否かを観察した。必要に応じて混合する割合と保管温度とを変更した。このようにして測定した結果から、結晶(またはスメクチック相)が析出する条件および結晶(またはスメクチック相)が析出しない条件を求めた。これらの条件が相溶性の尺度である。
【0101】
光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビング(rubbing)したあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率n‖は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率n⊥は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の値は、Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。試料が組成物のときはこの方法によって光学異方性を測定した。試料が化合物のときは、化合物を適切な組成物に混合したあと光学異方性を測定した。化合物の光学異方性は外挿値である。
【0102】
誘電率異方性(Δε;25℃で測定):試料が化合物のときは、化合物を適切な組成物に混合したあと誘電率異方性を測定した。化合物の誘電率異方性は外挿値である。
1)誘電率異方性が正である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μm、ツイスト角が80度の液晶セルに試料を入れた。このセルに20ボルトを印加して、液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。0.5ボルトを印加して、液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
2)誘電率異方性が負である組成物:ホメオトロピック配向に処理した液晶セルに試料を入れ、0.5ボルトを印加して誘電率(ε‖)を測定した。ホモジニアス配向に処理した液晶セルに試料を入れ、0.5ボルトを印加して誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0103】
しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V):試料が化合物のときは、化合物を適切な組成物に混合したあとしきい値電圧を測定した。化合物のしきい値電圧は外挿値である。
1)誘電率異方性が正である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が(0.5/Δn)μmであり、ツイスト角が80度である、ノーマリーホワイトモード(normally white mode)の液晶表示素子に試料を入れた。Δnは上記の方法で測定した光学異方性の値である。この素子に周波数が32Hzである矩形波を印加した。矩形波の電圧を上昇させ、素子を通過する光の透過率が90%になったときの電圧の値を測定した。
2)誘電率異方性が負である組成物:2枚のガラス基板の間隔(ギャップ)が約9μmであり、ホメオトロピック配向に処理したノーマリーブラックモード(normally black mode)の液晶表示素子に試料を入れた。この素子に周波数が32Hzである矩形波を印加した。矩形波の電圧を上昇させ、素子を通過する光の透過率10%になったときの電圧の値を測定した。
【0104】
らせんピッチ(20℃で測定;μm):らせんピッチの測定には、カノのくさび型セル法を用いた。カノのくさび型セルに試料を注入し、セルから観察されるディスクリネーションラインの間隔(a;単位はμm)を測定した。らせんピッチ(P)は、式P=2・a・tanθから算出した。θは、くさび型セルのおける2枚のガラス板の間の角度である。

(組成物例2)
3−HHCmaF=O :化合物(1) 10%

2−BEB(F)−C 5%
3−BEB(F)−C 4%
4−BEB(F)−C 12%
1V2−BEB(F,F)−C 13%
3−HB−O2 7%
3−HH−4 3%
3−HHB−F 3%
3−HHB−1 4%
3−HHB−O1 4%
3−HBEB−F 4%
3−HHEB−F 7%
5−HHEB−F 7%
3−H2BTB−2 4%
3−H2BTB−3 4%
3−H2BTB−4 4%
3−HB(F)TB−2 5%
NI=96.7℃;Δn=0.148;Δε=28.2;Vth=1.10V.
【0105】
(組成物例3)
3−HHCma(F)F=O :化合物(1) 7%

2−HB−C 5%
3−HB−C 12%
3−HB−O2 15%
2−BTB−1 3%
3−HHB−F 4%
3−HHB−1 8%
3−HHB−O1 5%
3−HHB−3 15%
3−HHEB−F 4%
5−HHEB−F 4%
2−HHB(F)−F 4%
3−HHB(F)−F 4%
5−HHB(F)−F 5%
3−HHB(F,F)−F 5%
【0106】
(組成物例4)
3−BB(F)Cma(F)F=O :化合物(1) 8%

3−BEB(F)−C 8%
3−HB−C 8%
V−HB−C 8%
1V−HB−C 8%
3−HB−O2 3%
3−HH−2V 13%
3−HH−2V1 7%
V2−HHB−1 8%
3−HHB−1 5%
3−HHEB−F 7%
3−H2BTB−2 6%
3−H2BTB−3 6%
3−H2BTB−4 5%
【0107】
(組成物例5)
3−HHCmaCF2 :化合物(1) 6%

5−BEB(F)−C 5%
V−HB−C 11%
5−PyB−C 6%
4−BB−3 6%
3−HH−2V 10%
5−HH−V 11%
V−HHB−1 7%
V2−HHB−1 14%
3−HHB−1 9%
1V2−HBB−2 10%
3−HHEBH−3 5%
【0108】
(組成物例6)
3−BB(F)Cma(F)CF2 :化合物(1) 6%

1V2−BEB(F,F)−C 6%
3−HB−C 18%
2−BTB−1 10%
5−HH−VFF 24%
3−HHB−1 4%
VFF−HHB−1 8%
VFF2−HHB−1 11%
3−H2BTB−2 5%
3−H2BTB−3 4%
3−H2BTB−4 4%
【0109】
(組成物例7)
3−HHCmaF=O :化合物(1) 8%

5−HB−CL 16%
3−HH−4 12%
3−HH−5 4%
3−HHB−F 4%
3−HHB−CL 3%
4−HHB−CL 4%
3−HHB(F)−F 7%
4−HHB(F)−F 7%
5−HHB(F)−F 7%
7−HHB(F)−F 7%
5−HBB(F)−F 4%
1O1−HBBH−5 3%
3−HHBB(F,F)−F 2%
4−HHBB(F,F)−F 3%
5−HHBB(F,F)−F 3%
3−HH2BB(F,F)−F 3%
4−HH2BB(F,F)−F 3%
NI=118.4℃;Δn=0.087;Δε=5.1;Vth=2.36V.
上記組成物100部にOp−05を0.25部添加したときのらせんピッチは61.5μmであった
【0110】
(組成物例8)
3−HHCmaFCF2 :化合物(1) 6%

3−HHB(F,F)−F 9%
3−H2HB(F,F)−F 8%
4−H2HB(F,F)−F 8%
5−H2HB(F,F)−F 8%
3−HBB(F,F)−F 20%
5−HBB(F,F)−F 20%
3−H2BB(F,F)−F 5%
5−HHBB(F,F)−F 3%
5−HHEBB−F 3%
3−HH2BB(F,F)−F 2%
1O1−HBBH−4 4%
1O1−HBBH−5 4%
【0111】
(組成物例9)
3−BB(F)Cma(F)FCF2 :化合物(1) 5%

5−HB−F 12%
6−HB−F 9%
7−HB−F 7%
2−HHB−OCF3 7%
3−HHB−OCF3 7%
4−HHB−OCF3 7%
5−HHB−OCF3 5%
3−HH2B−OCF3 4%
5−HH2B−OCF3 4%
3−HHB(F,F)−OCF2H 4%
3−HHB(F,F)−OCF3 5%
3−HH2B(F)−F 3%
3−HBB(F)−F 10%
5−HBB(F)−F 5%
5−HBBH−3 3%
3−HB(F)BH−3 3%
【0112】
(組成物例10)
3−HHCma(F)F=O :化合物(1) 6%
3−BB(F)Cma(F)F=O :化合物(1) 6%

5−HB−CL 11%
3−HH−4 8%
3−HHB−1 5%
3−HHB(F,F)−F 8%
3−HBB(F,F)−F 13%
5−HBB(F,F)−F 10%
3−HHEB(F,F)−F 10%
4−HHEB(F,F)−F 3%
5−HHEB(F,F)−F 3%
2−HBEB(F,F)−F 3%
3−HBEB(F,F)−F 5%
5−HBEB(F,F)−F 3%
3−HHBB(F,F)−F 6%
【0113】
(組成物例11)
3−HHCmaCF2 :化合物(1) 6%
3−BB(F)Cma(F)CF2 :化合物(1) 4%

3−HB−CL 6%
5−HB−CL 4%
3−HHB−OCF3 5%
3−H2HB−OCF3 5%
5−H4HB−OCF3 12%
V−HHB(F)−F 5%
3−HHB(F)−F 5%
5−HHB(F)−F 5%
3−H4HB(F,F)−CF3 8%
5−H4HB(F,F)−CF3 10%
5−H2HB(F,F)−F 5%
5−H4HB(F,F)−F 7%
2−H2BB(F)−F 3%
3−H2BB(F)−F 5%
3−HBEB(F,F)−F 5%
【0114】
(組成物例12)
3−HHCmaFCF2 :化合物(1) 4%
3−BB(F)Cma(F)FCF2 :化合物(1) 4%

5−HB−CL 17%
7−HB(F,F)−F 3%
3−HH−4 10%
3−HH−5 5%
3−HB−O2 10%
3−HHB−1 8%
3−HHB−O1 5%
2−HHB(F)−F 6%
3−HHB(F)−F 7%
5−HHB(F)−F 6%
3−HHB(F,F)−F 5%
3−H2HB(F,F)−F 5%
4−H2HB(F,F)−F 5%
【0115】
(組成物例13)
3−HHCmaF=O :化合物(1) 5%
3−HHCma(F)F=O :化合物(1) 4%
3−HHCmaCF2 :化合物(1) 4%

5−HB−CL 3%
7−HB(F)−F 7%
3−HH−4 9%
3−HH−EMe 10%
3−HHEB−F 8%
5−HHEB−F 8%
3−HHEB(F,F)−F 10%
4−HHEB(F,F)−F 5%
4−HGB(F,F)−F 5%
5−HGB(F,F)−F 6%
2−H2GB(F,F)−F 4%
3−H2GB(F,F)−F 5%
5−GHB(F,F)−F 7%
【0116】
(組成物例14)
3−BB(F)Cma(F)F=O :化合物(1) 4%
3−BB(F)Cma(F)CF2 :化合物(1) 4%
3−BB(F)Cma(F)FCF2 :化合物(1) 4%

3−HH−4 8%
3−HHB−1 6%
3−HHB(F,F)−F 10%
3−H2HB(F,F)−F 9%
3−HBB(F,F)−F 15%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F 23%
1O1−HBBH−5 7%
2−HHBB(F,F)−F 3%
3−HHBB(F,F)−F 3%
3−HH2BB(F,F)−F 4%
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の化合物、および、当該化合物を含む組成物を液晶表示組成物として用いることで、広い温度範囲、短い応答時間、大きなコントラスト比および低い駆動電圧の液晶表示素子を製造することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】


で表される化合物。
(式中、Raは水素または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は、−O−、−CO−、−CH=CH−、または−C≡C−で置き換えられてもよく;
1およびA2は互いに独立して1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレン、2,3,5−トリフルオロ−1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、3−フルオロピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイルまたはピリダジン−2,5−ジイルであり、任意の−CH2−は、−O−、または−CO−で置き換えられてもよく、任意の−(CH22−は−CH=CH−で置き換えられてもよく、任意の−CH=は−N=で置き換えられてもよく、さらに、任意の水素はフッ素、塩素、−CN、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF3、−OCHF2、または−OCH2Fで置き換えられてもよく;
aは水素、フッ素、塩素、または−CNであり;
bは水素またはフッ素であり;
Gは−C(=O)−または−CF2−であり;
1およびZ2は互いに独立して単結合、−(CH22−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−(CH24−、−O(CH22O−、−(CH22CF2O−、−(CH22OCF2−、−CF2O(CH22−、−OCF2(CH22−、−CH=CH−CH2O−、または−OCH2−CH=CH−であり;
mおよびnは、互いに独立して0または1であるが、mおよびnが同時に0ではなく;
Gが−C(=O)−であるとき、Xbはフッ素である。)
【請求項2】
一般式(1)
【化2】


で表される化合物。
(式中、Raは水素または炭素数1〜15のアルキル、炭素数1〜15のアルコキシ、炭素数2〜15のアルケニル、または炭素数2〜15のアルキニルであり;
1およびA2は互いに独立して1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、フッ素化1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
aおよびXbは互いに独立して、フッ素または水素であり;
Gは−(C=O)−または−CF2−であり;
1およびZ2は互いに独立して単結合、−(CH22−、または−CF2O−であり;
mおよびnは互いに独立して0または1であるが、mおよびnが同時に0ではなく;
Gが−C(=O)−であるとき、Xbはフッ素である。)
【請求項3】
Gが−C(=O)−である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
aが水素である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
aがフッ素である、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
aが炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数2〜10のアルケニルであり;Z1およびZ2は互いに独立して単結合、または−CH2CH2−である;請求項3〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
1およびA2は互いに独立して1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、またはフッ素化1,4−フェニレンである、請求項3〜6のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
Gが−CF2−である、請求項2に記載の化合物。
【請求項9】
aが水素である、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
aがフッ素である、請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
aが炭素数1〜10のアルキル、または炭素数2〜10のアルケニルであり;Z1およびZ2は互いに独立して単結合、または−CH2CH2−である;請求項8〜10のいずれかに記載の化合物。
【請求項12】
1およびA2は互いに独立して1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、またはフッ素化1,4−フェニレンである、請求項8〜11のいずれかに記載の化合物。
【請求項13】
式(1−1)〜式(1−12)のいずれか1つで表される化合物。
【化3】





(式中、Raは炭素数1〜10のアルキル、または炭素数2〜10のアルケニルであり;
1およびA2は互いに独立して1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、または2,6−ジフルオロ−1,4−フェニレンであり;
1およびZ2は互いに独立して単結合、または−CH2CH2−である。)
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の化合物を少なくとも一つ含有し、少なくとも2つ以上の化合物を含む液晶組成物。
【請求項15】
式(2)、式(3)および式(4)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1種の化合物をさらに含有する、請求項14に記載の液晶組成物。
【化4】


(式中、R1は炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は−O−もしくは−CH=CH−で置き換えられてもよく、さらに、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;X1はフッ素、塩素、−OCF3、−OCHF2、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF2CHF2、または−OCF2CHFCF3であり;環Bおよび環Dは互いに独立して1,4−シクロヘキシレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイルまたは任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり、環Eは1,4−シクロヘキシレンまたは任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;Z4およびZ5は互いに独立して−(CH22−、−(CH24−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−または単結合であり;L1およびL2は互いに独立して水素またはフッ素である。)
【請求項16】
式(5)および(6)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1種の化合物をさらに含有する、請求項14または15に記載の液晶組成物。
【化5】


(式中、R2およびR3は互いに独立して炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、さらに、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;X2は−CNまたは−C≡C−CNであり;環Gは1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;環Jは1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイルまたは任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;環Kは1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり;Z6は−(CH22−、−COO−、−CF2O−、−OCF2−、または単結合であり;L3、L4およびL5は互いに独立して水素またはフッ素であり;b、cおよびdは互いに独立して0または1である。)
【請求項17】
式(7)、式(8)、式(9)、式(10)および式(11)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する請求項14〜16のいずれかに記載の液晶組成物。
【化6】


(式中、R4は炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、さらに、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;R5はフッ素または炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、さらに任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;環Mおよび環Pは互いに独立して1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレンまたはデカヒドロ−2,6−ナフチレンであり;Z7およびZ8は互いに独立して−(CH22−、−COO−または単結合であり;L6およびL7は互いに独立して水素またはフッ素であって、L6とL7の少なくとも1つはフッ素である。)
【請求項18】
式(12)、式(13)および式(14)のそれぞれで表される化合物の群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する請求項15〜17のいずれかに記載の液晶組成物。

【化7】


(式中、R6およびR7は互いに独立して炭素数1〜10のアルキルであり、このアルキルにおいて任意の−CH2−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、さらに、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;環Q、環Tおよび環Uは互いに独立して1,4−シクロヘキシレン、ピリミジン−2,5−ジイル、または任意の水素がフッ素で置き換えられてもよい1,4−フェニレンであり;Z9およびZ10は互いに独立して−C≡C−、−COO−、−(CH22−、−CH=CH−、または単結合である。)
【請求項19】
組成物の全重量に基づいて、請求項1〜13のいずれかに記載の化合物が4〜15重量%含まれる、請求項14〜18のいずれかに記載の液晶組成物。
【請求項20】
少なくとも1つの光学活性化合物をさらに含有する、請求項14〜19のいずれかに記載の液晶組成物。
【請求項21】
請求項14〜20のいずれかに記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。



【公開番号】特開2007−153815(P2007−153815A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351982(P2005−351982)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】